魔法少女アレイスたん☆マギカ (144)

 終章
 体の感覚が失くなってくる。
 あれ程全身を叩くような痛みと灼熱の業火に焼かれるような熱さが、今となってはほとんど感じなくなっている。
 私は死ぬのだろう。
 体にどれだけ力を入れてもピクリとも動かない。体温も下がって、恐らくもうすぐにでもただの肉塊へと変り果てるだろう。
 無様だ。
 今の姿は誰がどう見ても無様に映るだろう。
 だがそれだけの事をしてきたのだ。仕方の無いことだ。
 リリスは無事に育つだろうか。反抗期などきたら...いや、ミナ=メイザースに任せておけば大丈夫だろう。少なくともまともに子育てをしていなかった私よりはいい。
 世界は、学園都市は、子供達は大丈夫だろうか。私が引っ掻き回した世界、これからも病みは必ず出てくる。それらに対抗しうるだけの力をそなえていればいいが...いや、他人の心配事など、私らしくないな。任せたのだから後は祈るよりも他はあるまい...

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1579166262

  沈みゆく意識の中、アレイスター=クロウリーはぼんやりと考えていた。
 自分の娘の事、これからの未来の事を。問題はまだ山積みである。しかし心配する事はないだろう。
 何故なら、大人達の支配は終わり、これからは子供達が時代を築くのだから。彼ら彼女らを阻む壁がどれだけ高かろうと、どれだけ闇の力が強かろうと、対抗し、打ち勝つだけの力ある。そうアレイスターは信じていた。
 心配事といえばリリスに脅威が降りかかるかも知れないということだが、これもミナ=メイザースや子供達に任せて大丈夫だろう。

 などと考えている内に意識が朦朧としてきた。
 当然だ。アレイスターはただでさえオルソラやメイザースとの戦闘、コロンゾンの奇襲で重症を負っているのだ。これまで動けていた方が不自然なのだ。そして何よりもアレイスターの命を奪っていっているのは、コロンゾンの一撃による腹の風穴である。腹の穴からは今もおびただしい量の真っ赤な鮮血が溢れ出ていた。
 これから死ぬ。
 なのに胸の内は満足感でいっぱいだった。
 これまで不幸続きだった、失敗だらけだった、敗北ばかりだった。けれど今は違う。コロンゾンの野望を食い止め、リリスを救う為に皆を信じ、共に戦った。結果として自分が死ぬ事になっても、それでも構わなかった。リリスを救えれば、それで。
 心残りがあるとすれば父親としてリリスの成長を見られない事くらいか。
 ガゴンッッ!!という重い金属音が遠く聞こえた。この船もじきに沈む。そして暗い海底へと沈んでいくのだろう。
 全く良い人生とはいえなかった。しかしこういう最期も乙なものだ。
 そう思案するアレイスターの顔は満足気で晴れ晴れとしたものだった。たった一人の娘を守りきったとある男の、父親の人生が今幕を閉じようとしていた。






さあ、最期の時間だ




最近の禁書知らんとスレタイからとあるssだって全然分からないだろうなw

つかムーンチャイルドとかレディ・エセルドレーダとかそっちのほうかと思って期待しちまったわ
禁書とか紛らわしいな

なんてこった変態親父が紛れ込んじまった。種付けオジさんより厄介者だぞ

 「う...ん...?」
 まだ薄暗い早朝のとある街の路地裏にてアレイスター=クロウリー(見た目は♀、中身は♂ことド変態クソ親父)は目を覚ました。
 「ここは...?」
 幼くも美しく危険な香りを放つ少女(?)はぼんやりとする頭を抑えながら辺りを見渡す。辺りはまだ薄暗いが、ぼんやりと見渡せる程度の明るさはある。路地裏といっても学園都市のようなゴミが散乱し、薄汚い印象はなく、逆に小奇麗な感じだった。
 続いてアレイスターは自分の体をペタペタと触り始めた。身体の方は相も変わらずベイバロンをイメージソースとした女の身体である。格好は以前と同じ薄い青をベースとしたダブルブレザー系統の制服の上に真っ黒なマント、魔女のような帽子を被っていた。近くには女体化した時から使っている箒が転がっていた。
 結論としては身体には怪我らしい怪我もなく、何も異常はなくーーー
 「傷が...ない...?」
 と、そこでアレイスターは初めて思考が現実に追いついた。
 そうだ、確か自分はコロンゾンの一撃を受け、イギリスで死んだ筈...。
 それが何故こんな路地裏にいるのか、いや、そもそも何故自分は生きている?
 と思案していた所でまた一つ、”変化”に気付いた。

 「位相が...違う?」
 そう、自分達のいた位相とここの、この世界の位相は全くの別物であるとアレイスターは気付いた。幾重にも折り重なりあっている位相の何処かに迷い込んだか?とアレイスターは考える。別の位相に迷い込んだ可能性の他に多重宇宙、平行世界etc...考えられる候補はあれど確信には至れず、とりあえず保留となった。
 アレイスターは意識を切り替え、
 「さて、またいつもの『失敗』か。ここは何処か、何故私が生きているのか、それらは今は置いとこう。当座の目標はまず情報収集だな」
 (それにこの世界は妙な違和感を感じる)
 この世界に来たと分かってから感じる世界を覆う違和感。魔翌力にもAIM拡散力場にも似ているが確かに違う謎の力をアレイスターは感じていた。
 (これに関しては自分の足を使って調べるしかないか)
 と、意気込んだはいいもののまずどうやって情報を集めるかが問題となってきた。
 彼女(?)は現在、無一文である可能性があるからだ。
 情報を集める上で便利になってくるのはやはりインターネットであるのだが、彼女(?)は現在、スマホやパソコンを持っているわけではないのだ。
 となるとネット喫茶を使うのがいいのだが、なんせ金がかかる。

 アレイスターは国のつや二つ、買える程の金があったのだが、そもそもそれは学園都市統括理事長として座していた頃の金で権限を全て一方通行に譲ったし、ここがどういった所か、大体位相自体違う訳だからアレイスターの金があるかどうかも怪しい。
 ポケットマネー、すなわち懐にあるカードもあまり期待できそうにない。
 その為、アレイスターはほぼ無一文に近い状態であるからして、ネット喫茶は厳しい状況である。
 ネットが使えないかも知れないという状況にアレイスターは頭を抱えて、
 「...仕方ない。地道に調べていくしかないか」
 最悪体を売ればいいと考え、何かを諦めたようにアレイスターはため息を吐きながら、路地裏を出ていくのであったーーー

ナチュラルに身体売ることを選択肢に入れるアレイスたん

 時空の狭間にてーーー
 また失敗だった。
 あの少女との約束を交わしてからどれだけ繰り返しただろうか。どんな方法をとっても必ず何処かで失敗する。
 いや、落ち込んでいる暇があれば次はどうすれば惨劇を回避できるか考えなければ。
 どうやったら彼女を救える?
 どうすれば平穏な日々を取り戻せる?
 ただ疑問がぐるぐると頭の中を駆け巡る。無駄な事を考えている暇さえないのに、時は考える時間も与えず刻一刻と迫りつつある。

 『キュウべえに騙される前のバカな私を助けてあげてくれないかな』

 ふと、彼女と交わした約束が頭によぎる。
 そうだ、こうやってウジウジしてはいられない。
 今度は、今度こそは!絶対に!!彼女を!!!---

 「ふう、こんなとこか」
 アレイスターはネット喫茶のパソコンから目を離す。
 アレイスターは自分の所持金に不安を抱えていたが杞憂に終わったようだ。彼女のポケットマネーはこの世界でも十分に使えるらしい。...まあ最悪の事態に備えていた『案』が潰れたのを残念に思ったのはまた別の話だが。
 またネット喫茶に入った時に店員がコスプレ家出少女と間違われ、一悶着あったのも別の話である。
 この街、この世界について分かった事がある。

 まず、この街は日本の群馬県の見滝原市というらしい。
 大体この時点で疑問符しか浮かばない。アレイスターのいた世界に群馬県はあれど見滝原市などという街は存在しないからである。
 これについては一旦保留として、次に、この世界には学園都市は無いという。
 こちらについては大方予想出来ていたからあまり驚きはしなかったが。
 ただ科学技術の宝庫であり、科学サイドの総本山である学園都市がない代わりにこの見滝原市では他より科学技術が進歩しているらしい。科学技術では学園都市が上をいくが普及率に関しては見滝原市の方が上だろう。このネット喫茶に来る道中には“外”とは思えない程には科学技術が詰め込まれた物がいくつもあった。これにはアレイスターも少し驚いた。

 また、表立ってはいないがローマ正教やロシア成教、イギリス清教を代表とする宗教・魔術関連の組織も一応あるらしい。
 魔術サイドと科学サイド、この二つが分かれているという事はアレイスターの原型制御は働いているのだろう。
 恐らく、魔術サイドと科学サイドは対立こそしてはいないものの仲は決して良くはないだろう。
 それから万が一自分が生きている事がバレぬよう細工せねばなるまい。(まあアレイスターは小細工をどうこうしたところで無意味なので成り行きに任せる他はないのだが)
 ついでに自分の戸籍等についても調べたのだが、芳しい情報は出てこなかった。
 「だがまあ、衣食住に関しては何とかなりそうだ。」
 というのも現在、彼女の財産はブラックカード以上の価値の、大量の金が収められているカードを所持しているからである。
 このカードがあれば、ネット喫茶を寝床として、服や食べ物も買える。

 「さて、情報も粗方集まったが、これからどうしたものかね。私としてはあの時あの場所で[ピーーー]れば満足だったのだが」
 何故自分は生きているのか、何故別位相に飛んでしまったのか、そしてこれからどうするか。
 疑問や問題は掃いて出てくるのに、解決策が一向に思い浮かばない。衣食住はどうにかなるとはいってもそれも無尽蔵にある訳ではないのだ。
 ...考え事をしても仕方ない。
 先ずは行動しなければならない。
 「息抜きに散歩でもするか。この街についてもよく分かっていないのだからな」

メール欄にsagaを入れたほうがよろしいかと

名前欄にサブタイ入れてるって今気づいた

名前欄のやつはGLAYの『誘惑』です。
邪魔ですね。消します。

 「改めてみれば本当に凄いなこの街は」
 アレイスターは見滝原市という街を見渡し感嘆の声を漏らした。
 学園都市にいた頃は外なんぞ大したことはなかった。だがここ見滝原市は違う。
 学園都市以外の場所でこれだけ学園都市に近い科学力のある場所は新鮮に映り、何かとは童心に帰ったアレイスターだった。
 学園都市という科学の王として君臨していた頃は学園都市は様々な実験や研究は勿論、学園都市内の学校の経費、また、アレイスターが設定したとはいえ様々な事件や事故等(勿論暗部関連も含む)が多発しており、それらの処理等に金をつぎ込む為の金が必要なのだが、それは学園都市の上層部がいつも頭を抱える程の莫大な金額が必要だった。
 その為か見滝原市と比べると普及率はやはりというべきかダンチであった。
 この街は地方都市であるにも関わらず、近未来的であり、最新技術も数多く導入されていた。
 公共機関は全てタッチパネルであり、恐らく一般家庭にまでにまで及んでいるだろう。実際、アレイスターがいたネット喫茶でも全てタッチパネルによる操作盤だったのだから。

オープン席なら会員になる必要無いだろうけどネット使える席ならほぼ確実に会員証いるだろうし身分証とかどうしたんだ?

 それからアレイスターがこの街を良く思っているのはそれだけではない。
 当たり前の事だがこの街には闇の匂いがしない。
 アレイスターの管理・管轄していた学園都市では常に闇の気配がしていた。常に血みどろの世界だった。
 毎日誰かが道具のように扱われ、いつも誰かが悲鳴にならない声を上げていた。
 暗部だけではない。
 例えば今朝、アレイスターが倒れていた時、学園都市ではどうだったか。スキルアウト等に見つかれば速攻R指定だっただろう。
 学園都市の悲劇・惨劇はアレイスターが作り出してきた。他人を鑑みず、ただ己の目的の為だけに。
 この街はもしかしたら学園都市が本来あるべき姿なのではないだろうか?
 「全く、同じ科学の進歩した街だというのにこうも違うと泣けてくるな」
 自分の創った科学の街が、上条当麻を活躍させる為だけに悲劇が生まれるようにしたと、その為に創ったと、こう改めて考えれば自分は本当に救いようのないクソッタレな人間だと、アレイスターは心の中で自嘲した。
 (まあ今更感傷に浸っても仕方ないのだが)
 アレイスターは頭のスイッチを切り替え、街の散策を続けたーーー

 街の散策を続けてアレイスターの気分が良くなり、夢中になっていた為か、いつの間にかもう太陽が沈みかけオレンジ色に輝き、月が見え始め、夜の始まりを迎えようとしていた。
 周りには仕事から解放され、疲れきったサラリーマンがごった返していた。アレイスターは人の奔流から外れた路地裏の入り口の付近にいた。
 (ふむ、少し散歩に夢中になっていたかね。そろそろネット喫茶にでも戻るとするか)
 残念ながらアレイスターが目を覚ました時に感じた妙な違和感については分からなかったが、この街についてはある程度把握した。やる事はまだまだ山積みだが、今は体を休めたかった。
 (ん?)
 そう考えていた時、不意に違和感を感じた。日常ではまずあり得ない、この人混みの山に紛れる、非常に薄いが闇の気配。
 ...路地裏からだ。
 ある程度暗部に関わっている者、浸っている者ならばこの程度の闇にもすぐに気付く。ただ普通であればこの程度、大したことも出来ないチンピラ同然だろうがアレイスターにとっては少し気掛かりな事があった。
 魔力とアレイスター=クロウリーの魔術の派生術式。
 即ち魔術師。
 魔術を行使すれば位相の衝突・軋轢から生じる火花・飛沫、即ち運命を魔術の規模に関係なく撒き散らす事になる。
 そうやって自分の目的の為に例え無自覚だとしても関係のない人々を運気の奴隷とする事はアレイスターにとっては見過ごせる訳がなかった。
 それにこの科学の街で魔術師が入り込み魔術を行使するというのはどうも“不穏”という二文字が付きまとう。

魔法少女の神となるまどかは魔神と呼べるんじゃないかい?とQB10032号は口に出します

<<24
まど神様は全宇宙に干渉し得る存在なので
まど神様>魔神
となります。
ただまど神様は概念となっているので同じく概念で世界に強い影響力を持つ樹(セフィロト、クリフォト、クロノオト)とまど神様は、
まど神様≧樹
となるのかな?まど神様は意思を持った概念と言えますし。魔神は法則や樹のような概念をどうこうできない筈ですし。出来るとすれば白いあのお方位しか思いつきませんが…アンナは無視して頂いてください。

まどかは未踏級だったのか。
ならばほむらは漆黒の顎?もしくは全知?それともおが屑頭の便所ブラシ悪魔?

 アレイスターは魔術師を潰すべく、体を闇に溶かしていった。
 路地裏は学園都市と違い、生ゴミや空き缶等のゴミが綺麗に掃除されており、路地裏だというのに全く不快感を感じさせないものだった。だが、そういったゴミ類とは違うねっとりとした闇の匂いが鼻につく。夕陽の消えかかった暗い路地裏をアレイスターは躊躇なく進んでいく。
 路地裏の角を曲がり少ししたところで、アレイスターは“異臭”を嗅ぎ取った。
 ...血だ。
 恐らく動物の血を使い魔法陣を描いているのだろう。先へ進むごとに血の匂いが強くなってくる。
 魔術師の狙いは分からないが、禁止されている動物の血を使って大雑把な術式を組み上げていたり、いくら路地裏とはいえ人払いもせずにこんな大胆に魔術を仕掛けるとはとんだ大物か三下のどちらかだろう。...恐らくというか十中八九後者だが。
 血の匂いがどんどん濃くなっていっているところから魔術師はすぐ近くにいるだろう。
 魔術師の何かを唱える声も聞こえてきた。
 角を曲がってすぐそこに、魔術師はいた。
 真っ黒いローブを顔深くまで被り、右手には巨大な銀の杖、左手には古ぼけた一冊の本を持っている如何にもなヤツだった。更にいえば傍らには鳥の死骸もある。あれで床に魔法陣を描いたのだろう。
 アレイスターがすぐ近くにいるというのに魔術師は詠唱で気付いていないらしい。
 とんだ大間抜けだ。人払いもせず、アレイスターの気配にも気付けず、三下中の三下だ。それともこの世界ではこれが普通なのだろうか...とアレイスターは呆れていた。まあやる事は変わらないのだが。
 「もし、そこの人」
 と声を掛け初めて魔術師はアレイスターの存在に気付いた。
 「!?、貴様どうやっゴハァッッ!!」
 ゴッッ!!と、アレイスターの霊的蹴たぐりによって魔術師は後方へ大きく吹っ飛んでいった。
 「まあ、手加減はしたから死んではいないだろう」
 霊的蹴たぐりで気絶したらしい魔術師は、手加減したが骨くらい折れているだろうが。
 「さて、後はこれらの処理だが...。どうしたものかね」
 鳥の血で描かれた直径1m位の魔法陣にアレイスターに吹っ飛ばされて気を失った魔術師放っておけば問題にしかならない。
 さて、うしたものかと考えている時、ふと背後から人の気配を感じた。
 振り返って見ればそこには少女がいた。
 ツインテールの金髪を縦ロールが特徴的な少女。ブラウスに短めのスカートと、羽つきベレー帽やコルセットを組み合わせた、全体的にクラシカルな格好で服の上からでも分かる程に優れたボディラインをした少女。
 アレイスターが後々知る存在、魔法少女。
 ここに一人の魔術師と一人の魔法少女が邂逅した。

ようやっと一段落つきました。
書き溜めてた分はこれ位ですので次の更新は遅くなると(ただでさえ遅いのに)思います。(読んでくれている人がいるかも分からないけど)
質問等がありましたら気軽にしてください。出来る限り答えます。(答えられない場合もあります。まどマギの映画みてないので円環の理とか分かりませんし…)
これからもしかしたら安価をとるかもしれません。

 (しくじったな事前に人払いをしておくべきだったか)
 先程までは人払いもせずに堂々と魔術を行使するとはとんだ三流魔術師だと嘲っていたが、どうやら自分も他人の事をどうこう言えないらしい。
ついでにいえば先程の行為を目の前のメルヘンチックな少女に見られたらしくこの状況をどう説明し、どう収拾をつけなければならないのかも考えなくてはならない。
 (本当にどうしたものかね…)
 と半ば諦めたようにそっとため息をついていると、
 「ちょっと、そこのあなた」
 

旧約のロシア編までしか読んでなかったからアレイスターが美少女化してるの今知った()
期待してるよ

 (ん?)
 なんかメルヘンチックな少女が話しかけてきた。
 「あなた、魔法少女?一般人に危害を加えるってどういう了見かしら?」
 やはりアレイスターが魔術師をぶっ飛ばしたところを見られていたようだ。そしてそれが彼女の誤解(まあ魔術師をぶっ飛ばしたことには間違いは無いので誤解もクソもないが)を生んでしまったようだ。
 しかしアレイスターは一つ聞き慣れない単語に首をかしげた。
 (魔法少女?)
 そう、彼女は確かに魔法少女と言った。それも普段から使っているかのようにサラリと出てきた。そりゃあ自分だって魔術師だが、黒いマントを着用している事以外不思議な点はない。それに普通ならばそんな単語、中学生にもなって真剣に使っているのだとしたらただのイタイ子か重度のオタクに見られ口にする機会なんぞ無い筈だが…。
 それに彼女の服装もかなりおかしい(緑の手術服にビーカーに逆さまに浮かんでいたアレイスターの言える事ではないが)。まるで中世のヨーロッパを彷彿させる格好だこんなだったら街中だと目立って仕方ない。彼女が魔術師でもない限りこんな奇抜な服装など誰がするものか。
 しかしいくら憶測を立てても今は意味は無い。レディが話しかけてきたのだから取り敢えずは返事をしなければ失礼だろう。
 「おやお嬢さん、もう子供は帰る時間だがこんな時間に何の用かね」
 とアレイスターは取り繕ったような、表面だけの薄っぺらい笑みを浮かべながらそう尋ねた。
 一方のメルヘン少女は顔をしかめ、
 「だからそこの黒い人をなんで攻撃したのかしら?あまり争い事はしたくないのだけれど」
 と気絶している三流魔術師の傍に駆け寄り、安否を確かめながらアレイスターに警告を飛ばしている。
 …どうやら彼女は自分に敵対心を抱いているらしい。目の前でくたばっている三流魔術師の制裁を加えに来ただけなのに話がメンドクサイ方向へと向かっていっている。
 「お嬢さん、心配しなくともそこの人は死んではいない。まあ骨折位しているだろうがね」
 メルヘン少女は羽飾りの留め具にあるオレンジ色の宝石のようなものを取り外し、魔術師の傍へと近づけた。すると宝石は強く光りだし魔術師の傷を癒やしていった。

 (魂だと...?)
 しかしアレイスターが注目したのは彼女が取り出したオレンジの宝石で三流魔術師の傷を癒した事ではなく、その宝石の正体が魂である事だった。
 勿論魔術師特有の"匂い"を感じさせない彼女がなぜ回復魔術を使えるのか、その点でもアレイスターの疑問を加速させていった。
 だが、それ以上に気になる事が彼女の魂であった。魔術を極め、己の魂を一〇億八三〇九万二八六七通りに分化させたアレイスターだからこそ気付いた事である。
 彼女の魂は肉体から抜けて物質化されており、精神体で肉体と繋がっている状態である。
 先程の彼女の魔法少女発言や回復魔術、そして何よりも彼女の魂が物質化している事等、気になる点が多々ありアレイスターは思考の沼に沈んでいった。
 が、不意にメルヘン少女から、
 「確認するけどこれをやったのはあなたってことでいいのかしら?一般人に危害を加えて鳥の命も奪って」
 と声をかけられた。敵意を孕んだ声色で。
 なんの事かと辺りを見渡し、ああなるほどと納得した。
 というのも今の今まで忘れていたが、辺りはマニアックな中学生が好きそうな杖に古ぼけた本、倒れている黒いローブを着用した男、極め付けは鳥の血を使って描かれた巨大な魔方陣。魔術師をぶっ飛ばした自分がやったと思われているのだろう。
 全く、路地裏だからと油断して考えなしにあの三流魔術師をぶっ飛ばしたのは失敗だったなとアレイスターは心の中で悪態をついた。
 取り敢えず早くこの場の収拾をつけたいアレイスターは誤解を解くための説明を始めた。
 「確かにそこのクソ野郎をぶっ飛ばしたのは私だ。少しばかり事情というものがあってね。だがそこの魔方陣らは私ではないよ。君の傍にいるヤツがやったことだ。」
 「...」
 目の前の黄色いメルヘン少女はアレイスターを怪訝な顔をしたが信用してくれたのか、
 「...分かったわ。あなたの言う事は信じる。だけど今回は忠告で済ませるけど、どんな事情があっても人に危害を加えないでくれないかしら?お互い争い事はしたくないでしょう?」
 「分かった、肝に銘じよう」
 これで何とか場をおさめる事に成功したアレイスター。

 アレイスターはイタズラを企てるような笑みを浮かべ、
 「それからこの場の後処理は私に任せたまえ。血の後処理なぞは君のような子供がする事ではない」
 「それはどういう.....!?」
 アレイスターが黒いマントを翻し鳥の血で描かれた巨大な魔方陣に覆い被せるようにして魔方陣の上を歩くと、どうやって取り除いたのかまるで何も無かったかのような綺麗な床が顔を出した。アレイスターはイタズラが成功したと言いたいような笑みを浮かべて、
 「これでいいだろう。鳥は適当な山にでも埋めておくよ。ああそこの男はそのまま放置していても問題ない。恐らく彼の知っている誰かさんに拾われるだろう」
 一方のメルヘン少女はアレイスターの鳥の血の後始末を見て何か考え事をしているようである。そして結論が出たのかメルヘン少女は顔を上げ、
 「.....今更の質問だけれど、あなた魔法少女よね?」
 まただ。どうやら彼女はただのイタイ女の子なのではなく、彼女の発言から魔法少女という存在がこの世界ではいるのだろうか?
 続けてメルヘン少女は
 「さっきの血のを消す時魔力らしい魔力を感知しなかった。だけどさっきみたいな事、魔法でもない限り出来ない事よね?あなた一体.....?」
 「私はただの『人間』だよ。何者でもない」
 魔法少女、物質化した魂。気になる事はあるが彼女もまたアレイスターに対して疑問を感じているようだ。それにアレイスターはこう答えた。
 自分は何者でもないただの『人間』だと。
 「話はそれで終わりかね?なら私は先に失礼させていただこうかね」
 「あ、ちょっと!」
 とアレイスターは鳥の死骸を手に取り、すっかり暗くなってしまった路地裏の外へ出る。それを黄色いメルヘン少女は呼び止めようとするがアレイスターはメルヘン少女に手を振るだけで歩みを止めず、闇の中へ消えていった。

 ちょっとマミさん視点入れます

 いつもの見滝原。それは街中が笑顔で溢れ、どこを見ても幸せそうな風景がある。
 巴マミも見滝原中学の登校途中でふざけあって登校して笑顔の後輩を見れば自然と微笑みがこぼれてしまう。
 だが『いつも通り』ということは当然、悪い側面も『いつも通り』あるという事だ。
 魔女。それが彼女にとっての悪だった。
 関係のない一般の人々を苦しめ死へと追い込む、まさしく絶望を撒き散らす存在。そんな魔女から人々を守るため、彼女は常日頃から魔女退治に勤しんでいた。
 授業が終わり、一旦家に帰り街をパトロールする。ソウルジェムの反応を頼りに魔力の痕跡を追いかけ魔女または使い魔を退治する。
 そんな日々の中、ある夕刻の事、巴マミはいつも通り街のパトロールをしていた。魔力の痕跡を追い、魔女や使い魔を倒す、いつもはこれだけだったのだが今回は魔力の反応がいつもとは少し違っていた。
 魔女や使い魔がだす魔力の反応とは違い、どちらかといえば自分達魔法少女のような魔力だった。だがそれも『ような』であり実際には別物だと巴マミは感じた。
 「キュウべえ、この魔力反応どう思う?」
 「どうだろうね。魔女とも使い魔とも違う、魔法少女に酷似しているようだけどそれとも違うようだ」
 「やっぱりキュウべえもそう思う?」
 巴マミは自身の肩に乗っている小動物(?)らしきものに魔力の主の正体について尋ねたが芳しい回答は得られなかったが、巴マミは魔力の主の正体を確かめるというよりもキュウべえと同じ考えをしていた事に安堵しているようだった。
 魔力の反応を追い、路地裏の入り口まで巴マミはやってきた。
 「どうするんだい?」
 「このまま入る、もしかしたら魔女かもしれないけど尚更」
 そうして巴マミは路地裏の中へと入っていった。

 路地裏に入ってからだんだんとソウルジェムの反応が強くなっていっている。確実に魔力の反応の主までもうすぐだ。この魔力の反応の主が魔法少女であれ魔女であれ、近くに結界やら使い魔やらがいるはず。魔法少女であれば魔女を狩る為に魔法を使う、即ち近くに魔女がいるということ。魔力の反応の主が魔女でまあれば言わずもがな。
 だがそれらは一向に姿を表さない。恐らくすぐそこの角を曲がれば魔力の反応の主はいるだろう。
 万が一急襲に備え魔法少女へと変身しておく。
 不審に思いつつも角を曲がった先にいたのは───
 「!?、貴様どうやっゴハァッッ!!」
 「まあ、手加減したから死んではいないだろう。さて、後はこれらの処理だが...。どうしたものかね」
 ゴッッ!!という激しい音とともにぶっ飛ばされた黒いローブの男と黒いマントをと薄い青系のブレザー制服を身に付けた銀の髪の少女だった。

 (どういうこと?魔法少女が一般人に手を出すなんて.....)
 巴マミは混乱していた。目の前にいる恐らく魔法少女と思しき少女が足元に転がっている黒いローブを着た男を攻撃したのだろうが、その理由が分からない。
 不審人物だったから、で済ませられる程魔法少女の力は軽いものではない。足元に転がっている黒いローブの男は怪しくはあるが魔女とは何の関係もないはず.....。いや、そもそも見滝原に外国人の魔法少女がいるとは聞いていない。そもそも魔法少女ではない可能性もある。とにかく真意を確かめなくては。
 ただし一般人に手を出す人物なのだから警戒心を持ちつつ。
 「ちょっと、そこのあなた」
 声をかけてみると銀の少女は反応を示した。マミは続けて、
 「あなた魔法少女?一般人に危害を加えるってどういう了見かしら?」
 と銀の少女に問い詰めるマミ。だが警告とも取れるような言葉を受けても銀の少女は一切動揺もしない。ただ少しばかり考えている素振りをして、中学生でも分かる程の取り繕ったような、薄っぺらい表面だけの笑みを見せ、
 「おやお嬢さん、子供はもう帰る時間だがこんな時間に何の用かね」
 挑発するような、馬鹿にするような言葉にさすがにマミでもムッとした。
 

 人を馬鹿にするような態度を取る銀の少女の対して巴マミは胸の内がムカムカしていくのを感じた。他人を馬鹿にするような、見下しているような、そんな雰囲気のある少女だ。
 だが出来うる限り穏便に済ませたいマミはなるべく感情を抑えて、それでいて警戒心を解かずに、
 「だからそこの黒い人をなんで攻撃したのかしら?あまり争い事はしたくないのだけれど」
 と銀の少女に問いかける。
 ただ銀の少女にばかりかまけている場合でもないのだ。先ずは黒いローブの男の治療もしなければならない。黒いローブの男へと駆け寄り、安否を確認し羽飾りの留め具にあるソウルジェムを外し、魔力を使って黒いローブの男の治療を始めようとしていた。すると銀の少女から、
 「お嬢さん、心配しなくともそこの人は死んではいない。まあ骨折位しているだろうがね」
 .....一体誰のせいだと問い詰めたくなる程舐め腐った態度にさすがのマミでも腹立たしい気持ちになった。
 しかしよくよく辺りを見てみれば目を背けたくなる程酷い有り様だった。鳥を殺し、その血で描かれたであろう魔方陣。これもあの銀の少女がやったのだろうか?とにかく真意を確かめねば。
 「確認するけどこれをやったのはあなたってことでいいのかしら?一般人に危害を加えて、鳥の命も奪って」
 確認というよりは問い詰める感じになり少しキツイ言い方になってしまった。
 一方の銀の少女はこちらの言っていることが何のことか分かっていないらしく、辺りをキョロキョロと見回してからようやっと意図を捉えたらしい。
 「確かにそこのクソ野郎をぶっ飛ばしたのは私だ。少しばかり事情というものがあってね。だがそこの魔方陣らは私ではないよ。君の傍にいるヤツがやったことだ」
 「...」
 他人を馬鹿にするような飄々とした態度は崩さないもののどうも嘘をついているようには見えない。少しばかり悩むところではあるが、
 「分かったわ。あなたの言うことは信じる。だけど今回は忠告で済ませるけど、どんな事情があっても人に危害を加えないでくれるかしら?お互い争い事はしたくないでしょう?」
 「分かった肝に銘じよう」
 なんとか穏便に済ませることができたマミであった。

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 なんとかこの場を穏便に済ませることができたマミであった。一方の銀の少女はイタズラを企てるような含み笑いをしていた。
 「それからこの場の後処理は私に任せたまえ。血の後処理なぞ君のような子供のすることではない」
 さらっと銀の少女に小馬鹿にされた。そりゃ確かに血の後処理なんかは年頃の少女がすることではないが、それふ彼女とて同じこと。見た目で人を判断してはいけないが、むしろ彼女の方が年下であろう。この場に第三者がいた場合、恐らくマミの方が年上というだろうと確信できる程目の前の少女は幼かった。やはりこの銀の少女は他人を馬鹿にするのが好きなようだ。
 ただ、この銀の少女の言い方ではこの場の後始末が出来るというようなことだったので、それが少し気になったので銀の少女に問おうとすると、
 「それはどういう.....!?」
 銀の少女は黒いマントを翻し鳥の血で描かれた魔方陣に覆い被さるようにして魔方陣の上を歩くと、まるで魔法でも使ったかのように、しかし魔力を一切感じられず、血の跡が取り除かれた、まるで何も無かったかのような綺麗な床が顔を出した。
 銀の少女はイタズラが成功したかのような笑みを浮かべ、
 「これでいいだろう。鳥は適当な山にでも埋めておくよ。ああそこの男はそのまま放置していても問題ない。恐らく彼の知っている誰かさんに拾われるだろう」
 .....彼女は本当に魔法少女なのだろうか?
 さっきの血を消す時、魔力らしい魔力を感知できなかった。あれは魔法でも使わない限り出来ないことだろう。それとも単に科学技術で血を取り除いたのだろうか?いや、それはない。いくら科学が発展している見滝原であってもあれほどの、それも血の跡を完全に取り除くことはできない。
 (キュウべえ、どう思う?)
 (.....)
 足下にいるキュウべえに話しかけても珍しくだんまりだし、本人に聞かなければ話にならない。

 「.....今更の質問だけれど、あなた魔法少女よね?」
 と銀の少女へ問いかける。続けて、
 「さっきの血を消す時、魔力らしい魔力を感知しなかった。だけどさっきみたいなこと、魔法でもない限り出来ないことよね?あなた一体.....?」
 と問いかけた。銀の少女はそれに対して、
 「私は『人間』だよ。何者でもない」
 と答えた。マミは『人間』というところが妙に頭に残った。何か彼女の大切な矜持のようなものをマミは感じ取った。などと考えている内に銀の少女は、
 「話はそれで終わりかね?なら私は先に失礼させていただこうかね」
 鳥の死骸を手に取ると、すっかり暗くなってしまった路地裏の外へ出ようとしていた。
 「あ、ちょっと!」
 マミは咄嗟に彼女を呼び止めようとするが、銀の少女は手を振るだけで歩みを止めず、そのまま闇夜へと体を溶かしていった。

 結局銀の少女がどこへ行ったかは分からなかった。それに一応治療したとはいえ黒いローブの男を放っておく訳にもいかなかった。それから間もなくして、黒いローブの男の知り合いだと言う人に男を引き渡し、銀の少女を探してみたが、見つからなかった。仕方がないので家に帰ることにした。
 なんとも不思議な出会いだった。
 人を小馬鹿にするかと思ったら年相応の子供っぽい側面を見せる。しかし不可解な点も多く、なんともミステリアス少女だったとマミは銀の少女へ思いを馳せていた。
 それに気になったのはそれだけではない。
 「キュゥべえ、あの時なんで黙っていたの?あの娘に何か気になることでもあったの?」
 あの時、マミが銀の少女が本当に魔法少女なのか疑問を感じていた時、キュゥべえに話しかけても返事が来ず、珍しくだんまりしていた時だった。それに関してキュゥべえは、
 「うん、あの少女は魔法少女の素質があったんだけれど、」
 「?、言葉を濁して、キュゥべえらしくないわね。魔法少女の素質があるのなら契約するんじゃないの?」
 やけに言葉を濁しているキュゥべえに疑問符が浮かぶマミ。
 「いつもならそうするんだけれどね。魔法少女の素質があったって言っても特殊でね、いわゆるイレギュラーってやつさ。それで少し不可解なところがあって僕でも彼女の正体は分かりかねたんだよ」
 あの銀の少女がキュゥべえに魔法少女の素質があると見込まれるのも驚きだが、この不思議小動物型生命体キュゥべえが彼女の正体が分からないと言ったのが衝撃的だった。
 「キュゥべえでも分からないこともあるのね。ちょっと意外だわ」
 この博識な不思議生命体が分からないことがあるというのが本当に意外だった。

 しかしキュゥべえが分からないのは本当に珍しく、マミはあの銀の少女について好奇心が湧いてきた。
 マミはティーカップに紅茶を注ぎながら、
 「キュゥべえ、聞くけどあの娘ってどこら辺が普通じゃなかったの?魔法少女になったらただの魔法少女にはならないってこと?」
 一方のキュゥべえはマミのソファーの上でゴロゴロしながら、
 「そうだね、彼女は普通の少女とは言えないかな。魔法少女の素質には因果律っていうのが関係しているんだけど、彼女の因果律は過去最高のものだったよ。それこそ史上最強の魔法少女になれる位にね。だけど不可解なことに彼女には因果律が収束しているだけじゃなかったんだ。僕にも分からない謎の力があってそれで魔法少女に出来るかどうか分からなかったんだ」
 「魔法少女の素質ってそういうので決まるのね。でもキュゥべえにも分からない謎の力が働いているせいで魔法少女に出来るかどうか分からないってことね」
 ますますミステリアスさが増していく銀の少女。最初、というか最後まで印象としては悪かったが、もしも彼女が魔法少女になった時、共に戦ってくれるだろうか。もう一人ぼっちにならなくていいのだろうか。
 (本当は巻き込んじゃいけないのかもしれないけど)
 キュゥべえは彼女のことについて考えているのか目線は上の空だ。
 そしてキュゥべえは、
 (あの力.....。何か懐かしいような、どこかで感じたような気がする)

 一方の銀の少女こと糞薬中バイセクシャルド変態魔法少女アレイスたんは鳥を近くの山へ埋め、ネット喫茶へ戻ってきていた。その頃には既に辺りが静まり返り、本格的な夜へと変貌していた。
 そして今日、街を散策した結果を頭の中で整理していた。
 (この街は科学の街のくせして魔法少女など随分とメルヘンチックなものを抱え込んでいるな)
 散策した結果を整理するといっても成果といえば夕方に出会ったあの魔法少女(?)と彼女の足下にいた謎の生命体についてだった。
 (気付いていないとでも思ったのかね)
 あの魔法少女(?)についてもそうだが何よりも奇妙だったのはあの謎の小動物型生命体だった。
 一見するとマスコットのような愛らしい見た目だが、アレイスターには解る。あれは別の星、別の世界からきたものだと。
 この街にある妙な違和感の正体の一つだった。
 (何処かで感じたことのあるものだと思ったが、あの小動物擬き、ネットワークを構築していたのか)
 ネットワーク。
 アレイスターがキュゥべえが別の星、別の世界から来たと断言出来る根拠がこれだった。
 アレイスターもかつては御坂美琴のDNAマップを元にクローンを製造し、そのクローンを使ってネットワーク、通称ミサカネットワークを構築していた。そのためか、キュゥべえの構築しているネットワークに気付いたのだ。そのネットワークの先が遥か遠くの宇宙まで繋がっていたのは驚きだったが。
 「さあて、どうしたものかねぇ」
 今日何度目になるかも分からない台詞を吐きながら、アレイスターはパソコンの前に座る。
 この街、というよりかはこの世界はどうもおかしい(アレイスターのいた世界も十分、なんならアレイスターの方が十分におかしい)。とりあえずは当座の目標はこの街についてインターネットや街の散策等で調べることである。勿論非合法な手段も用いるが。

 翌日。
 とにかくこの街について本格的に調べる必要が出てきた。
 コキコキと首を鳴らしながらアレイスターはパソコンを起動させる。
 「さあて、作業に取りかかるとするか」
 アレイスターはまず、あらかじめ昼間の内に完成させておいた小切手位のハッキング用のフラッシュメモリをパソコンへと投じる。
 これから行う作業とは、警備会社にハッキングを仕掛け、街中にある防犯カメラの映像を片っ端から盗み取り、情報を精査していく。地味な作業になるが、どんな艱難辛苦があろうとも決してへこたれない変人魔術師アレイスターにとってはこの程度文字通り作業でしかない。それに別段急ぎという訳でもないのでいくらでも時間をかけてもいい。
 (どんなものが釣れるかなっと)
 とアレイスターはこの街についての情報精査を始めた。
 とはいってもこの街自体は何の変哲もないただの街なのでたいした情報は得られない。その上学園都市と違い宇宙から人工衛星に監視されてる訳でも、ましてや滞空回線がある訳でもない。カメラの数も学園都市に比べて少ない(それでも大量の映像があるわけだが)。
 ハッキングし盗み出した映像をしらみ潰しに見ていっていると、
 (あれは、昨日の......)
 昨日遭遇した黄色いメルヘン少女だった。
 この時の映像は数日前のもので、映像には夕方で辺りに人は少ない場所に彼女はいた。彼女は昨日のメルヘンチックな姿ではなくカメラの映像でよく確認していた何処かの学校の制服姿であった。
 彼女は左手の中指にしてある指輪からあのオレンジ色の物質化した魂を取り出して何かを探している様子だった。
 アレイスターは彼女の行く先をカメラの映像の記録から辿っていく。彼女は何やら魂の光が強くなっていく方向へと向かっているようだ。だがそれがどういう意味を持つのかアレイスターでも分からなかった。やがて彼女は路地裏の中へと入っていった。さすがに路地裏の中にまでカメラがない以上は彼女がどこに向かって、何をしていたのかも分からない。

 (一体なにを......?)
 この街について本格的に調べようとしたのも彼女との邂逅からだった。アレイスターはカメラの映像の記録の精査を彼女の行動に重点的に調べあげることにした。
 数時間、ずっとカメラの映像の記録と格闘していたアレイスターは一旦休憩を入れることにした。この時間、ずっとあのメルヘン少女の行動を追ってきて分かったことがいくつかある。
 まず、彼女は魔術師とはまた違った存在であるということ。
 カメラの映像の記録を見るに恐らく彼女は魔術とは一切関係のない一般人だろう。だが詳しいことは分からないが、何故か彼女は魔術を使うことが出来る。それも原理は同じだがプロセスが微妙に違う。昨日邂逅した時から時折彼女の口にしていた魔法少女なる者特有のものだろう。
 二つ目はキュゥべえという存在。
 恐らく昨日彼女の足下にいた謎の小動物擬きだろう。だがヤツは一般人には見えないらしく堂々と表に出ていた。名前についてはメルヘン少女の口の動きからアレイスターが推測したものである。こいつについては現状一番注意しなければならない存在だろう。
 三つ目は魔女という存在。
 これもアレイスターがメルヘン少女の口の動きから推測したものである。ただ魔女というものならばアレイスターの世界にもいた。だがアレイスターの知っている魔女というものは使い魔はいれど、結界の奥に隠れ潜んでいる訳ではない。それに魔女の被害はここ日本ではなく主にイギリスであった筈だし、魔女といえど人間だ。彼女らの会話や行動から推測したものだが、彼女は日々魔女を狩っているらしい。いくら人の道から外れているといっても彼女のような年端もいかない少女が殺しを行うとは考えにくい。これも不可解な点である。
 調べれば調べる程、不明点は増えるばかりである。
 「しかしまあ、何もないよりかはマシだろう。それにこの街にある力についても目星がついたしな」

 この街で最初に感じた、そして今でも感じている違和感。恐らく彼女達の言う“魔女”の力なのだろう。キュゥべえとやらの構築しているネットワークに続き、違和感の大まかな正体について知れたことは僥倖だ。ただ、
 (それだけではないな)
 そう、キュゥべえとやらのネットワーク、魔女、それだけではない。だがそれは常に近くにあって、自分の知っているような感覚である。アレイスターはねっとりと纏わり付くようなもやもやに思考を傾けていく。この違和感はもっと身近にある気がするのだが......と。答えは喉まで出かかっているのに、あと一歩のところで手が届かないようなもどかしさ。
 「はああぁぁぁ。いくら考えても答えが出ないのならば思考を切り替えるしかないか」
 長いため息をつきながらアレイスターは次の行動をおこすべく重い腰を上げた。
 

そろそろテストなので更新は遅くなると思います。

 監視カメラの映像記録は粗方精査しきったので、一旦行動に移すことにしようと考えた。
 しかし、別段急ぎの用という訳でもないし、今日一日は適当に男でも捕まえてセックスなり乱行パーティーにでも興じようとも考えていた。とにかく外に出て、街の散策なり、男探し(女でも可)でもしなければ。一日中ずっとパソコンと睨みあいっこなんぞただのヒキニートと大差ない。
 という考えでアレイスターはネット喫茶から出ていった。
 二日目ともなればさすがにこの街にも慣れてきて特に驚くこともなかった。当座の目標はとりあえずは魔女探しである。元々アレイスターが目を覚ましてから感じる違和感の正体を探しだそうとしたのはこの街、この世界で何故自分が生きているのかを知る為である。自分は確かにあの時死んだ筈なのに生きている。この状況が不可解なのである。しかしその原因はこの街で目を覚ました時から感じる違和感が関係しているのではないかとアレイスターは直感的に感じていた。......まあこうして考えなしに突っ走るからいつも失敗するのだが。
 とにもかくにも街での魔女とやらを探さなければ。
 カメラの映像の記録ではメルヘン少女は大体人目のつかない所を重点的に探していた。彼女達の会話から察するに魔女とやらは人目のつかない所で結界を張りその奥に隠れ潜んでいるのだとか。人目のつかない所に行けば後は魔力の流れを追いかければいい。
 と路地裏に入ると、
 「ビンゴ」
 路地裏から魔力の流れを感じる。それも並みの魔術師よりも強い波動だ。恐らく魔女だ。
 アレイスターは奥に隠れ潜む魔女にも臆さず、いっそ口笛で吹きそうな程軽い足取りで前へと歩きだす。
 「魔女とやらとの初対面だな。精々楽しませてもらうとするかね」

人格おっさんの癖に男捕まえるのか…

>>52
奴を誰だと思っている?アレイスターだぞ

 まだ明るいというのに路地裏へ進めぶ進む程闇の気配が濃くなってくる。粘ついた空気がアレイスターに絡みつくがアレイスターは気にもとめない。むしろスキップでもするのかという程気軽な様子だった。
 確か彼女達の会話から推測するに魔女は結界を張りその奥に隠れ潜んでいるとのことらしい。結界を張るのはいいのだがその結果への入り方にた少々の不安がある。虚数を十進法に変え隠世を破ったアレイスターでもそもそもの原理が違えば侵入するのが面倒なのだが......。まあ、向こうがこちらを受け入れてくれることを願うしかないか。
 と考えている内に変化が訪れた。
 「向こうから仕掛けてくるとは、幸先の良いスタートだな」
 どうやら魔女の結果の中へ入れたらしい。さっきの小綺麗な路地裏から打って変わって辺りは見ているだけで目と頭が痛くなる程の極彩色に彩られたやたらメルヘンチックな風景へと姿を変えていた。
 「ほう、これはこれは。ただの結界ではなく、結界の中に独自の世界を持っているのか。」
 アレイスターはノリノリな調子でまそう呟いた。自分が変人だからか辺りがどれだけの極彩色に彩られていようがアレイスターは全く意に介さず先へ進んでいく。
 「しかしまあ、ここまで目と頭が痛くなる程悪趣味な結界を張るとは、魔女とは皆こうなのk





 瞬間、ドッッ!!と、深い闇のように真っ黒なドレスやスーツを着た顔の崩れた人形達がアレイスターへと襲いかかってきた。




 ドレスやスーツというよりかは喪服に近いような格好をした人形達だった。いや、人形と呼んでいいのかも分からない。何故なら顔だけでなく腕や足がもぎ取られていたり、中には体自体がグシャグシャにひしゃげているものもあった。そんな異形が一斉にアレイスターへと襲いかかってくる。アレイスターは一瞬の出来事だった為か何もせず、いや、何もできずにその場に立ち尽くし、異形の人形達に嬲り殺しにあい、





 「どこを狙っているのかね?」





 これもまた一瞬だった。
 ボッッッッッバッッッッッ!!!!と、先程までアレイスターがいたところにアレイスターの姿は無く、ただ人形が群がっているところに不可視の爆発が炸裂した。
 「私が何の準備も無しに来る馬鹿とでも思ったのかね?」
 いつ持ってきたのか、少女の傍らには一台の即興兵器が置かれてあった。材料となっているのは市販のチューブやらホース、チタン合金のネジ等で作られた砲台があった。本来であれば溶接に使うアセチレンガスのボンベや大量の空気を送り込むエアコンプレッサーを辺りに転がしながらアレイスターは言う。
 「極超音速衝撃波圧縮打撃砲。いつぞやの夜にも使った即興兵器だよ。あの時は大した材料が無かったから威力はそこそこだったが、この街は便利だよなあ!何せ下手に科学を進歩させればその分生活インフラを支えるために必要な物も出てくる。それを利用すればS.S.S.はさらに進化を遂げる。ざっと計算してももとの威力の二倍になる」
 瞬間、ドッッッッッッ!!!!!!と、第二波がドレスやスーツの人形へと襲来した。

 そこから先は圧倒的だった。
 ドレスやスーツの異形の人形達が襲いかかればアレイスターの作った即興兵器によって薙ぎ倒されていく。時には音速の約二〇倍の速度の空気砲や肌どころか空気そのものを凍て刺す瞬間冷凍薬品等々、まるでビックリ箱のように即興兵器を出してくるアレイスターになにも出来ず無様に散っていく異形の人形達。
 「ふう、こんなところか」
 粗方異形の人形達を片付けて先へ進むと、更に極彩色に彩られた広い空間へと出た。先程とは違いこの空間は、そう、まるで教会の中の結婚式場のようなところであった。しかし結婚式場とはいっても白と黒のコントラストで表現されたような、祝福というよりかは陰鬱とした雰囲気を纏っているような場所だった。そしてその真ん中には、
 「おやおや、あれがここ、メルヘン王国の大ボスかね」
 教会の真ん中に敷かれてある細長いカーペットの先には一体の魔女がいた。
 白と黒のコントラストで彩られた、光と影で出来たようなウェディングドレスに身を包んだ顔が陰り、鬱屈とした表情の女性がいた。
 花嫁の魔女。
 性質は鬱屈。
 名をEntbehrliche Braut。
 ここに銀の魔術師と魔女の戦いが始ま老としていた。

 先手を打ったのはアレイスターからだった。あの花嫁の魔女がこちらに気付き、顔を上げ、ドレスやらスーツやらの異形の人形達を放とうとしている時には既にアレイスターの攻撃の準備は終わっていた。
 32、30、10。
 アレイスターの右手が形作る鉄砲のジェスチャーからライターの火打ち石が散らす火花のような小さな数字が瞬いた。
 霊的蹴たぐり。
 自己の瞑想を相手へ伝播させる技術の応用。自身と相手の感覚をリンクさせ、相手の思い描いた衝撃をそのまま叩き込む魔術。
 しかしアレイスターはそこだけに留まらない。
 29、4、28。
 またもやアレイスターの手から数字の火花が散った。アレイスターの左手は虚空に向かい、何かを掴む動作をした。まるでそこに何かがあるかのような、しかしアレイスターはしっかりとその感触を確かめ『それ』を握った。本来であれば何も無い筈の空間からあり得ない物がアレイスターの左手に収められていた。
 それは一本のねじくれた銀の杖。
 名を衝撃の杖。
 相手の思い描いた威力を一〇倍にして叩き込む霊的蹴たぐりの応用技術。
 自身と相手にしか感じ取ることの出来ない架空の銃を魔女に突き付け、
 「まずは小手調べといこうか」
 ドンッッッ!!と、通常の銃ではあり得ない程の大きな重低音が炸裂した。

 花嫁の魔女はアレイスターの霊的蹴たぐりと衝撃の杖によって後方へ大きくのけぞる。どうやらこちらの行っている動作をキチンと認識できるようだ(まあアレイスター程の達人になれば無機質のカメラでも霊的蹴たぐりを叩き込めるか)。しかし体が大きい為か、それとも単に耐久力が高い為か一撃では終わらなかった。
 しかしアレイスターはそれでも、いやそれでいいと言わんばかりの笑みを浮かべていた。
 「ハッ!!これで終わらないとは、これは楽しめそうだ。一発で終わったらつまらないからなあ!!精々足掻きたまえよ愚物!!」
 花嫁の魔女へ挑発も交えながらアレイスターは凄絶な笑みを浮かべた。
 久々に楽しめそうだ。
 花嫁の魔女は態勢を立て直しながらアレイスターへとドレスやらスーツやらの異形の人形達を放った。異形の人形達はアレイスターへと弾丸の如く物凄いスピードで突っ込んでいくが、アレイスターの霊的蹴たぐりにより次々と吹き飛ばされていく。
 ドレスやらスーツやらの異形の人形達に指先の標準を合わせ、霊的蹴たぐりを叩き込んでいく。時には両腕をクロスさせてカッコつけてみたり、スタイリッシュに連続して撃ってみたりと自由奔放に、子供のようにはしゃぎながらしかし、余裕を持って戦うアレイスター。
 顔が崩れどこが目でどこが口かも分からない異形の人形達でも霊的蹴たぐりは機能するようだ。
 ようやっと態勢を建て直した花嫁の魔女はまるで建物撤去用の大きな鉄球にいくつものトゲのついている打撃用武器を空中にいくつも出現させた。
 それは打撃用武器のメイスの一種であり、金属鎧を効率的に破壊するための武器である。
 モーニングスター。
 恐るべき質量とそれに伴い秘められた破壊力を持つ破壊神の鉄槌。
 それらが今、アレイスターの頭上から降り注いだ。

 「数でゴリ押せば勝てるとでも思っているのかね?」
 アレイスターは花嫁の魔女を嘲笑しながら右手を上方へと伸ばす。何も無い筈の空間から血のように真っ赤な線が空中を走り、一つの魔方陣を形作った。
 アレイスターへと弾丸の如きスピードで、雨のように降り注いだモーニングスターは、しかしアレイスターに一つも掠りもせずに赤い魔方陣に全て弾かれた。
 一方の左手は前方へと向け、何かを掴む動作をする。そしてまたもや虚空から一本のねじくれた銀の杖が火花と共に出てきた。
 衝撃の杖。
 相手の想像した威力を一〇倍に引き上げる魔術。
 その凶刃を花嫁の魔女へ突き付け、





 ドッッッッッッ!!!!!!という衝撃により花嫁の魔女は後方へ大きく吹き飛ばされた。





 あの花嫁の魔女が想像したもの、即ち複数のモーニングスターの威力を衝撃の杖で一〇倍へと引き上げた。
 あの大質量の鋼鉄の塊だ、一つ衝撃の杖でカウンターを食らわせればただでは済まないというのにそれを複数個、それも更に一〇倍へと引き上げた衝撃だ。いくら体が大きくても、いくら頑丈であってもこれではまともに立ち上がることも出来まい。
 決着は着いた。案外呆気ないものだったと思いその場から立ち去ろうとした。アレイスターは振り向き様に花嫁の魔女の方へ手を伸ばし、





 「サヨナラ勝ちだな」





 パァンッッ!!という乾いた音が炸裂した。

 最後の一撃により花嫁の魔女は力尽きた。そして結界に囚われていたこの場所は無事に元の路地裏へと戻っていった。どこぞの戦犯の時のように撃ち漏らすことは決してない。......まあ、衝撃の杖で終わったと思ってその場から立ち去ろうとしたのは秘密だ。
 『ありがとう』
 ......しかし最後の最後、あの一撃をかました時、空耳だと思う程小さな、しかし確かに聞こえた言葉。あれは何だったのだろうか?
 疑問に思うこともあれど取り敢えずは魔女撃破及び、データを取れたことを喜ぶことにしようとしたその時、
 「ん?」
 何か落ちていた。
 形はあの黄色い魔法少女が持っていた卵型の物質化した魂に似ているが別物である何か。
 形は上部と中央部と下部で構成されており、上部は何かしらのエンブレムが形作られており、下部は針状の癖して自立して立っている。そして中央部は黒い球体にはこれもまた何かしらをモチーフとしているのか意匠が描かれてある。だがこの意匠、先程の魔女に似ているようにも見えるが......。とにもかくにもコイツを持ち帰ってデータを取るしかないことだが。
 「今回は私にしては珍しく収穫が多かったな。事が上手く運び過ぎて逆に恐いが」
 と地面に落ちていた謎の物体を拾い上げ、笑いながら手元に収めた。
 後はネット喫茶に戻るだけだと、アレイスターは軽い足取りで路地裏から出ていった。





 陰に隠れて逃げる異形の人形に気付かずに。




 魔女狩り。
 ここ数日間はそれに没頭していた。他にやることが無いからか、それとも単に刺激を求めていたからか、とにかく最近は当初の目的である“自分が何故生きているのか、ここはどこか”という、いわば現状の確認というのも頭の中から消し飛んでいた。別段急ぎの用という訳でもなく、ただ単に胸騒ぎがする、嫌な予感がするというだけの漠然とした理由からだったか。平和に暮らしていればいいだけだが、やはり変人である自分は何かしらの刺激がなければ気が狂っしまいそうだったのかもしれない。だからかここ数日間はずっと魔女狩りをしていた。
 勿論ただずっと魔女に付き合っている訳でもなくハッキングして手に入れたカメラの映像記録をまた一から精査し、あの黄色いメルヘン少女の言っていることを口元の動きを元に翻訳したり、対魔女用の兵器を作り上げたり、魔女の落とす黒い球体(カメラの映像記録の黄色いメルヘン少女が言うには恐らくグリーフシードと言うのだろう)の研究をしてみたりと、魔女狩り以外のこともやっているのだが、如何せん退屈なのだ。勿論興味もあるし研究欲もある。しかしやる必要が本当にあるのか疑問だった。それならばデータ収集ついでに魔女狩りに興じた方がずっと有意義に感じたのだ。
 そんなこんなで今日も魔女狩りである。
 今日の魔女は普段の魔女とは違い何かと面白いギミックを挟んでくる魔女であった。感覚を錯乱させる性質があるのか上からの攻撃かと思えば攻撃が後方から来たり、小さな魔力から形成された弾が急に魔力が増加し膨張して爆発したり、と色々面白かった。
 そして今日も魔女狩りを終えようとした時、





 コツンと、何者かの足音がその場に響いた。





 

創約買いたいけどまだ本ご届いていない地方暮らしの辛い現実

そういう人のための電子書籍よ

 振り替えって見てみればそこには少女がいた。恐らくあの黄色いメルヘン少女と同じ部類の少女だろう。魔術を行使するが、魔術師とは以て非なる存在。あの黄色いメルヘン少女が言っていた魔法少女なのだろう。
 格好も制服のようなかしこまった格好ではあるが申し訳程度しかないがコスプレ要素があってベクトルは違えどあの少女と同じくこの少女もまたメルヘン少女なのだろう。
 だが雰囲気はまるで違った。
 あの少女が何もかもを包み込む柔和な少女だとしたら、この少女は何もかもを突き放す冷たい刃のような少女である。
 勿論あくまで偏見差別クソ野郎アレイスター=クロウリーの第一印象なので実際は違うのかもしれない。しかしいくら人の心が分からなかったアレイスターであっても、いや寧ろ統括理事長として居座っていた頃、今までこんな人間を山程見てきたアレイスターだから分かったのかもしれない。
 この少女は誰からも誰も引き付けない、誰も引き寄せない、そして誰も頼りとしない、そんな諦めのような感情が渦巻いているのが分かった。
 そしてこういう子供は決まって話の方向性がメンドクサイ所へ行くのである。
 その為アレイスターはできるだけ柔らかい対応をしようとする。
 が、
 「あなた白い小動物みたいなものを見なかったかしら?キュゥべえのことだけど」
 ......先手を打たれた。大抵こういう少年少女は諦観型厨二病が多いのだ。あの上里翔琉のようなメンドクサイヤツがな!!しかも話題はあの得体のしれない小動物型思考地球外生命体と来たもんだ。ここはどうにかしてやり過ごさねば。
 ......それからちゃっかり自分もメルヘン少女認定されていた。
 しかしまあどうやら向こうは事情通って感じだろうか?ならば今ここでお互いの情報を交換すればあのかったるいカメラの映像記録の精査やらチマチマ黒い球体を研究する必要性は無くなってくる。何なら彼女を持ち帰ってネット喫茶であんなことやこんなことをしながらでも聞きだそうか。レズプレイにも興味あるしな。
 そうしてアレイスターは情報交換の為、口を開き、こう言った。

こんな子供にもこのロリコンのおっさんめ






 「お嬢さん、これから私と共に秘密の園(意味深)へ行かないかね?そこでたっぷりと話し合おう(意味深)。勿論夜の営み(意味深)を交えてね」





 ......隙あらば男女関係無くナンパするとなると最早病気である。どこぞのツンツン頭が見ていたら性的な意味でなく、キツイツッコミを入れられることだろう。まあそれはそれでアリなのだろうが。
 一方の黒と紫のメルヘン少女はきょとんと首を傾げている。どうやら彼女は穢れというものをまだ知らないようだ。それがこの薬中バイセクシャルド変態糞親父アレイスター=クロウリーによって穢されるか知らないままでいるかは例え神であっても知る由も無いだろう。
 「?どういうことか分からないけどお断りさせていただくわ」
 最後に『あら、何故かしら?寒気が......』と言っていたのは別の話。
 と、ここまでギャグ時空で話を進めてきたがそろそろシリアスに、本題に入らなければ。
 「いや何、君と私で情報交換をしないかという誘いなのだがね」
 と先程の申し出が潔白な少女によって通用しなかったことを少しばかり悲しみながらもアレイスターは再度黒と紫のメルヘン少女に問いかける。それに対し黒と紫のメルヘン少女は、
 「情報交換?」
 食いついた。
 「ああ、実の所私はこの街に来たばかりでね。ついでに言えば魔法少女とやらでもない。この街や魔女、ましてや魔法少女等というものを私は知らない。だが君は事情通なのではないのかね?私は魔女に対抗する術を知っているし持っている。私が君にこちらの技術を提供する代わりにそちらの持っている情報をこちらに提供してはくれないかね?そうすればお互いWin-Winの関係となるのだが」
 これに対して黒と紫のメルヘン少女は考える素振りを見せる。それからどの位時間が経っただろうか、少女は空白をおき口を開きこう言った。

undefined

 「いいえ、それもお断りさせていただくわ」
 アレイスターの申し出をこの黒と紫のメルヘン少女は断り、続けてメルヘン少女は、
 「確かにわたしは魔法少女についても魔女についても知っている。そしてわたしも魔女に対抗できる手段を持っている。だけれどそれと同様にあなたも対抗する術を持っているのでしょう?魔法少女でないのは奇妙だけれど、魔女に対抗できる手段を持っているのならそれに越したことはないわ。それに一番はあなたはもう魔女とは関わらない方がいい。お互い干渉せず、平穏な暮らしを享受した方がいいわ」
 なるほどそう来たか。
 あくまでお互い下手に干渉せずに知らないなら知らない方がいいと言い出しやがった。確かに自分が積極的に魔女狩りをしなければ平穏な暮らしは出来るだろうが、それではダメなのだ。
 何故自分が生きていて、この世界にいるのかを知らなければならない。自分が生きているのは何かしら理由がある筈だ。それを知る鍵が魔法少女や魔女のような、漠然とだがそれらにある気がするのだ。
 しかし一方のメルヘン少女は、
 「それからあなたを巻き込んで悪いのだけれど近くで白い小動物みたいなものを見なかったかしら?」
 話が振り出しに戻った。
 恐らくこれ以上粘っても彼女は首を縦に振らないだろう。アレイスターは半ば諦めながらも、取り敢えず彼女の問いかけには答えようとする。
 「いいや見ていないが。あの小動物型思考地球外生命体を探して何をしようとしているのかね?私もあのキュゥべえとやらについて知りたいのだが」
 これに黒と紫のメルヘン少女は驚いた様子だった。
 ......なんだ、ずっと無表情だったのが意外と可愛い表情をするではないか。
 「あなたどうしてキュゥべえのことを......?」
 「それは秘密だ。さっきの私の申し出を受け入れてくれれば教えてやってもいいのだがね」

 中身一〇〇歳以上のオッサンの癖して女子中学生相手に大人気ないことをしているのは置いといて、アレイスターは挑発するようにメルヘン少女に言った。
 しかし一方のメルヘン少女も引けない事情があるのか、
 「......いいえやっぱり断るわ。それからキュゥべえから何か勧誘されても絶対に乗ってはダメ。これだけは覚えていてちょうだい」
 やはりこの少女は何か隠している。が、ここで詮索した所で何か変わるわけではない。ここは大人しく忠告を受け入れるとしよう。
 「分かった。忠告は受け入れるよ。ただこちらの申し出も考えていてくれないかね」
 「ええ分かったわ。考えておきましょう」
 その言葉が嘘か真実かはこの際置いておこう。取り敢えずはこの少女がこちらの言い分を聞き入れたこと、これで少しでも前に進めるのであればそれでいい。
 それから程なくして黒と紫のメルヘン少女は何処かへと走り去って行った。あの小動物型思考地球外生命体を追っかけているのだろう。
 二度目の魔法少女との邂逅。
 取り敢えずやることが増えた。あの黒と紫のメルヘン少女の動向についても調べる必要性が出てきた。また一からカメラの映像記録を精査しなければならないと思うと気が滅入ってくるが。
 さて、こちらもとっとと退散するとしますか、とアレイスターはネット喫茶へと帰って行くのであった。

 今日も魔女を退治する。あの娘が戦わない為に、魔法少女にならない為に。だからわたしは戦い続ける。あの娘を救う為にも。
 そして今日も魔女を退治し、グリーフシードを回収していた時、ヤツを見つけた。
 キュゥべえ。
 まだ発展途上の少女達に奇跡と、魔法少女の残酷な運命を売って歩いている忌まわしい存在。あの娘は何度もヤツの口車に乗せられ絶望の底へと叩きつけた唾棄すべき存在。
 ソイツを偶然見かけ、殺す為に追いかけ回した。
 普段であればそんなことをする位ならもっと他のことに、例えば武器集めやワルプルギスの夜の倒し方の研究等に時間を割くのだが今回は違った。
 ここはあの娘の生活圏内なのだ。
 ヤツを逃してついうっかり契約、等そんな万に一つの可能性でも摘み取っておかなければならない。絶対にヤツの思い通りにはさせない。だから殺す、取り逃がす等あり得ない。
 だがヤツもヤツでなかなかしぶとかった。
 単純に魔女を退治した直後ということもあり、疲れていたのか、それともヤツが回避が連続で上手くいったのか弾がヤツに当たらない。その上一体殺せばまた別のヤツが交代リレーのように出てくるのでキリが無い。何処かの言葉だったかクソを一見たら三〇はいると思え、なるほど確かにこの言葉の言う通りだ。Gのようにワラワラと出てくる。いや、Gの方がまだマシか。
 そんなこんなでいつの間にか人気の無い所までやって来た。あの娘の生活圏内に外れてはいるがまだ油断は出来ない。ヤツらがもうこっちに来ないように徹底的に潰す。
 しかしあの小さい体を利用して小さな隙間を掻い潜っていくキュゥべえを追っていく内にいつの間にかヤツを逃がしてしまった。
 全く、面倒なことになった。とっととあのクソを潰さなければならないのにこんな凡ミスしてしまうとは。
 とにかくヤツを探さねば。そう思い辺りを走り回っていたその時、魔力を感じた。ヤツを探さねばならないこんな時に魔女とは、とんだ厄日だ。
 ヤツを殺すのも大事だが、魔女を放っておく訳にもいかない。
 と、魔女を退治しようとした矢先、
 銀の少女がそこにいた。

 あ、ほむら視点入ります。

 ぶっちゃけ言うと頭の中は疑問符だらけであった。
 第一に先程感じた魔女の気配は一切しなくなり、代わりにこの少女がいた。
 なら魔女は?まさか目の前にいる外国人銀髪少女が倒したとでも?
 その可能性は魔女を知っていて、十分な武器と戦闘経験があれば無くはないのだが、目の前の少女がそんな風には見えない、が実際魔女の気配はもうしていない。つまり誰かが、魔法少女の気配が無いことから恐らく可能性としてはあの銀の少女なのだろう。
 第二に今までの時間軸であのような少女は見たことはなかった。
 これまで繰り返し、そして失敗してきた世界でほむらはあらゆる情報を入手してきた。その中にはある程度はあの娘の関係のあることは勿論、あの娘に関係の無いことも知っていたりする。
 関係の無いものは無いで無視しようとすればいいじゃないかという話にもなりそうだがそういう訳にもいかない。
 前述の通りあの娘を守る為にはあの娘の危険にさらすあらゆる可能性の芽を摘み取っておかなければならない。
 例えば美樹さやか。
 彼女が魔法少女になったことで結果的にあの娘も魔法少女になってしまったこともあったりした。そのようなこともあるのでちょっとしたことでも気を配らなければならない。例えどんなに小さなことでも。
 だが、数回数十回に渡る時間遡行の中にはあの銀の少女はいなかった。そこが奇妙な点だった。
 魔女も退ける謎の銀の少女。彼女には気をつけなければならない。魔法少女ならば尚更。あの娘に危害が加わるその前に。
 ただ、何でもかんでも疑ってばかりでは思考の自縄自縛に陥るだけだ。あの娘の害になるかどうか、見極めるのは今ではない。今はあの忌まわしい白い悪魔を探さなければ。
 「あなた白い小動物みたいなものを見なかったかしら?キュゥべえのことだけど」

 キュゥべえに関しての質問をしてみた。恐らく魔女について知っているのならば彼女は魔法少女で、詳しくは無いだろうがキュゥべえがどんなものかも知っている筈。
 が、返ってきた答えはというと、
 「お嬢さん、これから私と共に秘密の園へ行かないかね?そこでたっぷりと話し合おう。勿論夜の営みを交えてね」
 ......??????
 自分はキュゥべえについて質問した筈。それが何でこんな答えになって返ってくるのか。もしかして彼女はナンパというものをやってきたのか?それにしたっておかしい。大体女が女にナンパするなど、最低でも自分は聞いたことがない。
 何のことかは分からないが取り敢えず断っておかなければ。
 「?どういうことか分からないけどお断りさせていただくわ」
 ......ただ一つだけ言えるのは何故かゾワゾワっとするような寒気がすることだ。
 「いや何、君と私で情報交換をしないかという誘いなのだがね」
 「情報交換?」
 何故か哀しそうにしていることひ置いといて、彼女の言った情報交換というワードが引っ掛かった。
 魔法少女同士は理由はどうあれ佐倉杏子がそうであったように魔女を狩った報酬のグリーフシードで基本的にはいがみ合うのだが......この少女は受け手の解釈次第では手を取り合おうと言うのだ。もしかしたら巴マミのようなタイプなのかもしれない。
 一方の銀の少女は、
 「ああ、実のところ私はこの街に来たばかりでね。ついでに言えば魔法少女とやらでもない。この街や魔女、ましてや魔法少女等というものを私は知らない。だが君は事情通なのではないかね?私は魔女に対抗する術を知っているし持っている。私が君にこちらの技術を提供する代わりにそちらの持っている情報を提供してはくれないかね?そうすればお互いWin-Winの関係となるのだが」

クソssって分かってるけどこれ読んでいる人いんのかな?
いないならマミるとこまでやってエタるかもしれん

いっぱいちゅきだからかいて

キューベーの星破壊するまで書いてください(あるかはしらない)

書きづらいなら 台本形式にするのも一つの手かと

読んでいる人がいて安心しました
取り敢えず続けます
>>76
台本は考えていませんが、分かりにくいというのであればやるかもしれません

めっちゃいるぞ
上条さんの貞操と進級賭けても良い

 彼女が魔法少女ではないということに驚愕しながらもほむらは合点がいった。
 情報交換とはそういうことか。
 つまり目の前の少女は同じ目的の達成の為に手を取り合おうというわけではなく、お互いの目的の完遂の為に利害の一致で動こうと言うのだ。
 確かにこの少女の言う通りお互いがそれぞれの技術、情報を提供しあえばWin-Winの関係にはなると、最低でもあの白い汚物を追っかけ回すよりかは有意義だろうし彼女の持つ技術や知識がもしかしたらワルプルギスの夜打倒に役立つのではないかとほむらは思った。
 しかしここで一般人の協力を得るというのは気が引ける。
 というのも彼女が魔法少女ではないというのならこれからキュゥべえか彼女を狙い、彼女が魔法少女になる可能性もある。そしてもしも、彼女があの娘に魔法少女になるよう誘導等することがあればやはり見過ごせない。少しでもそういう可能性があるのなら摘み取っておくべきだ。
 故に答えは、
 「いいえ、それもお断りさせていただくわ」
 キッパリと断った。続けて、
 「確かにわたしは魔法少女についても魔女についても知っている。そしてわたしも魔女に対抗できる手段を持っている。だけれどそれと同様にあなたも対抗する術を持っているのでしょう?魔法少女でないのは奇妙だけれど、魔女に対抗できる手段を持っているのならそれに越したことはないわ。それに一番はあなたはもう魔女とは関わらない方がいい。お互い干渉せず、平穏な暮らしを享受した方がいいわ」
 それからこの忠告は、あらゆる時間軸を繰り返す内に廃れてしまった心の中にある優しさからだった。ほむら自身は気付かないだろうが。
 それに忘れてはならないが本来ここに来た目的は、
 「それからあなたを巻き込んで悪いのだけれど近くで白い小動物みたいなものを見なかったかしら?」
 「いいや見ていないが。あの小動物型思考地球外生命体を探して何をしようとしているのかね?私もあのキュゥべえとやらについて知りたいのだが」

 ?!
 何故キュゥべえが宇宙から来た生命体だと知っている......?
 前述の通り魔女について知っているということはキュゥべえについて知っていると予想してはいた。そしてその予想は見事に当たり彼女は“キュゥべえ”という名を聞いても驚きはしなかったし、先程の言葉からキュゥべえの名が出てきた為彼女はキュゥべえについて知っているのだろう。
 だが特筆すべき点はそこではない。
 あの銀の少女は小動物型思考“地球外”生命体と呼んだ。そう、確かに“地球外”という言葉を使ったのだ。魔法少女でさえ知らないキュゥべえの秘密を魔法少女でない彼女が知っている。
 「あなたどうしてキュゥべえのことを......?」
 「それは秘密だ。さっきの私の申し出を受け入れてくれれば教えてやってもいいのだがね」
 ......やはり彼女は注意すべき存在なのかもしれない。
 「......いいえやっぱり断るわ。それからキュゥべえに何か勧誘されても絶対に乗ってはダメ。これだけは覚えていてちょうだい」
 銀の少女の存在に警戒しつつも忠告を飛ばすほむら。あの娘を脅かすものの可能性は少しでも摘まなければ。そろそろ時間も押してきた。こうしている内にキュゥべえがあの娘に近づいていないとも言えない。早くあの吐瀉物擬きを始末しなければ、あの娘と接触するその前に。
 一方の銀の少女はこちらの言いたいことが分かっていたのかいないのか、それは分からないが忠告は聞き入れてくれたらしく、
 「分かった。忠告は受け入れるよ。ただこちらの申し出も考えていてくれないかね」
 「ええ分かったわ。考えておきましょう」

 勿論嘘である。
 とはいえ全くの嘘というわけでもない。あの銀の少女の技術と知識は恐らく自分よりも上だろうし、何よりもあの銀の少女を監視下に置く意味でもあの申し出は随分意味のあるものだと思う。
 しかし同時にあの娘を危険に晒す可能性もある為、答えがイエスにはならなかった。
 そんなことを考えながらキュゥべえを探し回る。結局正真正銘のクソデブリは数匹始末しただけに終わった。
 帰路ついたほむらは家であの銀の少女について思い出す。
 どこまでも不敵な笑みを絶やさないあの銀の少女を。
 そしてほむらはどこかであの銀の少女について感じていたことがある。





 何故か彼女を知っているような気がすると。




さて、これから家事と宿題じゃあ!!!!!!
誰かこの運命から解放してくれ(泣)

 あれから数日。
 黄色いメルヘン少女や黒と紫のメルヘン少女の動向についてカメラの映像記録を中心に調べていった。
 結果的には大した情報は手に入らなかった。
 彼女達は基本的に魔女狩りでもしているのか、あまり人気の無い所へ入っていく映像ばかりであった。しかもその人気の無い所にはあまりカメラは無く、大方予想できるとはいえ彼女達がそこで一体何をやっていたのかは分からない。
 ただそれだけでなく、黄色いメルヘン少女と黒と紫のメルヘン少女には行動パターンが別であるということが分かってきた。
 黄色いメルヘン少女はあの卵型の物質化した魂の輝きを頼りに行動していることが多くこれといって特定の場所で行動するということはない。また、時折何も映っていないところに微笑みかけたり、話しかけたりしているところを見るに恐らくあの白い小動物型思考地球外生命体が相手になっているのだろう。
 一方の黒と紫のメルヘン少女はというと、黄色いメルヘン少女と同じく卵型の物質化した魂を頼りに疎らに魔女を探しているように見えるがよくよく見てみると違う。視点をマクロにして見ると、黄色いメルヘン少女は街のあちこちに移動しているが、黒と紫のメルヘン少女は一定の範囲を基本的に移動している印象がある。恐らく魔女狩りだろうが、狩っている、というよりかは守っているという印象だ。それに加えて黒と紫のメルヘン少女は時折何かを追いかけているような挙動を見せるが、あの小動物型思考地球外生命体ことキュゥべえとやらを追いかけ回しているのだろう。黄色いメルヘン少女と違い彼女はあの宇宙人とは険悪な関係のようだ。
 彼女達について分かったことはこれくらいか。
 後は変化と言えば今日が春休みの終わりを迎え、家から学校へ登校する子供達がたくさんいたこと位か。

 学校へと登校する子供達の中にはあの黄色いメルヘン少女と黒と紫のメルヘン少女もいた。
 「なるほど、あの子らはここへ通っているわけか」
 カメラの映像記録から黄色いメルヘン少女と黒と紫のメルヘン少女の通っている学校を特定した。これで彼女らがどこへ行こうと最終手段としては学校へ乗り込むこともできるわけだ。
 それから昼過ぎ。
 ここ数日間は朝と夜にカメラの映像記録の精査や兵器の開発、謎の黒い球体の研究を、昼からはこの街の散策及び魔女狩りを行っていた。
 魔女狩りをしていく道中に買い物なんかも済ませたりするわけだが、やはりというか周りからは銀髪の外国人ということもあり変なレッテルを貼られているのだろうが、それ以上に自分は学校に通っていない不良少女として見られがちだ。しかも今日は春休みが終わりを迎え新学期なのだ。おかげで街の様々な所で補導を受けそうになった。
 そんな受難を受けながらもなんだかんだでお買い物を済ませるアレイスター。スーパーから出てきたアレイスターの持っているものは、お湯を注ぐだけのカップ麺やすぐに食べられるおにぎりやサンドイッチ、半額シールの貼られているお惣菜といったこれまで通りの手軽な食料品である。このような質ではなく手軽に食べられるものばかりを選んでいる訳は、別段某ツンツン頭のように節約したい訳ではなく、簡単に、手間が省けるものであればアレイスターは助かるという話なのだ。
 とここまで順調にお買い物を済ませるアレイスターだったが本命は食料品ではない。
 服。
 アレイスターはこれまでもて余している大金で、衣食住の内、食と住は確保出来ていたのだが、衣に関してはずっとこの青のダブルブレザーの制服を使い回してばかりである。流石にこれは色々どうかと思った次第、衣の確保の為にこれから女の子面しているクソ親父アレイスたんは洋服を買いにこれから服屋へお買い物である。

 服屋に入ってからアレイスたんは少しばかり逡巡した。
 というのも、アレイスターは今は女面してはいるが元は男であり、メンズかレディースで迷ってしまったのだ。元が男なのでうっかりとメンズの方へと足を運ぶところであった。
 やがて商品を入れるカゴを手に取り、レディースの方へと行き服を選び始めるアレイスたん。中身はともかく見た目は銀髪の外国人美少女なので服を選ぶアレイスターはなかなか様になってはいるが、アレイスターのことを少しでも知っている者がいれば指を指して笑い転げているに違いない程シュールなものだった。
 そんなことには気にも留めずに服選びに集中するアレイスたん。どんなものがいいかと思ったのだが、特に服には固執しない性分だったので、今着ている青のダブルブレザーの制服と同じようなものでいいかと決めるアレイスたん。ついでに事前に調べておいた今流行りの服も購入しとこうとした。
 まず、適当に白地のシャツを複数枚カゴの中へとぶち込む。それからレディースの薄い青のジャケットもカゴへinしていく。その他にも流行りだとかいうゆるっとしたトップスやらブラウスやらもついでにカゴへ入れていく。
 上はなんとか揃えた。後は下だ。
 下の方は上と同じく寒色系のスカート、白地のローソックスを複数着カゴに雑に入れていく。デニム素材は最近の流行りらしいのでついでにそれも入れておく。
 さて、ここからが我が腕の見せ所である。
 アレイスたんは試着室へと向かいそのまま試着室へと入っていく。試着室へ入ったということは目的は勿論服の試着である。服に拘りを持たないアレイスターでも自分の選んだ服が似合うかどうか気になるところでえる。
 それからはもう試着室で遊びまくった。青のダブルブレザーの制服と同じようなコーディネートもしてみたし、最近流行りという格好もしてみた。中身はオッサンの筈なのに何故か乙女チックになりつつある親父であった。
 今日は何かと楽しい一日となった気がしたアレイスたんであった。

娘さんにそんな姿見られたら冷たい視線で変態と罵られますよ

これから本格的にテスト勉強をしなければならないので一旦更新はストップさせていただきます。勝手ながらご容赦くださいm(_ _)m
......服の描写いるか?あれ。ただでさえ服とか興味ねえのにそれを無理矢理、それもオッサンを可愛く描写しようとしたら失敗したわ。

上条さんは勉強しなくても無事に楽しく学生やれてるし勉強なんかしなくても大丈夫だぞ(悪魔の囁き)

 翌日。
 何かと私物が一気に増えたアレイスター。中でもアレイスターの生活に意外と貢献しているものはこの間買った服である。
 以前まではダブルブレザーの制服を着ていれば外国人美少女とはいえ、お巡りさんに見つかれば即補導コースだったのだが、別の服を着ていればその心配もなくなった。また見た目だけは美しい銀髪の目鼻立ちの整った可愛いらしい少女の為、試しに少しおめかしして適当な男を誘ってみれば簡単に引っ掛かるバカどももいた為、夜の遊びには事欠かないことも分かった。
 そして今日はいつもの薄い青のダブルブレザーの制服ではなく、この間買ったばかりの服を着ていた。白地のシャツの上に薄い青のブラウス、同じく寒色系のミニスカートといった感じのコーディネートであった。いつものダブルブレザーの制服が着なれているせいか少しばかりか違和感はあるがそれ以上に新鮮な気持ちにさせてくれた。流行りの服を着たがる女の子達の気持ちが少し分かった親父であった。
 それに最近はあのメルヘン少女達が頑張ってくれているのか魔女の動きもあまり見られない。街には平穏があり、魔女狩り出来ないことにアレイスターは少しばかり不満を持っているもののたまには平穏な街の中で過ごしてみるのも悪くはないと結論付けた。
 夕刻。
 太陽が西側へ傾き、沈みかけ街の色をオレンジに染めようとしている頃、アレイスターはふと違和感を感じた。街の中を知らず知らずの内に招かれざる客を呼んでしまったようなこの気配。アレイスターは知っている。
 魔女。
 これまで具体的にどういった被害を与えるのかは分かっていないが、あの凶暴な性格だ。決して人のプラスになるようなものではないだろう。全く、人が気持ちよく一日を過ごしている時に魔女なんぞ、ついていないと心の中でごちりながら魔女のもとへと向かうアレイスター。
 やがて廃ビルへとやって来たアレイスター。まだ魔力が残っているということは魔女はこの中なのだろう。

 廃ビルには何やら首筋に魔女の意匠のようなものがある女性を見かけた。意匠にも魔力が少し残っているところをみるに、
 (魔女の仕業かね?)
 こうやって人を操ることも出来るのかと感心し、廃ビルの中へ入ろうとしたその時、
 (おや?)
 あの廃ビルの中へと入っていく見覚えのある一人の少女を見つけた。昨日見たとある中学校の制服に身を包み左右に分かれた綺麗な黒髪を揺らしている女子中学生。
 以前会った黒と紫のメルヘン少女であった。
 恐らく彼女も魔女狙いなのだろう。魔女がいると思われる廃ビルへと何の躊躇もなく入っていく。一瞬声を掛けてみようかと思ったアレイスターだったがここで一つの考えが脳裏をよぎる。
 このまま彼女を尾行してみてはどうだろうか?
 というのも彼女らメルヘン少女、黄色いメルヘン少女が言うには魔法少女がどういった魔術、闘い方をするのか分からない。そこで彼女を尾行し、魔女とどういった闘い方をするのかを観察しようというのだ。もしかしたら魔法少女のことについては勿論、魔女や魔女の落とす黒い球体についても分かることがあるかもしれない。
 さあ、善(?)は急げだ。早速行動に移そうではないか。
 気配を消すことは勿論、足音や呼吸までも細心の注意を払いながら黒と紫のメルヘン少女の後をつけていく。これを第三者(主にリリスや上条さん)が見ればストーカーしているド変態と罵られるだろうがそんなことは気にしないアレイスター。足音や呼吸に注意を払っているとはいってもコソコソと物陰に隠れながらあからさまに後をつけているわけではない。距離を一〇m以上おくだけで後はいっそ堂々と、後をつけていけばいい。
 それから彼女の後に続き魔女の結界へと入っていき───









 
 「後一回くらい使えるはずよ。あなたにあげるわ。暁美ほむらさん」
 投げられたグリーフシードを片手でキャッチし巴マミと相対する暁美ほむら。暁美ほむらの登場にあいつ......!という美樹さやか
 「それとも人と分け合うんじゃ不服かしら?」
 「あなたの獲物よ。あなただけのものにすればいい」
 と、グリーフシードを投げ返そうとしたその時、
 「では私が頂こうかね」
 そこに銀の少女が介入した。

取り敢えずテストが終わるまではここでストップさせていただきます

乙。

 「「?!」」
 突如として現れた銀の少女。面識はある。しかし素性も正体も分からない謎の少女の登場により、驚きと困惑と疑問で頭の中を支配される魔法少女二人。巴マミの近くにいる鹿目まどかと美樹さやかも同様に固まってしまっている。
 一方の銀の少女、アレイスター=クロウリーは暁美ほむらが投げようとしていたグリーフシードをひょいっと掴み取った。
 「成る程、この球体はグリーフシードというのかね。“悲劇の種”ねえ。そして役割は君達魔法少女とやらの魔法を使うことによって生まれた穢れを吸い取ることか。色々分かったことがあって助かった。やはり尾行して正解だったな」
 沈黙を先に破ったのはこの状況を作り出した本人、アレイスターだった。それに続くように暁美ほむらがアレイスターへと誰もが疑問に感じていることを代弁するかのように口を開いた。
 「......あなたいつからここに......?」
 先程の口振りから恐らく最後尾の自分をつけてきたのだろうがそれにしては一切合切誰かの気配はしなかった。巴マミらの後を追いかけていて気付かなかった可能性もあるが、恐らくそれは限りなく低い。
 「君がここに入る時とほぼ同時だが?」
 ......ここに入る時はしっかりと周囲に人がいないか確認しながら入った筈。自分に気付かれずに完璧なステルスをするとはやはりこの少女は只者ではないようだ。
 巴マミと暁美ほむら、ついでに言えば美樹さやかはアレイスターに警戒の眼差しを送ってくる。ただ鹿目まどかだけがこの険悪とも違う嫌な空気におどおどしているようだが。
 一方の銀の少女、アレイスターはグリーフシードを手の上で弄びながら飄々とした態度をとっている。そんなアレイスターに対して暁美ほむらは、
 「あなた、もう魔女には関わらない方がいいって言ったはずよね?忠告は聞き入れてくれたんじゃなかったのかしら?」
 「私が聞き入れたのはキュゥべえとやらについてだが?」
 全く以て話にならなかった。それに加えて美樹さやかからは何?転校生の知り合い?と疑いの目を向けてくる。

 巴マミはというと暁美ほむらと接点があること、キュゥべえのことを知っていたことに驚いたのか、それとも単純にアレイスターの存在に疑問を感じたのか、
 「あなた一体......?」
 いつかの夜にも投げ掛けた疑問をもう一度銀の少女へと投げ掛ける。
 「私はただの『人間』だよ」
 巴マミは銀の少女の鈴を転がすような可愛らしく甘い声だと思いつつもその裏には底知れぬ深淵を覗きこんでいる感覚に陥った。鹿目まどかも美樹さやかも銀の少女の気味の悪さからか声を出せずにいるようだった。
 「では、興味深いサンプルも手に入ったことだしそろそろ退散させていただくとするかね」
 そう言い残し、そのままくるりと踵を返し体を闇に溶かしていった。暁美ほむらも後を追いかけていくように闇の中へと消えていった。
 廃ビル外。
 あの後一通り辺りを探してみたが、あの銀の少女はどこにもいなかった。だからどうしたと言いたくなる。何故彼女に対してこうまでする必要が、理由があるのかは分からない。単にあの娘の障害となるからか、それとも......。

 数奇な出会いから数日後。
 アレイスターはいつも通りネット喫茶に引きこもっていた。そしていつも通りカメラの映像記録を見直していた。昨日まではあのグリーフシードとやらの研究を行っていたのだが何分道具が足りず、大方目星はついたのだが完全に解析するには時間がかかると分かりやる気が失せてしまった。ほら、あるじゃないか。宿題とか家事とかあと少しで終わると分かると逆にやる気が失せてどうでもよくなってくるアレだよ、アレ。
 そんなこんなで今日もカメラの映像記録を見ていた気力零のアレイスたんは、あるものを見つける。
 (あれは......?この間の......)
 そうあの数奇な出会いの日に黄色いメルヘン少女といたピンク髪と青髪である。誰かの見舞いなのかどうやら病院へ訪れているらしい。
 ここでアレイスターは一ついいことを思い付いた。
 (彼女達の行動も見ておけばあの黄色いメルヘン少女も含め彼女達の行動パターンが分かるかも知れんな)
 そんな訳で早速彼女達を追跡することになった。ピンクと青は数分か話した後で病院から出てきて、
 (ん?)
 何やら亀裂の入った病院の柱に向かって騒いでいた。
 ......何か胸騒ぎがする。彼女達はあの黄色いメルヘン少女と一緒に魔女の結界へ入っていっている為魔女については知っているだろう。そしてこの間の黄色いメルヘン少女とキュゥべえとやらの話によればグリーフシードは魔女を産むという話だ。もし仮にグリーフシードが一般の目からは視認出来ないとしたら......。
 「まさか......!!」
 アレイスターは彼女達のいる病院へと向かっていった。

 「グリーフシードだ!孵化しかかってる!」
 病院の柱に突き刺さったグリーフシードをまどかが見つけ、それが魔女の卵“グリーフシード”だということを伝えるキュゥべえ。焦燥感のある声からグリーフシードかり魔女が孵化する直前であることがうかがえる。
 「嘘!何でこんな所に......!!」
 まどかの不安と焦燥感のある声が伝わる。
 「まずいよ......早く逃げないと!!もうすぐ結界が出来上がる!!」
 何かを考え込むように顔を俯かせるさやか。
 「またあの迷路が......。まどか、マミさんの携帯聞いてる?」
 「ううん」
 「まずったなあ。まどか、先行ってマミさん呼んできて。あたしはこいつを見張ってる」
 「そんな......!!」
 「無茶だよ!!中の魔女が出てくるまでにはまだ時間があるけど、結界が閉じたら君は外に出られなくなる!マミの助けが間に合うかどうか......」
 まどかとキュゥべえはさやかに無茶だと伝える。当たり前だ。もしも魔女が孵化したら、何の力も持たない女子中学生が凶暴な魔女に食い殺されるだけだから。しかしさやかは、
 「あの迷路が出来上がったらこいつの居所も分からなくなっちゃうんでしょ?」
 その時さやかの脳裏にとある少年がよぎる。
 「放っておけないよ、こんな場所で......!!」
 覚悟を決めたように、いや実際に命の覚悟もしているのだろう。彼女らしい真っ直ぐとした気持ちが乗せられた声がまどかとキュゥべえのもとへ届く。
 「まどか、先に行ってくれ。さやかには僕がついている」
 キュゥべえはまどかの肩からピョンっと飛び降りるとさやかの足下へと来た。
 「マミならここまで来れば、テレパシーで僕の位置が分かる。ここでさやかと一緒にグリーフシードを見張っていれば最短距離で結界を抜けられるようマミを誘導出来るから!」
 「ありがとう、キュゥべえ!!」
 これで方針は決まった。
 「わたし、すぐにマミさんを連れてくるから......!!」
 まどかはカバンをその場に置き、マミを呼ぶ為に走りだしていった。そしてグリーフシードが眩い閃光を放ち、そして誰もいなくなった。

 既に日が傾き、辺りをオレンジ色に染めた頃、巴マミと鹿目まどかが魔女の結界のもとへとたどり着いた。
 「......ここね」
 魔女の結界へとソウルジェムの指輪を嵌めている左手をかざした。すると魔女の結界の入り口が異世界への扉のように虚空から出てきた。
 「キュゥべえ、状況は?」
 「まだ大丈夫。すぐに孵化する様子はないよ」
 そこから鹿目まどかが心配そうに、
 「さやかちゃん、大丈夫?」
 「へーきへーき!!退屈して居眠りしちゃいそう」
 「むしろ大きな魔力を使って卵を刺激する方がまずい。急がなくていいからなるべく静かに来てくれるかい?」
 「分かったわ」
 巴マミの返事を最後に巴マミと鹿目まどかは魔女の結界の中へと消えていった。
 魔女の結界の中は見ているだけで目だけでなく頭までおかしくなりそうな程毒々しく、極彩色でサイケデリックなものばかりであった。
 「間に合って良かった......」
 「無茶しすぎ、って怒りたいところだけど、今回は冴えた手だったわ。これなら魔女を取り逃がす心配も......」
 振り返ったマミは言葉を続けることなく後ろを見たまましばし固まってしまった。まどかが何かと振り返ってみてみれば、
 「あっ!」
 そこには見滝原中学の転校生であり、巴マミと同じ魔法少女暁美ほむらがいた。

 「言った筈よね?二度と会いたくないって」
 挑発とも取れる言葉に対してほむらは、
 「今回の獲物はわたしが狩る。あなた達は手を引いて」
 「そうもいかないわ。美樹さんとキュゥべえを迎えに行かないと」
 「その二人の安全は保証するわ」
 「信用すると思って?」
 かざした左手の中指の指輪か光ると同時に暁美ほむらの足下から細長いものが飛び出し、ほむらの体を雁字搦めに縛りあげていく。細長いものの正体はリボンだった。しかし通常のリボンと違い、多量の魔力が込められている特別製であることがわかった。
 「ば、馬鹿......こんなことやってる場合じゃ......!!」
 「勿論怪我させるつもりはないけど、あんまり暴れたら保証しかねるわ」
 「今度の魔女はこれまでの奴らとは訳か違う」
 「大人しくしていれば帰りにちゃんと解放してあげる。行きましょう、鹿目さん」
 「は、はい」
 「まっ......!!」
 巴マミと鹿目まどかに制止の声を掛けようとするが、リボンが彼女の体を強く縛り上げる。
 巴マミはほむらを気にすることなく、鹿目まどかは気まずそうに、そして心配そうにして暁美ほむらの方を見ながら去っていった。

 巴マミと鹿目まどかは使い魔達を物陰に隠れる等してやり過ごしていた。キュゥべえの忠告通りあまり大きな魔力を使わず、卵を刺激しないよう進んでいった。先へと進み扉を開け、毒々しい薬のビン?のようなものの中を進んでいく道中、まどかが話を切り出した。
 「あの......マミさん?」
 「なあに?」
 マミはまどかの手を引きながらもしっかりと応える。
 「願い事......わたしなりに色々考えてみたんですけど......」
 「決まりそうなの?」
 「はい。でも、もしかしたらマミさんには考え方が甘いって怒られそうで......」
 「どんな夢を叶えるつもり?」
 「わたしって昔から得意な学科とか人に自慢できる才能とか何も無くて、きっとこれから先ずっと誰の役にも立てないまま迷惑ばかりかけていくのかなって、それが嫌でしょうがなかったんです」
 いつの間にか毒々しい薬のビンの空間の出口までやって来たらしくさらに先へと進む。まどかの独白にマミは何も言わず、そっと耳を傾ける。
 「でもマミさんと会って、誰かを助ける為に闘ってるの、見せてもらって......同じことがわたしにも出来るかもしれないって言われて、何よりも嬉しかったのはそのことで......だからわたし、魔法少女になれたらそれで願い事は叶っちゃうんです!こんな自分でも誰かの役に立てるんだって、胸を張って生きていけたらそれが一番の夢だから......」
 一通りまどかの告白を聞いたマミ。彼女の心中には一体どんな思いがあるのか、それを全部聞いてマミはまどかに言った。
 「大変だよ。怪我はするし、恋したり遊んだりしてる暇も無くなっちゃうよ」
 「でも、それでも頑張ってるマミさんにわたし、憧れてるんです!」

 まどかの夢を聞いたマミ。彼女の夢を聞いてマミはどんな思いを抱いているのか。
 「憧れる程のものじゃないわよ。わたし、無理してカッコつけてるだけで、怖くても辛くても誰にも相談出来ないし、一人ぼっちで泣いてばかり......良いものじゃないわよ、魔法少女なんて」
 「マミさんはもう一人ぼっちなんかじゃないです」
 「っ、そうね、そうなんだよね......」
 マミはまどかの方へ振り返り手を握る。マミの手は力強く、しかしまるで小さな迷子の子供のような弱々しさもあった。振り返ったマミの目尻には涙も浮かべてあった。
 「本当に、これからわたしと一緒に闘ってくれるの?傍にいてくれるの?」
 「はい。わたしなんかでよかったら」
 この返事を聞いた瞬間マミは猛烈な感情の波が押し寄せてきた。一緒に闘ってくれるという嬉しさ、もう一人ぼっちじゃないという安心感、もう孤独ではなくなったという解放感。様々な感情が押し寄せてきたのだった。
 「参ったなあ......まだまだちゃんと先輩ぶってなきゃいけないのになあ......やっぱりわたしダメな子だ」
 「マミさん......」
 目尻にある涙を拭き取りながらもにっこりと笑い返すマミ。まどかはやっぱりこの人は憧れの人だと思った。今まで歯を食いしばってきて辛い思いを耐えてきたこの人を支えられるのなら、力になれるのなら自分はそれでいいと、まどかは思った。

 「でもさあ、折角なんだし願い事は何か考えておきなさい」
 「折角、ですかね?」
 「やっぱり、契約は契約なんだから、ものはついでと思っておこうよ。億万長者とか素敵な彼氏とか。何だって良いじゃない!」
 「いや、その、」
 「じゃあこうしましょう?この魔女をやっつけるまでに願い事が決まらなかったら、その時は、キュゥべえにご馳走とケーキを頼みましょう?」
 「け、ケーキ!?」
 「そう、最高に大きくて贅沢なお祝いのケーキ!それでみんなでパーティーするの。わたしと鹿目さんの、魔法少女コンビ結成記念よ」
 「わたし、ケーキで魔法少女に!?」
 「嫌なら自分で考える」
 「ええ......」
 『マミ!』
 さて、そろそろ茶番は終了の時間となった。
 『グリーフシードが動き始めた。孵化が始まる、急いで!!』
 「オッケー、分かったわ。今日という今日は即行で片付けるわよ!!」
 左手を前へかざし、ソウルジェムを光らせる。そして瞬く間に魔法少女へと変身するマミ。
 魔法少女へと変身したマミは魔法のリボンでまどかを守りつつ空中に複数のマスケット銃を展開させた。そして自身の胸元からもマスケット銃を取り出し、使い魔へと狙いを定める。ズガンッ!!という発砲音と共に襲いかかる使い魔が吹き飛ばされていく。地面に突き刺したマスケット銃を蹴りあげ手元へ収めて使い魔へと発砲する。それを常人では考えられない速度でこなしていくマミ。さらに銃を展開させ、使い魔達を蹴散らしていく。
 (体が軽い)
 マミは思っていた。
 (こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて)
 もう一人ぼっちで闘わずに済むのだと、一人で抱える必要なんてないのだと。
 (もう何も恐くない)
 だからもう恐怖することも辛い思いをすることもない。なぜなら、
 (わたし、一人ぼっちじゃないもの!!)

 扉を開け放ち、抜けた先は暗く、しかし今のマミにとってはこれからの希望の道となるように一瞬だけ明るく感じた。
 「お待たせ」
 「間に合った......」
 美樹さやかはどうやらドーナツ型のオブジェに隠れていたらしく、無事なようだった。
 「気をつけて!出てくるよ!!」
 極彩色のサイケデリックな箱こら出てきたのは小さな体躯の頭がキャンディの袋に包まれたような可愛らしい人形のようなものだった。しかし辺りの毒々しい風景と顔にぽっかりと空いた二つの穴も相まって不気味な雰囲気を醸し出している。
お菓子の魔女。
 性質は執着。
 名をcharllote。
 先手を切ったのはマミの方からだった。
 「折角ととこ悪いけど、一気に決めさせて、」
 マスケット銃を鈍器として使い、シャルロッテの座っている椅子をへし折る。続けてそのまま落ちてきたシャルロッテをバッティングのように打つ。大きく後方へ吹っ飛ばされたシャルロッテ。
 「もらうわよ!!」
 マスケット銃の立て続けにおこる発砲音と共にシャルロッテは撃ち抜かれた。更には落ちてきたシャルロッテをゼロ距離で撃ち抜く。
 「やったー!!」
 絶好調なマミについ自分のことのように喜ぶさやか。そしてラスト、弱りきったシャルロッテを最後に必殺技で撃ち抜く。その名も、
 「ティロ・フィナーレ!!!!」
 ズドンッッッ!!!!という大出力の砲撃がシャルロッテを襲い、そのままマミの大勝利と思われ、





 にょきっと、シャルロッテの口から大きな蛇のようなものが出てきて、そのギロチンのような大顎を開き、マミを食い殺そうとし、





 ドッッッッッッガッッッッッッ!!!!!!という衝撃がシャルロッテを襲った。

 時は少し遡り。
 (クソ!!このままじゃ何の関係もないあの子らが魔女に殺される。あの黄色いメルヘン少女はどこ行っている?!)
 早急にあの病院の場所を割り出し現場へと急行するアレイスター。とは言っても箒は使っていなかった。というより使えない。箒を使えばその分悪目立ちするし何よりも箒はネット喫茶では邪魔だという理由から別の場所に隠してあるのだ。それも結構遠くに置いてきた。普段は使わないだろうと思ってやったことが裏目に出た。今から取りに行っても遅くなるだけである。なので今は一分一秒でも早く着けるように全力ダッシュする他ないのである。ただそれもネット喫茶から病院までかなり遠いので間に合うかどうか。
 ネット喫茶から出てきて大体一時間後、日も傾き始め、街をオレンジ色に染めている時、ようやっと病院に着いた。
 病院の敷地内に入ろうとすると、魔女の結界の入り口にいる少女を見つけた。
 だがその少女はアレイスターの望んでいた少女ではなかった。
 黄色いメルヘン少女やピンク髪、青髪と同じ中学校の制服に身を包んだ黒髪が二又に別れているのとカチューシャ、後は無表情が特徴的な少女。
 黒と紫のメルヘン少女である。その少女が病院にある魔女の結界へと入っていく様子が見られる。
 (デジャブかな?)
 見覚えのある光景に首を傾げるアレイスター。だが今はそれどころではないのだ。
 (とにかく先を急がねば。あの少女も私と目的は同じだろう)
 そしてアレイスターもあの黒と紫のメルヘン少女の後に続き魔女の結界の中へと入っていった。

いいぞ!いいぞ!いいぞ!

テスト終わったので今日から投下再開します。
あんまり進まないけどね。
数学全く解けなくてクソワロタンゴwwwww

 魔女の結界の中はどれもグロテスクなものだった。そんな目が痛くなるような風景の中をアレイスターは何の躊躇もなく進んでいく。
 (しかしまさか一般人であるあのピンクと青が巻き込まれるとはね、監視を続けていて良かったよクソッタレ)
 と一人心の中でごちるアレイスター。しかしまだ入り口付近とはいえ魔女の結界の中なのにいまだに魔女の気配やその手下が見当たらない。何かの罠か?とも思ったが攻撃を仕掛けてこない様子からどうやら今回の魔女は相当マヌケらしい。
 しばらく進むと何やら先の方から声が聞こえてきた。物陰に隠れじっと目を凝らして見ると、
 (あれは......?)
 黄色いメルヘン少女と黒と紫のメルヘン少女、それにピンク髪がいた。黄色いメルヘン少女と黒と紫のメルヘン少女は険悪な雰囲気となっており、先程聞こえてきたのは彼女達の口論だろう。そして魔法という武器を持つ彼女らがただの口論で終わる筈もなく、
 黄色いメルヘン少女が左手を前へと突きだしたと思った瞬間、地面から大きなリボンがまるで蛇かのようにくねりながら黒と紫のメルヘン少女を雁字搦めに縛りあげた。
 (同じ目的だろうに、ナニをやっているんだか......)
 と思いつつも黙ってそれを見ているクソ野郎アレイスター。
 一方の黒と紫のメルヘン少女、暁美ほむらは焦っていた。
 (くっ!このままじゃ巴マミが......!!)
 最悪の展開だ。このままでは巴マミはあのお菓子の魔女に殺されるだけだ。あの魔女に巴マミが殺される光景は嫌という程見てきた。そして考えうる可能性の中には全員死ぬ可能性もある。巴マミも美樹さやかも、そして鹿目まどかも。それだけは絶対に阻止しなくてはならない。だが今は巴マミのリボンで雁字搦めにされている。今何も出来ない無力な自分に反吐が出る。
 とそこへ、
 「何をやっているのかね?」
 銀の少女がほむらの下へとやってきた。

 突然の銀の少女の登場により一瞬頭の中が困惑する暁美ほむら。だが今はそれどころではないのだ。何故この少女がここに?という疑問もある。しかし今は一刻を争う事態なのだ。
 「あなた、早くここから逃げて!ここは興味本位で来る場所じゃない!あなたが魔女を退ける力を持っていても、魔法少女でもないあなたはすぐに殺される......だから早くここから逃げて!!」
 情けなかった。自分に今出来ることがこの警告をこの少女に飛ばすことしか出来ないということに対して自分自身に怒りを向けていた。しかし歯痒い気持ちを抱えながらも銀の少女にこの先へ行くなと伝える。一体どんな力か知らないが、いくら魔女を退ける力を持っていてもあのお菓子の魔女は今までとは比べ物にならない程強いのだ。例え自分の持っている装備で武装したところで目の前の少女は簡単に捻り潰されてしまうだろう。しかし一方の銀の少女はというと、
 「ナニをしているのかねと尋ねたのだがね。そんな身体中縛りあげて、SMプレイのオナニーにでも興じているのかね?では私も混ぜてくれないかね?私も興味があってね、どちらかといえば被虐的な快楽を味わいたいのだが」
 ......赤の他人を本気で殴りたいと思ったのは生まれて初めてだ。こっちはすぐに逃げるよう警告を飛ばしているというのに。目の前の少女は気楽そうに、いやいっそこの空間をギャグ時空に塗り潰そうとしているのではないかという程銀の少女は飄々としていた。しかも自分でも分かる露骨な下ネタを呼吸をするかのようにぶっ込んできやがった。
 「ばっ......!、そんなこと言っている場合じゃ......っ!!」
 声が響いていたのか銀の少女の相手をしている内にいつの間にか魔女の使い魔が寄ってきていた。あの顔とも分からない部位をこちらに向けるなり攻撃態勢に移っていた。しかし使い魔が出てきたのは何も奥からではない。
 入り口付近、即ち銀の少女の背後。
 そろりそろりと銀の少女へと近づきすぐそこまで来て

 パァンッ!!と、すぐそこまで来ていた使い魔が破裂した。
 「.................................え?」
 何が起こった?
 魔女に比べて雑魚とはいえ普通の人ならば簡単に殺されてしまう使い魔を、この銀の少女が倒したとでもいうのだろうか?いや、今の現象はそれこそ魔法でなければ無理な話だ。しかし目の前の少女からは一切の魔力を感じない。それこそたった今の現象はキュゥべえの奇跡でなければ出来ないことだ。
 頭の中が疑問でいっぱいになっているのを知ってか知らずか銀の少女は回答を言った。
 「極微小型時限爆弾。極小のドローンにつけた微小な爆弾さ。この街の科学力を利用して作った私の即興兵器だよ。本来は体内へ侵入させ体内をズタボロにするものだが、外傷でも十分に殺せる程火力を強めにしたものだよ。小さいから移動距離は短い上、起動してから数秒から数十秒で爆発する代物だが、不意打ちにはもってこいだろう?」
 よくよく目を凝らして見ればダイヤモンドダストのように空中にキラキラと光るものがあった。恐らく爆破したドローン等の残骸だろう。火薬を使っていないからか硝煙らしいものはなかった。
 そして奥から来た使い魔達がほむらと銀の少女へと飛びかかろうとした瞬間、
 ボボボボボボボボッッッ!!!という爆発音が鳴り響いた。そしてその音が鳴り響くと同時に使い魔達は逆に吹き飛ばされてしまったのだ。
 「さて、お嬢さん、先程の話の続きをしようか」
 銀の少女は何事もなかったかのように話を戻してきた。

オラッ?オラッ?次出せよ豚っ?

 「......取り敢えずこのリボンは切れるかしら?」
 「りょーかい」
 まずはこのリボンをどうにかしなければ話にならない。このリボンには魔力で耐久性が強化されている為簡単には切れないと思っていたのだが、目の前の少女は軽くOKを出した。
 銀の少女は人差し指と中指を伸ばし、まるでハサミで切るかのようにリボンを難なくちょきんと切ってしまった。
 「取り敢えず礼を言うわ。ありがとう。けどこの先には行かないで、使い魔を倒せるとしても、この先生き残れるかは保証しかねるわ。だから、」
 「そうも言っていられないだろう?君が慌てているということはそれ相応の理由があるのではないかね?恐らく私と君の目的は同じだろうしな。共に行動した方がいいと思うのだがね」
 確かにそうだろう。先程使い魔を蹴散らした爆弾を見れば更にゲテモノ科学兵器が出てくる可能性もあるだろう。しかしそんなガジェットに頼りきっていては油断して一瞬の隙を突かれてお菓子の魔女に殺られるだけ、肉塊オブジェの完成である。そんなことはさせない。それも魔法少女でも何でもない一般人を巻き込む訳にはいかない。
 しかし銀の少女はほむらの考えていることに気付いているのかいないのか、
 「何を考え込んでいるのかね。先程の黄色とピンクと何があったかは知らないが、この先急がなければならないのではないかね」
 と言いながら呑気に先へと足を運んでいった。
 そうだ、とにかく今はグタグタと考え事をしている場合ではない。早くあの娘達を助けなければならない。今のままじゃ最悪の展開になりかねないのだ。......使える手はいくらでも使えという考えが出てきた。
 しかし一般人の彼女の協力を得るのは彼女を危険に晒すことになる。が、
 「......ここから先はあなたを危険に晒すことになるわ」
 口は頭よりも速く動いていた。
 「それを承知でわたしのお願いを聞いてくれるかしら?」
 答えは分かりきっているのに、わざわざ質問をする。
 「あの娘達を助ける為にわたしに協力してくれないかしら?」

 対して銀の少女はくるりと体をこちら側へ向け、待っていましたと言わんばかりに凄絶な笑みを浮かべ、
 「勿論さ、レディの頼みとあらば尚更」
 あっさりとOK を出した。
 「さて、正式に君からの頼みも聞き入れたことだ。本腰をいれてかかるぞ」
 瞬間、どこから取り出したのか大きな砲台のようなものが銀の少女の前に現れ、爆音を鳴らしながら何かを撃った。そしてドッッッボッッッ!!!!という音と共に魔女の使い魔達が弾け飛ぶ光景がほむらの瞳に映った。
 「邪魔者は蹴散らした。It's a crazy party time(楽しいパーティーのお時間だ).さあ、先へ行くぞ。パーティー会場はこの先にある。」
「え、ええ」
 こうしてワケあり魔法少女と銀の変態少女(?)はマミ達を助ける為に行動を開始した。

 ある程度進めば使い魔は出てくる為その度に銀の少女と連携して使い魔達を一掃した。何故かは知らないが、この銀の少女とは旧い戦友かのように息のあったコンビネーションで連携して使い魔達を倒すことが出来た。マミが先へ行っていたということもあったのだが、思っていた程手間をかけずに先へと進めた。
 「疲れたかね?お嬢さん」
 「いいえ全く、あなたこそ大丈夫かしら?派手に動き回っているけど」
 「これでも体力には自信がある方でね、心配しなくとも息切れすることはないさ」
 等と軽口を叩きながらほむらは拳銃で、銀の少女は改造銃で銃弾の雨を使い魔達へと浴びせながら進んで行った。
 先へ進んで行くとそこには、
 「あ、」
 大顎を開きマミを食べようとするお菓子の魔女、シャルロッテの姿があった。今手元にある拳銃では火力が足りず、時間停止を発動させるのにもタイムラグがあり、その間にマミが喰われてしまい、間に合わない。
 シャルロッテがギロチンのような大顎を閉じようとする。
 また、また失敗かと歯噛みする。いつもそうだった。あの人が死ぬのは運命であるかのようだった。
 そして、そして、そして。










 ドッッッッッッガッッッッッッ!!!!!!という衝撃と共にシャルロッテは大きく後方へと吹き飛んだ。









 「パーティーの時間には間に合ったか」
 左手にはねじくれた銀の杖を持ち、右手は鉄砲のジェスチャーをしていた銀の少女が呟いた。
 「さあ、第二ラウンドといこうか。こちらも雑魚ばかり相手をしていて退屈していたところだったんだ。精々楽しませてくれよ」
 黄色い魔法少女は呆然としていてまどかとさやかは固まったまま、ほむらは今の現象が理解出来ずに唖然としていた。そしてアレイスターは鉄砲のジェスチャーをした右手を構えたまま、シャルロッテの方へと一歩、二歩と歩みを進める。
 「Let's start witch hunting.Special
things only for today(パーティーを始めよう。最高に狂ったパーティーを).」
アレイスターの台詞を言い終えるのとシャルロッテが動き出すのはほぼ同時だった。怒り狂ったように大顎を開き突進をかまし、アレイスターを喰い殺さんとするシャルロッテ。図体がデカイ分威圧感や風圧が凄いが、しかしアレイスターは臆せずに右手を構える。そして、アレイスターは右手から火花を散らした。しかしアレイスターが連想させたのはただの拳銃ではない。もっと威力のある大仰なものだった。
 そして第三者の目には“それ”はこう映っていた。
 (マスケット銃......?)
ドッッッッッッガッッッッッッ!!!!!!という衝撃が、またもやシャルロッテを襲う。
 「そんな突進程度でこのアレイスター=クロウリーが怯むとでも思っていたのかね?」
 しかし背後にはシャルロッテの使い魔達が忍び寄り、
 ズガガガガガガガッッッ!!!!!という耳をつんざく音と衝撃が使い魔達へと浴びせられた。
 「そのまま続けて頂戴。取り巻きはわたしが片付ける」
 「了解」
 さあ、黄色い魔法少女の死の運命をこのファンシーな空間ごとぶち壊せ。

 「どうなっているの?」
 黄色い魔法少女、巴マミはそう呟いた。謎の銀の少女と暁美ほむらが一緒に戦っている光景を呆然としながら見ていた。
 魔法少女でない筈の銀の少女が何故魔法を使える?
 彼女達は自分を助けに来てくれたのか?
 いや、そもそも自分は今までどんな状況だった?
 「ひっ......!」
 あの光景を思い出した途端恐怖が遅れてマミを襲った。咄嗟に自分の頭と首を触りしっかりと存在するか確認する。それでもまだ恐怖は抜けきれない。力が抜け、その場にペタリと座り込んでしまう。
 「「マミさん!!」」
 まどかとさやかがマミを心配してマミの方へと駆け寄って来た。
 「マミさん大丈夫ですか?!」
 「取り敢えず安全な場所に行きましょう!!」
 後輩二人の声に自分が生きていると実感し、安堵して途端に涙が溢れだしてきた。
 「マミさん、もう大丈夫ですよ。ここは安全です」
 まどかがマミを元気付ける言葉を掛けるが、その優しさが更に生きている実感を味あわせた。涙が止まらない。子供のようにぎゃんぎゃんと泣きわめいた。多分人生で一番泣いたかもしれない。
 一旦泣きわめいた後になって少し落ち着いた頃、
 「......ありがとう......二人とも......」
 取り敢えず後輩二人に礼を言ってからまた涙が出てきそうになる。が、落ち着いて戻った思考で泣くなと無理矢理涙を堪える。 
 「いえいえ、わたしは何も、
 「マミさん、まどか、こっち来る!!」
 どうやら見張り役をしていたさやかから魔女がこっちに来ることが知らされる。
 「っ......!!」
 そしてぶり返すあの恐怖。逃げなきゃいけないのに体が言うことを聞かず、ガタガタと震えている。しかし、予想に反し、魔女を吹き飛んでいった。
 魔女の代わりに謎めいた銀の少女が立っていた。
 「ここにはか弱きレディがいるんだ。悪いがここから先は侵入禁止だ」

 某第一位風にカッコつけながらアレイスターはマミ達を守るようにマミ達の前に立った。
 「先程は雑魚ばかりと言ったがここまで耐久値が高いと最早ストレスゲーだな」
 右手と左手、二丁拳銃のジェスチャーをとり連続で火花を散らす。ズガガガガガガガッッッ!!!!!と、いくつもの銃弾の雨がぶつかる衝撃がシャルロッテを襲う。
 「さて、そろそろ終わりにさせてもらうとするかね」
 と言い、お菓子の魔女にトドメを刺す為にジェスチャーの構えをする。それは大体大砲のようなものだった。
 しかしその構えは見る人によっては別のものに見えさせた。
 「ティロ......フィナーレ......?」










 ズガンッッッッッッッッッ!!!!!!と、特大の衝撃がシャルロッテの残り少ない体力を〇へと追い込んだ。









いいわよ。もっと供給なさい...

 シャルロッテが倒されたことにより、サイケデリックなこのサイケデリックな空間もシャルロッテと共に消えていった。
 日が傾き、世界をオレンジに染め上げたその場に残っていたのは通路の中央にあるグリーフシードとアレイスター、暁美ほむら、鹿目まどか、美樹さやか、キュゥべえ、そして巴マミだった。
 巴マミは最初、まるで時が止まったかのように呆然としていた。だが、自然とマミの思考は現実のスピードに戻り、今の状況を理解するに至った。
 そして、そして、そして。










 「い......いきてる......?わたしたすかったの?」










 言葉にしてみれば簡単なものだった。しかしそれがどれほど難しいことだったか、どれだけ嬉しいことか、これ程実感したのは初めてだった。
 「マミさんだずがっだあああぁぁ......!!」
 「マミさん!マミさああん!!」
 そして後輩二人泣きじゃくりながらもが自分の身を案じてくれている。
 恐怖もまだ抜けきれていないし、体がガクガクと震えている。しかしそれ以上に嬉しさが、生きていることの嬉しさの方が勝っていた。
 この後は三人してわんわん泣きじゃくった。先輩とか後輩とか、場所とか時間とかも関係なく、心の奥底から湧き出てくる感情のまま身を抱き合いながら泣きじゃくった。
 そして少し時が経った頃、
 「......二人ともありがとう、そしてごめんなさい。あんな危険に晒して、怖い思いをさせて」
 「いえいえ、あたし達こそあまり役にたてなくて、マミさんがいるから大丈夫だって思ってマミさんばかりに重い荷を背負わせちゃって......」
 「わたしも怖くて怖くて、なのに何も出来なくて、ただ見ているだけでマミさんを助けることが出来なくて......本当にごめんなさい」
 「いいえ、あなた達が気にすることではないわそれから......」

 マミは震える体を押さえ込みながらも、“二人”の下へと歩み寄った。
 「助けてくれてありがとう。そして暁美さんには酷いこと言ったりしてごめんなさい。勘違いしてたとはいってもあんなことをしてごめんなさい」
 「いいえ、気にしてはいないわ。あなたが助かればそれで良かったわ。こちらこそ言い方が悪かったわ、ごめんなさい」
 二人の雰囲気はシャルロッテの結界の中にあった邪険なものではなく、和解したような柔らかいものになっていた。
 それを遠目に見ていた美樹さやかも何かを思ったのか、ほむらの方へと駆け寄り、
 「転校生、その、なんていうか......ごめん。今まで邪険にしてきて......あたしも言い方キツかったかも......それからマミさんを助けてくれてありがとう。これからはよろしくしてもいいかな?」
 「ほむらちゃん、マミさんを助けてありがとう。その......わたしも友達になってくれないかな?」
 いつの間にかまどかも駆け寄っており、友達にして欲しいと言った。二人に対する回答は勿論、
 「ええ、こちらこそよろしく」
 こちらも険悪な雰囲気ではなく、和解したようだった。
 「それから、あなたもありがとう。わたしの命を助けてくれて」
 「なあに、礼には及ばんさ。良い百合も見させてもらったしな」
 アレイスターの方を向き、礼を言う巴マミ。まどかもアレイスターへと体の向きを変え、
 「マミさんを助けてありがとう、その......えっと......」
 「アレイスターだ。アレイスター=クロウリー」
 「アレイスターちゃん!!」
 名前の分からないまどかへ自身の名を口にするアレイスター。ここで初めて名乗ったアレイスターだった。

 「巴マミ」
 辺りが喜びのムードになる中、暁美ほむらは巴マミの名前を短く呼んだ。
 「......何かしら?」
 先程和解したばかりだというのにほむらの目はなにやら鋭かった。
 「あなた、さっきのことがあってまだ魔女と闘える?」
 「......」
 「例えわたしと組んでもあなたは足手まといでしかないじゃないかしら?」
 「ちょっ、そんなこと言わなくても!!」
 「そうだよほむらちゃん、そんな言い方ってないよ!!」
 ほむらの棘のある言い方につい反抗する二人だったが、
 「いいのよ二人とも。ええ、わたしは多分もう魔女とは闘えないかもしれないわ。」
 認めた。後輩に弱いところを見せたがらない巴マミが今、弱音を吐いている。しかし、
 「でも、だからと言って魔女を野放しにする訳にはいかないわ。これはわたしのソウルジェムが穢れるから、グリーフシードが欲しいからじゃなくて、この街が魔女によって一般人が脅かされることが許せないから」
 固い決意と正義感だった。それとも後輩には弱いところは見せまいという意地だろうか?さっきは魔女に喰い殺される直前だというのに。
 しかしほむらもこの回答を予測していたのか、
 「ええ、そう言うと思ったわ。けどさっきも言った通り例えわたしとあなたが組んでもあなたは足手まといでしかない」
 「っ、!!」
 しかし、その後に続く言葉はマミの予想を反していた。
 「だから、わたしがあなたの代わりにこの街の平穏を守る。あなたも含めてみんなを魔女からわたしが守るわ」

 「いいの?」
 「ええ、勿論よ。約束する」
 予想外の返答に一瞬呆ける巴マミ。そして理解が現実に追い付いたのか、
 「ありがとう......!本当にありがとう......!!」
 「別に気にしなくていいわ。わたしにもわたしの目的があってその為にやっているだけですもの」
 「それでもよ。あなたはこの街を守ってくれるというのならわたしも嬉しいわ」
 この街の平和の為に闘ってくれている魔法少女がいる。その事実だけで励みになる。これからは魔法少女を一旦やめるがこの少女がいれば問題ないだろう。
 「それから......」
 と、くるりとほむらはアレイスターの方へと体の向きを変え、
 「今日は本当にありがとう。あなたのおかげで巴マミを救うことが出来たわ」
 「礼を言う必要は無いさ。私は私で勝手に動いていただけなのたからな」
 そう、ほむらが今日一番感謝したかったのは目の前にいる銀の少女だった。彼女のおかげで巴マミを救うことが出来たどころか今までにない程順調なスタートをきれた。
 と、ここで今まで空気だったキュゥべえがアレイスターへ話しかけてきた。
 「ねえ、突然で申し訳ないんだけど、アレイスター、今日はマミの家に泊まっていかないかい?ねえ、いいだろうマミ?」
 「ええ、そうね。そうだ、今日はわたしの家でみんなでパーティーをしましょう!」
 キュゥべえがアレイスターを巴マミの家に泊まっていかないかと言う誘いを受け、マミはそれを聞き家でパーティーすることを提案した。
 「いいな、それ。私はその提案は悪くはないと......

 言いかけた時、アレイスターに異変が起こった。
 「ごぶっ......」
 先程までは何の問題もなく、シャルロッテの攻撃も受けていない筈のアレイスターの口から血が垂れてきていた。それが引き金なのかアレイスターはその場にしゃがみこみ思いきり赤い鮮やかな血反吐を吐いた。
 「ごふ......ごほっごほ......」
 一瞬のことで何が起こったのか理解出来ずに固まってしまう少女達。そしてやっと理解が追い付き、
 「アレイスターちゃん大丈夫?!」
 「な、何が......?さっきの魔女にでもやられたの?!」
 まどかとさやかはアレイスターが血反吐を吐いたことに驚き、何をすればいいか分からない様子。精々アレイスターの心配をする他ないだろう。しかしベテランの魔法少女達は落ち着いているもので、
 「鹿目まどか、美樹さやか、応急処置をするからそこをどきなさい。巴マミ」
 「ええ、分かってるわ」
 ほむらが戸惑っているまどかとさやかをほむらがどかすと、入れ替わりでマミがアレイスターの前へと立った。そしてソウルジェムをアレイスターの前へと翳し、魔力を使った治療を開始した。
 「おお、美少女から治療を受けるとは......今日は珍しくついているな」
 「喋らないで。......なにこれ......何か呪いみたいなのが邪魔をして上手くいかないわ!」
 「いや、治療が出来ないというのなら結構だ。痛み位は引いたしな。そもそもこれは私自身が仕組んでいることだ、あまり気にするな」
 アレイスターはマミのソウルジェムを手でどかすとすくっと立ち上がった。
 「私は大丈夫だ。こんなことも慣れっこだしな」
 「あれだけ血を吐いているのに大丈夫なわけ......!」
 「では君の家で治療してくれないかな?折角のパーティーが私のせいで台無しになるわけにもいかないだろう?」

 「いや......でも......」
 「ではそこの暁美ほむらと言ったか。君が私をおぶってくれないか?そうすれば移動中も状態が悪化しないだろうしな」
 「本当にいいのかしら?ここは病院の敷地内でもあるのよ」
 「いや、病院は結構するよ。諸事情で病院にお世話になりにくくてな」
 「......分かったわ」
 「暁美さん!?」
 「治療ならあなたの家でも出来るでしょ?なら早くあなたの家へと連れてくべきだと思うけれど?それに本人がここまで言うのにも訳があるのでしょうし、その訳も含めてあなたの家で話させればいいでしょう?」
 ここで押しに弱いマミは、
 「......分かったわ。ただしあまり無茶はしないこと。分かった?」
 「ええ」
 「りょーかい」
 適当に返事をする銀の少女を心配するが、今は家に帰ることが先決だ。
 「じゃあ、アレイスターさんの為にも早く家に帰らなきゃね!」
 方針は決まった。後は家に帰るだけだ。
 「あんた大丈夫?スゲー血吐いてたけど......」
 「そうだよ。やっぱり病院に行った方が......」
 マミの家へと帰る途中でも後輩二人はアレイスターの心配をしていた。
 「くどいぞ。それ以上言うのならば私の夜の相手、詳しくはセッ○クスの相手をしてもらうぞ」
 ......ここで下ネタを言うところは歪みない変態少女擬きアレイスターだった。まどかとさやかは顔を真っ赤にしていた。
 「それに私よりもあの黄色い方を気にしたまえ」
 とアレイスターが後方へ指を指すとそこには足を震わせながら歩いているマミの姿があった。

 「マミさん大丈夫ですか?」
 「一旦休んだ方が......足も震えてますし......」
 「マミ、僕も休んだ方がいいと思うよ」
 みんな察していた。恐らく今まで見栄を張って恐怖を紛らわしていただけだと。当たり前だ人は誰でも恐怖から逃げたがる生き物だ。それに死の恐怖を味わってすぐにその恐怖が抜けるわけがないのだ。その為なのか魔女が居なくなった今でも魔法少女の格好をしている。普段の格好よりも魔法少女の方が心強いのかも知れない。しかしマミは後輩二人に迷惑をかけまいとしているのか、
 「大丈夫よ、みんな先に行ってて」
 強がりを見せるマミを見て二人は顔を合わせ、
 「わたしはマミさんのペースに合わせますよ」
 「マミさんにはあたし達がついていますから!」
 「僕も一緒にいるよ、マミ」
 「みんな......」
 マミは二人と一匹(?)を見てまた泣き出しそうになった。
 「ありがとう、ゆっくりだけどいいかしら?」
 「はい!」
 「勿論です!」
 「きゅっぷい!」
 この様子を遠目に見ていたほむらとアレイスター。
 「微笑ましいな」
 「ええ、そうね」
 三人と一匹(?)の先を歩きながら(アレイスターはおぶられながら)その光景を眺めていた。
 「君はあそこに混ざらなくていいのかね?」
 「そうしたいけどあなたを先に巴マミの家に行かせるのが先でしょ」
 「おっとそれは失礼」
 そうこうしている内に横断歩道に差し掛かった。先に行ってたほむらとアレイスターは渡れたが、他は渡れずに赤信号に足止めされていた。
 そして、












 ドンッとマミはまどかとさやかを突き飛ばした。
 それは何故か?答えはすぐそこにあった。そう走る大型トラックだ。
 そして、そして、そして───









ここまで前座、ここから本編





















ゴグシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!と大型トラックがマミの体を撥ね飛ばした。



















そんな、乱パが……

 大型トラックはマミを撥ね飛ばした後、吹き飛んだマミの体を追うようにして再びマミへと追撃した。
 「「マミさん!!」」
 突き飛ばされてなんとかトラックに轢かれずにすんだ後輩二人はマミを呼ぶが時既に遅し。
 そして、
 ジャリジャリジャリジャリジャリジャリッッッッッッ!!!!!!という、タイヤと地面が噛む音が響く。どうやらタイヤが滑って上手く前へと進めないようだ。いや、正確にはタイヤと地面の間にある“何か”が潤滑油の役割をしているらしい。
 トラックのタイヤと地面の間から覗いたのは鮮血で赤く染まった黄色い髪。
 トラックのタイヤと地面の間にある“何か”とは、それは撥ね飛ばされたマミの頭だった。
 トラックがタイヤを回転ノコギリのように回転させる度にマミの頭部からは脳と脳脊髄液が撒き散らされる。また、辺りに散らばっている白い物体は頭蓋骨だろうか?脳と血液が潤滑油となりトラックの前進を一瞬だけ止めていたのだ。
 そして、そして、そして───










 パキンッというガラスが割れるような小さな音が、しかし全員の耳に届いた。










 「マミさん!!」
 「まどか!!危ない!!」
 「まどか!そこは危険だ、下がって!!」
 「でも、マミさんが......マミさんが......!!」
 助かる筈がない。分かりきっている筈なのにそれを頭が拒む。
 どうして、どうして、どうして。
 マミさんは何も悪いことはしていない筈なのに......一人ぼっちで闘ってきて、それでも歯を食い縛ってきたマミさんが、どうして......?
 「そこをどけえええええええぇぇぇぇッッッ!!!!」
 アレイスターの怒号がとぶ。そしてアレイスターの魔術で強化された渾身の右ストレートが炸裂した。そのおかげかトラックは一瞬だけ浮きその隙に身体強化した体でトラックをどかす。

 ほむらはマミの方へと駆け寄り、ソウルジェムを当てている。その間アレイスターはマミを轢いたクソ野郎の面を叩きのめす為にトラックの座席へと移動したのだが、
 「あ、」
 間抜けな声がでた。
 中にいたのは確かに小太りした中年の男で普通ならばこいつがクソ野郎ということなのだろう。
 しかし中にいたのはそいつだけではなかった。
 中年の男の首筋には魔女の意匠のような模様。奥には喪服のようなスーツやドレスを纏った出来損ないの人形のような奴ら。
 そう、こいつらは、
 「花嫁の魔女の......使い魔......!!」
 脳の血管が破裂するかと思った、あるいは歯が砕けるのかという程奥歯を噛み締めたか。
 アレイスターは右手と左手で銃のジェスチャーをとると、アレイスターの手から火花が散った。










ズガンッと、花嫁の魔女の使い魔をアレイスターは瞬殺した。









はい、ここから本編に入ります。やることはあまり変わりません。
※注意事項
・原作通り死人が出ます
・名前欄がウザイです(重要)
・コテハンがウザイです(重要)
・作者(私)の絡みや関係ないレス、ふざけがウザイです(重要)
・下ネタ上手くない癖して無理にぶっこんできます
・展開に無理があったりします(まあ基本私のオナニーですので)
・最後はハッピーエンドになります
まあ他にも色々あると思いますが以上のことが無理だという方は即ブラウザバックしてください。
あと本日入るのでもうふざけは控えます。
今まで通りぼちぼち投下していきます。飽きたらエタるかもしれません。どうかよろしくお願いいたしますm(_ _)m
ついでに登場人物
 禁書
・アレイスター
・コロンゾン
 まどマギ
・まどか
・ほむら
・さやか
・マミさん
・杏子
位かな?今のところ予定してるのは
それでは次回までノシ

あと『本日』入るのでもうふざけは控えます
×本日
○本編

何か質問があれば遠慮なく質問してください。出来る限り答えますので

質問っていうかなんていうか、俺もssを描いてる身で今スランプなんだよな...
とある風味(?)をどういう意識をして書いてるか教えてくれたりするとうれc

>>132
ぶっちゃけ自分はとある風味出せてないとおもうんですけどね
とあるは何かと比喩表現を使ったり、戦闘シーンなんかはゴッッッバッッッ!!!!みたいな大仰な擬音なんか使ったりしますね。それらを意識すればいいんじゃないでしょうか?自分はとある風味を出す練習もかねてこれを書いていますから実践あるのみとしか言い様かないのですが
これでいいでしょうか?お力になれればいいのですが

後は語彙力ぅ...ですかね

>>132
アリガトウアリガトウ...

安価先間違えました。しんできます...

>>136
安価先間違えニキ強く生きて

 辺り一面血溜まりとなっていた。その血の主だった者、巴マミは血溜まりの中央にいた。しかしそれは少し前までのせめて後輩の前ではと、笑顔だった巴マミではなかった。大型トラックのタイヤの下で横たわっていた。
 まず目に入るのが頭部がないところだった。
 大型トラックのタイヤによりもう既に頭部は抉られ、削られ、磨り潰されてしまっていた。頭部の残骸であるトラックのタイヤによって掻き出された露出した脳や頭蓋骨、深紅に染まった金髪が細かく散らばっていた
 周りは、ここだけは、確かに地獄となっていた。
 それにマミの損傷はそれだけでは無い。
 頭部程目立ちはしない。だが素人目でも分かる程身体の損傷が激しかった。
 腕や脚は驚く程に青く痣が出来ており、真っ青になっていた。それもそうだ。何tとあるトラックが全速力で突っ込んできたのだ。それにあちこち骨折もしているのだろう、身体中がギ酸でもぶちこまれたかのように酷く腫れ上がっていた。右腕に至っては本来ならばあり得ない方向にぐにゃりと折れ曲がっていた。
 そしてそんな悲惨な光景を目の当たりにした女子中学生が平然としていられる筈もなかった。
 「うっ......うぇっ......」
 「あ、ああっ......マミっ......さん......」
 鹿目まどかと美樹さやか二人はこんなグロテスクな光景に目を背け、吐き気に襲われながらもそれを耐え声にならない泣き声をあげていた。
 「運転手は?」
 暁美ほむらこんな状況でも冷静だった。ほむらはアレイスターに運転手についての詳細な情報を尋ねた。
 「......いたよ。だが......」
 「?どうしたの?」
 歯切れの悪いアレイスターに何かあったのか尋ねるほむら。
 「運転手は心臓麻痺によって意識不明の重体だった。一応救急車は呼んでおいたよ。......だが問題は何故心臓麻痺が起こったのかだが......」
 「それで......?」

いい忘れてましたがマミさんはソウルジェムが砕ける間は意識も痛覚もあるというちょっとした設定があります。頭蓋が割れて脳が掻き出されて、どんな痛みなんでしょうね。
こういう小ネタや隠れ設定などもレスしていきます。

あたし待つわ いつまでも待つわ

モンハンが楽しすぎてヤバい
けど近いうちに投下しようと思っているのでしばしお待ちをm(_ _)m

 「結論から言えば私が取り逃がした魔女の使い魔が元凶だった。すまない」
 「っ!!」
 思わずほむらはアレイスターの胸ぐらを掴んだ。
 その理由は何か?
 ほむらは魔女退治においてはあらゆる時間軸の中で何度もマミを死なせてしまっている。だからほむらはアレイスターのことをとやかく言う資格はない。ほむら自身がそう思っている。では何故にここまでほむらが激怒しているのか。
 顔をうつむかせながらアレイスターは言った。ただ悔しそうな態度を示す割には声には何の感情もないような気がした。謝ればそれでいい、何の問題もない。そのようなことを言っているようで許せなかった。
 まどかとさやかは泣いていた。しかし壊れたブリキ人形のように膝から崩れ落ち、ただ呆然とマミの死体を見つめ、声も出せない程にショックを受けていた。
 これもほむらが怒っている理由だ。
 彼女達にここまでの精神的ショックを受けさせたのだ。
 勿論これはほむらの八つ当たりに他ならない。だがほむらはあらゆる時間軸の中を生きてきたが、彼女とてまだ子供であることに違いはない。鉄の仮面を被ったように無表情で合理的に動く冷たい令嬢というわけではないのだ。自分の感情と向き合い、コントロールする術を完璧に身につけているわけではない。
 だからこの場で“悪”というものに八つ当たりにしなければほむらもどうにかなりそうなのだ。
 ひとしきりアレイスターの胸ぐらを掴み、睨むと無駄だと悟ったのかほむらは手を離した。
 「ごめんなさい、ついカッとなってしまって」
 「いや、こちらの方こそすまない」
 マミの死体へと目をやり少しばかりか思案して、
 「とにかく警察を呼ぶわ。あなた携帯は持ってる?」
 「ああ」
 警察へ電話し、しばらくすると何台かのパトカーがやって来た。そしてアレイスターとほむらはそうだが一番ショックを受けているまどかとさやかも警察官の指示により別の場所へと移された。

人払いしてから上条さんにやった回復魔術は無理か

モンハンのアプデかなんかくるらしいな。楽しみつつ俺らを満たしてクレメンス

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