二宮飛鳥「助手席にて」 (8)

カメラマン「飛鳥ちゃん、お疲れ! 今日もよかったよ」

飛鳥「ありがとうございます。お疲れ様です」

カメラマン「また次も、いい写真を撮らせてもらうよ」

飛鳥「……楽しみです。機会があれば、よろしくお願いします」




P「お疲れ、飛鳥」

飛鳥「やぁ。悪いね、わざわざ現場まで車で迎えに来てもらって」

P「ちょうど時間が空いていたからな。どうってことないよ」

飛鳥「そうか。なんにせよ、ありがたいよ」

P「さあ、いこうか」

飛鳥「ボクのセリフをとられた」

P「そんなつもりじゃなかったんだが」ハハ

飛鳥「冗談さ」フッ



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P「飛鳥は、いつも助手席に座るよな」

飛鳥「あぁ。気になったかい」

P「ちょっと」

飛鳥「キミの運転している横顔を見るのが好きなんだ」

P「……そ、そうか」

飛鳥「なんてね」

P「おい」

飛鳥「胸に燻るもの、あったかな」

P「そりゃあ、美少女に真顔でそんなこと言われたら少しはドキドキもする」

飛鳥「へえ、いいことを聞いた。今後も有効に利用できそうな情報だ」

P「怖いことを言うなあ」

飛鳥「Pには時々からかわれているからね。対抗策は用意しておいたほうがいいだろう?」

P「からかってるか? 俺」

飛鳥「これ見よがしにブラックコーヒーを目の前で飲むじゃないか。それも結構な頻度で」

P「それは単に俺がブラック好きなだけ。飛鳥の自意識過剰だよ」

飛鳥「本当に?」

P「ああ」

飛鳥「………」

P「………」


P「実はたまにわざとやってる」

飛鳥「………」ゲシゲシ

P「こらこら、蹴るな」

飛鳥「信号で止まっているからいいだろう」

P「まだ4時か。今日はなんだか時間が経つのが遅いな」

飛鳥「時間に余裕があるなら、寄り道なんてどうだい」

P「ん?」

飛鳥「さて、ここで分岐点だ。この先の交差点を直進すれば事務所への最短ルート。左折すれば、先日オープンしたばかりの小洒落たカフェが見えてくる」

飛鳥「P。キミはどちらの未来を選ぶ?」

P「うーん」

飛鳥「ちなみにボクは左折の気分だ」

P「なら直進しようか」

飛鳥「ふうん」ツンツン

P「こらこら、横腹を小突くな」ハハ

飛鳥「信号で止まっているからいいだろう」

P「なんというか、あれだな。出会ったころに比べると、飛鳥の態度も変わった気がする」

飛鳥「そう?」

P「ああ。雑になった」

飛鳥「雑、か。その割にはうれしそうだね、キミ」

P「いい意味で、雑になった気がするから。自然体? みたいな」

飛鳥「なるほど。まあ、ボク自身も自覚はあるよ」

飛鳥「キミは特別な存在だけど、あくまでキミというパーソナリティーがあることが前提だ。キミはキミであり、それ以上でも以下でもない。だからボクもボクとして、キミと触れ合うのさ」

P「言いたいことはなんとなくわかる」

飛鳥「そういうキミも、以前と比べれば態度に遠慮がなくなってきたと思うよ」

P「お互い様だな」

飛鳥「まったくだ」

P「そういうケラケラ笑いも、昔は見れなかったもんな」カチッ

飛鳥「あれ。ウインカー……」

P「左折する気分になった」

飛鳥「好感度が30上がったよ」

P「ちょろいな……」

飛鳥「15下がった」

P「めんどくさいな!」

飛鳥「たまには、面倒なのもいいだろう」

飛鳥「久しぶりに、キミを独占する時間をもらえるんだから」フフッ

P(そこで心底うれしそうな顔をされると、何も言えなくなる)


P「にしても、飛鳥も笑顔が上手になったな」

飛鳥「笑顔?」

P「ほら、さっきの撮影の後。カメラマンさんに、にこやかに挨拶していただろう。昔じゃああはいかなかったぞ」

飛鳥「あぁ……だろうね。ボクも、そのあたりは丸くなったというか」

飛鳥「牙が抜けたとも言えるけれど。キミはどう思う」

P「しかるべき時に向けて、隠れて牙を砥いでると思えばいいんじゃないか?」

飛鳥「……ふむ。ボク好みの答えだ」

飛鳥「まあ、それは置いておこう。なんにせよ、変化は当然起きるものだ。デビューして、それなりに月日が経っているんだから」

P「デビューシングルの発売からちょうど一周年か。改めて、おめでとう」

飛鳥「もう、一年経つんだね……いや、むしろ遅すぎるくらいか? いろいろと、濃密な時間を経験させてもらったよ」

P「俺も、飛鳥と一緒にたくさんの経験をさせてもらった。充実していたよ」

飛鳥「そう言ってくれると、ボクもうれしい」

P「今日からまた、新しい一年が始まる。よろしく頼むよ」

飛鳥「あぁ。また、セカイに爪痕を残していこうじゃないか」

飛鳥「始まりの一年は終わりを告げた。けれど、まだしばしの間、ボクに付き合ってもらうよ」

P「『しばし』でいいのか?」

飛鳥「……そこを突っ込むのは、野暮だと思わないかい」

P「たまには、野暮なのもいいかなと思ってさ」

飛鳥「………ふふっ、そうか」

飛鳥「ならこちらも、高らかに宣言させてもらおうじゃないか」

飛鳥「キミはボクの相棒であり、共犯者だ。その日が来るまで、ボクらを繋ぐ鎖が解けることはない」

飛鳥「共に往こう。翼を広げて、かの地まで」

P「……ああ。もちろん」



P「ところで、その日って? かの地って?」

飛鳥「ふっ。それは、これからボクとキミとで決めていくものさ」

P「なるほど……それはまた、大変そうだ」

飛鳥「でもキミ、好きだろう」

P「かもしれない」

飛鳥「ふふっ」

P「さしあたっては、カフェが『かの地』になるのかな」

飛鳥「そうだね。新たな一年の始まりが、よきものであることを願おう」

P「ちなみに、なにを頼むつもりなんだ?」

飛鳥「そうだな……コーヒー……でも、たまにはパフェも悪くは――」




おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
もう共鳴世界の存在論から一年経つんですね。いろいろあった一年でした。今後もなんだかんだでプロデュース頑張りたいです

おっつ

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