天使と悪魔のどちらかを選べと言われれば、大抵の人間は天使のほうを選ぶだろうが、それは悪魔に対するイメージが悪すぎるからだと思う。
だから、こんな条件を付け足してみよう。
美少女天使と美少女悪魔ならばどちらを選ぶ?
悪魔「当然、オレ様だよな?」
天使「わたくしはあなた様を信じています」
こうなると、非常に悩ましい問いかけである。
悪魔は痩せ型で小柄なかわいい系。髪は黒髪。
天使は清楚な巨乳で綺麗系。髪は金髪ロング。
甲乙はつけ難く、どちらも捨てがたい。故に。
悪魔「はあ? どっちも? ふざけんな!」
天使「ふふふっ。面白い冗談ですねぇ」
選ぶことが出来ずに怒りを買ってしまった。
そして怒りと共にしばらく2人を飼うことに。
なんでも、魂を回収しなければ帰れない様子。
悪魔「今なら優しく食ってやるぜ?」
天使「今なら優しく抱いて差し上げますよ」
まあ、とりあえず、保留ってことで。
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天使「夕食はわたくしにお任せください」
家事が得意な天使が夕飯を作っている隙に。
悪魔「今のうちに風呂に入ろうぜ!」
満面の笑みで八重歯を輝かせた悪魔と入浴。
悪魔「髪洗って!」
言われた通りにショートヘアをシャカシャカ。
悪魔「んじゃ、次はオレ様が洗ってやんよ!」
悪魔の癖に、妙に親切だなと思っていると。
悪魔「対価に見合った見返りを授けるだけだ」
なるほど、取り引きか。悪魔らしい発想だ。
悪魔「お前は何が欲しいんだ?」
そう言われても、特に思いつかないな。
悪魔「ちぇっ。んじゃあ、考えとけよ!」
ザバッと湯をかけられて、泡を流してくれた。
天使「早くも仲良くなったようですね」
湯気が立ち昇る俺たちを見て、天使は微笑む。
柔らかな微笑だが、どこか寒々しい気がする。
なんとなく、目が笑っていないように見えた。
天使「怒ってませんよ? ええ、ちっとも」
それなら良かったと安心する馬鹿ではない。
天使「わたくしとも入って頂けますね?」
流石にのぼせそうだ。色々な意味で。
天使「不埒なことはいけませんよ?」
前以て釘を刺されつつも、とりあえず食事だ。
天使「お口に合うでしょうか?」
献立は肉じゃが。暖かくて、とても美味しい。
悪魔「ニンジンと豚肉をトレードしようぜ!」
どうやら悪魔はニンジンが嫌い。子供っぽい。
対価に見合わない取り引きを持ちかけられた。
でも可愛かったから交換してやろうとすると。
天使「甘やかしてはダメです!」
悪魔「なんだよ! 邪魔すんなっ!」
天使「何でも食べないと大きくなれませんよ」
悪魔「いーもん! このほうが需要あるし!」
たしかに一理あると思ってしまった。
どうかこのままチビっ子でいて欲しい。
そんな下心を見透かした、天使がため息。
天使「わたくしが大人の魅力を教えましょう」
それはなんとも、興味を惹かれる提案だった。
天使「気持ちいいですか?」
すごく気持ちいい。最高だ。
天使「特別ですからね?」
そう言って、タオルを使わずにごしごし。
場所は再び浴室。背中を洗って貰っていた。
ちなみに悪魔は残ってニンジンと格闘中。
天使「本当はこんなこといけないんですよ?」
たしかに、天使のイメージとはちょっと違う。
天使「わたくしにも意地がありますので」
どうも悪魔に負けたくない様子。当たり前か。
天使「地獄は恐ろしい場所なんです」
天使曰く、地獄は苦痛に満ちた場所らしい。
天使「だからどうか、天国に来てください」
対して天国は、お昼寝し放題な場所らしい。
天使「その為ならば、なんでもしますので」
覚悟を決めた様子の天使。しかし、まだ早い。
天使「わたくしに興味がないのですか?」
良い子だとは思う。巨乳で美乳で色も綺麗。
天使「胸のことばかり。もう知りませんっ!」
とか言いつつ、共に湯船に浸りのんびりした。
悪魔「眠くなっちゃった」
天使「それではそろそろ寝ましょうか」
眠たげに目をこする悪魔。
パーカー付きの寝巻きを着ていて、かわいい。
そんな悪魔の手を引く天使。
シルクのネグリジェ姿が扇情的で、美しい。
悪魔「オレ様、右がいい」
天使「ではわたくしは左隣で」
川の字になって、横になる。両手に花だ。
天使「手を繋いでもよろしいですか?」
断る理由はない。天使と手を繋ぐ。温かい。
天使「まだ決心はつきませんか?」
もう少し、このまま。今日はもう眠くて。
天使「ふふっ。いい夢が見れますように」
柔らかな声と感触に包まれて、俺は眠った。
悪魔「おい! 起きろ!」
突然走った、頬への衝撃。悪魔の仕業だ。
悪魔「へへっ。お楽しみはこれからだぜ?」
上に乗って、ペロリと舌なめずり。
闇夜に紅い瞳が怪しく光っている。
その眼で見下されると、ゾクゾクした。
悪魔「寝るわけねーだろ。夜行性だからな」
まあ、たしかに悪魔は夜行性かも知れない。
悪魔「狙い通り、天使の馬鹿はぐっすりだな」
左隣では天使の規則正しい寝息が聞こえる。
悪魔「さあ、オレ様を求めろ。叶えてやろう」
たぶん、望みは何でも叶えてくれるのだろう。
悪魔「その代わりに、魂を頂くけどな」
そんなに欲しいのなら、タダでやってもいい。
悪魔「だ、駄目だ! それは契約違反だ!」
慌てて拒否する悪魔。なんだからしくないな。
悪魔「だ、だって、一方的な享受は……」
紅い瞳を彷徨わせながら、悪魔は赤面して。
悪魔「……それは、愛だから、受け取れない」
どうやらこう見えて、意外と初心らしい。
悪魔「違うの! 悪魔はそういうものなの!」
思わず笑ってしまうと、悪魔は憤慨した様子。
悪魔「なんだよもう、子供扱いすんなよな!」
どう見ても子供なので、頭を撫でた。すると。
悪魔「……もっと」
一方的な享受は受け取れないんじゃないのか?
悪魔「これは添い寝の対価だからいいのっ!」
左様でございますか。なんとも都合がいいな。
悪魔が眠りにつくまで、頭を撫でてやった。
その次の日も、次の日も、何日でも撫でた。
毎日天使の手料理を食べて、お風呂に浸かり。
この関係がいつまでも続いて欲しかった、が。
天使「そろそろ、時間です」
悪魔「ああ、時間だ」
どうやら時間らしく、決断を迫られた。
悪魔「お前はどっちが」
天使「お好きですか?」
まるで昔の料理番組みたいな問いかけだな。
悪魔「オレ様は間違いなく、射止めた筈だ」
天使「わたくしも間違いなく鷲掴んだかと」
言葉通り、射止められて、鷲掴まれた。
悪魔はいたずら好きで、甘えん坊。
天使は理想の嫁で、ちょっと嫉妬深い。
可愛すぎる悪魔に心を射止められ。
天使の料理で胃を鷲掴みにされた。
そんな状態でどちらかを選ぶことは出来ない。
悪魔「チッ! なら、オレ様もう帰る!」
天使「わたくしも、もう待てませんので」
結局、天使と悪魔は愛想を尽かして、帰った。
悪魔「なーんちゃって! 帰るわけないだろ!」
ややあって、ひょっこり悪魔が現れた。
悪魔「寂しかったか? なら、オレ様が……」
食ってやると、そう続けようとしたのだろう。
悪魔「って、なんで泣いてんだよっ!? 」
しかし、こちらの様子を見て慌てて駆け寄る。
悪魔「どっか痛いのか!? 苦しいのか!?」
天使「どうなされたのですか!?」
悪魔「わかんねーけど、泣いてんだよ!」
悪魔の悲鳴を聞いて、天使まで戻って来た。
天使「大丈夫です。居なくなったりしません」
天使は優しく抱きしめて、宥めてくれた。
悪魔「なんだよ、寂しかっただけかよ」
天使「ふふっ。可愛いではありませんか」
悪魔「こんなんじゃ、地獄行きは無理だな」
天使「おや? あっさりと諦めるのですか?」
悪魔「お前だって、諦めるしかないだろうが」
天使「たしかに、寂しがり屋のようですしね」
悪魔「こいつにはオレ様たちが必要らしいな」
都合良く話が進んでいく。全ては計画通り。
なんて言っても、泣き顔では様にならないな。
とにかく、戻って来てくれて、嬉しかった。
天使「よもや、天使を誑かすなんて」
悪魔「よもや悪魔を手懐けるとはな」
呆れながらも感心されて、少し照れる。
天使「わたくしたちと離れたくない」
悪魔「オレ様たちも、離れたくない」
天使「それがあなた様の望みならば」
悪魔「叶えてやらなきゃ、名が廃る」
天使も悪魔も負けず嫌いな叶えたがり。
だからこそ、願うことはたったひとつ。
これからもずっと、一緒に過ごしたい。
天使「その願い、たしかに承りました」
悪魔「だが、願いには、対価が必要だ」
それぞれ魅力的な笑顔で対価を要求してきた。
天使「代わりに、たっぷり愛して頂きますね」
悪魔「代わりに、同じくらい、愛してやろう」
天使と悪魔、どちらかを選ぶなど愚問である。
【もしも天使と悪魔が美少女だったら】
FIN
誰か死神連れて来い
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