ガヴリール「子供なヴィーネと頑張る私」 (60)

―――1―――


目が疲れてきた……。

もう何時間モニターを眺めているのだろう。

カーテンを閉め切っているからか部屋が暗い、時計を見ようにもこう暗いと全く見えないものだ。

私はそう夜目が効く方ではない。

天使の力を使えば明るくはできるもののそんなことのために疲れることはしたくない。

まあ、時間は分からなくてもゲームはできる。

それに今日は学生の立場なら誰もが喜ぶ土曜日だ。

朝だからと言って口うるさい悪魔は迎えには来ないだろう。

さて、目を休めてからゲームを再開しよう。



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目を閉じるだけで疲れ目には気持ちの良いものだ。

このまま寝てしまうのも良いかもしれない。

そう考えながら目を瞑っていると訪問者を知らせる音が響く。

誰だこんな時間に……

いや、そういえば時間を確認していないのだから私の方がおかしいのかもしれない。

だからと言って動きたくなるのかと言われればそんなこともなくここは居留守を決め込むことにした。

口うるさいお節介な悪魔なら合鍵を持っているし、ただただうるさい悪魔や後輩の天使なら相手にするのも疲れるのだ。

目を瞑ったまま何分経っただろう。

逐一時間を確認していないのだからインターホンの音から数分経ったのか数十分経たのかも分からない。

そういえば二度目のインターホンの音が聞こえなかったところを見るとさっきの来客は重要なものではなかったようだ。

妙に眠気も遠ざかったことだしとゲームの続きをしようと目を開けるとそこには顔があった。


「おはようございます。ガヴちゃん」

……これは想定していなかった。

私を訪ねてくる奴なんて悪魔のどちらかか後輩の天使ぐらいだと思っていたからだ。

まさか腹の黒い天使が訪ねてくるとは……

こいつの行動は基本的に馬鹿な悪魔をもとにしているのだからこいつ単体で来るのは少し珍しい。


「おはようラフィエル。どうやって入ったの?」

「ふふふ、天使に扉なんて意味ありませんよー」

聞かなくても分かることだ。

中を千里眼で確認した後に神足通を用いればいい。

全く天使の能力は犯罪に使うと厄介なものだ……

いや、悪事を働かないからこそ与えられた能力なのか。まあそんなことはどうでもよくて。


「何か用?」

「用がないと会いに来てはいけないんですか?」

ラフィエルはすぐこうおちゃらけるから正直面倒だ。

話を進めたいこちらの様子を見つつ煙に巻きその反応を楽しんでいる。

本当に腹が黒い……

そのうえ天使学校次席と来た。

天使として優秀だってのが厄介なものだ……。


「ゲームしたいから用がないなら帰ってほしいんだけど」

「用がないとは言ってないじゃないですかー」


ああ、本当にめんどくさい。

「じゃあ何の用」

「そうですねーこれプレゼントです」


ラフィエルに少し大きめの紙袋を渡された。

中身はどうやら服の様だ。

はて?

今日はそんな特別な日だっただろうか。

少なくとも私の誕生日ではないのだけど。


「え?なんで?」

「意味もなくプレゼントを渡してはダメですか?」

「もうそういうのは良いから……」

「ふふふ、大きな意味はありませんよ。あえて言うなら有ったら便利かもしれないって感じです」


服が有ったら便利ってどういうことだ?

支給されるお金のほとんどを課金に回しているとはいえ、流石に日常生活をするうえで服に困っているってことはないのだけど。


「よく分からないんだけど」

「ふふふ、ガヴちゃんなら多分後で分かりますよ。それに似合いそうなのを見繕ってきましたので楽しみにしておいてください」

……?

本当によく分からない。

私なら後で分かるってどういうことだろう。

後で何かあるのだろうか……

はぁーめんどくさい。

ラフィエルが関係しているならほぼほぼ面倒ごとなんだろうな。


「分かった。あとさっきから気になってたんだけどその大量の紙袋は何?」

「あーこれですか。これも服ですよ。ガヴちゃんに渡したのはこれらを買うついでに買ったんです」


人にプレゼントしておいてついでと言うのはどうなのだろう。まあきっと他意はないのだろう。

「へぇーいっぱい買ったんだな」

「はい!せっかくのチャンスですから!」


チャンスねぇー本当に嫌な予感しかしないんだけど……。


「それじゃこれぐらいで失礼しますね」

「もう帰るんだ」

「それを渡しに来ただけですから。これから準備もしないといけないので」

準備かー

何かめんどくさいことを企んでいるのは分かるんだけど、ここで何の準備かを聞いて巻き込まれるのもめんどくさいな。

ここはおとなしく見送ることにしよう。


「そうなんだ。バイバイ」

「はい失礼します」


そう言ってラフィエルは出ていった。入る時と違って扉を使って出ていった。

そういえば服のプレゼントとのことだったけどどんなものか見ておくべきか。

……小さい。

上下のセットが三種類ぐらい入っていたのだけど、そのうち一つは明らかに私でも着られないぐらいの大きさなのだけど……

これは低学年ぐらいの子が着る服じゃないのか。

残りの二種類はそれぞれ大きさが異なり、まあ両方とも私が着られる大きさではあるのだけど、なんだろう私には似合わなそうな服な気がする。

どちらかと言うと黒髪が映えるものだ。

……手の込んだ嫌がらせなのか、渡す人を間違えたのかラフィエルの考えていることは分からない。

ガヴィーネすき

これはガヴィーネだな(確信)

これはガヴィーネだな(確信)

―――2―――

ラフィエルが去ってから2時間ぐらいが経った。

それからは訪問者もなくのびのびとゲームができている。

先ほどラフィエルが来てから時計を確認したがまだ昼過ぎだ。

一日もまだ折り返しを少し超えたぐらいで十分にゲームをする時間はある。

昼ご飯でも食べようかな……

今家に何があったかを考えているとまたインターホンの音が鳴り響いた。

今度は誰が来たか分かりやすい。

インターホンは連続で鳴り私を呼ぶ声が聞こえる。

考えるまでもなくうるさい方の悪魔だ。

正直相手にするのはめんどくさい……

しかしこうもうるさいとゲームに集中するのも難しそうだ。

しかたなく呼んでもない客を出迎えることにした。

「うるさいんだけど」

「出てくるのが遅いからじゃない!」


なんでこいつはこう人をイラっとさせるのが上手いのだろう。


「何の用?」

「フフフあんたをやっつけるために決まっているじゃない!」


あーめんどくさい。

こいつは私に勝って何がしたいんだろう。

相手にしないとうるさいし、適当に付き合って早くおかえり願った方が楽か……

「へぇーで何するの?」

「あら珍しく乗り気じゃない。フフフあんたをやっつけるために買ったこれを見なさい!」

「……何時ぞやの銃みたいだな」

「フフフ聞いて驚きなさい!これは相手を子供にする銃なのよ!」


へぇー子供にする銃ねぇ。魔界通販って妙に技術レベル高いよな。

しかし、子供ねぇ…


「恐ろしくて声も出ないのかしら!」

「あ、ああそうだな。怖くて声も出なかったよ」

「覚悟しなさいガヴリール!」

「あ、ちょっと待って」

「なによ!」

「その形状の拳銃ってよく暴発するんだけどそれは大丈夫か?」

「えっ?暴発?」

「何?確認してないの?危ないなーほら、見てやるから貸してみろ」

「えっでも……」

「ほら早く!」

「え、ええ」

「……」

「大丈夫よね……?」


ターン


「かは……」


ホントこいつは学ばないな。

前にも同じようなことされたのに渡しちゃダメだろ……

おそらくここまではラフィエルの想定通りなんだろうな。


「……ここどこ?」


おお、本当に小さくなってる。

ふむ、サターニャもこう小さいと可愛いもんだな。

で、これからどうしたらいいんだ?

えっ?

この悪魔の面倒を私が見るのか?


「流石ガヴちゃんですねー」

「うわ!」


いきなり出てくるのは止めてほしい……

千里眼で様子を見ているとは思っていたけど、神足通ですっ飛んでくるとは……。


「ふふ小さいサターニャさんも可愛いですねー」

「あんただれよ」

「優しいお姉さんですよ」

「あやしい……」

「あやしくないですよー私のお家におもちゃがいっぱいあるんですが一緒に行きませんか?」


なんだろう……

危ないものを見ている気がする。

どう見ても誘拐のワンシーンだよな。

サターニャもホイホイついていきそうだし……


「ふん!おもちゃなんてねんれいじゃないわ!」


おお!小さいサターニャはサターニャにしては賢い!


「大悪魔になるために必要なものもありますよ」

「いく!」


ああ……サターニャはやっぱりサターニャだった……


「ガヴちゃんのおかげで有意義に過ごせそうです」

「あ、ああそれは良かった……」

「お礼と言っては何ですが、こちらの拳銃をあげます。弾も1,2発残っているみたいですし」

「いやいらないし。てか、それサターニャのだろ……」

「まあまあいいじゃないですか。本当に要らないんですかー?」

「いらないって……」

「ふふ、そうですか。拳銃はここに置いておきます使いたくなったらぜひご利用ください」

「使わないって」

「ではサターニャさん。行きましょうか」

「うん!」

「でもその前にお着替えですねー」


ラフィエルが慣れた手つきでサターニャに服を着せている。

絵面は悪くないはずなのに危ないものを見ている気になるのは何故だろう。

ラフィエルと手をつないだサターニャが玄関へ向かう。

嵐のような奴らだ……

しかしこれで静かになる。

あと、サターニャご愁傷様。


「そうそう、サターニャさんガヴお姉さんにお別れの挨拶をしましょう」

「ガヴおねーさん?」

「あの小さいお姉さんですよ」


小さいとは失礼な……

てか挨拶は良いから早く出て行けよ。


「わかった!ガヴおねーさんさようなら!」


小さい体で大きく手を振るサターニャ。

可愛い……

サターニャにしてはすごい可愛い。

可愛いのは分かるが、見たこともないぐらい緩んだ笑顔を浮かべている天使にはドン引きだ。

「ああ……」

少し恥ずかしく思いながらも手を振り返す。

小さい悪魔は満足げに頷き、天使の神足通で一瞬にして前から消えた。

……玄関まで行ったのに神足通で出ていくのかよ。


しかしこれで静かなお昼がやってきた。

それにしても子供になるか……

私の頭には優しい悪魔の顔が浮かんでいた。

面白い!
まさかラフィサタが少しでも読めるとは有難いなー!ありがとう
ガヴィーネも好きだ!
続きが楽しみ!

これは続きが楽しみ

シエンタ

―――3―――

照りつける太陽の下私は歩いている。

目的地は言うまでもないだろう。

これはそう折角の土曜日なのだからあの悪魔はきっと手の込んだ料理をしているに違いない。

私はそれをご馳走になるつもりなだけで先ほどの拳銃は関係がない。

そう関係がないのだ。


さっきまで鳴らされる側だったインターホンを今度は鳴らしてみた。


「はーい!今行きます」


わざわざ一言入れながら小走りで扉まで来るこいつは本当に悪魔なのだろうか。


「あれ?ガヴじゃないどうしたの?」

「遊びに来た。あとご飯」

「たかりに来たのね……」

「たかるなんて人聞きが悪い!」

「まあいいわ。入って」

「お邪魔しまーす」


いつ来てもヴィーネの部屋はきれいだ。

いつもこまめに掃除をしているのだろう。

私はこの部屋が好きだ。

なんでだろう、すごく落ち着くのだ。

ヴィーネの匂いがするからだろうか……


「そういやその荷物は何?」

「あーこれ」

普段手ぶらで来る私が荷物を持っていたからかヴィーネが少し訝しげだ。

持っているものはもちろんラフィエルに渡された紙袋だ。

ついでにサターニャの拳銃も入っている。


「来る前にラフィに渡されたんだ」

「そうなの?中身は?」

「服だった」

「えっ、あんた自分で服も買えないほどお金に困ってるの?」

「いやいや、流石にそんなことないよ。ラフィが勝手に渡してきただけで……」

「ふぅーん」

「それよりさ、今日のお昼ご飯は」

「はいはい用意します」


面倒見がよくまるでお母さんのような悪魔。

私の知るヴィーネとはそういった人物……いや悪魔だ。

しかし私が知らない彼女も居るわけで……

彼女の子供の頃はどんなのだったのだろう。

私の好奇心が大きくなってくる。

気になる気になってしまうと我慢が出来なくなってくる。

そう、今私の手には望みを叶える道具があるのだ。

震える手で拳銃を手に取る。


「はぁ……はぁ……」


緊張で息がしづらい。

これがサターニャだったならためらわず発砲できただろう。

だけどヴィーネにおいてはそうはいかない。

怒るときやイベント事を除けばこの悪魔は優しいのだ。

そんな優しい悪魔に発砲することを考えるだけで良心の呵責を感じてしまう。

緊張と罪悪感で目の前がくらくらする。


「はぁ……はぁ……」


私の中でせめぎ合う天使と悪魔。

まだ間に合う今すぐ銃を降ろせと囁きかける天使と気になるのなら撃っちまえと叫ぶ悪魔。

私は……私は……そう天使なのだ!

もう戻れないほどに落ちてしまった駄天使なのだ!

考えるまでもない……

私は子供のヴィーネを見るためにここに来たのだ。


「なあヴィーネ……」

「うん?どうしたの?」

「ごめん!」


ターン


「えっ」


発砲音が響く。

ヴィーネが信じられないものを見る目で私を見たとき罪悪感が私の胸を責め立てた。

ああ、どうしてこんなことをしてしまったのだろう。

手が震える……

ついには拳銃を落としてしまった。

ゴトンと重めの音がする。

拾いもせずただ立ち尽くしていると聞き覚えがあるようでない幼い声に話しかけられた。


「おねえさん、おとしましたよ」


そうそれは幼くなったヴィーネだった……

続きはよ

―――4―――

6歳ぐらいだろうか。

身長は私よりも小さい。

サラサラな黒髪や大きな目はいつものヴィーネと同じなのだけど顔つきが幼い。

普段私を見下ろすヴィーネが私を見上げている。

だぼだぼな服を着て、拳銃を差し出している。

絵面がどう見てもアウトなのだが、私はそんなことを一切考えられていなかった。

先ほどまで胸を責め立てていた罪悪感も霧散した。

今の私の頭の中にはたった一つの言葉が流れている。

もちろんそれは「かわいい」だ。


「おねえさん?」


いつまでも反応がない私にヴィーネが不思議そうな顔をしている。

凛とした透き通った声で私を呼ぶ声も幼さが前面に出ている。

そして、普段なら絶対に呼ばないであろう「おねえさん」呼びだ。

可愛い。うん可愛い。本当に可愛い。

先ほどまで罪悪感が嘘のようにすっきりしている。

あの行動は間違いではなかった。

ヴィーネを撃たなければ今この場はなかったのだ。


「おねーさん?」


ヴィーネが私の顔の前で小さい、それはもう愛らしい手を振る。


ヴィーネが私の顔の前で小さい、それはもう愛らしい手を振る。


「あ、ありがとう」

「どういたしまして!」


あーやばい。ヴィーネの笑顔が眩しすぎて目がくらむ。


「あの?ここってどこですか?」


今になってここがどこだか気になったのかキョロキョロと周りを見ている。そんな動作も可愛いのだやってられない。


「えーと、一応ここはヴィーネの家かな」

「わたしのいえですか?」


この年齢ぐらいだとまだ家族と暮らしているのだろう。

見慣れない部屋に不安そうな表情を浮かべている。


「ここわたしのいえじゃないですよ?あとおねえさんはだれですか?」


知らない場所に知らない人だからかヴィーネが涙目で怯えている。

そんな表情も可愛いのだから反則だ。

しかし、なんて答えよう……

ヴィーネを子供にすることばかり考えていてその先を考えてなかった。


「あーご両親が遠くに出かけちゃうからその間ヴィーネと一緒にお留守番を任されたんだ。ガヴリールって言います。」


ちょっと無理があるだろうか。

その上何で敬語になっちゃたのか。

ヴィーネがじーっとこっちを見ている。


「ガヴリールおねえさん?」

「うん。ガヴリールおねえさん」

「よろしくおねがいします!わたしはヴィネットっていいます」

「よろしく」


どうやら疑われてはないようだ。

しかし、ほんとにかわいい。


「じゃあお留守番の間お姉さんと遊ぼうか」

「うん!」

「あ、でも遊ぶ前にお着替えしないとな」

「はい!」


うんかわいい。

でも、サターニャの時も思ったが警戒心がなさすぎないか。

こうして、私とヴィーネの生活が始まった。

拳銃の説明書によると効果は2日間で低学年、高学年、中学生、現在と成長していくらしい。

だからラフィに渡された服は3着あったのか。

ラフィは大量の服を持っていたから今頃サターニャは着せ替え人形になっているのだろう。

私はヴィーネとのんびり過ごすこととしよう。

幼いヴィーネは本当に可愛い、もちろん普段のヴィーネも可愛いが。

この二日間はヴィーネの可愛さを堪能しようと胸を膨らませるのだった。

続きキター

待ってた!

ここで終わるのは草生える

>>1です
実生活が忙しくて続きを書けてませんが
終わらせますのでしばしお待ちください

待ってる

ゆっくりでもいい
待ってる

ゔぃねっとちゃん

続き気体

続きゆっくり待ってる

4月ですよ

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