夏葉『朝、私が起きたらカトレアが女の子になっていたの!』 (82)



藤原肇「ワンちゃんになってしまいました…」
藤原肇「ワンちゃんになってしまいました…」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1535728503/)

の続編的な話ですがあまり繋がりはありません。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1562307463


P「ーって起きしなに夏葉から電話がかかってきて「カトレアってそもそも女の子じゃなかったっけ?」とか「夏葉、疲れてるのかな」とか思いながらひとまずこの部屋に来たわけだけど…」

夏葉「…」

カトレア(?)「…」

P「…カトレア?」

カトレア(?)「何?」

P「いや、夏葉の飼い犬で、ゴールデンレトリバーの」


カトレア「私だけど」

P「…君が?」

カトレア「ええ」

P「夏葉?」

夏葉「私も信じられなかったわ。起きたら全裸のこの子が隣で寝てるんだもの。でも、話してみるとカトレアとしか思えないのよ。ふたりだけが知ってること、何でも知ってたしね」

P「…俺の知るカトレアはこんなスタイル抜群のブロンド髪の美女じゃなくて、ああ、髪の毛の色はあの子の毛色と似てたかもだけど…」


カトレア「私だってわからないわ。どうして人間の姿になったのか。でも、私は正真正銘夏葉の愛犬のカトレアよ。ねえ、夏葉?」

夏葉「ええ、そうなの。プロデューサー」

P「……ドッキリ?」

夏葉「まだわからないの? なら、証拠を見せてあげる。カトレア、お手」

カトレア「わん!」ポフッ

夏葉「カトレアはおりこうさんね…」ナデナデ

カトレア「夏葉〜♪」ギュウウウ

夏葉・カトレア「……ね?」


P「いや、美女がふたり戯れてるだけにしか…」

夏葉「もう、わからない人ね」

P「ご、ごめん…」

カトレア「ああもう、じれったい……夏葉、本当にこの人でよかったの?」

夏葉「ちょ、カトレア!」

P「いや、俺じゃなくても樹里でも果穂でも凛世でも智代子でも同じ反応だと思うけど…」


夏葉「え? え、ええ! そうかもしれないわね。だけど、アナタがいいと思ったの! 私のプロデューサーだものね!!」

P「お、おう。そうだな、すぐには信じられないけど…とにかく、一旦信じる方向で進めるよ」

夏葉「それでこそよ! プロデューサー!」

P「…お、おう!」

カトレア「……ふーん」



ーーーーーーーーーーーーー


P「……で、なんで俺たち公園に来たんだ?」

夏葉「実はね、カトレアがこの姿になった犯人はわかってるのよ」

P「そもそも犯人がいるのか? 犬を人間の姿にするって今の技術で可能なのか?」

夏葉「その全ての答えがわかるらしいわ」

カトレア「ともかく、私たちにできるのはこうして待つことしかできないんだから。じっとしてなさい」


P「そ、そうだな…」

P(なんだか夏葉がふたりいるみたいだ…何故かツンケンされてる気がするけど…)

P(…しかし、こうして見てみると、カトレア(?)かなりの美人だな…確かに犬の時も美人だったけど)

P(スタイルも良くて夏葉の服もバッチリ着こなしている。プロンド髪もサラサラしていて綺麗だ。夏葉がトリートメントしてたからかな?)ジー

カトレア「…あの」

P「うん?」

カトレア「いやらしい目で見ないでくれる?」


夏葉「プロデューサー?」ギロ

P「なっ、誤解だって!」

カトレア「いいえ。私、そういうのには敏感なの。私の胸を見てた。元は犬だっていうのに、いやらしい…」

夏葉「プロデューサー…」

P「だから違うって!」

「おーーい! 夏葉さーーん!!」

夏葉「あ、来たようね! 聖來ーー!!」


P「聖來?」

カトレア「あ、わんこくんだ! おーーい!」ブンブン

聖來「……ごっめーーーーん!!!!!」

P・夏葉・カトレア「!」ビクッ

聖來「えっと、何から話したらいいのかな、んっとね、えっと……あ、頭おかしくなったと思わないでね!?」

「せ、聖來さん、落ち着いて…」

「ワンだふるな出来事ですから無理はないですけどね。ふふっ♪」

「か、楓さん…」


夏葉「大丈夫よ聖來、落ち着いて話してちょうだい」

P「えっと、夏葉、この方たちは…」

夏葉「ああ、紹介がまだだったわね。こちら、水木聖來さん。そしてこの子は愛犬のわんこ」

わんこ「ワンっ!」

P「おお、こっちもゴールデンレトリーバーだ」

夏葉「そうなの! 最近あまり見なくなったでしょう? 同じレトリーバー飼い同士仲良くなったの。それに彼女もアイドルなのよ? 昨日も夕方一緒に散歩したわ」

P「……ああ! 確かこの前番組であさひと共演してた!」


聖來「えっと、はい。この前芹沢さんと共演させていただきました、〇〇プロの水木聖來です。えっと、夏葉さん、この人は……ま、まさか、カレシー」

夏葉「違うわ。私のプロデューサーよ」

P「どうも。283プロの夏葉担当のプロデューサーです。水木さん、そちらのおふたりは…」

「あ、申し遅れましたー」

肇「ー私、聖來さんと同じ事務所の藤原肇と申します」


夏葉「……あら? アナタ確か、この前『マツコの知らない世界』に出ていたー」

肇「はいっ! 陶芸の魅力をお伝えさせていただきました! 藤原肇です!」

夏葉「やっぱりそうよね!? 知ってる? プロデューサー! 備前焼ってすごいのよ!」

肇「そうなんです! すごいんです!」

夏葉「割れにくいの」

肇「ちょっとやそっとでは壊れません! すごいんです!」

夏葉「ね」

肇「はいっ」


P「あれ、そういえばあなたは…」

「あ、私ですか?」

楓「はじめまして。この前『VS嵐』で新垣結衣さんと共演した高ガッキー楓です♪」

夏葉「アナタも知ってるわ! 知ってる? 楓さん、とっても歌が上手いの! すごいのよ!」

楓「えっへん♪」

P「…ですよね? 水木さんに藤原さんに、高垣さん。3人とカトレアが人間の姿になったことに一体なんの関係が」

聖來「ああ、えっと、それなんですけど……あれ、わんこ?」

楓「あら、あっちに」

夏葉「え?」クルッ


カトレア「ーそう、聖來さんにも気になる人が…」

わんこ「ワンッ!」

カトレア「ふふ、わんこくんも気に入ってるのね。きっと素敵な方なんでしょう。こっちは…」

わんこ「ワン?」

カトレア「ああ、ごめんなさい。何でもないわ」


肇「…えっと、世間話をしているみたいですね」

楓「猫ちゃんの言葉なら多少わかりますけど、ワンちゃんのはわかりませんねえ」

P「えっと…?」

聖來「あの、どこから説明したらいいのか……プロデューサーさん、夏葉さん、一ノ瀬志希ちゃんってご存知ですか?」

P「え?」

夏葉「面識はないけれど知っているわ。ケミカルアイドル…だったかしら」

聖來「そう、その子。カトレアちゃんがあの姿になったのは……志希ちゃんが原因なんです」

P「と言うと?」


聖來「志希ちゃんがわんことカトレアちゃんを間違えて薬を飲ませちゃってこんなことに…」

P「そうじゃなくて。え、化学で犬を人間の姿に変えるとかできるんですか?」

聖來「志希ちゃんなので…」

肇「そうですね…」

楓「志希ちゃんですから」

P「全く説明になってない気が…」

聖來「ああっ、やっぱり他事務所の人に伝えるのは難しい…!」


夏葉「…とにかく、一ノ瀬さんがカトレアに何をしたのか聞かせてもらおうかしら」

聖來「あ、えっと、アタシが悪いんです。「人間になったわんことお喋りしてみたいな」なんて冗談半分で言ったら志希ちゃん、本当に犬を人間にする薬作っちゃって。で、昨日、アタシを驚かそうと思ってこっそりわんこに飲ませようとしたらカトレアちゃんと間違えちゃったみたいで…」

夏葉「……なるほど。信じられないような話だけど、状況が状況だもの。信じるしかないわね。で、一ノ瀬さんは今どこに?」

聖來「志希ちゃんのプロデューサーさんにマストレさん…えっと、すごいキツい特訓で有名な人のところに連行されました…。その代わりに、アタシがこうして」

夏葉「そう…。で、いくつか聞きたいのだけれど、カトレアはいつまであの姿で、副作用とかはないのかしら」


聖來「薬の効き目は飲んでから24時間…だから、今日の夕方18時には元に戻るとのことです。副作用はないと思います。ここにいるふたりもそうだったので」

P「え?」

聖來「あの、この画像を見ていただけますか?」

夏葉「あら。柴犬ね。作務衣なんて着ちゃって可愛いわね」

肇「……えっと、それ、私なんです」

P・夏葉「え?」

聖來「あとこれも…」

P「…オッドアイの猫、ですね。でも、この緑かかった毛色、まさか」


楓「はーい、私でーす♪」

P「ということは、つまり…」

肇・楓「私たち、志希さん(ちゃん)の薬で動物にされたアイドルなんです(でーす♪)」

P(なんで『アメトーーク!』風?)

夏葉「そういうことだったのね…ふたりとも、副作用は?」

肇「特にありません。強いて言えば、ワンちゃんの言葉が何となく理解できるようになったような?」

楓「私も、猫ちゃんの言葉が何となく理解できるようになった気が「ニャーン!」あ、今の鳴き声は「お腹が減った!」らしいです」


夏葉「それって……すごいわね! ということは、カトレアは今以上に私たちの言葉がわかるようになるのかしら?」

聖來「それはわからないですけど…でも、身体に悪い影響は絶対にないです。志希ちゃん、そういうのはしっかりしてますから」

P「……まあ、犬を人間の姿に変えられるような薬を作れるくらいだし」

夏葉「信じる価値はありそうね」

聖來「今度改めて謝らせに来させますから!」

夏葉「そんな、いいのよ。カトレアも楽しそうだし」

聖來「いえ、それとこれとは別ですから! あの子はホントにもう…」

P(お母さんみたいだ)


夏葉「…そう。それなら、今度会わせてもらおうかしら。そしてお礼を言わせてもらうわ。私も「カトレアと話してみたい」ってずっと思ってたしね♪」

聖來「夏葉さん…そう言ってもらえると、少し気持ちが楽になります〜…」

夏葉「ふふ、いいのよ。それなら、そうね。せっかくだしカトレアと私たちふたりで色々と過ごしてみたいと思うわ。これもいい機会だしね」

聖來「…うん。わかった。アタシたちもお仕事があるからそろそろ行くね」

夏葉「ええ、わかったわ」

聖來「わんこー! 行くよー!」


わんこ「ワンっ!」トテトテ

夏葉「カトレアー! 行くわよー!」

カトレア「わんっ! あ……ええ!」トテトテ

肇「わー…近くで見たらものすごい美人さん…」

楓「わんこくんも男の子になったらイケメンさんかもしれませんね」

聖來「まっさかー。もっとこう、少年っぽい感じで…」

カトレア「あ、聖來さん?」

聖來「へ? あ、カトレアちゃん。どうしたの?」


カトレア「…」ズイッ

聖來「わ、本当に美人…じゃなくて、な、何かな?」

カトレア「…わんこくん、言ってましたよ。「早くご主人様のご主人様と〝つがい〟になればいいのに」って」

聖來「それって…え、ええ!? いや、あの人のことは、アタシ…!」

肇「聖來さん?」

楓「行きますよ?」

聖來「うぇ!? あ、うん! わ、わんこ、そんなこと! あ、ヤバ、お仕事! ま。待ってぇー!」


P「……なんだか騒がしい子たちだな」

夏葉「いいじゃない。あれくらい元気な方が年相応で」

P「…勘違いしてるんだろうけど、水木さん、今年で23だからな」

夏葉「……え、ええ!?」

カトレア「どうしたの、夏葉?」

夏葉「わ、私としたことが…人を見かけで……って、今はそれよりも…カトレア」

カトレア「何、夏葉?」

夏葉「アナタが人間の姿でいられるのは、今日の夕方18時…つまり、あと8時間ほどってとこらしいわ」


カトレア「え……そう、なのね。残念」

夏葉「いいえ。私嬉しいわ。カトレアとこうしてお話しするの、ずっと夢だったんだもの」

カトレア「夏葉…」

夏葉「だから、だからね?……今日は3人で、最後までとことん遊びましょう!」

カトレア「え゛っ……この人も?」

P「夏葉、俺はいない方がいいんじゃ…」

夏葉「ダメよ! アナタも一緒! さ、行くわよふたりとも♪」



ーーーーーーーーーーーー


夏葉「ゲームセンターってすごいのよ! いっぱいゲームが遊べるの!」

カトレア「夏葉、ここうるさいわよ…」

夏葉「ふふ、私も最初に来た時はびっくりしたけどじきに慣れるわよ。来て、ふたりとも! 見せたいものがあるの」グイグイ

P「…っと。これは…ぬいぐるみか?」

夏葉「ええ! どう、カトレア。アナタにどことなく似てると思わない?」


カトレア「……私の方が綺麗だもん」

夏葉「…ふふ、そうね。でも、これを見つけてからどうしても欲しくなったのよ。何回挑戦しても取れなくて」

P「ああ、UFOキャッチャーって難しいよなあ。俺も結構な額をつぎ込んで痛い目見たことがあるよ」

夏葉「そうなの! でもカトレアが見ていてくれたら取れる気がするわ!」

カトレア「…いらない」

夏葉「私が欲しいのよ、カトレア」

カトレア「…私はいらないもん」


夏葉「そんな、どうして…」

P「……夏葉」

夏葉「どうかしたの? プロデューサー」

P(ひょっとして、カトレア…)

夏葉(…!…ああ、なるほどね…)

夏葉「…カトレア」

カトレア「…いらないもん」

夏葉「…私、この子の方を可愛がったりしないわ」


カトレア「…!」

夏葉「これはね、アナタに会えない時もアナタのことを思い出したいから欲しいのよ。普段は事務所に置いたり…そうね、ロケや遠出しなくちゃ行けない時、アナタに会いたくても会えないでしょう? その時この子が側にいてくれたらカトレアを思い出して頑張れる気がするの」

カトレア「……私はもっと綺麗よ」

夏葉「ええ、知ってるわ。私が誰よりもね。……ダメ?」

カトレア「…私の代わり、なのよね」

夏葉「ええ。アナタよりぬいぐるみを可愛がったりしないわ。取っても、いいかしら?」

カトレア「……」コクン

夏葉「! ありがとう、カトレア…見ていてね、アナタにいいところを見せるから!」



ーーーーーーーーーーーー


夏葉「〜♪」

P「よかったな夏葉、無事にお迎えできて」

夏葉「ええ! 可愛いわ…♪」

カトレア「…」

夏葉「…くすっ、でも、本物のカトレアには敵わないわね!」ナデナデ

カトレア「! …そ、そうよ! ふふっ♪」


P(なんだか、姉妹みたいで可愛いなあ)

夏葉「プロデューサーもありがとう。アナタが見ていてくれたのも大きかったわ」

P「え、俺? 見てただけだぞ」

夏葉「ふふ、それでもいいの。アナタが見ていてくれるっていうのが私の力になるんだから…」

カトレア「…」ジー

P(視線を感じる…)


夏葉「…さてと。カトレア、どこか行きたい場所はある? せっかくだもの。普段行けない場所に行ってみましょうよ!」

カトレア「……それなら」

夏葉「ええ」

カトレア「…私の知らない夏葉がいるところ、見てみたい」

夏葉「カトレア……わかったわ! それならまず、近いのは…私の通う大学からかしらね」

カトレア「だいがく…?」

夏葉「ほら、たまに話してるでしょう? 学校のことよ」

カトレア「! 見てみたい! 見てみたいわ!」

夏葉「ふふ、わかったわ! それじゃあ、有栖川夏葉を巡るツアーに出発ね!」



ーーーーーーーーーーーー


夏葉「ーそしてここがツアーの最終目的地、この前カトレアに見せた映像で私たちがライブをしていた会場よ!」

カトレア「わぁ…! 大きいわ!」

夏葉「ふふ、ここわね? 一度に1万人もの人が入るのよ」

カトレア「いちまん…!? えっと…」

P「いっぱい、かな」


カトレア「いっぱい! そう、いっぱいね! みんな、夏葉を見に来てくれたの!?」

夏葉「私だけじゃなく、私たち放課後クライマックスガールズをね。今思い出しても夢みたいだったわ…」

カトレア「…映像で見る夏葉、とっても輝いてたわ。みんな素敵だったけど、間違いなく夏葉がいちばんだったわ!」

夏葉「ふふ、ありがとうカトレア」

カトレア「やっぱり夏葉はすごいわ!」

夏葉「ええ、だけど、私だけじゃここには来れなかったのよ? ユニットのみんなと…プロデューサーのおかげよ」


カトレア「え?」

P「いや、俺なんて大したことしてないよ」

夏葉「またアナタはそう謙遜する。私が認めてるのよ? 素直に認めてほしいわ」

P「そりゃ、俺だって頑張ってるけど結局は夏葉たちの努力と実力があったからだよ。夏葉たちの方がよっぽどすごいって」

夏葉「もう、アナタの方がー」

カトレア「…夏葉」

夏葉「? 何かしら?」


カトレア「今日はこの中に入れないの? 私、夏葉の歌う姿が見たいわ!」

夏葉「それは…ごめんなさい。今日は入れないわ。他のアーティストさんのライブがあるもの」

カトレア「………そう」

夏葉「そういえば、アナタには私の本気の歌声やダンスを見せたことがなかったわね…」

カトレア「……ええ」

P(…)


P「……なあ、ふたりとも」

夏葉・カトレア「何かしら?」

P「ライブ会場並みの大きさは無理だけど、夏葉の本気の歌声もダンスも見れる場所があるぞ?」

カトレア「え…?」

夏葉「そ、そんな場所が…!? 一体どこなの、プロデューサー!」

P「…ふたりとも」



P「ーカラオケって、すごいんだぞ!」




ーーーーーーーーーーーー


ジャーーーン!!


夏葉「はぁ、はぁ……どうかしら、カトレア!」

カトレア「…………ごい」

夏葉「?」

カトレア「すごいわ!!!! 夏葉!!!!」ギュウウウ

夏葉「きゃっ、ふふ、もうっ、カトレアったら…!」ナデナデ


カトレア「さすが、私のご主人様! とっても可愛くて綺麗で格好良かったわ!!」

夏葉「アナタにそう言ってもらえると嬉しいわ!」

カトレア「夏葉! 大好き!!」

夏葉「私もよ、カトレア! …プロデューサー!」

P「ん?」

夏葉「ありがとう、こんないい場所を教えてくれて! カラオケってすごいのね!」

P「え、まさか、カラオケ来たのはじめてか?」


夏葉「ええ! 今度みんなにも教えてあげなくちゃ!」

P「はは…流石というか…」

夏葉「ほら、カトレアもお礼を言いなさい?」

カトレア「む……その……ありがとう、ございます…」

P「いいんだよ。夏葉とカトレアが喜んでくれたら。それにしてもカトレア、コールが上手いなんてすごいじゃないか」

夏葉「いつも私の映像を見てくれてたものね。覚えてくれたのかしら?」

カトレア「…ええ。いつか、こうやってみんなみたいに夏葉を応援してみたかったから」


夏葉「カトレア…♪」ナデナデ

カトレア「…♪」

P「…カトレア」

カトレア「…?」

P「せっかくだから、今度は夏葉と歌ってみたらどうだ?」

夏葉「! それいいわね! カトレアとデュエットできるなんて! どうかしら、カトレア?」

カトレア「私…できるかわからないけど…」


夏葉「下手でもいいのよ。「やってみたい」って気持ちが何よりも大切よ?」

カトレア「…うん。歌ってみたい!」

夏葉「それでこそよ、カトレア!」

P「よっしゃ、コールは任せとけ!」

夏葉「お願いするわ! ……カトレア」ギュ

カトレア「う、うん」

夏葉「緊張しないで、リラックスして……大丈夫。私の口の動きを真似て…」

カトレア「…うん。夏葉と一緒だから大丈夫」

夏葉「…ええ。私がそばにいるから。それじゃあ、行くわよ! 有栖川夏葉と、カトレアでー」



夏葉「『夢咲きAfter school』!」




ーーーーーーーーーーーー


夏葉「楽しかったわね!」

カトレア「うん、すっごく楽しかった!」

夏葉「カトレア、歌上手いじゃない。さすが自慢のカトレアね♪」

カトレア「夏葉がいつも口ずさんでるから、自然と覚えたんだと思うわ」

夏葉「あら…そうなの? ふふ、カトレアはいつも私を見ていてくれるのね」


カトレア「もちろん! だって私の大切なご主人様だもの」

夏葉「ふふ…♪ あ、そうだわ。時間…」

P「…あと2時間と少しってところだな」

夏葉「…そう。さすがにこのまま街中にいるわけにはいかないわよね。かといって部屋に戻るのももったいないし…」

カトレア「…夏葉、私、最後に行きたい場所がある」

夏葉「どこ?」


カトレア「夏葉が前に連れて行ってくれた、あの高台」

夏葉「ああ、あそこね……わかったわ」

カトレア「プロデューサーも、来てくれる?」

P「え…いいのか?」

カトレア「ええ。話したいことがあるの」

P「……わかった」

夏葉「それじゃあ、行きましょうか。こうしてカトレアと過ごせるのもあと少しだもの。時間がもったいないわ! 向かってる途中も、たくさん、たくさん、話しましょう!」



ーーーーーーーーーーーー


夏葉「着いたわ…!」

カトレア「わぁ…!」

P「…へぇ! こんなところがあったんだな。すごいな街が見渡せて…それに夕焼けが綺麗だ」

夏葉「…でも、少し時間がかかってしまったわね。時間まであと…10分と少しといったところかしら」


カトレア「…」

P「…」

カトレア「…夏葉」

夏葉「…何かしら」

カトレア「少しだけ、プロデューサーとふたりにしてくれないかしら」

夏葉「……ええ。わかったわ。飲み物でも買ってくるわね」

カトレア「…ありがとう」


P「…」

カトレア「…アナタは」

P「…?」

カトレア「夏葉のことを、どう思ってるの?」

P「どうって……それは…大切なアイドルだよ」

カトレア「それだけ?」

P「……ああ」

カトレア「ごまかさないで。ウソの匂い、わかるんだから」


P「…………それだけじゃ、ない」

カトレア「…」

P「俺は…ひとりの女性として、有栖川夏葉が好きだ」

カトレア「……そう」

P「怒らないのか?」

カトレア「怒る? アナタが夏葉を好きになるのはアナタの自由でしょう。私は犬だもの。アナタの立場がどうとかはよくわからないわ」


P「そうか…」

カトレア「…ねえ、アナタ、夏葉のどこが好きなの?」

P「……そうだな。あの明るいところとか、誰よりも努力家なところとか、意外とすぐムキになって子どもっぽいところとか、それでいて繊細なのに心配かけまいと隠そうとするところとか…」

カトレア「……ふふ。よく見てるのね」

P「カトレアよりはずっと短い時間だけど、俺なりに夏葉に真剣に向き合ってきたつもりだから」

カトレア「じゃあ、もうひとつ聞かせて」

P「ああ、何だ?」


カトレア「自分を夏葉に相応しい男だと思う?」

P「それは……正直、思えない。男として以前に、プロデューサーとしてもまだまだだ」

カトレア「…」

P「だからこそ、もっと頑張らないといけないと思ってる。夏葉をリードすることはできないかもしれないけど、夏葉の背中は遠いけど…いつか、夏葉が辛い時は夏葉の背中を押してやれる存在になりたい。夏葉と共に人生を歩むパートナーになりたい。そう思ってるよ。……ここだけの話、カトレアが少し羨ましいよ」

カトレア「…そう」

P「…まあ、夏葉には俺よりも相応しい男がいるだろうし……でも、これからもプロデューサーとして彼女を見守り続けたいな」


カトレア「……わかったわ。…夏葉!」

夏葉「……もうそっちに行ってもいい?」

カトレア「ええ。来て欲しいわ」

夏葉「わかったわ……もう、日が沈むわね」

P「そうだな…」

カトレア「……ふたりに、聞いて欲しいことがあるの」

P「…うん」

夏葉「…ええ」


カトレア「私は、生まれてからずっと夏葉と一緒だったわ。どんな時も、夏葉のそばにいたのは私だった」

カトレア「あれは…数年前かしら。誰よりも努力家なのに自分の進む道がわからずぼんやりと物思いにふける夏葉の背中を覚えてる。だから、夏葉がアイドルというものに出会って、毎日目を輝かせて私に今日あったことを語りかけてくれたのが本当に嬉しかった…」

カトレア「……でも同時に。少し、寂しかった。それは……プロデューサー、アナタが夏葉のそばにいると知ったから」

P「…」

夏葉「…」


カトレア「…アナタにはじめて会った時、悔しかった。「なんで犬の私よりも夏葉のそばにいて夏葉に声をかけて、支えてあげて、私のしてあげたいことみんなできるのに、そんな風に自分が夏葉に相応しくないみたいな顔をしているの?」って」

カトレア「ーそれなら、私が変わってあげたいと何度も思った。夏葉がどうしてこの人を選んだのか、ずっとわからなかった。この人に夏葉を任せていいと思えなかった。私がなかなかアナタに懐かなかったのもそれが理由。……でも今日、ほんの少しだけ夏葉の気持ち、わかった気がする。この人を信じたいと思った気持ちが」

夏葉「カトレア…」

カトレア「……どこが、なんて教えてあげない。それは自分で考えなさい。夏葉に相応しくないと思うのなら、もっともっと努力して」


P「! …ああ」

カトレア「…私、夏葉のことが好きよ。出会った時から、ずっとずっと。これからも一緒よ」

夏葉「ええ。私も大好きよ、カトレア…」

カトレア「……でも、私は犬だから。夏葉と一緒にいられる時間だってもうそんなに長くないかもしれないの知ってるわ。夏葉がアイドルとしてもっと高みに行ったり…さらにその先の未来で誰かと〝つがい〟になって子を授かって…そんな光景を私はもしかしたら見れないかもしれない。その時私はもう…」


夏葉「…」

カトレア「……プロデューサー」

P「…何だ?」

カトレア「アナタ、名前は?」

P「ー…だ」

カトレア「そう。いい名前ね……ーさん。約束して。……この先、どんな未来になっても…夏葉のそばにいて。ずっと。ずっとよ。それが、悔しいけど私にはできない、アナタにしかできないこと。そして…アナタだからできることなんだから」


P「……ああ。任せとけ」

カトレア「…うん。そう言ってくれると思った。夏葉に置いてかれないようにしてね。私のご主人様はすごいんだから!」

P「ああ…!」

カトレア「夏葉」

夏葉「…なあに?」

カトレア「私、元の姿に戻ったらできることは少ないわ。夏葉が嬉しい時、悲しい時。そばにいることしかできないの。それも、あの私たちの部屋の中だけ。それでも…今までと変わらず、私を愛して欲しいわ。私を、私と過ごした全ての時間を、いつでも、いつまでも、忘れないで欲しいわ」


夏葉「…バカね。今まで私がアナタにどんなに救われたか知らないの? …アナタもすごいのよ、カトレア。アナタを片時も忘れたことはないし、一生忘れられないわ。私の親友だもの」

カトレア「……ありがとう。……うん、これで言いたいことは全部言えた。満足! 言える時に言いたいことは言わないとね、ふたりとも!」

P「…ああ! そうだな」

夏葉「…今日は楽しかったわ、カトレア。アナタとこうして話せて、幸せだった」

P「俺もだ。今日のこと、ずっと忘れない」


カトレア「…くすっ。もう、まるで私がいなくなるみたいじゃない。まだまだ生きるわよ私は! 夏葉と思い出、まだまだ作るんだから! 今、この一瞬を大事にね!」

夏葉「…ふふ。そう…そうよね! 犬に戻ってもアナタと私はふたりでひとつよ! ずっと、ずっとよ!」

カトレア「ええ! ……ーさんも、今まで以上に頑張って夏葉をよろしくね。夏葉に相応しくないと思ったら噛みついちゃうんだから♪」

P「はは、そうならないように頑張るよ」

カトレア「ふふ♪ ……さてと、もう時間かしら?」

夏葉「18時まで…あと1分ね」


カトレア「…そう。それなら最後まで夕日を見てようかな。……私の人生できっと今日がいちばんの思い出よ」

P「カトレア…」

夏葉「…」

カトレア「…あ! そうだわ! 最後にひとつ、今しかできないお願い!」

P「何だ?」

夏葉「何?」



カトレア「写真を撮りたいわ! 3人で!」




ーーーーーーーーーーーー


夏葉「ーで、その時に撮った写真がこれよ!」

聖來「わぁ…! いい写真ですね! カトレアちゃん、本当に美人…」

夏葉「ありがとう。ふふ、ところでアナタの方が年上なのだから丁寧語じゃなくていいのよ? 私こそ、今まで呼び捨てにしてしまっていて…」

聖來「え? ああ全然いいんで……いいよ。アタシ、年より幼く見えるらしいし。夏葉さん、年下とは思えないくらいにしっかりしてるし」


夏葉「それなら…今まで通り聖來と呼んでいいのかしら」

聖來「うん! アタシは…じゃあ、もっとフランクに接しさせてもらうね。あ、あと志希ちゃんから伝言」

夏葉「あら、何かしら?」

聖來「「ごめんね〜でも、またカトレアちゃんと話したくなったら薬あげるからね〜」だって。あはは…ごめんね? 本人的には反省してるつもりなんだろうけど…多分。本当は今日来る予定だったんだけどまたマストレさん送りになっちゃったらしくて……今度は何したんだか」

夏葉「…ふふ。面白い子なのね」

聖來「面白い…うん、まあ、そうかな…? 巻き込まれるこっちは大変だけどね」


夏葉「…魅力的なお誘いだし、またあのカトレアの姿を見たい気持ちはあるけれど…やめておくわ」

聖來「まあ、そうだよね。怪しい薬なのは変わりないし」

夏葉「それもあるけれど…それよりも、もう私にはあの薬が必要ないって理由が大きいわ。思わぬ副作用もあったしね」

聖來「? どういうこと?」

夏葉「あれ以降、前よりもカトレアの言いたいことがわかるようになったのよ」

聖來「ええ、すごい!」


夏葉「ふふ、すごいのよ! ……結局は、相手の目を見て、声に耳を傾けて…それがシンプルだけど最大のコミュニーケーションなのね」

聖來「…相手の目を見て、声に耳を傾ける、かあ…」

夏葉「それともうひとつ、最高に幸せな副作用もあったしね」

聖來「ま、まだあるの!?」

夏葉「ええ。カトレアに教えてもらったのよ。「言いたいことは、言える時に言ってしまわないと」ってね。永遠なんてないんだもの。今この瞬間にできること、やれることを最高に楽しまないとね!」

聖來「……なんか、カッコいいなあ夏葉さん。それで、言いたいことって?」


夏葉「…………………ができたわ」

聖來「え? 何?」

夏葉「…………………恋人が、できたわ」

聖來「え、ええ!? それって、まさかこの前会ったプロー」

夏葉「どうかしらね! さて、私はもう行くわ!」

聖來「え、あ、ちょっと!」


夏葉「…ああ、そうだ。カトレアから聞いたわよ?」

聖來「な、何を…?」

夏葉「アナタも想いを伝えたい相手がいるのなら、勇気を出して言うべきよ。今は永遠じゃないんだからね。それじゃあ♪」

聖來「え、それってまさか、アタシの…! ちょ、ちょっと夏葉さん! 待ってぇーー!!」



【その後の話 その1】



カトレア「ワンッ!」

P「おお、カトレア。よしよし」

カトレア「…」ジー

夏葉「あら、今日はカトレアがあまり懐かないのね」

P「俺、何かしたかな…?」

夏葉「さあ…?」

カトレア「…」ジー


夏葉「あら、何かしらカトレア」

カトレア「ワンワンッ!」

夏葉「……………………え」

P「夏葉、なんだって?」

夏葉「……その、「最近ふたりで寝室に行くと夏葉のうめき声が漏れてるけど、一体何をしてるの」って……」

カトレア「…」ジー

P「…………………………」

夏葉「…………………………えっと」


P「……………………こ、交尾……?」

カトレア「〜〜!!」バシッ!! バシッ!!

P「痛い!!!!」



【その後の話 その2】



聖來(相手の目を見て、声に耳を傾ける、かあ…)

聖來(わんこと長いこと一緒にいるけど、アタシ、そこまで心を通わせられたかな…)

聖來「……まあ、考えても仕方ないよね! 今日からわんこと今まで以上に向き合おう!」



ガチャ


聖來「お疲れ様さまでーす!」

楓「あ」

肇「せ、聖來さん…」

聖來「んー? どうしたの? わんこは?」

肇「それが…」

聖來「あー! 何この子、可愛いー!」

肇「えっと…」


聖來「ねえねえ、この子誰かの弟さん、それとも親戚? あ、それとも誰かのお子さんかな? 可愛い〜!」ツンツン

楓「寝顔が可愛いですよね…ワンだふるです」

肇「か、楓さん…」

「……んぅ?」パチ

聖來「あ、起こしちゃったかな? ごめんね、アタシはっ……!?」ドサッ

わんこ(?)「ご主人様! お帰りなさい!!」ギュウウウ



聖來「…………………………へ?」



夏葉とお付き合いするにはやっぱりカトレアのお許しがでないとなんじゃないかなあと思います。
夏葉とカトレア、聖來さんとわんこの関係性とはまた違って素敵ですよね。


先週書いた夏葉の話もよろしくです!

【最上最愛カップルの1日】有栖川夏葉
【最上最愛カップルの1日】有栖川夏葉 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1561710910/)

それでは、またの機会に。




さぁ、次はわんこの話を書くのです


もしくはみりあちゃんを猫にして一緒にお風呂へ入るお話を……ふひひ★

乙!!

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