海未「コニチワァの……」にこ「 呪い……!? 」(58)


希「そう、音ノ木坂に伝わる伝説……」

希「それが、コニチワァの呪い!! 」


希「海未ちゃんとにこちゃんが怪談話をしようとすると、外国人ランナーのせいで怖くなくなってしまうという呪いや」


海未「何ですかそのいじめみたいな呪いは」

にこ「第一、怪談話なんてする機会ないじゃない! 」


希「これ見てみぃ」ピラッ


[学園祭 後夜祭イベント:µ’sで怪談話!! ]


うみにこ「えぇぇぇ!!? 」

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


【学園祭当日】


希「今回司会を努めさせて頂きます、東條希です。よろしく~」

希「希は語り手に参加しないで って強く言われたんよ、誰かさんに」チラッ


絵里「希はダメ。」

絵里「希のは怖すぎて、ダメ。」


希「そしてそして、怖い話が特に苦手な3人には審査員をしていただきます! 」



絵里「頼むからあんまり怖くないやつで頼むわよ……」

花陽「うぅ……怖い話……」

凛「凛も怖い話は苦手にゃ……」



希「この3人のリアクションが最も大きかった人が優勝です! 」


希「そして今回の出場者はこちらの方々! 」


穂乃果「よーし、みんなを怖がらせちゃうよ! 」

ことり「頑張りますっ♪」

海未「皆には負けません! 」

真姫「私にかかれば、優勝なんて容易いわ」

にこ「頑張りまーす! 」



希「語る順番は、」

希「穂乃果ちゃん、ことりちゃん、にこちゃん、真姫ちゃん、海未ちゃん の順番です!」


絵里「うぅー、五人分も話を聞くのね……? 」

希「YES! 」グッ


希「それでは、最初の語り部……」

希「よろしく!穂乃果ちゃん!」

穂乃果「はーい」



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


あはは……いきなりのトップバッターで実は緊張してます。

緊張した時は目を閉じて深呼吸……したいんだけど、穂乃果は深呼吸が苦手です。


その理由をこれから話そうと思います。


【もうひとりじゃないよ】
語り手:高坂穂乃果


穂乃果は幼い頃から夜更かしが大好きで、日付が変わってもお菓子を食べて、テレビを見てたんだ。
お母さんの言うことも聞かずに、深夜2時くらいまで、部屋の明かりを消すことは無かったの。


ついに怒ったママが、穂乃果にこう言った、「あんたたち、早く寝ないと暗闇に連れてかれちゃうわよ」……って。


当時の穂乃果には意味が分からなかった。
だけど、なんだか凄く怖くなって、早く寝なくちゃ!!って思ったんだ。

いつもよりちょっと早い 深夜1時くらいに電気を消して、布団を被って目を閉じる。
暗闇に連れてかれてしまう、という言葉の意味が分からなくて、真っ暗な部屋の中でずーっとずっと考えてた。


暗闇から手が伸びて穂乃果の手を引っ張るのかな、黒い霧みたいなのに包まれて穂乃果は姿を消してしまうのかな、どうなんだろう……ってね。


考えてると怖くなってひとりぼっちが心細くて……呟いたの、独りは嫌だ って。
そしたら、急に背中の辺りから身体が暖かくなっていって、凄く安心したんだ。

その日はぐっすり寝てしまって、詳しいことは何も覚えてないよ。



次の日、ママに聞いてみた。暗闇に連れてかれてしまうってどういう意味?って。


そしたらね、ママは逆に質問してきたの。「幽霊が目に見えないのって何故だか分かる? 」って。


1人でいる時、目を瞑ってる時だけ、現れるからなんだって。


穂乃果が眠る時に目を閉じたら、目の前に居るみたい。何かが。
深呼吸で目を閉じた時も、こうやって話してる時に瞬きをしても。
お風呂に入ってて、シャンプーをする時も。

私達が1人でいる時、目を瞑ってる時に、幽霊は私達を見ているの。


幼い頃の穂乃果は、ママの話を聞いても理解出来なかった。だから、その日の夜も部屋の電気を消して、目を瞑って、眠りにつこうとしたの。


いつもみたいに 独りは怖いよ、って呟いたらね

耳元で、聞き覚えのない声が聞こえたの。


「もう独りじゃないよ」

って。


暗闇に連れてかれてしまうというのは、目を閉じてる時に、何かに意識を連れていかれることみたい。

皆が睡魔だと思っているものは、本当に睡魔なのかな?
もしかしたら、何かに意識を引っ張られているのかもしれないよ。


寝る時に、上から覗かれてないか、横から見られてないか、気にしないようにね。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


希「う、うぉぉ……怖かった……」

希「まさか穂乃果ちゃんの話がここまで怖いとは……」

希「さぁ、3人の反応は……! 」チラッ


絵里(やっぱり暗いところには何かいるんだわ……)ガクガク

花陽「グスッ……」ポロポロ

凛「もう寝れないよぉ……!! 」ポロポロ


希「今んとこぶっちぎりの怖さで1位って感じやね」


絵里「だから言ってるのよ電気消さないでーって! 」

凛「うーー……にゃっ! 」ガバッ

絵里「へっ……ちょっ、なに!? 」

凛「だーれだ! 」

絵里「いや、目隠してても分かるわよ。凛でしょ!? 」

凛「違うよ」

絵里「えっ……」


凛「さっきの話聞いてなかったの? 」

凛「あなたを暗闇へと連れていく死神だよ……ふふ」

絵里「きゃああああ!! 」ブンブンッ

凛「ウソだよーー」パッ


凛「にゃんにゃん♡」

絵里「ハァ……ハァ……その笑顔、ムカつくわ」

凛「にゃーんにゃんっ♡」スリスリ

絵里「だーっもう!ほっぺスリスリしないの!! 」


希「まさか絵里ちがあんだけで怖がるなんてなぁ……ふふふ」ニヤリ

絵里「あれは演技よ!え・ん・ぎ!! 」

希「はいはい、分かった分かった。暗闇怖いでちゅね~~」

絵里「ノジョミィ!! 」プンプン

今日はここまでです。



希「ほな、次行こか」

希「続いては、ことりちゃん! 」


ことり「う、うん…」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


穂乃果ちゃんの話怖かったね……

ことりは、霊感が無くて幽霊なんて全く見たことが無かったので、人間の怖い話をしようと思います。


【ビデオレター】
語り手:南ことり


スクールアイドルを始めてすぐの頃に、メイド喫茶でアルバイトを始めて……
自分で言うのもなんだけど、すぐに人気が出てしまって、ファンの方がよくお店に殺到してたんだ。


次第にプレゼントやファンレターなんかも貰うようになっちゃって、毎日のようにお店には沢山のお菓子や花束、手紙などが届いたの。
その中に一人だけ、動画をDVDに焼いてプレゼントしてくれてる人がいて……バイト仲間のみんなで休憩中にそのDVDを観てみたんだ。

すっごく綺麗な山の景色で、紅葉シーズンに撮ったみたい。


投稿者の人は、昔から店に来てくれてた……えっと、名前は非公開の方がいいと思うし、Aさんって呼ぶね。

そのAさんが、ハンディカメラで山の景色を撮影してくれてて、「ミナリンスキーちゃんが仕事で疲れたときに癒しを与えたい!」ってことで動画をプレゼントしてくれてたみたい。


動画のプレゼント周期は1週間に1回。日曜日。
Aさんがお店に来るのも日曜日で、来店した時にDVDを置いて帰ってるみたい。


凄く嬉しくてお礼を言いたかったんだけど、営業では他の人達とも接さなくちゃいけないから、Aさんに構ってる時間があまり無くて。
それでもAさんはニコニコ笑って、毎週動画をくれた。

最初が紅葉の動画で、次が美味しいケーキ屋さんの紹介だったかな。
その次が綺麗なビーチ、その次は確か真っ白なゲレンデ。


お客さん増加にともなって、段々と私がAさんに絡む回数が減っていったんだ。

そしたらAさんも流石に嫌気がさしたみたいで、毎週店には来てくれるけど、笑顔ではなくなっていった。


ある日ね、Aさんが来なかったの。毎週日曜日に来てたはずなのに、その日は来なかったの。

バイト仲間と、Aさん体調崩したのかなぁ、大丈夫かなぁ、って心配してたら……一人の子が見つけたんだ。

いつものDVDを。


もしかして体調を崩して店に来れないから、郵便で届けたのかなぁ……って思いつつ、みんなでいつものビデオ鑑賞。


今日はどんな綺麗な景色が見れるんだろう……と思ってたら、どこかの駅のホームの映像だった。
カメラは三脚かなにかで固定されていて、線路を挟んで 遠くから反対側のホームを移してた。

Aさんはどこにいるんだろうって探してみると、反対側のホーム、画面の右側くらいの方に立ってて、こっちに向かってゆっくりと手を振っていたの。

かれこれ10分ぐらい手を振ってて、皆も流石に今回は不気味だねって話をした直後。


電車がやってきて、Aさんは手を振りながら、線路に飛び降りたんだ。

電車はAさんが飛び降りた場所を、3車両分ほど進んで何事もなく止まった。

確実に、Aさん死んじゃったんだ……って思った。


でも何故か何事も無かったように、通勤する人たちがいつも通り電車に乗って、電車は発射した。

電車が発射してから二分くらいカメラが回りっぱなしだったんだけど、何事も変化はなくて、急に撮影は終了したよ。

みんなは「怖いことする人もいるね」って話してたけど、ことりはもうひとつ怖いなって思ったことがあるの。



この映像、誰が届けてくれたんだろうね。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


希「ぬぉ……後味悪ぅ……」


絵里「あーあー、何も聞こえない聞こえない」

花陽「え、駅怖いよぉ……」ガクガク

凛「そんなもんCGに決まってるにゃ」


凛「現代の動画編集技術を舐めたらあかんでぇ! 」

希「凛ちゃん、キャラ変わっとる」

凛「あははー……」


花陽「アイドルのファンレターに関するものならこういう話もあるよ…」

花陽「ビデオレターが届いてるなぁって思って、見てみたらね」

花陽「ファンが、自宅に侵入して撮影してたんだって。」

凛「ひぃ……それは怖い」

真姫「自宅の警備をもっと強化しないからそうなるのよ」

真姫「警備会社の一つや二つくらい雇いなさいよ」

にこ「はいはい、金持ちは引っ込んでなさいっての! 」バチィン

真姫「いっったぁい!」

真姫「にこちゃんのデコピンなんでそんなに痛いのよ……」


希「じゃあ、話を戻すけれど」

希「凛ちゃんが怖がってなかったし、穂乃果ちゃんの勝ちで! 」

穂乃果「やったー! 」



希「じゃあ続いては、にこっち」


にこ「ふふ……夜も眠れなくしてやるわ! 」

にこ「あんた達、覚悟しなさい! 」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


ことりの話は、アイドルやってる身からするとビデオレターが身近に感じて嫌ね。

アイドルといえば、歌にのせて魂を伝える仕事よね。


言霊って、知ってる?


.


【言霊(ことだま)】
語り手:矢澤にこ


言霊っていうのは、いわば言葉に宿る力のこと。
嘘から出たまこと、ということわざがあるように、言葉で発したものが現実に起こってしまうのも言霊の仕業と言われているわ。


にこはね、妹たちが怖い話が好きだから、よく家でも怪談話をするのよ。

まだ幼いから、一昔前に流行ったような、聞きすぎて怖くなくなってしまったような話でも妹たちは怖がってくれて。


最初に、のっぺらぼうを話した。顔のない人間に追いかけられ、行き着いた先で助けを求めようとしたら、周りの人間全員の顔も無かったという話。


次に、口裂け女。マスクをした女性に話しかけられて、「私、綺麗?」と聞かれる。
綺麗です、と答えるとマスクを外して、耳元まで裂けた大きな口を見せられ「これでも綺麗?」と聞かれるという話。

怖気付いてしまうと大きなハサミで口を切られてしまうと言われているわ。


最後に「人面犬」。犬に向かって石を投げる遊びが流行る。ある日、犬に向かって石を投げると「いてぇな……」という声が。
犬が振り向くと、人間の顔をしていた……という話。


よく聞く話だから、あんまり怖くないわよね。でも妹たちは怖がってくれたわ。


ここからが本題、言霊の凄いところ。


その日の夜、コンビニにノートを買いに行ったの。そしたら……言霊って不思議よね


後ろから、何かに追っかけられるような気配を感じたの。
さっき話した のっぺらぼうが襲ってきてるんじゃないかと不安になった。
意を決して後ろを振り返るとね……


外国人の女性がランニングをしていたの。


ただの一般人なのに、なんだか怖くなって、逃げて逃げて……たどり着いた先で助けを求めると

周りの人たちがこういうの、「コニチワァ」って。
なんとね、その人達も外国人の女性ランナーだったの。


怖い怖いと逃げ惑い、にこは路地裏にたどり着く。
するとマスクをした外国人の女性が居たわ。


するとね、「コニチワァ」って、挨拶をしてきたの。

今考えてみると、夜なのに「こんにちは」って、変よね……。
挨拶は返さなくちゃと思って、にこも こんにちは って返すとね、外国人の女性がマスクを外して……こう言ったの。



ーーー 「コニチワァ」って。


.

>>30誤字


怖い怖いと逃げ惑い、にこは路地裏にたどり着く。
そこにはマスクをした外国人の女性が居たわ。


するとね、「コニチワァ」って、挨拶をしてきたの。

今考えてみると、夜なのに「こんにちは」って、変よね……。
挨拶は返さなくちゃと思って、にこも こんにちは って返すとね、外国人の女性がマスクを外して……こう言ったの。


ーーー 「コニチワァ」って。


.


何故だか怖くなって、走って家まで帰ろうとしたわ。
途中で石ころを蹴飛ばしてしまって、それが野良犬に当たってしまった。

しまった、って思ったわ。


石が当たった犬が、犬のはずなのに「コニチワァ」って言ったの。
変よね、犬のはずなのに。
犬がこっちを向くと……外国人のランナーみたいな顔をしていて……

死にものぐるいで家まで帰って、事無きを得たわ。


みんなも、言葉には気をつけるにこ……。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


希「コニチワァの呪いにかかってるwwwwwww」

絵里「ごめんwwにこ、面白いwwwwww」

花陽「ふふ…w」

凛「コニチワァww」


希「ごめん、にこっち今のところ最下位www」

にこ「ぐぬぬぬ……呪われてるのを忘れてた……」

凛「ねぇねぇにこちゃん、今どんな気持ち? 」スッスッ

凛「どんなコニチワァ? 」スッスッ

にこ「うるっさーーい!! 」


海未「なるほど、あのような感じに……」

海未「私も、あのようになってしまうのですね……それは避けたい」


希「はーい、じゃあ次は真姫ちゃん!」


真姫「にこちゃんの後じゃやりづらいわね……」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


あの話のあとだと怖がってくれるか心配…。

私からは、病院にまつわる話をするわ。


【曲がり角】
語り手:西木野真姫


パパが病院に勤務してるんだけど、その病院には変な噂があるの。


廊下の突き当たりは左にしか曲がっちゃダメ。


変よね、右側には何があるのかしら。
パパに聞いてみたわ。


ウチの病院は真っ直ぐ長い廊下があって、突き当たりはT字路になっているの。

廊下の距離は大体50mくらいかしら、深夜になると、廊下の一番奥が暗くて良く見えないくらいには遠いわ。


そのT字路を右に曲がってしまうと、心臓を取られてしまうそうよ。


人間の心臓は基本的には左側よね、その心臓を壁側にしてあるかないと、何かに取られてしまうんだって。


その噂をバカにしている患者さんが1人居たらしくて、よく「退院する前に噂を試す」と話していたそうよ。


パパはその患者さんから話を聞いたわ。


半年くらいで患者さんの容態が良くなって、満足に動けるようになって、いよいよ噂を検証するってことに。

深夜3時くらいに病室を抜け出して、廊下を見渡す。
長ーく伸びた廊下はいつも通り真っ暗で、時折 風が窓を叩いていた。

まるで「こっちにおいで」と言っているように、ガンガン、ガンガンと窓が揺れていたそうよ。


患者さんは、明かりも持たずに、窓に向かって歩き出した。
そしていよいよ、突き当りにさしかかった。

予定通り、曲がり角を右に曲がると……



自分が居たのよ。


.


意味が分からないかもしれないけれど、自分と同じ姿をした人が曲がり角のすぐそばに立っていたそうよ。

曲がってすぐに出会ってしまったから、患者さんはすぐに逃げることが出来なくて、左手を掴まれて暗闇へと引きずり込まれてしまった。


患者さんから聞いた話はここでおしまい。



ぱっと見ただの廊下の突き当りにしか見えないけれど、曲がり角のすぐそこには何かがいるのよ。
きっと今でも右側で、私達を待ち伏せしているに違いないわ。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


希「おぉー……これまたなかなか嫌な話やね」

希「病院だけじゃなくて、学校とかでも突き当たりを曲がるのが怖くなる」


絵里「……私この話苦手」ガクガク

花陽「左にも右にも曲がりたくない……」ブルブル

凛「真姫ちゃん怖いよかきくけこ…」ガクブル


希「穂乃果ちゃんのとどっちが怖かった? 」


絵里「穂乃果」

花陽「真姫ちゃん」

凛「穂乃果ちゃん!」


希「じゃあ、現在トップは穂乃果ちゃん! 」

穂乃果「いえーい! 」


希「いよいよラスト……海未ちゃんよろしく! 」

海未「……承知しました。」


海未「絶対にコニチワァしませんからね。」

にこ「せいぜい頑張んなさいよ、海未。」ポンッ

海未「ありがとうございます、にこ。」

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


それにしても私なんかが大トリで良いのでしょうか……。


それでは、私からは鏡にまつわるお話をさせていただきます。


【鏡】
語り手:園田海未


皆さん、鏡を普段から頻繁に目にしていると思います。

私も、よく見かけます。
自宅の風呂場、デパートの手洗い場、光が反射しているビルや車などの窓……むしろ鏡のない場所なんてそうそう無いはずです。

自宅の手洗い場の鏡を見ていて、ふと思ったんです。

鏡だってこちらを見ているのではないでしょうか?
鏡に写っている私は、明らかに私の方を向いています。目も合っています。
鏡の中の私は、鏡の外にいる私の真似をしているだけなのかもしれません。


こんなこと考えちゃダメですよね。
逃げたくなってしまって、鏡を割りました。
血のにじむ拳を握りしめて、布団に逃げこむわ、布団の中で泣きじゃくるわで、親には随分と心配されました。

それからというもの、反射しているものを見るのが嫌になってしまいました。鏡の中にいるのは、私が反射して映っているのではなく、鏡の中の別の誰かであると認識したからでしょう。


不慣れながらも、私はインターネットを使って、鏡について調べてみました。
鏡とは本来、魔除けの道具らしく、人間に化けた妖怪の姿を見極めるものだそうです。


長らくネットの海に潜っていると、急にプツリと画面が真っ暗になってしまいました。
外を見てみると大雨で雷もなっていたので、停電だろう……と思いました。

ふと暗くなった画面に目をやると、私の顔が映っていたんです。パソコンの画面も光を反射することを忘れていました。


鏡の中の私と見つめ合うこと約10秒ほどでしたか……たったの10秒が私には何時間のようにも感じました。

すると、鏡の中の私が、急に口を動かし始めたのです。ゆっくりと口を尖らせ……動かし……口を大きく開ける。この動作を何度も繰り返しています。

何か言いたいんじゃないかと思って、しばらく観察していると、かすかですが、音が聞こえ始めてきたのです。



それはゆっくりと、『こ』……『に』……『ち』……『わぁ』……と。


そうです、「コニチワァ」と言っていたのです。



.


その事を理解してすぐに、私は更なる恐怖に包まれました。
画面に映っていたはずの私の顔が、見覚えのない、外国人のランナーのような顔に変わっていたのです。


それ以来、私は反射するものを見るのが苦手です。

私に向かって、挨拶をしているように感じるのですから。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


海未(やってしまったああああああああ!! )


希「ンフフwwwwww」

絵里「ハラショーwwwwwwww」

花陽「海未ちゃん、外国人ネタは聞き飽きたよ」

凛「あははww 面白かったぁ~ww」

希「ふひぃ……笑い疲れたw」


凛「ねぇ海未ちゃん、今どんなコニチワァ? 」スッスッ

絵里「コニチワァ? 」スッスッ


希「おぉーっと!かしこいかわいいコニーチワァだぁぁ!! 」

海未「wwwwwwwww」


希「にこちゃんと海未ちゃんは同率最下位で……w」

海未「むむ……仕方ありませんね。」


にこ「もうっwww なんなのよこの呪いwww」


希「じゃあまぁ、優勝は穂乃果ちゃんってことでいいかな? 」


凛「はーい」

花陽「うん、いいと思う。」

絵里「コニチワァwww」

海未「まだ笑ってるんですか、ある意味凄いですね」


穂乃果「優勝いぇーーい!! 」ピース


希「じゃあ穂乃果ちゃん、優勝のトロフィー渡すから、舞台に上がってー」

穂乃果「うん! 」スタスタ


希「はい、というわけで今回の怪談話イベント……優勝は穂乃果ちゃんでしたー!! 」


パチパチパチパチ!


穂乃果「ありがとー!! 」

希「はい、トロフィーだよ」スッ

穂乃果「わわっ、おっきい! 」ズシッ


希「じゃあ、優勝してのコメントをどうぞ! 」


穂乃果「うん! 」スゥーッ





穂乃果「みんなーっ! コニチワァ!! 」




.


穂乃果(あれ……? )

穂乃果「トロフィーに反射する顔が……外国人ランナーになってる……? 」

穂乃果「ねぇ、希ちゃん!今の穂乃果ってどんな顔に……」

希「コニチワァ」

穂乃果「……!? 」


穂乃果「希ちゃんじゃない……あれは外国人ランナーだ……」


穂乃果「ねぇ、みんな……」


絵里「コニチワァ」

にこ「コニチワァ」

凛「コニチワァ」

花陽「コニチワァ」

真姫「コニチワァ」

ことり「コニチワァ」

海未「コニチワァ」


観客「「「コニチワァ」」」


穂乃果「ひっ……ひぃ……!! 」

穂乃果「コニチワァ……コニチ……」

穂乃果(意識が遠のいてゆく……あれ、ワタシってどんな喋り方だったっけ……)

……


ーーー いつか急に自分が自分ではなくなってしまう時が来るかもしれないデス。


その時を私達はあらかじめ知ることは出来ず、対策しようもないのでしょうか。

テレビのチャンネルを途中で変えるように、私たちが私たちで無くなってしまう瞬間は、急にやってくるのかもしれませんネ。



語り部:外国人ランナー

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


おしまい

ここまでお付き合いいただき、コニチワァ

※コニチワァというのは、ラブライブ劇場版にて、海未とにこがランニングをしている時に、挨拶をしてきたランナーが発したセリフです。

ヘボットに出てくる赤いモコモコした奴の事だと思ってた

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom