トンデモ設定・展開が苦手な方はそっ閉じで。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1375858540
/ ̄ ̄\ /⌒ ⌒\ γ ヽ、
/ =ミミ'、彡\ /ィ'tテヽ: :ィ'tテヽ\ / ヽ
| イて)ゝ /て)/::::: ` ̄''":::` ̄´ \ γ 人 人 人 人 ヽ
| f ,、_,., ) | f ,、_,., ) | ( /ミミヽ rz彡‐\ ) …
| 、_ _ _ノ \. .:.:,._‐_‐_、:.:.. / \:/ 、_tッ、,゙ ' r' rtッ_‐ァ'\ノ
| ー } ( r .'ヾ'三'シ` | | `ー 'ノ !、`ー ' |
ヽ `"´ } ̄ ̄ ヽ○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\\ f ,、_,., )、 /
ヽ ノ \きったねぇケツだなぁww / 竺=ァ‐、
/ く \ |__| _ ..._...\>>1初めてかここは / / /
| . \ \ \ / ヽオイ勃ってきてるぞ/ (__ノ
| |ヽ、二⌒)、^
{`丶、
ミーンミンミンミン……
こっちはクソ暑さに参っているというのに、
盛り続けるセミさんにはほとほと感心する。
この炎天下、鳴き続ける体力が、
あの小さな体のどこに隠れているのか。
ひとえに、性欲の為せる業だろうか。
セミの鳴き声というのは、求愛行動だそうだ。
オスが一生懸命に鳴くことで、
自分の子を産んでくれるメスを惹きつける。
顔、財産、人格、服装、趣味、エトセトラ。
人間ならば、伴侶を選ぶ基準は多様だけれど、
鳴き声が唯一の武器であるセミにとっては、
たとえ干からびようとも鳴き続けるしかないのだろう。
それに、いったん地上に出てきて羽化すれば、
成虫として、一か月と生きることはできない。
個体によっては百年も生きる人間に比べれば、
ほんの刹那しか生きられないからこそ、
激しく命を燃やして生きているのではないか。
そんなセミの中に、とても個性的な種のセミがいる。
17年ゼミという、周期ゼミの一種で、
アメリカ北部にしか生息しない、非常に珍しい種だ。
ある個体が、地上に出てきて成虫になるまで、17年。
その子孫が17年おきに、大量発生を続ける。
今から僕が語ろうと思っているのはそんな、
日本ではお目に掛かれないセミにまつわる話だ。
現在時刻は、18時を回った所だ。
風通しの為に窓を開けている所為で、
庭の梅の木に留まったアブラゼミの鳴き声が耳をつんざくほどだ。
「クーラー壊れててごめんなさい、Pさん……」
「いえ、大丈夫ですよ。扇風機で十分です」
昔ながらの瓦屋根の一軒家の二階。
本来なら実家に帰る筈の、お盆真っ只中。
僕は、ウサミン星に――つまり、菜々さんの自宅に招かれていた。
期待
これは夢なのか、現実なのか・・・。
総武線各駅停車という名の銀河鉄道に揺られ、1時間弱。
○○駅から徒歩で数分の場所に、ウサミン星はあった。
一見すると、トップアイドルが住んでいるようには、
とても思えないように見えるけれど、
しかし、菜々さんの自宅と言われれば納得するような家。
自分の実家を思い出させるような安心感がある。
僕が受けた印象は、そういった感じだった。
家の周りは2メートルを越える生垣に囲まれており、
正面口である門の上からは、クロマツの枝が顔を出している。
門をくぐると、小さいながらも庭園が広がっていた。
まず目に入ってきたのは、右手にある大きな木だった。
「これって、梅ですよね?」
僕は立ち止まって、菜々さんに問いかける。
「そうですよー! ウサミン星の固有種で、今年もいっぱい実が取れたんですよっ!」
「それじゃ、梅干しでも作ったり?」
「梅酒のほうがおススメですよ! 菜々も味見してかくに……」
『しまった!』という顔の菜々さんだったけれど、
「大丈夫ですよ。僕しかいませんからね」
と言うと、それもそうですね、と表情を緩めるのだった。
庭には芝生が広がっており、5、6個の敷石が玄関まで続く。
菜々さんその上を、ぴょん、ぴょん、と跳ねて行く。
「Pさんも、早く来てくださいっ!」
僕は、菜々さんのはじけるような笑顔に引き寄せられた。
しかし途中、まだ青い紅葉の木が脇にあったのだけれど、
僕がそばを通ると、セミが急に飛んで、驚いてしまった。
菜々さんも通ったはずなのに……と、不思議に思った。
欝展開じゃないよね?
僕が玄関前に着くと、菜々さんは鞄を漁り始めた。
「あれ、ご両親は留守ですか?」
「は、はい、そうなんですよ! ちょうど旅行に行っちゃってて、あはは……」
つまり、この家で菜々さんと二人きりということだ。
不意に胸の鼓動が高まるのを感じた。
「あの、Pさん? どうかしましたか……?」
「いえ、ちょっとぼーっとしました、あはは……」
かちゃり、と家の鍵が開いて、ウサミン星のゲートが開く。
僕らは挨拶をしたものの、返答はある筈もない。
しかし、ご両親がお盆に旅行なんて……
本当に、タイミングが悪かっただけなのだろうか?
玄関のほぼ正面には、(家と同じ種類の)階段がある。
その突き当たりには窓があって、斜陽が注いでくる。
それを眺めていると、改めて夜が近いことがわかる。
果たして本当に、お邪魔しても良かったのかと自問してしまう。
「Pさん、先にウサミンルームに行っててもらえますか?」
「え、そんな、菜々さんと一緒に行きますよ」
「お茶とかお菓子とか持っていかないといけませんから! えっと、階段あがって右に曲がって、一番奥の部屋がウサミンルームですっ♪」
背中を押されて、階段の方に追いやられてしまう。
ここは素直に従って、菜々さんを待つしか選択肢はなさそうだ。
僕は、ぎしぎしと軋む階段を、ゆっくりと上がった。
言われた通りに右に曲がって、突き当たりまで進むと、
『ウサミンルーム』と描かれたプレートが下がっている部屋があった。
ここが間違いなく、菜々さんの部屋だろう。
しかし、いざ入ろうとドアノブに手を掛けたところで、僕はフリーズした。
いくら許可されたとしても、女性の部屋に勝手に入るのは躊躇われたのだ。
僕は、菜々さんが来るまで、後ろの窓からの景色を眺めていることに決めた。
見えるのは、この家の裏庭。そして、この家に接している家の庭だ。
比べると、ウサミン星は他の星よりも、緑が豊かだった。
名前は分からないが、僕の実家で見たことのある植物もある。
菜々さんの祖父母か、あるいは両親か。大穴で、菜々さん自身が育てたという線もある。
僕は、祖母が濃厚だと踏んだ。我が家がそうだった、という短絡的な理由で。
しばらくすると、菜々さんが階段を上ってきた。
「あれ、入っててくれてもよかったんですよ?」
「すいません、窓からの眺めが良かったもので、見入ってました」
「窓からの眺め……そんなに良いですか?」
「ええ、すごく。なんだか、実家に帰ったような気持ちになりました」
「そ、そうなんですか、あはは……」
菜々さんは複雑そうな顔で、乾いた笑い声をあげた。
「あ、それ持ちますよ。やっぱり菜々さんが先に部屋に入ってください」
そう言うと、彼女は持ってきたお盆を僕に渡し、部屋へと入っていった。
僕もお盆をひっくり返さないように、ゆっくりと続いた。
>>12
鬱展開ではないと思います
日光で焼けてくすんだ畳や、幾つもあつはぎのある障子から、
なかなか年季の入った部屋だということが読み取れる。
しかし、それに似つかわしくないヌイグルミや衣装の数々が、
えも言われぬちぐはぐさを生み出していて、可笑しくなった。
「な、何か変ですか? 菜々の部屋……」
菜々さんはびくびくしながら、僕の顔色をうかがった。
「いえ、菜々さんらしい部屋で、かわ……素敵だなぁって」
かわいい、と素直に褒めてあげたかったけれど、
安易にその言葉を使うことを窘められた記憶が、脳裏をよぎった。
「す、素敵ですか……えへへ」
それが正解かは分からないけれど、少なくとも菜々さんは喜んでくれたようだ。
菜々さんの一人称が……
スイマセン建て直します
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません