財団X職員「彼らの話をしよう」 (43)

-EP.00-

1998年某日

ビー! ビー! ビー!

オペレーター「セクション10からセクション12へ移動中の『試験体10号』が現在逃亡中。アラートLeve5」

オペレーター「同じく『試験体11号』も現在行方が分かっていません」

財団X職員「同伴の職員は誰だった!?」

オペレーター「セクション12の研究員『月影ノブヒコ』、『月読蘇芳(ツクヨミ・スオウ)』他数名! 全員連絡が取れません!」

オペレーター「警備部隊がセクション12『試験体11号』のケアルーム前で意識不明の12の職員らを発見。何者かによって攻撃された模様!」

財団X職員「月影は!」

警備部隊通信『月影職員は……いません! 月読職員もです!』

財団X職員「月読職員はともかく、月影は『A.R.W-S12』の『特異点』だぞ! 2級記憶処理と精神制御処理がされているはずだ!」

財団X職員「危険だ……未改造でも奴は『創世王』の因子を持っている。奴と試験体を一刻も引き離さなければ……何が起きるか分からないぞ!」

財団X職員「D棟全閉鎖! 区画シャッターを全て閉めろ! 制圧部隊特級戦闘配置。『ミラー兵装』使用許可! 実験体の安否は気にするな! 諸共やれ!」

制圧部隊通信『了解!』

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1591701538

――セクション12

制圧部隊隊長「『ミラー兵装』使用許可が出た! 戦闘員は通常火器に加え『召喚機』装備!」

制圧部隊戦闘員「了解! 召喚機装備!」ガチャ!

制圧部隊隊長「現在、職員2名は実験体2体を連れセクション12からセクション13へ移動していると見られる」

制圧部隊隊長「13にはコズミックエナジー実験室『アストロゲート』の試験機がある。そこから外部へ移動するのだろう」

制圧部隊隊長「我々制圧部隊は12から13へ繋ぐこの通路を封鎖し、奴らを攻撃する! いいな! 誰も通すな!」

「「「「サーイエッサー!」」」」

――セクション12

タッタッタッ…

試験体11号「ねえ、ツキカゲー…わたしたちどこへ行くのー?」

月影ノブヒコ「……もういたいちゅうしゃやにがいおくすりを飲まなくても良い所ですよ」

試験体11号「ほんと?」

月影ノブヒコ「ええ……」

試験体11号「うれしいな……ね、お兄ちゃん!」

試験体10号「うん!」

月影ノブヒコ「ここは2人のいるべき場所ではありません。もっと……もっと良い『世界』へ……君たちだけの世界へ行きましょう」

試験体11号「わーい! わたしたちだけのせかい! わたしたちだけのせかい! たのしみだなあ」

月影ノブヒコ「ふふ……きっと気に入るはずです」

試験体10号「……」

月読蘇芳「急ぐぞ。追手が来る」

月影ノブヒコ「ええ……」

――セクション12、13通路

制圧部隊戦闘員「来たぞ!」

制圧部隊隊長「総員構え!」

月影ノブヒコ「行き止まりですか……」

試験体11号「こわいよお……」

試験体10号「だいじょうぶだよ、サヨ。ぼくが守ってあげる」

月読蘇芳「……」

制圧部隊隊長「総員召喚機用意! 召喚許可!」

制圧部隊戦闘員「了解! 『カード』装填!」ガシャ

『ADVENT』

カッ!!

ゲルニュート「キィ!」「ギギ!」「キィィァ!」

月影ノブヒコ「M棟の試作装備ですか。まさか実戦配備されているとは……」

制圧部隊隊長「攻撃開始! 撃て撃て撃て!」

ガガガガガッ!!

ガガガガガッ!!

制圧部隊隊長「撃て撃て撃てッ!」

月影ノブヒコ「くっ……これなら……!」サッ!!

バチバチバチッ!!

制圧部隊戦闘員「銃弾が効いていない!? 隊長! 4人を包むあの赤い三角の光は!?」

制圧部隊隊長「『DPRB(Disposal Pyramid Red Barrier)』……旧式の偏向シールドだ。使い切り式のな」

制圧部隊隊長「怯むな! あのシールドは数分と保たない。それに物理攻撃の効かなければ、奴らに任せればいいだけだ。戦闘員、ミラーモンスターに指示しろ!」

制圧部隊戦闘員「了解! ゲルニュート! 奴らに接近攻撃をしかけろ!」

ゲルニュート「キキッ」「ギギャ」「ゲゲッ」バッ

月影ノブヒコ「バリアを通過して来ただと……!」

ゲルニュート「ギギーーーッ!!」

月影ノブヒコ「クソ……ッ!」

(ゲルニュートの胸を月読蘇芳の放った赤い光弾が貫く)

ゲルニュート「ギギ…」ドシャ

月影ノブヒコ「蘇芳、すまない。助かりました」

月読蘇芳「ノブヒコ、油断するな。ここは全宇宙の技術が集結する場所。不利なのはこちらだ。対処は正確に行なえ」

月影ノブヒコ「ええ……!」

制圧部隊戦闘員「俺のゲルニュートが!」

制圧部隊隊長「怯むな! 攻撃を続けろ!」

ガガガガガッ!!

ガガガガガッ

試験体11号「こわい……こわいよお兄ちゃん」

試験体10号「だいじょうぶ……だいじょうぶだよ……かならずツキカゲたちがぼくらを守ってくれる……」ギュッ

ガガガガガッ

月読蘇芳「ノブヒコ、バリアはあとどれくらい持つ?」

月影ノブヒコ「3分も保ちません。想定以上の攻撃に装置が耐えられない!」

月読蘇芳「そうか……(このまま戦っていては捌き切れんな)」


制圧部隊戦闘員「負傷者多数! バリアの向こうから一方的な銃撃を受けています! あの紅い光弾は低出力『フォトンブラッド』かと思われます」

制圧部隊隊長「バリアの効果が切れるまで耐えろ!」

制圧部隊隊長「後衛、ホースの用意は!」

制圧部隊後衛「完了しております!」

制圧部隊隊長「良し! バリア切れ次第放水しろ!」

バチバチ…

月影ノブヒコ「バリア発生機が止まった……!」

制圧部隊隊長「放水開始!」

シャアーーーッ

月影ノブヒコ「放水……? 床に水を撒いて何を……」

ガシ…ッ

月影ノブヒコ「何……っ!?(足を掴まれた……!?)」

月影ノブヒコ「はっ……!」

(鏡面となった水面から4人を狙うミラーモンスター達)

試験体11号「きゃあ―――っ!!」

試験体10号「サヨ!」

制圧部隊隊長「このまま引きずりこめ!」

月読蘇芳「く……化け物め……!」

(ミラーモンスター達が4人を引きずりこもうとする)

(蘇芳は地面から這い出るミラーモンスターを迎撃するが数が多く捌ききれない)

月影ノブヒコ「……(万事休すか……しかし『彼』ならこの状況……『変えられる』!)」

試験体11号「いやぁ……っ! いや! お兄ちゃん! お兄ちゃん!」

(鏡面の世界へ引きずり込まれかける試験体11号)

試験体10号「サヨ! サヨ――っ!!」

試験体10号「やめろ……! やめろ――――ッ!!」

――D棟司令室

財団X職員(試験体10号の様子がおかしい……! あれは――)

オペレーター「司令! D棟上空に異常な反応が!」

財団X職員「何……ッ!? 外部カメラ映せ! 衛星からの状況も!」

パッ

財団X職員「なんだこれは……! 『オーロラ』か……? それも幾重にも重なった……どうなっている!」

オペレーター「不明です! 衛星からの映像は磁場の乱れにより映せません!」

ザザッ

財団X職員(棟内の監視カメラからの映像も乱れている。まさか――)

財団X職員「実験体10号が覚醒したというのか! おい、制圧部隊! 状況を報告しろ!」

ザザッ…ザザッ…

財団X職員「おい! 何をやってるんだ! 早く答えろ!」

ザザッ…ザザッ…

『なんだこれは……ザザッ……来るな……ゲルニュート言うことを聞け……ザザッ……やめろ……うわ……うわあぁ――――』

ザザッ……

財団X職員「……クソッ!」

オペレーター「監視カメラの映像復旧しました! モニターに出します!」

パッ

財団X職員「!」

オペレーター「制圧部隊25名応答なし。試験体10号、11号、月影ノブヒコ、月読蘇芳……反応なし。消失……」

財団X職員「消えた……!? そんなバカな! 神隠しにでもあったというのか!」

オペレーター「上空のオーロラ消失……」

prrrr…

オペレーター「天文部より通信! モニター映します」

パッ

財団X職員「これは……!」

(9つの地球が浮かぶビジョンが映される)

『こちら天文部のカンナギ。現在、『並行世界天体観測装置エニグマ』に映し出された映像をお送りしている』

『元より観測し続けていた宇宙が何者かの強大な力によって、かつてないほど接近していることが見てわかるだろう』

『我が財団Xが独占してきた並行世界の観測・介入技術と同等の力によるものと見て間違いない』

『ところでD棟責任者のキミ、この事態と棟上空で発生したオーロラとの因果関係について説明できるかね』

財団X職員「……っ!」

『D棟の研究内容は空間干渉技術だったね。特に装置を必要としない個人としての空間干渉技術――』

『先程、棟内職員が試験体を伴って逃走したと聞いたが、その後どうなったのかね?』

財団X職員(情報が早い……! 隠蔽も間に合わないか……)

『研究成果の外部流出を未然に防げなかったことは問題だ。この件は上に報告する』

『残念、無念だよ。キミのような若く有能な職員がこんなミスを犯してしまうとは』

『追って報告を待つように』

財団X職員「……チッ」

――査問会

上級幹部「月影ノブヒコ、月読蘇芳両名の脱走に加え、試験体10号、11号の流出……」

上級幹部「財団に不利益を発生させたことは許されることではない」

上級幹部「よってD棟責任者解任。研究室は解散。その他プロジェクトは凍結とする」

財団X職員(俺もここまでか……)

上級幹部「しかし、君のような若く有能な人材を失うのは財団としても惜しい」

上級幹部「君には新たな仕事を与えよう。財団が新しく立ち上げた部署の調査員として働いてもらいたい」

財団X職員「調査員……?」

-To be continued…

☆ここまでの主な登場人物

財団X職員:主人公。財団Xの若き職員。順調な出世コースを歩み、D棟の責任者を務めていたが、研究員の脱走と技術の流出を起こしてしまい失脚。

月影ノブヒコ:D棟の研究員。別世界線出身。同僚と共に試験体10号、11号を連れて財団から逃走する。
初出:劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー

月読蘇芳(つくよみ すおう):D棟の研究員。月影の同僚。月影と共に財団から逃走する。

試験体10号:D棟で個人間での空間移動の改造実験を受けていた少年。突如覚醒しオーロラを発現させた。

試験体11号:D棟で改造実験を受けていた幼女。10号を『お兄ちゃん』と呼ぶ。10号からは『サヨ』と呼ばれている。

レム・カンナギ:天文部部長。財団X職員の失態を追及する。
初出:仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX

☆Keyword

財団X:闇の巨大組織。大規模支援事業の他、独自の研究開発計画も行う。
初出:仮面ライダーW

並行世界:財団Xが独占する観測域。同時に存在する同一の次元。大きな差異はあれど、似たような歴史を辿る。財団はそれらに干渉する技術を持つ。
初出:仮面ライダーディケイド

基本世界:財団X職員がいる世界。後述の9つの世界を加えて現在存在するとされる次元は10個となる。

9つの世界:現在、財団Xのみが観測・干渉両方可能な次元。試験体10号の脱走と共に急速に接近を始める。
初出:仮面ライダーディケイド

並行世界天体観測装置エニグマ:財団X天文部が保持する並行世界観測装置。
原典:仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー

天文部:財団Xの中でも強い発言権を持つ機関。並行世界を観測し、財団の方針を調整する。

研究D棟:財団X職員が責任者を務めていた研究棟。空間干渉技術、移動技術の研究を行っていた。研究員逃亡、試験体逃走を止めることができず責任を取り解散。

A.R.W(Another Rider WORLD):10の世界から派生した次元。観測・干渉共に不安定で発生、崩壊を繰り返している。
初出:仮面ライダーディケイド

特異点:ごく一部の人間が持つ時間・次元の干渉を受けない特性。並行世界においても同一の存在が確認される人間のこと。
初出:仮面ライダー電王

ミラー兵装:財団Xが保持する兵装。財団が支援を行うアメリカ・アクレイ大学より提供された試作品。鏡を介した空間『ミラーワールド』に干渉し、そこに住む生物を使役する。簡単な兵装と鏡面がある状況であれば運用可能な為、コストが低く使いやすい。
原典:仮面ライダー龍騎

アストロゲート:財団Xの研究物。基本世界日本のとあるポイント『ザ・ホール』から発生するエネルギー『コズミックエナジー』を加工した瞬間移動装置の試作品。当初月影ノブヒコらはこれを使って財団D棟から逃亡を図っていた。
原典:仮面ライダーフォーゼ

DPRB(Disposal Pyramid Red Barrier):財団Xの商品。赤い三角のバリアを張る小型装置。使い切り。物理攻撃はほぼ無効化する。捕縛にも使える。現在はあまり使われていない。
原典:仮面ライダーストロンガー

記憶処理・精神制御処理:財団の技術。有能な人材を安定して確保する為に、野心や攻撃的な精神を制御する。財団X職員達の殆どは少なからずこの処理をされているが、自分はされていないという強い自己暗示をかけられている。

SCPかと思ったらライダーの財団だった
しかし用語が多い上でよくわからない

-File1.Rider Killer-

――査問会

上級幹部「『情報部』だ」

財団X職員「『情報部』……ですか」

上級幹部「主な業務は、契約違反の疑いがある出資企業の内偵調査。凍結されたプロジェクトの速やかな事後処理」

上級幹部「今までは外部にやらせていたがね……色々あって――」

財団X職員「内偵……事後処理……(ヨゴレか)」

上級幹部「不満か?」

財団X職員「いえ、誠意を持って務めます。今回の寛大な処置を新たなチャンスと思い、一層励みます」

上級幹部「それでいい。詳しいことは君の直属上司に聞いてくれ」

財団X職員「はい」

上級幹部「君には期待している。新たな部署でも頑張りたまえ」

財団X職員「はい(……チッ、どうだか)」

――情報部フロア

(段ボール箱を持った財団X職員が入ってくる)

財団X職員「ここか……ゲホ(なんだか埃っぽい部屋だな……倉庫を軽く改装しただけか?)」

ドサドサドサッ

財団X職員「うわっ! なんだ……この書類の山」

ニョキッ!

財団X職員「わーーーっ!?」

(書類から男の頭が出てくる)

情報部長「やあやあ、よく来てくれたねえ! 君が噂のD棟から来た子だね。書類の中から失礼。歓迎するよ」

情報部長「やれやれ、這い出すのも一苦労っと……」

財団X職員「手伝いますよ(今のところオフィス内に他の職員はいないが……)」

情報部長「いやいや、すまないね。どうだいコーヒーでも飲んどく?」

財団X職員「ええ、荷物が片付いたら……それと、俺のデスクはどこに――」

情報部長「ああ、あっちあっち。ゴタゴタしててすまないね。いやさ、僕も辞令出されたの昨日だったから」

財団X職員「そう……ですか」

財団X職員「情報部は他に何人所属しているんですか? 今のところからフロアには2人しかいないようですが」

情報部長「僕と君を含めて5人。1人は既に仕事をしに外へ出ていて、もう1人は前任部所の引き継ぎが終わり次第合流」

情報部長「もう1人は今、お手洗いに――そろそろ戻ってくると思うけど……あっ来た来た!」

ジャー…

?「ふー……お、お前が噂のD棟から来た奴かよ!」

財団X職員「おわっ! な、なんだあの締まりのない着ぐるみは!」

情報部長「こらこら、彼はあんなでも僕達の同僚――」

デッドライオン「着ぐるみとは失礼なっ! オレは『デッドライオン』! 情報部の次長だぞ!(さっき部長に『あんなの』って言われてなかったか?)」

財団X職員「げ、上司」

デッドライオン「そうだ! ま、よろしく頼むぜ、後輩」バシバシ

財団X職員「そのデカイ鉤爪で叩くのやめてください」

情報部長「デッドライオン君は基本世界の他組織の歴史や動向に明るい。情報部には欠かせない存在だ。出資企業について調べる時、色々聞いてみるといいよ」

財団X職員「は、はい(だいじょうぶかこの部署……)」

情報部長「さーてコーヒーコーヒー」

――昼・財団X食堂

財団X職員「……(今日の昼定食はからあげか……うん、うまい)」モグ…

ヒソヒソ…

財団X職員(食堂内は俺の噂で持ち切りだ。研究成果を部下に持ち逃げされたのだから仕方のないことだが)

財団X職員(それでも『処分』されないことを不審に思ったり妬んだりしている奴も多いと聞く)

財団X職員(人の噂をする暇がある幸せな奴らだ)

財団X職員(好きに言わせておけばいい)

財団X職員(それにしてもこのからあげはうまい。衣が良い)

?「おっ、俺よりファンキーなやつ見ーっけ!」

財団X職員「ん……? ああ、最上か。久しぶりだな」

最上魁星「よぉ〜、ご栄転おめでとうございマース」

財団X職員「よせ」

最上魁星「お隣い〜い?」

財団X職員「……好きにしろ」

最上魁星「カンナギのオヤジがおかんむりだったぜ。天文部と共同開発中の『コズミックゲート』はD棟解体でお流れになっちまったからな」ズゾゾッ

財団X職員「なら上層部に脱走事件をチクらなければ良かったんだ」

最上魁星「そういうのは出来ないタチなんだよ。うちの上司は」ズゾゾッ

財団X職員「組織に忠実なことは良いことだ」

最上魁星「でも、お前が『解雇』されなくて良かったよ。遊ぶトモダチがいなくなっちまうからな」ズゾゾッ

財団X職員「いつ俺とお前が友達になった」

最上魁星「同期入社組だろォ〜いいじゃ〜ないかよ〜」ズゾゾッ

財団X職員「それとカレーうどんはやめとけよ。白い制服にかかるだろ」

最上魁星「いいだろ〜うまいんだから〜」ズゾゾッ

最上魁星「しっかし同期入社組の出世頭だったお前がこんなふうになるとはなぁ〜」

財団X職員「大きなお世話だ。事故のようなもんだ」

最上魁星「部下の感情の機微を観るのも上司の仕事だと思うけどぉ〜?」

財団X職員「……喧嘩を売りに来ただけか?」イラ

最上魁星「い、いや(コエー……)」

最上魁星「お前も気になってるだろうからサ。D棟の脱走事件の続報について教えに来たんだヨ」

最上魁星「D棟から脱走した研究員と試験体達はこの世界にはいない」ヒソ…

財団X職員「『9つの世界』のどこかに転移したということか?」

最上魁星「違うね。それに『俺達の世界(基本世界)』や『9つの世界』から『派生する世界』にもいない」

最上魁星「財団Xにも観測できていない領域に奴らは飛んだんだ。今、天文部じゃ新たな宇宙を観測するのに躍起になってる。上からもせっつかれてるみたいだぜ。カンナギのオヤジもいつにもましてピリピリしてやがる」

財団X職員「脱走した試験体と研究員にそこまでするか? あの試験体達の移動能力はせいぜい数km程度のはずだ。それに座標指定の問題でたまにパラレルワールドに転移することもある」

最上魁星「俺もそう思うんだがなあ……なあ、カズヤよォ」

最上魁星「お前の作った試験体達は……本当にただの改造人間だったのか?」

財団X職員「……」

財団X職員「……研究職から離れた俺には最早関係のないことだ」

最上魁星「言うねえ……だけど本当にそう言いきれるかなァ」

財団X職員「どういう意味だ」

最上魁星「財団を支えるものってなんだと思う?」

財団X職員「金……だろ」

最上魁星「ノン! 『知識欲』だ」

最上魁星「複数の企業の技術開発バックアップ、パラレルワールドへの干渉、これら全ては知識欲で動いてる」

最上魁星「少なくとも俺はそう。自分の実験で何がどう動くか気になる、見届けたい。それだけのことサ」

最上魁星「ここに『支配欲』なんてのが混ざっちゃうと基本世界で一時暗躍していた『悪の組織』と同じになっちまうけどな〜」

最上魁星「ねえカズヤくんよォ。お前、D棟の空に上がった『オーロラ』を見たときどう思った?」

財団X職員「……」

最上魁星「お前も俺も同じ穴のムジナっ! 自分には逆らえないのサ〜」

最上魁星「ツレないこと言わないで自分に素直になるんだな」

最上魁星「さーてお仕事お仕事」タタッ…

財団X職員(コイツ、言うだけ言って帰りやがった)

――情報部フロア

財団X職員「部長、荷物整理終わりましたが」

情報部部長「よしよし、じゃあ業務の方に移ってもらおうかな。この案件は凍結プロジェクト成果接収についてかな。とりあえず書類に目を通しておいて」ドサ

財団X職員「分かりました(多いな)」



財団X職員「……」ペラ…

財団X職員(生化学研究所『ISS(Institute Super Science)』……財団X傘下組織か)

財団X職員(プロジェクト名『改造兵士(サイボーグ・ソルジャー)』。所謂改造人間だな)

財団X職員(凍結した時期は1992年とある。今から6年前か)

財団X職員(従来の改造人間より低いコスト。高いパフォーマンスを売りにしていたようだ。紛争地帯に売り付けるつもりだったのか。まあ妥当な売り方だ)

財団X職員(改造人間1人紛争地帯に投げ込めば戦争の有り方は大きく変わるだろう。まあ大体の場合は実戦投入前にコストとメンテナンス面の問題で却下されるが――)

財団X職員(……)ペラ

財団X職員(改造方法は大きく3つ)

財団X職員(『レベル1』遺伝子改造による免疫の強化。難病への耐性。ここまでは高度な遺伝子医療の範疇とも言えるが)

財団X職員(『レベル2』『レベル1』で強化された人体を素体にサポートユニットを接続したもの。戦闘力は高いが、人体に機械が占める割合が多く、生物の持つ自己進化機能は失われる)

財団X職員(『レベル3』これが研究の本命か。昆虫などの別種の遺伝子を人体に組み込み、根源的な強化を促す)

財団X職員(『レベル2』は安定した実戦投入が可能。開発段階である『レベル3』も量産計画が進んでいた)

財団X職員(……じゃあ何故この計画は凍結に終わったんだ)

財団X職員(……)ペラ…

財団X職員(改造兵士レベル3『風祭真』『鬼塚義一』の暴走)

財団X職員(CIAの強襲)

財団X職員(所長『氷村巌』を含む所員大半の死亡。研究物の焼失。それらによる組織の解体)

財団X職員(研究物の暴走に国家権力の介入か……これもまたよくあることだな)

財団X職員(プロジェクト凍結から6年もの間、財団が触れられなかったのもCIAの影響だな)

情報部部長「読んだ?」

財団X職員「はい。この案件、プロジェクト成果物の殆どが焼失とありますが、情報部としては何をすれば良いんですか」

情報部部長「問題はそこなんだよ。プロジェクト凍結直前の搬入の記録を見てもらえるかい?」

財団X職員「はい……ふむ」

財団X職員「ISSの改造兵士適合手術に必要な部品や製剤とは違うものが多く運び込まれていますね」

情報部部長「そうなんだよ。特にこの部分さ。人体改造の研究をしていた君なら分かると思って」チョイチョイ

財団X職員「ここですか……ええと」

財団X職員「『NEO』『D-cell』『F-cell』……」

財団X職員「思い当たるところだと……『NEO』の箇所。確か93年に亡くなった臨床遺伝子工学の『望月敏郎』博士が最期に作ろうとしていた生命体が『ネオ』といったはずですが――」

情報部部長「おおっ、すごいね! それが関係あるんだね?」

財団X職員「確証はありません。何せ彼とは財団Xも関わっていないですし、晩年の研究は倫理観に外れたもので学会からは非難轟々」

財団X職員「表舞台からは姿を消していたので何も情報は残っていません」

情報部部長「それは判断材料としては厳しいねえ」

情報部部長「問題はここなんだ。最後のページを見て」

財団X職員「……」ペラ

財団X職員「この文字列は?」

情報部部長「これは財団がCIAから取ってきたISSのコンピュータプログラムの一部だよ」

財団X職員「ふむ(『取って』きた……『盗って』きた……か)」

財団X職員「……Project『Rider Killer』?」

情報部部長「ああ。この『ライダーキラー』こそが今回の収容対象なんだ」

財団X職員「ということは焼失を免れたISSの研究成果があるというわけですね」

財団X職員「で、この『ライダーキラー』というのは一体何なんです」

デッドライオン「生物だ」

財団X職員(ゲッ、変な着ぐるみ上司)

デッドライオン「『ライダーキラー』とはその名の通り、対『仮面ライダー』改造実験体の1つ」

財団X職員「『仮面ライダー』……?」

デッドライオン「そして、こいつは『ショッカー』の遺産だ」

デッドライオン「お前『仮面ライダー』を知らないのか?」

財団X職員「知らないワケじゃない。人間の自由を守る正義の戦士だろ。『悪の組織』を滅ぼした……だが、あれは都市伝説――」

デッドライオン「『仮面ライダー』はいるぞ」

財団X職員「何を根拠に」

情報部部長「デッドライオン君はね、『ブラックサタン』の元最高幹部なんだよ。『仮面ライダー』とも戦ったこともある」

財団X職員「ええっ!?」

デッドライオン「俺が会ったのは『ストロンガー』だけだけどな」ガハハ

情報部部長「財団も『仮面ライダー』の存在を認めてるしねえ」

財団X職員「……俺は自分の目で見たものしか信じない」

デッドライオン「まあこんな職場だ。その内嫌でも見るようになるぜ」

デッドライオン「まあこれを見ろ」ペラ

財団X職員「これは改造人間の計画書……? 少し古いな」

デッドライオン「この資料は財団Xが『ショッカー』ヨーロッパ基地跡から手に入れた改造人間『ライダーキラー』開発計画のコピーだ」

財団X職員「『ショッカー』……ナチス・ドイツの残党組織か」

財団X職員「計画書が書かれた日付は……『1971年7月』か。署名もあるな……これはロシア語か?」

デッドライオン「『イワン・タワノビッチ』と書いてある」

財団X職員「イワン・タワノビッチ……改造人間研究の礎を築いた『死神博士』か!」

デッドライオン「ああ。ライダーキラーは死神博士が『仮面ライダー1号(本郷猛)』に撃破される直前に計画されたものだった」

デッドライオン「計画は発案者死亡のまま頓挫。この計画は『ショッカー』の後釜『ゲルショッカー』でも採用されず終わった。高度な改造手術技術を持つヤツが死神博士しかいなかったんだろうな」

デッドライオン「だが、数十年の時を経て計画は再始動した。高度な遺伝子改造技術を持つISSの手によってな」

情報部部長「ISSは計画書の原本をスポンサーである財団経由で入手し、改造兵士計画と並行して開発を進めた」

財団X職員「それでヤツはどこに居るんです?」

情報部部長「神奈川県横浜市にあるISS研究所跡地。CIAの捜査の手が及ばなかった地下研究所に強い生命反応が出ているよ」

財団X職員「強い生命反応……か。マズいな。もう覚醒めている可能性がある」

財団X職員「それに死神博士の書いた計画書のどこにも『NEO』や『D-cell』なんて名前は出てこない。何かの材料の代替品であればいいが――」

財団X職員「ISSはオリジナルの計画書を元に何かアレンジを加えたのかもしれない。早く財団が収容しなければ、外部組織に奪取されてしまう」

情報部部長「うんうん。情報部設立して早2日。初めての大きいヤマだ。がんばっていこう」ニコ

デッドライオン「収容任務は早速今夜2100に開始する! 後輩、心してかかれよっ!」

財団X職員「……ああ」

――To be continued…

☆ここまでの主な登場人物

財団X職員:D棟責任者を解任後、新設部署『情報部』に配属される。

情報部部長:『情報部』の部長。コーヒー党。

デッドライオン:『情報』次長。元『ブラックサタン』最高幹部。『仮面ライダー(ストロンガー)』と直接遭遇し交戦した経験のある数少ない人物。過去の『基本世界』で暗躍した組織に詳しい。締まりのない造形に財団X職員からはナメられている。
初出:仮面ライダーストロンガー、仮面ライダーSPIRITS

最上魁星:財団X職員と同期の研究者。天文部所属。『並行世界天体観測装置エニグマ』を作り上げた。カレーが好き。大槻ケンヂに似ている。
初出:仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL

☆Keyword

情報部:財団Xの新設部署。上層部の指示で出資企業の監査や凍結された計画の成果を強制回収を行う。

ISS(Institute Super Science):財団X傘下の生化学研究所。難病の遺伝子医療を主に研究していたが、技術を転用し改造兵士開発に乗り出す。被験体の暴走、CIAの強襲を受け1992年壊滅。
原典:真・仮面ライダー 序章

改造兵士(サイボーグ・ソルジャー):ISS開発の軍事力を各国に売り付けることを目的に生み出された改造人間。主な被験体は『風祭真』『豪島(仮名)』『鬼塚義一』。風祭真以外の被験体は全員死亡。風祭真も現在行方不明。
初出:真・仮面ライダー 序章

CIA:アメリカ合衆国の諜報組織。ISSを壊滅させた。財団Xを危険視する。
初出:真・仮面ライダー 序章

ライダーキラー:ISSが改造兵士と並行して開発を進めていた対仮面ライダー改造生物。計画自体は1971年にショッカー所属の死神博士が立てたものの流用。死神博士の計画とは違う点が見られるようだが……?
原典:ガイアセイバー ヒーロー最大の作戦

仮面ライダー:人間の自由の為に戦う戦士の総称。ほぼ単騎で過去暗躍してきた組織を滅ぼしたとされる。財団Xもその存在を認識している。1998年現在、財団Xが『仮面ライダー』と認識しているのは11体。1号(本郷猛)から11号、12号(南光太郎)まで。
初出:仮面ライダー

ショッカー:ナチス・ドイツの残党テロ組織。改造人間による世界征服を目論んだ。公には1971年頃、FBIにより滅ぼされたと発表される。
初出:仮面ライダー

イワン・タワノビッチ(死神博士):ショッカーの大幹部。改造人間研究の第一人者。ライダーキラー計画は彼が発案した。
原典:仮面ライダー


基本世界:財団X職員がいる世界。過去に仮面ライダーの活躍があった。

-File2.Rider Killer part2-

――横浜市 旧ISS研究所跡地前 20:45

(夜の倉庫街。財団Xの偽装トレーラーが待機している。研究所跡地前には財団X職員、デッドライオンが並び立つ)

財団X職員「アンタ人間の姿にもなれるんだな」

デッドライオン(人間態)「あたぼうよ。しっくりこないから普段はやらないけどな。一応ここは民間エリアだ。万が一、姿を見られたらマズい」

財団X職員(自分の姿の奇っ怪さは理解していたのか)

デッドライオン(人間態)「……って、お前! そんな軽装備で大丈夫なのか!? 銃一本でやれる相手じゃねえぞ!」

財団X職員「いや、俺はこの『対改造人間用拳銃』だけで充分だ」

デッドライオン(人間態)「そうかい。死んでも文句言うなよな。ヤマさん(情報部部長)、こちら回収班デッドライオン。準備完了した。周囲に人影なし。予定通り2100より回収を始める。そちらはどうだ?」

情報部部長(通信)『はいはーい。こちら回収班ヤマさん。『人払い』実行済み。周囲人影なし。トレーラーでお待ちしてまーす』

デッドライオン(人間態)「了解。通信終わり」


デッドライオン(人間態)「作戦の確認だ。研究所跡に潜入後、隠された地下研究所へ繋がるポイントへ移動。財団の人間ならアクセスが可能なことは調べてあるから、ここまでは簡単だ」

デッドライオン(人間態)「地下研究所突入後、ライダーキラーを捕獲。これが鬼門だな……」

デッドライオン(人間態)「尚、捕獲時にはこれを使う。『瞬間圧縮冷凍捕獲装置・ムシカゴ』だ。お前も持ってるよな」

財団X職員「ああ」

デッドライオン(人間態)「使い方は説明するまでもないが……まあ『モンスターボール』みたいなもんよ。シュッと投げてバーンと捕まえる――」

財団X職員「『モンスターボール』?」

デッドライオン(人間態)「『モンスターボール』知らないのか? 『ポケモン』の……」

財団X職員「ポケモン?」

デッドライオン(人間態)「だああっ! もういいっ! そろそろ行くぞ! これだから最近の若いやつは……」ブツクサ

財団X職員「何を怒ってるんだ?」

――21:10 ISS研究所跡地 地下研究所

デッドライオン「こちら回収班突入成功。これよりライダーキラーの捜索及び回収を始める」

財団X職員(暗いな……暗視グラスを起動させるか)カチ

財団X職員(ライダーキラーは生命維持装置やその類に入っていると思うが……)

デッドライオン「あったぞ! 恐らくあのポッドの中だ!」

財団X職員「!」

(仄明るいポッドの中にはピンク色の液体の中に浮かぶカミキリ虫のような怪人の姿があった)

デッドライオン「強い生命反応と聞いていたが、どうやらおねむのようだな。今のうちに捕獲しちまおうぜ」

財団X職員「そうだな――」

ビー! ビー! ビー! ビー!

財団X職員「!?」

(突如鳴り響くサイレン音と共にポッドが開かれる)

ライダーキラー「」ドシャ

デッドライオン「おい……おいおいおい。どういうことだァ、こりゃあ! こちら回収班! 予想はしていたが非常事態発生! ライダーキラーの入ったポッドが急に開いた!」

情報部部長(通信)『ザ…ザザ』

デッドライオン「なんだ!? 無線が通じねえ!」

財団X職員「ドアがロックされている! 地上に戻れない!」

デッドライオン「仕方ねえ……ヤるぞ!」

財団X職員「言われなくとも!」

(ライダーキラーの目が紅く光る)

ライダーキラー「カァァァァァ……!」

財団X職員「喰らえ……っ」ダンッ!! ダンッ!! ダンッ!!

(財団X職員がライダーキラーに向けて銃を撃つ。が、効果無し。装甲に弾かれてしまった)

ライダーキラー「カァァァァァッ!」

(ライダーキラーが財団X職員に飛びかかる)

財団X職員「ッ!」

デッドライオン「だから聞いただろ! その装備で大丈夫かって!」

デッドライオン「だありゃあ―――ッ!!」

(デッドライオンが突進。財団X職員にのしかかるライダーキラーを引き剥がす)

デッドライオン「こいつは使いたくなかったが……奥の手ッ! 『デッドハンド電パンチ』……!」

(電流を纏ったデッドライオンの巨大な右拳がライダーキラーの腹部に刺さる!)

ライダーキラー「ッッッッ!?」バチバチバチッ…バチッ

(ライダーキラーは二三度痙攣した後、膝を付き、沈黙……)

デッドライオン「ふう……」

デッドライオン「ったく……驚かせやがって」キュポ

(ライダーキラーを圧縮冷凍機に入れ捕獲する)

デッドライオン「捕獲完了。オラ、戻るぞ」

財団X職員「ああ……」ムクリ

デッドライオン「おい、お前! ちょーっとばかし危機意識に欠けてるんじゃあねえのかァ? それに先輩に対する経緯も!」

財団X職員「――ロックを解かなきゃな……」ガチャガチャ

デッドライオン「おい! 聞いてんのか! ムキーッ!」

財団X職員「……開いた」ガチャ

デッドライオン「オォイ!」

財団X職員「……」

財団X職員「おい。アンタ……その『ムシカゴ』……どうした?」

デッドライオン「ん……?」

(デッドライオンが持つ圧縮冷凍捕獲器から液体金属が漏れ出していた)

(漏れ出した液体金属はデッドライオンの足下に大きな水溜りを作る)

(大きな水溜りは湧き上がり、溢れ出すように人型を形作る。液体金属は徐々に安定していきライダーキラーの姿を作った)

(そして――)

ライダーキラー「クァァ――――――ッッッ!!!」シュッ

デッドライオン「――っ」

(ライダーキラーは肥大化した紅い腕でデッドライオンの脇腹を抉りとった)

デッドライオン「カ……ハッ……」ドサ

財団X職員「っ!」ダンッ!! ダンッ!!

(財団X職員は反射的にライダーキラーに銃を撃つが無論効かない)

(ライダーキラーはデッドライオンに取り付き、捕食するような動きを見せる)

デッドライオン「お前じゃ無理だ……地上に……戻れ……救援要請を出せ……」

財団X職員「……」ダンッ ダンッ

デッドライオン「その銃じゃ……無理だと……言って……」

ライダーキラー「……」ギロ

(デッドライオンに気を取られていたライダーキラーも執拗な銃撃に財団X職員の方を向いた)

財団X職員「やっとこっちを見てくれたな」ニヤリ

デッドライオン「お前死ぬ気……か」

財団X職員「来い!」

ライダーキラー「シャァアァ――――ッ!!」

(ライダーキラーが財団X職員の挑発に乗り飛びかかった!)

(財団X職員の姿が揺らぎ、そして空気を切り裂く音と共にライダーキラーの前に再出現する)

(財団X職員は勢いそのままにライダーキラーの胸に飛び蹴りを食らわせる)

ライダーキラー「――――ッ!?」

(ライダーキラーは吹き飛び、鉄の壁に叩き付けられた。胸の装甲は大きくひしゃげ火花を散らした)

ライダーキラー「ギィ……ッ!」

デッドライオン「お前……その技……」

財団X職員「アンタだけが改造人間だと思うな」

ライダーキラー「ギシャアアアアア……」ムク…

財団X職員「さあ第2ラウンドだ」

ライダーキラー「ギ……ギ……ィッ!」ヒュッ

(ライダーキラーは高く飛び上がり、空中で一回転)

ライダーキラー「ァ……ィァア――――ィイイイッ!!」

(全身を赤黒く光らせながら財団X職員に向けて、降下の勢いを乗せた蹴りを放つ)

デッドライオン「マズい……っ……あれは……『ライダーキック』だ……!」

財団X職員「『ライダーキック』……? ならこっちは『パンチ』……で――」

(財団X職員も『瞬間移動』を2回挟み助走の勢いを加えたパンチで応戦)

財団X職員「ハアアアアァ―――――ッ!」

ライダーキラー「ギィイイイイイイイイイ!!」

(閃光が地下研究所を包み、金属と金属がぶつかり合う音と共に強い衝撃波が起こった)



デッドライオン「おい……生きてるか……」

財団X職員「ああ……右手は……壊れたが……な」

財団X職員「だいぶやられた……だが……ヤツもタダでは済まなかったようだな」

ライダーキラー「――ギィァァアアアアッ!!」

財団X職員(片足が消し飛んだようだな。だが、傷口の動きからして5分もあれば治る……)

財団X職員(カタをつけるなら――)

ライダーキラー「ギ……ギ……ギイイイイッ!!」シュッ

財団X職員「くっ……」シュルルッ…ギヂッ

デッドライオン「!」

(ライダーキラーは怒りのままに背中から触手を出し、財団X職員を絡め取る)

財団X職員「ぐ……だいぶ頭にきているようだな」ニヤ

ライダーキラー「ギ……!」

財団X職員「俺を見ろ……っ!」

デッドライオン「挑発し過ぎだ! 締め殺されるぞ!」

財団X職員「そうだ……! そのまま……こっちを見ろ! ぐ……ガハッ」ギヂ…メキ…メキョ

デッドライオン「おい!」

ライダーキラー「ギ……」

財団X職員「こっちを……そう……いい子だ……よし――」メギ

(財団X職員は暗視グラスを外し、自身の『眼』を見せた)

財団X職員「俺を……見ろ!」

ライダーキラー「ギ――ァ――」パ…キ…

(ライダーキラーの身体が徐々に硬直。表皮が徐々に白い石に覆われていく)

(触手は脆くなり崩壊。財団X職員が投げ出された)

財団X職員「ぐ……っ」ドサ

デッドライオン「おい! 大丈夫か!」

財団X職員「平気だ……上手く行ったようだな」

デッドライオン「あれは何をした……?」

財団X職員「化石化だ。これを使うのは久しぶりだったが……それより、もう一度『ムシカゴ』を――」

デッドライオン「お、おう!」

デッドライオン「よし……回収完了だ。お前には助けられたな」

財団X職員「アンタは……怪我……平気なのか……?」ヨロ…

デッドライオン「このデッドライオン様はブラックサタンの元最高幹部! この程度でくたばってたまるか! ダメージの内にも入らんわい!」ガハハ

財団X職員「そう……か……」ガク…

デッドライオン「お、おい! 大丈夫かよ! 肩貸すぜ? 後はトレーラーに戻るだけだから頑張れよ!」

情報部部長(通信)『ザ…ザザッ…おーいおーい! あ、繋がった?』

デッドライオン「おうヤマさん悪いな。多少手間取ったが回収完了だ。今戻るぜ」

情報部部長(通信)『そうかそうか。それなら良かった。いやね、ライダーキラーに使われているであろう『D-cell』や『F-cell』が何なのか研究部の知り合いに調べてもらっていたんだけど』

情報部部長(通信)『D-cellについては瀧くん(財団X職員)の予想の通り遺伝子工学の『望月敏郎』博士の研究物。金属を吸収して肉体を生成する生命体の技術』

情報部部長(通信)『F-cellとは94年に埼玉県を中心に発生した異常気象の原因でもある外来生命体『フォッグ・マザー』の細胞だったんだよ! 宇宙人の技術まで作ろうとしていたとは驚きだよね〜』

情報部部長(通信)『特に自己増殖機能が凄まじいらしいんだけど――あれ? 聞いてる? おーい』


デッドライオン「おい……もうムリだぞ……! 3連戦なんて……!」

ライダーキラー2号「ギイイイイイイイイイ!」

財団X職員(……身体が言うことを聞かない……能力を使い過ぎたか)

デッドライオン「テメェ今まで一体どこに隠れていたんだよ……まさか分裂したのか!?」

ライダーキラー2号「ギ……ギ」

デッドライオン「クソォ……」

ズズン!

デッドライオン「!」

(地下研究所が大きく揺れ、天井の一部が崩壊する)

(そこから落ちてきたのは1人の男だった)

(男はライダーキラーを見ると接近。刀を振るいライダーキラーを両断した)

デッドライオン「ジョージ! 来ていたのかよ!」

?「良かった、間に合ったようだな!」

ライダーキラー「グギャアアア――――ッ……」

?「まだ生きているとは凄まじい生命力だ。私の『ファンガイアバスター』では倒しきれない!」

デッドライオン「じゃあどうすりゃ!」

?「部長曰く、奴は体内の熱を発散させる機能が未熟らしい。熱を与え続ければ内部器官が崩壊し、再生できなくなる!」

デッドライオン「またオレに『アレ』を使えってのか!」

?「先輩にしかできないことですよ!」

デッドライオン「……分かったよ……やりゃイイんだろ! 先輩を顎で使いやがって……!」

(デッドライオンが再生中のライダーキラーの頭部を巨大な右腕で掴む)

デッドライオン「くたばりやがれ! 『デッドハンドタッチ』だ……っ!」

(デッドライオンの右腕が熱で赤く変色し、ライダーキラーの身体を内側から焼いていく)

ライダーキラー「ガ……ガガ……」

デッドライオン「抵抗すンじゃあねェェ――――ッ!!」

ライダーキラー「ギ……ギ……」

(辺りに肉の焼けた臭いが立ち込めた)

(ライダーキラーはデッドライオンが手を離すとそのまま倒れ伏した)

デッドライオン「ハア……ハア……デッドハンドもオーバーヒートだ……後数秒頑張られてたらヤバかったな」

?「さすがですよ、先輩」

デッドライオン「フン! さーて回収回収」

――1週間後

財団X職員(かくしてライダーキラーとその増殖体は無事捕獲され、検査部門に回された)

財団X職員(増殖体は俺が気絶している内に助太刀に入った同部署員『結城ジョージ』とデッドライオンが倒したそうだ)

財団X職員(結城とかいう奴に礼の一つも言ってやりたいが、忙しいらしく情報部の部屋には一向に現れない。まあ会った時でいいか。顔すらも分からんが)

財団X職員(デッドライオンは抉られた腹部を治療する為、数日休暇を取った。『ダメージの内に入らんわい』は強がりだったらしい)

財団X職員(ライダーキラー回収後の業務は書類整理くらいのもので大きな仕事は未だに情報部には回って来ない。ラクなもんだ)

財団X職員(俺も情報部の空気に馴れてきた。D棟にいた時と違って暇なのはたまに不安になるが……な)

財団X職員(――しかし今回の件、疑問が残る)

財団X職員(あのライダーキラーという生物。改造兵士と違って財団が一切知らなかった計画だった。当時の担当職員もその存在を一切知らされていないことも確認できた)

財団X職員(ショッカーの過去の計画に望月博士の研究物や異星生物の細胞を混ぜて一体何を目論んでいた? 試作品にしては手が込み過ぎている)

財団X職員(それに、地下研究所でライダーキラーが突然起動したのも――)

財団X職員(まあ一ヒラ職員に過ぎない俺が気にしても仕方がないか)

財団X職員(さて、仕事仕事……)

情報部部長「おつかれさま〜。コーヒー飲む?」

財団X職員「ええ、いただきます」

-To be continued…

☆ここまでの主な登場人物

財団X職員:瞬間移動と石化能力を持つ改造人間。ライダーキラーに辛勝。その後、気絶。

デッドライオン:ライダーキラーに脇腹を抉られるもなんとか回収に成功する。

結城ジョージ:財団X職員とデッドライオンのピンチに現れた情報部4人目の男。他のメンバーとは別の任務に付いているらしい。Gacktに似てる。
初出:劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー

情報部部長:ライダーキラー回収に参加。今回はバックアップに回っていた。

☆Keyword

ライダーキラー:ショッカーで計画され、数十年の時を経てISSによって開発された対仮面ライダー改造体。ISSによってネオ生命体、フォッグマザーの遺伝子も掛け合わされた為、自己再生・増殖機能にも優れる。
        しかし知能が低くい上、熱発散機能が未発達の為、電熱に弱い。
初出:ガイアセイバー ヒーロー最大の作戦

財団X職員が使っていた能力:瞬間移動、石化の能力。1970年代ヨーロッパで発見されたユニコーンに酷似した生物ユニコルンの能力が由来。
初出:仮面ライダー

デッドハンド:デッドライオンの右腕。来たるべき戦いに備え、再改造。強力電気攻撃を放つことが可能。
初出:仮面ライダーストロンガー

瞬間圧縮冷凍捕獲装置・ムシカゴ:財団Xが開発・保持する兵装。対象にぶつけることで起動し、圧縮冷凍を行う。生命力の強い生物以外に使うと細胞が崩壊してしまうので注意。

対改造人間用拳銃:財団Xが保持する兵装。ライダーキラーには効かなかった。

ファンガイアスレイヤー(>>40の誤記):財団Xが協力する企業から貰い受けた武器。複数のモードを切り分けて使う。
初出:仮面ライダーキバ

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