実況「さて、この準決勝第一試合ですが――」

実況「なんと二匹とも同じ昆虫です！　これは非常に珍しいケース！」

解説「ええ、第三回大会で出場したカブトムシ二匹が両方とも準決勝に上り詰めましたが」

解説「あの時以来ですねぇ」

実況「同じ昆虫同士ということは、お互い手の内は知り尽くしてるといえます！」

実況「白熱した戦いが期待できます！」

実況「それでは準決勝に勝ち進んだ両選手……入場して下さい！」

実況「どうぞ！！！」





ワアァァァァァァァァァァッ！！！

実況「あれ……？　入場してこない……？」

解説「もう一度やった方がいいんじゃないですか？」

実況「そ、そうですね。両選手、入場して下さい！」





ワアァァァァァァァァァァッ！！！

ｼｰﾝ…



実況「あ、あれ……？　おかしいな？」

解説「もしかしたら、両方とも試合開始時間を忘れてるのかもしれませんねぇ」

実況「そ、そうですね！　そうかもしれません！」

実況「係員さん、申し訳ありませんが、両選手を呼んできて下さい！」

ｻﾞﾜｻﾞﾜ…　ｶﾞﾔｶﾞﾔ…



実況「観客の皆さん、少々お待ち下さい！」

実況「な、なんとか場をつながないと……」

解説「では、ここで私のインセクトギャグをお披露目しましょう」

実況「ほう！」

解説「虫に話しかけても返事がない。無視された」



ワアァァァァァァァァァァッ！！！

ﾜﾊﾊﾊﾊ…　ｱﾊﾊﾊﾊ…

実況「おっと、ここで新しい情報が――」

実況「え……！？」

実況「な、なんとも悲しいお知らせが入って参りました！」

実況「これから準決勝で戦うはずだった、両選手が……なんと二匹とも控室で亡くなっていたそうです！」


エエェェェェェッ！！！


解説「寿命だったんですかねえ」

実況「ええ、時期が時期ですからね」

実況「というわけで、誠に残念ですが、この準決勝第一試合は勝者無しということにいたします！」

実況「セミ同士の熱い戦いを期待していただけに、本当に残念です！」

実況「私も実況として、両選手のご冥福をお祈りいたします！」

解説「これがホントのセミファイナルだった、というわけですねえ」









―完―

悲しい