【艦これ】鹿島「いつか南洋の海で遠洋航海を」 (119)

鎮守府 某日

提督「…今日から新しい艦娘が配属になるのか」

龍驤「そうやで。ただなぁ、その事なんやけど…」

提督「どうした?なんか問題がある艦なのか?」

龍驤「…性能は問題ないとおもうんやけど、その…司令官が大丈夫なんかなぁと思ってな」

提督「どういう意味だ?」

龍驤「…あんまり言いたくは無いんやけど、今日来る娘なぁ、……れんsy…」

コンコン

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提督「入れ」

ガチャ

鹿島「提督さん、お疲れ様です。練習巡洋艦鹿島、着任しました」

提督「……」

龍驤(あちゃー、こりゃ、あかん…)

鹿島「あ、あのー、提督さん?」

提督「…我が鎮守府にようこそ。よく来てくれたな」

鹿島「は、はいっ!」

提督「我が鎮守府での君の活躍に期待する。これからよろしく頼むよ、鹿島」(手を差し出す)

鹿島「はいっ。これからよろしくお願いします、提督。鹿島、頑張りますね」(握手)

提督「今日は移動の疲れもあるだろう、自室でゆっくりと身辺整理をしながら疲れを癒してくれ」

鹿島「ありがとうございます、これからよろしくお願いします」(敬礼)

提督「…あすからよろしく頼むぞ」

鹿島「はいっ。(よかった、優しそうな提督さんみたい)」

提督「……」

提督「……龍驤、水をくれ」

龍驤「…やっぱりあかんかったか、ほら水や」

提督「…すまん。うっ…ッ…」

龍驤「あかん、しっかりせぇ…ほら、薬出してやったで」

提督「…ゴクッ…ゴクッ…はぁ、はぁ…すまん、助かった」

龍驤「練巡が来るって連絡があってから、こうなるとは予想済みや…しかし、上も何を考えてるんや。うちに練習巡洋艦送って来て」

提督「…仕方ないさ。いくらなんでも大本営からの配属命令を断るわけにはいかん。軍隊の組織ってのはそういうもんだ」

提督「ましてや、半人前の俺にはな」

龍驤「また、そう事言うて。司令官は一人前の司令官や!今までうちら指揮して戦ってきたやんから、自信もたんと」

提督「…指揮は取れても海軍士官とは半人前さ」

龍驤「…あれは司令官のせいやない。あそこで会敵したのは不幸な事故や」

提督「…俺がもっと早く気付けていれば、避けれたのかも…いやっ、きっと避けれた。あれは俺のミスだ」

ガシャーン!

龍驤「机の上の物に当たったらあかんて。(あかん、鹿島が着任して再発しよった。明日から大丈夫やろか?)」

提督「……」

翌日

鹿島「あっ、提督さん。おはようございます」

提督「…あぁ、おはよう」

鹿島「鹿島、今日から提督さんのお役に立てるように頑張りますね」

提督「…今日の任務はこの作戦書にまとめてある。頼むぞ。以上、質問なければ解散」

鹿島「は、はいっ…」

提督「……」

鹿島(…あれ?意外と堅物な人なのかな?)

川内「提督、おはよー」

提督「お早う川内。お前の場合はお早うよか、お休みじゃないのか?」

川内「あれ?よくわかったね、夜戦明けだって」

提督「毎晩、あれだけ夜戦夜戦騒いでてよくわかったも無いだろ。少しは夜静かに休め。休める時に休むのも任務だぞ」

川内「わかった、わかった。今度からそうするね。じゃあ、お休み」

提督「絶対わかってないだろ。まぁ、川内に寝ろっていうのは、馬の耳に念仏だけどな…お休み、川内。本日の夜間哨戒任務は1900、執務室にて伝達する」

川内「さすが提督!」

提督「寝坊するなよ。遅れたらほかの奴に行ってもらうからなー」

鹿島「……」

翌日 食堂

鹿島「あっ、提督さん。お早うございます」

提督「…あぁ、お早う」

鹿島「あの、提督さんご一緒しても…」

提督「…悪いな。もう食べ終わるんだ。他を当たってくれ。他の艦娘とのコミュニケーションも大事だろ」

鹿島「はいっ、すいません…お邪魔しました」

提督「ごちそうさま」

鳳翔「あら、珍しいですね。いつもは2杯は食べるのに」

提督「…私だって、たまには小食の日もあります。俺の残りでよかったら、食うか?」

赤城「いいんですか!?」(キラキラ)

加賀「さすがに気分が高揚します」

執務室

提督「…フーッ」

龍驤「…最近よう吸うな。やめたんやなかったんか?」

提督「…最近落ち着かなくてな」

龍驤「…鹿島の事か?」

提督「…彼女は何も悪くない。俺に積極的に話かけて来てくれるいい娘なんだがな…むしろ、冷たくあしらってる俺が悪いくらいだ…わかってはいるんだがな」

龍驤「…あまり考えん方がええ。このままじゃなんも良くならんよ」

提督「俺だって、意識しないようにはしてるんだがな…くそっ!…うっ、み、水…」

龍驤「!!ちょい待ち」

鹿島「…鳳翔さん。少しいいですか?」

鳳翔「あら、鹿島さん。どうかしました?」

赤城「…モグモグ、鹿島さんも、10時のおやつですか?」

鹿島「い、いえっ違います。あの、提督さんのことについてお聞きしたくて」

鳳翔「提督の事ですか?」

鹿島「はいっ、あまり提督さんとお話ししたことが無くて…どんな方なのかなって」

鳳翔「私もこう見えて、着任は赤城さんより遅いので詳しくは言えませんけど。どの艦娘にも気をかけてくれて良い方ですよ。時間があるときは鎮守府内を回って、皆さんの話をいろいろと聞いてくれてますし」

赤城「そうですね。着任したての艦娘は、慣れてないだろうからって特に気をかけてくれてたのに、おかしいですね」

鹿島「…私、何か提督さんに悪いことしちゃったのかな…」

鳳翔「そんな風には見えませんけどね。嫌っているというよりは避けているような気がします。あまり話たくないように見えますね」

鹿島「そんな…」

赤城「鹿島さんとだけ話たがらないなんて…もしかしたら」

赤城「提督は、鹿島さんに惚れてるのでは?」

鹿島「えぇ!?」

鳳翔「赤城さん、急に何を言って」

青葉「何やら面白い事になってますね」

赤城「あら、青葉さん」

青葉「どうも、恐縮です。司令官が鹿島さんに一目ぼれしたと聞いて」

鹿島「そんな、惚れられてるだんて///何かの間違えじゃぁ」

青葉「いやいや、あながち間違えでもありませんよ」

青葉「司令官は兵学校を主席卒業、そして最速で今の位置までのぼりつめた優秀な方だと聞いてます。若いのにそれだけ努力されたということは、勉学に励み色恋とは無縁の生活を送ってきた。鎮守府に着任されてからも、今まで司令官は鎮守府の為に、私たちの為に尽くされてきました」

鳳翔「そうですね。先ほども言いましたけど、皆さんの話を聞いて不満があることについてはできる限り改善してくださいましたし」

赤城「そうですね。おかげ様で、この鎮守府はとても良い環境になりました」

青葉「鎮守府も大分落ち着いてきて、司令官にも余裕が出来てきた今、目の前に着任した鹿島さんを見て司令官の体に電流が!なんて事になったに違いありません」

鹿島「やだ、そんな///」

青葉「だけど、今までそんな経験をしてきてない司令官はどう接していいかわからない。だから、あえて避けている。きっとそんな感じだと思いますよ」

鹿島「提督さんにそんな風に思われてるだんて、私///」

鳳翔「青葉さん、あまり勝手な事を言って。違ったらどうするんですか?」

鹿島「うぅ…そ、そうですよね。まだそうと決まったわけじゃ…」

青葉「だけど、嫌ってるようないのにあえて話さないなんてそれ以外に理由が考えつきませんけど」

赤城「…なら、確かめてみます?」

赤城「話す機会が無いのであれば作ってみてはどうでしょう?」

鳳翔「作るって、どうやってですか?食堂に直接提督をおよびして聞くのですか?」

赤城「もっと自然にです。明日の私の秘書艦、鹿島さんにお譲りします」

鹿島「えぇ!?い、いいんですか?」

赤城「はいっ。着任してもろくにお話もできてないようではこの先の任務にも影響が出てしまいます。ですから、この機会に提督と話して親睦を深めてください」

鹿島「赤城さん、ありがとうございます。私頑張りますね!」

赤城「頑張ってください。その代り、うまくいったら倉庫のボーキサイトを少々…うまくお願いしますね」

鹿島「…えっ?」

青葉「これは、面白ことになりそうですね~」

翌日

提督「…今日の秘書艦は赤城か。書類をごまかさないか注意しないとな。あいつはすぐにボーキをちょろまかそうとするからな」

コンコン

提督「赤城か?空いてるぞ入れ」

鹿島「失礼します」

提督「…なっ…か、鹿島か。どうした?こんな時間に」

鹿島「提督さん、本日は私、鹿島がおそばで秘書艦を務めさせていただきますね」

提督「…な、何っ…」

提督「…何を言ってるんだ。今日の秘書艦は赤城のはずだが…」

鹿島「その赤城さんから、お手紙を預かってまいりました」

提督「…見せてみろ」

提督へ

申し訳ありません、本日体調がよろしくなく秘書艦につけそうにありませんので、本日空いておりました鹿島さんに急きょお願いしました。
    
提督「…ッ…あいつ、だから食いすぎはするなと、あれほど…だ、だが。他に空いてる艦娘は…」

鹿島「あの、提督さん?」

提督「…そうか…きゅ、急にこんな事になって…しまった…が、着任して日も浅い中大変だろうが、今日1日よろしく頼む」

鹿島「はいっ、よろしくお願いいたします。(ふふっ、うれしい)」

提督(考えるな、目の前のことだけに集中しろ。いいか、何も考えるんじゃない)                                           

提督「……」(カリカリ)

鹿島「……提督さん?」

提督「……」(カリカリ)

鹿島「(ずっと忙しそう。そうだ、)提督さん、お茶お入れしましょうか?それともコーヒーの方がいいですか?」

提督「……」

鹿島「…ごめんなさい、お忙しいですものね」

提督「……濃いめのコーヒーを頼む」

鹿島「はいっ。濃いめのコーヒーですね。すぐに準備いたしますね。ふふっ」

提督「…はぁ、はぁ」

鹿島「どうぞ、提督さん」

提督「あ、ありがとう…そこに置いておいてくれ」

鹿島「ここにおいておきますね」

提督「…ありがとう」

……

鹿島(…もう1時間。一度もコーヒーに手を付けてくれてないなんて、やっぱり嫌われてるのかな)

提督「……」(カリカリ)

提督「…これは終わり…次は…おっと」

鹿島「あっ、だ、大丈夫ですか?」

提督「あぁ、すまない。(そうか、コーヒーを入れてもらったんだったな。一口くらいは飲んでおかないと入れてもらったのに悪いな)」

鹿島「あっ、もう冷たくなってしまってますから。入れ直してきますね」

提督「いやっ、いいよ。せっかく入れて貰ったんだ。飲まないと悪い。うん、冷たくても旨いなんて、コーヒーの淹れ方上手だな」

鹿島「ありがとうございます。提督さん♪」

提督「あ、あぁ」

提督「…どことなく懐かしい味だ…どこだったか、そうだトラックで寄港した時に皆で出かけて……」

鹿島「トラックですか。懐かしいですね。南洋の日々。提督さんも南洋に居たことが…」

ガシャーン

提督「……」

鹿島「て、提督さん!?大丈夫ですか?」

提督「…がはっ…ぅぅ…」

鹿島「キャァー!」

提督「うぅ…ぁぁ…」

鹿島「て、提督さん!しっかりしてください」

龍驤「何や、どないしたん?」

鹿島「龍驤さん。て、提督さんが…」

提督「……ヤメロ…オレニハデキナイ……ヤメテクレー…」

龍驤「あかん。すぐに医務室行って先生呼んでくるんや」

鹿島「は、はいっ」

医務室

鹿島「あ、あのー。提督さんは?」

龍驤「鎮痛剤打って眠ってるわ。とりあえず、大丈夫や」

鹿島「よかったぁ…」

龍驤「まったく、赤城も余計な事してくれたなぁ…」

鹿島「ごめんなさい。ただ、私提督さんと仲良くなりたくて」

龍驤「別に、鹿島が悪いわけやない。ただなぁ、司令官には南洋には苦い思い出があるんや…」

鹿島「南洋にですか?」

龍驤「…うちも、詳しい状況はわからんが、司令官の日誌を見てみぃ。なんで鹿島の事を避けてるのかちーっとは分かる筈や」

執務室

鹿島「これが、龍驤さんの言っていた日誌…すごい量。提督さん真面目なのね(だけど、この1冊だけ随分ボロボロ)」

日誌1冊目 1ページ

本日、晴れて海軍兵学校の門をくぐる。本日より海軍軍人としての生活が始まる。この先の厳しいであろう軍隊生活に些かの不安を感じてはいるが、立派な海軍士官となれるよう、日々邁進する覚悟である。

……

本日、初めて短艇を漕ぐ。短艇漕ぎは地獄と聞いては居たがまさにその通りであった。艇長である教官殿の怒号の中、必死に漕げどなかなか進まず。手の皮は擦れ、今筆を持つのも楽ではない。まだ短艇漕ぎは続くと思うと地獄であると、風呂で同期達と共に手に沁みる痛みに耐えながらひしひしと感じた

鹿島「……」

…………

本日、4年に渡る兵学校生活を終了し、兵学校を卒業することになった。今思えば長くそして短い4年間ではあったが、この4年間は充実した4年であった。私が恩賜の短剣を頂戴することになるなどとは、思っても見なかった。だが、頂戴したからにはその期待に応えるべく、明後日よりの遠洋航海においても邁進しようと思う。

……

遠洋航海初日。
後輩たちに見送られここ、江田島を離れる。後輩たちに対し大きく帽子を振り、別れを惜しむ。私も見えなくなるまで帽子を振っていたい気持ちではあったが、航海科である私にそんな余裕はなく、外洋へ出るまでは航法計算に追われてばかりであった

鹿島「提督さん、航海科の人だったんだ。私もいつか操艦してくれるかしら…って、やだ。私何考えて///」

……

鹿島(…提督さん頑張ってるんだな。なかなか順調な航海みたいね。この日誌はこれで終わり、次は、このボロボロの日誌か)




遠洋航海40日目

航海の最終地であるトラックを出航。一路呉への帰路に就く。今回はトラックまでの遠洋航海であり、この航海も折り返しである。残りの航海もよいものになるよう、頑張ろうと思う。明日は朝より見張り員の交代をせねばならぬため、早めの就寝を取る。明日は天候が宜しくない。荒れた洋上での見張り員は苦痛である

……

航海日誌43日目

鹿島(43日?提督さん、書き忘れたのかしら)

航海日誌43日目

43日目。果たして本当に43日目なのかは定かではない、あの海面に叩きつけられた衝撃から目覚めたベットの上、軍医から運ばれてから丸3日ぶりに目を覚ましたといわれたが、意識を失っていたのは本当に3日だけなのだろうか…

41日目、天候雷雨、波に船体が大きく揺れる。何かにしがみついて居なければ、吹っ飛ばされるような波がたびたび襲う…今思えば、あの時ロープか何かで固定しておけばよかったのでは無いかと、後悔してもしきれない。1300頃、波に船体が大きく揺れ、バランスを崩し転倒…ぶつけた左肩を抑えながら立ち上がる、直後m左舷洋上に何か発光する物を発見。双眼鏡にて確認。ここから先は記憶があいまいではあるが、人が、果たして人と呼んでいいのだろうか。人間のようなものが数人洋上に立っていた。あの荒れる洋上で微動だにもせずに。人に話しても信じてはもらえないだろうが、確かにそこにそれは居た

練習艦艦橋

提督「左舷洋上に浮遊物!…な、なんだあれは…」

航海長「…浮遊物だと?」

艦長「この天候だ。民間船籍の船に何かあったのかもしれんな。漂流物は何かわかるか?」

提督「…う、ウソだろ。ひ、人のようなものが立っております!」

航海長「海の上に人が立てるか!見張りがふざけた報告を…人だと!?艦長!」

艦長「…まさか、南洋方面にも表れるとは…。回避行動、総員戦闘配置!」

「総員戦闘配置、繰り返す総員戦闘配置。これは訓練に非ず」

艦長達の張りつめた空気から、ただ事ではない様子は見てとれた。あれは一体なんなのだろうか…未知の者と遭遇、だが私はこの時恐怖というよりはあの正体不明の敵に対して、一種の好奇心にも似た興奮を感じていた。今思えばとんだ過ちであったのだが…

提督「…あれはなんなんだ…ん?なんだあの光……‥!!発砲炎!」

艦長「回避行動、面舵一杯ー!」

正体不明の敵より砲撃、避けきれず一発が左舷後方に着弾。船体が大きく揺れる。被弾の状況を知らせる報が艦橋内に響き渡る。報告が一歩早ければ…今思っても後悔しきれない。後悔に打ちひしがれていた私を随伴艦に直撃弾との報と爆発音が現実へと引き戻した

艦長「一撃で轟沈か…応射開始。撃ち方始めー!」

提督「…砲撃命中せず。後方100に着弾。再び発砲炎!」

再びの砲撃の後、双眼鏡越しに相手が微笑んだように見えた。私はその時全身が恐怖で震え上がるのを感じた。直後、艦に直撃弾、ものすごい轟音と衝撃と共に俺は洋上に投げ出された。そして、今日私は意識を取り戻した。幸いにも投げ出され近くの島に漂着していたのを、この島に飛行場設営の為に派遣された設営部隊に助られたのだ

……

航海日誌44日目

私と同様に流れ着き他に助かった船員は教官同期含めわずか10名にも満たないとの事だった。あの嵐の海に投げ出され助かっただけでも奇跡に近いのだから無理もないのかもしれないが、海岸に打ち上げられいたほかの船員の遺体が回収され夜戦病院に運ばれてくる…共に兵学校から苦楽を共にしてきた仲間が変わり果てた姿で運ばれてくる。家族同然のように今までともに過ごした仲間たちが…

今回はここまで

乙 エンディングに期待


提督がPTSDを拗らせている一方で、恋愛脳を拗らせている鹿島のギャップに何か笑ってしまうww

日誌はずっと携帯してたん?それとも船は沈んでない?

>>34
日誌については、携行してます

航海日誌45日目

目を覚まして2日。起き上がるまでに回復する。昨日までに収容された亡き同期達56名はこの地にて眠ることとなる。本土まで共に連れ帰りたかったが、この南洋の地では伝染病の危険もある為仕方がない。せめて安らかに眠って欲しい。幸いにも、見張り員として記録の為に日誌を携行して居たため、眠る者達の名をここに記す


…………

航海日誌48日目
この密林へと待避し2日。攻撃はどうやら止んだ様である。だが、武器弾薬も乏しい我々に、再び現れた時、なす術はあるのだろうか

一昨日、滑走路としてはようやく形になったばかりのこの地に航空隊派遣の電を受け、朝より設営隊は大慌てであった。派遣される航空隊が基地上空に差し掛かる頃、東の空より敵が飛来。あの黒い飛行物体は今思い出しても航空機と呼んで良いのか分からない。まるであれ自身が一つの生物のようであった。航空隊が反転し空中戦が始まる。設営隊も僅かな対空火器にて射撃するも、戦闘機も対空砲火もまるで効果なく、航空隊は瞬く間に撃墜される。地上に向けても攻撃を始める。対空陣地は勿論、建物と呼べる物は瞬く間に瓦礫とかす。

降り注ぐ敵弾のなかなんとか密林地帯へ逃げ込み今に至る。しかし、設営隊含め今居る生存者は僅かに8名。武器弾薬もろくに無く、水も食料も無い

……航海日誌 55日目
密林地帯へ待避し1週間。敵の空襲に怯えながら、密林を逃げ回る。僅かな夜露で喉を潤し、木の根をかじり飢えを凌ぐ。後何日、耐えれば良いのか……

航海日誌58日目
遂に、一名、仲間が逝く。兵学校以来寝食を共にした仲間がまた1人永遠の航海へ旅立った。海軍士官として艦橋に立つ事を夢見ながら密林の中で生き耐えた。私もいずれはこうなるのかもしれない……せめて死ぬなら海で死にたい

航海日誌59日目
今日もなんとか生き延びる……戦友に生かされたというべきか……


…………
あれからなんにちたっただろうか まらりあにうなされうごくこともままならない

私もいよいよいくらしい ちちうえははうえさきだつふこうをおゆるしきださい
われはここでつきるとも あとにつづくものがあるとしんじて……
………………

鹿島「…………」

龍驤「…司令官なぁ、そのまま浜で倒れとったんや」

鹿島「

鹿島「…龍驤さん」

龍驤「トラック近海に出現した深海棲艦撃破の命令受けて出撃したら、うちの偵察機が偶々見つけてなぁ。何とか一命はとりとめたんや」

鹿島「……提督さんにこんな事があったなんて……」

龍驤「……司令官にとって、南洋の練習航海は忘たくても頭から離れへんのや」

鹿島「……そんなの知らなくて……練習巡洋艦なんて一番思い出したくないのに……私……」

龍驤「鹿島が悪い訳やない。あん時トラック近海に出現するなんて、誰も予想なんて出来んかった。うちも予想外やったし。それに通常兵器が効かん奴に練習艦じゃ逃げ切れんかった……どうしようもなかったんや。そやけど、やっぱ司令官が受けた傷はそんだけ深いんや」

鹿島「……だけど私……私……」

提督「……気にすることは無い。お前は慣れないなりに精一杯やろうとしただけだ」

鹿島「!?提督さん」

龍驤「司令官、もう大丈夫なんか?」

提督「…鎮静剤のお陰で落ち着いた。迷惑かけたな」

龍驤「かまへん。それよか、なんでドアごしなん?」

提督「直接顔を合わせなければ、まだ話せる」

龍驤「なるほど 」

提督「鹿島、すまなかった。迷惑をかけてしまって」

鹿島「…私の方こそすみませんでした。提督さんのことよく知らないのに勝手な事をしてしまって」

ここまで


どちらが悪いわけでもないのに悲しいなあ

想像してたより遥かに鹿島関係ない理由やった

トラウマとか心理的なものってそういうものだからなあ

提督「お前が謝る必要なない。君は君なりに少しでも関係を良くしようと努力したんだ、何も悪いことはない。悪いのは、着任して今までろくに話もせずに不安な思いをさせてしまった、俺の方だ」

鹿島「…提督さん…」

提督「…君が頑張ろうとしてくれた気持ちは良く分かった。…だが、俺にとっての練習艦隊での思いでは、そこに書かれてるとおり飢えと恐怖にまみれた地獄でしかない…今でもな…うっ…」

鹿島「!!提督さん」

龍驤「司令官!?」

提督「…はぁ…はぁ…大丈夫だ…」

龍驤「…ほんまに大丈夫なんか?」

提督「…あぁ」

鹿島「…提督さん、あの…私…」

提督「…出て行くとか言うならお断りだ」

鹿島「…えっ」

龍驤「はぁ!?何言ってるねん。せやけど、このまま鹿島置いとっても辛いだけやんか」

提督「…顔すら合わせられない現状じゃな…。だがな、連中にとってはそんなのは関係ない。深海棲艦との戦いは今も続いてるんだ。これからも激化の一歩をたどっていくだろう。そうなれば戦力の強化として新しい娘たちが最前線に送られてくるだろう。そんな右も左も分からない艦娘を一人前にしてやるのは誰の仕事だ?」

鹿島「…ぁっ…」

提督「…我が鎮守府にもそんな艦娘は多い。そんな艦娘達を連度不足で送り出して俺と同じような苦しみをさせるわけにはいかん…グッ」

龍驤「…司令官」

提督「…互いに辛いのは分かっている。だがな、そんな私情に左右されるほど戦いは甘くはない」

提督「…今後の戦況次第では、彼女たちにも出撃してもらう日が必ず来る。それがいつになるかは分からんが、その日の為にも彼女たちを早く一人前に育ててあげる必要がある。それを任せられるのは、鹿島。君しか居ない」

鹿島「…提督さん」

提督「…これは命令だ。提督として直に下す最初の命令だ。拒否はさせんぞ」

鹿島「…はいっ。練習巡洋艦鹿島、了解しました」

提督「…頼むぞ、鹿島。以上だ」

洗面所

提督「…うえっ…はぁ、はぁ…」

ザーッ

提督(鹿島、君も上司がこんな男で苦労をかける…駄目だ、戦いに私情は挟めない…私情を挟むほど甘くはない…)

……

「…ぅぅ…頼む、一思いに…楽にしてくれ…」

「…馬鹿を言うな。一緒に呉に…母港へ帰るんだ…きっと、時機に救援が来る。それまでの辛抱だ…」

「……ぅぅ…た、頼む。こ、こいつで…」

「…バカッ、はやまるな!きっと、助かる…助けはくるんだ…」

ズダーン!

「…あぁ…うわぁぁぁぁぁぁー!ば、馬鹿やろう。内地で待ってる奥さんはどうするんだ…おなかの子は…くそぉ……」

……

「…ふざけるな。こいつは兵学校から一緒に頑張って来た仲間なんだ。せめて亡骸だけでも家族の元に、故郷に埋めてやりたい…」

………

「やめろやめてくれ…仲間を食うなんて俺には出来ない…やめろ、やめてくれ…」

「だが、こうしなきゃ俺たちは死ぬ…俺たちが生き残るにはこうするしかないんだ……お前も、こいつの分までと思うなら…食え、食って生き残るしかないんだ…」

「あぁぁぁぁぁぁ…」

……

提督「…ぐはっ…うぇっ…はぁ…はぁ…(…そう、甘くはないんだ…)」

今回はここまで

ウミガメのスープ

龍驤「とりあえずは、ひと段落ってとこか?…まぁ、とりあえずはよかったんやないか?出てかなくてもようなって」

鹿島「…はいっ。だけど、私本当にこのまま残ってもいいんでしょうか…このまま居ても提督さんにつらい思いをさせてしまうだけじゃ…」

龍驤「当たり前や。その司令官がそれを覚悟で鹿島に若い者の育成を頼んだんやで…鹿島も辛いかもしれんけど、期待に応えなぁ。うちも事情を知っとる身や、できる限り助けたる」

鹿島「はいっ」

龍驤「その意気や」

龍驤「…さて、とりあえず赤城をたたき起こしてこなぁ」

鹿島「…赤城さんを?」

龍驤「こんな状況じゃ、鹿島に秘書艦任すのは無理やろ?それに、今日の秘書艦は本当なら赤城の予定や。青葉あたりが余計な事吹き込んだとはいえ、それに乗った赤城も悪い。責任取らせなぁ。ほな、ちっくら行ってくるわ」

鹿島「…赤城さんと青葉さん…あっ、そうだ…私が…待ってください」

龍驤「どないしたん?」

鹿島「…私が行ってきます。元はといえば、私が提督さんと話す機会が欲しくて無理して代わってもらったんですから…ちゃんと事情を説明して謝ってきます」

龍驤「そ、そうか。なら、鹿島に任すわ」

鹿島「はいっ、では行ってきます」

廊下

鹿島(危ない危ない。龍驤さんに本当の事が知れたら、また大変な事になっちゃうところだった…)

……

鹿島(本当の理由か…)

早朝

赤城「提督、お早うございます。秘書艦赤城、出頭しました」

提督「ご苦労。早速だが、本日の任務および訓練予定だ。各艦に連絡を頼む」

赤城「了解しました…あの、提督すいませんでした」

提督「鹿島にも言ったが、何も悪いことはしてないんだ。気にするな」

提督「…それより、鹿島はどうだった?なんか言ってたか?」

赤城「いえ、今日秘書艦を続けるのは無理なので代わって下さいとお願いされた以外は特には…普通そうでしたけど…」

提督「…そうか、ありがとう。任務伝達の方頼むぞ」

赤城「はいっ」

提督「……」(カチン)

赤城(…提督は、鹿島さんが好みじゃなかったのかしら?龍驤さんみたいに、無い方が好みなのかしら)

提督「…ふーっ(部下には平等に接するようにはしてたんだがな…鹿島、すまない…)」

廊下

鹿島「あっ、お早うございます。青葉さん」

青葉「鹿島さん、お早うございます。あら?今日は出撃ですか?」

鹿島「はい。経験の少ない娘たちと練習航海に」

青葉「おぉ、さすが鹿島さんですね」

鹿島「そうですね……練習航海は大事ですからね…」

青葉「?鹿島さん?」

鹿島「えっ、あっ、何でもないですよ。他の娘たちを待たせしまいますから、私行きますね」

青葉「あっ、ご気をつけて」

鹿島「ありがとうございます」

青葉(鹿島さん、なんか様子がおかしいなぁ…はっ、まさか。司令官にフラれた!?)

鹿島(…提督さん、私、頑張ります)

ここまで

龍驤「今日の報告や」

提督「ありがとう。……ここの所、新任の練度も大分上がったな」

龍驤「鹿島が頑張ってくれとるお陰や」

提督「……鹿島には、負担をかけるな……」

龍驤「辛いんは、わかるけど、礼の一つもかけてやったらどうや?」

提督「……そうだな」



その夜

提督「…今日は後は1人で大丈夫だ。先に休んでくれ」

龍驤「ほな、先に休むわ。司令官も余り無理せんとな」

提督「分かってるさ。お休み」
……

提督「……ふぅ。……もうこんな時間か。以外とたったな……」

提督(一息つくか)

廊下

提督(…ポットが空だったとは迂闊だったな。食堂の給湯機ならあるだろう)

カツカツ

提督「(ん?何で会議室の明かりが点いてるんだ?)……誰か居るのか?消灯後だぞ」

鹿島「す、すいません……提督さん?」

提督「…鹿島」

提督「……こんな所で何をやってるんだ?」

鹿島「…すいません、遅くに。明日の遠洋こうか……訓練内容を纏めていたら、こんな時間になってしまって……」

提督「……1人でか?」

鹿島「はい。私が提督さんのお役にたてるのはこのくらいしかありませんから……」

提督「……」

提督「……少し待ってろ」

鹿島「……え?提督さん?」

……

提督「……ほら」

鹿島「えっ?これ…」

提督「コーヒーだ。とりあえず、甘めにはしてきたが、口に合うかは保証できないがな」

鹿島「あ、ありがとうございます」

提督「……俺も一息つきたかったからな。ついでだ」

鹿島「……美味しいです」

提督「…そうか。口にあってよかったよ」

鹿島「はいっ」(ニコッ)

提督「…………ありがとう、鹿島」

ここまで

いいですね

提督「……遅くまで、頑張ってくれて。迷惑をかける」

鹿島「迷惑だなんて。私は自分なりに出来る事をしてるまでです」

提督「……だからと言って、無理をしなくても」

鹿島「提督さんだって、こんな時間まで、頑張ってるじゃないですか」

提督「………フッ…お互い様か」

鹿島「…ふふっ。そうですよ」

提督「……だが、明日も任務があるんだ。休める時はしっかり休め。疲労が溜まったままだと、思わぬミスをおかすぞ 。一瞬のミスが重大な危機を招く事もあるんだ…」(ギリッ)

鹿島「…提督さん 」

提督「………すまない。また、あの時の事を…」

鹿島「提督さん……過去に捕らわればかりもよくないです」

提督「お前に何がわかる!?寝食を共にした仲間を目の前で失って……生き延びる為に……その…血肉を喰らって……死の淵から戻ってきたんだ。今も仲間の血肉は俺の身体のなかに残ってるんだ。忘れられるものか…」

鹿島「……私もあの戦いでの記憶を忘れた事なんてありません。目の前で沈んだ仲間の事も、私の中で散った人達の事も」

提督「…鹿島」

少しですが、ここまで

おつ

鹿島「…あの戦いで私は練習巡洋艦として生まれながら、本来の任務にはあまり就けずに危険な任務をこなす事になりました……私は生き残れましたけど、香取姉と妹の香椎を、多くの仲間を失いました。艦娘として生まれ変わってもその記憶は今も私の中で消える事なく残っています」

提督「……そうだったな。君も姉妹を……」

鹿島「あの戦いの事は思い出したくはありませんけど、あの時の記憶があるから、今度はこの海で練習巡洋艦として、提督さんのお役に立つ事が出来て嬉しいんです」

提督「……」


提督「……新たな海か…… だが、俺の戦友はここには居ない」

鹿島「……居ますよ。提督さん、貴方の中に」

提督「…………そうだったな。俺の中で共に生きてるんだな。今も一緒に」

鹿島「だから、提督もこの海を進みましょう」

すいません。酉を度忘れして定まってませんが、
>>1です

提督「……思い出したくはないからと、避けていた君にこんな事を言われるとはな」

鹿島「…ふふっ。そうですね、なんか私も複雑な気分です」

提督「……だか、俺は不幸な偶然が重なったとはいえ、練習航海を終えてない半人前だ。君たちと同じ海には立てない」

鹿島「…提督さん」

鹿島「なら、行きましょう。遠洋航海」

提督「何っ?」

鹿島「…今は無理かもしれませんけど、いつか平和になったら。私が提督さんを一人前の士官にしてみせます」

提督「…鹿島」

鹿島「私だって、次代の士官を育てる為に生まれた艦ですから。きっと立派な士官にしてみせます」

提督「……ありがとう。鹿島」

鹿島「はいっ。任せて下さい♪」

提督「……だが、いくら艦娘とは言え、年頃の女性にしては中々大胆な申し出だな」

鹿島「えっ?…あっ、いや、今のはそんな///わ、私、つ、付き合ってもないのに//」 (あたふた)

提督「……外洋に出るのは、あの時以来だ。上手く動かせる保証はないからな」


鹿島「は、はいっ!……えっ、今なんて…」

提督「…今日も出撃翌予定なんだから、少しでも休め。以上、解散」

ここまで

翌日

龍驤「司令官、お早うさん」

提督「…おはよう」

龍驤「なんや、眠そうやな。むりせんと、言えば手伝ったのに」

提督「いやっ、業務は終わってたんだがな…」

コンコン

提督「入れ」

鹿島「…お早うございます。提督さん」

提督「…あぁ、お早う鹿島…」

鹿島「……」

提督「……」

龍驤「??どないしたん?」

鹿島「…あっ、そ、その…これより、本日の練習航海に向け出撃します!!」(ビシッ)

提督「…そ、そうか。了解した」

鹿島「あ、あの…」

提督「鹿島、昨日の件だが…」

鹿島「……」

提督「……」

龍驤「!(ははーん)」

提督「…鹿島、どうした?」

鹿島「提督さんこそ…」

提督「…あっ、いやっ……この件は後で話そう、今は任務が先だ」

鹿島「そ、そうですね!そうしましょう!鹿島、抜錨します」

提督「あぁ……鹿島」

鹿島「は、はいっ!」

提督「……よい航海を」

鹿島「はいっ」(ニコッ)

提督「…ふうっ」

龍驤「どうりで、寝不足な訳や」(ニヤニヤ)

提督「…馬鹿を言うな。そんなんじゃ…」

龍驤「隠さんでもええって」

提督「だからな…」

コンコン

提督「…ん?入れ」

「久しぶりだな、提督」

提督「井之上教官!お久しぶりです」

井之上「兵学校以来だな。あの、小僧が立派になったもんだ」

提督「いやっ、自分なんかまだまだです…龍驤、コーヒーを」

龍驤「わかったで」

提督「…それで、本日はどうされたんですか?」

井之上「教え子の顔を見に来ては悪いいのか?」

提督「いやっ、そういうわけでは…申し訳ありません!」

井之上「いやっ、冗談だ。今日は仕事で来た」

提督「仕事ですか?」

井之上「あぁ、去年から海軍省の人事局で勤務しててな」

提督「…鎮守府に着任してこの夏で3年、そろそろかと思っておりました」

提督「…どこですか?」

井之上「正式な辞令書はまだだがな…また、現場に出てもらう事になる」

提督「…現場ですか」

井之上「そうだ。提督、7月31日付をもって本鎮守府、提督の任を解き、8月一日付けをもって北東方面艦隊直属、第5哨戒艦隊、第32戦隊、第106哨戒艦航海長の任を命ずる」

提督「…哨戒艦隊ですか」

どうなるの?

提督「……(哨戒艦隊なんて名前は立派だが、早い話が深海棲艦相手に用無しとなった残存艦艇の寄せ集め。ただのお飾りなら航海長にするのも経験ないお飾りで言って事か。俺にはお似合いかもな)」

井之上「…あの件は私も聞いて居る。再び洋上に出る事に抵抗があるかもしれんが…現状はそんなことを気にもしていられない。今は少しでも艦艇勤務経験がある人材が必要なんだ」

提督「…えっ?お飾りではないんですか?」

井之上「近年は艦娘の活躍もあって近海での深海棲艦の出現は激減した。おかげで近海なら船による移動や漁業も可能なぐらいにはなった。だが、出現する可能性が0になったわけでない。今も、まれにではあるが出現するケースもある」

提督「……なるほど」

提督「…艦娘を近海の哨戒任務に裂くには資源も艦娘も余力があるわけではないし、軍事機密に近い艦娘を民間人の目に余り触れさせたくもない…だけど、万が一民間船舶が深海棲艦に襲われたんじゃ海軍のメンツが立たない…なら、残ってる艦艇でパトロールするってわけですか…ですが、通常艦艇の武装では深海棲艦には無力では?」

井之上「そんなのはわかっている。だが、目くらましぐらいにはなる。民間船舶が逃げるための時間を稼ぐぐらいは何とかなるだろう」

提督「…相手と遭遇したら最後、時間稼ぎの盾となって沈めと…」

井之上「…酷な任務だとは分かっている。だが、現に船を出したいという問い合わせやなんで海軍は軍艦を動かさないんだという電話が毎日のように海軍省に掛かってくる。この戦時下で経済も苦しい状況だ、他の雇用も絶望的な状況じゃ海運業や漁業に関わる人にとっては海に出たい気持ちはよくわかる…この状況下で海軍が艦の一隻でも動かさんじゃメンツが立たん」

提督「…面子の為に死ねと。兵隊はいつの時代も駒ですね」

井之上「…酷な命令だとは私も十分承知だ。教え子にこんな事を言いたくは無い。だが、今は艦艇勤務経験がある人材が不足している。最近は兵学校でも最低限の海軍の知識と艦娘の指揮に関する事しか教えないから、現場に出れる人間がほとんど居ない…とこのままでは艦隊運用に支障が出てしまう」

提督「……私でよければ、やりましょう」

井之上「…すまない」

提督「……私もこのままずっと、安全な鎮守府に居るわけにはいきませんからね」

ここまで

貴重だと言いながら船乗りを食い潰すのか、愚策がすぎる

井之上「…正式な辞令書についてはおって発刊する」

提督「私の後任は?」

井之上「まだ未定だが、来週までには決まるだろう」

提督「…わかりました」

井之上「…では、失礼する」

提督「ご苦労様です」

井之上「……すまない。提督着任の時もそうだったが、勝手に振り回してばかりで」

提督「…上が決定したのであればそれに従うしかありませんからね。それに、私も海軍の軍人です。もしもの覚悟は兵学校の門をくぐった時につけてあります」


井之上「では、健闘を祈っているぞ」

提督「はいっ。ご苦労さまでした」

ガチャっ

井之上「おっと」

「きゃっ」

井之上「…失礼した。けがはなかったかな?」

鹿島「はいっ、大丈夫です。こちらこそすいませんでした」

井之上「君は提督に用事であったのだろう。長らくすまなかったな」

提督「…鹿島」


提督「…出撃したんじゃなかったのか?」

鹿島「…すいません。私としたことが、今日の作戦指示書を頂いてなくて」

提督「あっ、すまん。渡し忘れていたな…えっと、これだ」

鹿島「ありがとうございます……」

提督「……聞いてたか?」

鹿島「………はいっ」

提督「…そうか」

鹿島「……行ってしまうんですね」

提督「…あぁ」

鹿島「……」

提督「……もう鎮守府に来て3年、ちょうど異動の時期だったんだ。どのみち鎮守府を去る運命だっただろうな」

鹿島「提督さんが居なくなったら、私たちはどうするんですか!?」


提督「…俺が居なくなっても後任の提督が次の指揮を引き継いでくれる。別に鎮守府がなくなるわけじゃ無いんだ」

鹿島「…やっと、やっと。提督さんとも話せるようになったのに……こんなのあんまりです。他の娘たちだって…」

提督「君たちの好意はありがたいが…だからこそだ。情が深ければ、それだけいざという時がつらくなる」

鹿島「…ですけど…」

提督「…指揮官は時には非常な決断を下さねばならん。付き合いが長ければそれだけ情が生じる…。俺はそれを嫌ってほど経験してきた」

鹿島「……」

提督「指揮官ってのは、長く同じ所にとどまらない方がいいんだ…」

鹿島「……でも、わざわざ艦艇勤務だんて…提督さんぐらい優秀な方ならいくらでも…」

提督「別に優秀だったから提督になったわけじゃ無い…死の淵から帰ってみれば、海軍はボロボロ、人も資材も足りない。そんな中で数少ない若手の将校がたまたま残っていた…しかも兵学校の成績という書面だけでは優秀、理由をつけて昇任もさせられた…そんだけの理由だ」

鹿島「……」

提督「…それに元々航海科、現場の人間だ。あるべく所に収まるだけさ」

鹿島「……です」

提督「…ん?」

鹿島「…ダメです!提督さんを行かせるわけにはいきません」

提督「…鹿島…だが、俺も君も軍属だ。軍属であるなら…」

鹿島「…上手く操艦できる自信がないないなんて言ってた提督さんを、このまま送りだすなんてできません!」

提督「…鹿島」

鹿島「…行くのであれば、しっかりと航海術を磨き直してから行ってください。他の娘は許しても、練習巡洋艦である私が許しませんからね」

提督「…ふっ、さすが士官を育てるために生まれた艦娘だけはあるな…だが、ろくな船も無いここじゃ中々…」

鹿島「…提督さん、私を誰だと思ってるんです?」

提督「…そうだな。よろしく頼むよ、教官」

鹿島「…提督さんとはいえ時間があまり有りませんから、スパルタで行きますからね」

提督「…覚悟の上だ」

鹿島「…練習航海から戻ったら早速いきますからね」

提督「あぁ。待っている」

鹿島「…では、行ってきますね」

提督「あぁ。…鹿島!」

鹿島「…はい?」

提督「……ありがとう」

鹿島「…はいっ」(ニコッ)

鹿島(…提督さんはあの時覚悟を決めた目をしてた…とても引き止める事なんて私にはできません…なら、私が出来ることは一つだけですから)

ここまで

乙乙です

夜 執務室

提督「…進路1-6-0、速力20ノット…で3時間…本艦の現在位置はこの地点」

鹿島「…正解です」

提督「この位の航法計算は朝飯前だ」

鹿島「ふふっ、さすが提督さん」

提督「…実務経験はほとんどないけどな」

提督「……」

鹿島「…次行きますよ、今度は簡単じゃないですからね」

提督「…あぁ」

鹿島「……次は…」

ドアの外

龍驤「……」

提督「久々に、頭を使うような事をすると疲れるな」

鹿島「…ふふっ、お疲れ様です」

提督「…だが、さすが鹿島だ。そこいらの教官よりわかりやすい」

鹿島「ほめても何もでませんよ?」

提督「…本当の事だ。丁寧だし、何より間違えても拳が飛んでこないからな」

鹿島「…もう、提督さんったら」

提督「……」

鹿島「……提督さん?」

提督「…いやっ、何でもない…ただな、こうやって練習巡洋艦である君に教わっていると…あの頃の事を思い出してな」

鹿島「…ぁ…」

提督「…い、いやっ。気にするな。君といても、昔ほど発作が起きるような事はない」

提督「…少しは慣れてきた」

鹿島「慣れてきたなんて、女の人に向かってひどいですよ」

提督「うっ、すまない」

鹿島「…もう、提督さんたら」


提督「…あの南洋は地獄だったが、寝食を共にした仲間との最初で最後の航海だったから…大切な思い出もあるんだ」

鹿島「……」

提督「…いずれ共に立つはずだった場所に、ようやく立つ機会が来たんだ…あいつも立たせてやりたくてな…」

鹿島「…提督さん」

提督「…暖かい南洋ではないけどな」

ここまで


このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年03月20日 (月) 18:06:37   ID: d4n5Q8FP

続きが気になる

2 :  SS好きの774さん   2017年03月30日 (木) 12:59:47   ID: jlfhajIA

頑張ってください!

3 :  SS好きの774さん   2017年04月04日 (火) 07:14:35   ID: w5O4vJpg

練習艦は前線に出ないぞ

4 :  SS好きの774さん   2022年11月08日 (火) 18:00:12   ID: S:uAu4bu

1941年12月10日、太平洋戦争開戦時第4艦隊独立旗艦

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