雲龍「魔法の指輪」 (3)
時計が十一時になったことを知らせてきた。わたしは作業の手をふと止めて、いや、この一枚分だけは終わらせてしまおうと、A4の封筒の裏側へ筆を走らせる。
油紙をぴーっと外して、皺のよらないように、折り目のつかないように、丁寧に接着。これが自分の姉妹に当てたものであれば神経も使わないとは思うけど、生憎相手は雲の上のお偉いさん。提督の代筆であるのだから猶更適当にはできない。
諸々の確認。送り先は防衛省。宛名は深海棲艦対策部の第二技術課、特務開発室。室長の丹原様まできちんと。よし。
技術課の第二は、確か火砲や魚雷以外の艤装を扱っている。そこの特務開発だから、きっと新規で生産されたなにかについて。うちの泊地も随分とひとが増えてきたのでそれについての具申かもしれない。
そういえば、潜水艦のコたちが、今の艤装は泳ぎにくいと言っていた。それだろうか。
「あ」
表面の左上、切手を貼るのを忘れていた。いや、違う。そういえば切手は切らしていたから、あとで出すときにコンビニで買って、余分に沢山ストックしておかないと。
きたい
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