優花里「台風ですか!?」 (45)
9月某日…台風の日。
優花里「ちょっと倉庫の様子を見てきます!」
みほ「大変!!優花里さんが行方不明になっちゃった!」
華「生徒会にも職員室にも電話が繋がりません!」
麻子「携帯もここに置きっ放しらしい」
沙織「どうするの!?外すっごい雨と風だよ!?」
みほ「探しに行こう!!このままじゃ優花里さんがっ…」
麻子「西住さんまで行方不明になるぞ」
沙織「そうだよみぽりん!危ないって!」
華「気持ちは分かりますが今はダメです!」
みほ「こうして優花里さんのいない日常が始まったのでした…」
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翌日のこと。
沙織「私と華は学校の方を見に行くね!」
みほ「私と麻子さんは少し離れた道沿いを見に行くよ!」
華「まだ雨も降っていますし昨日の今日であぜ道などはとても不安定です。くれぐれも無理な行動は慎んで捜索しましょう!」
麻子「私たちまで行方不明になったら元も子もないからな」
みほ「うん」
みほ「それじゃあ皆さん、優花里さんの捜索に…」
4人「「「「パンツァーフォー!!!!」」」」
みほ「優花里さーーーん!!!」
沙織「ゆかりーーーん!!どこーー!!」
みほ「…!!見て麻子さん!!」
麻子「!ああ、こんなになってたなんて…!」
みほ「川の水が増水してる!!」ドドドド
麻子「昨日西住さんの家に避難してて良かった…もしかしたら氾濫してウチに浸水していたかも…」ドドドド
みほ「……ハッ。優花里さんまさか…!!」
みほ「川を辿ってみましょう!!」
麻子「ああっ」
沙織「昨日ゆかりん倉庫の様子見てくるって言ってたよね」
華「ええ、間違いありません」
沙織「だったら戦車倉庫で隠れてるかも…!」
華「今日は休校ですが、誰か先生がいらっしゃるかもしれません。まずは校舎に行きましょう」
沙織「うん、ゆかりんのことも聞き込みしてみよう!」
みほ「はぁっはぁっ」
麻子「ふぅ…ふぅ…」
麻子(…西住さんの足が速い…。これじゃあ見つけ出す前にバテるぞ…)
みほ「優花里さーーーーん!!」
麻子「はぁっはぁっ。西住さん、川沿いにそれらしい人影がないかよく見てから先に進んだ方が良い」
みほ「ま、麻子さん!人影って…へ、変なこと言わないで…!きっと優花里さん大丈夫だよ……」
麻子「……」
みほ「う、ううんそうだよね。ちゃんと探さないと……」
麻子「落ち着いて探すんだ。秋山さんもきっと助けを待ってるだろう」
みほ「……そうだね…」
沙織「鍵あったよ!!」
華「これで倉庫に入れますね!」
沙織「うん!」
華「あ…でも……」
沙織「?どうしたの?」
華「あぁ、いえ…」
華(戦車倉庫の鍵が校舎にあるということは優花里さんは倉庫には来ていない…?)
華(いいえ、一通りチェックし終えて帰路に着いたのかも……)
華(ですがあの優花里さんに限ってそんなことするでしょうか……。優花里さんならきっと台風が通り過ぎるまで倉庫で戦車と共に夜を明かすのでは…)
華「校舎にはどなたかいらっしゃいましたか?」
沙織「ううん、こんな日に学校に来るのなんて私たちくらいだよ…。この鍵も廊下の開いてる窓から無理やり侵入して取ってきたんだから」
華「優花里さんのようですね」
沙織「ゆかりんもこうやって鍵取ったのかなぁ…」
鍵「カチャリ」
沙織「優花里ーー!!迎えに来たよーーー!!!」キィイイ
華「優花里さーーーん。美味しいご飯ですよーーー」
沙織「そんなんで出てくる?」
華「私なら喜んで出てきますが…」
沙織「華だけだよ…こんな時にご飯で出てくるの…」
沙織「優花里ーーー!!ゆかり~~~ん!!!」
華「優花里さーーーん!!秋山優花里さーーん!!!」
沙織「……」
華「……」
沙織「返事ないね…」
華「ですね…」
沙織「戦車一個一個見てみよ!!疲れて寝ちゃってるのかも!!」
華「はい!!」
みほ「結局学校までの小さな川や、空き地にはいなかった…」
麻子「ふぅ…ふぅ…。公園に避難している、ということも無さそうだったな…」
みほ「これで一通り学校までに通りそうなところは見て回ったし……」
みほ「…いったいどこにいるの…優花里さん……」
サァァァァァァアア…
麻子(小雨が…)
みほ「……」グッ
麻子「?」
みほ「私、ちょっと山の方見てきます」
麻子「え?」
麻子「何言ってるんだ。危ないぞ。一度沙織たちと合流して状況を確認するべきだ」
みほ「でも…」
麻子「それに山は学校とは方角が違うし秋山さんに行く理由がないだろ」
みほ「……」
みほ「でもやっぱり、気になるの!」
みほ「もしかしたら隠れ家があって避難してるかもしれない…そのまま遭難して…一人で凍えて…助けを待ってるかもしれない!」
みほ「私もう見捨てるのは……!」
麻子「西住さん…」
みほ「麻子さんは沙織さんたちと合流して、学校で待ってて!私一人で行ってくるから!!」
麻子「!?待て!ダメだ行っちゃ!!何が起こるか…!西住さん!!」
みほ「っ!!」ダッ!
麻子「西住さん!!ダメだ!!秋山さんの二の舞になるぞ!!」ダッ!!
みほ「優花里さん待ってて…!今行くから!!」
麻子「冷静になれ西住さん…っ!!」
麻子「待つんだ!!」ダッ
みほ(優花里さん!!)タタタタ
麻子「秋山さんなら山に近寄るのが危険なことくらい分かるはずだろ!!はぁっはぁっ!」ダッダッダッ
みほ「でも優花里さんスパイでもなんでも出来るから、行動範囲も広いはず!!」タタタタ
麻子「はぁはぁ!」
麻子(早すぎて追いつけない!!)
麻子「ムチャクチャだ…!!西住さん!!!待て!!一人で行くな!!!」
麻子「自分が死ぬことになるぞ!!!」
麻子「西住さーーーん!!!」
みほ「―――」ダッダッダッダ
麻子「はぁっはぁっ……、はぁっはぁっ……」
麻子「………ふぅっ…!………ふぅっ…!」
麻子「……」はぁっはぁっ…
麻子「くそっ!!」バシャッ!!
沙織「どの戦車にもいない…」
華「どこに行ったのでしょうか…優花里さん」
沙織「もぉぉぉ~~!どこにいるのよー!!ゆかりんのバカァ!!!」
沙織「みんな心配してるんだからぁ~!!」
華「倉庫にいないとなると…校舎の方でしょうか…」
沙織「うぅぅ…あんまりやたらめったら探索しないで欲しいよね!台風だからって!」
華「いつかの台風戦車を思い出しますね」
沙織「あぁぁぁん校舎にもいないよぉぉぉ…!」
華「私たちの教室にもいませんでしたね……」
沙織「さすがにもう疲れたよぉぉ。ちょっと渡り廊下でいいから休も~」
華「そうですね。お腹も空きました…」
沙織「コロッケ食べたいなぁ」
ザァァァァ…
華「……あら?」
沙織「?ゆかりんいた?」
華「いえ」
麻子「はぁ…はぁ…」
沙織「麻子!?」
沙織「どったの!?そんな肩で息して」
華「もしや優花里さんが見つかったのですか!?」
麻子「……ふぅっふぅ…」フルフル
沙織「じゃあなんで……」
沙織「あれ?」
沙織「みぽりんは?」
沙織「一緒に探してたよね」
この作者さん久しぶり
乙です おかえりなさい
>>14
お久しぶりです!
ガルパンはずっと追いかけてて最終章2話も見ました
再開します
みほ「はぁはぁ…!」
みほ「この山、最初にみんなで戦車を探しにきたとこ…!はぁはぁ」
優花里『パンツァーフォー!!』
沙織『パンツのあほぅ!?』
みほ「ふふ…、懐かしいな」
みほ「大丈夫。きっとまた会えるよ。きっと!」
みほ「すぅぅぅぅ」
みほ「優花里さーーーん!!!」
みほ「優花里さーーーーーん!!!いたら返事してぇぇぇ!!!」
みほ「はぁはぁ…」
みほ「優花里さーーーーん!!!」
みほ「…………」
みほ「もう少し、奥の方まで…雨風を凌げるところまで進んだのかも…はぁはぁ…」
みほ「待っててね優花里さん…!」ガサガサ
みほ「いない…いない…いないよぉ…」
みほ(麓の方にはいなかった…だとすると上?)はぁはぁ…
みほ「っ…とと」ふら…
みほ「………大丈夫」
みほ「フゥーーー」
みほ「まだ上の方は見てないから…きっとそこに」
みほ「頑張れ私……!や~ってやーるーや~ってやーるー」
みほ(地面がぬかるんでて、足がとられる…)
みほ「や~ぁぁってやーる…きゃあっ!!」ズリィ!!
みほ「……っ!」
みほ「あ、危なかった…とっさに木の枝掴めて…転けるところだった……」
みほ「結構急斜面になってたんだここ…気を付けないと」メキッ…
みほ「!?」パキパキ…
みほ(枝が!)
みほ「し、しまっ」ズザァァァァ
みほ(滑り落ちる!?)ザァァァァ!!
みほ(な、なにか掴んで!!)ザァァァァ!!!
みほ「いたっ!痛い!」パキッガサッ!ズザァァ!!
みほ「!!!」
みほ「崖がっ……!!!!」ズザァァァァ!!!
沙織「それじゃあみぽりんは…!」
麻子「はぁはぁ…一人で……はぁはぁ…山に…」
華「そん、な……」
沙織「どうして止めなかったのさ!!このままじゃみぽりんまで行方不明だよ!!」
麻子「止めたさ!!」
沙織「!!」
麻子「はぁはぁ」グッ
麻子「…止めたし追いかけた…だが私の言葉なんてまるで耳に届いてなかった…」
沙織「……」
麻子「西住さんには過去のことがある…。きっと同じ轍は踏むまいと、頭がいっぱいになってしまったんだ…」
沙織「探しに行こう!!みんなで探せばきっとみぽりんもゆかりんも見つかるよ!!!」
沙織「そうだよ!みんな合羽だし三人いれば山くらい…!」
華「落ち着いてください!沙織さん!」
華「台風が過ぎたとはいえこの雨の中山に入るのは危険すぎます」
華「冷泉さんの言う通り、きっとみほさんも優花里さんのことで冷静な判断が出来なくなってしまったのでしょう」
沙織「……でも…」
華「せめて雨が上がるまで、近付いてはいけません…最悪土砂崩れも起こり得る恐れがあります」
沙織「……」
麻子「……。五十鈴さんが冷静で助かった」
麻子「……それで、そっちはどうだったんだ?秋山さんは昨日倉庫の様子を見ると言って出ていったはずだ」
華「こちらにはどこにもいませんでした…」
麻子「倉庫の中もか?」
沙織「鍵借りて倉庫の戦車全部見たけどどこにもいなかったよ…。校舎も教室も見たのに。ここに辿り着くまでに何かあったとしか思えないよ…」
麻子「私の家の前の小川はさっき見て氾濫寸前だった」
麻子「人の姿は見えなかったがもしかすると飲み込まれて川下の方まで……」
沙織「……」
華「……」
ザァァァァァ……
華「雨も強くなってきましたし、このまま捜索を続けるのは危険ですね…。我々も一度休憩しませんか?」
沙織「一旦みぽりんの部屋に戻ろっか…。待ってれば…ひょっとしたらみぽりん秋山さん連れて戻ってくるかも!!」
麻子「…賛成だ。それに正直もうヘトヘトだ…」
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みほの自室。
華「みんなで台風の前日に買っておいた非常食、残り少なくなってきましたね…」
沙織「ごめんね華。本当はもっと食べたいよね」
華「いいえ、こんな時に贅沢言えませんわ」
冷泉「もうすぐ夕方か……西住さん、戻ってこないな……」
沙織「……」
冷泉「なんであの時…もっと……!」ギュゥゥゥウ…!
沙織「だ、大丈夫だよ麻子!自分を責めないでよ!私も麻子の事考えずに責めちゃって反省してるよ……ごめん」
沙織「……みぽりん、あれだけ砲弾避けてるんだもん!絶対大丈夫だから!!」
華「砲弾は関係ないのでは……」
沙織「……」
華「……」
麻子「……」
麻子「そうだ、地図あるか?」
沙織「?ないけど」
麻子「無かったら描けば良い。探したところをマークしよう」
華「あ、それなら通って危険そうな場所も記しましょう」
沙織「なるほど!!じゃあまずこの部屋から出て…」
華「学校はこの辺でしょうか」
麻子「とすると私の家はこの辺りだ」
沙織「じゃあ小川はこんな感じ?」
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みほ「………」
みほ「うっ………」ヨロ…
みほ「いっ…!」
みほ「脚が……」
みほ「っ……」クイックイッ
みほ「良かった。ちゃんと動く…いっつ…!!ちょっとくじいちゃったかも…?」ズキズキ
みほ「腕…手…なんとか大丈夫そう……うん。使える」
みほ「私いったいどこから……」
みほ「嘘…あんなに高いところ…」
ザァァァァァ……
みほ「雨が強くなってきた」
ゴォォォォオ…!!
みほ「…大きな川の音…雨で増水してるんだ」
みほ「……」
みほ『大丈夫今助けるから…!』
みほ『赤星さん…!!無事で良かった!!』
みほ『ロープありますか!?』
杏『見事なジャンプだねぇ』
赤星『みほさんが戦車道を続けていて良かった…』
梓『西住隊長、ありがとうございますっ!』
『『ありがとうございます!!』』
みほ「…大丈夫。大丈夫だよ…優花里さんも絶対助けるから…見捨てたりしないから……」
みほ「……っ」ポロ…
みほ「!……」ポロポロ…
みほ「私泣いて……」
みほ「……」
みほ「違う…」はぁ…はぁ…
みほ「…赤い……」
みほ「血だ」
みほ(頭打ったんだ…どうしよう…血が……)ポタポタ
みほ(崖下の……嘘…)はぁはぁ
みほ(あんな大きな岩……私…当たって)はぁはぁ
みほ「はぁ…はぁ……いっ」ズキッ
みほ「はぁ…!はぁ…!」ズキズキ
みほ「痛い…!血が……!!」ズキズキ
ゴォォォォオッ!!!
みほ「っ!!」
みほ(川が氾濫したら水が来るかも!?……逃げなきゃ!!)
みほ「痛いっ!」
みほ(!!足が動かない…そうだ、くじいてるんだった!!は、這いつくばって……)ポタポタッ…
みほ(い、いやその前に血を止めないと…!!)ズキズキ…
麻子『西住さん!!ダメだ!!秋山さんの二の舞になるぞ!!!』
みほ(どうしよう…!!どうしよう!!!!)ドキドキ
ふらふら…
みほ「私はただ優花里さんを…」
みほ「うっ……」グス
みほ「うぅゥゥゥゥ……!!」ポロポロポロ…
麻子「こことこの空き地は見た。それと、この道沿いもだ」キュッ
華「私たちも学校に辿り着く道すがらここと、この道を通りました」キュッキュッ
沙織「じゃあ、あと見てないところは……ここらへんだね!」
麻子「ちなみに風は西から吹いていた」
華「でしたら…こっちから東へこういうふうに…」
華「……」
麻子「……」
沙織「明日は山の方も…」
ドア「ガチャン!!!」
沙織、華、麻子「「「!!!?」」」
みほ「…みんな……」
沙織「みぽりん!!」
華「みほさん…!!そんな…」
麻子「酷い怪我だ…!早く中に!」
みほ「みんな…ごめん…ごめん…私」
沙織「…?……」
みほ「優花里さん見つけられなかったよ……」ポロッ…
みほ「ごめん…、ごめんねぇぇぇぇ…!!」ポロポロ…
麻子「西住さん…」
沙織「…みぽりん……」
華「…大丈夫ですよ…大丈夫。責める人なんていません」
華「おかえりなさい…」
みほ「うわあぁぁあああ!!!」ポロポロ…!
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結局、優花里さんが見つかることはありませんでした。
1ヶ月後、現在。
みほ「撃て!!」ドーン!!
亜美「三号突撃砲、撃破!」
みほ「次!!撃て!!!」ドーン!!
亜美「M3リー、撃破!」
みほ「ふぅ、お疲れ様!装填早くて助かったよ優花里さ…」
沙織「あ…」
華「みほさん…」
みほ「ぁ……、ぁあ、ごめん今は沙織さんが装填してくれてるんだったよね 」
みほ「…沙織さんスゴイよ!元々通信手なのにしっかり装填してくれて。本当に助かるよ」
沙織「みぽりん…」
麻子「……もう1ヶ月か…」
みほ「1ヶ月…?そう、だよね…もう…なんだよね。……もう、あれから1ヶ月…」
みほ「……でも私未だにどうしたらいいか…」
みほ「もう優花里さんはいないって分かってるのに、何度も泣いたのに…」
みほ「忘れた方がいいのかもって思ったこともあった。慣れて前に進まなきゃって」
みほ「でもそんなの私には無理だよ…ずっと一緒に過ごしてきた仲間なのに…」
沙織「そんなの、私たちだって…」
華「私今でも、優花里さんの声がたまに聞こえてくるような気がします…」
優花里『西住殿~っ!』
華「……」
みほ「優花里さん…」
麻子「……放課後ケーキ食べに行くか」
沙織「っ賛成!!」
沙織「クヨクヨしてたって状況は変わらないんだし!!だったらゆかりんに代わって戦車に乗ってられるぶん、私たちが元気でいなきゃ!!」
みほ「沙織さん…!」
華「沙織さんの言うとおりですわ。私もケーキに突撃です!」
麻子「ああ。西住さんには私たちが付いている。私たちだって西住さんの仲間だ」
みほ「みんな…」
みほ「………」
みほ「…………………えっ?」
およそ一ヶ月前、どこかの無人島。
優花里「うわぁぁっ!すごいですぅ!!」
ミッコ「だ~~ろぉ?よぉぉし今夜は晩餐だぁっ!!」ドサドサァ!
アキ「すっごーーい!ウニ、アワビ、タコにイカにこれブダイ!?みんな輝いてる~!!」
ミカ「必要以上の贅沢は生き物に失礼というものだよ。食べられる、ただそれだけに感謝すればいいのさ」ポロロン
アキ「とか言って、いっつも一番良いのを取っていくのはどこの誰!?」
優花里「そうですよぉ!ミカ殿ばっかりズルいです!」
ミカ「フフ…君も随分この生活に慣れてきたようだね?」ポロロン
優花里「ハイ!!今はもう石で火をおこすコツも掴めましたし!次は一人で無人島に放り出されても生きていけますぅ!!」
ミッコ「まだまだ!ちゃんと漁もできるようにならなくちゃ!!」
焚き火「パキパキッ」
優花里「風流ですねぇ~。まさか無人島でこんなキャンプができるとは思いませんでした」ムシャムシャ
ミッコ「なぁ!無人島でも何とかなるなる!う~んこのタコうまっ」もちもち
ミカ「見てごらん。火の影がまるで我々を祝福して踊ってるみたいだ……」そ~っ
アキ「こらミカ!こっそりウニくすねようとしないの!食べたいなら今食べようよ!」
優花里「そういえば私たち、今どのあたりの無人島にいるんでしょうねぇ」ムシャムシャ
アキ「う~ん。前居た無人島が北海道のあたりだったんだけど」ムシャリ
アキ「その無人島を出たらまた遭難したんだよね」ムシャムシャ
優花里「私がいた学園艦は太平洋側ですから海流に沿って流されたとしたら東京のあたりなんですかねー?」
ミッコ「案外四国と本州の間だったりして!」
ミカ「他の島が見えないからそれはないんじゃないかな」そ~っ
アキ「にしてもよく無事だったよね。大洗の学園艦から落っこちたんでしょ?」ムシャムシャ
優花里「ええまぁ…」
ミッコ「ええっ。学園艦って海面まで400メートル近くなかったっけ?あつつつ!」
ミカ「大洗の学園艦は海抜およそ440メートルだね」
アキ「どんな受け身とったら無事でいられるの?」
優花里「私普段この特殊カーボン製リュックを背負っているんですけど、ああっ特殊カーボンっていうのはこれ!戦車にも使われてるのと同じ代物で熱や衝撃に強くてしなやかさと強靭さが売りの限定品でですね!今だとプレミアもついていて…」
アキ「リ、リュックは分かったから!」
優花里「!す、すみません!」
ミカ「とても生き生きしているね」
優花里「…その日は大雨でしたし合羽も着込んでいたので落ちるときは落下傘の要領でふわふわしてました」
優花里「海面にぶつかる寸前に背を向けてリュックをクッションにしたのでそれほどダメージも大きくなかったようで…」
優花里「それに波が荒れていたおかげで入射角が滑らかになったのも不幸中の幸いでした」
優花里「まぁ、気は失ってしまったんですけど。ハハ」
優花里「その後は気が付いたらもうこの島に辿り着いていた次第です。体もこれと言った外傷もなくまさに奇跡でした」
アキ「ええ~っ!?普通の女子高生が400メートルの高さから海に落下して生きられるもんなの!??」
ミカ「最初浜辺で君を見つけたとき死体が流れ着いたと思ったよ」
ミッコ「へ~~。秋山さんってたくましいんだなぁ!」ムシャムシャ
アキ「そういうレベルの話じゃないから…」
優花里「あはは、お恥ずかしい限りですぅ」
ミカ「文字通り、風に流されてきたってわけだね」
優花里「上手いこと言いますね~!」
4人「「「「あはははは」」」」
ミカ「今日は美味しかったね」
優花里「ええ!毎日こうなら良いのに」
ミカ「フフ、そうだね。でも…行き過ぎた欲望は時に破滅をもたらすよ」ポロロン
優花里「?」
ミカ「生かすも殺すも自然次第」
ミカ「私たちは自然に生かされているけど、同時に殺されもするのさ」
ミカ「君は今奇跡的にこの場にいるけど、一歩違えば違う未来になっていたかもしれない」
優花里「言われてみれば……」
優花里『台風ですか!?ちょっと倉庫の様子を見てきます!』
ミカ「自然っていうのはね、とても雄大で気ままで誰にでも平等な唯一無二の存在なんだ」
ミカ「美しい姿も、時に荒々しい姿も、みんなで一つの生き物なんだ」
ミカ「だから無理に自然に逆らっちゃいけないよ。風は気まぐれだからね」
優花里「うう…確かに」
優花里「一歩違えば私は…」
優花里「もう二度とあんな無茶はしません。さすがに今回の件は痛いほど身に沁みました」
優花里「それに親も…きっとあんこうチームの皆さんも、心配しているはずですし…」
ミカ「フフ…分かっているなら、次はもっと良い風が吹くだろう」ポロロン
優花里「はい!!」
アキ「………ミカ、毎日ウニとか高級なのばっかり食べてるよね…それは行き過ぎた欲望じゃないの?」
ミカ「お腹がウニを求めているという自然に従っているだけさ」
優花里「……」
ミッコ「ぐがーっ。すぴーっ」
---
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その後数週間が経ち、
焚き火が偶然にも通りかかった客船の目に止まり継続高校の3人並びに優花里さんの4人は無事救出されるのでした。
そして現在。
みほ「忘れた方がいいのかもって思ったこともあった。慣れて前に進まなきゃって」
みほ「でもそんなの私には無理だよ…ずっと一緒に過ごしてきた仲間なのに…」
沙織「そんなの、私たちだって…」
華「私今でも、優花里さんの声がたまに聞こえてくるような気がします…」
優花里「西住殿~っ!」
華「……」
みほ「優花里さん…」
麻子「……放課後ケーキ食べに行くか」
沙織「っ賛成!!」
沙織「クヨクヨしてたって状況は変わらないんだし!!だったらゆかりんに代わって戦車に乗ってられるぶん、私たちが元気でいなきゃ!!」
みほ「沙織さん…!」
華「沙織さんの言うとおりですわ。私もケーキに突撃です!」
麻子「ああ。西住さんには私たちが付いている。私たちだって西住さんの仲間だ」
みほ「みんな…」
みほ「………」
みほ「…………………えっ?」
優花里「西住どの~っ!みなさ~~ん!!」たったったった
みほ「………」
沙織「………」
華「………」
麻子「………」
優花里「ご無沙汰しております!秋山優花里、ただいま帰還しました!!」
みほ「…………………」
沙織「…………………」
華「…………………」
麻子「…………………」
みほ沙織華麻子「「「「えええぇぇぇぇ!!??」」」」
沙織「な、な、なんで!?」
華「ま、まぼろし!?私幻を見ているのでしょうか…?」むにゅっ
麻子「いひゃい。幻じゃない。というか自分の頬をつねってくれ五十鈴さん」
優花里「いや~。台風の日に色々ありまして…」
優花里「戦車の様子を見ようと思って飛び出たあと、ついでに海の様子がどんなものか、いつものベンチスペースまで見に行ったんです。そしたら…」
沙織「……そしたら??」
優花里「風に煽られて海に落ちちゃいましたぁ」テヘヘ
沙織華麻子「「「ええぇぇぇ~~!!?」」」
麻子「まぁ、見晴らしは良いだろうが…」
沙織「いやダメだよ!!危ないよ!!」
華「あ、危ないというかもはや手遅れというか…あ、でも無事ということは手遅れではなかったということ…??」
優花里「いやぁご心配おかけしました」
優花里「でもこうしてまた皆さんにお会いできて良かったですよぉ~」
優花里「艦外に投げ出された時はもうダメかと…」
みほ「……」プルプル…
優花里「あ、あれ?西住殿…?」
沙織「みぽりん…」
華「みほさん…」
麻子「無理もない。一番心配していたからな」
優花里「に、西住殿?秋山優花里ですよーっ…」
みほ「優花里!!!」
優花里「!?」
みほ「生きとったんかワレ!!!!」
優花里「!!!???」
みほ「優花里さん…」ギュッ
みほ「あぁ優花里さん…生きてた…」
優花里「西住殿…」
みほ「生きてた…生きてたよぅ……」ポロポロ…
優花里「っ、西住殿っ…ご心配おかけしてすみません…!」グスッ
優花里「もうあんな無茶はしません!台風が来ても部屋でじっとしていますから…!」
みほ「ぅぅん…いいの。もういいの優花里さん」
みほ「優花里さんが生きてただけで、私今すごく嬉しいから…っ」ポロポロ
優花里「西住殿…」ポロポロ
沙織「良かったね、みぽりん」
華「私たちも心配したんですよ」
麻子「そうだそうだ」
優花里「皆さんもご心配おかけして本当にすみませんでした!!」
優花里「不肖、秋山優花里!どんな処罰も受ける所存であります!!」
麻子「ケーキだ」
優花里「ケーキですか!?いくつご入用ですかっ!?」
麻子「何言ってるんだ」
華「これからみんなで食べに行きましょうよ!」
沙織「ゆかりんの復帰を祝してね!!」
優花里「皆さん……」
みほ「ほら、あれやろ」
沙織「えへへ、そうだね…!」
華「はい!」
麻子「おうとも」
みほ「じゃあ優花里さんお願い」
優花里「は、はい!…こほん、では…」
優花里「ケーキ屋さんに向かって、パンツァー…」
5人「「「「「フォー!!!!!」」」」」
麻子「何があったか、じっくり聞かせてもらうからな」
優花里「はいっ!!!」
こうして台風のあの日からおよそ一ヶ月。
優花里さんは無事に帰ってきたのでした。
しかし本当の不幸は……
---救出直後の病院にて。
ミカ「足がっ!!親指が痛いんだっ!!」
ミカ「きっと折れてるかもしれないっ!風が吹くだけで!!とても痛いんだ…っ!!!」
医者「ミカさん…残念ですが足は折れていません」
ミカ「は?」
医者「尿酸値がべらぼうに高いです」
医者「痛風です」
ミカ「いやぁぁぁぁぁぁぁ」
おしまい。
終わりました。
貴重な場所をありがとうございました。
また読んでくださりありがとうございました。
関西住みほなので風がヤバいです。台風気を付けましょうね…。
HTML化依頼出してきます。
おつー
乙
このSSまとめへのコメント
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