秋月涼「ここが見滝原?」上条恭介「そうだけど……」 (28)

魔法少女。それはかつて、人々の憧れであった。

だがそれは現実にあったら果たして華々しい物なのだろうか?

少なくとも、見滝原に居る魔法少女はおおよそ華々しさと無縁だっただろう。

いや、一人だけ華々しい魔法少女は居た。 彼女の名は巴マミ。

魔法少女の真実を知らず、願いの代償と正義感により魔女を狩る者である。

注意

これはまどマギに秋月涼をクロスオーバーさせた作品です。

ハードな展開やクロスオーバーが嫌いな人はお引きとりください。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1570016545

秋月涼、それは今をときめく女性アイドル。

期待の新星と呼ばれた彼女は、見滝原で収録を行うことになっていた。

彼女がCDショップを訪れると、一人の少年に出会う。

秋月涼「ここが見滝原?」

上条恭介「そうだけど……」

秋月涼「どこかこの辺にホテルとか無い?」

上条恭介「君は秋月……涼?」

秋月涼「知ってくれていたんですか」

上条恭介「クラシックとか聞くついでにね」

秋月涼「そうなんだ」

上条恭介「で、ホテルってことはここで収録が?」

秋月涼「一か月ほどね」

美樹さやか「どうしたの、私を置いて」

上条恭介「ああ、秋月涼ってアイドルに偶然会ってね」

美樹さやか「へえ、恭介ってそういうの興味ないと思ってたんだけどなー」

上条恭介「でも偶然アイドルが居たら誰だってテンション上がらないか?」

美樹さやか「確かに、私もJupiterが目の前に居たら卒倒するかも」

上条恭介「だろ?べつにあの子に色目を……」

美樹さやか「どうしたの?」

上条恭介(声が女の子にしては低いような……誤差の範疇かな?)「いや、何でもない」

一方そのころ病室から一人の少女が抜け出した。

だが彼女はもう病気が治っており、生活に支障はないということで学校へ通うことになった。

早乙女先生「秋月涼と秋月律子、どっちが好きかは人それぞれだと思います」

早乙女先生「アイドルは秋月涼がいいか秋月律子がいいかで秋月涼を出したからって別れるとかいう人とは付き合わないように!」

早乙女先生「では、転校生を紹介します!」

美樹さやか「そっちは後回しなのね……」

暁美ほむら「暁美ほむらです、よろしくお願いします」

暁美ほむら、鹿目まどかを救うため何度も時間を繰り返す少女。

彼女はまずまどかを魔法少女にさせないため、巴マミをつけることにした。

その日の夜

スタッフ「もうダメだ、おしまいだ……」

秋月涼「スタッフの様子が可笑しい、見てみないと!」

???「助けて、助けて!」

秋月涼「この声は……?」

その声の主はインキュベーター、通称『キュゥべえ(QB)』。

QB「助けて……!」

秋月涼「いや可笑しい、ただの小動物がこのケガでピンピンしてるはずない」

ぬいぐるみか何かだと勘違いした涼はそのままQBを抱える。

秋月涼「スタッフを助けた後ゴミ箱に捨てた方がいい、かな」

QB(秋月涼、魔法少女の素質はあるけどアイドルというだけあってそれなりに現実を知っているようだ)

QB(それに自分の夢は自分で叶えるってタイプだ、最悪契約はできなくてもいい)

QBことインキュベーターは効率主義者であるが故に、リスクとリターンの釣り合いが取れない場合も想定できる。

つまり人道的な見地ではないが、それでも契約の優先順位を下げることがあっても可笑しくはない。

一人と契約するために無暗に警戒されて他の人間との契約を逃してしまうのは、彼らにとって得策ではないのだ。

無論、そのリスクを負ってでも契約したい相手が居ればその限りではない。

例えば、鹿目まどかがそういったケースである。

秋月涼「それにしてもここはどこなの……?」

巴マミ「巻き込まれちゃったわね」

鹿目まどか「マミさん!」

秋月涼「ちょうど良かった。確かマミさんっていったよね」

巴マミ「ええ、私は巴マミ。あなたは?」

秋月涼「秋月涼っていいます」

巴マミ「秋月律子のいとこだっけ?」

秋月涼「そうだけど、それよりここはどこなの?」

巴マミ「それとあなた、QBを連れて来てくれたのね」

秋月涼「人形じゃない、ってこと?」

巴マミ「説明は後にさせて貰えるかな?今はここの主を倒すのが先だから」

秋月涼「確かに、全体的に変な雰囲気だけど。何というか、夢に出そう」

巴マミ「ということは初めてここに来るのね」

巴マミはそういうと、マスケット銃を展開して薔薇園の魔女の使い魔に向き合った。

そしてそのマスケット銃は薔薇園の魔女の使い魔を寸分たがわず撃ち貫いていく。

薔薇園の魔女の使い魔「グウウウウー!」

巴マミ「この程度の相手ならティロ・フィナーレを使うまでもないわ!」

マミはそういってちょっと大きめの銃口の銃を腕に装着し、それで薔薇園の魔女の使い魔を倒した。

秋月涼「で、説明してくれないかな?」

巴マミ「さっきのは人を脅かす怪物、『魔女』の『使い魔』よ」

秋月涼「つまりさっきの化け物の親玉が居るってことですか?」

鹿目まどか「へえ、涼さんって鋭いんだね」

秋月涼「『使い魔』っていうくらいだから手下だって分かるよ」

巴マミ「ゲームとか好きなのかしら」

秋月涼「知り合いがゲームするから、それでね」

巴マミ「そうなのね。で、魔女が落とすのがこのグリーフシードなわけ」

秋月涼「戦利品ってこと?」

巴マミ「これで魔法少女の力の源『ソウルジェム』を浄化できるの」

秋月涼「ソウル……?」

鹿目まどか「何か引っ掛かることでもあるの?」

秋月涼「確かソウルは『魂』って意味だって聞いたことあるから」

QB(中々鋭い子だね……秋月涼と契約できる可能性は低めに見積もっていいだろう)

巴マミ「響きで付けたんじゃないかしら」

それを遠目に見ていた暁美ほむらはこう思った。

暁美ほむら(マミが単純で助かったわ。下手に彼女が魔法少女の真相を知ったら、最悪の場合私が殺されかねない)

巴マミ「で、さっきの結界が魔女結界」

秋月涼「まんまだね。魔女結界には魔法少女の素質が無いと入れなかったり?」

巴マミ「中々鋭いわね……」

秋月涼「アニメや漫画だとよくあることだからね」

鹿目まどか「ともかく、魔法少女に何かメリットがあるの?」

秋月涼「どんなメリットがあるにしても命を賭ける理由にはならないと思う」

QB「じゃあ、君はどんな願いでもかなえられるとしたらどうするんだい?」

秋月涼「私の夢は私自身が叶えたいから、願いにはしないわ」

QB(やっぱりね。でも涼が他の人の……特にまどかの契約の邪魔になるのだけは避けたいね)

このくらいなら感情のないQBでも推測は可能だっただろう。

彼らも有史以来ずっと人間を見届けて来たので、持っている感情を推測するくらいの芸当はできても可笑しくはない。

しかしそれでも彼らの感情を踏みにじることをどうとも思わないのは、
やはり彼らに感情がないが故であろう。

そうでなければ彼らがとんでもないサディストということになるが、それであれば地球を人間牧場にすることもあり得ただろう。

彼らに感情がないからこそ人間とQBの関係性は良くも悪くも現状が維持されているといえる。

QB(いや、最悪僕達がまどかに消されかねない。彼女ほどの素質があれば僕達の安全装置ですら無意味と化す)

QB(とはいえまどかは優しい性格だと推測できる、そう易々と消されることはないだろう)

実際、こことは別の世界で……女神となったまどかだが終にQBの抹消を願う素振りは無かった。

彼女が過去の魔法少女の願いを無かったことにしたくないというのもあっただろうが、
それに加え彼女は『QBは悪でない』と判断したのもあったからじゃないかと思われる。

ただその辺は描写が無かったので、少しは考えた可能性も否定はできないが。

QB(まだまどかと契約する際のメリットの方がデメリットより大きいから、引き続き彼女は見るとして)

巴マミ「涼はそうかもしれないけど、私は他に選択肢が無かったの。生きることが願いだったから」

秋月涼「生きるために願い事をした?」

巴マミ「私は交通事故にあって……その時QBと会ったの」

鹿目まどか「そうだったんだ……」

美樹さやか「つまりそうでもしないと生きられなかったってこと?」

巴マミ「ええ。だからあなた達には後悔しない願いを叶えて欲しいの」

秋月涼「なるほどね……」

暁美ほむら(秋月涼。完全なイレギュラーである彼女のことを見るべきね)

暁美ほむら(薔薇園の魔女はマミが倒してくれるけど、問題は次の魔女)

暁美ほむら(マミは弱い魔法少女じゃないけど、『お菓子の魔女』は彼女にとって致命的なほど相性の悪い相手よ)

お菓子の魔女、脱皮して頭から相手を丸かじりにする魔女。

頭にソウルジェムがあるマミでなくても、ソウルジェムが無事なら何とかなる魔法少女といえど脳をやられればどうしようもないと思われる。

あるいは魂がソウルジェムに移っているから脳の損傷もどうにかできるのかもしれないが、
いずれにしても脳へのダメージはかなり深刻な物であることに代わりはない。

いずれにしても頭にソウルジェムがある上、拘束を無効化される巴マミにとってお菓子の魔女は天敵といえる存在である。

暁美ほむら(下手してマミに拘束されたこともある、そうでもしてまでまどかの契約を止めたかったわけだけど)

暁美ほむら(目的のために手段を択ばないのは形が違えどインキュベーターと同じかもしれないわね……)

暁美ほむら(ともかく、今回は涼にまどかを止めて貰った方がマミに拘束されるリスクが少なくて済む)

暁美ほむら(彼女をワルプルギスの夜戦まで残すためにも、ね)

暁美ほむら(もし失敗したとしてもこの周回はまたループできるまでゆっくり休めばいい)

暁美ほむらはひっそりとその場から立ち去った。

学校に戻ると、まどかとさやかの話が始まる。

鹿目まどか「ねえ、さやか」

美樹さやか「どうしたの、まどか?」

鹿目まどか「今日はアイドルに会えたし、魔法少女のことも知れたからね」

巴マミ「なら魔法少女体験会、やってみないかしら?」

時間は少し飛び、お菓子の魔女戦の日になる。

病院

鹿目まどか「どうしたの、秋月さん?」

秋月涼「病院のみんなを励ますために来て欲しいっていわれたんだけど、まどかは?」

鹿目まどか「さやかの幼馴染の恭介って子が事故に会ったから、お見舞いに来て欲しいって」

QB(大変だ、ここに孵りそうなグリーフシードがある!)

鹿目まどか「マミさんを呼んでくるから、恭介をよろしく!」

そうしてマミがやってきて、お菓子の魔女戦が始まる。

暁美ほむら(さて、お菓子の魔女が脱皮するタイミングを見るために後ろで見させて貰うわ)

暁美ほむら(何分今回はイレギュラーも居る、いつもより早いか遅いタイミングで脱皮する可能性がある)

巴マミ「体が軽い……こんな気分で戦えるなんて初めて!」

マミはお菓子の魔女の使い魔を形成したマスケット銃で蹂躙していく。

巴マミ「もう何も怖くない!ティロ・フィナーレ!」

鹿目まどか「やったあ!」

だが、その時だった。お菓子の魔女が脱皮したのは。

鹿目まどか「QB!」

暁美ほむら「それには及ばないわ」

暁美ほむら(危ないわね。マミの願い事を早い段階で知ったから契約しそうになってた)

脱皮したお菓子の魔女はほむらによって爆破されていく。

秋月涼「魔法少女って、思った以上に危ないんだ……」

鹿目まどか「こうなったら、誰かを助けるためでも慎重にしないといけないかな」

お菓子の魔女にとって時間を止めて動きを先回りできる暁美ほむらは天敵だ。

お菓子の魔女はあっという間に蹂躙され、そのまま打ち倒されたのだった。

暁美ほむら(さて、秋月涼がどんな人間なのか調べないと)

暁美ほむらは秋月涼で検索をかけた。

暁美ほむら(876プロ……聞いたことないけど小さい事務所みたいね)

暁美ほむら(セルフプロデュースをしていて趣味は料理に掃除。それでいて女性からも好かれたいという点は意外ね)

暁美ほむら(有名ではないけど、身近にアイドルが居るっていうのはかなり変わってくるかもしれない)

暁美ほむら(もしかしたら美樹さやかについてで何か変化が起きるかもしれないわ)

暁美ほむら(彼女と連絡が取れればいいけど……そうだ)

学校

鹿目まどか「秋月さんの連絡先を知らないかって?」

暁美ほむら「私も魔法少女だから、いざという時力になれればと思って」

鹿目まどか「まあ私とマミさんには連絡先を交換していたけど……」

暁美ほむら「お菓子の魔女は私が倒したけど、それでも信頼できないかしら?」

鹿目まどか「分かった、ほむらちゃんのこと少しは信じてみるよ」

暁美ほむら(副次効果ではあるけどこれでまどかの信頼度を上げれたかしら?)

暁美ほむら「それじゃあ、鹿目さんから電話してくれない?」

鹿目まどか「確かに、迷惑電話だと思われちゃうかもしれないからね」

こうしてほむらはまどかの電話から涼に電話番号を教え、涼とほむらはお互いの電話番号を知ることになった。

さて、上条恭介は病院に入院していたわけだが。

上条恭介「もうバイオリンを弾くこともできないっていわれたんだ」

美樹さやか「そんな……」

上条恭介「だからこんな物!」

美樹さやか(恭介を元気付けたかったけど、もうバイオリンを弾けないんじゃ逆効果か……)

病院の外

美樹さやか「もしもし、秋月さん?」

秋月涼「どうしたの、さやか?」

美樹さやか「魔女は現れていないけど、ちょっと相談したいことがあって」

秋月涼「そうね。私も数日はオフだし」

美樹さやか「良かった。それで、会って欲しい人が居て」

秋月涼「もしかしてそれって君と一緒に居た恭介って子?」

美樹さやか「そうなの。実は彼の腕が治らないって……」

秋月涼「そうだったんだ。恋愛は私分からないけどそれなら乗ってあげれるわ」

美樹さやか「秋月さんって男の人からもてるって話じゃ?」

秋月涼「私はまだそういうの早いと思っているから……」

美樹さやか「意外に初心なのね」

病院

秋月涼「あなたが恭介君だっけ?」

上条恭介「秋月涼……どうして?」

秋月涼「率直にいうけど右腕が折れたくらいで夢をあきらめなちゃ駄目よ」

上条恭介「何でそんなことがいえるんだ、君は!」

秋月涼「実はね……」

涼は自分の事情を恭介に話した。

上条恭介「そうだったんだ……」

秋月涼「だから左腕で弾けるように頑張ってみたらいいんじゃないかな?」

上条恭介「そうだね。君の夢も、叶うといいかな」

秋月涼「うん、お互いに頑張ろう」

病院の外

秋月涼「話は終わったよ」

美樹さやか「どうだった?」

秋月涼「彼も元気を取り戻してくれたよ」

美樹さやか「良かった……」

秋月涼「でもだからといって恭介が君のことを選んでくれるとは限らない」

美樹さやか「……恋愛は分からないんじゃないの?」

秋月涼「流石にさやかが恭介に恋してるってのは何となく分かったからね」

暁美ほむら(さやかの契約はとりあえず回避された……いや、まだ様子を見るべきね)

ほむらは密かにその場を立ち去ったのであった。

工場

職員A「もうだめだ……」

鹿目まどか「駄目だよ仁美、それは混ぜたら駄目!」

志筑仁美「これは新世界の扉を開く物ですわ」

鹿目まどか「駄目っ!」

まどかは洗剤が混ざらないよう薙ぎ払った。

その様子をQBのテレパシーで見ていたさやかは思わず叫んだ。

美樹さやか「まどか!」(っ、マミさんは間に合わない!)

美樹さやか「QB、恭介の腕を治して!」

QB「その願いに……」

美樹さやか「魂をかけるわ!」

QB「分かった、受け取るがいい」

バカーン!

美樹さやか「お待たせ!」

鹿目まどか「さやかちゃん!」

魔法少女となったさやかによってまどかは助けられたのだった。

箱の魔女「ガーガー!」

美樹さやか「スクワトワーレ!」

箱の魔女「デオチー!?」

シュウーン

美樹さやか「ふう、これでみんな元に戻るわ」

暁美ほむら(結局美樹さやかの契約はこの周回だと避けられなかったわ)

暁美ほむら(とはいえワルプルギスの夜を倒す戦力として、回復役の彼女は居た方がいい)

暁美ほむら(そう考えれば彼女が契約したのはむしろラッキーかもしれないわ)

QB「というわけなんだ。見滝原を奪えれば君もグリーフシードを手に入れやすくなるよね?」

佐倉杏子「美樹さやか。他人のために契約した魔法少女ね……」

杏子はふと家族の写真を見る。

佐倉杏子(父さん……母さん……モモ)

佐倉杏子(他人のために願いを使うなんて後悔するだけだってのに)

佐倉杏子「ところで、見滝原には魔法少女候補が他に居るのか?」

QB「そうだね。鹿目まどかに秋月涼……特にまどかは契約したら強力な魔法少女となるだろう」

佐倉杏子「なら、秋月涼って奴の方に会った方がいいかもな」

QB「えっ!それはどうしてだい?」

佐倉杏子「考えてみろよ、もしまどかに契約されれば私は勝てない」

佐倉杏子「一方、秋月涼はそこまで素質が無い。なら契約されても経験の差で勝てる」

QB(なるほど、確かに的を射ている。でも杏子と涼が会ったら計画が狂うかもしれない)

QB(でも『契約される前に殺せ』といったら本当にやりかねない。不確定要素ではあるから、上手く行く方に賭けるしかない)

インキュベーターは不合理を嫌う節があるが、
リスクとリターンを考えた場合であれば多少の不合理も容認できる。

まあそれもあくまで機械的な判断の一端でしかないだろうが。

見滝原

佐倉杏子(それにしても、秋月涼って奴にはどうやって……)

杏子は秋月涼が歩くのを見た。

佐倉杏子(秋月涼について街行く人に聞いて見たが、間違いない)

佐倉杏子「あの……」

秋月涼「どうしたの?」

佐倉杏子「野宿できるところを探しているんだけど」

秋月涼「こんな街中で野宿なんて感心しないね。そうだ、宛があるから聞いて見ようか?」

佐倉杏子「あて?」

秋月涼「そうだ、あなたの名前は?」

佐倉杏子「佐倉杏子だけど、あんたは?」

秋月涼「秋月涼だよ」

佐倉杏子「この町に来てるアイドルだって聞いてはいたけど、本物なんだ」

秋月涼「ともかく、電話をするよ」

電話

秋月涼「もしもし」

巴マミ「どうしたの?」

秋月涼「『さくらきょうこ』って中学生くらいの子が野宿したいっていってて」

巴マミ「さくらきょうこ!?秋月さん、代わってくれる?」

秋月涼「え?いいけど」

秋月涼「マミさんが代わって欲しいって」

佐倉杏子(マミ?どっかで聞いたような)

佐倉杏子「ああ、いいよ」

そういって杏子は涼の携帯を借りる。

佐倉杏子「もしもし」

巴マミ「その声は、杏子!?」

佐倉杏子「マミ?おい、聞いてないって!」

巴マミ「どうしたの?」

佐倉杏子「いや、何でもない。ともかく、訳あって泊めて欲しいんだ」

巴マミ「ええ、いいわよ。昔一緒だったよしみだしね」

というわけで、杏子はマミの家で泊まることになった。

(もちろん杏子が涼に借りた電話は返した)

暁美ほむら(秋月涼の存在がこういう形で生きてくるなんてね)

暁美ほむら(巴マミと佐倉杏子は元々知り合いだと知ってはいたけど)

暁美ほむら(ここまで円滑に二人を会わせることは今まで一度もできなかったわ)

さて、美樹さやかは杏子と戦うことが無かったので自分がゾンビのような物だと知ることもなかった。

佐倉杏子はさやかのことを気に入らなかったが、マミの手前襲うわけにもいかなかったのだろう。

だが、仁美が恭介に告白したいということは変わらない。

志筑仁美「さやかさん。あなたは本当の気持ちと向き合えますか?」

美樹さやか「どういうこと?」

志筑仁美「私も恭介さんのことが好きなんです」

美樹さやか「……」

志筑仁美「さやかさんの手前、私は明後日告白するつもりです」

美樹さやか「どういうつもり?」

志筑仁美「つまり、あなたに一日だけ猶予をあげるということです」

まどマギ本編だと仁美はタイミングが悪かったが、決して悪女ではない。

むしろ一日の猶予を設けるところから気が効くタイプだろう。

恭介もさやかに助けて貰ったからってさやかとくっつかないといけない義務はない。

ただ、二人ともタイミングが悪すぎただけなのだ。

でも女をポイ捨てにするとかいってたあのホスト達は擁護不能である。

美樹さやか「涼は恋愛分からないっていっていたけど、アドバイスして貰おうかな」

秋月涼「どうしたのさやか?もしかして」

美樹さやか「魔女じゃないわ。相談したいことがあって」

秋月涼「まあこの時間ならちょうど夜ご飯時だからいいけど」

美樹さやか「仁美がね、恭介のこと好きだから明後日告白するって」

秋月涼「そうなの?でも好きならどうして直ぐ告白しないのかな」

美樹さやか「私に気を使ってるみたい、もしかしてあなたその辺鈍い?」

秋月涼「ま、まあね。ともかく、さやかは恭介のことが好きだよね?」

美樹さやか「告白した方がいいってこと?」

秋月涼「してもしなくても後悔するなら、告白はした方がいい」

美樹さやか「ありがとう。踏ん切りが付いたわ」

翌日

美樹さやか「恭介、好きだよ」

上条恭介「いきなりだね……」

美樹さやか「えっ?」

上条恭介「それってライクなの?ラブなの?」

美樹さやか「あたしって本当バカ、英語の勉強してれば良かった」

上条恭介「ライクとラブの違いは習ってないか?」

美樹さやか「直ぐには思い出せないけど……」

上条恭介「ごめん、君のそれがラブだとしても僕は君の思いに答えることができない」

美樹さやか「どういうこと?」

上条恭介「君のことは嫌いじゃないよ。ただ、幼馴染としてしか見れないというか……」

美樹さやか「つまり私は恭介にとってきょうだいみたいな人ってこと?」

上条恭介「まあ、親しすぎて恋愛対象として見れないってことだよ」

翌日

鹿目まどか「どうしたのさやかちゃん、元気ないね」

美樹さやか「振られちゃったよー」

暁美ほむら「それだと当面は引きづるわね」

暁美ほむら(こうなってはさやかが失恋から魔女化しないよう、戦線離脱させるしかない)

暁美ほむら(ワルプルギスの夜戦の戦力とするのもリスクの方が高い。まあ、マミも杏子も居るからどうにか作戦を立てればいい)

鹿目まどか「それにしても、何で告白したの?」

美樹さやか「涼が『してもしなくても後悔するならした方がいい』っていってくれたんだ」

暁美ほむら(まるで他人事のようね。まあ彼女はさやかとそこまで深く関わっては……)

暁美ほむら(可笑しいわね、彼女はそれこそ多くの男性から告白されているはず。なのにどうしてここまで他人事なのかしら?)

暁美ほむら(涼は男女どっちでも使えるけど、私も人のこといえないからね)

実際ほむらって名前だけを聞いた場合、暁美ほむらを知らない人間は響きから男性だと推測するだろう。

暁美ほむら(彼女、あまり恋愛に興味無いタイプなのかしら)

そして、暁美ほむらは鹿目まどかと秋月涼を呼び出す。

暁美ほむら「まどか、あなたには話さないといけないことがある」

鹿目まどか「なら何で涼も呼び出したの?」

暁美ほむら「涼にも知ってもらいたいことがあるからよ」

暁美ほむら「私はずっと同じ時間を繰り返してきたの」

秋月涼「つまり……龍〇のタイムベ〇ト的な?」

暁美ほむら「それが一番分かりやすい例えね」

鹿目まどか「魔法少女の願いで時間遡行もできる物なの?」

暁美ほむら「治らないといわれた傷を治したり、父親の話を聞かせるといったことができる」

暁美ほむら「インキュベーターの技術は私たちよりも遥かに進んでいるわ」

秋月涼「ちょっと待って。技術……?もしかし全部QBの自作自演ってことか?」

暁美ほむら「その見識は半分は正しいけど半分は間違っているわ」

秋月涼「どういうこと?」」

暁美ほむら「例えば、お風呂に水とお湯を入れる。すると段々と混ざっていき、最後はお湯になる」

鹿目まどか「確かにそんな経験もあったけど、それが一体QBとどんな関係なの?」

暁美ほむら「それが宇宙全般にもいえることらしいのよ」

秋月涼「もし混ざり切ったらどうなるの?」

暁美ほむら「分かりやすくいえば、宇宙が滅びるわ」

秋月涼「そんなことが起きたら大変じゃ……」

暁美ほむら「QBはそれを避けるためにあるシステムを作った」

鹿目まどか「じゃあ、QBはいい人だってこと?」

暁美ほむら「人間の善悪で彼らを測るべきではないわ」

秋月涼「確かに『半分はQBの自作自演』ってことだよね?」

暁美ほむら「そうよ。魔法少女の成れの果て、それが魔女なの」

鹿目まどか「仮面ライダ〇みたいな感じだけど笑えないかな」

秋月涼「でもそれと宇宙の死にどんな相関性があるの?」

暁美ほむら「彼らは魔法少女の契約に伴い生まれる感情のエネルギーを集めているの」

秋月涼「それって願いに伴う『希望』ってこと?」

暁美ほむら「そうよ、彼らは『希望と絶望の相転移がエネルギーを生む』と考えたの」

鹿目まどか「でもそれならどうしてマミさんが死んでもいいって思ったの?」

暁美ほむら「契約の時点で相応のエネルギーは得られる、と一度聞いたことがある」

秋月涼「そうか。まどかを助けるために時間遡行してたなら、まどかが魔女化しないために死んだときもあるはず」

暁美ほむら「それと彼らに感情はないわ。マミが死んでもいいとは思っただろうけど」

鹿目まどか「確かに、感情があったとしたらこんな残酷なことはできないよ」

秋月涼「さもなきゃ人間に恨みでもあるかだよ」

暁美ほむら「そうね。もし彼らが人間に悪意を持っていたなら地球を人間発電所へと作り変えていたはず」

鹿目まどか「でも実際はそうじゃない。説明は不足しているけど……」

秋月涼「だからといってQBを許してはおけない」

暁美ほむら「QBを殺そうとしても無駄よ」

秋月涼「強すぎて勝てないってこと?」

暁美ほむら「彼らの正式名称は『インキュベーター』……群体型の宇宙人よ」

鹿目まどか「要するに蟻みたいな生物ってこと?」

暁美ほむら「まあざっくりいえばそうなるわね」

秋月涼「なるほど、殺したとしてもキリがないってこと」

暁美ほむら「そうね、私だってストックが無くなるまで殺そうとしたこともあるもの」

秋月涼「結果としてはダメだったってこと?」

暁美ほむら「彼らだって無限に存在しているわけじゃないはずだけど、少なくとも私一人では到底無理よ」

秋月涼「真相を明かしても駄目だった、よね?」

暁美ほむら「流石に察しがいいわ。それどころか魔法少女が魔女になるならみんな死ぬしかないといわれた」

秋月涼「確かに、自分たちの成れの果てが人間を襲う怪物だと知ったら冷静じゃいられない」

鹿目まどか「私はQBのこと、そこまで悪いとは思わないけどね」

暁美ほむら「まあ、彼らはリスクの説明をしない代わりに嘘も付かないものね」

秋月涼「人間には感情がある。QBのことをどう思うかも人それぞれです」

暁美ほむら「それと、人間に文明を与えたのは彼らだってことよ」

秋月涼「嘘は付かないとしても、彼らの存在があって今があるとは思いたくないよ……」

暁美ほむら「じゃあ、あなたはQBの抹殺を願うの?」

秋月涼「有史以来からずっと人間を見てきたなら、流石に対策くらいしてるはず」

鹿目まどか「確かにね……」

暁美ほむら「涼ならそうかもしれないけど、まどかなら可能かもしれないわ」

鹿目まどか「でも私は、今までの魔法少女の願いを否定したくはない」

暁美ほむら「なるほどね。一応いっておくと、あなたの素質は宇宙すら作り変える力があるといっていた」

秋月涼「素朴な疑問だけど、素質って何で決まるの?」

暁美ほむら「普通は歴史への影響度で決まるそうだけど、まどかは一般人よ」

秋月涼「これから何かの第一人者になるからとかじゃないの?」

暁美ほむら「いや、歴史に影響を及ぼすほど因果が貯まる。だからまどかはイレギュラーらしいわ」

暁美ほむら「それと、QBがいっていたわ。あなたの因果も普通じゃないって」

秋月涼「でも私じゃQBの抹殺は無理って」

暁美ほむら「流石に、まどかに比べてしまえば遥かに劣る。QBもあなたは優先するほどじゃないと見てる」

秋月涼「確かに、QBはあまり私に勧誘してこなかったような」

暁美ほむら「あなたの察しの良さがあなた一人と契約した時のリターンよりリスクが大きいと判断させたみたい」

秋月涼「感情が無くてもそういう計算はできるってことかな」

暁美ほむら「そうなるわ。そして、あなたはそこそこの知名度のアイドルではある」

秋月涼「私は秋月律子のいとこだから、そのせいじゃないかな?」

暁美ほむら「ええ、近親者が有名人であるあなたは普通よりも因果が高くなりやすい」

秋月涼「ということは、他に原因があるっていいたいの?」

暁美ほむら「率直にいうわ。秋月涼、あなたは何者なの?」

秋月涼「何者って、876プロのアイドルだけど」

鹿目まどか「ほむらちゃん、涼を疑っているの?」

暁美ほむら「悪い人ではないと思っているけど、私は秋月涼のことはよく知らない」

鹿目まどか「何回も私との出会いを繰り返しているのに?」

暁美ほむら「そうね。私は繰り返すたびに微々たる変化があることを確認している」

暁美ほむら「あなたを助けるに至ったことはないけど、色んなズレを見てきた」

鹿目まどか「ズレって?」

暁美ほむら「ある周回では佐倉杏子が私に接近し、ある周回だとさやかではなく仁美が恭介の腕を治した」

秋月涼「恭介が魔法少女になったこともあるの?」

暁美ほむら「……何であなたは『男でも魔法少女になれる』と思ったの?」

秋月涼「素質があれば魔法少女になれるなら、男がなったケースも……」

暁美ほむら「いくらあなたの察しが良くても、実例も無しにそう思うのは無理があるわ」

秋月涼「……このことはまだ誰にもいわないで欲しい」

鹿目まどか「どういうこと?」

秋月涼「実をいうと僕、本当は男なんだ」

暁美ほむら「なるほど、あなたが男性だからこそ男性でも魔法少女になれると知っていた」

鹿目まどか「で、でも涼さんはどう見ても女の人じゃ」

暁美ほむら「見た目なんてどうとでも誤魔化せるわ。私だって昔はこんな感じだったもの」

そういってほむらはおさげと眼鏡だった頃の写真を出す。

鹿目まどか「確かに、これ出されると説得力あるな……」

暁美ほむら(捨てられなかっただけだけど、まさかこういう形で役立つなんてね)

秋月涼「といっても見た目は元々こんな感じ。流石に、メイクとかはしてるけど」

暁美ほむら「まあ、でなければ女性としてデビューするのは無理でしょうね」

鹿目まどか「秋月さんが男だったのは意外だけど、本題から離れてない?」

暁美ほむら「そうね、秋月涼のいう通りよ」

秋月涼「色んな展開があったんだ」

鹿目まどか「大変だったんだね……」

暁美ほむら「秋月涼、あなたが男性と知ったことで私の疑問は全て解決したわ」

秋月涼「疑問って?」

暁美ほむら「女性からも好かれたいということ、そしてあなたのさやかへの対応よ」

秋月涼「私のさやかへの対応……?」

暁美ほむら「真実をいったなら男性と振る舞ってもいいのよ」

秋月涼「そっちの方が慣れてそうだと思っただけ」

暁美ほむら「なるほど。ともかく、あなたがさやかに対し他人事のアドバイスをしたわよね?」

秋月涼「そりゃ、僕は男なんだから女の子に恋愛相談されても男視点でしか話せないよ」

暁美ほむら「でも、あなたは男子から告白されることが多いという話だったはず」

秋月涼「だから恋愛相談にはもっと本腰を入れていて可笑しくないと思ったんだ」

暁美ほむら「そういうことよ。でも、理由が分かったらしっくり来たわ」

秋月涼「で、時間遡行を繰り返してきたっていうけど。何でまどかを救えなかったの?」

暁美ほむら「無神経だけど、あなたはこれから来る魔女を知らない。そういいたくなるのも分からなくは無いわ」

秋月涼「未来でとんでもなく強い魔女が出るってこと?」

暁美ほむら「そういうことよ。その名も『ワルプルギスの夜』」

秋月涼「ワルプルギスの夜?」

鹿目まどか「何か儀式めいた名前だね」

暁美ほむら「元々は祝祭だったか何かだけど、それを冠する魔女よ」

秋月涼「つまりそれだけヤバい相手ってこと?」

暁美ほむら「そう。どれだけ契約を回避し続けても、まどかは最後にワルプルギスの夜と戦うため契約する」

秋月涼「そんな強力な魔女と戦うなんて、大丈夫なの?」

暁美ほむら「正直いえば、あなたにも契約してもらいたいくらいだけど」

鹿目まどか「ほむらちゃん、そんなの駄目だよ」

暁美ほむら「そもそもさやかが既に魔法少女となっている以上、魔法少女を増やすのは得策じゃない」

秋月涼「まあ魔法少女を増やすことは、いい換えれば魔女を増やすリスクでもあるわけだ」

暁美ほむら「そうなるわ。だから秋月涼、あなたは契約しないで」

秋月涼「それはいいけど、マミさん達じゃ倒せないの?」

暁美ほむら「今さやかは失恋の傷が残っていて魔女化しやすくなっている」

秋月涼「戦力としては数えられないってことだね」

暁美ほむら「というより、彼女は失恋がきっかけで魔女になってしまっていることが多い」

鹿目まどか「えっ、そうなの?」

暁美ほむら「今回は涼がさやかにアドバイスしたのと、さやかが魔法少女がゾンビみたいな物だってことを知ることは無かった」

秋月涼「魔法少女がゾンビって、一体どういうこと?」

暁美ほむら「魔法少女は契約した時にソウルジェムを得る。魔法少女にとってはそれが本体みたいな物よ」

秋月涼「それってどういう理屈?」

暁美ほむら「さっき私は感情をエネルギーにするといったけど、そのために人間の魂をQBは抜き出すの」

秋月涼「つまり感情がガソリンで魂がエンジンってこと?」

暁美ほむら「乱暴にいってしまえばそうなるわ」

鹿目まどか「ほむらちゃん、本題から逸れてない?」

暁美ほむら「そうね。魔法少女がゾンビみたいな物って説明に時間を取られたわ」

秋月涼「そうだ、結局ワルプルギスの夜は倒せるの?」

暁美ほむら「倒せはするけど、犠牲を払うことになる可能性は捨てきれないわ」

鹿目まどか「そんな……私のためにマミさんやほむらちゃんが犠牲になるなんて」

暁美ほむら「マミも人を救うために命を掛けている、気にすることはないわ」

秋月涼「それより、杏子って子はいいの?」

鹿目まどか「見ず知らずの子だけど、私も少しはそう思ったよ」

暁美ほむら「彼女は戦えばワルプルギスの夜のグリーフシードが得られる、そう思えば命も賭けれる人間よ」

秋月涼「ふと思ったんだけど、ワルプルギスの夜って倒さないといけないのかな?」

鹿目まどか「倒さなきゃ、多くの人が死ぬんじゃ?」

暁美ほむら「いえ、私も秋月涼と同じことを考えた。無論、まどかは一人で助かるなんてことをしないのも折り込み済みで」

秋月涼「ワルプルギスの夜が避難所を襲うから倒さないといけないなら、その進路を逸らせばいいって寸法だよ」

暁美ほむら「確かに相手は災害じゃなくて魔女、進路は逸らせる」

鹿目まどか「でも、試しても失敗したってことだよね?」

暁美ほむら「相手は災害じゃなくて魔女、今の科学では測れない相手だから逃げ遅れる人が百人単位で居たの」

秋月涼「でも、その時僕は居たの?」

暁美ほむら「まさか、逃げ遅れをどうにかできるつもりなの?」

秋月涼「そりゃゼロにできるとまではいわないけど。ワルプルギスの夜を避難所から逸らせられるなら、避難所に人を集めておけばいい」

暁美ほむら「ワルプルギスの夜の進路を逸らすことを考えたら、私はそこにリソースを使えないわよ?」

秋月涼「ほむら、僕は仮にも女の子としてアイドルをやってる身だ」

暁美ほむら「確かにワルプルギスの夜が来る日は決まってる。時間はずれることがあるけど、確実にこれという日はある」

秋月涼「それならその日の、ワルプルギスの夜が来そうな時間帯にチャリティーライブを開けばいい」

暁美ほむら「事務所の人にはどう説明するの?」

秋月涼「僕はセルフプロデュースをしてるし、知名度を上げるためってことで」

暁美ほむら「分かった。なら来たるべき日と場所を説明するわ」

鹿目まどか「私はどうすれば?」

秋月涼「まどかは私のライブの準備を手伝ってくれるかな?チャリティーだとあまり人員を用意できないし」

ワルプルギスの夜当日

役所

役員A「大型台風、予想以上の速度で接近してきます!」

役員B「避難警報を出すんだ!」

役員A「はい。幸い、避難所は既に多くの人が集まっています」

役員B「何だ?何があった?」

役員A「書類によれば、876プロの秋月涼がチャリティーライブを開催しています」

役員B「まるでこの台風が来るって分かってたようなライブだな」

役員A「まさか、そんなの偶然に決まってるじゃないですか」

役員B「まあな、ライブはどうする?」

役員A「下手に止めた方がパニックになるでしょう、避難してくる人を受け入れつつお開きになるのを待ちましょう」

秋月涼「So I love you, my darling.
And stay forever.
It's dazzling like a star,
I'm falling for you.」

秋月涼「前に 進めない
これ以上
そんな時には
いつも 心で
呼ぶよ
あなたの名前」

秋月涼「
抱いた 憧れ
今も 変わらないわ
過ごした 日々は
優しく 溶け出してゆく 
あなたといる それだけで
鮮やかに ほら輝く」

秋月涼「星空にきらめく あのかけらは
まるで二人を照らす プリズム」

秋月涼「キラキラ光る この気持ち
愛されること 愛すること」

秋月涼「時が流れて 光りだす
思い出一杯 作るのよ」

秋月涼「二人が逢えた 人生も
一度きりだと 知ってるわ」

秋月涼「手と手つないで 歩き出す
あなたと生きる 素晴らしい世界」

涼がそこまで歌うと同時に、避難してきた人もここにやってくる。

秋月涼「落ち着いてください。私も避難してきた皆さんを手伝います」

鹿目まどか「涼!」

秋月涼「あなたも手伝って!」

鹿目まどか「分かった」

こうして、二人が避難者を誘導している間に三人の魔法少女は戦っていた。

佐倉杏子「ほむら、ここらに誘導すればいいんだな?」

暁美ほむら「あなたがこれに乗ってくれるとは思ってなかったわ」

佐倉杏子「マミに泊めて貰った分の礼は返すってだけだ。じゃなきゃグリーフシードを得られない戦いはしないよ」

巴マミ「杏子はその辺律儀なんだね」

佐倉杏子「飯も少し作って貰ったしな」

暁美ほむら「ともかく、話はこいつをどうにかした後よ」

巴マミ「刺激し過ぎないようにしつつ、進路を逸らす。皆を守るために、やるしかないわ」

暁美ほむら「来たわ、皆は下がって!」

ドガーン!

ワルプルギスの夜「キャハハハ!」

暁美ほむら「不味い、逃げるわよ!」

時間停止

暁美ほむら「砂は殆ど落ちきっている。けど魔力に余裕があるから、奴に気付かれないよう逃げるわ」

巴マミ「そうね、繋いだリボンが切れないよう気を付けながら後退しましょう」

佐倉杏子「ああ、念の為幻影も残しといた。これで逃げたとは思われないだろう」

暁美ほむら(こうして、私のまどかを救うための旅は終わりを告げた)

暁美ほむら(結局ワルプルギスの夜は倒せなかったけど、私の目的は達成できた)

暁美ほむら(秋月涼は復興の手伝いを少しした後見滝原を離れるといっていた)

暁美ほむら(まだ魔法少女が魔女になるという問題が解決できたわけではない)

暁美ほむら(だけどワルプルギスの夜は乗り越えられた。少なくともまどかは守れたということよ)

秋月涼「ここが見滝原?」上条恭介「そうだけど……」完

後書き
初投稿時はスローペースですが、どうにか完結させられました。

鹿目 まどか
このSSだと『ほむらの守りたい子』『薔薇園の魔女の結界で涼と話した子』くらいの扱いです。
信じられないだろ、原作では主人公なんだぜ……こいつ?

美樹 さやか
失恋のショックで魔女化しやすくなり戦線離脱、はぶっちゃけ後述する杏子犠牲エンドの伏線でした。
4人でワルプルギスの夜を倒してめでたしめでたし、という案も浮かびましたがやはり後述する理由で没になってます。

佐倉 杏子
涼のお陰でワルプルギスの夜を倒せました、だと誰も納得してくれないかもしれません。
それなら誰かが犠牲になる展開にしようってことで白羽の矢が立ちかけました。
本編でもまどかとの関わりが薄い上、このSSだと名前だけ知ってる状態でしたしね。
結局途中で『あくまで目的はまどかが納得できる形で彼女を生存させればいいんだから、ワルプルギスの夜倒さなくても良くね?』ということに気付き、
このSSではワルプルギスの夜を倒さないエンドになったため杏子は生き残りました。

巴マミ
マミらずに済んだけど、結局最後まで活躍はできませんでした。
でも弱いわけではありません。
マミにとってお菓子の魔女がこの上なく天敵すぎたんです。
能力物の基本は相性、これは大事です。

暁美 ほむら
THE主人公。
具体的にいえば一応の主人公である涼より主人公してるかもしれない人です。
ただこの子がまどかに恋愛感情抱いてるってことは無いんじゃないかなと作者は思っています。

秋月涼
男性だとバレるところを物語の佳境にしたかったので心情描写は途中までありませんでしたが、一応主人公です。
ほむらに持ってかれてるのは原作まどかもですし。
何やかんやでアイドルらしいことしたのはワルプルギスの夜戦(ワルプルギスの夜を避難所から逸らすために戦ってはいるので一応こういう表記にします)で、そこまではひたすら傍観者でした。
ワルプルギスの夜戦までひたすら傍観者なのもまどかと同じですが、最後まで魔法少女にはなりませんでした。
なので代わりに主人公らしい見せ場を用意したいという意図があり、最後のライブシーンが存在するというわけです。

草生える

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