阿笠「高級ソープ嬢になりたいんじゃが」 (70)
阿笠「応援してくれるか、新一」
コナン「……」カチッ キュイイイィィン
コナン「オラァッ!!」ドゴォ!!
阿笠「っ……!?」
阿笠「し……しんい……ち……」ガクッ
…………
……
…
コナン「……っつーわけなんだよ」
灰原「そんな気色悪い話聞かせないでくれる?」
コナン「だけどよ、オメーの同居人の話だぜ?」
灰原「なおのことよ」
灰原「……まぁ、一応あの中年がノびてるワケは分かったわ」
コナン「俺も最初はあまりにキモくて蹴り飛ばしちまったんだけど」
コナン「よくよく考えてみると老い先短い中年の切望なわけだろ?」
コナン「無碍にするのもどうかと思ってよ」
灰原「世界一無駄な情ね……」
灰原「どちらにせよ、私はパス。これ以上関わり合いになりたくないわ」
コナン「そこを曲げてさ、な?」
コナン「博士がボケちまったときの予行演習だと思ってさ」
コナン「オムツ替えるよりはマシだろ?」
灰原「オツム交換した方がいいんじゃない」
コナン「ハハ……おめーも結構言うな……」
灰原「大体なんで初老の太った中年男性の望みがソープ嬢なのよ」
灰原「全てにおいて矛盾してるじゃない」
コナン「それはほら、博士も発明家だからな」
コナン「他人と違った感性を持ってても仕方ねーって」
灰原「発明家という職業を貶めるような発言はやめなさい」
阿笠「む……ぅ……」ピクピク
コナン「ん、面白ハゲも起きたみてーだな」
灰原「できれば目覚めないでほしかったわね……」
阿笠「む……新一に……哀くんか」
コナン「博士、さっきは悪かったな。全力で蹴飛ばしちまって」
阿笠「いや、心配には及ばんよ」
阿笠「もっと強く蹴ってもらってもよかったくらいじゃ」ドキドキ
灰原「」
コナン(やべぇなこのおっさん……)
阿笠「ふむ……それで二人は何を話しておったんじゃ?」
灰原「どこの老人ホームに博士を入居させるかの相談よ」
阿笠「む、むぅ……哀くんは怖いのう……」ビクッ
コナン「灰原にもソープ嬢の件について話してたんだよ」
阿笠「ほう、そうじゃったか」
灰原(この男、どうして平静でいられるのかしら……)
阿笠「まぁいずれ哀くんにも相談しようと思っとったから」
阿笠「手間が省けたわい」
灰原「セクハラっていうかモラハラの領域ね」
コナン「大体よ、どうして高級ソープ嬢なんかになりてーんだ?」
阿笠「うむ、よくぞ聞いてくれた」
阿笠「ローションにまみれ、マットの上で艶めかしく踊りたい……」
阿笠「身体のポテンシャルを余すことなく解放し、淫靡にまぐわいたい」
阿笠「極上の性技と天上の快楽で相手を癒しつくしたい……」
阿笠「そんな高級ソープ嬢になりたいと、男なら誰しも一度は夢見るじゃろ」
コナン「特殊な性的嗜好を一般化するんじゃねーよ」
灰原「私、部屋に戻ってもいいかしら」
コナン「待てって灰原、この変態発明家に現実を叩きつけてやらねーと」
灰原「どう考えても手遅れでしょ」
コナン「そもそも博士は『嬢』じゃねーだろ!」
灰原「あなたもひとの話を聞きなさい」
阿笠「そんな問題は発明でどうとでもなるわい!」
阿笠「だいたい、君たち自身が幼児化しとる張本人じゃろう」
灰原「こんな低俗な話題で引き合いに出されるなんてムカつくわね……」
コナン「じゃあ仮に女体化できたとして、テクニックはどうするんだよ!」
灰原「仮定も問題も間違ってるでしょ!」
阿笠「そこは心配いらんよ、ほれ」スッ
コナン「財布を取り出す感覚でローションと桶を出すんじゃねーよ」
阿笠「ほれ、この通り」ダパダパダパダパ
コナン「妙に手慣れてるのがムカつくな……」
阿笠「毎晩風呂場でマットプレイの練習をしておるからのう」ニッコリ
灰原「私、今度から銭湯を使うわね」
阿笠「まぁ、実際のところまだまだ未熟者じゃが」
阿笠「そこはここからの努力で補っていくつもりじゃよ」
コナン「なに爽やかなルーキーっぽく言ってんだよ」
阿笠「それに、実は既にとある発明品が完成しておるんじゃよ」
コナン「どうせロクなもんじゃねーんだろ」
阿笠「そんなことないわい、ほれ」パサッ
コナン「うわ……」
阿笠「名付けて、ランジェリー型ローション分泌装置じゃよ」ニッコリ
灰原「視力を持って生まれたことを後悔する光景ね……」
阿笠「電気と磁力で身体中のツボを刺激することで」
阿笠「汗腺からローション状の体液を分泌する……」
阿笠「まぁ、キック力増強シューズと同じような構造じゃな」
コナン「」
阿笠「まぁまぁ、とくと御覧じろ……ほれ」ヌパッ
コナン「うっわ…………」
灰原「」
阿笠「どうじゃすごいじゃろう!」
阿笠「このように一瞬で全身ヌルヌルになれる!」
阿笠「これでいついかなる時でもローションプレイが可能というわけじゃ!」
コナン「……」
灰原「……」
阿笠「……」
コナン「……わかったから、それ、やめろよ……」
灰原「……」
阿笠「なんじゃ、ノリが悪いのう」
阿笠「まぁ、まだ試作型じゃからこれから改良を加えて……」ニュルッ
阿笠「……」ニュルン ニュパッ
阿笠「…………」
コナン「……どうしたんだよ?」
阿笠「……」
阿笠「手が滑ってスイッチが切れん……」
コナン「……」
灰原「……」
阿笠「た……助けてくれ……」
コナン「……」
コナン「そのうち効果も切れるんじゃねーのか?」
阿笠「いや、ダメじゃ」
阿笠「この装置はワシの生体エネルギーで動いとる」
阿笠「つまり死ぬまでローションの生成は持続する」
灰原「なんで無駄にハイテクなのよ」
コナン「とはいえずっとそのままってワケにはいかねーだろ」
阿笠「いや、ダメじゃなこれ」
阿笠「もうワシはこのままの姿で生きていくわい」
コナン「なんでダメな方向に潔いんだよ」
阿笠「きっとこういう運命だったんじゃよ」
コナン「なんだよその悟り……」
阿笠「それに……さっきから滑って……バランスが……」プルプル
阿笠「ぬおおっ!?」ズデン ビシャッ
コナン「うおおっ!?」ビクッ
阿笠「」スイー
灰原「アシカショーみたいね……」
コナン「バーロォ! 言ってる場合か!」
コナン「今の博士の摩擦係数の小ささからして……!」
阿笠「」パリーン
灰原「窓を突き破って表に!?」
コナン「クッソ、あんなもんが外に出たら……!」
キャー!!!
コナン「手遅れか……っ!」
灰原「とにかく追いかけるしかないみたいね……!」
コナン「ああ! 少年探偵団にも協力してもらう!」カチッ
コナン「おいオメーら、聞こえるか!」
元太『オウ、どうしたんだよコナン』
歩美『聞こえるよ!』
光彦『何かあっ―――
歩美『キャアアッ!!』
コナン「おい、どうしたんだ歩美ちゃん!」
歩美『み……光彦くんがヌルヌルしたものに轢かれて……!』
コナン「本当か!?」
灰原「……いきなりビンゴみたいね」
元太『なんだよ?』
コナン「いいか二人とも、それは博士だ!」
歩美『えぇっ!?』
コナン「それで博士はどっちの方に行った?」
歩美『米花駅の方に向かったよ!』
コナン「おーし……いいか、そのまま博士を追跡するんだ!」
元太『オウ、わかったぜ!』
歩美『コナンくんたちは?』
コナン「オレたちも後から追いかける! 見失うなよ!」
歩美『任せて!』
…………
……
…
阿笠「ふむ……駅舎にぶつかってなんとか止まれたわい」
阿笠「それになんとか立つコツも掴めてきたようじゃ」スタッ
阿笠「とはいえ……これからどうするかのう……」
コナン「博士!」
阿笠「む……?」
コナン「大人しくしろ!」
阿笠「ふむ、少年探偵団のみんなも一緒か」
元太「うわっなんだあれ?」
歩美「なんだか水〇玄餅みたいだね~」
灰原「もう逃げられないわよ」
阿笠「逃げたつもりはないんじゃが……まぁいいわい」
阿笠「今のワシはこの通り高級ソープ嬢そのものじゃ」
阿笠「そして、これこそがワシの新たなる生きるなんじゃよ」
元太「ソープ嬢ってなんだ? 食えるのか?」
コナン「大人になったらな」
阿笠「これからワシは大地をマットとし、海原を浴槽とし」
阿笠「この空の下の全てをソープランドとして生きていくことを宣言する」
阿笠「言うなればソープの神じゃ……」
コナン「バーロォ!! 何血迷ったこと言ってんだ!」
コナン「いますぐそのふざけた夢から目を覚まさせてやるぜ!」
コナン(とはいえ……何か手は……!?)
光彦「みなさ~ん」タッタッ
コナン「!!」ティロリン!
コナン「っしゃあ光彦そこを動くなよ!!」カチッ キュイィィン!!!
光彦「えっ――――
コナン「いっけえええええええっ!!」ドゴォ!!!
故・光彦「」シュゥゥゥン
阿笠「むっ!!」
灰原「考えたわね……円谷くんを弾丸に……!」
歩美「いけえええっ!」
阿笠「――無駄じゃよ」ニュルン
コナン「!?」
阿笠「……全ての攻撃は体表のローションと」
阿笠「衝撃を吸収するふくよかボディによって」
阿笠「完全に無効化されるからのう」
コナン「クッソ……普段の五倍ムカつく……!」
コナン「それより何か次の手を……ん?」
元太「パトカーの音が近づいてくるぞ!」
灰原「どうやら誰かが通報したみたいね」
歩美「あ、佐藤刑事と高木刑事だよ!」
佐藤「みんな、大丈夫だった!?」
コナン「佐藤刑事!」
高木「うわっなんだあれ!?」
コナン「阿笠博士が高級ソープ嬢になるための発明をしたんだけど、それが上手く機能しなくて一生ローションまみれになることを余儀なくされたから全てを諦めてソープの神になるなんて妄言を吐くようになっちゃったんだ」
佐藤「なるほどね」
佐藤「どちらにせよ、あんな猥褻物を放っておくわけにはいかないわね……」スッ
佐藤「阿笠さん! その場で大人しく両手を上げて!」カチャッ
阿笠「ふむ、こうかのう?」スッ
歩美「へー、博士って腋毛も白いんだ!」
佐藤「今すぐ両手を下ろしなさい!!」
阿笠「なんじゃ、勝手じゃのう……」ペチャン
佐藤「そのまま動かないで……動けば撃ちます」
コナン「ダメだ佐藤刑事!」
コナン「今の博士にはどんな攻撃も通用しない!」
コナン「それにここじゃ弾かれた銃弾が周りの人に当たっちゃうよ!」
阿笠「コナンくんの言う通りじゃ」
阿笠「ほれ、拳銃を下げるんじゃよ」
佐藤「くっ……!」スッ
高木「万策尽きたか……!」
灰原「アンタなにもしてないじゃない」
佐藤「……!」
佐藤「じゃあ、精神的に攻めるのはどう?」
佐藤「とにかく罵倒して弱らせて動きを鈍くさせて……!」
コナン「ダメだ! 博士は真正のマゾヒストなんだ!」
コナン「そんなことしたら逆にパフォーマンスが向上しちまう!」
佐藤「そんな……どうすれば……」
高木「今度こそ万策尽きたか……!」
灰原「だからアンタ何もしてないでしょ」
コナン(だが……どうする?)
コナン(何かあるはずだ……考えろ……方法を……!)
阿笠「さて……お遊びはおしまいのようじゃな」
阿笠「そろそろワシも本領発揮とイクかのう……」
阿笠「そうじゃな……一人目のお客様は高木刑事にしよう」
高木「ヒィッ!?」ビクッ
阿笠「大丈夫じゃよ、昇天するほど気持ちよくさせてやるわい」ムクムク
コナン「……!!」
コナン「そうか……考え方を変えればいいんだ」
コナン「みんな! 阿笠博士に思いつく限りの罵倒を浴びせて!」
佐藤「えぇ!?」
灰原「そんなことをしたら……!」
コナン「大丈夫さ。オレを信じろよ」
灰原「江戸川くん……」
コナン「さぁ!」
佐藤「……わかったわ」
コナン「よし……子供にしか相手にされないおっさん!」
灰原「中年変態印!」
佐藤「高齢独身!」
高木「変な髪型!」
歩美「移動手段!」
元太「バーカ!」
羽賀響輔「不協和音!」
羽田秀吉「遊び駒!」
ウォッカ「無能!」
沼淵己一郎「蛍頭!」
梓「えっと……変質者!!」
阿笠「……!!」ムクムクッ
コナン(よし、狙い通りだ)
コナン(あとは……)
コナン「元太! 博士の股間を見ろ!」
元太「あ? なんだよ?」
コナン「いいからほら」
元太「見ろつったってよ、ただのチンコじゃねーか」
コナン「バーロォ、よく見ろ!」
コナン「細くて、ヌルヌルで、どことなく気持ちが悪い」
コナン「そうさ……あれは鰻だ!」
元太「……!!」
コナン「さぁ行け元太!」
元太「――」ダッ
阿笠「うな重モードの元太くんか……だが詮なきことじゃよ」
阿笠「ワシのペニスはローションと我慢汁でコーティングされておる! 何人たりとも握ることは――」
コナン「バーロォ……誰が握るなんて言ったよ」
阿笠「なんじゃと?」
コナン「元太ァ!! そのまま直接食らいつけ!!」
元太「」グポオッ
阿笠「」
元太「」ジュルルルル!!! グッポグッポグッポ!!!
コナン「いいぞ! 頑張れ!」
阿笠「む……むぅん……」ビクビク
阿笠「じゃ、じゃがいくら吸い付かれようと、ただ気持ちいいだけで――」
コナン「まだだ元太! そのまま飲み干せ!!」
元太「」ズゾゾゾゾゾゾ
阿笠「」
コナン「そのまま食いちぎれ!!」
元太「」ズゾゾゾ
元太「」ガブッ
阿笠「ア」
阿笠「……ぐおおおおおおおおっ!!?」ガクガクビュルルルル
コナン「よし!」グッ
佐藤「考えたわね……わざと罵倒して勃起させて元太くんをけしかけ」
佐藤「ローションと体液を飲み干させつつペニスを食いちぎらせたわけね」
コナン「うん。あぁでもしないと博士にはダメージを与えられないからね」
灰原「探偵の面目躍如ってところかしら?」
歩美「コナンくんすごーい!」
コナン「とにかく、これで博士も大人しく――」
阿笠「そうは……いかんよ」ブルブル
コナン「!?」
阿笠「君も知っての通り、ワシは根っからのマゾヒストじゃからのう……」ガクガク
阿笠「この苦痛も無上の快楽じゃわい……」
佐藤「そんな……」
灰原「バケモノね……」
阿笠「それに……お陰で『嬢』になる手間が省けたわい」
阿笠「これでより一層高級ソープ嬢に……ソープ神に近づいた」
コナン「くっ……!」
阿笠「しかし、君はやはり厄介じゃのう」
阿笠「これ以上邪魔されてはたまらん」ムニュルン
コナン「待て! どこに行く気だ!」
阿笠「君の大切なものを人質にするんじゃよ!」
阿笠「さらばじゃ!」スイー
高木「カーリングみたいだ……」
灰原「アンタ何しに来たの?」
コナン(まずい……このままじゃ蘭が……!)
コナン(俺がやるより先にローションまみれにされちまう……!)
コナン(そんなことは絶対にさせねぇ……)
コナン(俺はお前のことをローションまみれにしてーんだ……この地球上の誰よりも――)
コナン「チクショー……らあああああああああああああん!!!!!!」
…………
……
…
蘭「えーほんとー?」
園子「ほんとほんと! それでねー!」
阿笠(ふむ……やっと蘭くんを見つけたわい)
阿笠(ビルの上から飛びかかれば反応もできんし、今のワシには空手も通用せん)
阿笠(ローションで少し窒息してもらって、人質になってもらう……)
阿笠「全てはワシの大望のため!」ヌルリ
阿笠「悪く思わんでくれよ!」ジュルーン
阿笠「今じゃ!」ヒュウウ
園子「……あ、蘭ちょっとこの店見て!」
蘭「ん? どうしたの」ピタッ
阿笠「」グサッ
蘭「いたっ」
園子「うわ……蘭、角に変なの刺さってるよ」
蘭「え……うわぁなんだろうこれ……」
園子「ハンカチ貸してあげるから早く取りなよ」
蘭「うん……ありがと」グイッ
故・阿笠「」ビタンッ
蘭「取れた?」
園子「うん、取れてる」
蘭「たまにあるんだよね~。前はお父さんが刺さってたし……」
園子「もー私のことは刺さないでよー?」
蘭「もう! 園子ったら!」
園子「あはは! それでさ……」
蘭「うんうん」
故・阿笠「」
…………
……
…
オレたちが発見したとき、博士は腹を何かで貫かれ、既にこと切れていた。
目尻から液体が流れ落ちた一筋の跡が残っていたが、それが涙だったのか、ローションだったのか今となっては分からない。
一連の騒動の結果、元太はローションで窒息死。佐藤刑事は懲戒免職となり、高木刑事は殉職。
博士は被疑者死亡のまま書類送検。光彦は極刑に処された。
中年が抱いた不相応な願いの顛末は、あまりにも残酷な現実だった――
…………
……
…
ジン「お客様、ご案内いたします」
??「うむ」
ジン「こちらです。ごゆっくり……」
??「」ガチャッ
??「ようこそおいでくさいました……ミワコです。よろしくお願いします」
??「うむ、よろしく頼むよ佐藤くん」
??「え……」
佐藤「め……目暮警部……!?」
目暮「高級ソープ嬢のテクニック、味わわせてもらおうか」
佐藤「」
BAD END
どうしてこうなった
>>32
新たなる生きるって何だ?
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