絵里「生徒会長の裏の顔」(124)
#1
午前6時…
ジリリリリリリリ!!
絵里「ふわぁ……」
ジリリリリリリリ!!
絵里(うるさわいね…あと五分くらい……)
ジリリリリリリリ!!
絵里(分かった分かった、もう起きるから…)
バンッ!ガシャンッ!
バンッ!
ピタッ しーーん
絵里「やっと止まった……」
絵里「えぇっ!? 机の上が鉛筆の削りカスだらけじゃない!! 」
絵里「しまった……1回目叩いた時に目覚まし時計じゃなくて鉛筆けずりを叩いちゃったんだわ……」
絵里「拾わなきゃ」ヒョイッ
絵里「なかなか多いわね…」ヒョイヒョイ
亜里沙「ふわぁ……朝から何をやっているの? 」
絵里「あはは……見ての通り、後片付けよ」
亜里沙「つまんで拾うんじゃなくて、かき集めて机から落としたら? 」
亜里沙「机の下にゴミ箱おけばそのままポイ出来るよ」
絵里「あっ、確かに。その考えはなかったわ。」
絵里「よっ」ガーッ
絵里「ハラショー!」パァァ
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学校に行く前に、朝風呂に入る。
【お風呂場】
シャワァァァァア
絵里(はぁ…音ノ木坂、廃校かぁ……)
絵里(スクールアイドルで学校を救う……?馬鹿馬鹿しいにもほどがあるわ)
絵里(アイドル部の設立には人数が足りないと言って追い返したけど……人数が足りたところでって話よ。)
絵里(矢澤さん、だったけ?…1年の頃にスクールアイドルとやらを やってたわよね)
絵里(あの子も結果を残せてないし、そもそもスクールアイドルなんていうもの自体、高校生のお遊びに過ぎないのよ。)
絵里(スクールアイドルやってみて、ダメでしたってことになれば、音ノ木坂は恥をかいてしまうわ。)
絵里(アイドルなんて断固、認めないわよ。)
絵里(理事長は私達 生徒会のことを自由にさせてくれないし……)
絵里(現状は完全に詰んでるわね……)
絵里(そう、そして私が最も不思議に思っているのは高坂とかいうあの2年生! )
絵里(昨日のはなんなの!? )
.............................................
昨日…
【生徒会室】
希「ちょっと絵里ち、窓の外、見て! 」
絵里「ん……さっきの2年生3人組じゃない」
絵里「真ん中の子、どうしたの?急に歌い始めたけど……」
希「ふふっ、楽しそうやね」
絵里「ええぇっ!?ちょっ、階段の手すり滑っちゃダメぇぇ!! 」
絵里「と…遠くて見えない、希、双眼鏡貸して!! 」
希「はいよー」
絵里「えっ道路に飛び出したわよ!?ねぇ希、道路!! 」
希「カードが大丈夫って言ってるやん(棒読み)」
絵里「えっちょっ……ひかれないの? あっ車来た……ひかれ……ひかれ~~? 」
絵里「……」
絵里「ないぃ!! 」
絵里「車にひかれなかったわ!! あの子スレスレで避けるの上手いわね!! 」
絵里「良かったぁ、うちの生徒が死亡事故の被害にでもあったら大変だものね…」
絵里「あれ?3人に増えた、道路で3人で踊ってるわ!! 」
..............................................
絵里(あの3人は頭がおかしいわよ、急に道路に飛び出して歌いだすだなんて…変よ。)
『おねぇちゃーん、もう7時半だよー? 』
絵里「えっ!?完全にボーッとしてたわ…!! 」
泡まみれの頭を、水で洗い流す。
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放課後…
【生徒会室】
絵里(部活動紹介の日に講堂でライブの使用許可を、かぁ……)
絵里(なんか流れで使用許可だしちゃったわ……)
絵里(あの園田とかいう子、正々堂々とした手段でスクールアイドル部を承認させようとしてくるから厄介ね)
絵里(高坂穂乃果!あの子はもうはっきり覚えた!!)
絵里(高坂さんはとりあえず一番面倒くさそうだし、適当にあしらいましょうか…)
絵里(南ことり……あの子が一番読めないのよねぇ…。)
絵里(あの子何考えてるのかしら…)
絵里(うーん、でもあの子優しそうだし適当にあしらっても許してくれそう。)
絵里(ただでさえ生徒会のことで忙しいのに、あの子たち 手間がかかって面倒だわ。)
絵里(……うーん、ここはどうにかしてあの子たちにアイドルを諦めてもらおうかしら)
絵里(スクールアイドルってそもそもどんなものなの?)
絵里(検索してみますか……)
カタカタカタッターーン!
絵里(えーらいず?A-RISE……あ、アライズって読むのね)
絵里(動画がある…)カチッ
キャンナイドゥー アテイキンベイビ~~♪
絵里(なにこれ、ほんとにこれがトップスクールアイドルなの? )
絵里(背筋も曲がってるし脚の上げ方もろくに出来てないし、つま先も伸びてないし……素人同然じゃない。)
絵里(あーぁ、ますますスクールアイドルってのが馬鹿らしくなってきたわ。)
カチカチッ
絵里(ん…? )
絵里(ミューズ…ってこれ、あの子達じゃない!! )
絵里(いつの間にランキングなんてものに参加してたのよ……)
絵里(ん……このサイト、動画が投稿できるのよね…)
絵里「ふふ……うふふふ……」
絵里「大恥かかせてやるわ」
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今日はここまでです。
絵里ちゃん鉛筆使ってるのか
なんか可愛いな
#2
初ライブ当日…
【講堂】
絵里(舞台を写すようにカメラをセットしておいて、あとで動画をあのランキングに投稿すれば……)
絵里(ふふふ……あの子たちの恥ずかしい姿がネット上に…!! )
絵里(そう、今の私は『きわどい あくどい ワルーチカ』よ。)
絵里(じゃあ、カメラセットしたし帰ろ~っと)
【正門前】
絵里「……」スタスタ
絵里(気になるわね…あの子たち、意外と人気出てたらどうしよう)
絵里(カメラ動かされても困るわ……)
絵里(やっぱり講堂に戻って 隠れて見ておこうかしら。)スタスタ
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【講堂】
絵里が講堂のモニター室に入ると、信じられない光景が広がっていた。
観客が片手で数えられるほどしかいなかったのだ。
絵里(嘘でしょ……いくらなんでもここまで人がいないのは流石に可哀想……)
絵里(静寂が辛いわ……)
絵里(え…歌った……!? )
絵里(彼女たち、この状況になってなお、歌うというの…!? )
絵里(……でも今の私はワルーチカよ。)
絵里(ここは心を鬼にして、彼女たちの恥ずかしい姿をネット上に公開して後悔させてやるわ!! )
絵里(公開して後悔……ふふw)
ことり『飛~ぶぅ♪』
シュワァッ!
絵里(の、脳がっ……脳がぁぁぁ!!)
絵里(えっ……なによあの声は!? )
絵里(この私が一瞬でとりこになるなんて……!!)
絵里(ダンスはまぁ……素人の初舞台 って前提だと、わりかし良い方ね)
絵里(あれ……私、この子たちの頑張ってる姿を見てると、なんだか応援してあげたくなってきた…)
『カナシミニトーザサレーテー♪』
絵里(えっ…この3人の歌声好き……!! )
絵里(この子たちのこと好きかもしれない…見守ってあげたくなってきた)
絵里(ちょっ、なんか公開するとか言ってたけどやっぱなしなし! 保存して、家で1人で見てニヤニヤするチカ! )
穂乃果「♪~」
穂乃果「…」
絵里( 曲、終わった…)パチパチパチパチ
絵里(すっごく良かった……なんだか新しい世界を見た気がするわ)
絵里(あの子たちに今までの無礼を謝罪しにいこう)
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ガチャッ
絵里「失礼しまー……」
しーん……
海未「……」チラッ
ことり「……」チラッ
穂乃果「……」チラッ
絵里(そっかぁ……私が入ってきたら空気が重くなるわよね)
絵里(えぇ……、謝りずらいわね……)
絵里(と、とりあえず当たりさわりのない質問で場を持たせよう……)
絵里「どうするつもり? 」
穂乃果「……活動は続けます! 」
絵里(よくぞ言ってくれました!!続けてくれてありがとうございます! )
しーん……
花陽「……」チラッ
凛「……」チラッ
絵里(この雰囲気、完全に私がアウェイね……)
絵里(えー……冷たい生徒会長キャラでいくしかないかなぁ…… )
絵里「なぜ活動を続けるの? これ以上続けても、意味があるとは思えないけど」
絵里(あーーー……素直になるのよ、私ーっ!!)
絵里(なんで素直になれないのよ、パッと謝ればいいのよ! )
絵里「あの…」
穂乃果「やりたいからです! 」
絵里(あっ、ちょっ……本音言う機会 逃しちゃった……)
しーん……
絵里(空気の重さ的に 冷たい生徒会長を演じるしかなくなってしまったわ……)
穂乃果「いつかこの講堂を、満員にしてみせます!! 」
絵里(よくぞ言ったぁぁ!!応援するわよ!! )
しーーん
絵里(返答しづらい……そして一刻も早く帰りたい! この空気苦手!! )
絵里「……」
その後もしばらく無言のままだったので、強引におうちに帰った。
周りからめっちゃ変な目で見られた。
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今日はここまでです。
心の声がかしこくなさすぎてかわいい
#3
絵里(私の知らぬ間に1年生が加入して、µ’sが6人に増えてる……超嬉しい)
【生徒会室】
絵里「では、今回の会議の議題はスクールアイドルについてなんだけど…」
絵里「みんな、二年生の三人と一年生の三人がスクールアイドルという活動をしているのは把握しているかしら? 」
モブA「あぁ、あの子たち。」
モブB「なんか……恥ずかしくないのかな? 」
モブC「なんで辞めないんだろう、音ノ木坂の恥だよ」
絵里(スクールアイドル部を認めようって話そうと思ってたのに…なんか悪い予感……)
モブA「生徒会長も、なんとか言ってやってくださいよ」
絵里「え、えぇ!? 」
モブB「そうですよ、学校の予算がスクールアイドル部に振り分けられるとなれば、他の部活動の予算が減るんですよ!? 」
絵里「え、えぇ……」
希「絵里ち、スクールアイドル部…認めてあげたら? 」
絵里「分かってるわよ…!! 」
モブA「え? 」
モブB「は? 」
モブC「は? 」
モブD「またまた~冗談を、生徒会長ともあろうお方が、ねぇ」
絵里(ぐぅ……ここでスクールアイドル部を認めてしまったら、生徒会の皆から嫌われてしまうわ……)
絵里(いま、生徒会のみんなと仲が悪くなってしまえば今後の活動に支障をきたすし、廃校を阻止するための活動に精を出せないわね…)
絵里「え、えっと…分かってるっていうのは」
絵里「スクールアイドル部、自粛してくれないかな~ってことで」
絵里「モブさん達に同意をしたという意味で……」
モブA「ですよね~~!! 」
モブB「良かった良かった! 」
希「 皆、スクールアイドル部 嫌いなん? 」ショボン
モブC「嫌いってわけじゃないんですけど、経費の無駄というか」
モブC「スクールアイドル部に予算を割くくらいなら、生徒会の活動費にあてて、もっと生徒会を活発にすべきなのでは」
モブD「それにほら…矢澤さんが既にやってたでしょ? 」
モブD「結局、今 あの子一人ぼっちだし……スクールアイドルってそんなに魅力のあるものとは思えない」
希「うーん……ウチは面白そうやなぁって注目してたんやけどなぁ……」
モブA「そうだ、生徒会長! 」
絵里「は、はい」
モブA「理事長に直接訴えてくださいよ、私達も外から見守っておきますので……!! 」
絵里「え、えぇぇええ~~!? 」
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【理事長室】
ドアの外から、生徒会メンバーが聞き耳を立てている。
絵里(……理事長に訴えるしかないわね)
絵里「……よし」
絵里「理事長、スクールアイドルの件なんですが」
絵里「ファーストライブで、生徒は全く集まりませんでした。」
絵里「スクールアイドルは音ノ木坂学院にとってマイナスだと思います」
理事長「学校の事情で生徒の活動を制限するのは…ねぇ」
絵里「でしたら、学院存続のために生徒会も独自に活動させてください!! 」
理事長「それはダメ」
絵里「何故ですか…? 」
理事長「生徒会と彼女たちとは話が別。」
理事長「彼女たち、人気がないって訳じゃないのよ」
理事長はパソコンの画面を見せた。
そこには、この前 絵里が録画して家で観ていた、µ’sのファーストライブの映像が流れていた。
絵里(な……なんでこの映像が、ランキングサイトに投稿されてるのよ…!!)
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µ’sのファーストライブがあった日の夜
絵里「スヤァ……」
亜里沙「ふふ……お姉ちゃん、またパソコンで映像見ながら寝落ちしてる」
亜里沙「何見てるのかな……」
カナシミニトーザサレーテー♪
亜里沙「ハラショー……!! 」
亜里沙「これが…雪穂のお姉ちゃん達の……!! 」
亜里沙「この3人、お姉ちゃんも言ってた µ’sっていうグループだよね」
亜里沙「ランキングサイトに投稿されてるのかな? 」カチカチッ
亜里沙「投稿されてない…!! 」
亜里沙「こんなに素晴らしいものが世に広まらないなんて勿体ないよ! 」
亜里沙「お姉ちゃんもしかして投稿する予定だったのかな…? 」
亜里沙「代わりに投稿してあげよう!! 」
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今日はここまでです。
#4
絵里(希に言われるがまま、µ’sのメンバーに)
絵里『もう既にアイドル研究部がいるから、これ以上アイドル関係の部活を増やすのはやめて欲しい』
絵里(って伝えたけれど…)
絵里(結局、あの子たちは希の言葉でアイドル研究部に見学に行くことになったし……なんだか希に利用された気分)
絵里(希はスクールアイドルに対して割と好感的だったものね)
絵里(自分の意見を自由に言える、副会長の立場が羨ましいわ……。)
絵里(まぁ、あの子たちが結果的にアイドル研究部に入ってくれれば私としては万々歳…!)
絵里(頼む~~入ってぇぇ~~!! )
絵里(あーでも矢澤さんが居るのか……)
絵里(あの子クラスでもツンツンしてるらしいし、これは前途多難になりそうね……)
絵里(簡単にはアイドル研究部に入れてくれなさそうね…。)
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それからしばらくして…
[アイドル研究部 入部届け]ピラッ
絵里(アイドル研究部の部員が増えたぁぁぁ!!? )
絵里(あの子達、アイドル研究部に入部届けを……!! )
絵里(7人かぁ……いよいよアイドルグループっぽくなってきたわね~!! )
絵里( 嬉しい……やばい、私って感情が表には出ないタイプだけど、思わずにやけてしまいそう)
希「絵里ち」
絵里「ん? 」
希「窓の外 見てみ」
希「雨、止んでる」
絵里「わぁ……!!虹でてる…!! 」
絵里「綺麗~! 」
絵里(そういえば今度の物理のテストに大気の屈折率とかの話が出たような……)
絵里(確か太陽とは真逆の方向にしか虹はできないのよね。)
絵里(太陽と虹を同じ画面に捉えることは不可能ってこと)
絵里(けど、µ’sって、太陽と虹が同時に映ってるような……なんだか不思議な感じ)
絵里「……」ボーッ
希「おーい、絵里ちー」サッサッ
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それから何日かして……
【生徒会室】
絵里は希と2人で、生徒会の仕事をしていた。
絵里(最近、希がµ’sと仲良くしてて羨ましい)
絵里(一人ぼっちだった矢澤さんも、今ではµ’sの一員になったし)
絵里(ちょっとなんか……今度は私が一人ぼっちな気がするんだけど)
絵里(何これ……)カチカチッ
『これからのSomeday』
絵里(めちゃくちゃ楽しそうチカ……)
絵里「希、あなた……彼女たちに何を言ったの? 」
希「ウチは思ったことを素直に言っただけや」
希「誰かさんと違うて」
希「……もうスクールアイドルを、認めるしかないんやない? 」
希「絵里ちが力を貸してあげればあの子達はもっと…」
絵里「希が力を貸してあげればいいじゃない! 」
絵里(立場上……本音なんて言えないのよ……!! )
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【自宅】
絵里(久しぶりに散歩でもしようかしら)
絵里(最近息苦しくて……気分転換には丁度いいわよね)
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絵里(いつ見ても良い町並みね)スタスタ
絵里(綺麗な花……ふふ、太陽の色みたい)
絵里(( リ`・ヮ・)ファイトダヨッ! ))
絵里「今のは…!? 」
絵里(あら、水たまり、海みたいで綺麗…)
絵里(( ( •̀ ᴗ •́ )ラブアローシュートーー ))
絵里「むむっ…!? 」
絵里(小鳥達のさえずりも……ことり……? )
絵里(( (・8・)チュンチュン♪ ))
絵里(はっ……なに今の…数分間くらい、あの子のことしか考えてなかった……)
絵里(おかしい、私の脳内がµ’sに染まっているわ)
絵里(あら、可愛いお花…まるで小泉さんみたい)
絵里(あっちの猫ちゃんは元気に走り回ってて、星空さんみたいねー)
絵里(はっ…またやってしまった……!! )
真姫「……」スタスタ
絵里(あの赤髪の人、西木野さんっぽいわねー…)
絵里「ってあれ、西木野さんだわ!!」
絵里(あの子がµ’sの曲を作ってるのよね……)
絵里「よし……!! 」スタスタ
真姫「……」スタスタ
絵里「あの……西木野さん、よね? 」
真姫(げっ……生徒会長じゃない)
真姫「…人違いじゃないですか? 」スタスタ
絵里(あー……遠ざかっていく……)
絵里(どうしましょう……)
絵里(もしもµ’sのメンバーに、『実は応援してます』なんて言ったら)
絵里(すぐにでも噂が広まって、生徒会の皆との関係が悪くなってしまうわよね)
絵里(生徒会との関係を保つにはµ’sに反対する姿勢でなければならない。)
絵里(だけど、生徒会長である以上、私が反対しつづけていればいつかはµ’sが解散してしまうかもしれない)
絵里(そして、彼女達は、アイドルとして注目を集めつつある。)
絵里(学校の知名度は彼女たちのおかげで前よりも確実に上がっているし、生徒会よりも廃校阻止に貢献していると言っても過言ではないわ。)
絵里(生徒会で活動しても、今のままでは廃校を阻止するなんて明るい未来は見えない。)
絵里(でも生徒会とは仲良くならないと、学校を上手く運営出来なくて、廃校により一層 近づいてしまう。)
絵里(……どうしましょう、生徒会かスクールアイドルか……どちらを取れば廃校を阻止出来るのかしら)
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今日はここまでです。
#5
【自宅】
絵里(一晩悩んで決めたわ、生徒会の肩を持つルートで行くわよ!! )
絵里(そもそもアイドルなんて私に合ってないようなもんよね)
絵里(とりあえず表上はやんわりとスクールアイドルを否定しつつ、生徒会と仲良くやっていこう)
放課後……
【生徒会室】
絵里「はぁ……」
絵里「なんで理事長は生徒会を自由に動かす許可をおろしてくれないのかしら」
絵里「µ’sのラブライブ出場許可はあっさり出しちゃったくせに……」
絵里「んも~!! 」ワシャワシャ
絵里「……」
絵里「これからのSomeday……やはり何度見ても良い曲ね 」カチカチッ
絵里「まず、このメンバーが凄く楽しそう。」
絵里「良いなぁ…。」
プルルル プルルル
絵里「ん、電話だ」
絵里「もしもし? 」
亜里沙『あ、お姉ちゃん? 』
絵里「あら、亜里沙。どうかしたの? 」
亜里沙『なんとなく、一緒に帰りたい気分だから……正門前で待っててもいい? 』
絵里「分かった、車には気をつけるのよ? 」
亜里沙『うん、もちろん! 』
亜里沙『じゃあ、先に向かって待っておくね』
絵里「えぇ、ちょっとだけ待っててね」
絵里「じゃあ」
プーッ プーッ プーッ
絵里「さて、あの書類を片付けたら帰りましょうか…」スッ
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【正門前】
絵里「亜里沙ー…」
亜里沙「あ、お姉ちゃん! 」
絵里「……っ」
絵里「あなた……」
海未「生徒会長……! 」
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【公園】
絵里(よりによって園田さんと出くわすとは……)
海未「前から、穂乃果たちと話していたんです」
海未「誰が撮影してネットにアップしてくれたんだろう、って」
絵里(3人のファーストライブの映像のことね……)
海未「会場が学校であることから、音ノ木の生徒であるだろうとは推測していましたが」
海未「でもまさか、生徒会長だったなんて」
海未「あの映像がなければ、私達は今、こうしてなかったんだと思うんです」
絵里「やめて」
海未「えっ……? 」
絵里「別に、あなたたちのために撮影したんじゃないわ」
絵里「むしろ逆、あなたたちのダンスや歌が、いかに人を惹きつけられないものか」
絵里「活動を続けても意味がないと知ってもらおうと思って。」
絵里( 撮影当初は、だけど…)
絵里「だから、今のこの状況は想定外。」
絵里「無くなるどころか、人数が増えるとは思ってなかった。」
絵里「あなたたちのダンスは人に見せられるものじゃない。」
絵里「そんな出来で、学校の名前を背負って活動してほしくないの。」
絵里「話はそれだけ。」スクッ
絵里(あなたたちには悪いけれど、私は あなたたちを突き放すしか出来ないの。)
絵里(長居すると決心が鈍ってしまいそうだし、立ち去りましょう……)
海未「待ってください!」
海未「じゃあ、もし私達が上手くいったら」
海未「人を惹き付けられるようになったら…」
海未「認めてくれますか? 」
絵里「……無理よ。」
海未「どうしてです?」
絵里「私にとっては、スクールアイドル全部が素人にしか見えないの」
絵里「1番実力があるというA-RISEも、素人にしか見えない。」
絵里「……」スタスタ
絵里(ごめんなさい、園田さん。)
海未「そんな……。」
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【生徒会室】
絵里「はぁ……」
絵里(園田さんを突き放してしまったことで、私とµ’sの間に更に大きな壁を作ってしまったわ……)
希「どうかしたん? 」
絵里「いや、何でもないわ」
希「ふーん……」
希(昨日、海未ちゃんがウチに話しかけて来たんやもん。詳細は分かっとるで……ふふふ)
希「あっ、そういえば絵里ち」
絵里「なに? 」
希「昨日な、海未ちゃんから話があってー……」
絵里「!? 」ガタッ
希(おー、この反応……やっぱり)
希「絵里ちのバレエの動画、見せた」
絵里「えっ……どうして!? 」
希「絵里ちの凄いところを見せつけて、絵里ちがスクールアイドルに何故反対してるのかを、理解してもらおうと思って」
絵里「えっ、あっ……そう、それならまぁ、仕方ないわよね」
希(こう言われた方が、えりちも気が楽なはず )
希(本当は、絵里ちも皆と仲良くしたいんよね? )
希(本当は、絵里ちのことを、皆に知ってもらって……仲良くなって欲しくて見せたんよ)
絵里(余計にµ’sとの壁が出来てしまったわ……)
絵里(希の優しさってのももちろん分かるし、ありがたいし……だけど)
絵里(もう私がµ’sの皆と笑って話せるチャンスは完全に消えたのかもしれない)
絵里(本当は私だって堂々と応援したいのに、どうして……)
『ピンポンパンポーン♪』
『生徒会長、絢瀬絵里さんは理事長室まで……』
絵里「急に呼び出しだなんて珍しいわね……」
希「何かあったんやろか」
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【理事長室】
コンコン
絵里「失礼します」
理事長「……言いにくいことなんだけど、絢瀬さんには真っ先に伝えておこうと思って呼びました。」
理事長「今度のオープンキャンパスで、入学希望者数のアンケートを取るのだけど……」
理事長「もし入学希望者数が満足に満たなかった場合は、廃校が確定になります。」
絵里「そんな……!! 」
理事長「ごめんなさい、でもこれは決定事項よ」
理事長「音ノ木坂学院は、来年より生徒募集をやめ」
理事長「廃校とします。」
ガチャッ!!
穂乃果「今の話、本当ですか!? 」
穂乃果「本当に廃校になっちゃうんですか!? 」
理事長「……本当よ。」
穂乃果「お願いします! もうちょっとだけ待ってください!! 」
穂乃果「あと1週間……いや、2日で何とかしますから!! 」
理事長「廃校にするというのは、オープンキャンパスの結果が悪かったらという話よ」
理事長「見学に来た中学生にアンケートをとって、結果が悪かったら廃校にする。」
理事長「そう、絢瀬さんに言っていたの」
穂乃果「なーんだぁ…」ホッ
絵里「安心してる場合? 」
絵里「オープンキャンパスは2週間後の日曜日、」
絵里「そこで結果が悪かったら廃校が確定するってことよ? 」
穂乃果「うっ……」
絵里「理事長、」
絵里「オープンキャンパスのときのイベント内容は、生徒会で提案させていただきます。」
理事長「……止めても聞きそうにないわね」
絵里「失礼します。」スタスタ
ガチャッ
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【廊下】
絵里「……」
希「……どうするつもり? 」
絵里(わっ……びっくりした。居るなら言ってよ、希。 )
絵里「決まってるでしょ」
絵里「生徒会で、何とかするのよ」
希「そう……"生徒会で" かぁ……。」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
今回はここまでです。
おつ
#6
【自宅】
絵里(生徒会で……って意気込んだは良いものの、どうしましょう )
絵里(今日の生徒会での会議では、制服の紹介やスクールアイドルが案として出た……)
絵里(生徒会の子達、スクールアイドル認めちゃってるのぉ!?)
絵里(と、内心思った。)
絵里(生徒会との仲を悪くしないようにと、スクールアイドルに反対していたけど、もう反対する必要がなくなったのよね。)
絵里( だ・け・ど!私はスクールアイドルを賛成してもいい立場じゃない )
絵里( 園田さんを突き放してしまったし、私からμ‘sに寄り添うようなことは、正直 周囲の反応が怖い )
絵里(それに、μ‘sが私のことを嫌っていたとしたら、私がμ‘sの肩を持つなんて余計なお世話なはず )
絵里(スクールアイドルに反対する生徒会長キャラを演じるしか、道は無いみたいね……)
絵里「だぁぁぁっっ!もおぉぉぉ!!」ワシャワシャ
ドンッ!
怒りに任せて机を拳で叩いたが、案外痛かった。
絵里「いったぁぁい……!! 」スリスリ
絵里「……」シュン
絵里(生徒会のみんながスクールアイドルに反対するから、私も反対してた。)
絵里(そしたら思いのほか、μ‘sがどんどんと人気を得てきて……)
絵里(気づいたら生徒会のみんなもμ‘sを応援してて……)
絵里(過去にμ‘sを批判していたせいで、μ‘sに擦り寄ることが不器用な私には出来ない……)
絵里(いつの間にか、μ‘sを批判する者は私1人……独りぼっちね……)ポロポロ
机に伏せた腕が、涙で濡れる。
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日曜日……
【風呂場】
シャワァァァァ
絵里(妹の亜里沙にまで言われてしまった……)
......................................................
亜里沙「これがお姉ちゃんのやりたいこと? 」
......................................................
絵里(学校のプレゼンを真面目に練習していただけよ、楽しさなんて必要ないわ)
絵里(そりゃあ廃校は確かに阻止したい、でも阻止するには、私には方法がこれしか無い)
絵里(好きなことやって廃校阻止出来るなら、いいんだけどね……現実はそう簡単にはいかないわ)
絵里( "やりたいこと" と "やらなくちゃいけないこと" はイコールじゃないの、全くの別物よ)
絵里(仕方ないじゃない、周りから"やらなくちゃいけないこと" を押しつけられるんだもの)
絵里( 高坂さんのように、好きな物を真っ直ぐ追いかけることの出来る人もいれば、何かのために好きな物を諦める人もいる。)
絵里(いつだって褒め称えられるのは前者で、勿体無いと文句を言われるのは後者なのも、変な話よね)
絵里(今の世の中は、我慢強すぎても駄目なのかしら……)
『おねぇちゃーん! 希さん来てるよーー!! 』
絵里「はーい……って、えぇぇえ!? 」ツルッ
ドンガラガッシャーン!
絵里「いてて……」
絵里「の、希!? なんで…!? 」
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希「よっ」ピース
絵里「よっ……じゃないわよ、何しに来たの? 」ワシャワシャ
希「おぉ~、絵里ちの風呂上がりはセクシーだねぇ」ムフフ
希「バスタオル1枚……ぐふふ……」ジュルリ
希「ワシワシしたい」ゴクリ
絵里「妹がいるからダーメ」
希「んんっ!? 妹がいなかったらやって欲しいって事!? 」
絵里「んもぉ、話をそらさないで」
希「ごめんごめん……んで、なんの話? 」
絵里「なんで日曜日なのに、私の家に来たの?」
絵里「何か用があるから来たのよね」
希「……」
希「心配だから……かな」
絵里「……」
希「最近の絵里ち、まるで余命があと1日なんじゃないかっていうくらい、生き急いでるように見えてさ」
希「絵里ちは気付いてないかもしれないけど、今の絵里ち……凄くイライラしてるみたいだし」
希「相談して欲しいなって……それで、来たんよ」
絵里「……」
絵里「ごめんなさい、話すことはでき…」
希「よーしじゃあ、散歩に行こ~っ!! 」グイグイッ
絵里「ちょっ……なによ急に! 」
希「いいから! お散歩いくよ!! 」グイグイッ
絵里「ちょっと待って!!今 私バスタオル1枚だから~~!!」
希「あ、ごめん」
絵里「うん、許す」
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【公園】
噴水の向かいのベンチに座る。
希「絵里ち、さっそくで悪いんだけれど……」
希「本当はμ‘sのこと、応援したいんと違う? 」
絵里「……」
絵里「いいえ、全く」
希(絵里ちの目が涙ぐんだ……)
希(やっぱり、絵里ちもμ‘sのことが好きなんやね……)
希(……ウチが何日も悩んで考えた、絵里ちがμ‘sの皆とさりげなく絡める方法がひとつだけ)
希「ねぇ絵里ち、あの子達が絵里ちに教えを乞うたらどうする? 」
希「海未ちゃんって子が、絵里ちのダンスをとても評価していて、そのうちダンスを教わりに来るかもしれない」
絵里「ダメよ」
希「μ‘sは、今 絵里ちのバレエ動画の件で荒れてるって知っても? 」
絵里「……どういうこと? 」
希「海未ちゃんが、絵里ちの動画を見てから……自分たちの踊りに納得が出来ていないみたいで」
希「どれだけ練習しても自己満足に至らない、自分たちの評価を自分たちで下げてしまう」
希「今は、そんな状況」
絵里「そんな……」
希「廃校を救うには、生徒会かスクールアイドルか……どっちか片方にする必要は無いんやない? 」
希「どっちも応援する、どっちか片方が成功して廃校を阻止出来れば結果オーライ…やろ? 」
希「廃校を救うために、今 いちばん良い状況は、絵里ちと、μ‘sが手を組むこと」
希「だから……もしも、μ‘sが絵里ちを必要とした時は、彼女たちを助けてあげて欲しい」
希「μ‘sから絵里ちに対して何も話が無ければ、今まで通りで居ればいい。」
絵里「……」
絵里「……」
絵里「……分かった。」
希( 良かった…… )ホッ
希(あとはμ‘s次第……)
希(きっと絵里ちのところに来ると、信じてるで、海未ちゃん……!! )
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今日はここまでです
期待
#7
翌日……
【生徒会室】
コンコン
希「!」
絵里「……? 」
ガチャッ
海未「生徒会長……」
穂乃果「ダンスを、教えてくれませんか? 」
穂乃果「お願いします! 」
絵里「私に……ダンスを……? 」
穂乃果「はい! 教えていただけないでしょうか……!! 」
穂乃果「私達、上手くなりたいんです!! 」
海未「……」
絵里(あれだけ突き放したというのに、私に教えを乞うなんて……)チラッ
絵里(園田さんの覚悟には、応えなくちゃいけないわね)
絵里「分かったわ。」
穂乃果「ほんとですか!? 」
絵里「あなた達の活動は理解出来ないけど、人気があるみたいだし……引き受けるわ。」
絵里「でもやるからには、私が認める水準まで頑張ってもらうわよ……いい!? 」
穂乃果「はい! 」
絵里(μ‘sがダンスに満足出来るようになれば、私の役目はおしまい)
絵里(きっとわずかな時間だけど、μ‘sを直接応援出来る、大事な時間)
絵里( 生徒会長キャラなりに、出来る限り助けなきゃ……)
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絵里がμ‘sのダンスレッスンを見るようになってから2日経ったある日…
放課後……
【廊下】
絵里(彼女たちの明るさが辛くて、練習途中なのに逃げてきてしまったわ……)スタスタ
絵里(私が幼い頃にやってたバレエは、団体競技じゃなくて個人競技だった)
絵里(先生から教わり、独りで練習して、独りで舞台に立って、評価される。今思えば厳しい世界よね)
絵里(だから、私のバレエが他の人の役に立てるだなんて……新鮮だった)
絵里(今の私がやりたいことは……)
絵里( 好きな物を、何のしがらみもなく追いかけること……? )
絵里(……μ‘sの笑顔に嫉妬している自分がいる。μ‘sみたいに、好きな物を追いかけて、笑っていたい)
絵里(今の私は、"やらなくちゃいけないこと"をただひたすらやるしか道が無いと思ってる)
絵里(でも、もしも今までの行いを全て許してくれて、何も悩むことなく、自由の身になれるなら……私は……)
絵里( μ‘sに、なりたい……? )
.
絵里(……ダメよ、ずっと冷たい言葉をμ‘sに浴びせ続けてきたもの。今更 仲間になんてなれない)
絵里(外部コーチという距離感で関わるのが、彼女たちにとっても私にとっても丁度いいはず……)
希「ウチな」
絵里「希……!! 」
絵里「いつからそこに……」
希「絵里ちと友達になって、ずっと思ってたことがあるんや」
希「……絵里ちは本当は何がしたいんやろう、って」
絵里「……!」
希「一緒に居ると、分かるんよ? 」
希「絵里ちが頑張るのはいつも誰かの為ばっかり」
希「だから、いつも何かを我慢してるようで」
希「学校を存続させようってのも、生徒会長としての義務感やろ!? 」
絵里「っ…!! 」
希「絵里ちの……絵里ちの本当にやりたいことは!? 」
絵里「……」
絵里「……」
絵里「……何よ」
絵里「何とかしなくちゃいけないんだから、しょうがないじゃない!! 」
希「……! 」
絵里「私だって好きなことやって、それでなんとかなるならそうしたいわよ!! 」
絵里「……」ウルッ
絵里「……自分が不器用なのは分かってる…!! 」
絵里「だけど! 」ポロポロ
絵里「今更アイドルを始めようなんて……私が言えると思う? 」ポロポロ
絵里「っ!! 」ダッダッダッ
希「絵里ち!! 」
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【教室】
泣いていることを他の誰にも悟られないようにと、教室へ駆け込んだ。
ここなら、生徒会室に居るよりもずっとずっと見つかりにくい。
絵里(冷たい生徒会長キャラなんだから、涙をみんなに見せてはいけない)ポロポロ
絵里(うぅ……あぁ……)ポロポロ
絵里「グスッ……」
かれこれ1時間ほど泣き続けて、ようやく涙が枯れてきた。
ふと窓を見ると、死んでいるような表情の自分が映っていた。
絵里( ひどい顔……)
絵里「私の、やりたいこと……」
絵里「そんなもの…」
スッ
絵里「……? 」
私に向かって手が差し伸べられていた。
穂乃果「……」ニコッ
絵里「あなた達……」
穂乃果「絵里先輩、一緒にμ‘sで歌って欲しいです!」
絵里「え……? 」
穂乃果「スクールアイドルとして! 」
絵里「何言ってるのよ……私がそんなことするわけないでしょ? 」
海未「さっき希先輩から聞きました」
にこ「やりたいなら素直に言いなさいよ」
真姫「にこ先輩に言われたくないけど」フフッ
絵里「ちょ、ちょっと待って……私、やりたいなんて一言も……」
絵里「大体、私がアイドルなんておかしいでしょ? 」
希「やってみればええやん」
希「特に理由なんかいらない、やりたいからやってみる」
希「本当にやりたいことって、そんな感じで始まるんやない? 」
絵里「やりたい……こと……」
絵里(今の私が、いちばんやりたいこと……)
絵里(もう何も迷う必要はない)
絵里(生徒会の皆は、μ‘sのことを応援している)
絵里(唯一、怖かった、μ‘sのみんなも私のことを嫌ってはいない)
絵里(自分を抑えすぎていて、周りが良く見えていなかったのかもしれない)
絵里( 後先考えずに、今やりたいことだけを考えると……)
差し出された穂乃果の手を、絵里は優しく握った
絵里「……」ウルッ
絵里(ありがとう、みんな)
絵里(今の私がやりたいこと……それは……!! )
絵里(廃校阻止を……みんなで叶えたい!! )
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今日はここまでです。
#エピローグ
私は、μ‘sに加入してから、生徒会長キャラを無理に演じることはなくなった。
むしろ、自分が素で居られる環境だと思う。
穂乃果「絵里ちゃん、何やってるの? 」
絵里「え? 」
絵里「ふふっ、練習で疲れてるだろうと思って皆のハンカチをキンキンに冷やしているのよ」
穂乃果「わぁー!! ありがとーっ!! 」ガバッ
絵里「わっ、ちょっ」ギュッ
「先輩・後輩呼び」も無くなって、私達は家族のような絆の強さを得た。
凛「あーっ、また穂乃果ちゃんと絵里ちゃん抱きしめあってるにゃー!! 」
絵里「えっ、ちょっ」
ことり「むっ……」スタスタ
海未「いけませんね……」スタスタ
凛「凛もまーぜて!! 」タッタッタッ
凛「キャッチー! 」ガバッ
穂乃果「えへへ~」ギュッ
絵里「ちょっとぉ、左右からは……」
希「ウチもウチも~! 」ガバッ
ことり「ことりも♪」ガバッ
海未「穂乃果とことりがやるなら、わ、私も……」ギュッ
にこ「……」
真姫「……」クルクル
花陽「にこちゃん、真姫ちゃん! 」ガシッ
にこ「わわっ!」
真姫「な、なによ! 」
花陽「みんなのところに、ぎゅーしに行こ? 」
にこ「……」
にこ「しょうがないわねぇ~~」スタスタ
真姫「ま、まぁ……少しだけなら」スタスタ
花陽「えへへ」スタスタ
花陽「ほっ」ガバッ
にこ「ラブにこっ♪」ガバッ
真姫「……」ガバッ
絵里「んん~~!! 」ブンブン
絵里「んん!! んんっ!! 」バンバン
穂乃果「大変!絵里ちゃんが苦しそう!! 」
凛「みんな離れてーっ! 」
ササッ
絵里「ぷはぁ……はぁ……ぜぇ……はぁ……」
絵里「あはは……」バタッ
絵里( 幸せ…… )
海未「絵里が倒れました! 」
希「た、大変!」
ことり「保健室に連れてくね!! 」
絵里(あはぁー……しあわせ……/// )ボーッ
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【保健室】
絵里「ん……」
海未「気がつきましたか」
絵里「海未……」
絵里「もう大丈夫だから、練習にもど…」
海未「ダメです」
絵里「どうして? 」
海未「いえ、理由は言えないのですが……」
海未「とりあえずダメです! 」
海未「今日はしばらくここで安静にして、家に帰りましょう! 」
『凛ちゃんそれそっち持ってって! 』ドタバタ
『もっと水色にした方がいいんじゃないかなぁ』
絵里「外からなにか聞こえるんだけど」
海未「何でもないですよ、何でも。」
絵里「なに、私に隠し事? 」
海未「いえ……」
『いったぁぁ……』
『大変!真姫ちゃんが足の小指をぶつけちゃった!』
『ぷぷーっww真姫ちゃんの顔ww』
『しーっ、絵里ちゃんに聞こえちゃうよ』
絵里「ねぇ、やっぱり何か聞こえるんだけど? 」
海未「幻聴じゃないですか? 」
絵里「……」ハァ
絵里「分かったわ、何してるのか知らないけど……」
絵里「私のこと影で馬鹿にしてたりしないわよね? 」
海未「もちろんですよ」
海未「むしろ逆です。」
絵里「逆? 」
海未「みんな、絵里が好きで好きでたまらないんですよ」
海未「だからこうして明日のために……」
海未「はっ!」
絵里「明日? 」
海未「と、とりあえず絵里の荷物は私が持ってくるので、保健室から"直接"帰宅してくださいね! 」
海未「今取ってくるので、"絶対に"部屋から出ないように! 」
絵里「は、はい」
海未「……」スタスタ
ギギィ……ガチャン
絵里「出てった…」
ガチャッ
海未「絶対ダメですよ!絶対ですからね! 」ヒョコッ
絵里「ふふっ、出ないわよ」ニッコリ
ギギィ…ガチャン
絵里(何してるのかしら……)
絵里( 気になる……!! )
絵里(そうだ、良いこと思いついたわ……ふふふ)
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放課後……
【正門前】
海未から荷物を受け取って、とりあえず正門前までやってきた。
絵里(さて……まだ他のメンバーは校内で何かをしているわよね)
絵里(校舎裏から回り込んで、こっそり除いてみましょうか)
絵里(今の私は ぬきあし さしあし コソーチカよ)ソーッ
絵里(もちろん双眼鏡も完備……ふふふ)
絵里(とりあえず、みんなが居そうな場所といえば部室かしら)
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【部室の近く】
絵里(外から回り込んできたわ)
絵里(あそこに見える窓が部室の窓)
絵里(レッツゴー!)ササーッ
絵里(さて、何を隠しているのかしら……)チラッ
[絵里ちゃんお誕生日おめでとう!]
絵里「あのパネル……」
にこ「んー、もうちょっとそこらへんの装飾は派手にした方がいいんじゃない? 」
希「真姫ちゃん、セロハンテープどこ置いたー? 」
真姫「花陽が今持ってるわ」
花陽「あっ、はい! 」
穂乃果「絵里ちゃん、喜んでくれるかな? 」
海未「喜んでくれると思います」
ことり「じじゃーん、絵里ちゃんの衣装出来たよー! 」
穂乃果「わぁーっ、可愛いー!! 」
凛「可愛い……!! 」
希「明日絵里ちを部室に連れ込んでからのことはシナリオ出来てるの? 」
海未「あ、私が考えてあります」
海未「部室に連れ込んでから、みんなでサプライズの祝福を。」
海未「そのあとチョコレートケーキをことりが持ってきて……」
絵里「……」
絵里(見なかったことにしておきましょうか)
絵里( ふふっ……明日が楽しみね……!! )
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おしまい
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
10月21日は かしこいかわいい生徒会長、絢瀬絵里ちゃんの誕生日なので、良かったら祝ってあげてね!
乙です
素晴らしいお祝いssだった
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