梨子「雨の日のお散歩」 (47)
千歌ちゃんルーム
梨子「で、そうなってX=745になるの。わかった?」
千歌「うーん、もう1回最初からお願い。ふわぁ~ぁ」ノビー
梨子「もう、おっきなあくび。集中力欠けちゃった?」
千歌「ごめんね、梨子ちゃん。せっかく教えてくれてるのに」
梨子「いや、私こそごめんね。昨日はだいぶ遅くまでおしゃべりに付き合わせて」
千歌「いいっての。わたし、梨子ちゃんの話ならずっと聞いてたいもん。っていうか梨子ちゃんは眠くならないの?」
梨子「私は起きるの遅かったから」
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千歌「そっか。わたしはしいたけの散歩があるから6時起き」
梨子「そういうことは続けられるのね、千歌ちゃんって」
千歌「そういうことって……そりゃ家族のことだからね」
梨子「しいたけちゃんが家族ね。私もようやくそういうのがわかってきた気がする」
千歌「そっかそっかぁ~。それで梨子ちゃんは何時くらいまで寝てたの?」
梨子「……10時まで」
千歌「梨子ちゃんってさ、実は早起きするの苦手だよね?」
梨子「う、うん。目覚まし様々って感じ」
千歌「じゃあわたしがモーニングコールしよっか?」
梨子「うーん……さすがに遠慮しとく」
千歌「そっかぁ……とりあえず顔洗ってくるね」
梨子「うん」
梨子(……なんか千載一遇のチャンスをドブに捨てた気がしなくもないなぁ)
千歌「ただいまー」
梨子「お帰り。じゃあ改めて最初から──」
千歌「でもその前に」
梨子「その前に?」
千歌「ちょっとお散歩に行かない?」
梨子「散歩? でも外は雨だよ?」
千歌「いいの。気分転換ができれば」
梨子「まあ『歩くと脳が活性化する』って言うしね」
千歌「でしょっ。それとわたしの脳が救援物資の補給を要請しているのです!」
梨子「要するにおやつを買いに行きたいのね?」
千歌「そういうこと。ダメ?」
梨子「ダメとは言ってないよ」
千歌「じゃあしゅっぱーつ!」グイッ
梨子「って袖を引っ張らないでぇー」
玄関
志満「あら、千歌ちゃんはどこまで?」
千歌「ちょっとそこのコンビニまで」
志満「梨子ちゃんも一緒に?」
梨子「はい」
美渡「悪いね、ウチのバカチカがいっつも迷惑掛けて」
梨子「ええ、本当に」
千歌「梨子ちゃんっ!?」ガーン
梨子「でも、私も色々と助けてもらってるんでお互い様です」ニコッ
美渡「おっ、いいこと言うじゃん。千歌には勿体ないねぇ」ニヤニヤ
千歌「うぐわぁっ!?」
美渡「ってダメージ受け過ぎ。残りはお駄賃にしていいから、何か菓子パン2つ買ってきて」つ500円
千歌「……わかった」
志満「気を付けてね」
千歌「うんっ」
梨子「行ってきます」
美渡「デート楽しんでこいよ~」
梨子「デ、デデデデートっ//」カァーッ
千歌「いや、どこぞの大王じゃないんだから」
お外
千歌「って相合い傘じゃないの?」
梨子「いや、学校帰りにどっちかが忘れたとかならともかく、何もこんな時にまで」
千歌「そりゃそうだけど」
梨子「もしかして、それ期待してた?」
千歌「ううん、今傘を手に取って浮かんだ」
梨子「なんだ。ならいいでしょ、別々で」
千歌「ええーっ!? 梨子ちゃんと相合い傘したいーっ!」
梨子「お断りします」
千歌「梨子ちゃんのケチー」ブーブー
梨子「だって……恥ずかしいもの// 知り合いに見られたら」
千歌「なーんだぁ、梨子ちゃんもやりたいんじゃん。大丈夫だって、そんなに人通りないんだし」
梨子「でも万が一ってこともあるし。見られたら明日絶対冷やかされるし」
千歌「いいじゃん、冷やかされたって。むしろわたしと梨子ちゃんがラブラブなところ見せ付けてやりたいし!」
梨子「見せ付けてって……千歌ちゃんは誰かと戦ってるの?」
千歌「異世界人と」
梨子「はい?」
千歌「異世界人だよ!」
梨子「そんないるのが当たり前みたいに言われても」
千歌「いるんだよっ! 異世界人はっ!」
梨子「は、はぁ。……で、その異世界人とやらはどんな悪さをするの?」
千歌「そりゃあ、こうやって連日雨を降らせてわたし達の気分を沈ませたり」
梨子「天候を操るって地味に凄いね。他には?」
千歌「わたし達の記憶を弄くり回して、あったはずのことをなかったことにしようとしたり!」
梨子「はいはい。毎日の予習復習をしなかったことを異世界人のせいにしないの」
千歌「そんなぁー。いや、わたしのやる気が奪われてるのだって、異世界人の呪詛によるもので──」
梨子「よっちゃんみたいな言い訳しないのっ! 『天から見放された』とか『異世界人の陰謀だ』とか」
千歌「今度それで一本書いてみたら? 同人誌」
梨子「うーん……なんかいいかも。よっちゃんと花丸ちゃんに相談してみる」
千歌「そっかぁ。そうだ、わたしも今度コミケっての出てみたいなぁ」
梨子「なら売り子さん、やってみる?」
千歌「アニメキャラとかのコスプレして『見てってくださーい♡』って宣伝するアレ?」
梨子「うん、そんな感じ」
千歌「なんか面白そう。やってみたいっ!」
梨子「わかった。明日2人に話してみる」
千歌「うんっ、お願いね」
梨子(OKもらえるかなぁ? 大丈夫だと思うけど)
千歌「コミケも異世界みたいなもんだよねぇ?」
梨子「そうかなぁ?」
千歌「Twitterとかで写真見たら人だらけだし、コスプレしてる人もいっぱいいるし」
梨子「そう言われると初めて行った時のこと思い出してきた。確かに最初は『異世界なのっ!?』って感じるかもね」
千歌「でしょっ。そういえば昔はよくやったなぁ、異世界人との戦い」
梨子「ごっこ遊びだよね?」
千歌「うんっ。ほら来たよ、異世界人」ユビサシ
梨子「あの全身緑色の?」
千歌「うん。しかもこっちに向かって走ってくるし」
梨子「っていうかアレって──」
果南「やっほー、千歌に梨子」ノシ
梨子「果南さんよね?」
千歌「そうだよ。やっほー」ノシ
果南「2人はデートしてたの? こんな雨の中で」
梨子「デ、デデデデートっ//」カァーッ
千歌「それ、本日2回目だよね?」
果南「あらっ、違った?」
千歌「うん、ちょっとそこのコンビニまで」
梨子「散歩です。勉強の気分転換と、ちょっとおやつを買いに」
果南「なるほどね、長時間座って何かするのってしんどいもんねぇ~」
千歌「だよねぇ~」
梨子「というか、こんな雨の中ランニングですか?」
果南「そりゃ1日でもやらないと身体がなまっちゃうからね」
梨子「果南さんならそんなことなさそうなのに?」
果南「気持ちの問題だよ。クセになっちゃうからさ、サボるのって」
梨子「ああ、わかります。言われてるよ、千歌ちゃん」
千歌「うっ……面目ないです」
果南「あはは……梨子ってば千歌にはなかなか厳しいねぇ」
梨子「そりゃあ千歌ちゃんが進級できなかったら色々困りますし」
千歌「ええっ!? そこまでのレベルで心配されてたのっ!?」ガーン
梨子「この前の小テストで赤点ギリギリだったのは誰ですか?」
千歌「はい、クラスでわたし1人だけです」
果南「ダメだぞー千歌、彼女を困らせるようなことばっかりしたら」メッ
千歌「別に困らせたくて困らせてる訳じゃないもん」ムスッ
果南「ちゃんと勉強しなさい」
千歌「果南ちゃんにだけは言われたくないなぁ」
果南「梨子に言っておくけど、千歌は食べたらすぐ眠くなるから注意してね」
梨子「そこはわかってます。千歌ちゃんったらお昼食べたらすぐ机に突っ伏しちゃうんだから」
梨子(色々おしゃべりしたいのに)
千歌「仕方ないじゃん。生理的なものなんだから」
果南「はは、相変わらずだね。ところで千歌」
千歌「どしたの?」
果南「今年もキャンプする? 曜と3人で」
梨子(キャンプっ!?)
千歌「うん、もちろん! あっ、そうだ」
果南「何かあるの?」
千歌「梨子ちゃんも一緒にどう?」
梨子「えっ!? 私も?」
果南「いいねぇ、梨子もすっかりこっちに馴染んできた訳だし」
千歌「曜ちゃんも梨子ちゃんならオッケーしてくれるはずだよ。どう?」
梨子「じゃあ予定が空いてたら」
果南「了解。曜には私から連絡しとくよ」
千歌「ありがとね、果南ちゃん」ニコッ
梨子「その時はよろしくお願いします」ペコッ
果南「うむ」
千歌「梨子ちゃんがいれば楽しさが3倍になりそうだよっ!」
梨子「ど、どうも。……っていうか3倍って」
果南「じゃあね~」ノシ
千歌「またね~」ノシ
梨子「お疲れ様です」ノシ
千歌「実は梨子ちゃんソワソワしてたでしょ? 果南ちゃんがキャンプの話した時」
梨子「そ、そうかな?」
千歌「それ見て『梨子ちゃんも行きたいのかなぁ?』って思ったんだ。それにコミケの件でお返しがしたかったし」
梨子「そっか、ありがと。ところで1つ質問なんだけど」
千歌「なあに?」
梨子「私ってそういうの、結構表情とか仕草に出てたりするの?」
千歌「うん、めっちゃ出てるよ」
梨子「そ、そうなんだ……まあ1度キャンプしてみたかったのは事実だけど」
千歌「やっぱりやりたかったんじゃん」
梨子「うん。テレビで魚釣りとか観てたら『面白そうだなぁ』って前々から思ってたから」
千歌「アレって実際は立ってるだけなのが大半だけどね」
梨子「確かに『1時間経過』とかで省略するもんね」
千歌「テレビの向こう側に人がいるんだよ! 実際に1時間待ってた人がっ!」
梨子「ちょっと違う気がする……言いたいことはわかるけど」
コンビニ
よしみ「いらっしゃいませー。って千歌に梨子じゃん」
千歌「あっ、よっちゃん。今日シフト入ってたんだね」
梨子「なんかその呼び方紛らわしいんだけど」
よしみ「昨日ポケ○ンの一番くじ入ったんだけど、やってかない?」
千歌「うーん、遠慮しとく。今月もうピンチだから」
よしみ「そっかぁ。ところで2人は秘密の逢瀬?」
梨子「ひ、ひひひ秘密の逢瀬っ//」カァーッ
よしみ「梨子ってば動揺し過ぎ」
千歌「それもう3回目だよね? 耐性ないの?」
梨子「うっ、ううっ//」モジモジ
千歌「じゃあわたし、おやつのとこ見てくるねっ」スタッ
梨子「う、うん。わかった」
梨子「……」ジー
(•ω•っ)3 ←A賞のでっかいタ○ザラシぬいぐるみ
梨子(かわいい~っ♡ だけど……)財布パカッ
梨子「……今月はもうカツカツだもんなぁ」ハァ
よしみ「やってくの?」
梨子「うーん、だけど後々ヤフ○クで落とした方が」
よしみ「それ、店員の前で言うかなぁ?」
千歌「あれっ、梨子ちゃんは何も買わないの?」
よしみ「梨子ならずっとアレに釘付けだよ」ユビサシ
千歌「そっか。りーこちゃんっ♪」
梨子「千歌ちゃんは買うもの持ってきたの?」
千歌「うん、全部カゴに。お会計おねがーい」
よしみ「はいよっ!」
千歌「の前に……梨子ちゃん」
梨子「何?」
千歌「『やらない後悔より、やる後悔』だよ」キリッ
梨子「それ、千歌ちゃんが言うと何か微妙に重みがあるような」
千歌「微妙になんだ」
千歌「会計終わったよ。で、どうするの?」
梨子「やるっ!」
千歌「だって」
よしみ「はいよっ!」
↓
梨子「ぐうっ……またD賞のラバストかぁ。もう1回!」
千歌「って1回ずつなんだね。よっちゃんの手間が増えるのに」
よしみ「気にしてないよ。他に客もいないし」
(中略)
梨子「ううっ、またD。……なんかDと0って形が似てるし」グスッ
千歌「まさか6回引いて6回ともラバストとは」
よしみ「ドンマイ、梨子」
梨子「私、昔からくじ運悪いのよ」グスン
千歌「そっか、じゃあわたしが梨子ちゃんの敵討ちするっ!」
よしみ「はいよっ!」
梨子「あっ、このパターンは……」
千歌「どうかなぁ~」ベリッ
梨子「どう?」
千歌「あ、ああああ……いやっほぅ~っ!!」つ[A賞]
梨子「やっぱりーっ」グスン
よしみ「おめでとねっ、千歌」
千歌「うんっ! じゃあ貰ってくね~♪」つ(•ω•っ)3
よしみ「どうぞ~」ノシ
梨子「こういうのって欲のない人に当たるのよね」ハァ
よしみ「ご愁傷様、梨子」
梨子「やっぱり私は天から見放された堕天使リリーだったのね」グスン
千歌「梨子ちゃんこそ善子ちゃんみたいなこと言ってるじゃん。ほらっ」
ポンッ
梨子「えっ?」つ(•ω•っ)3
千歌「あげる、タマちゃん」
梨子「いいの?」キョトン
千歌「エビたんとグソくんが嫉妬しちゃうし」
梨子「ぬいぐるみでそういうのあるの?」
千歌「あるのっ! それにいつも歌詞とか宿題とかで迷惑掛けてるお詫びもしたいから。今日だってそうだし」
梨子「……そっか。じゃあ貰うね。その代わりに、はい」つラバスト×2
千歌「うん、ありがとね」ニコッ
よしみ「はぁ~、いいもの見せてもらいましたわー」ニコニコ
千歌「まっ、これで今月のお小遣いなくなったけどね」
梨子「そんなにチョコバー買うからでしょ? しかも毎日食べてるし」
千歌「糖分は脳の栄養なのです!」
梨子「千歌ちゃんの場合、絶対脳以外のところに回ってるよね?」ジー
千歌「そうかなぁ?」タユンッ♡
梨子「そうよ」ソレナリー
千歌「梨子ちゃんはあんまり間食しないよね? いいなぁ、燃費良くて」ハァ
梨子「私は太りやすいから我慢してるだけなの! 誰かさんと違って!」ムッスー
バス停前
梨子「なんだか雨弱くなってきたね」
千歌「そうだね、ちょっと損した気分」
梨子「わかるなぁ、その気持ち。もうちょっと待ってから出てれば、って思うよね」
千歌「あらっ、あれって──」
花丸「こんにちは、千歌ちゃんに梨子さん」ペコッ
梨子「花丸ちゃん、こんにちは」ペコッ
千歌「こんちかー」ノシ
花丸「2人は逢い引きしてたの?」
梨子「あ、あああ逢い引きっ//」カァーッ
千歌「もうそれ、わざとやってない?」ハァ
花丸「違うの?」
千歌「ちょっとコンビニまでおやつ買いにね」
花丸「梨子さん、それってタマ○ラシちゃん?」
梨子「うん。一番くじ引いたら1発で当たったんだよ」
花丸「うわぁ、凄いずらぁ。神引きずらぁ」
梨子「……千歌ちゃんが」ハァ
花丸「どうして梨子さんは意気消沈しているのかなぁ?」
千歌「6回引いて6回ともD賞だったから。そのタマザ○シちゃんはわたしが当てたんだよ」
花丸「もしかして梨子さん、千歌ちゃんに運気を全て吸い取られたんじゃない?」
梨子「ええっ!? ……別れよっか、千歌ちゃん♪」ニコッ
千歌「そんな理由でっ!?」ガーン
花丸「冗談ずら」
梨子「そうよ、冗談に決まってるでしょ」
千歌「冗談でわたしの心を抉り取るようなこと言わないでよぅー」グスッ
梨子「ごめんごめん、悪かったって」ペコッ
花丸「ふふっ、なんだかんだで仲良しなんだね。千歌ちゃんと梨子さんって」
千歌「ところで花丸ちゃんはこれからどっか行くの?」
花丸「ううん、逆ずら。善子ちゃんを待っているんだぁ。2人で勉強会するから」
梨子「私達と同じなのね」
千歌「よく見たら傘もう1本持ってるもんね」
梨子「ほんとだね、それってよっちゃんの分?」
花丸「うん、善子ちゃんだからね」
千歌「まあ善子ちゃんも運悪いしね」
プシュー
運転手『国木田寺前、国木田寺前になります』
善子「出迎えご苦労であるぞ、黄昏の理解者よ!」ヨハァ
梨子「って合羽ぁ!?」
花丸「やっほー、善子ちゃん」ニコッ
善子「ヨハネよっ! ってリリーに千歌さんまでいるし。逢い引き?」
梨子「あ、あああ逢い引きっ//」カァーッ
千歌「梨子ちゃんさぁ……というかまさか合羽着てる人を2人も見るなんて」
善子「これは合羽なんて人間どもが使っている粗悪な模造品じゃないわよ。AAA、Anti Aqua Attachment(耐水装具)よっ!」ドヤァ
梨子「まーた始まったし」ハァ
花丸「つまるところ合羽ずらね」ハァ
千歌「なんかカッコいいね、その呼び方」キラキラ
りこまる「「えっ!?」」
千歌「というかそれ、安物じゃないでしょ?」
善子「見る目あるじゃないの千歌さん。3人目の上級リトルデーモンに任命するわよ!」
梨子「上級リトルデーモンへの昇進条件ぬっる」
花丸「なんだかずっるいずら」
善子「4,980円もしたのよっ! 登山用具の専門店でっ!」
りこまる「「たっか」」
千歌「やっぱりね、果南ちゃんが使ってるヤツと同じタイプだし」
梨子「そうなんだ、千歌ちゃんも詳しいね」
善子「このヨハネが天界から追放されたが故、たびたび水難に見舞われるのはリトルデーモン諸君もご存知でしょう?」
ちかりこまる「うん」
善子「ヨハネの魔翌力が大幅に弱められたのもあってか、耐水用の結界は一度展開すれば二度と発動できなくなるし」
梨子「何を言ってるの? 結界って」
花丸「『一度傘を開いたら、すぐに骨組みが曲がって使い物にならなくなる』ってことだよ」
千歌「ヨハネ語翻訳能力があるなんて、さすが花丸ちゃん。博識だねぇ」
善子「まだまだ修行が足りないわよ、リリー。こんなんでは千歌さんに追い抜かれるわよ」
梨子「いや、追い抜かれるって何?」
善子「上級リトルデーモンとしての序列よ!」
梨子「……ああ、そういう設定あるんだ。別にいいや、千歌ちゃんに抜かれても」
千歌「それで、今日はそのAAAの試験運用を?」
善子「そうよ。曜さんに傘の件を相談したら『だったら合羽にしたら? 私もそうしてるよ』って助言を受けたのよ」
梨子「そういえば曜ちゃんも合羽派だったよね」
善子「今回のでわかったことは、両手が空くと色々便利だってことね。もっと早くに気付くべきだったわ」
ちかまる「「かしこーい!」」
梨子「そんなに賢いかな?」
善子「そういえばさっき、窓から合羽着て走ってる人を見たわよ。緑色の」
梨子「果南さんだね」
千歌「うん、間違いなく」
花丸「案外多いんだね、合羽使う人って」
千歌「勉強会するって話だけど何やるの?」
善子「英語よ。ずら丸が苦手だから」
花丸「それと数学ずら。善子ちゃんが苦手だから」
善子「ヨハネよっ!」
千歌「そうなんだ、支え合いだねぇ。わたしと梨子ちゃんみたいに」
梨子「ち、千歌ちゃんっ//」カァーッ
善子「リリー、千歌さんからは何かしてもらってる?」
梨子「うーん……特に何も。今日だって私が勉強教えて──」
千歌「言わんといてぇーっ!」グスン
梨子「冗談だって」
花丸「それじゃあ何かあるの?」
千歌「大概畜生だよね、花丸ちゃんも」ムスッ
梨子「この子を当ててくれたりとか」つ(•ω• っ)3
よしまる「「それだけ?」」
千歌「……」ムスッ
梨子「他にはボール投げでフォームを教えてくれたりとか」
花丸「千歌ちゃんって球技は得意なんだよね?」
千歌「球技『は』って何さっ! まあ球技に関してなら曜ちゃんにだって負けないつもりだよっ!」
善子「本当かしら?」
梨子「本当だよ。教え方も丁寧だし」
花丸「千歌ちゃんはそういう気遣いがしっかりしてそうだもんね」
梨子「うん。最初は5mしか飛ばせなかったのが、千歌ちゃんに手取り足取り教えてもらって10mも飛ばせるようになったんだからね!」
善子「やるじゃないの、リリーも千歌さんも」
花丸「勉強だけが支え合いではないってことだね。でも──」
梨子「でも?」
花丸「『手取り足取り』って何だか意味深ずらね」
善子「そうね。まさか何かいかがわしい儀式でも──」
ちかりこ「「してないからっ! 残念ながら!」」
善子「……残念なのね」
花丸「……しかも2人とも」
ちかりこ「「あっ//」」
善子「初々しいわねぇ、ずら丸♡」ニヤニヤ
花丸「そうずらねぇ、ヨハネちゃん♡」ニヤニヤ
千歌「なぜこういう時だけ『ヨハネちゃん』呼びしたし」
梨子「しかもよっちゃんと花丸ちゃんの方が若いのにこの扱いって」
千歌「そうだよ! かくいう2人こそヤることヤったの?」
花丸「ま、まだ専門の本に書かれているようなことは何にも//」モジモジ
善子「こ、このヨハネと黄昏の理解者が契りを結ぶには刻が満ちてないのよ//」モジモジ
梨子「よっちゃん達こそ偉そうな態度取る資格なかったじゃないの」
千歌「話してるうちにすっかり止んだね、雨」
梨子「そうだね」
花丸「あっ、虹」ユビサシ
梨子「うわぁ、綺麗」
善子「こういうのが見れると悪いばかりじゃないって思うわね、雨ってのも」
千歌「そうだね、うん」
梨子「そういえば虹で思い出したんだけど、千歌ちゃんが今度コミケに出たいんだって」
千歌「って何で虹で思い出すのさっ!?」
花丸「千歌ちゃんもいずれわかる時が来るずら」
千歌「売り子さんをやってみたいんだけど、大丈夫かな?」
善子「問題ないわよ、千歌さんなら」ニコッ
花丸「マルも大歓迎ずら」ニコッ
千歌「そっか、ありがとねっ。ヨハネちゃんも花丸ちゃんも」
梨子「千歌ちゃんまで『ヨハネちゃん』呼びしてるし」
善子「千歌さんが売り子してくれたら色々脚光を浴びそうだし」ジー
花丸「確かに注目の的になりそうずらね」ジー
梨子「よっちゃんはともかく花丸ちゃんまで。納得だけど」ジー
千歌「何で3人してわたしを凝視してるのさっ!?」タユンッ♡
千歌「じゃあね~」ノシ
花丸「また明日~」ノシ
善子「千歌さんの指導は任せたわよ、リリー」ノシ
梨子「上級リトルデーモン3号の指導、任されました」ノシ
千歌「指導って……まあいっか。じゃあ改めてウチまで戻ろっか」
梨子「うん。にしても雨でも結構知り合いと出くわすものね」
千歌「そうだね、たまたまだと思うけど」
梨子「千歌ちゃん、改めて思ったんだけど」
千歌「何を?」
梨子「私と千歌ちゃんって、ほんと色んなところが正反対なんだなー、ってね。趣味とか、得意なこととか」
千歌「そうかもね。性格とか育ってきた環境とかもかな?」
梨子「それもあるね。人ってさ、自分が持ってないものに惹かれていくのかな?」
千歌「かもね。何かわかるな」
梨子「私、千歌ちゃんに逢えて本当に良かった。千歌ちゃんは私の知らない世界を色々と教えてくれたんだから」
千歌「それこそお互い様だよ、わたしだってそうだもん。これからも色んなことを教えて貰いたいな、梨子ちゃんに」
梨子「うん。でも自分で調べてわかることは、なるべく自分で済ませてほしいなぁ」ハァ
千歌「……勉強のことですよね?」
梨子「うん、もちろん♪」
千歌「それはおいおい精進していきます、はい」
梨子「頼むよ、本当に」
千歌「う、うん」
梨子「という訳でチョコバーは預かっておくからね、今日のノルマが終わるまで」ガバッ
千歌「ええっ!? せめて1本ぐらいはっ!」
梨子「……1本だけだからね」つチョコバー
千歌「ありがとうございます。……って何でわたしが買ったチョコバーを梨子ちゃんが管理する流れになってるのさっ!」
梨子「寝たら勉強できないでしょ?」
千歌「でも睡眠学習ってのも──」
梨子「屁理屈はいりません」
千歌「梨子ちゃんのケチー」ブーブー
梨子「ケチで結構」ムスッ
1時間後、千歌ちゃんルーム
千歌「ふわぁ~ぁ、疲れたぁ~」ノビー
梨子「お疲れ様。これでもう大丈夫だね」
千歌「うんっ。梨子ちゃんの教え方がいいからだよ、ありがとねっ」ニコッ
梨子「じゃあ返すね、チョコバー」つ買い物袋
千歌「やったぁ! じゃあさっそく」ハムッ
梨子「私、それ食べたことないんだけど美味しいの?」
千歌「んん~っ♡ うんまぁ~いっ♡」
梨子「何か千歌ちゃん見てたら私も食べたくなってきたんだけど」
千歌「いいよ、梨子ちゃんも1本」つチョコバー
梨子「じゃあ1本だけ」ハムッ
千歌「どう?」
梨子「んん~っ♡ あんまぁ~いっ♡」
千歌「ははっ、良かった。梨子ちゃんの口に合うみたいで」
千歌「ふわぁ~ぁ、チョコバー3本もお腹に入れたら眠くなってきたぁ~」
梨子「やっぱりね。ほらベッドに──」
千歌「いや、梨子ちゃんが来てるのに寝ちゃうのも」
梨子「ううん、私は別に構わないけど」
千歌「だったらお願いがあるんだけどさぁ」
梨子「お願いってなぁに?」
千歌「膝枕、してくれない?」
梨子「ええーっ!? 強引な流れじゃない?」
千歌「頑張った彼女へのご褒美として、ねっ♡」
梨子「頑張るべき時に頑張らない人が言っても──」
千歌「おねがぁい♡」上目遣い
梨子「うっ……わかった」
千歌「梨子ちゃんだーい好き♡」ニコッ
梨子「もう、現金なんだから」ハァ
梨子(まあそれに落とされる私も私だけど)
ポスンッ
梨子「どう?」
千歌「んん~っ♡ 何かひんやりするね、梨子ちゃんのふともも。接触冷感の寝具みたい」
梨子「そ、そうなの? 基礎体温低いとはよく言われるけど」
千歌「そうだよ。『手が冷たい人は心が温かい』ってよく聞くけど、手だけじゃないのかもね」
梨子「ありがとね、千歌ちゃん♡」ニコッ
千歌「うんっ。暑い夏は一家に1人梨子ちゃんがいれば安泰だねっ♡」
梨子「私は冷房器具じゃないからね。それとも私のクローンでも作って売るとでも?」
千歌「それはさすがに……何かそれも同人誌のネタに使えないかな?」
梨子「……考えとく。千歌ちゃんは逆にあったかいね」
千歌「でしょ、よく言われる。曜ちゃんからも『一家に1人千歌ちゃんがいれば、暖房代が節約できるよね』って」
梨子「千歌ちゃんのクローンはいりません」
千歌「どうして?」
梨子「それは……私が……千歌ちゃんを独り占めしたい、からで//」
千歌「そう、な……の……」Zzz
梨子「って寝ちゃったし。あとちょっと重いし」
梨子「ごめんね、タマちゃん」つ(•ω• っ)3
グイッ
梨子「入れ替えよっちゃん、っと」フゥ
千歌「りこちゃ~んっ、やわらか~いっ♡」ムフフ
梨子「もう私じゃないんだけどね」
梨子(あと寝顔かわいいから撮っとこ)つスマホ
パシャッ☆
梨子「よしっ!」
千歌「大好きだよ~っ、りこちゃ~んっ」ムチュッ♡
梨子「ってタマちゃんにチューしないでっ! 新品なんだからっ!」
梨子(千歌ちゃんはいつだって私のこと「好きだ」って口にしてくれるし、全身でその気持ちを示してくれる)
梨子「でも私だって千歌ちゃんのことが大好きなんだからね♡」
梨子(ただ……千歌ちゃんみたいに大胆になるのは恥ずかしいだけで//)
終わりです
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