モバP「机の下よりの使者」 (35)
のんびりと書いていきます
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1490947595
ガチャッ
P「ただいま戻りましたー...」
P「あー、今日もスカウト全然ダメだったなぁ...」
P「せめて名刺だけでも受け取ってほしかったけどそれもダメだった...」
P「なにも目の前でクシャクシャにして捨てることないだろうに...」
P「その上ハッキリと『キモッ!って...』
P「それに...警察に電話するのはいくらなんでもやりすぎだろ...」
P「あそこまで露骨に嫌がられるのは、さすがにヘコむ...」
P「はぁ~...」
「フヒ...」
P「んっ?」
輝子「や、やぁ...親友...」
P「おぉ輝子、また机の下に潜ってたのか」
輝子「う、うん...Pの机の下...ジメジメしてて...お、落ち着く...」
P「そっかそっか、それはよかった...」
輝子「ど、どうした?なんか...Pも...少しジメジメしてるな...」
P「えっ、そうか?俺ジメジメしてるか?」
輝子「な、なにかあったのか?あ、あれか?い、イヤなこと...あったか?」
P「ん~...まあ、イヤなことと言えばイヤなことだったけど...」
輝子「そ、そうか...ま、まあ...元気出せ...」
P「おう、ありがとな...」
輝子「あっ、そうだ...な、なんなら...私が...話だけでも...聞いてやろうか?」
P「輝子がか?」
輝子「うん...だ、だってPはトモダチだ...トモダチの悩みは...聞いてあげなくちゃ...だろ?」
輝子「なるほど...そ、そんなことがあったのか...」
P「...まあ、この仕事やってればそういう言葉を掛けられるのも仕方ない部分もあるけどな」
輝子「そ、そうなのか...大変なんだな、プロデューサーって...」
P「はぁ...そう言ってもらえるだけで嬉しいよ」
輝子「う、うん...だ、大丈夫だ...Pはがんばってるぞ、えらいな...」
P「おう、ありがとな、輝子もがんばっててえらいぞ」
輝子「フヒ...あ、ありがと...」
P「輝子に話を聞いてもらったら少しスッキリしたよ、さーてそろそろ仕事に戻るか」
輝子「な、なあP...」
P「んっ?」
輝子「い、イヤなこと言われても...気にするな...つ、辛くなったら...また私に話してみろ...」
P「いや、それはさすがに...輝子に悪いし...」
輝子「い、いいんだ...Pは親友だ...」
輝子「親友は...大事にしないといけないから...な」
------
P「......」カタカタ...
P「はぁ~あ...もうイヤになる...」
輝子「ど、どうした...?」
P「おっ輝子か、いやぁ部長に嫌み言われてさ...」
輝子「い、嫌み?」
P「『キミには今一つやる気が感じられないというか情熱が感じられないねぇ、そんなだからパッとせんのだよ』だってさ」
輝子「な、なんだそれ...ひ、ひどいな...」
P「パッとしないのはその通りだから否定できないけどさ、これでも一生懸命やってるつもりなんだけどなぁ...」
輝子「そ、そうだぞ...Pは一生懸命やってると...お、思う...」
P「おっ、そう思うか?」
輝子「フヒ...だ、だって...ぼっちの私をす、スカウトして...アイドルにしてくれたじゃないか...」
P「それは...まあ...でもそれは輝子にもともと才能があったから...」
輝子「ち、ちがうぞ...Pが私を見つけてくれたからだ...」
P「...あの時か」
輝子「そう...あの時だ...」
輝子「す、隅っこでキノコとしゃべってる私のことなんて...今まで誰も気に留めなかった...」
輝子「でも...Pは...そんな私に声をかけて...いろいろ教えてくれて...アイドルにしてくれた...」
輝子「だ、だから...嫌みなんて気にするな、Pはがんばってる...がんばってるぞ...」
P「そうか...」
輝子「う、うん...えらいぞ...」ナデナデ
P「...ああ、ありがとう」
輝子「ど、どういたしまして...フヒ♪」
------
P「......」カタカタ...
P「あー、疲れた...」
P「もう三日も家に帰れてない...」
P「まあ、俺の資料作成が遅いのが悪いんだけど...」
P「にしてもなぁ、さすがにそろそろ家に帰りたい...」
輝子「し、親友...」ヒョコッ
P「おぉ輝子か、お疲れ」
輝子「お、お疲れ様...親友は...い、忙しそうだな...」
P「まあな、わりと忙しいよ、あー腹減った...」
輝子「お、お腹空いてるのか...?」
P「んー、ちょっとな...コンビニでも行こうかなぁ...」
輝子「......」
輝子「なぁP...ち、ちょっとだけ待っててくれ...」
P「んっ、どうかしたか?」
輝子「い、いいから...待っててくれ...」
輝子「お、お待たせ...」
P「なんだそれ?」
輝子「え、エリンギとシイタケのソテー...給湯室のフライパン借りて...作った...」
P「輝子がか?」
輝子「うん...P...お腹空いてるんだろ?ど、どうぞ...召し上がれ...」
P「あ、ああ...じゃあいただきます、いい匂いだな...」
パクッ
輝子「...ど、どうだ?...おいしいか?」
P「...美味しい!うまいなこれ!」
輝子「そ、そうか...よかった...エリンギもシイタケも...そう言われると料理されたかいがある、と思う...」
P「いや本当にうまいよ、ありがとな輝子」ナデナデ
輝子「ふ、フヒ...うん...キノコで栄養つけて...お仕事がんばれ...」
P「おう、がんばるよ!」
ちひろ「プロデューサーさん、いただいた書類ですけどミスが多いですよ」
P「あっ、すみません...」
ちひろ「きちんと確認してから提出してください、文句を言われるのは私なんですからね」
P「はい...気を付けます...」
ちひろ「そう思うなら今度は誤字のない書類の提出をお願いしますね」
スタスタ...
P「なんだよ...そんなに言わなくたって...」
P「...というわけだよ、別に人間ならミスくらい誰だってするよなぁ?」
輝子「う、うん...そうだな...」
P「だろ?ちひろさんはいちいち細かすぎなんだよ、はぁ...」
輝子「......」
輝子「で、でも...いつまでも...失敗してばかりだと...」ボソッ
P「んっ、なんか言ったか?」
輝子「ふ、フヒ...いや...なんでもない...」
P「そうか、いやー、ちひろさんは普段から俺に対して...」
輝子「そ、そうか...き、厳しすぎはよくないな...」
P「だよな?そう思うよな?」
輝子「う、うん...」
P「しょーこ♪」
輝子「フヒ...ど、どうした?なにか...あったのか?」
P「いや、ただ輝子と話をしようと思ってな」
輝子「お、お仕事は...いいのか?」
P「えっ...あー、うん!大丈夫だ!」
輝子「そ、そうか...なら、お話ししよう...って言っても、キノコの話しかできないけど...」
P「別にいいよ、最近キノコの調子はどうだ?」
輝子「フヒ...このところジメジメしてて...元気だ...」
ガチャッ
P「げっ!ちひろさんだ...隠れろ輝子!」
輝子「ひゃ...」
ちひろ「プロデューサーさん...あら、いない?」
輝子「P...で、出て行かなくて...いいのか?」
P「シーッ!」
ちひろ「どこ行ったのかしら...次のライブについて確認したい事があったのに...」
バタン
P「ふぅ、行ったか...」
輝子「あ、会わなくていいのか?なんだか...困ってたみたいだったけど...」
P「いいんだよ、輝子は気にするなって」
輝子「でも...」
P「あっ、それより聞いてくれよ輝子、この前またちひろさんが俺に文句を...」
輝子「......」
------
P「......」カタカタ...
P「ふぅ...」
ちひろ「プロデューサーさん、次のライブの内容書類ってどうなってます?」
P「えっ?あ、あぁ、はい...今作ってます、もうすぐできると思いますので...」
ちひろ「わかりました、提出期限も迫ってますからなるべく早くお願いしますね」
P「はい...」
バタン
P「...ライブか」
P「はぁ...」
輝子「し、親友...」
P「おっ、輝子か」
輝子「な...なんか悩んでるような顔してるな...」
P「うーん...ちょっとなぁ...」
輝子「ど、どうした?」
P「今度のライブイベントがあるって、聞いてるか?」
輝子「う、うん...みんな噂してる...結構大きなイベント...事務所のほとんどの人が出演するって...」
P「そう、その通りだ」
輝子「それが...どうかした?」
P「実はな、そのライブの構成全般を俺が担当することになってるんだ」
輝子「し、親友がか...?よ、よかったな...がんばった成果が出たってことだ...な」
P「がんばった成果か...」
輝子「P...?嬉しくないのか?すごいことじゃないか...」
P「うーん...正直な事を言えば、嬉しさよりも不安の方が大きいかな」
輝子「えっ...な、なんで?」
P「だって...所詮俺の考えた内容だぞ?」
P「必死に頭絞って考えたところで、所詮は浅知恵っていうか...」
P「他の事務所のプロデューサーみたいに奇抜な物とかみんなを驚かせるようなライブなんて、どう考えたって俺には無理だし...」
P「もし期待外れのライブになったらって考えるとどうしてもな...」
輝子「そ、そんなこと...が、がんばればPにだって...」
P「うーむ...でもがんばったところで所詮俺だからなぁ...」
輝子「P...」
P「はぁ...いっそのことぜーんぶ投げ出してどっか行きたいなぁ...」
輝子「...えっ?」
P「仕事の事なんか忘れてどこか遠いところへ行ってさ、そこでのーんびりできたら...」
輝子「P...?」
P「...そう、ちょうど輝子のキノコみたいに、誰にも見られないところでひっそりと暮らせればなぁ...」
輝子「......」
輝子「...なんで」
輝子「なんで...そんなこと言うんだ...」
P「そんな風にできたらいいと思わないか?なあ、しょ...」
輝子「...い」
P「んっ?」
輝子「Pは...」
輝子「お前は...トモダチじゃない...!」
P「...えっ?」
輝子「Pは...私の親友は...」
輝子「私を見つけてくれたプロデューサーは...!」
輝子「そんなことを言うヤツじゃなかったッ!!」
P「し、輝子...?」
輝子「ウソツキッ!」
P「う、ウソツキ?」
輝子「私をスカウトするときに言った事はウソだったのか!?」
輝子「Pは...あの時、私に...」
輝子「フッ...フ...」
輝子「ふっざけるなァァァッ!コノヤロウゥゥゥゥ!!!」
グイッ!
P「ぐえっ!」
輝子「そうやって自分を低く見せてれば誰かに『かわいそう』って言ってもらえるとでも思ってるのかァ!?」
P「し、輝子...苦し...」
輝子「お前はそれでいいかもしれない!だけどな...」
輝子「今のお前を見たら、お前を信じてプロデュースされてるヤツらがどんな気持ちになるか、考えたことあるのかァァァッ!?」
P「えっ...」
輝子「プロデューサーがそんなに弱気じゃ...アイドルは誰を信じればいいんだ...」
輝子「みんな必死にがんばってるんだぞ...ライブを目指して...つらくても...」
輝子「それなのに...」
P「輝子...」
パッ...
輝子「...この、甘ったれがァァァァァッ!!!」
輝子「そんなにライブがイヤなら、いっそのことテングダケでも食べて寝こんでいやがれェェェェッ!」
ダッ!
P「お、おい輝子!」
バタンッ!
P「あっ...」
輝子『私をスカウトするときに言った事はウソだったのか!?』
P「輝子...」
------
輝子「あ、アイドル...?」
P「そうだよ、やってみないかい?」
輝子「フヒ...な、なんで私なんかが...?私、ただのぼっちだよ...あ、アイドルとは一番縁遠い存在...」
P「いやいや、そんなことわからないだろ」
輝子「ど、どうして...?」
P「君、さっきキノコと話しかけてただろ?あの時の君はすごくいい笑顔だった」
輝子「笑顔...?た、ただひとりでニヤニヤしてて...キモかっただけ...」
P「いや、すごく可愛かった」
輝子「か、可愛い?わ、私が...?」
P「うん、少なくとも俺はそう感じたよ、きっと俺以外にも君の笑顔を見て喜ぶ人はいっぱいいる」
輝子「そ、そんなこと...い、言い過ぎ...じゃないか?」
P「かもな、もしかしたら言い過ぎかもしれない、だってまだ俺しか君の笑顔を見たことないんだからな」
P「...だからこそ、もっと大勢の人に君の笑顔を見せたいとは思わないか?」
輝子「......」
輝子「...そ、そんなこと言われたの初めてだ」
輝子「それに...声をかけられたのも...初めてだ」
輝子「...変わった人だな」
P「ははっ、そう言われればそうかもな」
輝子「...私、今までキノコとしか...話してなかったから...人付き合いとか...苦手だぞ?」
P「大丈夫だ、俺が全力でフォローするよ」
輝子「そ、それに...アイドルのこととか全然よく知らないから...プロデューサー...いろいろ苦労するかも...」
P「それも大丈夫、俺が全部教える」
輝子「お、覚えられるかな...?」
P「おう、安心しろ」
P「なんべん失敗したって俺は絶対に君を見捨てたりしないよ、かならず傍にいる」
------
P「...そうだ」
P「輝子をスカウトするとき、そう言ったんだった...」
P「輝子...」
P『聞いてくれよ輝子、この前またちひろさんが俺に文句を...』
P『がんばったところで所詮俺だからなぁ...』
P『いっそのことぜーんぶ投げ出してどっか行きたいなぁ...』
P「......」
P「なにやってんだ俺...!」
------
輝子「......」
輝子「P...」ボソッ
輝子「...グスッ」
P「輝子」
輝子「フヒィ!?」ビクッ!
P「ここにいたのか」
輝子「えっ?う、うん...」
P「...輝子」
ペコッ
P「...ゴメン」
輝子「...えっ?」
P「ゴメンな、本当に申し訳なかった」
P「お前をスカウトしたとき、約束したのにな...」
P「輝子の優しさに甘えて...」
P「俺はダメなやつだった、本当にゴメ...」
P「んっ?」
輝子「ぐしゅっ...えぐっ...」
P「輝子?」
輝子「わ、私こそ...ゴメン...」
輝子「トモダチなのに...ひ、ひどいこと言った...」
輝子「もう...トモダチじゃ...いられない...」
輝子「ゴ...ゴメン...グスッ...」
ギュッ
P「バカだな輝子...お前は悪くないんだから謝らなくていいんだ、悪いのは俺だ」
輝子「えぐっ...ご、ゴメン...」
輝子「き、嫌いに...ならないで...」
P「...なるもんか」
輝子「ぐしゅっ...うっ...うぅぅ...」
P「輝子...」
輝子「...えっ?」
P「次のライブ、俺は俺にできることを一生懸命がんばるよ」
P「だから輝子、お前もがんばれ!」
輝子「...うん!」
------
P「輝子、おい輝子!どこだ!?」
輝子「......」
P「おっ、いたいた」
輝子「あっ、P...」
P「どうかしたか?」
輝子「ひ、人...すごいなって...」
P「ああ、チケットはソールドアウトだからな、そりゃあいっぱい人も来るさ」
輝子「う、うん...そっか...そうだよな...」
P「緊張してるのか?」
輝子「す、少し...」
P「大丈夫だよ、いつも通りお前の全力を出し切って来い!」
輝子「......」ジーッ
P「どうした?」
輝子「ふ、フヒ...P、なんかカッコいいな...♪」
P「おっ、そうか?」
輝子「うん...すごく...カッコいい...」
P「うーん、輝子に怒られたせいかもな、渇を入れてもらったからそれで...」
輝子「あう...そ、その話は...や、やめて...」
P「おっと、ダメだったか」
輝子「し、親友に...怒鳴ったりしたのは...あんまりいい思い出じゃない...」
P「そうか、じゃあ気をつけるよ、もう輝子に怒鳴られないようにしっかりしないとな」
輝子「うん...そ、そうして...」
P「おう、さあそろそろ出番だぞ、準備はいいか?」
輝子「...クククク、当たり前だァァ!いつでも会場をマッシュルーム・オブ・ヘルに叩き込む用意はできてるぜェェェェ!」
P「オッケー!じゃあ行くぞ!」
輝子「あっ、そういえば言い忘れてた...」
P「どした?」
輝子「あ、あのな...P...」」
輝子「な、悩んだりしたときは...また、話してくれ...」
P「えっ?いや、でも...」
輝子「こ、この前みたいばことを言い出されたら...さすがに困るけど...」
輝子「トモダチの悩みを聞くのは...当たり前だ...」
輝子「トモダチはお互い助け合うから...トモダチなんだ...」
P「...トモダチの悩み、か」
輝子「うん、だから...」
輝子「辛いときは...また...机の下で...待ってるね...」
おわり
駄文失礼しました~
初の輝子SSです
個人的に普段の状態は書きやすいですがヒャッハーしてる状態は難しかったです
あと輝子はああ見えて母性が強そうなイメージです
タイトルはハイロウズの好きな曲をパク...もじったものです!
ではまた~
乙
きのこさん乙女やな
乙
おつー。Pに強く言える輝子はそれだけPを信じているってことなんでしょう。ネガティブなときに引っ張り出してくれる輝子すき
すげえ好きだよ、おれこういうの
乙
よかった
こういう関係って憧れるなあ、乙
輝子はほんとぐんぐん大人になっていくな。かっこよい。
やっぱりあの曲がタイトルの元ネタだったのか
こういうSS好き
おつおつ
最高ね!
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません