モバマスSSです。
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――海岸
りあむ「海だー」
りあむ「わーい」
りあむ「…………」
P「もっと楽しそうに」
りあむ「できるわけないだろ! 真冬の海を見てはしゃぐヤツがどこの世界にいるのさ! っていうか、なにここ! どこ!?」
P「読んで」スッ
りあむ「うん? えっと――ぼくはいま沖縄県のはずれにある無人島にきています……。あ、沖縄だったんだ? なんで移動中アイマスクさせられてたの?」
P「気分で」
りあむ「意味ないならやめてよ!! めっちゃ怖かったんだぞ! あのまま殺されるのかと思ったよ!」
P「りあむにはしばらく、ここで生活をしてもらう」
りあむ「勝手に話を進めるなし! なんとなくそんな気はしてたけど、無理だよ。ぼく東京ですらギリギリでいつも生きてるんだから、生活力皆無だよ。サバイバルなんてできるわけない」
P「今更そんなことを言っても遅い」
りあむ「ぼくは! いま! 聞かされたんだ! よ!」
P「もう準備はできてるし、すでにカネもかかってる。これは決定事項だ」
りあむ「だからなんでぼくの承諾をとらずに決定させる」
P「フリップを」
スタッフ「ッス」サッ
りあむ「聞いて!!」
~ルール~
・日程は今日を含めて6日間。
・撮影は各所の固定カメラ及びドローン、各自に支給するカメラ。
・スタッフとPは島の近くにある船上で待機。
・初期装備は水、食料、キャンプ用具、ヘルプカード。
りあむ「……あれ? これもしかして、前にありすちゃんとかがやってたやつ?」
P「よく覚えてるな」
りあむ「録画したの100回は見返したからね! やっぱり小学生は最高だね! じゃあこれって、あの企画の第2回とか?」
P「そう」
りあむ「あ、それなら悪くないかも。他のアイドルたちと力を合わせて、育まれる友情! 芽生える愛! ぼくはひとりじゃない!」
P「…………」
りあむ「なんで黙る!?!?」
P「企画段階では、前回と同様、3人のロケとなる予定でした」
りあむ「急に敬語にならないでよ! 不穏さがただごとじゃないよ!」
P「ただ、候補者だった他のふたりのプロデューサーが、『イメージ戦略的に、この企画はお断りしたい』と」
りあむ「なんで!? いや、バラエティの企画だし、そういうのNGのアイドルもいるか。イメージはだいじだもんね……」
P「ちなみに、『ウチのりあむはだいじょうぶです、炎上して暖がとれるんで(笑)』と言っておいた」
りあむ「ばかじゃないの!?」
P「そして、今日に至ると」
りあむ「え、じゃあぼく無人島ソロ!? むりむり、5分と持たずに孤独死するよ」
P「それだと本当に生きていけなさそうだから、急遽もうひとり参加してもらえることになった」
りあむ「あ、よかった。……でもひとりなんだね。だれ? 恐い人じゃない?」
P「それは――」
幸子「カワイイボクですよ!!」ジャジャーン
りあむ「幸子ちゃん!!!」ガシィ
幸子「わっ……フフーン! どうしました? カワイイボクと共演できて、そんなに嬉しいんですか?」
りあむ「嬉しい! 無人島ガチ勢きた! これで勝つる!!」
幸子「ううん……少々不本意な言われ方ですが、まあボクはそれなりに慣れてるので、力にはなれるとは思いますよ」
りあむ「よかった……サバイバルが一瞬でバカンスになった。これはやまない」
幸子「あの、頼ってくれるのはいいんですが、あんまり自然を甘く見ちゃだめですよ」
P「では輿水さん、りあむをよろしくお願いします。邪魔になるようなら見捨てていいので」
りあむ「幸子ちゃん……なんでもするから、ぼくを捨てないで。なにもできないけど」
幸子「あなたたち、いつもこうなんですか?」
*
――1日目
りあむ「船……行っちゃった」
幸子「近くの海で待機するだけですよ、置いてかれたわけじゃありません。ひとまず、荷物の確認をしましょう」
りあむ「うん、ええと……缶詰と乾パンと、ペットボトルの水と、シーツと……」ゴソゴソ
幸子「前回と同じみたいですかね」ゴソゴソ
りあむ「乾パンおいしくないなあ……」モグモグ
幸子「なんで食べてるんですか」
りあむ「え、こういうの食べたことなかったから、ちょっと味見を……ダメだった?」
幸子「これらの食料は保存が利くので、なるべく取っておくようにしましょう」
りあむ「……ごめんなさい」シュン
幸子「あ、そんな大したことではないので、気にしないでください」
りあむ「うん……あとこれは、ナイフと工具?」
幸子「ナイフがあるのは助かりましたね」
りあむ「ぼくを殺すの!?」
幸子「殺しませんよ」
りあむ「で、でもぼくぜったい足手まといになるし……切るなら早いほうがよくない?」
幸子「どうして殺される方向に説得してるんですか?」
りあむ「荷物の確認終わったけど、次は?」
幸子「そうですね、まず海岸をざっと見て回りたいんですけど、いいですか?」
りあむ「全面的にお任せするよ! でも、なんで海岸?」
幸子「漂着物を見たいんですよ。たまに便利なものが落ちてたりするので」
りあむ「そうなんだ」
幸子「これと、これも持って行きましょう」ヒョイヒョイ
りあむ「うーん? ……ぼくに劣るとも勝らないゴミの山に見えるけど、こんなの本当に役に立つの?」
幸子「なんだって使いようですよ。そろそろ森のほう行きましょうか」
りあむ「あれ、もういいんだ?」
幸子「はい、東京よりは気温が高いようですが、夜は冷え込むでしょうから。日が暮れる前に寝床を確保しないと、この時期に野宿は無謀です」
りあむ「そっか、家作るんだね。よし、なんでも言ってよ! ぼく指示されたことしかできないから!」
幸子「それでもいいですが、なるべく楽をしましょう」
りあむ「というと?」
幸子「とりあえず雨風をしのげればいいので、天然の洞窟でもあれば、わざわざ作る必要はないですからね」
りあむ「そんな都合のいいものが――」
幸子「ありました」
りあむ「ええ……?」
幸子「この広さなら、空気は通ってますね。ここを宿泊地にしましょう。りあむさんのカメラ、そのあたりにセットしておいてください」
りあむ「どうしよう、これ完全にぼく必要ない。生きる価値がない」
幸子「これから働いてもらいますから、だいじょうぶです」
りあむ「……なにしたらいい?」
幸子「住居ができたら、あとはなにが必要だと思いますか?」
りあむ「火!」
幸子「正解です。よくわかりましたね」
りあむ「ありすちゃんたちが苦労してるの見てたからね!」
幸子「では、枯れ木と枯れ葉を集めてきてもらえませんか? なるべく乾いているやつを、たくさん」
りあむ「わかった!」ダダッ
幸子「……元気ですね」
りあむ「こ、このぐらいでいい?」ゼーゼー
幸子「はい充分です。少し休んでいてください」
りあむ「うん。でも火って、あの木と木をこすり合わせてつけるの? あんなの拓海ちゃんかスタープラチナしかできなくない?」
幸子「あれは相当な筋力が要りますから、ボクやりあむさんには無理ですね。なので、補助器具を使います」シャッシャッ
りあむ「補助器具?」
幸子「はい、こうして木を削って、あとはヒモ状のものが要りますね」
りあむ「ヒモか、ヒモ……幸子ちゃんのヒモになったら幸せそう……」
幸子「…………」ジーッ
りあむ「じょ、冗談だから! 怒らないで――」
幸子「いま着ている服は、りあむさんの私服ですか?」
りあむ「へ? いや、これは出発前に着替えさせられたやつ……」
幸子「じゃあ、使っていいってことですね。少しもらいます。動かないでくださいね」ピー
りあむ「あ、布……」
幸子「こんな感じですかね。この棒をくぼみに当てて……たしか、糸くずを挟むと燃えやすくなるみたいです」
りあむ「知ってる! クズはよく燃えるよね!」
幸子「そういう話ではないと思いますが。あとはリズミカルに取っ手を下に押し込むだけです。ちょっとやってみてください」
りあむ「う、うん……あ、ちょっと楽しい」グッグッ
『メラメラ』
りあむ「ついた……」
幸子「ありがとうございます。お疲れさまでした」
りあむ「はあー……けっこう大変だったけど、謎の達成感」
幸子「これでとりあえず、最低限の環境は整いましたね」
りあむ「ここで6日も生活するんだね……」
幸子「今日を1日目と数えて、6日目の朝にお迎えの船が来るので、実際はあと5日足らずですよ」
りあむ「そっか」
幸子「今日はあまり動かずに、本格的な探索は明日以降にしましょうか」
りあむ「え? そんなにのんびりしてていいの?」
幸子「日が落ちたら気温が下がってきますし、視界も悪くなりますから、無理は禁物です」
*
――2日目
りあむ「――ううん……さむさむ、やむやむ……あれ? ここは……」
幸子「おはようございます、いい朝ですね」
りあむ「天使がいる……ぼく死んだのかな……やむ」
幸子「寝ぼけてますかね?」
りあむ「あ、幸子ちゃん。そっか、ここは無人島……」
幸子「調子はいかがです?」
りあむ「うーん、少し体が痛いような」
幸子「岩盤に葉っぱを敷いてシーツ被せただけですからね。あとでもう少しちゃんとしたベッドをこさえましょう」
りあむ「あー……あの、幸子ちゃん?」
幸子「はい、どうしました?」
りあむ「えっと、支給された食料、昨夜のうちに食べちゃった。水も、ほとんど……」
幸子「ああ、そんなことですか。だいじょうぶです、この島は見たところ食べ物には困りません。水はまだわかりませんが」
りあむ「そうなの?」
幸子「はい。じゃあボクがなにかとってきますから、りあむさん火の番しててもらえますか?」
りあむ「うん、まかせて。いってらっしゃい」
『パチパチ』
りあむ「……火の番って言っても、そうそう消えかけるものじゃないよね。薪もいっぱいあるし」
りあむ「幸子ちゃんまだかなー……まだだよ。1分前に出てったばっかだよ……」
りあむ「…………」
りあむ「……あ」
*
あきら「……なんで呼んだんデスか?」
りあむ「いきなり辛辣! あきらちゃんはぼくがザコメンタルなの知ってるでしょ、もっと優しくして!」
あきら「いや、見てましたけど、いま別になにも困ってないデスよね?」
りあむ「え? 見てたの? どこで?」
あきら「カメラの映像、船に中継されてるんデスよ。音声も、りあむサンのひとりごともぜんぶ筒抜けデス」
りあむ「え、ホント? どうしよ恥ずかしい、やむ……やむ寄りのやむ」
あきら「それで、なんでヘルプカード使ったんデス?」
りあむ「ひとりになったら寂しくなっちゃって、話相手がほしいなーって」
あきら「そんなことで」
りあむ「ぼくにとっちゃ、いちだいじなんだよう……」
あきら「いたって順調に見えましたけど?」
りあむ「だって、もう完全にカワイイ無双だもん! 幸子ちゃん、本当は自分でやったほうが手際がいいのに気を回してぼくに仕事振ってくれるから、その優しさがまた痛い」
あきら「よけいなところで聡いデスね、この人は……」
りあむ「これぼく要らないよね? 狸の置物でも置いといたほうがまだ有意義だよね?」
あきら「いや、私はりあむサン、必要だと思いますよ」
りあむ「おっ、強引にフォローしてくれようとしてるね。さすが持つべきものは同期の桜。天使か。もっと言って、ぼくを慰めて」
あきら「たぶんりあむサン、足を引っ張るためにいるんデスよ」
りあむ「もう誰も信じない! 寝る!」
あきら「真面目な話デスよ」
りあむ「え?」
あきら「仮に幸子サン単独だった場合、たぶん、この企画は余裕過ぎるんデス。6日どころか、1ヶ月でも問題なくこなせるでしょう」
りあむ「それは……そうかも?」
あきら「見ている方からすると、あんまりヌルゲーでもつまらないんデス。多少は演技もできるでしょうが、幸子サンが今更この程度のことでぎゃーぎゃー喚いても誰も信じません。慣れてるって、知ってますから」
りあむ「…………」
あきら「だからりあむサンは、存在自体がハンデなんデスよ。りあむサンが幸子サンの足を引っ張って、ちょうどいい難易度になると。まあ、これは自分の考えデスが」
りあむ「どうしよう、ちょっと納得しちゃった。でも、それじゃあぼくは幸子ちゃんの邪魔しないといけないの? うまくできるかな……」
あきら「自然にしてればいいデスよ。たぶんそれで、わりと邪魔デス」
りあむ「ひどいよぅ……」
*
幸子「お待たせしました。カワイイボクが戻りましたよ……あれ?」
あきら「コンニチハ」
幸子「……ヘルプカードですか。なにか問題でも?」
あきら「ただの無駄遣いデス」
りあむ「ご、ごめんなさい」
幸子「いえ、なにもないならいいんですよ。それよりごはんにしましょうか」
りあむ「そういえば、食べ物探しに行ってたんだっけ。なにかあった?」
幸子「はい。これです」
『ブオー』『ブオー』
りあむ「カエル!?」
あきら「ゲテモノktkr」
りあむ「むりむりむりのかたつむり! こんなの食べれるわけないんですけど!」
あきら「『ですけど』言わない」
幸子「調理すれば気にならないと思いますよ。あ、せっかくなので、あきらさんもどうぞ」
あきら「えっ」
幸子「下ごしらえは見ないほうがいいと思うので、あっちでやってきますね」テクテク
あきら「#とばっちり #どうしてこうなった #やや興味あり」
りあむ「興味あるの!?」
あきら「あれ、ウシガエルデスね。前にりあむサンが触らせられてたヤツ」
りあむ「こんな再会したくなかったよぅ」
あきら「そのときに聞いたんデスよね。あれは食べるとけっこうおいしいって」
りあむ「え、本当に?」
幸子「はい、焼けましたよー。いただきましょうか」
りあむ「……たしかにこうなると、ふつうに焼いたお肉だね」
あきら「でも、よく見るとやっぱりカエルの太ももデスよ。ほらこの形」
りあむ「そういうこと言わないで。うう……」ビクビク
あきら「#はよ」
りあむ「あきらちゃん、ぼくに当たりきつくない?」
あきら「打ち解けてるんデスよ」
幸子「あの、どうしても無理なら、他のものを用意しますが」
りあむ「い、いや食べる。せっかく幸子ちゃんがとってくれたんだし……」
りあむ「…………」ソロソロ
りあむ「…………」パクッ
りあむ「…………」モグモグ
りあむ「……あ、おいしい」
あきら「じゃあ私も。……へえ、たしかにイケますね。ちょっと鶏肉っぽい?」モグモグ
りあむ「これなら食べれる! これから毎日カエルを焼こう!」
幸子「いえ、採り過ぎてもよくないので、毎日はやめましょう」
あきら「なんでよくないんデス?」
幸子「なるべく生態系に影響を与えたくないので」
あきら「思考がプロっぽい」
幸子「ところで、りあむさんはなぜヘルプカードにあきらさんを指名したんですか? 失礼ですが、あまりサバイバルに強いようには見えませんが」
りあむ「まずヘルプカードだって知らなかったんだけど、なんとなく先輩の名前書くのが恐れ多くて……あきらちゃんなら同期だから……」
幸子「ああ、そういう理由ですか」
あきら「#ヘタレ」
りあむ「うるさいな!!!」
幸子「いえ、わかりますよ。ふだん関わり持ってないと指名しづらいですよね。でもこういうときぐらいは遠慮しないでいいと思います。こういうことがきっかけで仲良くなることもありますから」
りあむ「うう……幸子ちゃん優しい……しゅき……」
幸子「ちなみに、ボクのヘルプカードは杏さんです。ちゃんと来てました?」
あきら「来てますよ。船でずっと私とゲームしてましたから」
幸子「では、これはりあむさんが持っててください」
りあむ「なんでぼくが?」
幸子「ボクには必要ないと思うので。それは切り札ですから、最後まで使わないつもりで、本当にどうしようもなくなったときだけ使ってくださいね」
りあむ「う、うん……わかった」
『ピー、ピー』
りあむ「なんか鳴ってる?」
あきら「私デスね。いいかげん戻ってこいってことかな」
幸子「そうですか。杏さんによろしくお願いします」
あきら「ハイ、ごちそうさまでした」ペコリ
幸子「そういえば、りあむさん、ひとつ悪いニュースがあります」
りあむ「え、聞きたくないけど……なに?」
幸子「さっきざっと外を歩いてみたのですが、川や湖のようなものは発見できませんでした」
りあむ「……えっと、つまり?」
幸子「この島には、どうやら真水がありません」
*
――船
あきら「戻りました」
杏「おかえりー」
あきら「私なにもしてないけど、いいのかな? こんなんで」
杏「話相手も立派な仕事じゃない? りあむちゃん不安だったろうし」
あきら「デスかね」
杏「ただ、足を引っ張る役ってのは、どうだろうね」
あきら「違いました?」
杏「素人ひとりの面倒見るぐらいで、幸子の邪魔になんかならないよ」
*
――海岸
幸子「というわけで、あれを採ります」
りあむ「ヤシの実?」
幸子「はい。しかしりあむさんもなかなか背が低いですね。ボクが肩車するので、りあむさん採ってください」
りあむ「まってまって、逆にしよう! ぼくやみ属性だし、重い女だから!」
幸子「はあ……りあむさんがいいなら。では失礼します……だいじょうぶですか? 立てます?」
りあむ「よゆーよゆー、どう? 届く?」
幸子「うーん、もう少しですね。肩の上、立っていいですか?」
りあむ「いいよ! なんなら頭踏んでもいいよ!」
幸子「それはかえってバランスとりづらくなるので……よっと、ひとつ採れました。落としますから、気を付けてくださいね」
りあむ「これがヤシの実……固そう」コンコン
幸子「ひとまずはこのぐらいでいいですかね」
りあむ「これ、ナイフで開けるの?」
幸子「いえ、刃が欠けると困るので、叩き割ります。こうして岩を集めて、実を立てるように固定して。上から大きめの岩を落とします」
りあむ「でもこれ、中の果汁が目的なんだよね? 割ったらこぼれちゃわない?」
幸子「ヤシの実は三重の構造になってるので、このカラの中にクッションがあって、更にその中に種子があるんですよ。果汁は種子の中なので、いちばん外のカラは遠慮なく割って平気です」
りあむ「くわしい……」
『ゴスッ』
りあむ「割れた?」
幸子「小さいヒビが入ったぐらいですね、もう1回」
『ゴスッ』
りあむ「はあはあ……どう?」
幸子「いいですね、あとは手で開けられると思います」
りあむ「よし、ふんっ!」メリメリ
幸子「そのふさふさしたところはよく燃えるので、持ち帰ります。で、その中にあるのが」
りあむ「種子!」
幸子「はい、今度はそれを手に持って、岩に叩きつけます。その中は果汁ですから、こぼさないように気を付けてくださいね」
りあむ「うん!」ガッ
『パカン』
りあむ「開いた……」
幸子「飲んでいいですよ」
りあむ「う、うん」ゴクゴク
幸子「どうです?」
りあむ「おいしい!!!」
*
――船
杏「……いいな、あれ。杏も飲みたい」
あきら「だめデスよ。ふたりにとっては貴重な資源なんだから」
杏「ココナッツジュースは1個あたり約1リットル入ってるらしいから、あれだけ生ってるなら、島にいるあいだは充分でしょ」
あきら(この人もまた、よく知ってますね)
杏「杏がヘルプで呼ばれたら、もらってこようかなー」
あきら「そのときは、自分のぶんもお願いします」
杏「はいよー。まあ、まず呼ばれないかもしれないけどね」
*
――3日目
幸子「さて、今日はりあむさんにも食料調達を手伝ってもらいます。そこでひとつ、注意があります」
りあむ「うん、なに?」
幸子「キノコは採らないでください。食べないので」
りあむ「あれ? 幸子ちゃんってキノコアイドルの星輝子ちゃんと仲いいよね、そんなこと言っちゃってていいの?」
幸子「前に、その輝子さんに訊いたことがあるんですよ。『食べられるキノコの見分け方を教えてもらえませんか?』って」
りあむ「そうなんだ。それで、なんだって?」
幸子「『見分けるのは専門家でなければ難しいから、野生のキノコには手を出さないほうがいい』って言ってましたね」
りあむ「へえ~」
幸子「これはテレビの企画ですから、いざとなったらギブアップができます。ですから本当に命の危機になるようなことは滅多にありません。その中で、食中毒というのは数少ない死因になり得るものなんですよ。毒キノコというのは食べたら最後、もうなにをどうしても助からないものもあるそうです」
りあむ「う、うんわかった。キノコ、ダメ、ゼッタイ。……じゃあ、どんなものを探すの?」
幸子「野草も毒がある場合があるので、果実か、あとは野生動物ですね。カエル、ヘビ、野ウサギなど」
りあむ「なるほど、果物か動物ね。動物……」キョロキョロ
りあむ「…………」
りあむ「あ、あの……幸子ちゃん?」
幸子「はい、なにかありましたか?」
りあむ「えっと……あったというか、いたというか……ちょっと、あっち見て、アレ」
幸子「あれ……?」クルッ
『グルルルル』
幸子「…………」
幸子(……冗談でしょう?)
りあむ「たしかぼく、あの動物知ってるはずなんだけどさ、ちょっとド忘れしちゃって……なんていったかな? あれ」
幸子「……熊ですね」
りあむ「そうそう、熊! さすがは幸子ちゃん、なるほど熊ね、熊……く、く、く、くま!?!?!?」
幸子「大きな声は出さないでください」
りあむ「ご、ごめん……」
幸子(下見は必ずおこなってるはず。ここまでやるはずは――スタッフも知らなかった? 下見にきたときは冬眠中で、気付けなかったということも……)
りあむ「えっと……死んだふりすればいいんだっけ?」
幸子「迷信ですよ。倒れたらとどめを刺されます」
りあむ「だ、だったら、逃げなきゃ……」
幸子「そうですね……ただ、聞いた話では、背を向けると追ってくるそうです。少なくとも、人よりは速いでしょうし」
りあむ「じゃあ、どうするの……?」
幸子「…………」
熊『グル……』
幸子(……襲ってこない。様子見? 警戒している?)
幸子「……後ろ向きにゆっくり下がって木の陰に入って、熊の視界から外れたところで反転して、洞窟まで全力で走ってください」
りあむ「わ、わかった。行こう」
幸子「……りあむさんひとりで」
りあむ「!? な、なんで!?」
幸子「追いかけてくるかもしれませんから、ボクが注意を引きます」
りあむ「でも、それじゃ幸子ちゃんが……」
幸子「行ってください」
りあむ「いやいやいや! ほら、まだ襲ってこないし、意外とサクッと逃げられるかもよ」
幸子「……りあむさん」
りあむ「やだよ! 幸子ちゃんといっしょじゃなきゃ――」
幸子「りあむさん!!」
りあむ「!?」ビクッ
幸子「……あまりこういうことは言いたくありませんが、足手まといなんですよ。ボクひとりなら、この場はなんとでもなります。だから、りあむさんがここから消えてくれると、ボクはとても助かるんです」
りあむ「そんな……」
幸子「早く、行ってください」
りあむ「う、うう……」ジリジリ
熊『グル……』ノソッ
りあむ「ヒッ!」
幸子「――おおっと! 熊さん、こんなにカワイイボクを放って、どこへ行こうというんですか!?」
熊『…………』ピタッ
幸子(――今ッ!)
りあむ「う……うわあああん!!」ダッ
熊『…………』
幸子(よし)
熊『グルルルル』ノソッ
幸子(……さて、さすがにひとりは見逃してくれないですか)
幸子(武器は、ちっぽけなナイフが1本だけ。心もとないですね)
幸子(それでも――)
熊『グルルルル』ノソノソ
幸子「ボクは!! 宇宙一カワイイアイドル、輿水幸子です!!」
熊『ウガアアア!!!』
幸子「熊なんかに、負けませんよ!!!」
*
――洞窟
りあむ「げほっ、げほっ……はぁー、はぁー、はぁー、おえっぷ……」
りあむ(逃げ切った! 逃げ切った! 逃げ切った! 逃げ切った!)
りあむ(――幸子ちゃんは)
――あまりこういうことは言いたくありませんが、足手まといなんですよ。
りあむ「なんで」
――ボクひとりなら、この場はなんとでもなります。
りあむ「なんで!」
――だから、りあむさんがここから消えてくれると、ボクはとても助かるんです。
りあむ「……なんでそんな……泣きそうな顔で言うんだよう」
*
――1時間後
りあむ(……幸子ちゃんが帰ってこない)
りあむ(まだ逃げている最中? もうけっこう時間経つけど……)
りあむ(道に迷ったとか? それとも、ケガでもして動けなくなってたり……)
りあむ(助けに――)
りあむ「…………」
りあむ(……ぼくは)
りあむ(――動かない)
りあむ(どんな状況にしろ、ぼくが助けになるよりは、邪魔になる可能性のほうがずっと高い)
りあむ(いまは、なにもしないってことが、いちばん幸子ちゃんのためになる)
りあむ(そのはず……)
*
――4日目
りあむ(……火が、消えちゃった)
りあむ(早く起こし直さないと……幸子ちゃんが困っちゃうよね)
りあむ「よいしょ……」グッグッ
『バキッ』
りあむ「あ……」
りあむ「…………」
*
――船
あきら「りあむさん、洞窟から一歩も出てないみたいデスね」
杏「無人島で引きこもりとは新しいね」
あきら「食事も、水分もとってないはず……とことんサバイバルに向いてない」
杏「いや、あれはあれで悪くないと思うよ。ずっとあそこで生きていくならともかく、期間が決まってるんだから、消耗を抑えてタイムアップ狙うのはアリでしょ」
あきら「……それ、精神的にキツくないデス?」
杏「キツいだろうね。あれこれ考えちゃうだろうし」
幸子「うーん……さすがに心が痛みますね」
あきら「幸子サンは、あれ作り物だって知ってたんデスか?」
幸子「いえ、気付いたのはりあむさんを逃がしてから、近くまで寄ってきてからです」
杏「よくできてるよね、外側は本物の剥製かな。あの声は、録音?」
幸子「はい、何種類か録ってあって、動作に合わせて再生していたそうです。……おふたりも、知らされてなかったんですよね?」
杏「もちろん。なんか仕掛けるだろうなとは思ってたけど」
あきら「そうなんデスか?」
幸子「……ボクは本来の予定にはいなかったので、元々番組のターゲットはりあむさんなんですよね。サバイバルはおまけで、メインはりあむさんへのドッキリだったということですか」
杏「たぶんそーゆーこと」
あきら「……悪趣味な企画」
*
――5日目
りあむ(……寒いな)
りあむ(……喉、かわいたな)
りあむ(……体が痛い)
りあむ「…………」
りあむ「…………幸子ちゃん」
*
――船
スタッフ「双葉さん、ヘルプカード出ました」
杏「お、やっとかー」
あきら「行ってらっしゃい」
幸子「……よろしくお願いしますね」
杏「うん、まかせて」
*
――洞窟
杏「おまちどー。なかなか呼ばれないから、忘れられてるかと思ったよ」
りあむ「杏ちゃん……」
杏(……かなり、衰弱してる)
杏「いまの杏はランプの魔人だよ。どんな願いも、できるだけ叶えてしんぜよー」
りあむ「う……ううううう……うわあーん!!」ギュウッ
杏「…………」
りあむ「…………」グスグス
杏「……ほら、早くしないと、時間切れになっちゃうよ」ポンポン
りあむ「うう……杏ちゃん……」
杏「うん、杏に、なにをしてほしい?」
りあむ「幸子ちゃんを助けて」
杏「……だいじょうぶ、幸子は無事だよ。ケガもしてない」
りあむ「ほ……ほんと?」
杏「うん、リタイアってことになったから、こっちに合流はできないけどね。いまは杏たちが待機してた船にいるよ」
りあむ「よ、よかったあああああ……」
杏「それにしても、ひっどい顔だね。ちょっと外出ようよ」
りあむ「でも……外は熊が……」
杏「あー……熊は幸子が倒したから、だいじょうぶ。もういない」
りあむ「そうなんだ……幸子ちゃんすごい……」
*
――海岸
杏「さて、杏いちおうヘルプだからね。火、起こしてあげる。寒かったでしょ」
りあむ「どうやって?」
杏「これ、借りるね」
りあむ「ビニール袋?」
杏「晴れててよかったね」
りあむ「……?」
『メラメラ』
杏「思ったよりあっさりついたね」
りあむ「……杏ちゃんは、魔法使い?」
杏「ビニール袋に海水入れてレンズにしただけ。これがいちばん楽だと思う」
りあむ「ああ、あったかい……」ガタガタ
杏「……せっかくだから、もうちょい手伝ってくよ。しばらく火に当たってて」
りあむ「う、うん」
杏「――これでよし。そのうちこっちの容器に水たまってくるから飲んで。きれいな水だよ」
りあむ「これ、どうなってるの?」
杏「海水沸かして蒸留水とってるんだよ」
りあむ「……杏ちゃんは神?」
杏「カワイイ神が色々集めてくれてたおかげだから、感謝するならそっちにね」
『ピー、ピー』
杏「ん、お助けはここまでみたい」
りあむ「え、もう行っちゃうの? 寂しい……」
杏「あとちょっとだからがんばって。それと、さっき通ってきた道で木に印つけてきたから、そこの地面掘ると山芋があるよ。食べたかったら掘ってね」
りあむ「あ、ありがと……」
杏「それじゃ、また明日」フリフリ
*
――船
杏「ただいまー」
幸子「お疲れさまです」
あきら「サービスしすぎじゃないデスか?」
杏「近くで見たら、すっごいやつれてたから。可哀想になっちゃった」
あきら「いいんデスかね? 番組の趣旨に反するんじゃ?」
杏「いいんだよ。杏たちはアイドル側の味方として呼ばれてるんだから、そんなの考慮してやる必要ない」
あきら「それもそう、かな?」
幸子「すでに充分というか、やり過ぎですよ……」
杏「あ」
幸子「どうしました?」
杏「ヤシの実、忘れてた……」
あきら「あっ」
幸子「ヤシの実??」
*
――6日目、朝
『夢見りあむ、無人島生活6日間、終了』
*
――船
りあむ「Pサマぁあああ!!!!!」
りあむ「よくも! ぼくを! 騙してくれたなぁあああ!!!」
あきら「なにごとデスか、あれ」
杏「ネタばらし、撮ってるんだって」
あきら「ああ……まあ、必要デスね」
杏「あ、殴った」
あきら「オンエアできるのかな、これ」
*
りあむ「幸子ちゃん!!!」
幸子「来ましたか」
りあむ「……生きてる、よね?」
幸子「もちろんです」
りあむ「……ケガ、してない?」
幸子「はい」
りあむ「……よかった」
幸子「……りあむさん、ボクも仕掛け側ってことになるんですよ。怒って、いいんですよ」
りあむ「ううん……Pサマから聞いた……幸子ちゃんは、あの場ではまだ、なにも知らなかったって」
幸子「……はい」
りあむ「じゃあ幸子ちゃんは、命がけで、ぼくを守ってくれた」
幸子「死ぬつもりなんてありませんでしたよ」
りあむ「それでも」ギュウッ
幸子「…………」
りあむ「……ありがと」グスッ
幸子「……りあむさん、よくがんばりましたね。お疲れさまでした」ナデナデ
P「せっかくなので、このままエンディングを撮ろう」
りあむ「Pサマって空気読めないよね。このぼくに言われるなんて相当だよ?」
P「どうせなら、やつれ果てたその顔のまま番組を締めたい」
りあむ「人の心がないの?」
杏「え、杏が司会やるの? えーと、じゃあひとりずつ感想を、まず幸子から」
幸子「罪悪感がひどかったですね」
あきら「でしょうね」
杏「はい、じゃあ次、りあむちゃん」
りあむ「感想って、なにを言えってのさ?」
杏「んー……楽しかった?」
りあむ「最初のうちはね! 途中からは控えめに言って悪夢だったよ!」
杏「はは……感想ありがと。じゃあこのへんで、番組もおひらきー」
あきら「最後は全員でタイトルコールを、デスね」
杏「はい、せーのっ」
『常夏ココナツ恋の夏!』
『夏に恋するサバイバル! IN 無人島!』
りあむ「なにが常夏だよ!!! 冬だよ!!!!!」
~Fin~
これ、事務所が裁判所から活動停止食らってもおかしくないレベルな気が
放送したら間違いなく大炎上して事務所ボロクソに叩かれるだろ。あとプロデューサーが流石にガチでゴミ。久々にSS読んでて本気で「こいつ死なねえかな」って思ったわ。
りあむの言う通り途中までは面白かったけど熊以降は正直胸糞過ぎる
クレームの電話が大量にきそう
この程度で云々言ってる人達バラエティ番組見たことなさそう
潔癖症すぎだろお前ら
現実と創作の区別くらいつけろよ
誰も現実の話なんてしてないんだが?
ギャグに振り切ってれば良かったんだけどな
なまじ前半普通に面白かっただけに、タチの悪いドッキリになって不快感覚える人もいるだろう
とはいえ>>46は創作相手になんでここまで目くじら立てられるんだろう
冬の日差しでもビニール袋で火口に引火できるん?
※51
創作なら何したっていい訳じゃないだろ。それを言ったら※51の家族をミンチにするSS書いてもいいのか?創作なんだし何してもいいんだろ?
まぁゴミはさておき取り合えず色々ツッコミどころはあるけど一番酷いと思ったのは「沖縄に熊がいる」って点かな
まとめ民やんけ!
創作の楽しみ方も知らない初心者なら仕方ない
おつおつ
創作なら何してもいいと本気で思ってる池沼がいて草
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