にこ「初詣に行く」 (37)
にこ「ふわぁ~」
ここあ「あっ、お姉ちゃん!」
にこ「おはよー」
こころ「お姉さま。あけましておめでとうございます」
こころ「おっめでとぅ!」
虎太朗「めでとー」
にこ「はい。おめでとう」
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ここあ「お姉ちゃん、寝すぎ」
こころ「仕方ありませんわ。お姉さまは、おそくまでお仕事をしていたのだから」
虎太朗「おつかれー」
にこ「あぁ、うん。大丈夫、大丈夫。お姉ちゃんは平気だから!」
にこ(ほんとは結構疲れたけど)
こころ「さすが、お姉さまですわ!」
にこ「ところでママは?」
ここあ「出かけた」
にこ「行き先は?」
こころ「おともだちの方と会うみたいです」
にこ「ふーん」
クイッ、クイッ
にこ「ん?」
虎太朗「あそびにいこー」
にこ「遊びにって、何処へ?」
虎太朗「どこでもー」
にこ「何処でもいいのかぁ……こころ達は、どっか行きたい?」
こころ「そうですね……」
ここあ「んー」
ピコーン♪
ここあ「あっ、じゃあ! 初詣いこ!」
にこ「あれ、まだ行ってないの?」
こころ「お姉さまが寝てらっしゃたので、まだ行ってません」
虎太朗「ぐっすりー」
にこ(あぁ、待っててくれたのね)
にこ「よーし、じゃあ初詣行こっか」
三人「わーい」
にこ「急いで仕度するわよ」
三人「はーい」
にこ「それじゃあ……始め!」
三人「おー!」
にこ(ふふっ、相変わらず元気ね)
◇
ここあ「はぇ~」
ワイワイ、ガヤガヤ
こころ「人がたっくさんいますわぁ」
虎太朗「いっぱぁ~い」
にこ「これだけ人が多いんだから、はぐれないようお姉ちゃんの側にいなさい」
三人「りょーかい」
にこ「にしても、すごい行列ね」
こころ「お姉さまは、さっきまでここでバイトしてらしたのですよね?」
にこ「そうよ。ほら、あそこの女の人……巫女っていうんだけど、あの格好をして仕事してたのよ」
こころ「すごいです!」
ここあ「かっこいい!」
虎太朗「みたかったぁ」
にこ「機会があれば見せてあげるわよ」
三人「やったぁ」
にこ「機会があれば、ね」
にこ(あるのかしら?)
こころ「それでは、おまいりしましょう」
にこ「列の最後尾は、っと」
ここあ「あそこだよ」
にこ「うわぁ……」
虎太朗「なが~い」
にこ「これ、時間かかりそうね」
こころ「でも、しかたないです」
ここあ「並ばないと」
虎太朗「がまん~」
にこ「とは言っても」
にこ(これだけの人の多さ)
ワイワイ、ガヤガヤ
にこ(この子達が迷子になったら洒落にならないわね)
虎太朗「ならぶ~」
ここあ「あっ、まて虎太朗」
こころ「勝手にいっちゃダメ!」
虎太朗「は~い」
にこ(はて……どうする?)
「おっ、にこっちやん」
にこ(ん?)
にこ「の、希!」
希「お参りか?」
にこ「そうよ。妹と弟も一緒だけど」
希「そっかぁ」
にこ「あんたは一人?」
希「いんや。一人やなくて……」
絵里「相変わらず人が多いわねぇ」
希「おっ、えりち。こっちやこっち」
絵里「あら、にこじゃない」
にこ「希は絵里と一緒に来たのね」
希「そう」
絵里「偶然ね。にこも参拝でしょ」
にこ「そうよ。まぁでも、私は……」
こころ「あー!」
ここあ「前にウチにきた」
虎太朗「ばっくだんさー」
希「『元』が付くけどね」
絵里「妹さんや弟さんも一緒なのね」
にこ「お姉ちゃんですから」
希「なぁ、ここで会ったのも何かの縁やし、一緒に参拝しよか」
こころ「はい」
ここあ「いいよ」
虎太朗「いい~」
にこ「いいの?」
絵里「別に構わないわよ」
希「こんなに人が多いと、にこっちも妹さん達の面倒見るの大変そうやし」
絵里「役割分担ってことで、どう?」
にこ「えぇ、お願いするわ」
希「よし! 決まりやね」
◆
にこ「なかなか動かないわね」
虎太朗「つかれた~」
にこ「もうちょっとの辛抱よ」
虎太朗「う~ん」
にこ「そっちは大丈……って、あれ? 希と絵里は?」
虎太朗「うしろ~」
にこ「あっ、ほんとだ」
ここあ「お姉ちゃんたちの方が早くない?」
希「ほんまやなぁ」
ここあ「なんとか追いつけない?」
希「ウチのスピリチュアルを持ってしても、無理やなぁ」
ここあ「スピリチュアルって?」
希「スピリチュアルはスピリチュアルや。そりゃもう、スピリチュアルよ」
ここあ「よくわかんな~い」
希「いつか分かる日がくると思うわ」
ここあ「へぇー」
こころ「お姉さまたちと、どんどん差が付きますね」
絵里「本当にね」
こころ「いつ頃、追いつくのでしょうか?」
絵里「分からないわね、こころちゃん」
こころ「言うな! とは言わせませんわ」
絵里「う、うん……」
警備員「はい。入場規制の為、少々お待ちください」
こころ「運がありませんね」
絵里(お祓いしてもらおうかしら)
◇
にこ「やっと本殿ね」
虎太朗「と~ちゃ~く」
にこ「はい。これ、お賽銭」
虎太朗「ごえ~ん」
にこ「ご縁があるようにってね」
虎太朗「は~い」
にこ「入れれる?」
虎太朗「だいじょ~ぶ~」
にこ「じゃあ」
虎太朗「ほい」
チャリーン
パンパン
にこ「……」
虎太朗「……」
にこ「……」
虎太朗「……」
にこ「……」
虎太朗「ねぇ」
にこ「何?」
虎太朗「おしっこ」
にこ「!!!」
希「もうすぐやね」
ここあ「あっ、お姉ちゃんと虎太朗だ!」
希「ほんまや」
希(慌ててどないしたんやろ)
希「あっ、せや」
ここあ「どうしたの?」
希「お賽銭あげるわ」
ここあ「ふむ……って、五円玉?」
希「そうや」
ここあ「五円玉ならもってるよ」
希「チッチッチィ~、甘いなぁ」
ここあ「何が?」
希「それはスピリチュアルな五円玉や」
ここあ「ふつーの五円玉とちがうの?」
希「スピリチュアルやから、五円以上の力が籠ってるんよ」
ここあ「まじっ!?」
希「どんな願いもイチコロやで」
ここあ「すげー!!」
希(ウチは子供相手に何やってるんやろ……)
絵里「もう少しね」
こころ「あっ、お姉さまと虎太朗です!」
絵里「ほんと、なんか急いでるみたいだけど」
絵里(トイレに入ってったわね)
こころ「そういえば、絵里さんは何をお願いするのです?」
絵里「願いごとかぁ、特に決めてないわねぇ」
こころ「わたしはもう決まってます!」
絵里「なになに、教えて」
こころ「ナイショです」
警備員「すいません。入場規制の為、しばらくお待ちください」
こころ「今日は厄日ですね」
絵里「そうね……」
◆
にこ「はぁー、疲れた!」
虎太朗「すっきり~」
にこ「虎太朗。ちゃんと手洗った?」
虎太朗「あらった~」
にこ「はい。ハンカチ」
虎太朗「ん」
フキフキ
虎太朗「はい」
希「おまたせ」
にこ「あぁ、そっちも終わったのね」
ここあ「お姉ちゃん」
にこ「ここあ。いい子にしてた?」
ここあ「うん!」
希「お行儀よくしてたで」
にこ「そう」
ここあ「お姉ちゃん、スピリチュアルな五円玉って知ってる?」
にこ「は?」
ここあ「なんでも、五円以上の力があるからどんな願いもイチコロなんだって!」
虎太朗「すげぇ~」
にこ「そ、そう……」
希「な、なんや……」
にこ「妹に変なこと吹き込むんじゃない!?」
希「いや、うん……なんか、悪いなとは思う」
にこ「だいたい、そんな謳い文句に引っ掛かる人間なんている?」
希「いるんちゃう……えりち、とか」
にこ「絵里……あり得そうだからやめて」
絵里「おまたせ」
ここあ「あっ、こころ」
こころ「遅くなりましたわ」
にこ「ちゃんといい子にしてた?」
こころ「もちろんです!」
絵里「もういい子、いい子。驚くくらいいい子だったわよ」
こころ「ほめられました!」
にこ「良かったわね」
ここあ「ねぇねぇ、おみくじやろ!」
こころ「いいですわね!」
虎太朗「やろ~」
希「せやな、やろか」
絵里「そうね。私も今年の運勢、占っておきたいし」
にこ「あんた、そういうのに気にするんだ」
絵里「希といるとね」
にこ「まぁ、確かに」
希「んー?」
にこ「あっ、後さ」
絵里「ん?」
にこ「どんな願いもイチコロ、スピリチュアルな五円玉があったらどう思う?」
絵里「そんなのあるの!?」
にこ「……」
絵里「ちょーだい、ちょーだい!」
にこ(ダメだこりゃ)
にこ「絵里」
にこ「そんなものはない」
絵里「えっ」
にこ「ない」
絵里「えっ」
絵里「えっ」
◇
希「みんな、おみくじ買ったね」
にこ「買ったわよ」
こころ「わたしも」
ここあ「買った!」
虎太朗「ぼくも」
絵里「大吉、来い!」
希「よっしゃ、開けるよ」
希「せーの!」
にこ「どう?」
こころ「吉です」
ここあ「大吉だよ!」
虎太朗「ちゅ~きち~」
にこ「私は小吉。そっちは?」
希「ウチもにこっちと同じ小吉。えりちは?」
絵里「……」
希「えりち?」
絵里「……う」
にこ「はい?」
絵里「凶……」
にこ「……」
希「……」
絵里「ついてない……」
ここあ「でもでも、おみくじが全てじゃないよ」
こころ「そうです。この紙切れで、わたしたちの運命が決まるわけじゃありませんし!」
虎太朗「そ~ゆ~こと~」
絵里「みんなぁ……」
にこ「まぁ、そうよね。おみくじ一枚で運命が決まるなんてアホらしいこと」
希「なんやったら、えりちの為にスピリチュアルグッズを……」
にこ「やめんか!?」
希「ほな、ウチらはここで」
にこ「今日はありがとね」
希「いえいえ」
絵里「それじゃーねー」
希「また新学期になぁ」
にこ「えぇ」
ここあ「さよならー」
こころ「またいつかー」
虎太朗「ばい~」
にこ「んじゃ、私らも帰りますか」
三人「はーい」
◆
ここあ「ねーねー、おねーちゃん」
にこ「何?」
ここあ「お姉ちゃんは、なにをお願いしたの?」
こころ「わたしも訊きたいです」
虎太朗「ぼくも~」
にこ「普通に家内安全とか、みんなが健やかにとかよ」
ここあ「夢がないなぁ」
にこ「じゃあ、みんなはどんなお願いしたのよ」
こころ「えっとですね。お姉さまがアイドルになれますように、と」
にこ「私のことお願いしたの?」
こころ「はい!」
にこ「普通は自分のことをお願いするものなのに」
こころ「お姉さまのしあわせが、わたしたちのしあわせです!」
にこ「もう、この娘ってば」
ここあ「はいはいはーい!」
にこ「ど、どうしたの?」
ここあ「わたしはね。お姉ちゃんがね、あの……あれ、なんだっけ踊るやつ」
虎太朗「らぶらいぶ~」
ここあ「そう、それ! それに優勝するようにお願いした」
虎太朗「ぼくもした~」
にこ「二人とも……」
ここあ「スピリチュアルコインでお願いしたから、優勝間違いなし!」
にこ「いや、あれは……」
にこ(まぁでも、いっか)
にこ「よーし、お姉ちゃんとμ'sのみんなが優勝するところ、あんた達に見せてあげるから楽しみにしてなさい!」
三人「うん!」
にこ「んじゃ、帰って晩御飯よ」
ここあ「今日のごはんは」
こころ「おせちの残りです」
虎太朗「おしょ~がつ~」
四人「いぇーい」
正月早々から
私達、矢澤家は大にぎわい
にしても――
希のアレは効き目あるのかしら?
効果は疑問である――
おしまい
✖虎太朗
○虎太郎
更新中に気づいたが時すでに遅しでした
ので、今回は「虎太朗」表記で
乙
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