絵里「ハラショー」穂乃果「またそれか」 (61)

絵里「ハラショー」

穂乃果「絵里ちゃん!」

絵里「?」

穂乃果「ロシア語って他にどんな言葉があるの???」

絵里「………ハラショー」

穂乃果「それはもう知ってるよー!」

絵里「うっ……」

穂乃果「おしえておしえてー!」

絵里「…………」

穂乃果「わくわく!」

絵里「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」

穂乃果「わー!なんか呪文みたいだね!
ロシア語ってすごい!」

絵里「でしょ?」

ことり「絵里ちゃ~ん、助けてぇ~」

絵里「どうしたのことり」

ことり「ここのフレーズの歌詞が決まらないの……時間がないよぅ……どうしよー!」

絵里「ハラショー、ってどうかしら」

ことり「………!ハラ、ショー……」

絵里「どうかしら」

ことり「何かが閃いた気がする!ありがとう絵里ちゃん!」

絵里「作詞期待してるわね」

花陽「はぁ……」

絵里「あら、どうしたの花陽。なにか悩み事?」

花陽「あ、絵里先輩……」

絵里「ハラショー、食べる?」(モグモグ

花陽「ありがとうございます……もしゃもしゃ。えへへ……おいしー」(モグモグ

絵里「少しは元気が出たみたいね」

絵里「何かあったの?」

花陽「……このサイト見てください」

絵里「ミューズのメンバーで一番のデブといえば誰か、ですって?」

花陽「みんな私の名前をばっかり挙げてるんです……
……うぅ、私ってデブだったんだぁ……」

絵里「……花陽。ハラショー、って言ってみて?」

花陽「ハラ……ショー?」

絵里「もっと元気よく!」

花陽「ハラショー!」(ニコッ

絵里「いい笑顔ね。可愛いわ花陽」

花陽「うぇぇ?!い、いきなりなんなんですか?!」

絵里「デブでも別にいいじゃない
たとえデブでも、あなたが魅力的なアイドルであることに変わりはないわ」

花陽「え、絵里ちゃん………!」

絵里「行くところがあるから私はこれで………ハラショー(幸運を祈る)」

花陽「ハラショー!(幸運を祈る)」

部室
ガチャ
絵里「あら?にこ一人?」

にこ「あら絵里じゃない。どうかしたの?」

絵里「少し資料を見にきたのよ………それよりもにこ。貴方その顔………」

にこ「なによ」

絵里「………顔に何つけてるの?」

にこ「キュウリパックよ!知らないの?」

絵里「学校で何をしてるのよあなたは……ハラショー……」

絵里「なぜキュウリを顔にくっつけてるの?」

にこ「お肌の手入れよ。知らないの?」

絵里「ハラショー………そんなお手入れの仕方があるのね。
私はいつもハラショーでしかスキンケアしてないから知らなかったわ……」

にこ「ハラショー?
なにそれどこかのメーカーの名前?
……まぁ別にどうでもいいや。資料持って早く出て行きなさいよ」

絵里「………にこ、何があった?」

にこ「………べつに」

絵里「それって学校でまでやる必要のあることなの?」

にこ「……仕方ないでしょ
にこみたいな無個性アイドルはこういう地道なところで努力するしかないのよ……」

絵里「ぷっ……にこが無個性?
ハラショーを通り越してハラショーねそれ!面白いハラショーだわ!あははは」

にこ「何言ってるか全然わかんないんだけど……」

絵里「あ……ごめんなさい。母国語がいくつか混じっちゃったわね」

にこ「ハラショーしか見当たらないけど……」

絵里「にこは頑張りすぎなのよ。もっと肩の力を抜いてもいいと思うわ」ナデナデ

にこ「………でも私は歌もダンスもパッとしないし、
正統派アイドルキャラは最近じゃ空回り気味だし……」

絵里「…………」ナデナデ

にこ「……オシャレは自信あるけど、表の舞台で活かせる場所はほとんどないし……
背も低いから舞台映えしないし………」

絵里「………にこはすごいわね
自分の弱点から逃げずに正面から向き合おうとしている
誰にでもできることじゃないわ」

にこ「……だからなんだって言うのよ」

絵里「にこのファンの人達は
きっと貴方のそういうところに惹かれたんでしょうね」

にこ「………」

絵里「誰よりもアイドルに情熱を注いで、
誰よりも正しいアイドルであろうとする

アイドルに一途で一生懸命理想のアイドルを目指すにこが、みんな大好きなのよ」

にこ「………」

絵里「にこの他の良いところをあげて
励ましてあげるのはたしかに簡単。

……でも私はやらない。
だって出来ないことから逃げるのは
本物のアイドルのすることじゃないもの」

絵里「だから私はこの言葉しか言わないわ」

にこ「………」

絵里「一緒にアイドル頑張りましょうね、にこ」

にこ「……なにそれ。意味わかんない」

絵里「そう?」

にこ「…………ありがとね絵里」

絵里「ハラショー」ニコッ

雪穂「迷っちゃたよ~ここどこー?!」

絵里「あら?あなたは……雪穂ちゃん?」

雪穂「あ!絵里先輩!たすけてくださいー!」

絵里「落ち着いて。どうしたの?」

雪穂「それが!それがあああ」

雪穂「それがあああああ!!」

絵里「フッ!」(トンっ!

雪穂「………あれ?急に心が穏やかな気持ちに……」

絵里「落ち着いた?」

雪穂「今私に何したんですか?!」

絵里「ハラショーよ」ニコッ

雪穂「ハ、ハラショー……」

絵里「迷子になっていたのね」

雪穂「す、すみません。取り乱しちゃって」

絵里「初めての場所だもの。気持ちはわかるわ」

雪穂「は、はい。えへへ……」

絵里「あ、そうだ。ハラショーあるんだけどたべる?」

雪穂「それは…まさか!」

絵里「?」

雪穂「Пряникですか!?」

絵里「?!」

プリャーニク

雪穂「わー!わー!初めてみたー!」

絵里「そ、そう」

雪穂「これがПряник!食べてもいいですか!」

絵里「も、もちろんよ」

雪穂「おいしー!Восхитительный!」

絵里「また違う言葉……」

雪穂「え?なんて?」

絵里「喜んでもらえてよかったわ」ニコッ

絵里「ところであなたのその発音……」

雪穂「あ!ごめんなさい!聞き苦しかったですか?」

絵里「いえ、ハラショーな発音だったわよ」

雪穂「私アリサの影響で最近ロシア語の勉強してるんです」

絵里「なるほど……」

雪穂「あの!絵里先輩!」

絵里「……なにかしら?」ニコッ

雪穂「絵里先輩の……本場のロシア語を聞かせて欲しいです!」

絵里「………」ニコニコ

雪穂「お願いしてもいいですか?」

絵里「………もちろんよ」ニコッ

雪穂「わくわく!わくわく!」

絵里「ハラァショーゥ」

雪穂「……もっと本気の発音でも構わないです!!」

絵里「ハラショー……」

雪穂「お願いします!」

絵里「………」

絵里「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」

雪穂「!!!」

雪穂「に、日本語に聞こえるんですけど……」

絵里「………」

絵里「半分正解ね」ニコッ

雪穂「え?」

絵里「今のはロシア語よ。
といっても台詞の半分くらいは日本語発音なんだけどね。
気付かなかったでしょ?」

雪穂「き、気付きませんでした!」

絵里「ロシア語の発音って日本語にかなり近いと言われてるの。
どちらも口先の発音が多いからね」

雪穂「へぇー!!」

絵里「雪穂ちゃん、
ロシア語を覚えたいのならとにかく単語を覚えることが大事よ?」

雪穂「うぇー、わたし暗記にがてー」

絵里「ふふ、あなたならきっとできるわ………はい、玄関に到着っ」

雪穂「あ、ありがとうございます!
おかげで玄関にたどり着けました!」

絵里「生徒会長として当然のことをしたまでよ」

雪穂「それじゃ!До свиданияー!」

絵里「…………」黙って手を振る

海未「ラブアローシュート!」
化物『ギャー!!』シュー……

海未「ラブアロー……シュート!!!」
化物『ギャー!』シュー……

海未「これじゃ切りがありません……!」

化物『シャー!!!』
海未「?!しまった後ろに………!」

絵里「……ハラショー」


化物『ふぎゃ??!ぅ……ぁ、ぁぁあああああ!!!!』ポンッ

海未「絵里!たすかりました!」
絵里「ストップ!」
海未「え?」
絵里「まだ終わってないでしょ?」

絵里は軽くウィンクすると、
天に向かってゆっくりと右手をあげる

辺り一面が眩い光に包み込まれる
海未「………こ、これは!」



絵里「…………ハラショー」

化物達『『ぎゃあああああ!!!』』

絵里「ふぅ……これで全部、かな?」

海未「絵里!ハラショーです!」

絵里「こら!一人でなんて無茶するのよ!」

海未「……ごめんなさい」

絵里「海未……あなたはもっと仲間を頼るべきだわ」

海未「でもこれは私個人の問題です……」

絵里「………」

絵里「海未、ハラショーしてもいい?」

海未「え?ひゃ……んっ……んっ、い、いきなりなにするんですか!」

絵里「ごめんなさい。今はこうしないといけない気がしたの」

海未「何を言って、んっ……チュパ ジュル ジュル……」

絵里「 チュパ……海未。あんなさみしいこと言わないで?
あなたの問題は私の問題でもあるのよ?」

海未「え、絵里……」///

絵里「私で良ければ力になるから……いいえ、力になりたいの。あなたの力に」

海未「……………えりぃぃ……えりぃぃ…」

絵里「よしよし……今までよく一人で頑張ったわね……」

絵里「もうあなたは一人じゃないわ。これからは私をたよって?」

海未「……はい。ありがとう絵里」

絵里「気にしなくていいわ。……それじゃあ私行くところがあるから」

海未「あ……はい」

絵里「………もう、そんなさみしい顔しないで?
そんな顔してる子にはハラショーしちゃうわよ?」

海未「っ!!!も、もういいからはやく行ってください!」

絵里「ふふっ、行ってきまーす」

穂乃果「ガラガラ!絵里ちゃん大変だよ!!」

絵里「穂乃果?そんな慌ててどうしたの?」

穂乃果「ことりちゃんが!ことりちゃんが!」

絵里「ん?どうしたの穂乃果」

穂乃果「と、とりあえず読んでみて!」

絵里「これは………手紙?」

歌詞のアイディアを探しにロシアに留学してきます
探さないでください

ことりより


絵里「………なるほどね」

穂乃果「歌詞が思いつかなくて悩んでたみたい……」

絵里「私のアドバイスのせいで妙な方向に悩ませてしまったようね……」

穂乃果「ど、どうしよう絵里ちゃん!」

絵里「………」
絵里「……私がなんとかするわ」

穂乃果「で、でも!」

絵里「穂乃果は何もしなくていいわ。私がなんとかする」

穂乃果「ちょ、ちょっと絵里ちゃん?!どこに行くの?!?」

絵里「……決まってるじゃない」
絵里「ロシアよ!」

希「待ちんしゃい!」

絵里「のぞみ……」

希「本気?」

絵里「本気よ
自分のミスは自分で取り返す、それがロシア人というものよ」

希「……でもエリチ、あんたロシア語は……」

絵里「……大丈夫。私にはこれがあるもの」

希「そ、それは………」

絵里「ハラショーよ」

絵里「ハラショーがあれば、私はどこへだっていける」

希「はぁ……私の話を聞くつもりはないみたいやね」

絵里「……ごめんね希。いつも心配ばかりかけてしまって」

希「今更やん。気にせんでもええよ?」

絵里「じゃあ……行ってくるわ」

希「ほな行こうか~」

絵里「ついて来る気!?ダメよ!ロシアは恐ロシアなのよ!?
そんな危険なところに希を連れて行くわけには……!」

希「エリチ一人でそんな場所には連れていけんよ。うちも一緒に行く」

絵里「のぞみ……あなた……」

希「譲る気は、ないで?」

絵里「……しかたないわね。それじゃあ行きましょうか」

希「うん!行こう!ロシアへ!」

(第一部完)

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