女「リトライ」 (19)

とある中学校屋上にて

友「私さ。死のうと思うんだ」

女「は? 何言ってんの、今日はエイプリルフールじゃないわよ」

友「しょうがないじゃない。この世がつまんないんだもん」

女「んなこと言われてもさぁ、私たち幼稚園の頃からの大親友だよ? あんたに死なれちゃ困るの」

友「……」

友は黙って屋上の柵に手をかける。

ギギィ……と軋む柵。

その音に反応する女。

女(力ずくでも止めてやる……。ちゃんと見ておこう)

友「……」

だが友は黙って柵から手を離し、踵を返して歩き始めた。

女(ホッ……友ちゃんが自殺しなくてよかった)

ーーしかし。

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ーーしかし、友は、自殺をやめたわけじゃなかった。

一歩、二歩、三歩、四歩、五歩くらい歩いたところで、友はいきなり止まった。

女「……? 」

友「……」

友はいきなりくるりと振り返ると、全速力でかけてきた。

女「!! 」

友「……えいっ! 」

そしてそのまま、1メートルほどの柵を飛び越えた。

女「なっ……」

ちょうどその柵に寄りかかっていた女。

友が飛んだ時、揺れる木の柵。

全体重が木の柵にかかる。

当然、崩れる。

友が落ちていったすぐ後に、女も落ちていった。

女には、すべてがスローモーションのように見えていた。

女(学校の柵が崩れたものが上に見える)

女(空が青いなぁ)

女(私、これから死ぬんだ……。実感ないや)

女(もっと生きたかったなぁ、友ちゃんと一緒に)

女(ゆっくり落ちてく……私の体……。絶対助からないだろうなぁ。校舎って20メートル超えてるもの)

友の体が地面に突き刺さり、女も校舎の半分くらいまで落ちた時。

時が、止まった。

女(私も、もうすぐ終わりだ。楽しかったなぁ。痛いのかな、死ぬ時って。やだなぁ)

女(ってあれ? 体が、落ちない? )

時が止まった。

女の体は空中で静止した。

女(体が……動かないっ! どうしてっ?)

???「それは私が教えよう」

突如として女の頭の中に響き渡った声。

それは男性とも女性とも取れない中性的な声だった。

女(え? 何? 何なの? 幻覚? 幻聴? それとももう死後の世界?)

自称神「私は神だ。全知全能の神だ。今日は暇だかr……ゲフンゲフン、
今日は神としての務めを果たすために下界を覗いていたら、面白いものを見かけてねぇ。
自殺少女、それを止めようとする健気な少女。うーん、最高」

自称神「君たちは私を楽しませてくれた。だから私は、君に奇跡をあげようと思うんだ」

自称神「君は、あの女の子を助けたいんだろう? なんたって、親友だからね」

自称神「私は神だ。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」

自称神「そう、例えば、……さっきの出来事をやり直すことだって、可能さ」

自称神「おっと。勘違いしちゃいけないよ……。私は奇跡を起こしてあげるが、運命を変えるのは君だ。
君があの子を助けられなければ君は何度でもさっきの出来事を繰り返すことになるだろう。
何度でも再挑戦ーー、リトライ、してもらう」

自称神「君があの子を助けられれば、そのまま仲良く残りの人生を過ごせるさ」

自称神「そんな理不尽な奇跡を起こしてあげる」

自称神「ああ、勿論拒否権はあげよう。こんな変なことに巻き込まれたくなければ、ノー、と言ってもいい。
その瞬間君はまた元のように落ち、友達と仲良く死ぬだろうね」

自称神「死か、ループか。好きな方を選んでいいよ」

女(そんなの、決まってる)

女(私はまだ生きたい。友ちゃんと一緒に)

女(どんな過酷なループが待ち伏せていようとも、友ちゃんの為なら、私は頑張れる)

女(そもそも私は友ちゃんがどうして自殺しようとしたのかさえ、よく知らない)

女(それを突き止めて、友ちゃんを助けるまで、私は死ねない)

自称神「……へぇ、覚悟は決まっているようだね。じゃあもういちど説明しよう」

自称神「君は、『リトライ』というだけで君の思い描いた過去までひとっ飛びできる。
君が時間の指定などもするんだよ」

自称神「そして、君は運命を変える努力をしてくれ。その結果がどうなろうと、私は知らない」

自称神「さらに、君はあの子を救うまで絶対に死ねない。ループを終えられない」

自称神「そんなことなんだけど、大丈夫かい? ここで死んでしまった方がある意味楽かもしれないよ」

女(……それでも、私はやる。友ちゃんを救う!)

自称神「覚悟はできているようだね。じゃあ、唱えてごらんよ。魔法の、悪夢の呪文を」

女(口が動く!)





女「ーーリトライッ」






目の前が白く霞んだ。

そして女の意識は飛んだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



友「……」

友は黙って屋上の柵に手をかける。

ギギィ……と軋む柵。

女(戻った! 本当に戻ったんだ! 神様ありがとう!)

女(でも、問題はここから……。ちゃんと友ちゃんを救う!)

友は後ろに下がった。

友は振り返って走って、飛ーーーー

女(今だっ!)

んだ所に、女は手を伸ばし、友の手を掴んだ。

そしてぐいっと引っ張る。

二人揃って屋上の床に倒れ伏した。

女(よしっ、大成功!)

友「何すんのよ女! 離せええっ!」

じたばたと暴れる友。

女「えっ、ちょっ、やめっ!」

必死にしがみつく女。

友「離せエエエエエエエエエエエエエエ!」

友は女の手首に噛み付いた。

女「い、痛っ。何すんのよ!」

思わず手を離す女。

その隙に友は一気に走り、跳んで、落ちていってしまった。

女「……そんな」

せっかくやり直したのに、また友を救えなかった。

女の目に、涙が盛り上がる。

そして、呪文を唱えた。






女「リト……ラ……イ……」






目の前が白く霞んだ。

女の意識は飛んだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーー


友「……」

友は黙って屋上の柵に手をかける。

ギギィ……と軋む柵。

女(ループ二回目! 今度こそ救ってみせる! 今度はもっと早く……)

女「ストーーーーップ!」

友「!?」


スーパーお説教タイム

女「死んで何になるっていうの! 死んで何が変わるっていうの! そう! 何も変わらない! でもね、生きてさえいれば必ずきっと何かは変わるのよ! 一ミリ未満でも、何かは必ずいい方向へ進んでいくはずよ! あんたに何があったのかなんて私は知らないわ! でもね、これでも結構友達やってきてたんだもの、これからもよろしくお願いしたいのよ! 一緒に卒業式をして、一緒に高校に入学して、一緒に毎日を過ごしていきたいの! あんたと一緒に過ごした毎日が楽しい! 嬉しい! ずっと続けていきたい! これだけの理由じゃダメなの!? 何がダメなの!? 100文字以内で私の納得できるような答えを述べなさいよ! さぁ、早く! そんなこともできないのに自殺とかしてんじゃねーよ! 勝手に一人で死のうとしてんじゃねーよ!フザケンナこの野郎! いじめか?ぶっ潰してやるよ! 失恋か? 喧嘩か? 私がいるわよ! しっかりしてよ!」


友「ええぇぇぇぇ……」

女「ゼーゼーハーハー」

友「ご、ごめん……女ちゃんがそんな子だなんて知らなかった…。ごめん、もう絶交しよう。永遠に、あんたと会うことはないわ」

友はそう言って、走り去ってしまった。

女「ええぇぇ……これは違う……私の望む未来じゃない……」








女「リトライ、ね」







目の前が白く霞んだ。

女の意識は、

遠く、

遠く、

遠く、

遠く…………。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


友「……」

友は黙って屋上の柵に手をかける。

ギギィ……と軋む柵。

女(今度はタイミングに気をつけてーーーーーー)

友が歩いて、振り返って。

今まさに走り出そうとした、その瞬間。

女「ストーーーーップ!」

友「!?」


スーパーお説教タイム

女「死んで何になるっていうの! 死んで何が変わるっていうの! そう! 何も変わらない! でもね、生きてさえいれば必ずきっと何かは変わるのよ! 一ミリ未満でも、何かは必ずいい方向へ進んでいくはずよ! あんたに何があったのかなんて私は知らないわ! でもね、これでも結構友達やってきてたんだもの、これからもよろしくお願いしたいのよ! 一緒に卒業式をして、一緒に高校に入学して、一緒に毎日を過ごしていきたいの! あんたと一緒に過ごした毎日が楽しい! 嬉しい! ずっと続けていきたい! これだけの理由じゃダメなの!? 何がダメなの!? 100文字以内で私の納得できるような答えを述べなさいよ! さぁ、早く! そんなこともできないのに自殺とかしてんじゃねーよ! 勝手に一人で死のうとしてんじゃねーよ!フザケンナこの野郎! いじめか?ぶっ潰してやるよ! 失恋か? 喧嘩か? 私がいるわよ! しっかりしてよ!」


友「ええぇぇぇぇ……」

女「ゼーゼーハーハー」

友「」

女「ゼーゼーハーハー」

友「ごめんね」

女の力一杯のお説教は届かなかった。

友は女を振り切り、飛び降りてしまった。

女「嘘……でしょ……」










女「…………………………………………リトライ」









目の前が白く霞んだ。

意識は飛んだ。

女「リトライ!」

この手の超常存在は毎回似たような性格なんだよな。
どうせ最後にドヤ顔で人間の選択の愚かさとかを語っちゃうんでしょ。
寒い。

女「リトライ!!!!」

女「……リトライ」

女「……リトライ」

女「……リトライ」

女「……リトライ」

女「……リトライ」

女「……リトライ」
女「……リトライ」
女「……リトライ」
女「……リトライ」
女「……リトライ」
女「リトライ!!!」

女が何度繰り返しても、結果は変わらなかった。

だんだん女は、無感情になっていった。

ーーーーーーー

女「ヤメテ、シナナイデー(棒)」

女「リトラーイ、リトラーイ(棒)」

女「私って、何をしようとしてたんだっけ」

女「友ちゃんを救う……ああ、そうか。そうだっけ」

女「もう正直、友ちゃんはどうでもいいや」

女「どうしたらこのループを抜け出せるのか」

女「それもどうでもいいか」

女「あ、また友ちゃん死んじゃった。繰り返すか」

女は死んだ魚のような目で、悪夢の呪文をポツリと唱えた。

女「リトライ」

ーendeー

女「わたしあんたが死んだら泣くからね。周りが引くくらい泣くから」
友「…」
女「あんたと生きたいんだよ。意味分からない?」
友「分かんないよ、そんなの」
女「あんたのことが好きなの。あんたがいなきゃ意味ないの」
友「…私も女のこと好きだった。けど言ったら友達でもいられない、だけど言いたい。だから思ったんだ、同性愛で苦しむなら死んでやろうって」
女「ならもうやめてよ。わたしがあんたの彼女になるから」
友「女…!」
女「友ちゃん…!」
ハッピーエンド

的なね?
的な展開を期待してたりしたんですわ

ループタイミング指定されてないし
なんやかんやあって二人が出会うくらいからやり直さないといけない
みたいなベタ落ちかと思ったらそんなことなかったぜ

エンダーじゃないのか
おつ

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