モバP「猫と眼鏡っ娘と縁側でお昼寝」 (17)


初投稿作品。シンデレラガールズの上条春菜のSSです。
地の文あり。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1490966265


 「ここでオレは今日、担当アイドルの一人、上条春菜の実家へ向かっている。
 高速を下りてしばらく走ってからは助手席に座る春菜がナビをしてくれている。

 「Pさん、そこを左です。」
 左折する時にちらっと見えた春菜は懐かしむような表情をしていた。

 
 

 「桜がきれいに咲いていますね!」
 「ああ、天気もよくてあったかい。もうすっかり春だな。」
 
 閑静な住宅街にあるパーキングエリアに車を停めて話ながら春菜の家を目指す。ときどき野良猫とすれ違うと、春菜は手を振って挨拶をしている。
 
 「上条家へようこそ!」
 オレを先導する春菜が一軒家の門を開け、そう叫びながらドアを開けようとしたが鍵が閉まっていたようで、勢いが止まった。
 春菜が苦笑いしていると、解除音がしてドアが開いた。
 
 出てきたのは春菜の母親だ。明るい笑顔で出迎えてくれた。
 
 「遠いところからありがとうございます。さぁさぁ、中へどうぞ。」

 畳みの居間に案内されると、そこには春菜の父親が座っていて、これまた笑顔で迎えてくれた。
 
 「遠いところからありがとうございます。さぁさぁ、座って。」
 同じ台詞を聞いた事に笑いながらテーブルを挟んだ向かいに座る。
 
 「私はちょっと着替えてきますから、先に始めてて下さい。」

 
 
 
 今日来た目的は、普段のアイドル活動の報告のためだ。春菜はアイドルになって実家の静岡から事務所の女子寮に引っ越した。18歳でひとり暮らし、そして芸能活動をしているとなると、やはり親御さんは不安であろう。その不安を解消させる努力もまた仕事である!

 
 しかし、今回は真面目な話がメインではない。春菜がラフな部屋着に着替えて居間に戻って来る頃には


 「見て下さい、この写真!巫女装束も良く似合っているでしょう!」
 「これは良い!振袖撮影の時にこんな衣装も着ていたのか!!」
 「最近は雑誌やテレビでしか見られないから、オフショットの春菜なんて新鮮だわ~。」
 
 「ちょ、あ、ああぁPさん!そのアルバム持ってきてたんですかぁ?!恥ずかしいから見せないでくださいよぉ!」
 
 春菜の両親とは事務所で何度か会って話している。なので、いつもの堅苦しい話は手短にして、ステージの裏側の春菜を見てもらおうとアルバムを持参して来た。
 以前、春菜と思い出話をしたアルバムは新しいメモリアルを次々と増やしている。
 
 「良いじゃないか、いっぱい撮って欲しい、って言ったのは春菜だろ。」
 「そうですけど、両親に見られるのは恥ずかしくて......」
 「じゃあ、春菜が居ないところで見てやってください。これは差し上げるために編集して作ったアルバムなので。」
 
 よく見るとアルバムの表紙が違うことに気づいた春菜は顔をほてらせていた。眼鏡が曇りそうなくらいに。
 


 「もう、Pさん。あんまり恥ずかしい話ばかりしないでくださいよ。」
 「ははっ、かっこよくて可愛い春菜はステージや雑誌でいっぱい見てくれているんだ。普段の春菜の様子も知ってもらわないと。」
 
 お昼ご飯をご馳走になりながら、普段の春菜の話で盛り上がったあと、オレと春菜は縁側に足をなげだしてひなたぼっこをしていた。
 
 「このクリームが入ったお菓子、やっぱりおいしいな。」
 「ふっふっふっ、静岡が誇る銘菓ですからね。Pさんのために用意してもらったんです、いっぱい食べて良いですよ。」
 「お昼を食べた後なのにいくらでも食べれてしまう。お茶もまた心温まって............ふぁぁ......」
 「この天気ですからねぇ、眠くなってきますよねぇ。」
 
 お日様にあたりながらうとうとしていると、植え込みから一匹の猫が顔を出してきた。

 
 「おぉ、猫だ。野良か?」
 「ええ、この辺りの猫ちゃんたちは、色んな家の庭に入り込んでは、餌をねだったり、日当たりの良いところでお昼寝していったりするんですよ。」
 
 なるほど、猫と縁側でお昼寝が趣味、というのはそういうことか。って、この話は以前にもした覚えがあるなぁ。
 春菜は裸足のまま、庭に出てしゃがみ込んで猫を呼びはじめた。猫は差し出された手の匂いを嗅いだり、春菜の足元に自分の体を擦りつけたりしている。
 オレはスマホを取り出して、猫と戯れる春菜の写真を撮らせてもらった。気づいたら、2匹3匹と猫が集まって、オレの足元の匂いを嗅いで、ちょっとしかめっ面のような顔をした。パシャリっと。
 猫を撫でながら春菜は
 
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 「......俯きがちだった私は、眼鏡のおかげで顔を上げて、まっすぐ前を向くことができました。だけど、眼鏡をかけている人の印象は、地味で根暗で、なんてマイナスイメージが多くて......内気な私はなかなか友達ができずに、こうして猫ちゃんと遊んでばかりでした。
 
 また私は下を向いていたそんなときに、Pさんは私に声をかけてアイドルへの道を示してくれました。眼鏡が私にかけてくれたマジックを、今度は私が他の人にかけよう、って。
 おかげで、私はたくさんの友達とファンに出会え......」
 
 「......zzZ」
 
 「......もうっ、Pさんは。人がせっかく感動的な話をしているのに......ふぁ。私も眠くなってきました。しかし、猫ちゃんが胸にのってお昼寝しているPさん、ちょっと可愛い。撮っておこっと。」
 
 「......zzZ」
 「......zzZ」

 
 
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 「? あらあら、こんなところでお昼寝しちゃって。仲良しねぇ。
 これは、春菜と、Pさんのスマホかしら?確かここをこうスライドして......カメラ起動っと。」
 
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 「いやぁ、長居してしまって申し訳ないです。お菓子もこんなに........」
 「普段春菜がお世話になってるんです、遠慮しないでください。」
 「本当にありがとうございます。それでは、お邪魔しました。」
 「こちらこそ、ありがとう。楽しかったよ。
  春菜、Pさんを送ってあげなさい。」
 
 たくさんのお土産を渡されたオレは上条家を後にした。
 日が傾きはじめた、パーキングエリアまでの短い道を、再び春菜と歩き始める。
 
 「Pさん、今日は本当にありがとうございました。」
 
 パーキングエリアに着いた春菜は、今日、最後の挨拶を言った。
 
 「礼を言うのは早いぞ、春菜。はい。」
 「? 何でしょうか、この箱。」
 「誕生日プレゼントだよ、オレからの。」
 
 いつもの鞄から取り出した細長い箱。リボンや綺麗な包み紙で包装された箱を受けとった春菜はびっくりした顔をした。
 


 「誕生日おめでとう、春菜。」

 
 
 
 「ありがとうございます、Pさん。

  ........いま開けても良いですか?」
 
 オレが頷くと、春菜は包みを丁寧に剥がしてプレゼントを開けた。
 
 「綺麗なネックレス................ありがとうございます........」
 
 少し涙ぐんだ春菜はオレにそのネックレスを差し出し後ろを向いた。
 邪魔にならないよう後ろ髪をあげた春菜に、ネックレスをつけてやると満面の笑みで振り返った。
 
 「どうですか、Pさん。似合ってますか?」
 「ああ、我ながら良いプレゼントを選べたよ。」

 ご機嫌な春菜に、続いてのプレゼントを車のトランクから取り出す。
 
 「これはブルーナポレオンのメンバーからだ。」
 「わぁ、眼鏡をかけた猫ちゃんのぬいぐるみ!おっきいですね!」
 
 猫のぬいぐるみを両手で抱える春菜の笑顔からはついに涙がこぼれ落ちた。
 
 「何だか、もらってばかりですね、私........」
 「そんなことない、オレも事務所のメンバーも、ファンの皆も、春菜から元気を貰っているんだ。
  いつも感謝してる。」
 
 「........それでも........事務所に帰ったら、皆にお礼を言わなきゃ。」
 
 車に乗って事務所に戻るオレを春菜は見えなくなるまで手を振った。
 

 すっかり日が暮れた頃に事務所に戻って車をおりると、ボンネットには桜の花びらにまじって猫の肉球の跡が見えた。
 この上で昼寝でもしたのだろう................へこまなくてよかった。
 
 中に入ると、スプリングコートを着込んだ事務員、千川ちひろさんが帰り支度をしていた。
 「あら、Pさん。お帰りなさい。遅かったですね。」
 「えぇ、すっかり話し込んでしまって........」
 
 まさか昼寝をして帰りが遅くなった、なんて言えない。それに嘘は言ってないはずだ、うん。

 
 
 「あれ、Pさんじゃないスか。お疲れ様でス。」

 
 後ろから声をかけてきたのは春菜の所属ユニット、ブルーナポレオンの一人、荒木比奈だった。

 「おう、比奈。今日は仕事だったよな、お疲れ様。」
 「はい、バッチリこなしたっスよ。」
 「そうか。ああ、そうだ。春菜、プレゼント喜んでたぞ。」
 「さっきメッセージ貰ったっス。でも、何でプロデューサーがいま持ってるんでス?」
 「女子寮の部屋に置きたいらしいけど、さすがにこれを持って新幹線乗るのは大変だからな。一旦車で持ち帰ってきたんだ。
  そうだ、比奈。これ女子寮で預かっててくれないか?」
 
 わかりました、と彼女は大きい袋を受け取ってくれた。
 そして二人は事務所を後にした。
 「Pさんも早く帰ってくださいね。」
 
 ちひろさんにそう言われたオレは、パパっと今日使った資料を整理してガソリン代の領収書を書いていた。すると、春菜からメッセージが届いているのに気づいた。


 『Pさん、今日は本当にありがとうございました。また家に来て下さい、両親も是非にと言ってました。
  両親に、明るくなったな、って言われました。私自身もそう思います。それは、やっぱりPさんに出会えたからだと思います。
  今日のプレゼントもそうですけど、私はPさんや皆から貰ってばかりで........
  だから、恩返し! 絶対にさせてくださいね! アイドルとして元気をあげるだけじゃなくて、一人の女の子として、何か恩返しをしたいんです!
  それでは、また事務所で会いましょう!』
 
 『ああ、何だか恥ずかしいので、返信はいりません。
  おやすみなさい。』
 
 春菜からのメッセージに、もっと頑張ろう、と元気を貰ったオレは「おやすみ」とだけ返した。
 ああそうだ、今日撮った写真をパソコンに取り込んでおこう。

 
 パソコンを立ち上げて、携帯を接続して写真を取り込む。
 部屋着だからスカートやら胸元が隙だらけだな........これはアルバムには飾れない。
 
 「あれ、この写真オレが写ってる........?」
 
 その写真はオレと春菜が、猫と縁側で昼寝している写真だった。親御さんに撮られていたのか、恥ずかしい........
 
 書類と写真を整理して、アルバムに綴じて、っと。
 春菜と家族と、猫のおかげでリフレッシュできたし、また明日から頑張ろう。
 お土産にいただいたお菓子を1つ口に入れて帰路についた。



 次の日、他のアイドルの付き添いから帰ってくると、机の上に置いてあったアルバムを見たブルーナポレオンのメンバーに春菜がからかわれて顔を真っ赤にしていた。
 オレはちひろさんに怒られた。


以上です、読んでくださった方、ありがとうございます。
しばらくしたらHTML化依頼とやらを出しておきます。

もうすぐシンデレラガールズ劇場のアニメが始まりますね。
あのセリフを聞けるのか楽しみです。

そして、4月10日は春菜の誕生日です。
だいぶフライングしましたが春菜おめでとう!!

おつおつ
はるにゃんはもっと流行るべき

おつめがね

まあまあ眼鏡どうぞはマジアワで聴けるぜ!

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