女騎士「のどかだな……」門番「ええ、のどかですね」 (44)

女騎士「暖かいな……もう春だなぁ……」

門番「春ですねぇ」

女騎士「平和だなぁ……」

門番「いえ、平和ではないですけどね。あなたもこの国の騎士なら知っているでしょう?最近、隣国の動きが不穏な事を。まぁ隣国と言っても山を挟んだ向こうですし、この国に直接の影響が出るような事はないと思いますけれど」

女騎士「お、おう……」

門番「いつまでもこんなところで油を売っている場合ではないのではないですか?」

女騎士「だって城の中にいたって暇なだけなんだもん……いいよなぁ門番は。日がな一日こうして座ってるだけでいいんだもん」

門番「まぁ、間違ってはいないですけれどね……」

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商人「兄ちゃん、国の中へ入りたいんだが」

門番「はい、こんにちは。まずは身分を証明するものを見せてください」

商人「これでいいかい?」

門番「ありがとうございます……ほう、海の向こうからはるばるこの大陸まで?」

商人「ああ、そうだよ。私が住んでいる国の王がね、貿易の手を伸ばすって言うんで私が派遣されたんだ」

門番「それはそれは、遠路遥々お疲れ様です。それではこの用紙に名前と滞在日数を記入してください」

商人「はいよ」

女騎士「ほうほう」

門番「どうかしましたか、女騎士様?」

女騎士「中々の手際だな、うむ」

門番「はぁ」

商人「これでいいかい?」

門番「確認させていただきます………はい、確認完了です。今日より三日間滞在ですね。ごゆっくりどうぞ」

商人「ありがとうよ」スタスタ

門番「ふう……」

女騎士「御苦労。しっかり仕事をしているな、関心関心」

門番「まあ、これが僕の役目ですからね」

女騎士「真面目だなぁ門番は」

門番「これを真面目と言われましても……女騎士様も御自身のお仕事をなされてはいかがですか?」

女騎士「いやぁ……のどかだなぁ……」

門番「聞いて下さいよ」

女騎士「よっ、門番。仕事してるか?」

門番「おはようございます、女騎士様。仕事はきちんとこなしていますよ」

女騎士「そうかそうか、うむ、いい事だ」

門番「どうかされましたか?今日も暇でここへ来たのでしょうか?」

女騎士「なんかその言い方引っ掛かるな。まるでいつも暇を持て余してここに来ているみたいじゃないか」

門番「これは失礼。何か用があって来たのですか?」

女騎士「いや、特にない。暇だったから来た」

門番「先程の僕の言葉のどこが引っ掛かったのでしょうかねぇ」

女騎士「ああ、そうそう。門番、見てくれよこれ」

門番「なんですか?……これは……門番ライセンスですね」

女騎士「そう、門番ライセンスだ」

門番「しかも、名前が女騎士様になっていますね」

女騎士「そう、私の名前なんだ」

門番「いつの間に取得なされたのですか?」

女騎士「昨日、試験日だったんだ。無事合格印をいただくことができた」

門番「いつの間に勉強なんてしてらしたんですか?」

女騎士「お前、結構失礼なことをズバズバと聞いて来るよね」

門番「恐れ入ります」

門番「しかし、騎士という立派な職についているのに、門番ライセンスを取得したのはどういった理由が?」

女騎士「楽をしt……ゴホンッ、今迄の門番の仕事ぶりを見させてもらい、門番という仕事に興味が湧いたんだ」

門番「今絶対『楽をしたいから』って言おうとしてましたよね」

女騎士「していないぞ。第一、これを取るのにだって結構な苦労したんだから」

門番「まあ簡単に取得されてしまっては僕の立つ瀬がありませんからねぇ」

女騎士「せっかく楽をしたいと思って取ろうとしたのに、余計な苦労をさせられてしまったよ」

門番「あ、もう隠すつもりないんですね」

女騎士「ところで、今この国に門番ライセンスの所持者ってどれくらいいるんだ」

門番「僕の知っている限りだと二名だけですね」

女騎士「え」

門番「僕と、女騎士様だけです」

女騎士「そんなバカな。じゃあお前はいつ休んでいるんだ」

門番「月に1回、事前に告知された日が一日中門が封鎖されているのは御存じですか?」

女騎士「それは知ってるが」

門番「その日が僕の休日です」

女騎士「さらっととんでもないこと言ってるって自覚あるか?」

門番「そう言われましてもねぇ。朝に門を開け、夕方には閉める。拘束時間はそれほど長くはありませんし」

女騎士「ちなみに、この仕事を始めてどれくらいになるんだ?」

門番「そろそろ10年になりますかねぇ」

女騎士「やばいよこの人こわい」

門番「今のところ辞めようと思った事は一度もありませんし、これからも続けさせていただけるなら続けたいですかねー」

女騎士「もしかして、こっちの方がいいとかそういういやらしい話があったり?」クイッ

門番「お給金なんてもらっても使う暇がほとんどありませんからねぇ」

女騎士「なっ……じ、じゃあ、今までもらった給料って、どうしてるんだっ?」

門番「自宅に貯金してあります」

女騎士「……ところで話は変わるが、門番には彼女はいるのか?」

門番「兜を外して髪をなびかせてどうしたんですか」

門番「さて、そろそろ閉門の時間……ん?」

女騎士「どうかしたか、門番?」

門番「いえ、どうやら不法入国目的の方がお見えになったようで……」

女騎士「なにっ?」

▼オークの群れが現れた!

女騎士「魔物かっ!下がってろ門番、わたしが……」

▼オークの群れを撃退した!

門番「ん?何か言いましたか、女騎士様?」

女騎士「……いや、なんでもない」

門番「やれやれ、仕方のない方々ですね。これで何度目でしょうか」

女騎士「私の存在意義って……」

女騎士「おーい門番、いるかー?」

門番「おはようございます、僕ならここにいますよ」パリパリ

女騎士「……詰所で煎餅食ってたのか」

門番「一枚食べます?」パリパリ

女騎士「いただこう」パキン

門番「本日はどういった御用件で?」パリパリ

女騎士「今日は一日、私が門番の仕事をするようにと国王からの勅命が出たんだ」パリパリ

門番「国王様から直々に?それはまた随分と……あ、お茶飲みます?」

女騎士「いただこう」ズズーッ

門番「それじゃあ、僕は今日一日お休みをいただいても良いと言うことでしょうか」パリパリ

女騎士「ああ、それについても国王より勅命状が出ている。ほら、これだ」

門番「わざわざこんなものまで……僕なんかの為に、ありがたいことですねぇ」

女騎士「そんなわけだからたまには羽を伸ばしてこい」

門番「ではお言葉に甘えさせていただくとしましょうか。あ、そこに置いてある煎餅、全部食べてもいいですよ」

女騎士「いただこう」パキンッ

女騎士「んーっ……今日も良い天気だなぁ」

女騎士「門番から餞別……もとい、煎餅ももらってしまったし、ちょっとした幸せ気分だ……」

武道家(♀)「すみません、門番さん」

女騎士「ん?ああ、こんにちは。出国か?」

武道家「はい、手続きをお願いします」

女騎士「えーと、まずは名前を聞かせてくれ」

武道家「武道家です。今日出国予定になっているはずですが」

女騎士「武道家、武道家……と。確かに、今日になっているな。それじゃ、ここにサインと出国時間を書いてくれ」

武道家「はい」

女騎士「これから、どこへ行くつもりなんだ?」

武道家「そうですねー、西の山を超えた先に大きな都があるらしいので、とりあえずはそこを目指そうかと思ってます」

女騎士「? 何か目的があって旅でもしてるのか?」

武道家「いえ、目的があるわけではないです。ただ、世界を見て回っているんですよ。ここへは物資の補給とお風呂に入りに寄らせてもらいました」

女騎士「そっかぁ、旅をしてるといつ補給出来るかも風呂に入れるかもわからないもんなぁ」

武道家「ここに国があって驚きましたよ。わたしの持ってる地図では、ここはただの更地でしたからね」

女騎士「この国は出来てからまだ新しいからな。と言っても、少なくとも私やキミよりは年上だが」

武道家「うーん……せっかく高いお金を出して買った地図なのに、古いものだったってことでしょうか……」

女騎士「そう落ち込む事もないさ。古いものだったなら、自分の目で見た物を書き込んでやればいい。そうしていけば、自分だけの地図が出来上がって行くぞ」

武道家「なるほどー……門番さん、素敵な考えですね!」

女騎士「はっはっは!もっと褒めろ」

武道家「はい、書き終わりました」

女騎士「うむ、御苦労。そうそう、ひとつ忠告だ」

武道家「なんですか?」

女騎士「キミの行く所にケチをつけるわけじゃないが、西の都は今ちょっとゴタついているらしい。行くのなら気をつけたほうがいいぞ」

武道家「そうなんですか?」

女騎士「この国とはあまり交流がないから、詳しいことはわたしにもわからないんだがな」

武道家「わざわざご忠告ありがとうございます。それじゃ、縁があればまたどこかで会いましょう」

女騎士「ああ、元気でな」

女騎士「……いいことをした気分だ」

女騎士「さて、と………早速暇になってきたな。平和なのは良いことだが、何をしたものか……」

女騎士「……とりあえず、今日出国予定の人はもういない。ということは、外からのお客さんの対応以外はやることもないってことか」

女騎士「うーん……まだお昼にすらなっていない。このままだと暇死にしてしまうな……」

女騎士「盗賊か魔物でも来てくれれば、身体を動かす口実にもなるんだがなぁ……」

女騎士「いかんいかん、仮にも騎士である私が盗賊や魔物の出現を願うなんてとんでもないな」

女騎士「なしだ、今のなし!」

女騎士「……こういう時、門番がいてくれれば突っ込んでくれるのになー……1人だとただただ虚しい」

女騎士「………………騎士らしく、鍛錬の一貫ってことで素振りでもやってるか」

今日はここまで
女騎士と門番のほのぼの、たまにシリアス
まったり更新しますのでよろしければお付き合いください

乙期待

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おもしろい

隣国騎士「失礼!」

女騎士「ん?」ブンブン

隣国騎士「その方、番兵とお見受けする!国王にお目通し願いたく参った!」

女騎士(なんかえらいお堅そうな奴が来たな)ブンブン

女騎士「国王への謁見は、我が都の騎士が一名同伴することとなっているが、構わないか?」

隣国騎士「構わぬが、なるべく性急に頼みたい!」

女騎士(めんどくさそうな奴だな……)「わかった、まずは入国手続きからだ。お前の身分を証明するものの掲示とこの用紙に必要事項の記入を頼む」

隣国騎士「あいわかった!我が身分は、これで証明とさせていただこう!」スッ

女騎士「!」

隣国騎士「記入させていただくぞ!」

女騎士(隣国のエンブレム……?こいつ、西の軍事国家の遣いか?)

隣国騎士「これで良いか?」

女騎士「確認させていただく……うん?滞在日数のところに何も書いていないが?」

隣国騎士「滞在日数は現時点ではわたしにもなんとも言えぬ。未定、というわけにはいかぬのか?」

女騎士「その場合は当日出国予定ということにして、滞在日数が伸びる場合には国内にて別途手続きをしていただくことになる」

隣国騎士「うむ、了解した。そのように頼む」

女騎士「ならば、入国手続きはこれで問題ない。今、城へ連絡を入れる。直に迎えの者が来るだろうから、それまでここでお待ちいただこう」

詰所内―――

女騎士「あーこちら門番、応答せよ」

騎士『こちら王宮訓練所、どうぞ』

女騎士「西の軍事国家より、王に謁見を希望されている者が見えている。迎えを頼む」

騎士『了解しました、すぐに向かわせます。……ところで』

女騎士「む?まだなにか用か?」

騎士『あなた、女騎士様ですよね?』

女騎士「今はただの一門番だ」

騎士『……何をしているんですか、そんなところで』

女騎士「だから門番だと言ってるだろう。今日は一日、私がこの国の門番だ」

騎士『はぁ……何があってそうなってるんですか』

女騎士「ええい、後で聞かせてやるから、早く迎えをよこせ!」

騎士『もう向かってますよ!では、また後ほど!』プツン

騎士長「門番殿!おられるか!」


女騎士「!? こ、この声は!?」

女騎士「は、はい、ただ今ーっ!」


騎士長「客人をお迎えに……女騎士?」

女騎士「はっ!不肖女騎士、ただ今門番の任務についているでございますっ!」

騎士長「落ち着け、女騎士。そうか、姿が見えぬと思ったら今日は門番の仕事をしていたのだな」

女騎士「国王よりの勅命であります!決してサボっていたとかそのようなことは……」

騎士長「わかっている。それよりも、件の客人は?」

女騎士「今お連れいたしますっ!」ダダッ

女騎士「騎士長、お連れしました!」

騎士長「ご苦労……む?」

隣国騎士「これは騎士長殿!久しぶりにございます!」

騎士長「おお、誰かと思えば隣国騎士ではないか!」

女騎士「は?」

隣国騎士「いやー、久しぶりですな騎士長殿!お変わりないですか?」

騎士長「はっはっはっ!老いはしたがまだまだ若いもんには負けんぞ!」

女騎士「あの、すみません、騎士長様?」

騎士長「どうした、女騎士?」

女騎士「失礼ですがそちらの方、お知り合いですか?」

騎士長「そうか、お前は知らなかったか。紹介しておこう。西の軍事国家の騎士長だ」

隣国騎士「よろしく、門番どの!」

女騎士(なんで軍事国家の騎士長と知り合いなんだ、この人は)

騎士長「そして、こっちが女騎士。一応俺の部下だが、今は門番の仕事もするようになっている」

隣国騎士「は?騎士長殿の部下ということは、こちらの小娘も騎士団員なのですか?」

女騎士「小娘言うな!これでも(自主規制)歳だぞっ!」

隣国騎士「思ったより歳食ってた」

女騎士「騎士長様、こいつぶん殴ってもいいでしょうか」

騎士長「まあ落ち着け女騎士。確かに俺達から見たら小娘だが、実力は確かだぞ?」

隣国騎士「騎士長殿がそこまで言われるということは、相当なのでしょうなぁ」

女騎士「嫌味にしか聞こえない……」

騎士長「して、我が国へは何の用事だ?わざわざ世間話をしに来たわけでもあるまい?」

隣国騎士「実は我が国の王より、東の都の王に手紙を預かっているのです。なるべく早めの返事が欲しいということで、直接私から国王へ手渡すようにと」

騎士長「ふむ……あいわかった、他ならぬお前の頼みだ、わたしも口添えをしようではないか」

隣国騎士「ありがとうございます、騎士長殿」

騎士長「では、女騎士よ。行ってくる」

女騎士「はっ!」

騎士長「門番の仕事、抜かりなく務めるように」

女騎士「了解いたしました!」

騎士長「それから……警邏任務中にここへ来るなとは言わぬが、程々にな」

女騎士「っ!! は……はい……っ!!」

~夕方~

門番「女騎士様、いらっしゃいますか?」

女騎士「あー……門番、おかえり……」グテーッ

門番「随分とだらけていらっしゃいますね。お仕事の方はいかがでしたか?」

女騎士「あー……うん……ちゃんとやれたと思うよー……」

門番「それなら良いのですが……何かあったのですか?」

女騎士「明日から、ここへはあまり来れなくなるかもしれない……」

門番「と、言いますと?」

女騎士「騎士長様に釘を刺された……」

門番「あー……まあ、仕方ありませんね」

女騎士「ううっ……ここで過ごすのが最近の楽しみだったのに、あんまりだぁ……」

門番「至極当然の話だと思いますがねぇ」

女騎士「……そういや隣国騎士の奴、来ないな」

門番「おや、出国予定の方が来ていらっしゃらないのですか?」

女騎士「ああ。まあ本人も出国予定はわからないと言っていたし、何日か滞在するのだろう。騎士長様とは知り合いのようだったし、滞在日数が伸びる場合は手続きが必要とも伝えてあるから大丈夫だとは思うが」

門番「手続きしなかった場合は面倒なことになりますからねぇ」

女騎士「不法滞在扱いになるんだったか。入国関連は厳しいよなぁ、この国は」

門番「それだけ厳重に管理されているからこそ、平和なのでしょうがね」

女騎士「旅人にとってはあまりありがたくはないことだろうがなー」

門番「ところで、隣国騎士様はどのような用件で来られたのですか?」

女騎士「なんか、向こうの国王から我が国の王へ手紙を届けに来たらしい。それ以上のことはわたしも知らないな」

門番「手紙、ですか。隣国と言えば、不穏な動きが見られていた国ですね……あまりいい予感はしませんね」

女騎士「んー、まぁ、西の国の王と騎士長が絡んでいる話だ。この国にとっても悪い話ではないと思いたいな」

門番「だといいんですがね……」

女騎士「なんだ、随分と訝しむな?西の軍事国家になにか嫌な思い出でもあるのか?」

門番「まさか。ただのしがない門番にそんなもの、あるわけないですよ」

女騎士「ま、そりゃそっか。あの国と戦争していたのだって、もう10年近く前の話だもんな」

門番「……そうですね」

女騎士「そろそろ閉門の時間だな。結局、隣国騎士のやつは来なかったな」

門番「まあ、隣国騎士様が出国される時にわたしが確認しておきますよ」

女騎士「うむ、よろしく頼む。それじゃ、門を閉めるぞ」

ゴゴゴゴ バタン

女騎士「んーっ、今日も1日頑張ったなぁ私は」

門番「お疲れ様です、女騎士様」

女騎士「ああ、お疲れー。門番は帰らないのか?」

門番「最後に点検してから帰りますよ」

女騎士「ちゃんと全部やったはずだけど?」

門番「これが僕の日課ですので、お気になさらず」

女騎士「そっか、了解。私は城へ報告に行ってから帰る。またな、門番」

門番「ええ、お疲れ様です」

翌日―――

門番「さて、今日も頑張りましょうか」

ギィィィ ゴゴォォン

門番「本日出国予定の方々は……と」パラパラ

女騎士「門番、いるか?」

門番「これは女騎士様、おはようございます。今朝はお早いですね」

女騎士「今日、午前中に騎士団の会議があるらしくてな、今のうちに顔を出しておこうと思って来たんだ」

門番「会議、ですか?」

女騎士「うむ。詳しくは会議で話されるということだが、恐らく昨日来られた隣国騎士の件だと思う」

門番「はあ、それは分かりましたが、何故それをわざわざ僕に?」

女騎士「この国で門番ライセンスを持っているのは私とお前だけなんだろう?私は騎士職と兼任だから、一応伝えておいた方がいいと思ってな」

門番「なるほど、そういうことでしたか。門番のお仕事でしたら、僕が今まで通り請け負いますので心配いらないですよ」

女騎士「すまんな、門番。今しばらく、ここを任せるぞ」

門番「言われなくとも、そのつもりです。僕は、このお仕事が性に合っているのでね」

女騎士「では、私は城へ戻る」

門番「ええ、行ってらっしゃいませ」

~夕方~

門番「戸締まり良し、出国者リスト良し、日誌良し……と」

女騎士「お、ちょうど終わりか、門番?」

門番「女騎士様?ええ、今退勤するところです」

女騎士「お疲れさん。よかったら、飯でも食っていかないか?」

門番「デートのお誘いですか?」

女騎士「まあ、そんなところだ」

門番「良いですねー、お腹も空いていたところですし、行きましょうか」

~城下町・酒場~

女騎士「まあ、好きなものを頼め。今夜は私のおごりだ」

門番「……どういう風の吹き回しですか?」

女騎士「別に、どういうもこういうもないさ。たまにはいいだろ?」

門番「はあ……まあ、おごっていただけると言うのならありがたくご相伴に預かりますが」

女騎士「変に勘繰らなくてもいいよ。ついでに話したいことがあるってだけだからな」

門番「話したいことですか?」

女騎士「例の、軍事国家の件さ」

門番「……あまり楽しい話ではなさそうですね」

女騎士「どうも、国内で反乱軍が結成されたらしい」

門番「反乱軍……ですか」

女騎士「近いうちに、本格的なクーデターが起きるかもしれないみたいでな。城内の守りを固めておきたい、という話だ」

門番「その事を伝える為に、わざわざ隣国の騎士長様が来られたのですか?随分と役不足かと思われますが……」

女騎士「それについては、隣国騎士本人が言っていたな。『こうして重役についているわたしが来る事で、当方の誠意を示したい』……とかなんとか」

門番「なるほど、そういう意図だったのですね」

女騎士「そんなわけで、我が騎士団から一個小隊が隣国へ出向することになった」

門番「……もしや、その小隊に女騎士様も編成されているのですか?」

女騎士「さすが、察しが良いな」

門番「わざわざ僕なんかに騎士団内部の話をされるのですから、大体の察しは付きますよ」

女騎士「門番ライセンスを取ったばかりだし、こちらに残っても良かったんだが……せっかくの大役を断るのも気が引けてな」

門番「門番のお仕事でしたら、先刻も言った通りお気になさらなくて良いですよ」

門番「……しかし、クーデターですか……この国に直接の被害が出なければいいのですが」

女騎士「なに、その心配はないだろう。我が国の騎士は、皆優秀だからな」

門番「今、遠回しに自画自賛しましたね」

女騎士「あ、わかる?」

門番「まぁ、この国の騎士が優秀であるということは否定しませんけれどね。先の大戦でも、前線に出た騎士様は皆無事に帰ってこられていましたし」

女騎士「わたしは先の大戦の後に騎士団入りしたから、その辺りは話でしか聞いていないんだよな」

女騎士「それと、もう一つ。これは個人的な話なんだが」

門番「なんですか?」

女騎士「今回の出向が落ち着いて、この都へ帰ってきたら、騎士をやめようと思ってるんだ」

門番「それはまた、ずいぶんと急なお話ですね」

女騎士「そうでもないさ。私がただサボる為だけに門の詰所に来ているとでも思っていたか?」

門番「ええ、今でもそう思っています」

女騎士「一発殴ってもいいか?」

門番「冗談ですよ、そう怒らないで下さい」

女騎士「全く……話を戻すぞ。今までお前の仕事を眺めていてな、楽しそうだなと思えたんだ」

門番「そうですか?」

女騎士「いろんな人がこの国に出入りしているってことを知ったしな。城の中にいたら、そういうことは気にすることもなかった」

門番「まあ、騎士団のお仕事は国の平和と安寧を守ることですからねぇ」

女騎士「だから、苦労して門番ライセンスも取ったんだ。ここだけの話、2回程試験に落ちた」

門番「結構難しいですからね、試験」

女騎士「それに、昨日一日実際に門番の仕事をやらせてもらって、やっぱり楽しかった。この仕事、私に向いているかもしれない」

門番「まあ、お仕事を楽しくやれるならそれに越した事はありませんよね」

女騎士「そんなわけで、ひとまずは騎士として仕事を果たしてくる。帰ってきたら、正式に私もここの門番になるよ」

門番「了解しました。隣国への出向、お気をつけください」

女騎士「ああ、ありがとう。門番も、気をつけてな」

門番「僕はいつも通りのお仕事をするだけですよ」

女騎士「それを言うなら、私も本来の仕事に戻るだけさ」

門番「女騎士様が騎士としてのお仕事をしている所は見たことありませんからねぇ」

女騎士「本当に失礼なことを言うよな、お前」

門番「一応僕は正直者として通っていますから」

女騎士「と言うことは、さっきのサボっている云々もお前の正直な答えだったわけだ」

門番「これは一本取られましたね」

女騎士「やっぱり殴っても良いか?」

門番「ご容赦ください」

おやすみなさい

この戦いが終わったら門番しよう

前に門番モノ書いててエタった人か?

俺のお尻門番いないから漏れるのか……

いないんじゃなくてサボってるんだぞ

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