小鳥「新婚旅行?」 P「下見旅行」 (93)

書き溜めてm@s

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小鳥「…………」カタカタ

P「…………」カチカチ

小鳥「ねぇプロデューサーさん?」カタカタ

P「なんですかー?」カチカチ

小鳥「プロデューサーさんって、彼女いるんですか?」カタカタ

P「…………」カチ…


P「ずいぶんと酷なことを聞きやがりますね」

小鳥「どうなんですか?」

P「いたことがないですよ」

小鳥「えー? うっそだぁ」

P「こんな惨めな嘘ついてどうするんですか」

小鳥「でもそんな感じしませんよぉ?」

P「しかし真実です」

小鳥「えー」

小鳥「どうして作らなかったんですか?」

P「作れなかったんですよ」

小鳥「作れなかった? どうして?」

P「思春期をこじらせたとだけ言っておきましょう」

小鳥「……よくわかんない」

P「っていうか小鳥さんこそ、恋人居たことないって嘘でしょ?」

小鳥「それはホントにホントです……」

P「どうして?」

小鳥「う〜ん……妄想癖をこじらせたんでしょうね」

P「それは今だって……」

小鳥「はい?」

P「いえ、なんでも」

小鳥「もし恋人が出来たら、どんなことしたいですか?」

P「えー? どうだろうなぁ……」

小鳥「手を繋ぐとか、そういうベタなヤツは無しですよ」

P「う〜ん……結構難しいですね」

小鳥(……ワクワク)


P「えと……ちょっとヘンなこと言いますけど」

小鳥「はい」

P「俺の家に居て……俺は本を読んでいるとしましょう」

小鳥「わた、彼女は?」

P「ベッドに座って退屈そうにしてる」

小鳥「ほぉほぉ、それでそれで?」

P「そんな彼女に……ベッドの上でじたばたされつつ……」

P『ねぇどっかいこーよー! ねぇってばぁ〜』

P「——って言われたいですね」

小鳥「…………ちょっと共感してしまうのが悔しいです」

P「小鳥さんは? 恋人が出来たら何がしたいです?」

小鳥「私もちょっとヘンかもしれないですけど……」

小鳥「喧嘩するんですよ、喧嘩」

P「へぇ喧嘩がしたいんですか、珍しいですね」

小鳥「いや待って待って! まず喧嘩するんです、まず」

P「まず、ですか……」

小鳥「その後、お互い反省はしてるけど、謝るきっかけがない」

P「はいはい」

小鳥「で、沈黙に耐えかねて付けたテレビからはバラエティ番組が流れてて……」

小鳥「二人同じところで笑っちゃって、つい吹き出しちゃうんです」

P「笑いのツボが同じってのがイイですね」

小鳥「そう! で、お互いギクシャクしてたのが馬鹿らしくなって」

小鳥「顔を見合わせて大笑いする……めでたしめでたし」

P「喧嘩から仲直りまでの一連ですね。 うん、結構共感できました」

小鳥「でしょでしょ?」

P「でも……」

小鳥「はい?」

P「こんなことばかり言ってるから、二人とも恋人が出来ないんでしょうね」

小鳥「わかってはいるんですよ、えぇ」

P「も、もういっそのこと……俺たち付き合っちゃいましょうか?」

小鳥「………えっ」

P「なぁーんちゃって!」

小鳥「…………」

P「あははは……ははは………はは……」

小鳥「…………」

P「ごめんなさい」

小鳥「いえ……」

P「小鳥さんにも選ぶ権利はありますよね」

小鳥「…………」

小鳥「わ、私は別に構いませんけど……」

P「えっ?」

小鳥「プロデューサーさんがお嫌でしょうから」

P「そんなことないですよ!」

P「小鳥さんみたいな素敵な方が恋人だなんて、願ったり叶ったりです!」

小鳥「わ、私だってプロデューサーさんのこと、素敵だなぁ〜って思ってますよ!」


P・小鳥「「……ハッ!?」」

P・小鳥(これって……殆ど告白したのと一緒じゃ……)


小鳥「な、なぁーんて……私ったら何言ってるのかしらぁ〜」

P「そそそそうですよね! 俺もヘンなこと言っちゃって……」


P・小鳥「「あは、あはははは〜!!」」



律子「…………」

社長「…………」

律子(今日は社長に同行して挨拶周り……で、帰ってきたと思ったら……)

社長(すごい場面に遭遇してしまったなぁ……)


律子「あのぅ……社長?」

社長「なんだい律子君?」

律子「私イイこと思いついたんですけど」

社長「奇遇だね、私もなんだ」

律子「ちょっと……会議室行きましょうか」

社長「あぁそうしよう」



P「……あれ?」

小鳥「どうしました?」

P「今ドアの向こうに、社長と律子の姿が……」

小鳥「そうですか? 全然気が付きませんでした」

P「今日は挨拶周りとか言ってたけど……会議室行ったのかな?」

小鳥「かもしれないですね」

律子「……社長、慰安旅行の件がありましたよね?」

社長「あぁ、日頃の疲れを癒しに、みんなで行きたいと思ってね」

律子「その下見と称してですよ、二人を旅館に——」

社長「泊まらせる……だね?」

律子「そうです」

社長「場所なんだが……実は私の知り合いが、ある旅館を経営していてね」

社長「そこは『恋愛成就の宿』と言われているんだ」

律子「ほう!」

社長「ある部屋に泊まると、恋が成就するらしい」

律子「あの二人にピッタリですね」

社長「しかも、近くには縁結びの神社まであるんだよ」

律子「ますますもってこいじゃないですか!」

社長「その宿に話をしてみよう。 昔の誼で協力してくれるだろうからね」

律子「よし! 私の方も、さっそく二人に打診してみます!」

社長「うむ……日程の調整も頼むよ、律子君」

律子「はい!」

社長「宿への根回しは私に任せてくれ」

律子「お願いします」

社長「うむ」

律子「いやぁ社長! なんだか面白くなってきましたね!」

社長「まさか、恋のキユーピッドになれるとはねぇ」

律子「愛は食卓にある!」

社長「それは……どういうことかな?」

律子「すみません、取り乱しました」

社長(今日の律子君は随分と元気が良いようだ……)

社長(やはり律子君も女の子……乙女なんだな)


数日後

P「さて、では出発しましょうか」

小鳥「はーい! 安全運転でお願いしますね!」

P「もちろんです」

小鳥「えーっと、旅館でしたっけ?」

P「えぇ、社長の知り合いの方がオーナーらしいです」

P「そこの情報誌に載ってますから、見ていいですよ」

小鳥「えーっとなになに……静かな山あいにひっそりたたずむ和風旅館」

小鳥「評判の料理は手作りの和風創作料理」

小鳥「器も料理に合わせて作った益子焼を使うというこだわりぶり」

小鳥「女性客が多いため、特製デザートに力を入れているのも嬉しい!」

P「それは“アイドル達”にとってはすごく魅力的ですね」

小鳥「……私も入れてくれません?」

P「はい?」

小鳥「なんでもないです」

小鳥「えーお風呂はゆったりした造りの大浴場と……」

小鳥「あずま屋が設けられた岩造りの露天風呂があり、いずれも終日入浴OK」

P「なるほど」

小鳥「まぁそんなとこですかね」

P「いい感じじゃないですか。 部屋はどうです?」

小鳥「なんというか、一昔前の新婚旅行で泊まるような宿を高級にした感じですね」

P「あぁ、ドリフのコントに出るような?」

小鳥「そうそう! わかります?」

P「もちろん!」

小鳥「ふふっ、何だか嬉しいなー」

P「え? なにがですか?」

小鳥「他のみんなには絶対通じませんよードリフなんて」

P「そうですかねぇ」

小鳥「だから話題が合うのがすごく嬉しいです」

P「あはは、喜んでいただけたようで……」

小鳥「あっ!」

P「どうしました?」

小鳥「ここ、恋愛成就の宿って言われてるそうです!!」

P「へぇそうなんですか」

小鳥「その名もずばり『成就の間』っていう部屋があるんですって」

P「そのまんまですね」

小鳥(プロデューサーさんにぴったり……)

P(小鳥さんにぴったり……)


P・小鳥(……なんて言ったら怒るかな?)


P「…………」

小鳥「…………」

P「何か言いたそうですね」

小鳥「プロデューサーさんこそ」

小鳥「それにしても……いいんですかね?」

小鳥「慰安旅行の下見とはいえ、私達が実際に泊まってみるなんて」

P「いや、これは大事な仕事ですし、試されていると言っても過言ではありませんよ」

小鳥「そうですかぁ?」

P「アイドル達に羽を伸ばしてもらうってのが大前提としてあるわけですよね?」

小鳥「えぇ」

P「ですから、みんなが満足できるようにしないといけない」

P「その為にはですよ? 場合によっては旅館側に注文する必要もあるんです」

小鳥「まぁ……そうですね」

P「ここで重要になってくるのは、いかにアイドル達のことを理解しているか」

P「完全に理解できていなくとも、いかに彼女達のことを第一に考えているか……です」

小鳥「……そっか」

P「社長は今回の件で、そういったところを見極めようとしてるんですよ多分」

小鳥「そう言われると……なんだか少し怖くなってきました」

P「ですから、上手くいくように小鳥さんの力を貸してください」

小鳥「えぇ」

P「というより、一緒に頑張りましょう!」

小鳥「でも私なんて……役に立ちますか?」

P「もちろんですよ!」

小鳥「と、年だってみんなと離れてるし……」

P「男だと気付けないことも多々あるでしょうから、ここはぜひ女性目線を……」

小鳥「女性? 私、女性でいいんですか?」

P「……違うんですか?」

小鳥「あっいや! そーいう意味じゃなくて……」

P「???」

小鳥(意識はしてくれてるのかな……?)

————
——

P「えーっと……765プロダクションですけど」

女将「ようこそおいでくださいました。 支配人から話は聞いております」

女将「なんでも、そちらの社長様とは古くから親しくさせて頂いていたとのことで……」

P「えぇ、そうらしいですね」

女将「数ある旅館の中で、私どもの宿をお選び頂き、有難う存じます」

P「いえいえそんなそんな……こちらこそ、どうも……」

P(綺麗な人だなぁ……)

女将「あの……私の顔に何か?」

P「あっ……いや、違います……あはは」

小鳥「…………」

P「な、なんですか?」

小鳥「いーえ」

小鳥(デレデレしちゃって……ダラシナイ)

P(俺はなぜ睨まれてるんだ……?)

女将「本日はどうぞごゆるりと……と申したいところなんですが……」

小鳥「え? な、何か問題が……?」

女将「実はお客様に、初めにお断りしておきたいことがございます」

P「なんでしょう?」

女将「二部屋でのご予約だったと思うのですが……」

女将「こちらのミスで、一部屋だけのご案内となってしまうんです」

P「ってことは、その部屋に二人で……」

小鳥「泊まるってことですか!?」

女将「まことに申し訳ありませんが、そうなってしまいます」

P「それは困った……ねぇ小鳥さん」

小鳥(これはもしかしてチャンスなんじゃ……)

P「小鳥さん?」

小鳥「へ?」

P「困りましたね」

小鳥「そ、そうですね困りましたね!」

女将「よろしければ、私どもが使用している部屋を空けまして……」

P「うーん、そうして頂いたほうが……」

小鳥「私は……いいですよ、同じ部屋で」

P「…………へ?」

小鳥「そんな…別に…何も…間違いなんて………」

P「えっ」

小鳥「むしろ…何も…起きないことが…間違いであって………」

P「あ、あのぅ……」

小鳥「お酒の…力も…借りちゃってりして…そして………」

P「小鳥さーん?」

小鳥「とにかくその部屋でいいですからっ!」

小鳥「ね? プロデューサーさんもそれで良いでしょ? ねっ!」

P「小鳥さんが良いなら……それで」

女将「どうもありがとうございます。 では、ご案内いたしますので」

女将「こちらがお部屋でございます」

P「あのぅ……」

小鳥「ここって……」


『成就の間』


P「…………」

小鳥「…………」

女将「なにか問題がおありですか?」

P「い、いえ……」

小鳥「そういうわけではないんですけど……」

女将「何かございましたらいつでもお呼びください……では」

女将「…………」



女将(……計画どおり)ニヤリ

P「一見すると、普通の部屋ですね」

小鳥「はい」

P「ここに男女が泊まると……結ばれる?」

小鳥「そうみたいですね」

P「でも……考えてみれば、男女で旅館に泊まるってことは……」

P「既にそれだけ親密な関係だってことですよね?」

小鳥「二人で旅行するぐらいですからね」

P「だったら別にこの部屋に泊まらなくても、遅かれ早かれ結ばれますよ」

小鳥「確かに……ここに泊まろうとする時点で、そうなりたいってことですもの」

P「ですからこんなの迷信ですよ迷信! 客寄せパンダです!」

P「いやぁ危うく引っ掛かるところでしたね、小鳥さん!」

小鳥「…………」

P「…………あれ?」

小鳥(そんなに喜ばなくてもいいのに……)

小鳥「…………」

P「そ、そもそも小鳥さんは俺のことなんて……」

小鳥「…………」

P「小鳥さん、どうしました?」

小鳥「いえ……なんでもないです」

P「でも……」

小鳥「私、お風呂入ってきますね」

P「あっはい」


P「…………」

P(何か悪いこと言ったかな俺……)

P「でもまぁ、機嫌が悪くなるのも当然か」

P(いくら迷信でも、気のない男とこんな部屋泊まるのはイヤだよな……)

P(やっぱり……部屋用意してもらったほうがよかったかな)

カポーン

小鳥「…………はぁ」

小鳥「天気は良いし景色も申し分ないけど……気は晴れないなぁ」


P『危うく引っ掛かるところでしたね、小鳥さん!』


小鳥「…………」

小鳥「プロデューサーさんの馬鹿……」

小鳥(私だってあんな迷信、信じてない)

小鳥(あの部屋に泊まったからって、結ばれるとは思ってないけど……)

小鳥「あんなに嬉しそうに否定しなくてもいいじゃない」

小鳥「はぁ……」



小鳥「…………ばか」

小鳥(鈍感なプロデューサーさんも、変な期待をした自分も……)

小鳥「……いけないいけない」

小鳥「こんなのただの八つ当たりよね」

小鳥(今回の宿泊の目的は、あくまでも旅館の下見なんだから)

小鳥(私の恋路なんてどうでもいいの)

小鳥(それよりも、お宿をしっかりチェックしておかないと……)

小鳥(とりあえずお風呂は……これだけ広いから、大勢で入っても平気かな)


小鳥「…………あっ」

小鳥「そうだわっ!」

小鳥(旅館も大事だけど、周辺に何があるのかも大事よね)

小鳥「…………」

小鳥(よし! 空気を悪くしたのは私の責任だし)

小鳥「お風呂から上がったら、私の方から……」

小鳥「『まだ明るいし、散策でもしませんか?』って……」

P「…………はぁ」

P「気を悪くさせちゃったな」

P「なぁにが成就の間だよ……ちぃっとも効かないじゃないか」

P「ちょっとは期待してたんだけどなぁ」

小鳥「なにがですか?」

P「なにがって、なにがじゃないですよ…………うわぁ!!」

小鳥「とってもよかったですよ、お風呂」

P「そ、そうですか」

小鳥「プロデューサーさん、さっきはゴメンなさい」

P「そんな……俺の方こそ」


小鳥「それで……その………まだ明るいですし、散策でもしませんか?」

小鳥「周辺に何があるのかも、知っておいたほうがいいでしょうし」

P「あ、そうですね!」

P「でも、もう少し経ってからにしません?」

小鳥「プロデューサーさんもお風呂ですか?」

P「いえ、俺はまだいいです」

小鳥「それならどうして?」

P「湯冷めするといけないでしょ?」

小鳥「あっ、私のことはいいですよ! 気を遣っていただかなくて」

P「でも……」

小鳥「私が行きたいんです! プロデューサーさんと、今すぐ!」

P「わかりました……ではせめて髪を乾かしてください」

小鳥「はーい」

P「…………」

小鳥「…………」

P「近くの神社に来てみたわけですけど……」

小鳥「こ、ここは……」

P「縁結びの神社……みたいですね」

小鳥「まぁご利益はそれだけじゃないでしょうけど」

P「そうですね、みんなでお参りするのもアリかもしれません」

小鳥(修羅場になりそうな予感……)

P「とりあえず、参りますか」

小鳥「……はい」


P「えっと、まずは……手水舎の前で一礼ですね」

P「はい、一礼!」ペコッ

小鳥「いちれー」ペコッ

P「それから、左手から先に清めまして……次に右手ですね」

小鳥「はーい」

P「んで左手に水を溜めて、口をすすぎます」

小鳥「よく知ってますね」

P「まぁこのくらいは」

小鳥「それなら……二拝二拍手一拝もわかりますよね?」

P「えぇ」

小鳥「じゃあ、これは知ってました?」

小鳥「拍手するときは、右手を少し下に——」

P「知ってます」

小鳥「あっ、そう……」

P「…………知らないって言った方がよかったですか?」

小鳥「べ、別にぃ〜」


ガラガラガラ

小鳥「…………」

P「…………」


小鳥「なんてお願いしたんですか?」

P「年金が貰えますようにって」

小鳥「えー? ウソでしょ?」

P「ホントのお願いは秘密です」

小鳥「……ケチ」

P「じゃあ小鳥さんは?」

小鳥「宝くじが当たりますようにって」

P「……ホントは?」

小鳥「とっぷしーくれっとです」

P「面妖な」

小鳥「他にもどこか回ってみます?」

P「いえ、時間も微妙ですし、明日宿を出てからにしませんか?」

P「まだ明るい内に、部屋の様子とか、もう少しよく見ておきたいですし」

小鳥「……そうですか」

P「食事が一番気になるんですよ」

小鳥「どうして?」

P「ほら、旅館の料理ってこう……ちょっと年齢層が上というか…………」

小鳥「あぁ……確かにそうですね。 若い子たちには評判悪そうです」

P「小鳥さんは大丈夫そうですけどね」

小鳥「どーいう意味ですか?」

P「いや、他意はないですよ他意は」

小鳥「どうだか!」

————
——

女将「お帰りなさいませ。 一つお伺いしたいのですが、お料理は如何なさいましょう?」

P「料理……ですか?」

女将「はい、お部屋にお持ちすることも出来ますが……」

女将「皆さんでいらした時は、広間でお召し上がりになるでしょう?」

P「えぇ、そうなると思います」

女将「でしたら、今日もそちらでお召し上がりになったほうが、何かとよろしいかと……」

P「あっ、そうですね……はい」

女将「承知致しました」

女将「では準備致しますので、それまではお部屋でゆっくりなさってくださいね」

P「あ、は……はい!」

小鳥「むぅ〜」

P「ん? 小鳥さん、どうしました?」

小鳥「なんでもないですぅ〜」

小鳥(なによ! 女将の営業スマイルにのぼせあがって!)

P「おぉ〜すんげぇ旨そう!」

小鳥「ホント……美味しそう」

P「なんですけど………ちょっとお願いがありまして」

女将「はい、なんでしょう?」

P「あのですね……アイドルの子達はまだ子供で……」

P「こういった大人向けの料理の味が分かるかなぁ……って」

女将「あぁ、ご安心ください。 私どもはお客様を第一に考えておりますので」

女将「年齢や好き嫌い等を考慮して、それぞれにあったお料理を提供させていただきます」

P「そうですか……それならよかった」

小鳥「それじゃ、このお料理は私達向けってことですか?」

女将「はい。 お二人のように成人され、なおかつお若い方に……」

小鳥「お、お若いだなんてやだわぁ女将〜」

P「そうですよ、俺はともかく……」

小鳥「あぁん?」

P「い、いただきまーす」

P「ふぅーごちそうさまでした」

小鳥「とっても美味しかったですね」

P「そうだ、小鳥さん……先に部屋戻ってていいですよ」

P「俺はこのままお風呂行きますから」

小鳥「あっ! だったら私も、もう一度入ります」

小鳥「お布団の用意とか、多分その間にやって頂けると思いますんで」

P「あそっか……それもそうですね」


小鳥「あの……それでね?」

P「はい」

小鳥「実は、さっき入ったときに見たんですけど……」

P「えぇ」




小鳥「ここのお風呂…………混浴なんですって」

P「…………へ?」

P「…………」

P(先に入ってるわけだけども……)

P「どうしてこうなった……」

P(いや、確かにオイシイと言えるんだろうけど……)

P(実際にこういう状況に陥ったら、どうしていいかわからん)

P「…………」

P「いやいやいや……」

P(どうしていいかじゃなくて……何もしちゃいけないんだよな)

P「えぇーい煩悩よ消え去れ!」

P(すべてムに……一切を空に………ムのなんたるかを……)

P「…………」

P「……ふぅ」



P「緊張するなぁ」

小鳥「…………」

小鳥(勢いであんなこと言っちゃったわけだけども……)

小鳥「まさか本当に入ることになるとは……」

小鳥(いや、確かに薄い本では見慣れたシチュだけど……)

小鳥(実際にこういう状況に陥ったら、どうしていいのかわかんないわ)

小鳥「……でもこれはチャンスよね」

小鳥(ここで余裕を見せておくことによって、プロデューサーさんに……)

小鳥「あ、そっか……」

小鳥(今まで誰とも付き合ったことがないって、もうバレてるんだった)

小鳥「ということは……失うものは何もないってことよ!」

小鳥(ここのお湯は乳白色で、裸は見られないからそこまで恥ずかしくないし……)

小鳥(頑張るのよ小鳥! ここで戦わねばいつ戦うというの?)

小鳥「…………」



小鳥「緊張するなぁ」


ガラッ

P(き、きたっ!)

P(やっぱ見ないほうがいいよな……)

小鳥「ゴメンなさい……遅れちゃって」

P「い、いえ……」

P(なぜ謝る!?)

小鳥「どうしたんですか? 向こうばっかり見て」

P「…………」

小鳥「あっ、大丈夫ですよ? タオル巻いてますから」


小鳥「…………ふぅ」チャプ

P「…………」

P(綺麗な脚だなぁ……っていかんいかん)

小鳥(ものすごく視線を感じる……)

小鳥「…………」

P「…………」

小鳥「あの……」

P「は、はい」

小鳥「もう少し……そっちに行ってもいいですか?」

P「えっ……」

小鳥「たった二人なのに、こんなに離れてちゃ変かなぁって……」

P「そうですか……では……ど、どうぞ」

小鳥「……んしょ」

P(ちょ……近い近い!)

小鳥「えへへ」

P「あ、あはは……」

P(混浴でこの距離でこの笑顔って……反則だろ)

P「…………」

小鳥「…………」

P「こ、小鳥さん」

小鳥「はい?」

P「……お肌、とっても綺麗ですね」

小鳥「えっ? あっ……どうも……」

P「…………」

小鳥「…………」

小鳥「プロデューサーさんも……すごく逞しいというか………なんというか……」

P「そ、そうですか?」

小鳥「えぇ」

P「…………」

小鳥「…………」


P(会話が……)

小鳥(続かないわ……)

小鳥「お、お湯が柔らか〜い」チャプ

P「…………」

P(腕も綺麗だな………あ、鎖骨……)

小鳥(ものすごく視線を感じる……)

P「…………」

p「…………」ムクムク

P(げっ……)

小鳥「どうかしました?」

P「な、なんでもないですよ」

P(ムスコが反応したなんて言えない……)

小鳥「でも顔が赤いですよ?」

P「い、いや……お湯が透明じゃなくて良かったなぁ〜って……」

小鳥「……え?」

P「…………ぁ」

P(ヤバ……)

小鳥「あのぅ……それってどういう……」

P「……忘れてくれるとありがたいです」

小鳥「…………あっ」

P「くっ」

小鳥(アレがソウしてコウなって……)

小鳥「えと……み、見せられない状態になったってこと……ですか?」

P「それは……その…………すみません」

小鳥「あっいえ! そんな……謝らないでください」

小鳥「せ、生理現象ですから……しょうがないですよ」

P(フォローになってないような……)

小鳥「気にしないでください……ね?」

P「…………はぁ」

小鳥「そんなムックリ……」

P「え?」

小鳥「……じゃない! ガックリしなくていいですから!」

ムックリはねーだろ

P「ホントすみません」

小鳥「いいんですよ。 私でそうなってくれたのなら、嬉しいです」

P「…………」

P(これなんてエロゲ……ってアホか)

小鳥「私、先に上がりますね。 まだ……立てないでしょうから」

P「……はい」

P・小鳥(まぁ勃ってるんだけど)

P「…………」

小鳥「あの…………嬉しいっていうのは……本当ですから」

P「え?」

小鳥「外で待ってますね」

P「あ、ちょっと!」

P「…………」


p「…………」ピクピク

P「お前は元気だな……」

小鳥(男の人が出てくるのを待ってるなんて……神田川みたい)

小鳥「って、最近の子は知らないか……」

P「ごめんなさい、お待たせしました」

小鳥「神田川って知ってます?」

P「へ? かぐや姫ですか?」

小鳥「知ってるんですかぁ!?」

P「知ってますけど……なんでそんなに嬉しそうなんですか?」

小鳥「まだ時代に取り残されてないんだって思えるんです!」

P「……なんだかよくわかんないですけど、よかったですね」

小鳥「えぇとっても!」


P「若かぁ〜った〜あのころ〜♪」

小鳥「……その鼻歌に悪意を感じるですが」

P「他意はないですよ他意は」

小鳥「どうだか!」

小鳥「あっ! プロデューサーさん、コーヒー牛乳がありますよ!」

P「おーこれぞ定番! 飲みましょう、おごりますよ」

小鳥「うふふっ! やったぁ」

P(かわいい)


小鳥「このビンの栓抜きとか懐かしいなぁ」

P「そういえば小学生のとき、このフタが通貨として流通しませんでした?」

小鳥「あっ! 私のときもありました!」

P「んで、今の小鳥さんみたいに栓抜きを使うと、穴が開くでしょフタに」

小鳥「えぇ」

P「それをね、こういう風に……よいしょ」

P「手を使って、穴のない状態で取れたフタは、価値が高かったんですよ」

小鳥「へぇーそれは知りませんでした」

P「だからみんな躍起になって手で外してましたよ」

小鳥(ショタ時代のプロデューサーさんか………ゴクリ)

小鳥「んくっ……んくっ…………ぷはぁ〜」

P「良い飲みっぷりですねぇ」

小鳥「いやぁ〜お風呂上りのコーヒー牛乳って、ビールを超えますね!」

P「この安っぽい味っていうか……クドイぐらいの甘さが好きなんですよ」

小鳥「お風呂って結構汗かいて疲れますから、甘すぎるぐらいがちょうどいいんです」

P「そうですね」

小鳥「はぁ〜美味しかった。 ごちそうさまでした」

P「いえいえ」

小鳥「これで卓球台があれば完璧なんですけどねぇ」

P「この旅館には似合いませんよ」

小鳥「でも旅館といえば卓球じゃないですか」

P「う〜ん、まぁ……」

小鳥「ピンといえばポン。 タッといえばキューどすえ」

P「……それが言いたかっただけでしょ?」

P「にしても、暑いですね」

小鳥「これだけ汗かくと……温泉に入った意味がなくなっちゃいますね」

P「はは……確かに」

小鳥「ちょっとそこに座って休憩しませんか?」

P「えぇ、いいですよ」


小鳥「はぁ……今日みたいに、ゆっくりお風呂に浸かったのも久しぶりですよ」

小鳥「お家だとシャワーで済ますことが多いですから」

P「俺もです。 いつも仕事で忙しいですからね」

小鳥「まぁ今も厳密には仕事中ってことになるんでしょうけど」

P「でも小鳥さんは今日だけですよ、ゆっくり温泉に浸かれたのは」

小鳥「え? どうしてです?」

P「みんなでここに来ることになったら、きっと女の子全員で入ることになります」

小鳥「あれだけ広いですから、その可能性は高いですね」

P「ですから、アイドル全員を小鳥さんと律子で面倒見なきゃいけないんですよ?」

小鳥「え? でもプロデューサーさんだって居るじゃないですか」

P「……はい?」

小鳥「だから、プロデューサーさんも居るでしょ?」

P「もしかして俺も一緒に入ると思ってます?」

小鳥「え? 入んないんですか?」

P「入りませんよ!」

小鳥「えぇーっ!? 混浴ですよ? みんなだって一緒に入ろうって言いますよ」

P「だからって俺が入るわけにいかないでしょ!」

小鳥「プロデューサーさんなら大丈夫ですよ。 社長はちょっと……イヤですけど」

P(社長……)

小鳥さんは可愛いなあ支援

>社長はちょっと……イヤですけど

正直過ぎてわろた

小鳥「アイドル達と裸の付き合いって、オイシイじゃないですか」

P「無理ですって! 小鳥さんと入るだけで いっぱいいっぱい だったんですから」

小鳥「……まぁ、正直私も いっぱいいっぱい でしたけど」

P「え? そうなんですか?」

小鳥「当たり前じゃないですか」

P「そうは見えなかったなぁ」

小鳥「えーなんか複雑です。 そういうのに慣れてると思ってたんですか?」

P「いや、そーいうわけじゃないですけど……」

小鳥「言ったじゃないですかぁ〜誰とも付き合ったことがないって」

P「それってやっぱり本当だったんですか?」

小鳥「本当ですよ!」

P「う〜ん」

小鳥「酷いなぁ……私、あばずれだって思われてるんだ……」

P「そんなこと思ってませんってば」

小鳥「ふーんだっ! あばずれはもうお部屋にかーえろっと!」

P「あっ待ってくださいよー」

小鳥「うふふっ、待ちませんよーだ」パタパタ

P「ほらほら、スリッパで走っちゃ危ないですよ」

小鳥「平気ですって………あっ! わ、わぁー!!」

ビターン

P「だから言わんこっちゃない……はい、手」

小鳥「ぁ…………ゴ、ゴメンなさい」ギュッ

P「春香じゃないんですから、気をつけてくださいよ」

小鳥「は、はい……」


小鳥「…………」

P「………あの〜小鳥さん?」

小鳥「へ?」

P「そろそろ手を離してもらってもいいですか?」

小鳥「あぁゴメンなさい!」

P「さーて、成就の間……と」

小鳥「こう堂々と『成就の間』って書かれてると、入るのが恥ずかしくなっちゃいますね」

P「あはは、確かにそうですね」

小鳥「とはいっても、入るしかないですけど」


小鳥「…………ぁ」


P「なんですか? 入り口の前で立ち止まらないでくださいよ」

小鳥「お、お布団が……」

P「布団がどうかしました?」

小鳥「一つです」

P「……え?」

小鳥「お布団が一つしかないです!」

P「…………」

P「とりあえず中に入りましょう」

ベッタベタだな

だがそれがいい

とりあえず中にいれましょう

P「多分アレですよ、間違えて一つしか用意しなかっただけで……」

P「押入れとかに入ったままなんですよ……ほら!」

P「…………ない」

小鳥「じゃあコッチですかね……じゃん!」

小鳥「…………ない」

P「…………」



P「いやぁ実は俺、イスじゃないと寝れないタチでしてねっ!」

P「ってことで小鳥さんは布団で寝てください!」

小鳥「いえ、プロデューサーさんは運転でお疲れでしょうから……どうぞ」

P「俺は平気ですよ。 ほら、こうしてイスを二つ並べて……よし」

P「おやすみなさーい」

小鳥「…………」

P「ぐぅ……ぐぅ………うん、これはいい寝心地だ」

小鳥「…………」

小鳥「……プロデューサーさん?」

P「なんですか? 早く寝てください」

小鳥「一緒に……」

P「え?」

小鳥「一緒に寝ましょう?」

P「なななに言ってるんですか! からかわないでくださいよ!」

小鳥「もうお風呂だって一緒に入ったんですから……ね?」

P「ね? と言われましても……」

小鳥「……嫌なんですか? 私と一緒に寝るの」

P「そんなこと……」

小鳥「そうですよね……嫌ですよね………ゴメンなさい……ぐすっ」

P「わ、わかりました! 寝ますからそんな顔して泣かないでください」

小鳥「よし、寝ましょう!」

P「涙出てへんのかいっ!」

小鳥「ふふっ♪」

小鳥「…………」

P「…………」

小鳥「……」

P「……」

小鳥「プロデューサーさん、もっとこっちに来てもいいですよ?」

P「いや、俺ここで最高にちょうどいいです」

小鳥「……身体が半分以上はみ出てるじゃないですか」

P「わ、わかりましたよ……」ゴソゴソ

小鳥(わっ……肩が当たって……)

P(マズイな……理性が吹っ飛んでしまいそうだ)


P「…………」

P(隣には誰も居ない……俺は一人で寝てる一人で寝てる一人で……)

小鳥「…………」

小鳥(ちょっとくらい……いいわよね)

小鳥「…………」

小鳥(えいっ!)


ムニュ


P「うひゃぁ!」

P「ちょ! なにやってンスか!」

小鳥「私、普段抱き枕使ってるので……こうしないと落ち着かないっていうか……」

P「……それ俺の腕なんですけど」

小鳥「でも最高にちょうどいいです」

P(なんかもう……腕に当たってる全てが柔らかい)

P(世の中にこんなに柔らかいものがあったなんて……)

小鳥(プロデューサーさん……結構ガッシリしてる……)

小鳥(なんだか……男の人って感じがして、すごく素敵)

P「…………」

P(腕がトロけそうだ……)

もう一押し!

経験上、腕を抱かれたまま寝られると
手首がちょうど相手の股間辺りにいってしまうので、手の置き所に困る

小鳥「…………」モゾモゾ

P(手は内腿に飲み込まれてるし……)

P(手の甲に当たる部分が、一段とあたたかい……)クイッ

小鳥「……ぁん」ビクッ

P「うわぁスミマセン!」

小鳥「い、いえ……ちょっとビックリしただけですから……」

小鳥「それに………こうしてると、安心します」

P「そ、そうですか」

小鳥「…………」

P「…………」

小鳥「あの……迷惑ですか?」

P「いやいや! そんなことはないですよ」グイッ

小鳥「……んっ」ビクッ

P「あぁゴメンなさい!」

小鳥「こ、こちらこそ……」

小鳥「プロデューサーさん」

P「はい」

小鳥「私……今すっごく嬉しいです」

P「えっ?」

小鳥「二人きりで旅館に来ることもそうですし……」

P「…………」

小鳥「泊まるのが同じ部屋になったことも、一緒にお風呂に入ったことも」

小鳥「そして、今こうなってるのも……嬉しいです」

P「…………」

小鳥「この部屋のお話が本当ならいいなぁーって……そう思ってます」

小鳥「プロデューサーさんは?」

P「お、俺……俺は………」

P「…………」

小鳥「…………」

P「小鳥さん」

小鳥「は、はい……」

P「俺は……この成就の間も、今日お参りした縁結びの神社も……」

P「全て迷信だと思っていますし、小鳥さんにも……そう思ってほしいです」

小鳥「……えっ」

P「つまり……その………」

小鳥「そうですよね………ゴメンなさい、私ったら……」

P「あっ…………」

小鳥「勝手に一人で舞い上がっちゃって……恥ずかしいな……」

P「いやっ、あの……」

小鳥「私イスで寝ますね! プロデューサーさんの疲れが取れないでしょうから!」

P「ま、待って!」

小鳥「……っ」

小鳥「手を……離してください」

P「嫌です」

小鳥「どうしてですか? 離してくださいよ」

P「話がまだ終わってないからです」

小鳥「もういい……もう聞きたくありません」

小鳥「これ以上、惨めな思いをさせないでください……」

P「お願いです……話を聞いてください」

小鳥「…………」


小鳥「わかりました」

P「ありがとうございます」

小鳥「いえ……」


P「……小鳥さん」

小鳥「はい」

P「よく聞いてください」

P「俺は…………」


P「小鳥さんのことが好きです!」


小鳥「……ぇ」

P「それはこの部屋に泊まったからでも、神社にお参りしたからでもなくて……」

P「ずっと前から……多分、初めて会った時から好きでした」

小鳥「うそ…………」

P「成就の間なんてのは抜きにした、俺の心からの気持ちです」

小鳥「プロデューサーさん……」

小鳥「…………」

P(……こ、小鳥さん………泣いてる……)

小鳥「あっやだ……えへへ………ぐすっ………涙が……」

P「…………」

小鳥「すん……ち、違うんでずよ? うれじくで…………えぐっ」

小鳥「……ひっく……ぐずっ………ふぇぇええぇえん!」

小鳥「ぐすん……わ、私も……ずっと好きで………」

小鳥「でも、私みたいなオバサン絶対ムリだって……思ってて」

P「そんなこと……」


小鳥「でも、よかったぁ……」

P「え?」

小鳥「プロデューサーさんのこと、諦めなくてよかった……」

小鳥「好きになって、よかったです」

P「俺だって、何度も諦めかけてたんですよ?」

小鳥「……どうしてですか?」

P「小鳥さんが、俺みたいな若造を相手にするわけないって……」

小鳥「若造だなんて……」

P「二人とも年齢を気にしてたんですね」

小鳥「……私のほうが若干惨めですけど」

P「そんなことないですよ」

小鳥「まさかプロデューサーさんに泣かされるなんてなぁ」

P「……すいません」

小鳥「いいんですよ、嬉し泣きですから!」

P(俺も泣きたいぐらい嬉しいんだけど)


小鳥「でもよく考えてみると……」

小鳥「結果的には、この部屋のご利益は本物だったってことになりますね」

P「そう思われても仕方がないですね。 ちょっと不本意ですけど」

小鳥「いいじゃないですか。 私はどんな形であっても、こうなれて嬉しいです」

P「それは俺だって同じですよ」

P「まさか自分に恋人が出来るなんて……しかもそれが小鳥さんだなんて……」

小鳥「そっかー恋人かぁ……ふふっ、夢みたい」

P「同感です」

小鳥「今まで苦汁を嘗めるどころか、ガブ飲みしてたんですから……」

小鳥「今日ぐらいは浮かれ気分でもいいですよね」

P「そうですね。 存分に浮かれましょう」

小鳥「ねぇプロデューサーさん?」

P「はい」

小鳥「この前したじゃないですか、恋人が出来たら何がしたいかって話」

P「えぇっと……そういえばしましたね」

小鳥「今まで出来なかったこと、たくさんしたいです。 プロデューサーさんと」

P「……はい」


小鳥「それで……さっそくなんですけどぉ」

小鳥「せっかく旅館に来てですよ? 一つの布団に二人で寝てるんですから……」

P「……ん?」

小鳥「やっぱりこう……するべきことがあると思うんです」

P「えーっと、それっていうのは……」

小鳥「い、言わせないでくださいよ」

P「…………」

P「わ、わかりました……」

P「それじゃ……恥ずかしいので目を瞑ってくれませんか?」

小鳥「……はい」

P「…………」


チュッ


小鳥「んっ……」

P「い、今はこれが精一杯」

小鳥「……う〜ん」

P「あからさまに不満そうですね」

小鳥「いいですよ、今日はこれで許してあげます」

小鳥「こんな時にルパンのモノマネをしたことも、スルーしてあげますよ」

P「スルーしてないじゃないですか」

小鳥「えへへ」

小鳥「キスだけだった代わりに、今夜はプロデューサーさんを抱き枕にしますね!」

P「えー」

小鳥「そのくらいいいでしょ? だって恋人になったんですもん!」

P「……わかりましたよ」

小鳥「へへっ、やーりぃ!」

P「真の真似ですか?」

小鳥「あっわかりました?」

P「声はともかく、セリフでわかりますよ」

小鳥「なーんだ」


P「さて、そろそろ寝ましょう」

小鳥「そうですね、おやすみなさーい」

P「おやすみなさい」

P「…………」

P(俺、今夜は寝れないだろうな……肉体的にも精神的にも)


チュンチュン

小鳥「うぅーん……プロデューサーさ〜ん」

P「…………」

小鳥「新しい体位の発明……ですかぁ………ムニャムニャ」

P(結局一睡も出来なかった………そして隣には寝言をのたまう小鳥さん)

小鳥「いやっ! そんな……繋がったままジャーマンスープレックスだなんてぇー」

P(なんつー夢を見とるんだこの事務員は……)

小鳥「…………ぅん? あっ! おはようございます」

P「おはようございます」

小鳥「眠れました?」

P「えぇ、それはもうグッスリ」

小鳥「そうですか、よかった」

P「………あふぅ」

小鳥「ホントに眠れました?」

P「まぁ……はい」

女将「本日はご宿泊頂きありがとうございました」

P「いえいえこちらこそ、ありがとうございました」

女将「あの……いかがだったでしょう?」

小鳥「とっても素晴らしかったです!」

P「これならみんなも喜ぶと思いますよ」

女将「まぁ嬉しい! お待ちしておりますね、プロデューサーさん」

P「は、はい……あははは」

小鳥「…………」


ギューッ


P「あいたたたた! 小鳥さん足踏んでます!」

小鳥「あーらゴメンなさい、プロデューサーさん!」

P「はぁ〜、千切れるかと思った」

小鳥「ふんっ!」

小鳥(浮気者……)


慰安旅行当日

P「ふぅ……着いたー」

小鳥「運転お疲れ様でした」

美希「ハニー疲れたでしょ? 早く一緒にお風呂入ろー」

春香「混浴ですよ、混浴!」

P「だから一緒には入らないって言ってるだろ!」


やよい「大勢で入ったほうが楽しいかなぁーって……」

響「ウチは動物達もみんな一緒に入るゾ! だからプロデューサーも……」

貴音「『湯の辞儀は水になる』という諺もございます」

亜美「そうそう! 『据え膳は嫁に食わすな』って言うっしょ?」

真美「ねぇ亜美……それってなんかチガくない?」


小鳥「ほらね、こうなるって言ったじゃないですか」

P「ぐぬぬ……」

雪歩「ねぇ真ちゃん」

真「どうしたの?」

雪歩「私……真ちゃんと一緒に入りたいな……」

真「あ、あぁそう……」

あずさ「それじゃ、私もお邪魔しようかしらぁ」

伊織「じゃあ私もそん時に入るわ。 大勢でなんて暑苦しい」

千早「…………」

伊織「千早、アンタもそうする?」

千早「ありがとう……でも私は絶ッ対に一人で入るわ」

あずさ「あら千早ちゃん、どうして?」

千早「…………」

あずさ「一緒に入りましょうよ、ね?」

千早「……くっ」

あずさ「???」

P(まさか本当に小鳥さんの言ったとおりになるとは……)

P「しゃ、社長からも何か言ってやってください」

社長「うむ………ウォッホン!」

社長「あー諸君、彼は君たちと一緒に入るわけにはいかないのだよ」

P「そうそう」

社長「………私と入るんだからね」

P「ほらな? 社長もこう仰って…………は?」

社長「いやぁー私もキミとはゆっくり話がしたかったんだよ」

社長「男同士、裸の付き合いと行こうじゃないか! はっはっはー!」

P「…………はい」

小鳥「…………」

小鳥(やっぱり……プロデューサーさんが攻めで……社長が受けよね)

律子「どうしたんですか? 涎出てますよ」

小鳥「いえ………ジュル……なんでもないです」


律子(ホントはこの宿、混浴じゃないんだけど……)

女将「ようこそおいでくださいました。 お部屋は六つ用意してございます」

春香「律子さん、部屋割りは?」

律子「どう分かれるは自由だけど……」

律子「とにかくアイドル達と私を入れた13名で、4部屋を使うわよ」

亜美「うわぁーい! じゃあもう勝手に分かれていい?」

律子「いいけど……揉めないようにしてね」

真美「ダイジョブだよりっちゃん! ウチらみんな……」

亜美「オカマだもんげ!」

真「亜美、それじゃ意味が違うよ」

亜美「あそっか!」

真「……亜美ぃ?」

亜美「な、何も言ってないっしょ! 被害モーソーだよ!」

真「これはオシオキが必要なようだねぇ……えいっ!」

亜美「きゃはは! くすぐったい〜! ちょっと手つきがおかしいんでないかい真さん!」

律子「さっそく揉めてるじゃないの……」

春香(千早ちゃんと一緒がいい千早ちゃんと一緒がいい千早ちゃんと……)

千早(高槻さんと一緒がいい高槻さんと一緒がいい高槻さんと……)

雪歩(真ちゃんと一緒がいい真ちゃんと一緒がいい真ちゃんと……)

やよい「三人とも、どうしたんですか? なんだか目が怖いです!」

伊織「放っときましょ。 やよい、部屋に行くわよ」

やよい「あっ、待ってよ伊織ちゃん!」


響「貴音と同じ部屋がいいな」

貴音「ではそうしましょう」

あずさ「じゃあ私も良いかしら?」

貴音「えぇぜひ」

美希(ミキ、ハニーと同じ部屋が良かったなぁ〜)

律子「ほらほら、部屋はあとで変わってもいいんだから、早く行って頂戴」


『はーい!!』


小鳥「うふふ、みんな元気ね」

P「律子、ちょっとまってくれ」

律子「なんですか?」

P「残り2部屋だから……俺と社長が同じ部屋ってこと?」

小鳥「えっ……私一人ですか?」

女将「いえ、社長様がお一人となっております」

P「あっ、じゃあ小鳥さんもアイドル達と一緒ですね」

P「そうしないとオカシクなりますから」

小鳥「ですよね」

律子「いやいやオカシクないでしょ」

P・小鳥「「……は?」」

律子「残りが2部屋でしょう?」

P「そうだよ」

律子「で、社長が1部屋使って……うん、オカシクないですよ」

P「いやだから、そうなると俺と小鳥さんが同じ部屋に……」

小鳥「……えっ」

律子「…………」ニヤニヤ

P「な、なんだよ律子、急にニヤニヤして……」

女将「…………」ニヤニヤ

社長「…………」ニヤニヤ

P「お、女将に社長まで……いったい何が………」

P「…………あっ」



P「あーーーーっ!!!」



小鳥「ど、どうしたんですか!?」

P「まさか……まさかぁ!」

P「この前、部屋が一つしか空いてなくて、しかも成就の間だったのは……」

女将「あれは……偶然が重なったと申しましょうか……」

P(う〜ん……まぁそう言えなくもないか)

P「じゃあ女将!」

女将「はい」

P「ここの温泉って混浴ですよね?」

女将「いえ、こちらのお風呂は男女別となっております」

小鳥「え? だってこの前……」

律子「えー? もしかして一緒に入ったんですかー?」

小鳥「えぇ!?」

小鳥「あっいや……えと…………はい」

P「…………」

P「もういい……もうわかった」

小鳥「何がわかったんですか?」

P「俺たちは三人の策略にまんまとハマって」

P「恋愛成就の効果を、その身をもって証明したってことです……」

小鳥「う〜ん?」

律子「ということは……やっぱりお付き合いすることになったんですね?」

P「げっ!」

P(やべ……言っちゃた)

律子「いやまぁ、分かってましたけどね」

小鳥「あの、私だけ理解できてないんですけど……?」

P「仕組まれてたんですよ……あの日は」

小鳥「あの日って……二人で泊まった日?」

P「そうです」

P「部屋が一つだったことも、その……布団が一つだったことも。 混浴だってそうです」

小鳥「…………」



小鳥「えーーーーーっ!?」

小鳥「い、いやぁ私もオカシイと思ったんですよねぇー」

P「そのわりに何も言わなかったじゃないですか」

小鳥「それはほら、あわよくばって気持ちがあったから……」

律子(あったんだ……)

律子「ってことで、お二人が同じ部屋なのは当然のことでしょ?」

小鳥「そしたら社長だけ一人ですか?」

社長「私は……女将と一緒に寝ようかな?」

女将「まぁ社長さんったら、お上手」

社長「あっはっはっはー」

P「それで……女将さん? 俺たちの部屋は……」

女将「前回と同じ、成就の間でございます」

P「またですか……」

小鳥「…………」

律子「どうしたんですか? 小鳥さん」

小鳥「い、いえ…………」

小鳥「あのぅ……女将さん?」

女将「はい、どうなさいました?」

小鳥「一つお尋ねしたいことがあるんですけど……」

P「……先に言っておきますけどね小鳥さん」

P「布団を一つにしてくれってお願いはダメですよ」

小鳥「そうじゃなくて……」

小鳥「あっ、それいいですねプロデューサーさん!」

P「ダメですって! 俺また寝れないじゃないですか!」

小鳥「あれ? グッスリ寝たって言ってませんでしたっけ?」

P「あの状況で寝れるわけないでしょ!」

小鳥「そうだったんですか……」

女将「あの……お尋ねしたいことというのは……?」

小鳥「あぁ、そうだった……」

小鳥「えーっとですね…………その…………」

P(なんだろう……)

小鳥「あのぅ…………さ…………」



小鳥「授かりの間とかって……ないんですか?」



女将「えっ」

律子「えっ」

社長「えっ」

P「えっ」

小鳥「えっ」

P(なにそれひわい)


小鳥(私……なにか変なこと言ったかしら……?)

小鳥「な、なーんちゃて……」

P「やだなぁ小鳥さん! なに言ってるんですか!」

社長「音無君! 変な冗談はよし子ちゃんだぞ」

律子「そうそう! 女将が困ってるじゃないですか。 ねぇ?」

女将「…………」

律子「女将さん?」

女将「おほほほほ………成就の間があるからって……」

女将「なんですか? 授かり……の間、ですか?」

女将「そんなものが当旅館に……」







女将「……ありますよ」

P・社長・律子・小鳥「あるんかいっ!」


おわり

ありがとうございました

授かりの間の描写がまだピヨ


ベタだけど良かった、いや王道だからこそ良かった

乙ピヨ


やっぱピヨちゃんは正妻だわ
っていうか、ピヨちゃん普通にエロいよな
結婚したい

平成生まれだが、神田川は名曲だと思う
赤い手ぬぐいをマフラーにして待ってれば完璧な神田川だった
おつでした

小鳥さんは大正妻

下半身が寒いピヨ

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