【アリスギア】アクトレスとなし崩し的にそういう関係になっちゃったお話 (7)

ホテルのベッドに、一糸纏わぬ男女のペア。
……昨夜の記憶も、ハッキリと覚えている。

「はぁー……」

カーテンの隙間から溢れる朝陽を目覚ましに、四谷ゆみ(24)は天井を見つめながら深い溜息を吐いた。
寝惚け眼で隣に視線を向ければ、そこには昨夜致した相手。
成子坂製作所の柱と言っても過言ではない隊長が、安らかな寝顔を晒していた。

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ヤッてしまった。勢いで。
致してしまった。流れのままに。
彼女としては、そういう関係になった事に後悔や嫌悪感はないが――それでも、ムードというものは大事にしたいわけで。

「……ふふ」

思わず、片手で目を覆おうとして。
昨夜から彼と繋いだままの指先に、頬が緩んだ。

「……私って、こんなにチョロい女だったかしら」

「……zzz……」

ちなみに、こうなったきっかけはとても単純で。
彼が珍しく思い詰めたような表情をしている気がしたから、ゆみが酒飲みがてら二人っきりでのお悩み相談会を持ちかけたというモノ。
最初は口を噤んでいた彼も、少しアルコールが入ると、本音を吐露してくれた。

『……なんかさ、俺なんかでいいのかなって……』


その内容は、成長を続ける成子坂の隊長が自分なんかでいいのか――と彼にしては珍しく弱気な内容。
普段はシタラと一緒におちゃらけたり、ふざけてアクトレスに求婚するばかりの彼が見せた弱い一面。

自分だけに見せた表情に、彼女は傾いて。


『ゆみには、いつも助けられてるよ』

『……こんな事言えるのも、ゆみ、だけだし……』


その言葉に、彼女は落ちた。

「……責任、取りなさいよ……?」


重ねて言うが、彼女に後悔はない。
彼のことは元から憎からず思っていたし、きちんとした場所で本気の求婚を受けたのならば迷いはなかっただろう。

だけど、今回は半ば酒の勢いで関係を持ってしまった。

その行為に後悔は無くとも、不安は残る。
もしも彼が『昨夜のことは忘れてくれ』だなんて言ったら――どうするかわからない。
想像以上に、彼女は彼に入れ込んでいた。

「はぁ……あ、電話……」


色々な想像が脳裏を過る中で、彼女を現実に呼び戻す着信音が室内に響く。
液晶に映る名前は同じ事務所のアクトレス。

乙女(24)でもありながらプロでもある彼女は、名残惜しげに彼と繋いでいた指を話すと枕元の端末に手を伸ばした。

「うん、そうね。悪くないと思うけど……きゃっ!?」


電話越しの相談を受けている最中、突如背筋にゾクゾクとした感覚が走り、自分でも驚く程に甲高い声をあげてしまう。
振り向けば、そこにはイタズラっぽく笑う彼。
どうやら、指先でゆみの背中をくすぐる様になぞったらしたい。

恐らくたった今目を覚ましたであろう彼には昨夜の落ち込んでいた姿は影もなく、ゆみは少しだけ眉根を寄せた。

「アンタねぇ――んっ」

文句の一つでも言ってやろうと開いた口は、強引に唇を重ねられることで塞がれる。
たっぷり数十秒過ぎてから、どちらからともなく唇を離すと、彼は微笑みながらこう言った。


"おはよう、ゆみ"


その、いつもと変わらない様子に彼女は少し馬鹿らしくなって、

「……ムードくらい、考えなさいっての」

釣られたように、笑った。


電話は、勿論切り忘れていた。

充電溜まったので中断っす
多分まだ続くっす

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