渋谷凛「二人だけの舞踏会」 (14)
アイドルマスターシンデレラガールズ 渋谷凛のSSです
アイドルそれぞれに担当Pがいます
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凛「……ふぅ」
深呼吸を一度。
目を開けると見えるのは地方都市の夜景。
都会のギラギラした景色とは違い、小さな小さな宝石箱の中のような綺麗な明かり。
私は一人、それをバルコニーから眺める。
凛「……こんな素敵な場所があるなんて」
今日は事務所主催の記念パーティーがあり、私達アイドルを始め社員全員がこの会場に来ていた。
設立何周年だとか……忘れたけど。
……パーティーはもう中盤過ぎ。大人たちはだいぶ出来上がってるみたい。
普段接する機会の無い社員さん達との会話に疲れた私は、ここで一息ついていた。
凛「……そろそろ、戻ろうかな」
奈緒「おーい、凛」
凛「奈緒。……奈緒も休憩?」
奈緒「んー、まぁそんなところ。プロデューサーさんに連れまわされて大変だったよ」
凛「相変わらず仲良しだね」
奈緒「……仲良いかぁ? あたしは馬鹿にされてる気しかしないけど」
凛「嘘言っちゃって。いつも楽しそうにしてるのに」
奈緒「……う……ま、まぁプロデューサーさんと一緒にいるのは……嫌いじゃないし。……むしろ良い、かも」
そう言った奈緒の頬はみるみる赤くなっていった。
奈緒はすぐに顔に出ちゃうんだから。
凛「今みたいに素直になってあげたら? 奈緒のプロデューサー、喜ぶよ」
奈緒「うぅ……は、恥ずかしいから無理かな……」
凛「ふふっ。そんなところが奈緒らしいね。かわいいよ」
奈緒「なんだよー、凛までからかうのかー? ……あ、ごめん。来て早々だけど戻るよ」
奈緒は小さな腕時計を見て話を切り上げた。
確か、奈緒のプロデューサーが誕生日にプレゼントしてた物だったかな。
凛「何かあった?」
奈緒「アレだよ、社交ダンスがあるからな。プロデューサーさんを探さなくちゃ」
凛「もうそんな時間?」
奈緒「あと少しあるけど、早めに捕まえておかないとベロベロに酔っ払っちゃうからさ、アイツ」
凛「なんだ、ちゃんとプロデューサーにアピールしてるんだね。一緒に踊るなんてさ」
奈緒「違う違う! 誘われたんだって! なのにアイツ、お酒飲もうとするしさ。あれじゃダンスできなくなったらどうするんだよ」
凛「はいはい、お幸せに」
奈緒「し、幸せってなんだよ…………そんなのまだ……!」
凛「まだ……? それじゃいつかは、って事か」
奈緒「い、いやいや!! 今のはそういう意味じゃないからな!? ……あぁもう、先に行ってるからなー!」
凛「私もすぐ戻るよ」
奈緒「ここ寒いから早く中に入れよなー」
奈緒は嬉しそうな顔をしながらバルコニーを後にする。
私はまた一人。
手すりを触るとヒンヤリ冷たい。ブルっと身体が震えて疲れた脳が起き上がった感じがした。
…………そういえば、私のプロデューサーはどこに行ったんだろ。
会場の中では一緒にいたのに。
凛「……」
加蓮「あれ? 凛じゃん。どうしたのこんな所で」
凛「あ、加蓮……ちょっと休んでたんだ。さっきまで奈緒もいたんだよ」
加蓮「ははーん。だからか、さっき奈緒が顔赤くしてたのは。またからかったんでしょ?」
凛「ふふっ。ちょっとね」
加蓮「奈緒のプロデューサー絡みだってのはすぐ分かったけどね。 ……私もそんな感じだけど」
凛「え?」
加蓮「これからダンスあるでしょ? プロデューサーさんの事を意識したら顔が熱くなっちゃってさ」
凛「あぁ……」
加蓮「だから外に行って落ち着こうと思ったの」
凛「ふーん、いつもはグイグイ攻めてるクセに。今日だってあんなに張り切って準備してたじゃん」
加蓮「だって! その時になったら緊張してきちゃって……プロデューサーさんと手を取り合って、顔合わせて……密着して……はぁぁぁ……」
凛「加蓮、顔真っ赤」
加蓮「も、もう! 茶化さないでよ! ……そんな凛こそどうなの」
凛「私?」
加蓮「凛も自分のプロデューサーと踊るんでしょ? その……緊張とか、しない?」
凛「……そうだね。あまり緊張しないかな」
加蓮「……」
凛「こんな綺麗なドレスで着飾っていても、私はこのままの……いつもの渋谷凛をプロデューサーに見せてあげたいんだ」
加蓮「…………そっか。凛らしいね」
凛「そうかな?」
加蓮「凛の良いところだと思うよ。……うん、なんかスッキリした! 私もう行くね」
凛「あんまり落ち着かなかったかな。ごめん」
加蓮「気にしないで。……私もそのままの自分をプロデューサーさんに見せてくる。ありがと」
加蓮が去った後、会場の中から音楽が流れてきた。
この音楽は……社交ダンスが始まったのかな。
中に入ろうと振り返った瞬間、私は何かにぶつかってしまった。
凛「わぷっ!?」
P「おっと……」
凛「ぷ、プロデューサー!?」
P「ぶつけたところ、大丈夫か?」
凛「なんともないけど…………よく分かったね。私がここにいること」
P「奈緒ちゃんが教えてくれたんだ。お姫様が待ってるってね」
凛「な、奈緒……」
これは……今度奈緒に会ったらいじられそう……。
逆にいじるネタを考えておかないと。
凛「まぁそれはいいとして……プロデューサー、私のこと真後ろから見てたんだね」
P「いやぁ、声かけようとしたんだけど、凛とこの場所の雰囲気が凄く合ってて……見入ってた」
凛「……なにそれ」
P「天使みたいでとても綺麗だったよ」
凛「ふーん、そう」
P「あ、アレ? それだけか? 照れるかと思ったのに」
凛「それだけだよ。盗み見するプロデューサーなんかにときめかないから」
P「くっ……残念。……冗談はさておき、中に入ろうか。もうダンス始まってるし」
凛「……んー……ねぇプロデューサー」
P「どうした?」
私の中でちょっとした悪戯心と企みが浮かんだ。
凛「ここで踊らない?」
P「こ、こんな場所でか!? 狭いし、何より寒いだろ」
凛「大丈夫。私はこれくらいの広さで十分だし、寒くないよ。……ほら、こうすればね」
P「……凛」
凛「うん。温かいね、プロデューサーの手」
プロデューサーの手をギュッと握る。
男の人の固い手。私の大事な人の手。
P「…………俺の方が照れちゃった」
凛「あはは! さっきの仕返しだよ、プロデューサー」
P「参ったよ。……中の音楽も聞こえるし、このまま踊ろうか」
凛「うん」
私たちは改めてお互いの手を握り締める。
その場でクルッと一回転。
見よう見まねだけど……それとなく出来ている、かな? 普段のレッスンのおかげかも。
P「今の動き、良かったな」
凛「ふふっ、ありがと。じゃあもう一回」
P「おぉっとと」
凛「プロデューサー、ちゃんと合わせてね」
P「…………こういうダンスってさ」
凛「何?」
P「やっぱり慣れてないと上手く出来ないもんだな。結構ハードだし」
凛「それ、運動不足じゃないの?」
P「ちゃんと営業で歩いてるから違うはず……」
凛「最近いつも事務所にいる気がするけど?」
P「……ごめんなさい。今度から真面目に営業します……」
凛「ふふっ、頑張ってねプロデューサー」
___
凛「プロデューサー」
P「ん?」
凛「気になってたんだけどさ、このドレスってプロデューサーが用意してくれたんだよね?」
P「おう。凛によく似合ってるだろ」
凛「う、うん。似合うの選んでくれたのは嬉しいんだけど……じゃあ、この花も?」
私は足を止めてドレスの胸元に付いている小さな花を見る。
P「もちろん。これは紫のカトレアだ。えぇと花言葉は……」
凛「大人の魅力。魅惑的。優美な女性、だったかな」
P「……さすが花屋の娘さん……」
凛「私が詳しいの知ってるくせに」
P「あぁ、知ってる。……カトレアにした俺のセンスは凛から見たらどうだ?」
凛「なんていうか……私、プロデューサーからは大人に見えるのかなって」
P「スカウトした時と比べたらずっとな。最初はただ無愛想な女の子だったから」
凛「あ、あれは……まだ知り合って間もなかったんだし仕方ないじゃん。私、意外と人見知りなんだから」
P「はははっ! ま、それだけ凛も成長したって事だ。さっきだって初対面の社員さん達とちゃんと話せていたしな」
凛「そう、かな」
P「あぁ。花言葉通り、凛はこれからもっと大人になって、綺麗になっていく。……それでもたまに見せる可愛らしさが俺は好きだけどね」
凛「…………そう……」
P「おやぁ? 凛、今照れただろ」
凛「……なんも照れてないよ。プロデューサー、次変な事言ったらもう一緒に踊ってあげないから」
P「マ、マジですか。……はい、もう言いません……」
凛「ふふっ! ほらプロデューサー、ちゃんと手をつかんで。離さないでね」
私たち二人はまた踊り始める。
さっきよりも動きは少し激しく。
だって、今の心臓の音を聞かれたくないから。
終わりです
凛かわいい
依頼出してきます
乙
凛ちゃんかわいい
おっつおっつ
綺麗なしぶりん久しぶりに見た気がする
乙です
よかった、久しぶりに素敵なしぶりん話読めて嬉しい
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