三船美優「許してくれる貴方へ」 (16)
おやすみなさい。
そう言って、それから十数分。
簡単にシャワーを浴びて、トイレへ行き、そうやって十数分を過ごし経て。
そうして今。私はベッドの上、ごろんと横になっている。
上下の下着とワイシャツを――以前残業続きで連日事務所へ泊まり込んでいたプロデューサーさんへ『洗いますから』なんて言って、新品のワイシャツと交換で渡してもらったワイシャツを、それだけを身に纏って、ごろんと。
横になって――肌蹴たワイシャツをきゅっ、とつまんで抱き締めるようにしながら横たわって、そして、見る。
ベッドから少し離れた机の上、そこへ置かれたもの。置かれたそれの、まだ消えない光を。
おやすみなさい。そう言って別れながら、けれど、未だに通じたままのその証を。
見る。見て、そして笑む。
自然と溢れる笑み。ドキドキと高鳴る鼓動。熱く昂って、どうしようもなく濡れていく身体。
それを自覚して、自覚しながら、抑えることなく流される。
この熱へ、高鳴りや昂り、どうにもならない衝動へすべてを委ねて。したいまま、伝えたいまま、贈りたいままに呟きを。
「……好き」
「大好き。……大好きです」
「誰よりも……何よりも……他のどんなすべてよりも」
「プロデューサーさん」
「……愛しています」
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囁くようにそっと。けれど私の声を受け取るそこまで間違いなく届くよう、はっきりと。
呟く。私の想い。私の、本当の本心を。
「好きです」
「プロデューサーさんのことを考える度、それだけで甘く痺れてしまうほど」
「プロデューサーさんと目が合う度、それだけでその場へ崩れ落ちてしまいそうなくらいに震えてしまうほど」
「プロデューサーさんに触れられる度、それだけで他のどんな誰も、何もが消えて、私の中がプロデューサーさんだけに満たされてしまうほど」
「好きです」
「好き。……大好き」
「求めてもらえたなら……求められたすべて、私の何もかも全部をあげたいと思えるほど」
「好きです……好きで、大好き……」
プロデューサーさんとの繋がりが欲しくて。他の皆が持たない特別が欲しくて。お願いします、とプロデューサーさんへ求めて、そうして叶えてもらえたこれ。
仕事を終えた後。プライベートな、お互いそれぞれの家へ居る時にだけ叶う、パソコンを介した通話。
他の皆も叶えられる携帯電話での、ではなくて。特別でもなんでもない仕事の中でのもの、でもなくて。
私だけの、プライベートなプロデューサーさんとの、夜の交わし合い。
そして。
そして、今。
今この、いつからか始まったこれ。
おやすみなさい。
私からのその言葉。……プロデューサーさんに切らせてしまうのは忍びなくて。プロデューサーさんから切られてしまうのは悲しいから。……だから、いつも最後は私から。私のその言葉を最後にして、通話は終わり。
……だったのだけど。
いつだっただろう。確か、私が本当に切り忘れてそれに気付かずいたのが一番初めだったはず。
その時は通話を切り忘れたのに気付いていない私が『もっと話したかったのに……』なんてことを呟いてしまって、それを聞いたプロデューサーさんが『なら、もう少し話しましょうか』って言ってくれて。恥ずかしくて、熱くて、でもとっても嬉しくて。そんな感じ、だったと思う。
それが初め。そしてそれが最後になるはず、だったのだけど。
「早く会いたい……」
「会って……話して……触れたい……」
「恋しいです……」
「会って、貴方を感じたい……」
「話して、貴方と二人で笑い合いたい……」
「触れて、貴方の身体の温もりを感じたい……」
「プロデューサーさん」
「恋しいです。……好きで、大好きで、どうしようもなく恋しいです……」
今もこうして続いている。
一度の過ちだったはずのこれが、もうすっかり、毎夜のことになっている。
おやすみなさい。その言葉をきっかけに始まるこれが、もう何度も何度も繰り返されている。
……分かってしまったから。
プロデューサーさんは受け止めてくれること。
私が何を漏らしても。他の誰かには絶対に聞かれたくない音――衣擦れやシャワーの、熱く濡れた喘ぐ声の、胸へ宿したプロデューサーさんへの想いの――そのすべてを、プロデューサーは受け止めてくれる。
受け入れてはくれないけれど……でも、受け止めてはくれる。否定せず、無かったことにせず、応えられなくても聞いていてくれる。
だから、繰り返す。
何度も何度も。毎夜毎夜。
おやすみなさい。その言葉の後から始まる、このこれを。
「貴方の腕……」
「絡ませたい……。私を支えてくれる貴方の腕へ、私の腕を絡ませて歩きたい……」
「貴方の胸……」
「抱き着きたい……。私に安心をくれる大きな貴方の胸に、私の身体を受け入れてほしい……」
「貴方の唇……」
「キスしたい……。私を魅せていつも甘く蕩けさせてしまう貴方の唇と、私の唇を重ねさせてもらいたい……」
「貴方が……」
「プロデューサーさんが欲しいです……」
初めの数回は止められた。
マイクのすぐ傍で服を脱ぐ私を、扉を閉めることもせずトイレへ入る私を、普段は決して口にできないような声や言葉を口走る私を、プロデューサーさんはその度止めていた。
慌てた声で。わたわた、と。焦るその様子が見えていないのに分かるような、そんな声で。
でもいつからか。
毎夜続くそれに。毎夜、それを繰り返す私に。とうとうそれが故意のことなのだと気付いた……故意のことなのだと、そう納得せざるを得なくなったプロデューサーさんは、これを止めなくなった。
止めずに……そして、切らずに。受け止めてくれるようになった。
プロデューサーさんへの、普段は言えないような想い――まっすぐ純粋な眩い好意、粘つくように泡立つ際限ない愛欲、明るいものも暗いものも、そのすべてを吐き出せる。他の誰でも何でもないプロデューサーさんへ、それを、吐き出せる。
それが、もう、たまらなくて。
どうにもならないほど気持ちよくて。どうしようもないほど心地よくて。
そしてそれを、受け止めてもらえる。
受け入れてもらえるわけじゃない。でも……受け止めてもらえる。
切らずに。聞いていてくれる。この夜の次の日には必ず、私と顔を合わせて、そして頬を赤く染めてくれる。
それが、幸せで。
私の大好きなプロデューサーさんが、私のことを受け止めて、そして私のことを意識してくれる。
私のことを、一人の女として見てくれる。
それが、もう、たまらなく幸せで。
幸せで。幸せすぎて――だから、もう、止まれなくて。
もっと聞いてほしい。もっと知ってほしい。もっと受け止めてほしい。
もっと。もっと。もっと、プロデューサーさんを私で満たしたい。
そう思ったらもう止まれなくて。
だから、繰り返した。
恥ずかしいことを、むしろ率先して。他の人には絶対に知られたくない……でも、プロデューサーさんには知ってもらいたい。そんな、乱れた秘密をむしろ積極的に晒して贈った。
全身に感じる恥ずかしさに焼かれながら、でもそれ以上の激しく深い昂りに燃え上がって。
そうして繰り返した。
プロデューサーさんが止めずにただ受け止めてくれるようになるまで。プロデューサーさんが、受け止めてくれるようになってからも。
何度も。何度も何度も。
「……今日は、プロデューサーさんと会えませんでした……」
「すれ違いばかりで……夜の通話は、できましたけど……」
「でも、足りません」
「声だけじゃ足りません……貴方がまだかすかに残るこのシャツを纏っているだけじゃ……全然、足りません……」
「抱き締めてほしい……壊れてしまうくらいに強く抱き締めて、そして囁いてほしい……」
「『大好きだよ』って……『愛してる』って……大好きな、愛おしい貴方から……囁いてほしい……」
「愛してほしいです……プロデューサーさん……」
プロデューサーさんは受け止めてくれる。
私を、どんな私のことも。
優しく温かく迎えてくれて、そしてしっかりと受け止めてくれる。
すべてを委ねて、私の何もかも全部を貴方のものにしてほしい。そんなふうに願ってしまう重たい私を、けれど『深い想いを抱けるのは貴女の良いところだと思いますよ』なんて、そんな言葉で包んで優しく認めてくれる。
そんなプロデューサーさんに甘えて。
受け止めてくれる。その安心と信頼と、プロデューサーさんの優しい在り方に甘えて。そうして繰り返す。
何度も何度もこの夜を。これまでも。今日も。きっとずっとこれからも。
「……プロデューサーさんは、私を救い出してくれた人」
「私を見付けて。私をアイドルへ導いて。私を、輝かせてくれた人」
「そんなプロデューサーさんへこんなことを思うなんて、それは裏切りみたいなものなのだと、そう、分かってはいるけれど……」
「でも、思う。思うんです」
「アイドルになりたい。皆の、ではなくて、貴方の……ただ一人、貴方だけの」
「貴方を愛して貴方に愛される、そんな幸せな……貴方にとって唯一の、最愛の存在になりたい……」
「貴方に溺れたい。貴方にも、私に溺れてほしい」
「結ばれたい」
「……なりたいです。プロデューサーさんの、お嫁さんに……」
言葉を紡ぐ度、プロデューサーさんへの想いに高まり昇っていく心。
身体もそれに導かれて熱く高く。濡れて、焼けて、自分ではもうどうにもできないほど染め上げられていく。
湿り気を帯びた熱い息を吐き出しても、底から湧いてくる衝動に焼かれて冷めていかない。もぞもぞ、と手や足が動いてしまうのを止められない。私のいろいろが溢れて漏れ出していくのを抑えられない。
私の中のすべてが、プロデューサーさんに埋められていく。
「明日、貴方と会えたなら……その時、私はきっといつも通り」
「いつものように挨拶を交わして。いつものように仕事の連絡をして。いつものように、他のアイドル達がするのと変わらない……普通のプロデューサーと普通のアイドルのやり取りを、貴方とするはずです」
「でも……」
「でも、プロデューサーさん」
「私は思っています」
「貴方としたい。……挨拶を交わしながら、貴方に抱き着き貴方に抱き締められたい」
「連絡を告げ合いながら、椅子へ座る貴方の上へ乗っていたい。……一つ言葉を紡ぐ度、一つキスを降らせたい」
「普通のプロデューサー。普通のアイドル。そう振る舞う陰で、貴方と普通から外れたい。……男と女の関係で、貴方と、結ばれたい」
「そう思っています」
「貴方を愛したい。貴方に愛されたい。……貴方への想いに焦がれながら、私は、きっと」
本当の本心。もう何度目になるのかも分からない告白を、また、漏らす。
私をちゃんと受け入れてくれるプロデューサーさんは、きっとこれで分かるはず。
明日顔を合わせた私の目が潤んでいるその訳。頬がうっすら紅に塗られて、手がおずおずプロデューサーさんの身体へ伸びようとしてしまっているその理由。私が、叶う限り傍へいようとするその意味を。
分かってくれる。そして、プロデューサーさんは優しいから。応えてくれることはできなくても、受け止めて……許すことのできる最大限、私のことを許してくれる。
昔『好き』を……異性としてのそれではなくても、私がほしいその言葉を贈ってくれたように。
少し前。移動する車の中で、その手を私の手と重ねてくれたように。
つい最近。他には誰もいない夜の事務所の中、ソファの上で隣へ寄り添い、眠ったふりをしてしなだれ掛かった私を、拒まず受け入れてくれたように。
最大限を。……だんだんと大きくなって、だんだんと私の願いへ近付く最大限を、明日もまた許してくれるはず。
(明日は、どこまで叶えてもらえるのかしら……)
明日のその時を想像して、その期待に昂る。
胸が、もう痛いくらいに高鳴る。お腹が、甘く蕩けるような痺れに震える。全身が、誰より大事で何より大切なプロデューサーさんへの想いに焼かれていく。
好意が、恋情が、愛おしさが止まらない。
「……プロデューサーさん」
プロデューサーさんへ。
今も私の全部を聞いてくれている。私の何もかもを受け止めてくれる。私の、最愛の人へ。
贈る。
懸けて。注いで。捧げて。
私の持てるありったけすべてを向けて。
できる限り。尽くせる限り。叶う限りの想いのすべてを贈る。
プロデューサーさんへ、私の愛を。
「愛しています……」
「誰よりも、何よりも……たとえ他のどんなすべてを失うことになっても構わない。そう、思えるほど……」
「愛しています」
「貴方の隣で生きたい。貴方の子供を産んで、貴方の横で死んでいきたい」
「貴方がいい。……もう私には、貴方しかいないんです……」
「好き。……大好き、です……」
「プロデューサーさん……愛しています……」
以上になります。
お目汚し失礼しました。
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以前に書いたものなど。
もしよろしければどうぞ。
おつおつ、やはり美優さんはエロい
重さが滲み出ててゾクッとした、乙
乙です
乙
そのうちおちんちんがおまんまんに入ってそう
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