「私のお兄ちゃんになってくれませんか?」
我ながら頭が沸いてるお願いだったとは思う。
口にして、後悔しながらも、開き直ることに。
うん、大丈夫。断られたら、冗談だと言おう。
でも、私が所属してる文芸部の先輩は頷いて。
「いいけど、お兄ちゃんってどういうこと?」
快く承諾してくれた。ほっとして、説明する。
「私のことを、目一杯甘やかしてください!」
「ほほう。それがお兄ちゃんの役目なのか?」
「はい! 先輩にしか出来ない大役なんです!」
熱意を込めて懇願すると先輩は優しく笑って。
「わかった。謹んでその役目を引き受けるよ」
こうしてひとりっ子の私に義理の兄が出来た。
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お兄ちゃんは、何でもお願いを聞いてくれる。
「お兄ちゃん!」
「おや、なんだい?」
「膝の上に乗ってもいい?」
「うん、いいよ」
「やたー!」
先輩の膝の上で、本を読むのが日常になった。
「お兄ちゃん、喉乾いた!」
「はい、お飲み」
「ありがとー!」
甘いジュースを買ってくれた。代金は後払い。
「お兄ちゃん、手繋いで帰ろっ!」
「うん、いいよ」
「えへへ。お兄ちゃんの手、おっきいね!」
2人きりの文芸部内で、兄妹ごっこを満喫した。
しばらくそんな日々を送って、質問してみる。
「お兄ちゃん」
「ん? どうした?」
「お兄ちゃんは、私が何をしても怒らない?」
「ああ、もちろんだとも」
「どうして?」
「そりゃあ、大切な妹だからね」
興味本位で尋ねてみたがちょっと不満だった。
「でも、悪いことをしたら怒って欲しいな」
「怒られたいのかい?」
「うん、たまには怒って欲しい」
「そう言われても、怒る理由がないからなぁ」
私の大好きな先輩は穏やかで優しい人だった。
「じゃあ、理由を作ってあげる」
「えっ?」
「怒る理由が必要なんでしょ?」
理不尽だと思う。でもたまには叱って欲しい。
「だから、これからちょっと悪い子になるね」
膝の上でにやりと笑うと先輩は狼狽えた様子。
「な、何をするつもりなんだい?」
冷や汗を流す優しい兄へ私は高らかに告げた。
「ここで、おしっこをします!」
「は?」
「お兄ちゃんの膝の上で漏らしちゃいます!」
「そ、そんな……」
引き攣った先輩の表情が恐怖を物語っていた。
「嫌なの?」
「べ、別に嫌ってわけじゃ……」
「それなら、漏らしていい?」
ギリギリの駆け引き。とってもスリリングだ。
「お、女の子が漏らすのはどうかと思う!」
「でも、女の子だっておしっこするんだよ?」
「そ、それは、そうだけどさ……」
先輩はちょっと優しすぎる。だからチョロい。
「じゃあ、私は一生おしっこ出来ないの?」
「そうは言ってないよ。でも、時と場所を」
「私はお兄ちゃんの膝の上で、今したいの」
先輩の正論を遮って、私は暴論を突きつける。
「妹の膀胱がどうなってもいいの?」
「違うよ。ただ、トイレでしたほうが……」
「トイレにお化けが出たらどうするの?」
もう滅茶苦茶だ。自覚はある。でも、愉しい。
「お、お化けなんて出ないよ」
「もしも万が一、出たらどうするの?」
「その時は、お兄ちゃんが助けてあげるよ!」
「ふーん。じゃあ、一緒に女子トイレ入る?」
「えっ?」
キョトンとしてる。可愛い。キスしたくなる。
「お兄ちゃんって、そういう趣味があるの?」
「ち、違うんだ! 誤解だよ!」
「なら、ここでするしかないよね?」
にっこり笑うと、先輩は青ざめた。もう一押し
「お兄ちゃん……お願い」
「うっ……はあ。わかったよ」
「やたー! ありがとー! お兄ちゃん大好き!」
やれやれ。兄の行く末が心配になっちゃうよ。
「覚悟はいい?」
「ああ! どんとこい!」
「じゃあ、ぎゅっとして」
膝の上で、向かい合って、発射準備を整える。
「これでいいか?」
「もっと強く!」
「このくらいか?」
「うん、いい感じに圧迫されて……出そう」
ブルリと身震いすると、なぜか抱く力が緩む。
「や、やっぱり考え直さないか?」
「はあ? 今更何言ってんの?」
「だ、だって、これはあまりにも……!」
「うっさい! いいから黙って私を抱けっ!!」
「ひっ!」
おっと。つい本性が。可愛くしておかないと。
「ごめんね、お兄ちゃん。嫌いになった?」
「いや、ちょっとびっくりしたというか……」
「やっぱり私って、性格悪いよね……くすんっ」
「な、泣かないで! 全然平気だから!」
「ほんと? 性悪とか、腹黒とか思ってない?」
「思ってないよ! ただひたすらに可愛いよ!」
「それなら良かった! えへへ、嬉しいな~!」
嘘泣きをやめて、満面の笑み。必須スキルだ。
「あ、そろそろほんとにヤバいかも」
「……出そうなのか?」
「もぉ~女の子にそんなこと聞いちゃダメ!」
「す、すまん」
「でも特別に教えてあげるね。もう出ちゃう」
「あ、そうすか」
「何その反応。バカなの? もっと喜んでよ」
「わ、わーい! 嬉しいなぁー!?」
全てを諦めた兄は泣きながら万歳して喜んだ。
「HEY! お兄ちゃんYO!」
「なんだYO! 妹YO!」
「おしっこ漏れそうだZE!」
「YOU! 漏らしちゃいなYO!」
「オーケーBABY! イッツSHOW TIME!」
ラッパーも真っ青なノリで、その時を迎える。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「こんな妹でごめんね?」
「馬鹿、怒るぞ?」
「えへへ。怒ってくれると……嬉しいな」
なんてことをほざきながら、しょわしょわ~。
「んんっ」
「……マジかよ」
よもや本当に漏らすとは思ってなかった様子。
「ふぅ……出ちゃった」
「お疲れ様でした」
「どうだった?」
「いや、どうと言われても……」
「興奮した?」
「興奮する要素なんてあったのか?」
なんだ、この白けた反応は。くっそつまらん。
「興奮してよ」
「はい?」
「妹のおしっこに興奮して!」
「そ、そんなこと言われても……」
妹の意地に賭けて、必ず興奮させてみせよう。
「パンツ脱がして」
「は?」
「痒くなっちゃうでしょ? 早くして」
膝から立ち上がり、パンツを脱がせろと要求。
「わ、わかったよ」
「目閉じて」
「そんな無茶な……」
「私が誘導するから、任せて」
兄の手をスカートの中へ誘う。ドキドキした。
「ちょっとでも変なことしたら通報するから」
「……今更何言ってんだこいつ」
「ああん? なんか文句あんのかっ!?」
「いえっ! ありません!」
いけない。態度の悪い兄についキレちゃった。
「私だって……恥ずかしいんだから」
「そうか。そうだよな……ごめん」
「ううん。私が悪い子だからいけないの」
「悪い子なんかじゃないよ。良い子だよ」
「……ありがと」
本当にこの人は。どこまでお人好しなんだろ。
「お兄ちゃん、パンツのゴム、わかる?」
「あ、ああ……これか?」
「うん。それに指をかけて、下ろして」
「わかった……いくぞ。そぉいっ!」
「ふぁっ!?」
まさか、一気に下されるとは、思わなかった。
「きゃああああああああああああっ!!!!」
「ど、どうした!? 大丈夫かっ!?」
「ふぇっ!? 見ちゃだめええええっ!?!!」
悲鳴に驚いて、目を開ける兄。私は錯乱して。
「あっ」
ちょろろんっと、残ってたおしっこが漏れた。
「フハッ!」
なに今の笑い声? 私じゃない。まさか先輩?
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
そのまさかだった。先輩が盛大に嗤っている。
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「……ないで」
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「……わ、ないで」
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「わ、笑わないでよ! お兄ちゃんっ!?!!」
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
もう駄目。私の声は届かない。先輩が壊れた。
「うぅっ……ぐすんっ」
「……あれっ? ど、どうしたんだ!?」
嗤われて、羞恥に苛まれた私が泣いていると。
「どこか痛いのか!? 具合が悪いのか!?」
優しい兄が帰って来てすごく心配してくれた。
「……お兄ちゃんの、バカ」
「ごめん」
「……もう、どこにもいかないで」
「ああ、わかったよ。約束する」
「指切り!」
「はいはい」
私たちは、ゆびきりげんまんをして、仲直り。
「もう平気か?」
「抱っこ」
「いや、でも下着穿いてないし……」
「お兄ちゃんも脱いで」
「そ、それはさすがに……!」
「妹の言うことが聞けないの?」
「はい……わかりました」
お兄ちゃんのズボンも脱がせて、膝に乗った。
「妹に欲情したらダメだからね?」
「そう言われてもこればかりは……」
「我慢しないと全年齢対象じゃなくなるよ?」
「そ、それは困る!」
「お兄ちゃんは良い子の皆のお手本でしょ?」
「ああ! もちろんだよ! コンチクショー!」
血の涙を流しながら兄は理性を保った。偉い。
「さっき、愉悦を感じてたよね?」
「な、なんのことやら」
「とぼけんな! がぶっ!」
「痛いっ!? か、噛まないでくれ!!」
私が首筋に噛みつくとお兄ちゃんは白状した。
「ちょ、ちょっとだけ……」
「あんなに盛大に哄笑してたのに?」
「まあ、それなりに……」
「はっきりしろ!」
「はい! 悦に浸っておりました!」
怒鳴ると、認めた。困ったお兄ちゃんである。
「妹のおしっこに愉悦を感じたの?」
「……はい」
「おしっこに愉悦を感じるのは変態だけだよ」
「ごめんなさい」
「お兄ちゃんは変態さんだったの?」
「そ、そんなつもりは……」
「違うって、断言できる?」
「そう言われると……そうかも、しれません」
「そうかも、じゃなくて、そうなんだよ」
噛んで含めるように、兄は変態だと教え込む。
「まさか、お兄ちゃんが変態だったなんて」
「き、嫌わないでくれ!」
涙目で懇願する兄。さて、どう料理しようか。
「あーあ。幻滅しちゃったな」
「うぅ……申し訳ない」
「ちゃんと反省してる?」
「それはもう、海よりも深く反省してる」
達者な口をキスで黙らせたい。でもまだ早い。
「それなら、誠意を見せて」
「誠意?」
「この場で脱糞して」
すごい発言だ。自分でもびっくり。兄も動揺。
「そんなこと出来るわけないだろう!?」
「大丈夫。お兄ちゃんならきっと出来る」
「無理だよ……俺には出来っこない」
どうも自信がない様子の兄を優しく抱擁する。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんは強いもん」
「俺は弱い……妹を叱ることさえ出来ない」
「優しいもんね。でも、勇気を出して」
「勇気?」
「そう。お尻から、勇気を出すの」
もう何を言ってるんだろうね、私は。だけど。
「お兄ちゃんの!」
「ん?」
「ちょっといいとこ見てみたい!」
「お?」
「そーれ! 脱糞! 脱糞! 脱糞! 脱糞!」
先輩のいいところが見たくてコールをすると。
「よしきた! 任せとけ!」
「さっすが私のお兄ちゃん!」
「よく見てろよ、これが兄ちゃんの本気だ!」
あっさり乗せられて、ぶりゅっ! と漏らした。
「フハッ!」
ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅっ!!!!
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
兄の便に歓喜して、今度は私が愉悦に浸った。
「ふぅ……これで満足か?」
「んーん。まだ不満が残ったまま」
「いったい何が不満なんだ?」
どうやら先輩は当初の目的を忘れている様子。
「結局、怒ってくれなかったね」
「あっ……そう言えば、そうだったな」
「頑張って悪い子になったのに……酷いよ」
まあ、本当に酷いのはどっちだって話だけど。
「……すまん」
責任を感じている兄。つい意地悪してしまう。
「……今度は他の男の人の前で漏らそうかな」
ほんの、冗談のつもりだった。しかし、兄は。
「駄目だっ!」
これまで見たことのない剣幕で、私を叱った。
「せ、先輩……?」
「絶対に駄目だ! それだけは許さん!」
「じょ、冗談ですよ、先輩」
あまりの迫力に、思わず素に戻ってしまった。
「冗談?」
「はい、冗談です。だから安心してください」
「なんだ……それなら、良かった」
心底ほっとしたような安堵の笑みにときめく。
「もう、兄妹ごっこは終わりにしましょう」
目的は達成。これにてごっこ遊びは終わりだ。
「ど、どうしたんだ、急に?」
「もともと、先輩を試してたんです」
「どういうことだ?」
「先輩の私に対する気持ちを確かめたくて……」
「俺の気持ちを?」
「はい、妹に対しての愛情かと思いまして」
それを確かめたかった。だから、妹になった。
「先輩の妹になれて、毎日楽しかったです」
「俺も、楽しかったよ」
「でも私は、同時に、苦しくて……」
異性として見て貰えないことが、悲しかった。
「だから、色々と無茶を言ってすみません」
「謝るなよ。怒るぞ?」
「怒って、くれますか……?」
「当たり前だ。今だって俺は怒ってる」
「えっ?」
ポカンとする私に、先輩は打ち明けてくれた。
「これまでどれだけ我慢したか、わかるか?」
「えっ? えっ?」
「妹だからと、必死に気持ちを抑えてたんだ」
なにそれ。初耳。やばい。嬉しい。泣きそう。
「もう、我慢しなくて、いいですよ」
「だったらお前も、もう我慢しなくていい」
その優しい笑顔はずるい。想いが口をついた。
「……好き」
「ああ、俺も好きだよ」
「妹としてではなく、異性として、好きです」
「俺も兄としてじゃなく、異性として好きだ」
こうして私たちは恋人同士となりましたとさ。
【後輩が妹になって漏らした結果】
FIN
なんでみんなこういうときいつも
フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!
って嗤うん?
おつおつ
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