以前投稿した『自衛艦隊これくしょん―抜錨! 第1輸送隊―』の続編です。
自衛艦の艦娘化もの。オリキャラがメインとなります。
またこの作品は完全なフィクションであり、実際の組織、人物、団体、艦艇、事件、出来事とは一切合切関係がありません。
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おおすみ「……この日が、来てしまいました」
私はカレンダーを見て、深い、そりゃあもう深いため息をつきました。
しもきた「ねーさん、まだ決まったわけじゃないからさ。そんな顔しないでよ」
くにさき「運が逃げちゃうよー」
妹二人が慰めてくれますが、気分は一向に晴れません。ああ、どうしましょう……。
ご紹介が遅れてしまいました。
私は海上自衛隊、自衛艦隊掃海隊群第1輸送隊に所属する、おおすみ型輸送艦のおおすみです。
第1輸送隊は呉にその本部が置かれており、私たち3姉妹も呉基地を本拠にしています。
呉基地には呉地方隊、及び、旧軍の鎮守府に当たる呉地方総監部が置かれています。
その総監が、特別イベントの開催を告知したのはちょうど昨日の晩。時期的にどんなイベントなのか、すでに予想がついています。
おおすみ「そうです。まだ、まだ我々と決まったわけではありません。……節分の鬼役が」
登場人物の紹介
おおすみ型輸送艦―――自衛隊で初めて全通甲板を持った艦として生まれた。強襲揚陸艦のような形をしてLST(戦車揚陸艦)を名乗りながら実態はドック型揚陸艦。ヘリの運用能力がないので艦載機はない。離発着ができるだけである。どっかで聞いた話? よくあることだ。どうしてこうなったかと言うと、現場の切実な要望(「PKOにあんな小さな艦(みうら型)で行けるかぁっ!」)と海自上層部の壮大な野望(「空母ほしいな」)と政治上の複雑な事情(「空母持つと外国とかマスコミとか左派政党とか市民団体とかがうるさいんだよな」)がせめぎ合った結果らしい。なんだかんだ言われながらも災害派遣や国際援助などで着実な成果を上げ、今話題の島嶼防衛にも不可欠となっている。しれっと対地攻撃能力(陸自のMLRS)を持っていたりする。LCAC(エアクッション艇)を二隻積んでおり、彼女らのおかげで世界中の海岸線の70パーセントに物資の輸送が可能。ちなみにLCACも自衛艦籍を持つ立派な自衛艦娘。任務の時は艤装の中にいるが普段は別行動をしている。
おおすみ―――上記おおすみ型の一番艦。長女として政治的修羅場を多く潜り抜けた。就航当初は横揺れ防止装置もなかったが、トルコへの連続23日無補給航行を海自で初めて成功させている。そのせいか周囲に気を使う真面目な性格なのに、実は豪胆で血の気も濃い面もある。地味に海自の中でも排水量が大きい方で、年齢的には10代後半から20代前半ぐらい。昔を知る人からは「あきつ丸に似てる」と言われるが、胸は全通甲板である。
しもきた―――おおすみ型2番艦。世間の露払いをした姉のおかげで最初から割とフルスペックで(フェンスタビライザーをつけて)誕生した。色々話題になっていた時にオスプレイを乗せたり、陸自の多連装ミサイルシステムを甲板から発射(する訓練)をしたり、と躊躇しない性格で、かなりのめんどくさがり屋。姉より若干幼く、髪の毛もぼさぼさ伸びっ放し。制服の着方もだらしない。
くにさき―――おおすみ型3番艦。姉二人に比べるとアクのない天心爛漫な性格。だがおおおすみ型らしくやることはきちっとやっている。甘えん坊だが真面目なので姉たちのツッコミに回ることも多い。癖っ毛のショートカットで、おしゃれにもよく気を使う。
…………
総監「と、いうわけで、今年の鬼は第1輸送隊だー!!」
おおすみ「なんてこったい」
しもきた「畜生ぉぉぉぉぉぉぉぉ」
くにさき「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ」
総監「よーし、じゃあそれ以外の連中はとわだから豆貰えよー。あ、輸送隊はこの鬼のお面な」
おおすみ「ちょっと待ってくださいよ! なんで私たちなんですか! 殺す気ですか!」
しもきた「もしかして総監、この間のビデオの賞品だった『はるしお型潜水艦(原型)型ボールペン』メルカリで売ったこと根に持ってるでしょ」
くにさき「大人げなーい!」
総監「そんなことはない。メルカリなのに結局一本も売れなかったことなんてまったく気にしてない」
おおすみ「気にしてるじゃないですか」
総監「いいか、この豆まき……、もとい冬季基地警備特別訓練は大切な訓練だ。お前たちなら鬼、じゃなくて侵入者役もしっかり勤められるだろうという私からの期待だと思ってほしい」
しもきた「恨みの間違いじゃないの?」
総監「よぉーし! じゃあ一三〇〇より訓練を開始する! 各自準備にかかるように!」
おおすみ「あ、ちょっと総監!?」
くにさき「行っちゃった……」
…………
冬季基地警備特別訓練―節分―。なぜ我々がこれほどまでに恐れているのかを説明するなら、去年の鬼役だった第4護衛隊がしばらく炒り大豆を見ると艤装を展開しようとした、と言えば十分でしょう。
おおすみ「何かと本気になりやすい自衛艦娘の面々に、節分などと言う武闘派イベントを与えることがそもそもの間違いなんですよ……」
しもきた「さすが、去年豆満載したエアクッション艇1号ぶつけたねーさんは言うことが違うねぇ。節分はそもそも武闘派イベントじゃないし」
くにさき「絶対やり返されるよ……。4護隊のさみだれちゃんすごくうれしそうな顔して豆貰ってたもん」
おおすみ「ぐ、このままでは私たちが豆の餌食になることは確実……」
しもきた「艤装はなし、って話だけど、素で強い人らそろってるもんなぁ。護衛艦って対人戦闘極めてるんだよね、確か」
くにさき「護衛艦付き立入検査隊ってやつだっけ?」
おおすみ「ええ。立検隊スキルに敵うほど我々の戦闘能力は高くありませんし……。ううう、死にたくないなぁ」
しもきた「……なんか悔しくない?」
おおすみ「は?」
しもきた「一方的にやられるのはさ、なんか腹立たしくない? なめられてるみたいで」
くにさき「確かに! 輸送艦なめんなー!」
しもきた「だからさ、ちょっと本気でやってやろーじゃん。節分、いや、『基地警備特別訓練』」
おおすみ「…………。それもそうですね」
ここでオーケーしてしまう分、私もずいぶん血の気の濃い方なのかもしれません。
一三〇〇。海上自衛隊 自衛艦娘艦隊 呉地方総監部庁舎 中央ロビー。
第4護衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦、かがは眉をひそめていた。
かが「……来ませんね、第1輸送隊」
おなじく4護隊のむらさめ型汎用護衛艦、いなづまも首を傾げる。
いなづま「いつもならロビーでみんな集合してから始めるのですけど……」
さみだれ「遅刻、ですかね?」
さざなみ「私たちにビビっちゃったとか?」
いなづまと同じく4護隊に所属する護衛艦、さみだれとさざなみも顔を見合わせる。
ぶんご「まったく、だとしたら情けない話だねぇ」
かが「あなたは、第3掃海隊掃海母艦のぶんごさん?」
ぶんご「ああ。いつまでたっても始まらないからあいしまとみやじまを連れて様子を見に来たんだけどね」
ぶんごの後ろには、第3掃海隊の掃海艇、あいしまとみやじまがいた。
さざなみ「輸送隊って修羅場くぐってきたって聞いたけど、案外大したことないのかなー?」
みやじま「いや、油断は禁物じゃ、さざなみ」
あいしま「1輸隊はあれでなかなかヤンチャ共の集団ですから……」
かが「どういうことですか? おおすみさんなどは結構真面目そうですが」
あいしま「おおすみさんがあれで一番の問題児なんですよねー、実は」
みやじま「そもそも真面目な奴は全通甲板なんぞ持って生まれてこんわ」
ぶんご「海上自衛隊の異端児だったらしいからねぇ」
かが「……海自内の全通甲板の扱われ方って」
その時、館内放送を流すスピーカーが起動した。
おおすみ『チェック、ワン、ツー。ワン、ツー。きりしまさんじゃありませんよー。おおすみです』
いなづま「す、スピーカーからおおすみさんの声が!?」
おおすみ『この度の鬼役の不当な報復人事に抗議して、第1輸送隊は蜂起することを決定しました』
しもきた『ってわけで、私たちは全力を持って総監を狙いに行くからそのつもりで』
くにさき『ルールは豆まきのままで行くからね! 艤装は使わないよー』
しもきた『あとこの音声は録音したやつを内部回線を使って遠隔操作で流してるだけだから、放送室に来ても無駄だよ』
おおすみ『では、みなさんの健闘をお祈りします。Good luck』
かが「」
いなづま「」
さみだれ「」
さざなみ「」
ぶんご「」
あいしま「」
みやじま「」
かが「ひ、非常呼集っ!! 総員、第一種戦闘配置に!!」
こうして、冬季基地警備特別訓練カッコガチが始まりを告げました。
――総監執務室 臨時警備本部――
かが「正面玄関には第101掃海隊、第1海上訓練支援隊、裏口には第3掃海隊及び練習艦隊が配備。警備システムの監視を第1音響測定隊が、各所の巡回警備を第1潜水隊群と第1エアクッション艇隊が行っています」
いなづま「いなづまたちと、第12護衛隊は輸送隊が侵入してきたときに現場に急行して制圧する役なのです!」
うみぎり「うちら12護隊も主力っすからねー。頑張るっスよ、あぶくま、とね!」
あぶくま「はい! 私たちの実力をみせてやりましょう、うみぎりさん」
とね「腕が鳴るのぉ」
かが「全体の指揮を私、かがが担当します。総監には指一本、豆一粒触らせません」
総監「なんかえらいことになっちゃったなー」
かが「本当に。まさかあの人たちがここまでするなんて」
総監「全通甲板だしな……」
かが「その全通甲板への偏見はどうにかなりませんか?」
はりま「あ、あの、第1音響測定隊、音響測定艦のはりまです! 定時監視報告にきました!」
ひびき「同じく、ひびきだよ。今のところ、監視カメラの映像に異常はないね。警邏部隊からも特に報告はない」
かが「……エアクッション艇隊の動向は?」
ひびき「今のところ問題はないかな。外部と通信を取っている様子もないしね」
かが「エアクッション艇は本来、おおすみ型に付属している子たちですから、内通している可能性があります。彼女たちの監視も怠らないようにしてください」
ひびき「ダー」
はりま「わ、わかりました」
かが「航空母艦の名に懸けて、何としても守り通します」
総監「DDHだから。お前ヘリ搭載型護衛艦だからな!」
…………
かが「いったい、いつになったら現れるのかしら……」
さみだれ「宣戦布告からもう3時間は立ちますよ?」
ひびき「館内の警備システムはうんともすんとも言わないね」
ぶんご「裏門警備のだが、艦影どころか人影もない。まったく、あいつら、どこで何してるのやら……」
てんりゅう「表門の第1海上訓練支援隊だが、怪しい奴はいねえな。それよりも」
ちはや「潜水隊群統括、潜水艦救難艦のちはやだけど……、潜水艦の娘たちがそろそろ退屈してきちゃったみたいなんだよぉ」
おやしお「そこで、練習潜水艦隊から提案です。こちらから仕掛ける、というのはいかがでしょうか」
かが「なるほど……。では館内哨戒中の潜水隊群を索敵に出しましょう。ぶんごさんと練習艦隊のかしまさん、ちはやさんはそれぞれ1潜隊、3潜隊 5潜隊についてあげて下さい」
ぶんご「それじゃあ館内の守りが手薄になるんじゃないのかい?」
かが「主力は残します。問題ありません。1輸隊を発見し次第連絡をお願いします」
ぶんご「あいよ。かしまにも伝えとくよ」
かが「では、各員行動を開始してください」
…………
裏口 第3掃海隊『みやじま』『あいしま』・練習艦隊『しまゆき』『せとゆき』『やまゆき』
みやじま「暇じゃのー」
あいしま「ぶんご様が行ってしまわれた……。ああ、私はなぜここにいるんだろう……」
しまゆき「私たち練習艦隊も、かしま様が行ってしまわれましたし、退屈ですわねー。せとゆき、何か面白い話はありませぬこと?」
せとゆき「あ! じゃあしまゆき、一緒にツムツムしない?」
しまゆき「そーゆースマホとかは感心しませんわねー。お嬢様っぽいやつにして下さいません?」
やまゆき「…………」
しまゆき「やまゆき? どうかいたしましたの? さっきからずーっとスマホ見ておりますが」
やまゆき「みやじま、大変ですよ……」
みやじま「ほ? わしか?」
やまゆき「今、ツイッターで回ってきたのですよ……。カープの選手が呉の球場でトレーニングをしていると!」
みやじま「な、何じゃと!?」
しまゆき「何を言ってるんでございますのやまゆき!」
せとゆき「ほら、やまゆきって海自1のカープファンだし……。みやじまも地元びいきだから」
やまゆき「こんな事している場合じゃないのですよ! カープを見に行かなくては!!」
みやじま「そ、そうじゃな! 行くぞやまゆき」
やまゆき「おう、ですよ!」
しまゆき「あ、ちょっと待つのでございますよ! ここの持ち場は離れるなとかしま様が!!」
せとゆき「ちょっと! しまゆき……。あ、フィーバーだ!」
あいしま「ぶんご様、ああぶんご様、ぶんご様……」
しもきた「…………」
くにさき「…………」
しもきた「みやじま、やまゆき、しまゆきはどっか行った」
くにさき「せとゆきちゃんはスマホに夢中で、あいしまちゃんは心ここにあらずって感じだね」
しもきた「おかげで……」
くにさき「侵入成功!」
しもきた「ふっふっふ。やまゆきも駄目だねー。ネットの情報うのみにするなんて」
くにさき「しもきたお姉ちゃんが裏アカで拡散したデマなのにねー。せとゆきちゃんがああなっちゃったのは偶然だったけど」
しもきた「とにかく、中には入れた。でも監視装置ぐらいあるだろうから、急いで総監室まで」
ジリリリリリリリリリリリリリリリリ
かが『対象2名の侵入を確認、4護隊は現場に急行せよ』
しもきた「……いきなり主力か。頼むよ、ねーさん」
………………
かが「しもきたさんとくにさきさんですか……。おおすみさんの姿がないのが気になりますが、4護隊ならば殲滅できるでしょう」
総監「さすがに過剰戦力じゃないか? なんだかんだいっても、輸送隊は補助艦艇だし」
うみぎり「うちら12護隊に任せてくれてもよかったんっすよ?」
かが「おそらく二人を陽動として、おおすみさんがどこか別のところから潜入しようとしているのでしょう。4護隊以外は通常配備を続けて下さい」
うみぎり「なるほど、了解っす!」
あぶくま「わかりました!」
とね「うむ、任せておけ!」
…………
しもきた「なんでだろう、頭ん中にターミネーターのテーマソングが流れてきた」
くにさき「くにさきも……」
いなづま「ふふふ、やっと出てきてくれたのです」
さみだれ「去年のお礼がやっとできますね」
さざなみ「ほら、待ち過ぎちゃって、豆を握りつぶしちゃったじゃん」
しもきた「さ、さざなみの大豆がきな粉になってる……」
くにさき「オーラがすごいよ……。さすがベテラン護衛艦」
しもきた「初期艦トリオ、やっぱりすごいな……」
いなづま「いなづまの本気を見るのですっ!!」
さみだれ「やぁー!!」
さざなみ「徹底的にやっちまうのねっ!」
しもきた「避けろ、くにさきっ!!」
ズドン、ズガガガガッ。
しもきた「豆だよね!? この人ら豆投げてるんだよね!?」
くにさき「か、壁に穴が……」
いなづま「まだまだなのですよ?」
さみだれ「節分は始まったばかりですから」
さざなみ「ソマリアで鍛えた腕、見せてやるっ!」
ボンっ、ドドン、ドガドガドガッ。
しもきた「戻れ! 戻ればまた来られるからっ!」
くにさき「こーいう時に使っていいセリフじゃないよお姉ちゃん!」
しもきた「それに、もうそろそろねーさんが」
くにさき「おおすみ、お姉ちゃん……」
…………
けんりゅう「……ねー、くろしお」
くろしお「んー? どないしたん」
けんりゅう「あのヘリコプター、なんか近い」
もちしお「あれは……、陸自さんのヘリじゃないでしょーか! もちしおは詳しく知りませんが」
けんりゅう「こっち、来てる」
くろしお「ホンマやなぁ。今日なんかあったっけ?」
もちしお「えーと、……しいて言うなら節分では?」
けんりゅう「もしかして、鬼?」
くろしお「まさかぁ。今日の鬼は第1輸送隊やろ? なんかあれやろ、総監に用事があって来たんやない?」
かしま「みなさーん! どうかしましたかー?」
くろしお「なんでもないでー! 今行くわー! ほら、行くで」
もちしお「そうですね!」
くろしお「うちらの仕事はおおすみを探すこと。潜水艦の本領発揮や!」
けんりゅう「了解」
もちしお「張り切っていきましょー!」
かしま「早く来てくださーい!!」
…………
しもきた「く、もはやこれまで……」
くにさき「追い詰められちゃったよぉ」
いなづま「大丈夫なのです。去年みたいな目には合わせないのです」
さみだれ「ただ、ちょっとだけ仕返しをさせてもらいますね」
さざなみ「だいじょーぶだいじょーぶ、痛いのは最初だけだから!」
おおすみ「それは結構ギリギリなセリフでは?」
いなづま「え!?」
さみだれ「ウソ!?」
さざなみ「マジ卍!?」
振り返ったお三方が驚愕の表情を浮かべるのはよく理解できます。
なぜなら私、おおすみの後ろには、完全武装の陸自隊員たちが銃を構えて立っているのですから。
『こちらアルファ。司令室の制圧を完了した』
おおすみ「了解しました。以上で状況終了とします」
その報告を受け、私たちは悠々と総監室に向かいます。
総監「……いったい何をした、おおすみ」
おでこにぺたりと『死亡』と書かれた紙を貼られた総監が聞いてきましたので、私は笑顔で答えました。
おおすみ「基地警備特別訓練の一環として、懇意にしている水陸機動団の方々にご協力いただきました」
陸上自衛隊水陸機動団。
現在陸自における唯一の水陸両用部隊であり、主に上陸作戦などを行う、精鋭部隊です。元々は西部方面普通科連隊、西普連と呼ばれていました。
私たち第1輸送隊は彼らと共に訓練を行うことが多く、団長さんや団員さんたちによく可愛がられているのです。
と、言うわけで協力してもらいました。豆まきのルールに艤装禁止はありましたが、友達を頼ってはいけないというのはありませんでしたし。
かが「……なるほど。よく理解できました」
『鹵獲』の紙を貼られたかがさんが頷きます。
おおすみ「艦娘といえど、艤装もない陸上では武装した水陸機動団に勝てるはずもありません。充実した警備訓練になったのでは?」
総監「そうだな」
しもきた「あんまり輸送艦なめるなーって話だよ、わかった?」
総監「そうだな」
くにさき「私たちが陽動として主力をここから遠ざけてる間に、おおすみお姉ちゃんが機動団を先導して屋上にヘリボーン降下して、執務室を制圧する手はずだったんだ。うまく言ったでしょ?」
総監「そうだな」
おおすみ「と、言うわけで今年の節分は我々鬼の勝利と言うことで」
総監「その前に一つ言うぞ。アホかお前らぁぁぁぁあああああああああっ!!!!!」
めちゃくちゃ怒られました。
おおすみ「理不尽です……」
しもきた「うまくやったつもりだったんだけどなぁ」
くにさき「うわーん!」
とわだ「いや、どこの世界に豆まきすんのに特殊部隊呼ぶ奴がいるのよ」
我々第1輸送隊には、罰として補給艦『とわだ』が経営するなんでも屋さん『青江(せいこう)マート』の手伝いを命じられました。ただでさえ輸送任務は人手不足で大変なのに……。
とわだ「とりあえず、そこの箱の中身はこっちの棚に並べといてー。しもきたは厨房ね」
おおすみ「この恨み、晴らさずにおくべきか……」
しもきた「次はうまくやってやる……」
くにさき「今度もがんばろーね! お姉ちゃんたち!」
とわだ「おいコラ反省しろ輸送艦ズ」
おおすみ「冗談ですよ。輸送艦jokeです」
しもきた「まったく、とわだも総監もhumorがないんだよ」
くにさき「機動団の人もいい訓練になったって喜んでたのになー」
とわだ「まったく、あんたらの冗談は冗談に聞こえないから厄介なのよね。あ、そうだ、今日のメニューだった恵方巻があるから、それが終わったら食べる?」
おおすみ「頂きます!」
とわだ「普通のと私オリジナルの奴があるけどどっちが」
しもきた「普通の。絶対普通の」
くにさき「ちなみにとわだオリジナルってどんなの?」
とわだ「まずね、恵方巻にお米を使うっていう発想から離れて、あえてパクチーを使ってみたのよ」
おおすみ「なんで離れたんですか」
しもきた「そしてなぜパクチー」
とわだ「今シャリが大根のお寿司ってあるじゃん? そんでパクチー流行ってるじゃん? だからパクチーをパクチーで巻いて具材もパクチーに」
くにさき「それパクチーだよ。恵方巻でもなんでもないよ。普通の料理の腕はいいのに、なんでいっつもそんな独創的な方に行っちゃうの?」
とわだ「いやさ、やっぱ間宮さんを超えるには必要かなって。でも流行ってるって言ったのに誰も食べなかったのよねー、パクチーのパクチー巻。せっかくだから三人食べてってよ。めっちゃ余っちゃってさ」
おおすみ「え?」
とわだ「食べてくれたらもう手伝い終わっていいし。うん、そうしよう。忙しいんでしょ?」
しもきた「いや、でも……」
とわだ「人数分作ってるからさ。あ、食べたかったらもっと作るよ?」
くにさき「ひっ、ひぃ~~~」
もうこんなことはしない。お皿にてんこ盛りの、形だけは恵方巻のパクチーの塊を前に、我々は固く誓ったのでした。
おまけ
第1エアクッション艇隊の節分
1号「まぁたおおすみ達がやらかしたとよ。あの子ら、いつまでたっても変わらんばい」
2号「せやなぁ。ま、うちらとしては何の被害もなかったさかい、構わへんどすけど」
3号「んだねぇ。でもぉ、しもきたさん達、罰でとわださんのパクチー巻食べさせられたらしいべ?」
4号「それは災難な話でありますなぁ。あれを食べさせられるなんてなかなか災難な罰でありますよ」
5号「にしてもよ! 僕らの活躍の場がないのはゆゆしき事態だよ! エアクッション艇隊の存在感の危機だよ!」
6号「まったくだぜ。去年みたいに派手に暴れてやりたかったが……。くにさきに言ってやる~!」
おおすみ「いっちゃーん、にぃさーん、何してるんですかー!」
しもきた「みぃ、しぃ、訓練の予定が入ったから説明するよー」
くにさき「ごーくん、ろっくん、どこ行ったのー!」
1号「あ、おおすみばい!」
2号「もう怒られ終わったんどすな」
3号「そうみたいだべ」
4号「さっそく訓練とは、われらが輩ながら忙しいでありますな」
5号「ま、活躍は訓練で見せようかな?」
6号「おうよ、俺らの実力、見せつけてやろーぜ!」
総監「LCACとおおすみ型が並ぶとあれだな」
かが「小学生と教育実習生みたいですね」
以上です。おおすみ型が主役なのはすごいキャラが立っている気がしたから。他の自衛艦娘がメインの話も書いてみたいと思っています。
閲覧ありがとうございました。
おつつ
おもしろかった
おつ!
面白いしまた書いてほしいわ
乙
そういや自衛艦に吹雪と叢雲っていたっけ?
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