看守「ヒーロー?」 (8)
一人目
『時報くん』
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午前2時30分
看守「おいまた『時報くん』暴れてるぞ」
後輩「またですか…しかしあれすごいっスよねぇ。だって時間ほぼピッタリですよ」
看守「ベテランだからな。腹時計がよほど正確なんだろ…ほらちゃんと記録つけとけよ」
後輩「先に書いてあるんで」
看守「書くなよ…見つかって怒られんの俺なんだから」
後輩「バレなきゃ何やってもいいんです」
看守「あーあー嫌だねぇ。レベルがあいつらと一緒だぜ」
後輩「なんとでもどうぞ」
午前2時30分ちょうど、
この時間になると称呼番号667番通称『時報くん』が暴れ出す
罪状は常習累窃盗。累6の刑務所のベテランだ
前刑務所までは特異動静等なく静かに受刑生活を送っていたが、ここにきてから粗暴性が増し職員や収容者、技官など誰彼構わず襲いかかるようになる
工場での作業ができないと判断され、昼夜間単独室に移ることになったが、その日の夜に暴れた為保護室に収容された
単独室に来た日の夜から今日に至るまで毎日、午前2時30分に必ず暴れだし、もうずっと保護室から彼は出ていない…
後輩「ねぇ先輩…」カリカリ
看守「なんだ?ぼちぼち巡廻いくんだが」ゴソゴソ
後輩「こいつ来月満期釈放なんですよね。大丈夫なんですか?」
看守「あぁ?あー多分ダメだろう。次来るときは暴行か…他にも色々持ってくるかもな」
後輩「再び犯罪を起こすのをわかってて釈放する。つまり悪人を世に放つわけですよね?僕らってもしかして悪者なんですかね」
看守「あのなぁ、俺らは善人、悪人で仕事してねーんだよ。法の下で人権を扱う仕事だからな」
後輩「そうですか」
看守「ほら変なこと考えてないで仕事しろ。じゃ行ってくる」
後輩「…はい」
後輩「…」カリカリ
保護室
667「おーーい!!!だせぇ!出せやコラァ!!!」ガンガンガン
看守「おう元気でなにより。ここなら生きてりゃ問題ないからな」
667「弱いものいじめしやがって!!!それが公務員のすることか!!?あぁ!!?開けろ!!殺してやる!!!」ガンガンガン
看守「…」カリカリ
看守『扉を叩きながら大声で叫んでいる』っと」
看守「じゃあな」
667「どこいくんじゃワレコラァ!!顔覚えたからな!!見とけや!!!!」ドンドンドン
看守「ふわぁ…」
同日午前9時50分
監視室
667『…』
班長「昼は静かで、これもいつも通りか」
看守「やぁぁっと終わった…。早く解散して下さいよ」
後輩「あー……つかれた」
班長「いやいや、これから研修だから。まだ解散しないよ」
看守「はっ!?聞いてないんですけど!」
班長「いや言ったし」
後輩「言ってましたよ」
看守「はぁ…テンション下がるわー。なんの研修でしたっけ?」
班長「職員の不祥事防止研修」
看守「またか…さっさといって──────」
ジャァァァーーー!
667『…』バチャバチャバチャバチャ
後輩「あービショビショ…」
看守「…」
班長「…水遊び、始めたか」
後輩「水遊び?」
看守「なんでもねーよ。ほらちゃっちゃかやって帰ろうぜ」
後輩「えっ?あ、はい」
667『…』
バチャバチャバチャバチャバチャバチャ
翌月、『時報くん』は出所して27分後、刑務所の前で暴行事件を起こした
ここまで
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