千夜「お前は働き者ですね」まゆ・智絵里「「……お前?」」ハイライトオフ (27)

おかっぱ従者とアタシポンコツMasque:Rade

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(事務所)

P「千夜。これ5月上分のスケジュール。7日はラジオの収録が予定通りできるかどうかまだはっきりしてないんだけど、一応予定だけは開けておいてくれ。収録がなければオフになるから」

千夜「ええ」メモメモ

P「それと11日と13日の営業について細かく説明することがあるんだ。今から20分くらい時間かかるけど大丈夫か?」

千夜「今日の私に予定が入っていないのはお前も知っているでしょう。大丈夫です。続けてください」

P「じゃあ段取りについてだけど……」

フムフム...
ナルホド
ソウデスカ

まゆ「……」コソリ

千夜「……ちょっと待て。まさかちとせお嬢様にこんな格好をさせるつもりか?」

P「ん? 普通の衣装だろ?」

千夜「お前の目は節穴なのか。スカート。スカートの丈がひどく短いでしょう。これではお嬢様が過激な女だと思われかねません」

P「これくらいなら誰も思わないよ」

千夜「私が許容できない」

P「ワガママは言うなって。衣装はもうできてる。デザイナーさんが時間をかけて作ったものを千夜は気に食わないって理由で拒否するのか」

千夜「っ……その言い方は卑怯でしょう」

P「衣装はちとせに着てもらう。演出的にそれが1番映えるんだ。衣装は全体のバランスを考えながら選んでるからな。俺に任せてくれ。もちろん意見は歓迎するけど単なる文句なら控えてもらう。『お嬢様抜き』で考えれば千夜もわかるだろ」

千夜「……わかりました」ムスッ

P「渋柿を食べたような顔に」

千夜「なってません」ムッス-

P「千夜って意外と顔に出るよなぁ」

千夜「黙れ」

ア-ダコ-ダ
オマエ!
ソウデスネ
コレハコウデ

まゆ「……」ジ-

(しばらくして)

P「ふぅ。結局30分もかかっちゃったな。長くなって悪かった」

千夜「予定がないから大丈夫だと言ったでしょう。それよりお前はまだ仕事があるみたいですね。さっきちひろさんに頼みごとをされていたのを聞きましたよ」

P「ああ、そうだな」フゥ

千夜「……」

千夜「まったく。お前も人のことを言えませんね。疲労が顔に出ていますよ。お茶くらいなら淹れてあげますから、そこに座っていてくださーーー」

まゆ「お茶ですよぉ♪」ニュッ

千夜「!?」ビクッ

P「ありがとう。気が利くなまゆ」

まゆ「ふふふ。お菓子もありますからね♪」コトリ

P「ところで一体いつからそこに?」

まゆ「最初からです♪」ニコ-

千夜「……は、初めまして。佐久間さん」

まゆ「初めまして。最近新しく入った千夜ちゃんですね。ふふふ……よろしく♪」ペコリ

千夜「……よろしくお願いします」ペコリ

千夜「(佐久間まゆ……正統派キュートアイドルだと認知していましたが、実際に会ってみると何か不思議な圧を感じますね)」

まゆ「2人とも随分と熱心にお仕事の話をしていましたね♪」

P「まあな。ちとせ絡みになると千夜がヒートアップするからつい」

千夜「お前。私を誤解させるようなことは言わないでください」

まゆ「おま……お、お、おまえ?」ピクピクッ

P「事実じゃないか。裏を返せばそれだけちとせを大事に想ってるってことだろ」

千夜「それは当たり前ですが。お前の言い方には何か、こう、引っかかるものがある」

まゆ「おまえ……おまっ……おまえの……」ワナワナワナ

P「どうした。まゆ?」

千夜「?」

まゆ「プロデューサーさん!」

P「うん?」

まゆ「ま、まゆはお前のまゆです!」カッ!

P「うん」

まゆ「じゃなくて! ……っ! し、失礼します!」ダッ!

トタタタタタ...
バタン!

P「急にどうしたんだろう?」

千夜「さぁ……」

P「ま、いいや。せっかくお茶を淹れてくれたんだ。ありがたくいただこう」ズズズ

千夜「そう、ですね」

千夜「(お菓子を用意しておいたんだが……出すタイミングを失ったな……まあ、いいか)」フム

千夜「あ、このお茶美味しいですね」ズズズ

P「だろ」フフン

千夜「なぜお前が得意げなんだ」

(その後、夕方)

千夜「(自主レッスンをしていたらすっかり遅くなってしまったな……早くお嬢様の元へ帰らねば)」トコトコ

まゆ「こんばんは♪」ニュッ

千夜「!?」ビクッ!

まゆ「ふふふ。驚かなくても大丈夫です。まゆですよぉ♪」ニコ-

千夜「ど、どうも。何かご用ですか。佐久間さん?」

まゆ「ご用、というほど大したものではありませんが……千夜ちゃんにちょっとだけお話しすることがあるんです」

千夜「お話……?」キョトン

まゆ「いいですか。この際、はっきりとまゆが言わせていただきます」コホン

千夜「はい」

まゆ「まゆのプロデューサーさんは! お前ではありません!」バ-ン!

千夜「はぁ」

まゆ「駄目ですよぉ! お前呼びは! P君呼びとか親友呼びとかちゃん付けならまだしも! お前は駄目です! まゆセンサーが拒否反応を起こしているんです!」カッ!

千夜「まゆセンサー?」

まゆ「そこに突っ込まなくていいんです! 要するに呼び方の問題です!」

千夜「プロデューサーのことですか」

まゆ「そうです。どうして千夜ちゃんはプロデューサーさんのことを『お前』と呼ぶんですか!」

千夜「どうして……と言われるとそうですね。奴にはお前呼びで充分かと私は思っているからです」

まゆ「駄目です!」バン!

千夜「何故です?」

まゆ「仮にちとせちゃんが『お前』呼びをされていたら千夜ちゃんはどう思いますか?」

千夜「その不届き者を富士の樹海に埋める」

まゆ「まゆも同じ気持ちです! プロデューサーさんをお前呼びするのはやめてほしいんです!」

千夜「はぁ」

まゆ「いいですか。約束ですよ。プロデューサーさんは私たちみんなのために頑張ってくれているんですから。感謝と敬意の気持ちを持たないと駄目です。お前呼びでは失礼ですよ」グチグチグチ

千夜「……」ムッ

まゆ「わかりましたね。千夜ちゃん?」

千夜「お言葉ですが佐久間さん」

まゆ「?」

千夜「私が奴をどう呼ぼうが私の自由でしょう」フッ

まゆ「!!!」

千夜「だいたい。奴も私の呼び方を気にしてはいないようです。私たちの関係はそれでいい。他人から干渉される筋合いはないと思っています」キッ

まゆ「」

千夜「奴の仕事ぶりはそれなりに認めています。それで十分でしょう。他になければ失礼します。お嬢様のお世話がありますので」スタスタスタ

まゆ「」

(後日)

【ハンバーガー店】

まゆ「何なんですか! あの子は!」バン!

李衣菜「まゆちゃん。落ち着いて」ドウドウ

加蓮「ポテト食べなよ。ほら」スッ

まゆ「何なんですか! 何なんですか! まったくもう!」ムシャムシヤムシャ

美穂「やけ食いは良くないよ。まゆちゃん」

まゆ「食べなきゃやってられないです!」ガツガツガツ!

李衣菜「しっかし。また個性的な子が入ってきたみたいだねー」ハハハ

加蓮「付き人だっけ。いいなぁ。私も四六時中お世話をしてくれる執事とかメイドさんとか欲しい」

李衣菜「わかる。朝の支度とか全部してほしい」

加蓮「執事とメイドどっち派?」

李衣菜「執事。前なつきちがやってた感じのカッコイイ人」

加蓮「あー、夏樹のカッコよかったね。ああいうタイプ好きかも。主人を常に立ててくれそう♪」

李衣菜「そうそう。でも厳しい時は厳しいっていうか。勉強とかサボってたら『お嬢様。次のテストまで付きっきりで私が面倒をーーー」

まゆ「何の話ですかぁ!」バン!

李衣菜「あ、うん。ごめん」

加蓮「美穂はどっち派?」

美穂「え、ええと……執事さんかな///」

まゆ「まゆはプロデューサーさんのメイドです! 仕えられるより仕えたい派です!」カッ!

加蓮「はいはい。で、結局どうしたいのよ。まゆは?」

まゆ「お前呼びは嫌です!」

加蓮「確かに『お前』って呼び方は少し引っかかるけど、言われてる本人が気にしてないならどうしようもなくない?」

李衣菜「うん。周りからはどうこう言えないよ。受け入れるしかないよね」

加蓮「諦めるしかないよね」

まゆ「正論を言わないでください! まゆを慰めてください!」ヒ-ン!

加蓮「よしよし。私の胸に飛び込んでおいで」ウェルカム

まゆ「加蓮ちゃーん!」ガシ-

加蓮「あ、思ったより重っ」

まゆ「うぅ……重くないです。愛も体重も適切です……」ヒックヒック

加蓮「美穂ー。手が使えないからポテトあーんして」

美穂「はーい。あーん」

加蓮「メイドっぽくお願い」

美穂「お嬢様。ポテトでございます(高音)」

加蓮「やだ可愛い〜♪ 李衣菜も執事やってよ♪」モグモグ

李衣菜「今シェイク飲んでるからヤダ」ジュルルル

加蓮「ケチ」

まゆ「ヒーン!」

美穂「(ねぇ。李衣菜ちゃん。実はまゆちゃんのことはあんまり心配してないんだけど……)」コソッ

李衣菜「……うん。言いたいことはわかるよ」チラッ

智絵里「私のプロデューサーさんは……頼りになって……優しくて……大切な人なんです……お前ではなくプロデューサーさんなんです……あの新人さん……どうしてプロデューサーさんを……」ブツブツブツ

李衣菜「(こっちはもっとまずいかも)」

美穂「(私。ちょっと触れられない)」

まゆ「うぅ……あんちくしょう。千夜ちゃんのあんちくしょう……あんちく……」シクシクシク

加蓮「罵倒のボキャブラリーが貧弱」

まゆ「うるさいですこの虚弱体質……」シクシクシク

加蓮「あんだと?」グリグリグリ

まゆ「ひぃん! 頭をゴリゴリしないでください! 落ち込んでるのに!」ヒ-ン!

李衣菜「どうしようかな。この状況」

美穂「んー……」

加蓮「あ、それなら安心して。私、いいアイデア思いついちゃったから♪」ニタリ

李衣菜・美穂「「?」」

(後日)

加蓮「というわけで! 『お前呼び』賛成派と反対派による討論会を開催します。皆さん拍手ー♪」パチパチパチ

李衣菜「イェーイ♪」パチパチパチ

美穂「い、いえー?」パチパチパチ

まゆ「叩き潰してあげます!」フンスフンス

千夜「不本意ですが降りかかった火の粉は払わねばなりませんからね。上等です」キッ

智絵里「お前呼びは……許しません!」カッ!

ありす「代理人弁護士です」フンス

凛「なんで私が」

加蓮「ゲスト♪」

千夜「初めに言っておきます。議論の結果がどうなろうと私は奴への呼び方を改めようとは考えていません。このような議論をしても時間の無駄かと思いますが」

加蓮「まあまあ。せっかくだし付き合ってよ」

まゆ「改めさせます!」バ-ン!

智絵里「許しません……!」カッ!

加蓮「あっちも発散させないと収まりがつかないみたいだし」コソッ

千夜「……そういうことなら」フゥ

凛「ねえ。加蓮」

加蓮「うん?」

凛「私はどうして呼ばれたの?」

加蓮「だって奈緒が仕事入ってて寂しいんだもん」

凛「だもんじゃないよ。ていうか私、奈緒の代役なわけ?」

加蓮「うん」

凛「帰る」スタスタスタ

加蓮「嘘。待って。凛の代わりなんてこの世のどこにもいないから。愛してる。待って。私を見捨てていかないで。お願いだから足を止めて」ガシ-

凛「冗談だよ。私が加蓮のことを見捨てるはずがないでしょ」フフフ

加蓮「ありがとう。凛!」ギュ-

凛「いいよ。加蓮」ギュ-

李衣菜「何さ、そのノリ」

加蓮「実は私たち。仲良し」キラ-ン

凛「みんなには隠してたけどね」フフフ

李衣菜「いや知ってるから。奈緒ちゃんがいない時も、よく楽屋でじゃれあってるの見てるから」

加蓮「李衣菜の覗き魔」ヤ-イ

凛「むっつりすけべ」ヤ-イ

李衣菜「いわれなき罵倒だぁ。ところでありすちゃんはどうしてここにいるの?」

ありす「凛さんに誘われてついてきました。私は代理人弁護士としてここにいます」フンス

李衣菜「誰の?」

ありす「私の力を必要としてくれる人のです」キラ-ン

李衣菜「へぇ」

凛「事務所で暇そうにパズドラやってたから連れてきたんだ」

李衣菜「優しいね」

凛「もっと褒めていいよ」

まゆ「そこのクールたち! 楽しそうに雑談している場合ではありません! 時間というのは刻一刻と過ぎてゆくものなのです! 議論を始めましょう!」カッ!

智絵里「そうです!」カッ!

千夜「一理あります。私も早く帰ってお嬢様のために夕食を作らねばならないのですが」

加蓮「何作るの?」

千夜「肉じゃがを」

凛「ふーん。意外と家庭的だね」

千夜「ああ見えてちとせお嬢様は和食好きですから。朝は納豆と味噌汁派です」フフフ

まゆ「何ですか! アピールですか! もしかしてさりげないプロデューサーさんの正妻アピールなのですか!」カッ!

千夜「話を聞いていましたか」

加蓮「ごめんね。あのぽんこつ、興奮状態で我を忘れてるから。聞き流して」

智絵里「私だって肉じゃがくらいつくれます!」グッ

まゆ「まゆだって!」

李衣菜「あ、私も作れるよ」

まゆ・智絵里「「李衣菜ちゃんには聞いてません!」」カッ!

李衣菜「ひどい」

加蓮「よしよし」

凛「李衣菜はいつも頑張ってるよ」

(しばらくして)

加蓮「それでは始めます。まず派閥分けしたものをまとめたのでこちらをご覧ください」ピッ

【お前呼び賛成派】テ-ン
千夜
李衣菜
美穂


【お前呼び反対派】テ-ン
まゆ
智絵里


加蓮「ほぼ半々に分かれたねー。あ、私は中立の立場で司会進行をしていくから」

李衣菜「オッケー。美穂ちゃんもこっちなんだね」

美穂「うん。私も他の人がプロデューサーさんのことをどんな風に呼ぶのかは自由だと思ってるから」

千夜「まっとうな意見です」コクリ

まゆ「異議あり!」バン!

加蓮「はい。そこのミスハイライトオフ。反論をどうぞ」

まゆ「お言葉ですが、目上の人をお前と呼ぶのは失礼です! それは仕事を進めていく上でも悪影響があるとまゆは考えます! ゆえに千夜ちゃんの呼び方の変更を要求します!」バ-ン!

加蓮「ということだけど、どう?」

千夜「要求は受けれられません」

加蓮「ほう」

千夜「まず目上の者とはなんでしょう。我々はアイドル。奴はプロデューサー。対等の関係です。上司と部下のような絶対的な上下関係が我々の間にあるとお思いでしょうか。佐久間さん」

まゆ「い、いえ」

千夜「であれば奴は目上の者ではありません。いわば共に仕事をする上でのパートナー。仮に私の口調が馴れ馴れしいものだとしても相手を信頼しているのであれば問題ないのではないでしょうか」

加蓮「ほー、信頼してるんだ」

千夜「仕事についてだけは、です。仕事についてだけは。勘違いしないでください」クワ-

凛「念押ししなくてもわかったって」

まゆ「で、でも! 親しき仲にも礼儀ありという言葉があります!」

千夜「ええ。しかし、それも当人が非礼と感じるかが問題であり、他者が口を挟むことでは無いと思います。少なくとも奴は私の呼び方に腹を立てている様子はありません」

智絵里「も、もしかしたら! 態度に出さないだけではらわたが煮えくり返っているかもしれません!」

まゆ「そうです! 内心では嫌だと思ってるかもしれませんよぉ!」

千夜「なるほど。では確認してみましょうか」

まゆ・智恵理「「へ?」」

トゥルルルルル...ピッ

千夜「もしもし。私です」

P『千夜か。どした?』(スピーカー)

一同「「「!?」」」

千夜「お前。自分の呼び方に対して何か不満がありますか?」

P『うん? 呼び方?』

千夜「Pちゃんだの、Pくんだの、豚だの、ロリコンだの、未亡人を食う男だの、親友だの色々言われているでしょう。私もお前のことをお前と呼んでいます。そのことについて不満はあるかと聞いているんです」

P『いや別に。あんまり気にしたことないな』

千夜「そうですか。時間を取らせましたね。それだけ確認できたら大丈夫です」

P『おお、そうか?』

千夜「ええ、では」ピッ

千夜「ほら。奴は気にしていないと言っていたでしょう」

まゆ「な、な、な……」プルプルプル

智恵理「そ、そ……」プルプルプル

ありす「……」

千夜「反論がなければこれで終わりにしましょう」

まゆ「あ、ありすちゃん! な、何か言い返してやってください! 弁護士でしょう!」カッ!

ありす「ふぇっ!?」ビクッ!

智恵理「やっちゃってください!」

ありす「え、ええと……その……」オロオロ

千夜「……小学生に頼ってどうするのですか。もう終わりにしましょう」ハァ

ありす「し、小学生ではありません!」カッ!

李衣菜「いや。小学生でしょ」

ありす「千夜さん! 異議ありです!」バ-ン!

千夜「どうぞ」

ありす「お前呼びはダメです! なぜなら失礼だからです!」

千夜「おい、ちびっ子。私の話を聞いていましたか?」

まゆ「でも! でも! お前は嫌ですよぉ!」

智絵里「そうです! お前呼びは嫌です!」

ありす「私も嫌です!」フンスフンス

まゆ「はーんたい!」ワ-!

智絵里「はーんたい!」ワ-!

ありす「はんたいです!」ワ-!

ギャ-ギャ-!

千夜「……ったく。やはり時間の無駄ですね。繰り返し話せばわかってくれるでしょうか」フゥ

美穂「……」エ-ト

美穂「ねえ、千夜ちゃん。言ってることは間違ってはないと思うけど……今みたいに正論をぶつけるだけじゃ駄目だと思うよ?」

千夜「?」

李衣菜「私もそう思う。どんなに理屈が通った話でも、まゆちゃんも智絵里ちゃんも素直に折れない気がするよ」

千夜「それは何故ですか……?」

李衣菜「何故と言われても……なんて言えばいいんだろ」ウ-ン

凛「バトンタッチ。私に任せて。例えばさ、北風と太陽の話があるでしょ」

千夜「はい」

凛「あれと同じ。相手を力づくで思い通りに動かそうとしてもうまくいかないんだよ。服を脱がせたいならやり方を変えなきゃ」

千夜「やり方ですか」

凛「千夜は別にぽんこつたちと喧嘩をしたいわけじゃないんでしょ?」

千夜「それは、まあ」

凛「なら目指すべきはまゆと智絵里の不満を和らげることだよね。真正面から正論を叩きつけられたら余計に意固地になるから、『気持ちはわかる』って歩み寄るべきだと思う。適当な落とし所を考えようよ」

李衣菜「おおー! 私の言いたかったこと、全部言ってくれた!」パチパチパチ

美穂「さすが凛ちゃんだね♪」パチパチパチ

千夜「しかし……歩み寄るといっても、私は呼び方を変えるつもりはありませんよ?」

凛「それはいいよ。だから別の部分でまゆたちと和解しよう」

美穂「どうやって?」

凛「それはまだ考えてない」

李衣菜「えー?」

凛「えー、じゃないよ。李衣菜も考えてよ」

李衣菜「全面降伏!」バ-ン!

凛「はいはい」

ニュッ

加蓮「私にいいアイディアがある」キラ-ン

凛「中立ポジションが片方の陣営に顔を出していいわけ?」

加蓮「だって議論が止まっちゃって、私1人でやることなかったんだもん」シュ-ン

李衣菜「寂しがり屋だね」

凛「で、アイディアって何?」

加蓮「よくぞ聞いてくれました! それはずばり! 逆にまゆと智絵里に『お前』と呼んでもらおう大作戦です!」バ-ン!

凛「は?」

美穂「ええと……どういうこと?」

李衣菜「あの2人がプロデューサーさんのことを『お前』呼びするってこと?」

加蓮「そ♪」キラ-ン

千夜「それに何の意味があるのですか」

加蓮「仮に2人がプロデューサーさんのことをお前って呼ぶとするじゃない」

凛「うん」

加蓮「するとまゆと智絵里はこう考える。『プロデューサーのことはお前って呼んだ方がしっくりくる。これからはお前呼びにしよう』と♪」キラ-ン

美穂「作戦が雑すぎないかな!?」

千夜「そもそも、あの2人が作戦に乗ってくれるでしょうか?」

加蓮「さあ」

李衣菜「ありえないよ。そんな作戦うまくいくはずなーーー」

ニュッ

まゆ「話は聞きましたよぉ!」バ-ン!

智絵里「私たちはお前呼びに屈するようなやわなアイドルではありませんっ!」バ-ン!

李衣菜「わぁ。なんか食いついた」

ありす「話は聞いていました。その作戦、乗ってさしあげましょう。まゆさんと智絵里さんには明日の1日だけ、プロデューサーさんのことを『お前』と呼んでもらいます」フンス

凛「え、本当にいいの? ありすが勝手に話を進めてるけど」

ありす「はい。これでお前呼びがいかに邪悪なものであるかを証明します!」

凛「邪悪て」

智絵里「駄目です! お前呼びは駄目です!」カッ!

まゆ「屈しませんよ! お前呼びには!」カッ!

加蓮「よし。なら、せっかくだからまゆと智絵里だけじゃなくてさ、あたしたちを含めた事務所のみんなでお前呼びをしてみよっか♪」

凛・李衣菜・美穂「「「え?」」」

加蓮「決まりー♪ さっそく事務所内のグループにメッセージ……っと、OK♪」テロリン

李衣菜「待って。本当にやるの!?」

加蓮「もち♪」

千夜「……妙なことになったな」ハァ

【次の日】

トコトコトコ...カチャ

P「おはよう」

まゆ「おはようございます♪」ニコ-

P「まゆ。今日も頑張ろうな」

まゆ「ええ。あ、肩に糸くずが付いてますよ。まゆが取ってあげますね♪」スッ

P「ありがとう。よく気がついたな。こんな小さいの」

まゆ「ふふふ。まゆはお前のことをいつでも見てますから♪」

P「……」

P「うん?」

まゆ「どうしました?」

P「いや何か違和感が」

まゆ「熱でもあるんですか?」ピトッ

P「いや、俺にじゃなくて……まあいいや。この後はレッスンだっけ?」

まゆ「ええ。よかったらレッスンから戻った後に一緒にお昼を食べませんか?♪」

P「いいよ。それじゃレッスンいってらっしゃい。頑張って」

まゆ「はい。お前もお仕事頑張ってください♪」

P「」

パタン

まゆ「(お前……プロデューサーさんのことをお前呼びなんて……ふふふ♪ いけませんねぇ♪)」ゾクッ

テクテクテク...

P「まゆ。俺のことお前呼びしてたよな……? いや、空耳なのか?」ウ-ン

智絵里「あっ、おはようございます♪」ニコ-

P「おはよう智絵里。なんか嬉しそうだな。何かあったのか?」

智絵里「はいっ。さっき事務所の前で四葉のクローバーを見つけたんです♪」パァァァ

P「へえ。よかったなぁ。いいことあるかもな」

智絵里「はい。それで、え、ええと……よかったらどうぞ。受け取ってくださいっ」スッ

P「え、くれるの?」

智絵里「お前にも幸せのおすそ分けをしたくて……///」エヘヘ

P「」


智絵里「(お前……プロデューサーさんのことをお前なんて呼ぶのはダメなのに……えへへ……♪)」ゾクッ

テクテクテク...

P「おかしい。いつもと言ってることは変わらないのに智絵里までお前呼びになってる一体2人に何が……」ウ-ン

凛「おはよ。この前貸して欲しいって言ってた映画のDVD、お前の机の上に置いといたから。あとで見てね」

P「」

【そしてお前呼びは続いた】

美穂「あ、口元にケチャップが付いてますよ。お前は子供みたいですね♪」

P「」


加蓮「ねえ。お前って明日の午後空いてる?」

P「」


奈緒「だー! もー! お前は勝手にあたしの髪の毛をもふもふすんなぁ!」プンスカ

P「うーん。落ち着く」モフモフ


美優「お前に話があります。ダンスレッスンのことでちょっと相談したいことがあるのでが……この後お時間頂いても大丈夫ですか?」

P「」


P「と、時子! 助けてくれ! みんなが変なんだ!」オロオロ

時子「喚くな。豚」

P「ぶひぃ……」ホッ


晴「まー、お前はあんま気にしなくていいんだよ」ポンッ

美玲「そうだな。オマエは普段通り過ごしてれば大丈夫だ」

P「2人は変わらないな」



みく「みんなが変?」

P「そうなんだよ。何か知らないか?」

みく「ナニモシラナイヨ」

P「そうか……」ウ-ン

みく「(言わないでって釘刺されてるんだよね……ごめんPチャン)」

みく「大丈夫。みんなお前のことを嫌いになったりはしないと思うから。元気出してにゃ!」

P「」


ちひろ「お前の給料から毎月無料で100連分のガチャを回せるようにお金を引き落としておきましたから♪」

P「」


ゆかり「お前♪」

P「」


ライラ「お前ですねー」

P「」


薫「せんせ……お前!」

P「」


唯「お前ちゃーん♪」

P「」


美嘉「お、お前!」

P「」


千枝「お前♪」

P「」


心「何凹んでんだよ。お前。テンション上げていけよな☆」

P「おう」


P「また何か変な薬を飲ませたな」ガシ-

志希「え、冤罪だァァァ!」ジタバタジタバタ


りあむ「お前! もっとぼくをすこれよ!」バ-ン!

P「慶ちゃん。このクズのレッスンを達成がギリギリ不可能なレベルまで引き上げてやって」

慶「了解です」

りあむ「ヴァァァァァ! 理不尽だァァァァァァ!!!!」


柚「お前サーン。チョコあげる〜♪」ニコ-

P「柚ぅ……お前もか……」プニプニプニ

柚「ンー。ほっぺをぷにぷにしないでよー♪」ニマニマ

【こうしてPのメンタルは削られたり、削られなかったりした】

P「はぁ……」クテ-

千夜「何をため息をついているんだ」ニュッ

P「ああ、いたのか。千夜。大したことじゃないんだけど……みんなの様子が少しおかしいんだ。聞いても教えてくれないし」ズ-ン

千夜「……」

千夜「きっと大したことはないですよ。担当アイドルのことでしょう。気にしすぎです」

P「そうだろうか」ウ-ン

千夜「ええ。プロデューサー、さん」

P「……」

千夜「……」

P「いまプロデューサーさんって」

千夜「忘れろ」ペチン

P「痛い」

(後日)

加蓮「かくかくじかじか。というわけで1日限定の呼び方変えだったわけ。ごめんね。プロデューサー」

P「許す」

加蓮「ありがとう。大好き」ガシ-

凛「待ってよ。加蓮。私には?」

加蓮「凛も大好き」ガシ-

凛「私もだよ」ガシ-

李衣菜「その甘ったるい茶番はなんなのさ」

加蓮「暇を持て余した」

凛「神々の」

加蓮・凛「「遊び」」バ-ン!

美穂「チョイスが古くない?」

P「ペンパイナッポーアッポーペン」ド-ン

美穂「話が取っ散らかるようなノリ方は困ります。プロデューサーさん」

李衣菜「それよりまゆちゃん。智絵里ちゃん。お前呼びしてどうだったの?」

まゆ「え、ええと……その、や、やっぱり私にはできません……」

智絵里「わ、私も、かな……」

李衣菜「そっかぁ」ウ-ン

まゆ「で、でも! まゆは千夜ちゃんに謝らないといけません!」

千夜「?」

智絵里「はい。昨日、プロデューサーさんのことをお前って呼んでみて、私もちょっと思ったんです……こういう呼び方もありなんじゃないかって」

美穂「え、ええっ!?」

千夜「そうでしょう。こいつはお前という呼び方で十分なのですよ」フフフ

まゆ「はい。 まゆも千夜ちゃんと同じ呼び方をしてみて、気持ちがわかりました。ゾクゾクしますよね。尊敬してる人を『お前』と呼ぶのは♪」

千夜「それは私のと違う」

智絵里「わかります♪ ちょっと嬉しさと、背徳感が混じったような感覚がたまりませんよね……♪」

まゆ「1人でこんな快感を楽しんでいたなんて。千夜ちゃんもSですね♪」

智絵里「先に言ってくれたら勘違いしないですみましたよ♪」

千夜「違う!」

P「そ、そうだったのか……!」ワナワナ

千夜「お前は黙っていろ」ペチン

P「痛い」

まゆ「とにかく……その、変に突っかかってしまってごめんなさい。千夜ちゃん。今回はまゆがいけませんでした!」ペコリ

智絵里「わ、私もごめんなさい! つい我を忘れちゃって……」ペコリ

千夜「いえ。私も言い方をよく考えるべきた。少々、攻撃的になったこと反省しています。改めてこれからよろしくお願いします。佐久間まゆさん。緒方智絵里さん」ペコリ

まゆ・智絵里「「こちらこそ♪」」

キャッキャ♪
ワイワイ♪

ありす「仲直りできたみたいですね」フンス

P「いたのか。ありす」

ありす「橘です。最初からいました」

李衣菜「あはは。まー、今回はこれで一件落着ってことで」

凛「そうだね。丸く収まってよかったよ」

加蓮「私のおかげだね。褒めて」

凛「美穂。ありがとう」ペコリ

美穂「ど、どういたしまして?」

加蓮「私を褒めてよ!」ヒ-ン!

李衣菜「プロデューサーさん。誰からお前って言われたのが1番びっくりした?」

P「んー。最初だったからインパクトがあったのがまゆかな」

李衣菜「まゆちゃんかぁ。確かに私も言われたらすごい驚きそう」

P「でもそれよりインパクトがあったのは千夜の『プロデューサーさん』呼びだったな。千夜だけそういう呼び方をするように決めてたんだろ」ハハハ

一同「「「「え?」」」」

千夜「……」ピクッ

P「……んん?」

加蓮「私たち。そんな呼び方するようには決めてないよ?」

P「そうなの?」

凛「うん。やろうって決めたのはお前呼びだけ」

千夜「急用を思い出した。私はこれでーーー」スタスタスタ

加蓮「もうちょい待って」ガシッ

千夜「あぅ」

李衣菜「千夜ちゃん。プロデューサーさん呼びしたの?」

千夜「気のせいです」プイ-

P「昨日、2人でいる時に呼んだだろ」

千夜「気のせいです」プイ-

智絵里「本当ですか?」

千夜「気のせいです。この男の空耳でしょう」フン

まゆ「プロデューサーさん。昨日の何時頃ですか?」

P「午後5時ごろだけど?」

まゆ「偶然うっかりまゆがプロデューサーさんのポケットに盗聴……ごほん。歌のレッスンで使うボイスレコーダーが紛れ込んでいまして。その音声データが残ってます。再生してみますねぇ♪」

美穂「そんな偶然ある!?」ガ-ン

智絵里「え、結構ありますよ?」

ありす「ありますね」

凛「まあ、あるかな」

加蓮「よくある。よくある」コクリ

美穂「嘘。私少数派だ」

李衣菜「大丈夫。美穂ちゃんだけがまともなんだよ」

まゆ「はい。再生です♪」ピッ

千夜「ちょ」



千夜『きっと大したことはないですよ。担当アイドルのことでしょう。気にしすぎです』

P『そうだろうか』ウ-ン

千夜『ええ。プロデューサーさん』


一同「「「「あら、まあ♪」」」

千夜「」

P「空耳じゃなかったな」

千夜「黙れ……」プルプルプル

P「ちーちゃん」

千夜「黙れお前ェェェ!!!」スパ-ン!

P「痛い! 今度のは本当に痛い!」

ギャ-ギャ-!

(後日)

ちとせ「最近、ちーちゃん。事務所に行く時にすごく楽しそうになったの♪」ニコニコ

P「そらよかった」

終わり

(おまけ)

ありす「お前♪」フンス

P「……」ガシッ

ありす「え、ちょっとプロデューサーさん。どうして私の両手を掴んで……ウワァァァァァァァ!!!!」グルングルングルン

P「ふはははは! 大車輪だ!」グルングルングルン

ありす「ウワァァァァ!!!」ヒ-ン!

(おまけ)

李衣菜「ねぇ♪ 今日、お前ん家に行ってご飯食べてもいーーームグァ!」

P「ん? いま李衣菜の声がしたような……気のせいか?」



ズリズリズリ...

まゆ「まったくもう……李衣菜ちゃんはちょっと目を離したらこれですからね……」ハイライトオフ

智絵里「いつも美味しいポジションで……いけませんよね……」ハイライトオフ

李衣菜「」

ウワァァァァァァァ!!!

終わり

以上です。お読みいただきありがとうございました。
マスカレード組は李衣菜がいないとやっていけないんじゃないかと思ってます。

皆ノリが良くてテンポが良くて面白い。
凛がこういう風に加蓮とじゃれつくのって珍しいけど結構好き。
時子様がいつも通りなのがとても愛おしいし、それに安堵するPもいい性格してる。
そしてなんと言っても李衣菜可愛いよ李衣菜。

安定のしゅがはさん

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