ﾁｸﾀｸﾁｸﾀｸ...

未央「…」

未央「（リビングで何か温めて飲もうかな…）」

未央「（ホットミルク…いや、それよりも…）」

未央「（赤いきつねが食べたい…）」

未央「（だしの効いた汁と甘いお揚げ…いま食べたら最高に美味しいんだろうなぁ）」

未央「…」ﾉｿﾉｿ

（しばらくして）

ｽﾞｿﾞｿﾞｿﾞｿﾞ

未央「（美味しい…）」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

未央「（これ食べたら…眠れるかな？ 全然眠気がこないんだけど…）」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

未央「…」ｺﾞｸﾝ

未央「（テレビは何かやってないかな、と）」

ﾋﾟｯ

ｳｻﾐﾝﾉﾃﾚﾋﾞｼｮｯﾋﾟﾝｸﾞ～♪
ｶﾀｺﾘ! ﾖｳﾂｳ! ﾒﾉﾂｶﾚﾆﾖｸｷｷﾏｽ!

未央「…」

未央「（なーんにもやってないや）」

ﾋﾟｯ

未央「…」

未央「（1人だと…淋しいなぁ）」

未央「（電話は出来ないし…LINEしてみようかな）」

未央「…」

ﾎﾟﾁﾎﾟﾁﾎﾟﾁ...ﾋﾟｯ

【誰か起きとらんかね】

【寝れないよー】

未央「…」

未央「…」

未央「（10分くらい経ったけど反応はなし…ま、夜の3時半ならそんなもんか）」

未央「（…いや。面倒臭いって思われてるのかも）」

未央「（いつもみんな私のことどう思ってるんだろ。強引に遊びに誘ったり、盛り上げようとしてるけど…うざったく思われてないかな）」

未央「…」

未央「（ああああ…まーた変に落ち込んじゃいそう）」ｽﾞ-ﾝ

未央「…」

未央「（やっぱ夜中にメッセージなんて送んなきゃよかったかも…。でも、今さら取り消すのもなんか違うし…ああ、もう）」ｳ-ﾝ

ﾃﾛﾘﾘﾝ♪

未央「（返信が来た…苦情とかないよね…？）」

未央「（送ってきたのはしぶりんか…）」

ﾋﾟｯ

【へんじはない。ただのしかばねのようだ】

未央「…」

ﾎﾟﾁﾎﾟﾁ...ﾋﾟｯ

【返事してるじゃん】

【おはよう未央。久しぶりだね】

【久しぶり。8時間ぶりくらいかな？】

【そうだね。私はいま目が覚めたところ。寝落ちしてたんだ】

【そっか。昨日のレッスンきつかったもんね】

【そうだね。未央、眠れないの？】

【左様】

【なら事後のピロートークしようよ】

【ならって何さ。手を出した覚えはございませんが】

【とぼけちゃって…あんなことしておいて…///】

【誤解を招くような発言はおやめなさい。仮にもグループトークなんだから】

【いま睡眠中の皆さん。実はいま未央と2人きりです】

【物理的には離れているからね。それからしぶりん。そろそろストップだよ】

【あ、だめ…2人きりだからってそんなところ触らないでよ未央…///】

【おかしいな。ブレーキをかけたつもりがアクセル全開になったね？】

【嘘も100回繰り返せば真実になる】

【嘘って自覚してる辺りがタチ悪いよ】

【タチとネコの話かな？】

【何の話？】

【あ、未央はわからないんだ】

【？】

【それはそうとしてさ。暇してるでしょ？】

【まーね】

【今日はレッスンも学校もないしさ】

【うん】

【日の出を見に行こうよ】

【日の出？】

（事務所前）

【AM4:45】

未央「（うう…寒っ…春だけど朝はまだ冷え込むなぁ…）」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

凛「おはよう。未央」ﾋﾟｯ

未央「おはよう。しぶりん。言われた通り事務所来たけど…空いてないよ？」

凛「非常用階段があるでしょ。登って屋上行こうよ」

未央「え、立ち入り禁止だよね？」

凛「知ってるけど。嫌なの？」

未央「…」

未央「むしろ、テンションあがる」ﾆﾀﾘ

凛「でしょ。裏に回ろうよ」ﾆﾀﾘ

ﾃｸﾃｸﾃｸ...

未央「…しまむーは起きなかったね」

凛「そりゃ5時前だもん。卯月、毎日12時に寝て7時に起きてるって言ってたよ」

未央「健康的だねえ。眠れない日とかないのかな？」

凛「どうだろ」

未央「しぶりんはないの？ そういう日？」

凛「あるよ」

未央「そういう時って何してる？」

凛「プロデューサーのシャツの匂いを嗅いで安心してる」

未央「あ、はい」

凛「冗談だよ？」

未央「冗談に聞こえないんだよなぁ」

凛「天井見つめてぼーっとしてる」

未央「ふーん」

凛「未央は何してたの？」

未央「起きて赤いきつね食べてた」

凛「夜のきつねは最高に美味しいよね」

未央「うん。夜のきつねは最高に美味しいかったよ」

凛「でも」

未央「でも？」

凛「太るよ」

未央「だ、大丈夫。こうやって動いてるから！」

凛「ふーん…私は知らないよ？」

未央「やめてー！ 痛いところをつかないでー！」

凛「ふふっ」

ｶﾀﾝ...ｶﾀﾝ...ｶﾀﾝ...

未央「あ、看板は普通にくぐれそうだね」

凛「ここが塞がってたら非常用階段の意味がないから」

ｶﾀﾝ...ｶﾀﾝ...ｶﾀﾝ...

凛「着いたね」

未央「着いたねー。やっぱ寒いっ！」ｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀ

凛「温まろうか？」

未央「どうやって」

凛「人肌で」

未央「今日のしぶりんは肉食系の荒ぶり方をしているね」

凛「深夜のテンションなんだよ。許して」

ｶﾁｬﾘ...ﾎﾟﾁｯ...ｶﾞﾀﾝ!

凛「はい。ポタージュでいい？」

未央「ありがと」ｸﾞﾋﾞﾂ

凛「ん」ｸﾞﾋﾞｯ

未央「…飲んでも飲んでもコーンの粒が食べられないんだよねぇ」

凛「私は最初にちゃんと振ったから口の中に入ってくるよ」

未央「なんと趣のないことを」

凛「パッケージに『振ってください』って書いてあるじゃん」

未央「底に溜まったコーンに苦しむのがロックでしょう」

凛「意味わからないよ」

未央「私も言ってて馬鹿だなとは思った」

凛「…このコーンポタージュってさ。正直、欠陥商品だよね」

未央「食べにくいから？」

凛「うん腹立たしい。美味しいけどさ」

未央「かー、風情をわかってませんなー」ｸﾞﾋﾞｯ

凛「風情ねぇ」ｸﾞﾋﾞｯ

未央「…」

凛「…」

未央「…ていうかなんで日の出？」

凛「私。初日の出見てないんだ」

未央「あ、そうなの？」

凛「毎年、除夜の鐘を聞いたら満足しちゃうんだ」

未央「私は元旦に見たよ」

凛「目覚ましセットするの？」

未央「うん。する」

凛「最近さ、『富士山で初日の出を見る！』みたいなのが流行ってるみたいじゃん」

未央「ちょくちょくテレビでやってるね」

凛「ああいうのはちょっと憧れる」

未央「家での初日の出は？」

凛「見ても『はいそうですか』で終わってすぐ寝ちゃうから」

未央「確かに感動の余韻に浸れるようなものではないね」

凛「でしょ」

未央「…」

凛「…」

ﾁｭﾝ...ﾁｭﾝ...

未央「日の出だぁ」

凛「明けましておめでとう」

未央「あはは。それはタイミングが違うでしょ」

凛「ふぁぁ…」

未央「…眠い？」

凛「ちょっと。でも寝る気がしない」

未央「わかる。散歩でもしようか」

凛「いいよ」

（しばらくして）

ﾃｸﾃｸﾃｸ...

凛「…」

未央「…」

凛「…こうして歩いてるとこ学校の先生に見られたらさ」

未央「うん？」

凛「朝帰りだって誤解される…///」

未央「されてたまるか」

凛「変な噂が立ったらどうしよう」

未央「安心してよしぶりん。すでに怪しげな噂はたくさん立ってるから」

凛「どういう？」

未央「匂いを嗅ぎたがるとか、毎日プロデューサーの家をピッキングしてるとか」

凛「心外だね」

未央「根も葉もない噂だと？」

凛「ピッキングなんてしないよ。合鍵（無許可複製）があるもん」

未央「前半は否定していないし、後半は何かおかしいなぁ」

凛「未央も合鍵欲しい？ 余ってるからあげるよ」

未央「プロデューサーの許可なく、気前よく分け与えるのはやめた方がいいと思うんだ」

凛「欲望に素直になりなよ」

未央「少しは節制なさい」

凛「…」

未央「…」

ﾃｸﾃｸﾃｸ...
ﾃﾛﾘﾛﾘﾝ♪

未央「あ、しまむーからLINE返ってきた」

凛「なんて？」

未央「ちょいまち」

ﾋﾟｯ

【未央ちゃん…凛ちゃん…2人ともそういう関係だったんですか…？】

未央「ほらァ！ 誤解されてるじゃん！ がっつり誤解されてるじゃん！」

凛「…」ﾎﾟﾁﾎﾟﾁ

【卯月。応援してくれる？】

【やめろやァ！ しまむー！ 誤解だからね！？】

【は、はい。でも、最近は同性の恋愛も認められてきていますし…私は隠さなくても気にしませんよ？】

【誤解だぁー！】

未央「こらしぶりん。しまむーがあらぬことを信じちゃったじゃん」

凛「めんご☆」

未央「めんご☆ じゃないよ！」

凛「ふぁぁぁ…ま、誤解はゆっくり解いていけばいいよ」

未央「眠いからって危機感なく問題の種をばら撒くのはおやめなさい」

凛「んー…」

未央「…」

凛「…」

未央「事務所行こう。そろそろ空くはずだし、仮眠室で寝たら？」

凛「休憩のお誘い？」

未央「何か引っかかるけど。そうだね」

凛「…そうしようか」ﾎﾞ-ｯ

未央「よーし。歩こう」

凛「肩貸して」

未央「…しょうがないなぁ」ｽｯ

未央「…」

未央「（そういえばいつの間にか悩んでるのがなくなったな…）」

凛「…歩くのだるい」ｸﾞﾃﾞ-ﾝ

未央「ほーら、シャンとしなさい♪」

（後日）

未央「おっはよー！ プロデューサーくん♪」

P「お、おう。おはよう未央」

未央「…どしたのプロデューサー。そんな微妙な反応して？」

P「さっきネットのニュースで…」

【本田未央。渋谷凛と朝デートか】

未央「」

P「事務所でも2人ができてるって噂が広がってるんだけど」

未央「誤解だよ！？」

終わり

以上です。
お読みいただきありがとうございました。

赤でも緑でもなく、紺のきつねが1番好きです。

おつおつ
深夜の雰囲気いいよね