【ラブライブ!】ことりの恋愛模様 (63)
誕生日用に書いたつもりが、期日を過ぎてエタりそうだったのを何とか書き上げました。
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「こ、ことり!ぁ・・・あの、あ、あの!貴女の事が、すっ、すっ、すっ、好きですっ!」
ある日の夕方、弓道場に響き渡った海未ちゃんの告白。
「ダメじゃないの。ダメじゃないんだけど・・・ちょっと、時間をください・・・。」
「は、はい。いつまでも待ちます!」
顔を真っ赤にしながら、カクカクと頷いていた海未ちゃんが、少し可笑しかった。
その日の晩、布団に顔をうずめながら海未ちゃんの告白を反芻する。
海未ちゃんの事だから、きっとものすごい勇気を振り絞って告白したんだと思う。
「はあああああぁぁぁ。これが穂乃果ちゃんだったら良かったのに・・・。」
そう、私の本当の想い人は穂乃果ちゃん。
自分でも酷いなぁって思うけど、私の中での一番はやっぱり穂乃果ちゃん。
海未ちゃんは2番目だった。
ただ、穂乃果ちゃんにその気はほとんどなさそうで、ちょくちょくモーションをかけたりもしているんだけど、手ごたえは無し。
「私を一途に見てくれる海未ちゃん。私の一番の穂乃果ちゃん。」
こんな悩みは、きっと贅沢なんだろう。
次の日、私は悶々としながら、秋葉の街をうろついている。
この問題に答えはあるんだろうか・・・。
時折ため息をつきながら、ブラブラしていた。
『あら、ことりじゃない。』
突然の声に振り向くと、にこちゃんと真姫ちゃんがいた。
「あ、にこちゃん、真姫ちゃん。こんにちわぁ。」
「珍しいわね、アンタが1人なんて。」
「もう・・・。私だって一人でいるときはありますぅ。」
「で?どうして今日は1人なの?」
真姫ちゃんの問いに思わず口ごもる・・・。
穂乃果ちゃんと海未ちゃんのどちらを取ろうか悩んでるなんて言えないよぉ。
「ははーん。さては穂乃果と喧嘩でもしんでしょ!」
「違いますー!」
言い返した瞬間に、ふとイタズラ心がむくむくと湧いてくる。
「あ、ねぇ、にこちゃん、真紀ちゃんじゃない誰か他の人から告白されたらどうする?」
突然の質問だけど、二人は今お付き合いをしている。
それなら一体どんな答えが返ってくるだろう。
すると二人はお互いをチラッと見合う。
「ま、まあ、別に悪い気はしないわね。」
何かちょっと自慢気なにこちゃん。
すると、真姫ちゃんはあからさまに不機嫌な視線を送る。
「じゃあ、私より先にその人に告白されたら、その人と付き合うのね!」
「は?バッカじゃないの?!アタシの一番が居るのにOKする訳ないでしょ!」
「わ、私だって逆だったら断るわよ。だってにこちゃんがいるから・・・。」
そういうと、真姫ちゃんは顔を真っ赤にして俯く。
にこちゃんも同様に顔を赤くしている。
聞いてみる人選を著しく間違えたかもしれない・・・。
「ぁー、じゃあ私、急ぐからこれで・・・じゃぁねぇ~。」
変に勘繰られてしまうのを危惧して、足早にその場を後にした。
二人が見えなくなった辺りでふと考える。
海未ちゃんも、きっと純粋に、一途に私の事を好きでいてくれると思う。
もし・・・もしも、私が海未ちゃんの気持ちに応えたとして、私も同様に海未ちゃんの事を好きになれるのかな・・・?
私の一番は今の所変わってない。
そんな状態で海未ちゃんの気持ちを受け入れても、かえって失礼なんじゃないんだろうか。
じゃあ、断る?
でもでも、私の穂乃果ちゃんへの気持ちは届かないかもしれない。
今まで何度と繰り返した間接的アクションは、穂乃果ちゃんが鈍感なのか、その気がサラサラないのか、ちっとも感づいてもらえない。
それに心のどこかで、穂乃果ちゃんの一番が私じゃなくて、海未ちゃんなんじゃないかという心配もあった。
だから尚更、今の関係を壊したくなくって、私は穂乃果ちゃんに直接アタック出来ないでいたのに・・・。
あ~~~もうっ!
頭が混乱して思わず頭を掻きむしったタイミングで、再び後ろから声をかけられる。
「頭を搔きむしることりちゃんなんてレアやね~。」
ハッと振り返ると、そこには希ちゃんと絵里ちゃんがいた。
「ふふ。ことりにも、思わず頭を掻きむしる悩み事でもあるのかしら?」
もしかしたら、今一番マズい人たちに会ったのかもしれない。
「とりあえず、そこのス○バで詳しく聞いてみよか。」
有無を言わさず希ちゃんに連れ込まれてしまう。
「で?ことりはどっちを選ぶの?」
身を乗り出すように、絵里ちゃんが直球で攻めてくる。
「まぁまぁエリチ。そんなにガッついたら、ことりちゃん話しにくいやん。」
そう言いながらも、希ちゃんの眼はヤバいくらいニコニコしてる・・・。
観念するしかないかもしれない。
「あ、あのね?」
『ウンウン!』
目をキラキラさせながら身を乗り出す二人に、海未ちゃんに告白された事と、私の気持ちなどを話してしまった。
「難しいわね・・・。」
茶化すことなく、真剣な面持ちで絵里ちゃんが悩んでる・・・。
「これぞまさに昼ドラ的な三角関係やん。」
昼ドラ見てるの?ってツッコミは飲み込みました。
「最悪は、三人とも共倒れよね。」
「あー、それは視聴者さんにも不評やね。」
希ちゃんがどういう立場で話に参加してるのか良く分からない。
「この際だから、二人共っていう訳にはいかない?」
絵里ちゃんの口から斜め上の回答が飛んできました。
「あれ~?まさかにこっちがその気なら、そうするつもりだったん?」
表面は笑顔だけど、微妙に隠しきれない希ちゃんの嫉妬心・・・。
「え?!ち、違うわよ~。今のはことりの話じゃない!」
「そんなんウチ、妬いて妬いて妬き死んじゃうよ?・・・エリチの枕元に毎日出るからね~~~。」
「それだけは、それだけは止めてぇ・・・。」
絵里ちゃん涙目になってるよ。
「で、私の話なんだけどぉ~・・・。」
二人の夫婦漫才にちょっと飽き飽きしてきて、つい自分から振ってしまいました。
「ごめんごめん。そうやねぇ・・・。」
「ここは、海未と付き合うかもって穂乃果に相談してみたら?」
え?
思いもよらない提案に、思わず?を浮かべる。
「若干賭けっぽいけど、それもありかなぁ。」
「え?どういうこと??」
「今までモーションをかけても穂乃果はさっぱりだった訳じゃない?」
「う、うん。」
「だから、いっそ海未と付き合う事に悩んでる振りして、穂乃果の反応を窺うのよ!」
「つまり、私他の人の女になっちゃうよアピールって奴やね。」
「そのせいで、穂乃果ちゃんが身を引いちゃったりしないかなぁ?」
「まぁ、だから賭け要素ありなんよね。」
「そこは上手く誘導していくしかないわね。」
穂乃果ちゃんが空気を読んで身を引かないように・・・。
あぁ、それじゃ海未ちゃんの名前を出さなかったら大分違うかなぁ。
でもでも、これはあくまで脈あり展開だった場合だよね・・・。
「相談したけど、あっさり応援されちゃったりしたら?」
「それは、脈ナシって事よ。」
ぇー・・・。
『じゃ、ことり(ちゃん)頑張ってね~』
二人に見送られて、ス○バを後にする。
本当にそれでいいのかなぁ。
穂乃果ちゃんも海未ちゃんも試してるようで気が引けちゃう。
モヤモヤは未だに晴れず、またフラフラと街を彷徨う。
「だーーーれだ?!」
わわっ。
突然目隠しをされてビックリする。
みんなどうしてこう、背後からなんだろう。
「この声は、凛ちゃん!」
「凛ちゃん、少しは声色変えないとすぐバレちゃうよ。」
今度は凛ちゃんと花陽ちゃん。
これで穂乃果ちゃんと海未ちゃん以外全員に会っちゃった・・・。
「ことりちゃん、何かお悩み事?」
え?
開口一番の質問にビックリする。
「あ、ごめんね。何だかいつものことりちゃんっぽくなかったから、何か気になる事でもあったのかなぁって。」
こんなに簡単に突かれちゃうなんて、花陽ちゃん侮れません。
少し考える。
花陽ちゃんと凛ちゃんも、押しも押されぬカップル。
どうせだから、二人にも色々聞いてみよう。
「うーん、ことりちゃんにとって、何が一番大事なのかにゃ?」
早速、凛ちゃんに痛い所を突かれる。
「そうなんだよねぇ~。」
ちょっと茶化し気味に言ってみたけど、たぶんその通りなんだと思う。
「もし何なら、穂乃果ちゃんに話してみたらどうかな?」
ここで凛ちゃんから絵里ちゃんと同じ意見が出てくる。
「さっきね、絵里ちゃんにも同じこと言われたんだ。でも穂乃果ちゃんって案外察しの良い所もあるから、空気を読んで身を引いちゃわないか心配で・・・。」
「それなら、いっそ3人で思ってる事をちゃんと言い合ったら良いんじゃないかな?」
花陽ちゃんが思い切った提案をしてくる。
「3人とも気を使い合ったりしない?」
「うん。凛ちゃんの言う通りになるかもしれない。だけどずっとそばにいた幼馴染なんだから、コソコソするよりも正直に話し合った方が良いと思うの。」
3人で話し合う、かぁ・・・。
そっちの方が良いのかなぁ。
『ことりちゃん、ファイトだよ!』
二人に激励されながら、私はその場を後にしました。
意外とマネ上手だったなぁ。
気晴らしに、いつもの生地屋さんで物色しながら、今日みんなに言われたことを整理する。
想いは貫くべき・・・?
どう動けばいい・・・?
私の一番大事なものは・・・?
「ことり、お待たせしました。」
放課後、中庭のベンチに座っていると、海未ちゃんが声をかけてきました。
「ことりちゃーーーん、お待たせ!」
更に後ろから、穂乃果ちゃんが元気に駆けてくる。
「穂乃果?ことり、これは一体。」
「うん、ちゃんと説明するよ。」
二人を前にして、ゴクリと息を飲む。
どっちに転んでも、私達三人の為に。
「あのね、二人に聞いて欲しい事があるの。」
穂乃果ちゃんはウンウンと頷き、海未ちゃんは静かに聞いている。
「この間、私は海未ちゃんに告白されました。」
「・・・、ええ~~~?!」
「なっ、ことり!」
驚きを隠せない二人をよそに、私は続けました。
「海未ちゃんの告白は嬉しかったです。」
「・・・。」
「ことり・・・。」
私は二人に対して正直でなくちゃいけない。
それが私達3人の絆だから。
「でも、ごめんなさい。私は穂乃果ちゃんの事が好きなんです。」
「ことりちゃん?!」
「っ・・・!」
これからも3人でいたいっていうのは私のワガママかもしれない。
この事で、今までの関係が壊れてしまうかもしれない。
すると、穂乃果ちゃんが私と海未ちゃんの手を取る。
「とってもビックリした。3人とも同じ事で悩んでたのかなって。」
穂乃果ちゃんも?
「ことりちゃんも、海未ちゃんも、きっとすごく悩んで、凄く勇気を振り絞ったんだと思う。」
穂乃果ちゃんの眼が、いっそう力強さを増す。
「だから私もハッキリ答えなきゃいけないよね!」
海未ちゃんも私も、穂乃果ちゃんの答えに固唾をのむ。
「私、高坂穂乃果は、園田海未ちゃんの事が好きです!」
あ。
あはは・・・。
なーんだ、やっぱり穂乃果ちゃんは海未ちゃんの事が好きだったんだ。
海未ちゃんも、予想外だったのか口を開けて固まってるよ。
どのくらいなのか、しばらく音のない時間が過ぎていく。
「何なんですかこれは。3人が3人とも片思いだなんて・・・。」
「あ、でも、ことりちゃんは二番目なんだよ!」
「私も、海未ちゃんは2番目なの。」
「・・・それを言ったら、私も穂乃果が2番目です。」
何とも言えない空気が流れる。
うーん、残念?
なのかなぁ・・・それよりは何だかホッとしてる自分がいる。
「不思議ですね。お互い失恋したも同じなのに・・・。」
「うん、この結果をどんなにか怖がってたのがウソみたい。」
「だって、私達ずっと一緒だったんだもん!」
やっぱり私達は私達って事なのかもしれない。
「結局、視聴者さんには申し訳ない結末になったんやね~。」
「そりゃ、この三人じゃ仕方ないもの。」
何処から現れたのか、希ちゃんと絵里ちゃんがニヤニヤしている。
「第一、面倒くさいのよ。」
「ま、にこ達みたいにはなれないわよね~。」
「浮気する気満々だったくせに・・・。」
「だ、だからあれはモノの例えだって言ってんでしょ!」
騒がしく真姫ちゃん、にこちゃんも現れる。
まだあの時の話してるんだ・・・。
「ことりちゃん、これで良かったんじゃないかな?」
「3人はいつでも仲良しでいつでもライバルにゃ!」
すぐそこの茂みから、花陽ちゃんと凛ちゃんまで現れた。
「ちょっ、みんなずっと見てたの?!」
穂乃果ちゃんが大そう驚いた反応を返す。
「近くに視線を感じてはいましたが、全員とは・・・。」
「えへへ、みんなに相談しちゃったから・・・かな。」
「終わってみれば、今まで通りって何なの?」
真姫ちゃんが呆れ顔でため息をつく。
「それは違うよ。・・・決定的な三角関係が今始まったんやーーー!」
希ちゃんが背後に稲光を轟かせている。
「悪いドラマの見すぎにゃ・・・。」
「ドロドロの愛憎劇の果てに待ち受けるものは!」
「絵里ちゃん・・・それはあんまり賢くないかな・・・。」
・・・花陽ちゃん、直球すぎだよ。
「で?今後三人はどうすんのよ。」
にこちゃんの問いに、私達はお互いを見合う。
「どうするって・・・ねぇ?」
「どうにかなる話でもありませんし・・・。」
「とりあえず現状維持、かな??」
『・・・。』
冷ややかだったり、呆れてたり、微笑ましくと色んな目で見られてるよ。
「ま、まあ・・・これで万事解決、なのかしら?」
「視聴者さんからのクレームが鳴りやまないやん?」
「視聴者って誰の事よ。」
真姫ちゃん、そこは触れなくて良いかも・・・。
「で、でも、それが穂乃果ちゃん達らしいかも?」
「結局、騒ぎ損じゃない!」
「仕方がないにゃ~。」
私達は愛想笑いしかできませんでした。
いつもと同じ下校風景
でも今日は、お互いの気持ちに一歩踏み込んだ直後のせいか、会話は殆どありませんでした。
そしていつもの分かれ道。
「ねぇ、穂乃果ちゃん、海未ちゃん。」
「なあに?」
「どうしました?」
二人が立ち止まって私に視線を送る。
「私ね、ちょっとだけ安心したの。」
「今日の事・・・ですか?」
「うん。私が正直に私の気持ちを言い表したときに、もしかしたら今までの私達の関係が壊れてしまうんじゃないかって。」
「うん。私も、同じ事考えてた。」
「抜け駆けしようとした私が言う事ではありませんが、確かに私達の関係について思う所はありました。」
「結局、今のままが一番ってことなのかな?」
「ふふ。希の言葉を借りれば、視聴者さん的にはつまらないかもしれませんが。」
「でも、私は海未ちゃんの事、諦めた訳じゃないよ!」
「ええ、私もことりの事を諦めてはいません。」
「じゃあ、私も穂乃果ちゃんのこと諦めな~い♪」
『あはははは!』
この関係が何時まで続くのか判らないけれど、今はまだ、穂乃果ちゃんと海未ちゃんと3人でいられる事を楽しみたいな。
私の恋路は、まだまだ先が長そうです。
以上で終わりになります。
ありがとうございました。
乙
なんだかんだで、この視聴者的につまらない状態がことほのうみらしいと思う
おつ
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