黒川城「……」

熊本城「先の所領襲撃、死者こそでなかったものの……」

殿「……」

熊本城「次も耐えられるとは限りません。いえ、率直にいって厳しいでしょう」

殿「……」

熊本城「だからこそ確かめてみたい。私自身の可能性を！」

黒川城「……私からは何もいいません。お殿様？」ﾁﾗｯ

殿「……」ｺｸ


ぶおおーん！　ぶおおおーん！


黒川城「くっ！　こんな時に！」

やくも「伝令だに！　物見櫓の大宝寺城が兜さんの進軍を確認しただに！」

熊本城「訓練する暇も与えてくれぬようですね」

黒川城「やくもさん敵の数は！」

やくも「それが……」

黒川城「どうしたんですか！」

やくも「四個中隊からなる、一個大隊。敵数およそ八〇〇だに……」

黒川城「な！？」

やくも「しかも各中隊に象さん兜と、護衛に大砲兜がいるだに……」

熊本城「かつてない、大軍ですね」

黒川城「それも強敵揃いと……」

所領


福島正則「……」

砲撃式トッパイ形兜「ナァ。兄貴ノ様子ガ、オカシクネ？　何カ変ナ色ノ石ツケテルシ」

桃形兜「出撃前ニ、毛利様カラ何カヲ受ケ取ッテイタガ……」

福島正則「第一部隊、突撃」

砲撃式トッパイ形兜「ツッテモ。兄貴ヲ信ジテ、突撃スルシカネエヨナ！」

象鼻形兜「パオォォン！」

やくも「兜さんたちが来たがや！」

殿「……」

熊本城「熊のように勇ましく。熊本城！　出陣！」

開戦


～第一波～


桃形兜「穿テェ！　穿テェ！」

熊本城「殿より賜りしこの魔剣、使いこなして見せよう！」

黒川城「皆さん！　敵に大砲型がいます！　密集しすぎないように！」

鹿児島城「分かりましたの～」

肥後千葉城「は、はい！　隈ちゃんも気を付けて！」

隈本城「はい！　お姉ちゃんこそ気を付けて！」

三原城「三原の計算では、勝利間違いなし！」

窪田城「癒しは私にお任せを！」

殿「……」

熊本城「賤ヶ岳七本槍の勇姿を御覧あれ！　とおっ！」ｽﾞﾊﾞｯ

突撃式トッパイ形兜「グオァ！」ﾊﾞﾀｯ

黒川城「あれが魔剣の力……」ｽﾊﾟｯ

殿「……」

象鼻形兜「パオォン！」ﾄﾞｺﾞｯ

熊本城「ぐっ！」

象鼻形兜「パオォーン！」ﾄﾞｺﾞｯ

石山城「ふぁーい！　背後をとったぞぉー！」ﾊﾟｼｭﾊﾟｼｭ

象鼻形兜「パオッ？　パオオンン！？」ﾊﾞﾀﾝ

石山城「ははははっ！　隙を見せたな」

熊本城「石山城さん、ありがとうございます！」



『ククク。始マッタヨウダナ』

～第二波～



熊本城「さあ、この熊本城に挑む命知らずはどこですか！」

鹿児島城「攻撃すること、桜島の如し！」ﾊﾟｧﾝ

三原城「兵法は！　武士の嗜み！」ﾊﾟｼｭﾝ

突撃式トッパイ形兜「ギャア！」ﾊﾟﾀ

砲撃式トッパイ形兜「グオッ」ﾊﾞﾀﾝ

熊本城「これが肥後の虎の力です！」ｽﾞﾊﾞｯ

象鼻形兜「パオッン」ﾊﾞﾀﾝ

石山城「ウッヒャヒャヒャ！　ヒャーッハァ！」ﾊﾟｼｭﾊﾟｼｭ

隈本城「お姉ちゃんにかっこいいとこだけは見させないからね！」

肥後千葉城「わ、私はお姉ちゃんなんだから！」



『奴サエ、ソウ奴サエ倒セバ……』

～第三波～



石山城「しかし。敵が多すぎますな！」

砲撃式トッパイ形兜「派手ニカマスゼ！」ﾄﾞｺﾞｰﾝ

釘形兜「突撃ィー！」

肥後千葉城「熊本城さん！　殿！　そっちにも兜が！」

熊本城「とりゃあ！」ｽﾞﾊﾞｯ

殿「……！」ｽﾊﾟｯ

釘形兜「無念ッ」ｶﾞﾀ

砲撃式トッパイ形兜「グオ！」ﾊﾞﾀｯ

熊本城（くっ。予想以上に体力の消耗が……）ｾﾞｪｾﾞｪ

窪田城「穢れを祓う力は、ここにあります！」

熊本城「はぁ……。はぁ」

黒川城「熊本城さん！　厳しいならば一時撤退を！」

熊本城「ふぅー。……いけます！」ｽﾞﾊﾞｯ

象鼻形兜「パオォン」ﾊﾞﾀﾝ



『ソウダ、モウ少シ』

～第四波～



魔剣フラガラッハ「……」

熊本城（戦いの疲労もだけど）

突撃式トッパイ形兜「ブチカマセェ！」

熊本城（心の奥底から、何かに侵食されるような強烈な不快感……）

黒川城「風紀を乱す者は、許しません！」ｽﾊﾟｯ

突撃式トッパイ形兜「……」ﾊﾞﾀ

やくも「この調子ならいけるだに！？」

肥後千葉城「でも熊本城さん凄く辛そう……。きゃあ！」

殿「……」ｽﾞﾊﾞｯ

象鼻形兜「パオォォン！？」ﾊﾞﾀﾝｯ

肥後千葉城「と、殿。ありがとうございます」

熊本城（まるで暴風雨の中にいるような……。あ、駄目……。意識が……）

釘形兜「好機ッ！」ﾄﾞｺﾞｯ

熊本城「ぐふッ！　ま、まだまだッ！」ｽﾞﾊﾞｯ

釘形兜「グオッ」ﾊﾞﾀｯ

隈本城「熊本城さん！？」

熊本城（……危なかった。精神を研ぎ……。澄まさねば……）



『モウ少シデ、アノ地点ニ』

象鼻形兜「パオォォン！」

熊本城「もう一匹っ！？　くっ！」ｽﾞﾊﾞｯ

象鼻形兜「パオッ……」ﾊﾞﾀﾝ

熊本城「はぁはぁ……。あっ……」ﾌﾗｯ

石山城「殿！　熊本城どのの変身が！」ﾊﾟｼｭﾊﾟｼｭ

黒川城「くっ！　敵が多すぎる！」ｽﾊﾟｯ

殿「……！」

隈本城「分かりました！　熊本城さんを連れて撤退します！」

鹿児島城「援護しますのー！」ﾊﾟｧﾝ

福島正則「……」ﾎﾞｺﾞ

三原城「隈本城さん！　後ろ！」

福島正則「死ネ」ﾄﾞｺﾞｫﾝ

隈本城「え？　きゃあ！」ﾊﾞﾀｯ

窪田城「地面から急に大型兜が！？」

殿「……！」

肥後千葉城「隈ちゃん！　熊本城さん！」

熊本城「……」ﾄﾞｻｯ

福島正則「死ネ」ﾌﾞﾝｯ

――私ハ何ノ為ニ、生マレテキタンダロウ。

三原城『熊本城さん！』

――何ノタメニ、生キテイルンダロウ。

石山城『熊本城どの！』

――私ハ……。私？　私ッテ……。誰？

鹿児島城『熊本城さん！』

何モ分カラナイ……。何モ考エラレナイ……。

窪田城『回復が間に合いません！』

――死ヌノカナ。デモ、モウイイヤ。

黒川城『間に合って！』

――モウ疲レタ。生キテイテモ、意味ナンテナイカラ。

隈本城『く、熊本城さ……ん！』

――アア……。ソウ呼バレタコトモアッタッケ？

肥後千葉城『熊本城さん！』

色々ナ人タチガ、私ノ事ヲソウ呼ン……ダ？

殿『……』

――アレハ……？

殿『……』

――光？

ﾄｸﾝ

殿『……！』

――ア……。

ﾄｸﾝ ﾄｸﾝ

殿『……』ﾆｺｯ

――ア、アア……。アアッ！

殿「……！」ｶﾞｷﾞﾝｯ

福島正則「死ネ」ｸﾞｸﾞｸﾞｯ

熊本城「ア……。ト、殿……？」

殿「……」ﾆｺｯ

熊本城（殿……。全身傷ダらケデ、立ッテルのモ辛イ筈なノに……）

鹿児島城「殿どんをお守りしますの！」ﾊﾟｧﾝ

福島正則「死ネ」ｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞｯ

殿「……！」

魔剣フラガラッハ「……」

熊本城（ソうダ。殿……。私は殿ノために……）

魔剣フラガラッハ「……」ﾄｸﾝ

三原城「私たちの攻撃がまるで効いてない！？」ﾊﾟｼｭﾝ

熊本城（殿を守るたメに）

魔剣フラガラッハ「……」ﾄｸﾝ ﾄｸﾝ

石山城「何なのだ奴の耐久力は！」ﾊﾟｼｭﾊﾟｼｭ

熊本城（殿のことを守りたい……。殿を生きる証にしよう）

黒川城「お殿様！」

福島正則「死ネ」

熊本城「それが私の意志！　私の生きる証だ！」

魔剣フラガラッハ「……」ﾄﾞｸﾝ



『クハハハハ！　コレデ終ワリダ、殿！』

熊本城「うおおおぉお！」ｽﾞﾊﾞｼｭ

福島正則「グオッ！？」ﾊﾟﾘﾝ

殿「……！？」

福島正則「ア？」ﾊﾞﾀﾝ

熊本城「殿！　ご無事ですか！」

殿「……」ﾆｺｯ

熊本城「よかった……。本当に……ッ。よかったよぉ」

殿「……」

熊本城「……はい。今はまだ戦の最中」

福島正則「……」

熊本城「さあ。かかって来なさい！　この熊本城、最後まで殿をお守りする！」ｷｯ

福島正則「クソッ、体ガ痛ェ。ココハ……。何処ダ？」ｽｸｯ

熊本城「さあ！」

福島正則「アン？　……ッ！　ソウカ、ソウ言ウ事カ毛利元就」

殿「……」

福島正則「チッ、分カッタ。コノ勝負預ケル」

熊本城「……？」

福島正則「オイ！　テメエラ！　撤退ダ！」

桃形兜「撤退ィー！　撤退ー！」

福島正則（毛利元就。コノ落トシ前ハ、キッチリ払ッテモラウカラナ）



『チッ、シクジリオッテ！　……最早コレ以上ノ長居ハ無用』

勝利



殿「……」

熊本城「応えてくれた……」

殿「……？」

熊本城「この剣は私の想いに答えてくれたんです」

殿「……」

黒川城「お殿様！　熊本城さん！　よくぞご無事で！」

石山城「ふぅ～、えらぁい。私は先に休憩させていただく」

三原城「勝利の舞です！　やっさやっさ～」

窪田城「みなさんご無事で……」

肥後千葉城「隈ちゃん、お姉ちゃんやったよ！」

隈本城「当然よ。だって私たち、日本一のお城になるんですから！」

鹿児島城「さぁさぁ、皆で祝杯を上げましょう」

殿「……」ﾆｺｯ

熊本城「ふふっ」


分かった。全部分かった。
私はきっと、この人のために生まれて。
この人のために生きていくんだって。





終

現行
【城プロ】城娘達の日常
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完結
【城プロ】フランケンシュタイン城「私はいつも孤独なのだ」
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