樹里「樹里って呼べよ!」P「はい。西城さん」 (17)

(事務所)

P「西城さん。そろそろ出ますけど準備出来てますか?」

樹里「おう。プロデューサーこそ忘れ物すんなよ」

P「確認しておきます。車を出しますので駐車場の前で待っててください」

樹里「ん」

樹里「…」

樹里「ところでさ」

P「はい」

樹里「樹里って呼べよ」

P「はい?」

樹里「西城さんじゃなくて。樹里」

P「わかりました。西城さん」

樹里「わかってねぇじゃねえか!」ペチ-ン!

P「痛い! すみません。社長から釘を刺されているんですよ。『ふぅん。女子高生を気軽に名前呼びをするとセクハラになるからせいぜい気を付けるんだな』と」

樹里「アタシがいいっつってんだからいいだろ。呼べよ」

P「西城さんは西城さんでいいじゃないですか。もう2ヶ月これで通してますし」

樹里「やだ」キッパリ

P「何故」

樹里「…」

樹里「いいから樹里って呼べよな」

P「じゅり城さん」

樹里「樹里!」

P「ジューリー」

樹里「『ジューシー』みたいな発音だな」

P「パーリー」

樹里「原型を留めてねぇじゃねえか」

P「ジューCってラムネ菓子は今でも売っているんですかね」

樹里「知らねぇよ。誤魔化すな!」

P「しかし急に呼び方を変えろと言われても違和感しかありませんよ。西城さん」

樹里「だーかーらー! 樹里だよ!」ペシペシ!

P「呼び方で関係が変わるわけでもないでしょう。ほら仕事行きますよ」

樹里「んむぅー…」プク-

P「…あとで映画連れてってあげますから機嫌直してください」

樹里「は? 映画くらいで機嫌が直ると思うんじゃね~よ~♪」ニマニマ

P「ちょろい」


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(後日)

P「西城さん。ポップコーン買って来ましたよ」

樹里「ありがと。樹里だよ」

P「映画館に来てまでそれ言わないでください。いいじゃないですか西城さんで」

樹里「ヤダ。樹里って呼べよ」

P「…」

P「例えばの話ですけどね」

樹里「ん?」

P「例えば西城さんが結婚して、相手側の苗字を名乗るようになったとしましょう」

樹里「誰と結婚すんだよ」

P「仮の話ですから誰でもいいでしょう」

樹里「じゃあとりあえずアンタってことにしておいてやるよ」

P「そうやってウキウキ気分にさせたところでセクハラで訴えるつもりですね。騙されるものか!」

樹里「ふんっ!」ペチ-ン!

P「痛い! とにかく、そうなったら西城さんと呼ばれることはなくなってしまうわけです。仮に橘さんと結婚をしたら橘樹里となり『橘です!』になってしまうわけです」

樹里「…まあそうだけど」

P「つまり! 今しか西城さんを西城さんと呼ぶ機会はないわけですよ!」カッ!

樹里「でもさ。結婚しないかもしれないだろ。そうなったらアタシは永遠に西城だ」

P「確かに。その可能性はなきにしもあらずですが。結婚だけが幸せのご時世ではありませんし」

樹里「いや。結婚はするけどな」

P「そうなんですか?」

樹里「する」キッパリ

P「何やら断固たる決意を感じます」

樹里「とにかく樹里って呼べよ」

P「西城さん。塩味のポップコーンひと口ください」

樹里「スルーすんな!」

P「上映前とはいえ映画館ではお静かに」シ-ッ

樹里「ったく…ほら」スッ

P「ありがとうございます。…うまいですね。キャラメルには負けますが」シャクシャク

樹里「はー? そんなことねーって。キャラメルくれよ」

P「どうぞ」

樹里「ん」ア-ッ

P「あ、映画始まりますよ」

樹里「口開けてるんだから食べさせろよ!」ペチッ!

P「痛いっ」

(後日)

樹里「…あのさ。もうアンタのことを叩くのはやめるよ」

P「どういう風の吹き回しですか。西城さん」

樹里「樹里だっつの。…別に深い意味なんてねーよ。ただ、ペチペチペチペチ叩くのも悪いと思ってさ」

P「ようやくわかってくれましたか」

樹里「…やっぱ嫌だったか?」シュ-ン

P「正直。そこまで嫌でも」

樹里「ま、マゾなのか?」

P「誤解です。誤解。激しい誤解です。引かれると心が傷つきます。西城さんが『リアクションを取れるくらいの。痛みは最小限に抑える程度の強さ』で叩いてくれていたからですよ」

樹里「本気で叩いてたけど?」

P「ははは。ご冗談を。ゲームセンターのパンチングマシーンで『プロボクサー級判定』の右ストレートを出した方が何をぬかしておるんですか」

樹里「結構本気で叩いてたつもりだったんだけど」

P「西城さんが本気で叩いたら私の肩は吹き飛んでしまいますよ。ヒグマのように」

樹里「誰がヒグマだ!」ペチンッ!

P「痛い!」

樹里「あ、悪い。つい」

P「しかし思ったよりも痛くない。これこそ西城さんクオリティのパンチです」

樹里「樹里だっつの。つーか、アンタが痛くないって思うならゲーセンの機械が壊れてたんじゃねーの?」

P「…その可能性も否定できませんね」

樹里「そうだよ。アタシは本気で叩いてるし」

はづき「では検証してみましょう」ニュッ

樹里「うわっ!?」ビクッ!

P「いつからいたんですか。はづきさん」

はづき「樹里ちゃんがシュンとする少し前から」

P「最初からじゃないですか」

はづき「まあまあ。そんなことよりこちらをどうぞ」ヨイショ!

【瓦15枚】テテ-ン

P「ナニコレ」

樹里「瓦?」

はづき「まさしくです。まず手を怪我しないようにこちらのグローブを着けていただき」スッ

樹里「?」

はづき「どうぞ! 樹里ちゃん!」カッ!

樹里「どうぞじゃねえよ。割れってか」

はづき「割れたらプロデューサーさんと休日を合わせて1日遊びに連れて行ってもらえる券をプレゼントしますよ」

樹里「任せろ!」グッ!

P「何を勝手に決めているのですか。はづきさん」

はづき「まあまあ。そう簡単に割れませんよ。瓦割り15枚といえば筋肉隆々の格闘家がやっとこさ砕くことができるレベルの…」

樹里「ハァァァァッ!」

スパ-ン!!

P「」

はづき「わー♪」パチパチパチ

P「わー、じゃねぇ」

はづき「どうやら機械の故障じゃなかったみたいですね」

P「最悪なことにそうらしいですね。私が叩かれて痛くなかったのは『甘噛み』をされているようなものだったのかもしれません」

はづき「もしも夫婦喧嘩をしたら樹里ちゃんのリミッターが外れてプロデューサーさんはこの世から…」

P「演技でもないですよ。というか勝手に夫婦にしないでください」

樹里「プロデューサー。今度のオフ忘れんなよな♪」ガシ-

P「ぐぅぅ。抱きつかれている」

(後日)

樹里「プロデューサーってはづきさんのことは名前で呼んでるよな」

P「ええ。幼馴染ですから」

樹里「は?」

P「へ?」

樹里「初耳なんだけど」

P「初めて言いましたからね。隠してませんけどとりわけ言う必要もないかと」

樹里「そういうのちゃんと言ってくれないと困るんだけど」

P「まーた面倒くさいことを」

樹里「…はづきさんを名前呼びできるならアタシだってOKだろ」

P「西城さんでもう慣れてしまったので」

樹里「あぁん?」

P「もう諦めてくださいよ」

樹里「ふざけんな。つーか名前呼びってそんなにハードル高いかよ」

P「ハードルとかそういう問題じゃ」

樹里「わかった。恥ずかしくて呼べないんだろ! アタシのこと意識しすぎて名前で呼べねーんだ♪」

P「ふっ」

樹里「鼻で笑ってんじゃねーよ!」

P「西城さんは呼び方ひとつで何か変わるんですか。西城さんは西城さんでしょう」

樹里「でも名前で呼ばれたい」

P「強情っぱりですね…」

樹里「とりあえず一回! 一回でいいから!」

P「…」

樹里「たーのーむーよ~!」ガシ-

P「まったく。一度だけですよ…」

樹里「おう!」

P「樹里」

樹里「んっ…なんだよ…///」ゾクゾク

P「やっぱ無し。西城さん」

樹里「おい! このまま続けろよ!」

P「仕事にならなくなりそうなので」

樹里「ん~!!」プ-

(後日)

P「西城さん。西城さんいますかー?」

樹里「…」

P「あ、いるじゃないですか。イヤホンでもしてました?」

樹里「…」プイッ

P「?」

はづき「プロデューサーさん。樹里ちゃんから伝言を預かってます。『名前で呼ばなきゃ返事しないぞ』だそうです」

P「ほほう」

樹里「…」プイ-

P「西城さん。野球のチケットありますけど観に行きますか?」

樹里「…!?」ピクッ

P「行くなら返事してください」

樹里「…」グヌヌヌヌ

P「では行かないということでーーー」

樹里「そういうのずりい! 行くよ! 行くっつーの!」バッ!

P「はい」

樹里「2人きり?」

P「まあ」

樹里「デート?」

P「野球観戦です」

樹里「へへへ♪」ニマニマ

はづき「イチャつくのは外でしてくださいよ」

P「イチャついてませんっての」

(後日)

樹里「…来週にお化け屋敷のロケ?」

P「お化け屋敷のロケです」

樹里「…」

樹里「ははん。なるほど」

P「何です?」

樹里「アタシを驚かそうったってそうはいかないぞ。そういう冗談は面白くないからやめーーー」

P「いや本当にありますからね?」

樹里「ミャ-…」

P「…」

樹里「…」

P「まさか。お化け怖いとか」

樹里「ま、まっさかー!? そ、そそそそそそんなわけあるわけねぇだろォ!?」ガクガクガク

P「膝が爆笑してますよ」

樹里「こ、ここここれは武者震いだよ!」カッ!

P「お化け屋敷に武者震いする方を初めて見ました」

樹里「うるせぇ! 怖くないったら怖くないんだよ!」

P「ヒュードロロ」

樹里「嫌ァァァ!!!」ブンブンブン!

P「まさかこんな子供騙し以下のBGMにビビるとは…」

樹里「ビビってねぇよ!」グスッ

P「半べそかいてるじゃないですか。強がらなくていいですよ」

樹里「…」グスッ

P「仕事。断ってきます」テクテク

樹里「待て」ガシッ

P「西城さん。仕事を断ることは恥ではありませんよ。人には向き不向きがありますからね」

樹里「いいや。やる前から諦めんのは違うだろ。アタシは確かにほんの少しだけ怖いのは苦手だけどな。やらないなんて選択肢はねーんだよ!」カッ!

P「西城さん…」

樹里「樹里だ」

P「わかりました。では今回の仕事も全力で取り組みましょう」

樹里「ああ。た、ただ、いきなりお化け屋敷の撮影に出たらヤバいかもしれないからさ…こ、今度の休みの日にお化け屋敷のある遊園地とか連れてけよな」

P「ここしばらく休みの日は西城さんとばかり過ごしている気が」

樹里「嫌なのか?」

P「嫌ではありませんとも」

樹里「よし。じゃあ決まりな♪」ウキウキ

(後日)

樹里「嫌ァァァァァァ!!!!!」

樹里「お、おおおおおおおおびゃけェェェェェェ!!!!!???」

樹里「た、たたたた助けて!!! おばけ嫌ァァァァァァ!!!!!」

樹里「ウワァァァァァァ!!!!!」


スタッフ「彼女いいリアクションしますね」

P「うちの自慢の子です」

(後日)

樹里「プロデューサー。何読んでんだ?」ガシ-

P「サンプルで送られてきたアンティーカの写真集ですよ。白瀬さんや月岡さんの水着写真やら浴衣写真がわんさかです」

【咲耶水着】ボイ-ン!

【恋鐘浴衣】パツ-ン!

樹里「ふぅーん…」ジト-

P「素敵な写真でしょう」

樹里「別に」

P「何か悪いところでも?」

樹里「写真はいいと思うぜ。でもプロデューサーは見るな」バッ!

P「あ、ちょ」

樹里「没収」

P「何故ですか西城さん。やたらと胸の部分を注視していましたがそれと何か関係でもあるのでしょうか?」

樹里「そこまで観察してんなら察しろ!」

P「ささやかなサイズでも気にしすぎない方が」

樹里「ン゛!!!」ベシッ!

P「頭突きは痛い!」

(後日)

樹里「…」クテ-

P「どうしましたか樹里さん」

樹里「やる気が出ない…」

P「なんと」

樹里「誰かさんに耳元で『樹里』って名前で呼ばれないとやる気が出ない」クテ-

P「…」

樹里「あー、誰かさんに名前で呼ばれないかなー。呼ばれないかなー」チラッチラッ

P「白瀬さん。いますか?」

咲耶「やぁ。私に何か用かな?」ニュッ

樹里「!?」

P「西城さんが耳元で名前を囁かれたいようなのですがお願いできませんか?」

咲耶「なるほど。任せておきたまえ」

樹里「いや。あのな。咲耶じゃなくて」

咲耶「樹里…(低音ボイス)」ボソリ

樹里「アヒッ…///」ビクッ

(後日)

樹里「…」

【ボイスレコーダー】

P『樹里』

P『樹里』

P『樹里』


樹里「…♪」ニマニマ


はづき「…プロデューサーさん。もういい加減、名前で呼んであげたらどうですか? ボイスレコーダーで延々と名前呼びをリピートし続けてますよ?」

P「と言われましても」

はづき「名前で呼ぶくらい構わないじゃないですか」

P「ダメです」

はづき「なぜ?」

P「実は少し前に名前呼びで丸1日過ごしたことがあるんです。オフの日ですけど。そうしたら終始にやけっぱなしでした。名前呼びはダメです。仕事にならなくなってしまいます」

はづき「あら。仕事でならオンオフを切り替えられるんじゃないですか?」

P「出来ますかねぇ」

はづき「出来ます、出来ます」

(後日)

【撮影中】

P「樹里さん。衣装似合ってますよ」

樹里「そ、そうか♪」ニマニマニマ

カメラマン「西城さん。クールな雰囲気出してください!」

樹里「おう♪」ニマニマニマニマ

カメラマン「西城さん。その『新婚みたいな幸せオーラ』をダダ漏れさせるのやめてくださーい」

P「これはアカン」

(後日)

P「西城さん。仕事行きますよ」

樹里「また苗字…」ンムゥ

P「名前で呼ぶとニマニマして仕事にならないからですよ。さあ準備してください」

樹里「それじゃあさ」

P「はい?」

樹里「1日1回でいいよ。名前で呼んでくれ。それでやる気出すから」

P「1回なら、まあ」

樹里「で、慣れたらそのまま名前呼びな」

P「慣れたらですね。わかりました樹里さん」

樹里「おう♪」ニマニマ

はづき「イチャついてますねぇ」

P「違いますって」

(後日)

P「樹里さん。仕事行きますよ」

樹里「おう♪」ニマニマ

P「樹里さん。忘れ物はありませんか?」

樹里「もちろん♪」

P「樹里」

樹里「な、何だよ。呼び捨てとか…///」

P「呼んだだけ~」

樹里「用もないのに呼ぶなよ~♪」ニマニマ

キャッキャ♪


はづき「…」

社長「ふぅん。どうした機嫌が悪そうだな」

はづき「いえ別に」

社長「別にということはないだろう」

はづき「…」

はづき「社長。一度、私の名前を呼んでください」

社長「急にどうした、まあいい…」

社長「はづき君」

はづき「…」

はづき「社長に名前で呼ばれても全然嬉しくないですねぇ…」ハァ

社長「失礼だなキミは!?」


P「樹里」

樹里「んだよぉ~♪」ニマニマ


終わり

以上です。
お読みいただきありがとうございました。

お化けに弱いだとか、素直になれないけど実は面倒見がいいだとか、公式による樹里のポンコげふんげふん可愛らしいキャラ付けが進んで嬉しく思ってます。

蘭子「混沌電波第172幕!(ちゃおラジ第172回)」
蘭子「混沌電波第172幕!(ちゃおラジ第172回)」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528712430/)



だけど、埼玉とC2Vの合作みたいな生ぬるさ

もっと、ポンコツJDみたいにはっちゃけてもいいんだよ?

俺も読んでて埼玉っぽいって思った

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