【バジリスク】弾正「共に駿府へ参ろうぞ」 (43)
~ 甲賀卍谷 甲賀弾正屋敷 ~
弦之介「ドジっ娘萌えじゃ」
お胡夷「は?」
弦之介 「自分で聞いておいてなんじゃその、気の無い返事は。」
お胡夷 「いえ、そのぅ… 確かに聞きましたよ?」
お胡夷 「弦之介さまは朧さまのどこに惹かれたのでしょうか、と。」
お胡夷 「それで、その答えが ─────」
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弦之介 「ドジっ娘萌えじゃ。」
お胡夷 「あ、はい。」
刑部 「…今から伊賀を襲撃してもいいですかね?」
左衛門 「刑部、おれもいこう。」
弦之介 「待て、待てお前ら!この期に及んで和睦に反対だと申すか!?」
豹馬 「弦之介さまの想い、皆わかってはいたのです… ついさっきまでは。」
弦之介 「なにゆえ過去形ッ!?」
豹馬 「なにゆえとは、こちらの台詞です!弦之介さまは我ら甲賀の者どもを想うてこそ」
豹馬 「伊賀との和睦を決意なされたのではなかったのですかッ!?」
弦之介 「そうだ。400年の永きにわたり、すさまじい修練を重ね、血を掛け合わせ」
弦之介 「常人の及ばぬ術を習得したお前たちはわしの誇りじゃ。」
弦之介 「にもかかわらず、ただ伊賀憎しの一念によって里に引きこもり」
弦之介 「使いもせぬ殺しの業ばかりを磨いて、そのまま老いて死んでゆく ────… 」
弦之介 「まこと、愚かの極み!これは伊賀の者どもも同様じゃ。」
丈助 「よって伊賀と手を携え、ともに表の世に出でん… と、そういうことですな?」
弦之介 「その通り、ようわかっておるのう丈助。」
丈助 「はぁ、それはもう何度も何度も聞かされておりますゆえ…。」
バジリスクSSとな?
弦之介 「つまり和睦に思い至ったことと、わしが朧どのに本格的に惚れたことはまた別の話じゃ。」
左衛門 「言い方ってもんがあるでしょう!?」
刑部 「伊賀への憎しみ、忘れはせぬ。忘れはせぬ… が」
刑部 「弦之介さまが甲賀の民を想うての和睦ならば、腹のうちに収めることもやぶさかではなしと」
刑部 「そう考えていたところで ───… 」
お胡夷 「ドジっ娘萌え。」
刑部 「んあ゛あ゛あああああああッ!なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁ!!」
左衛門 「刑部、落ち着け!ぎょーーーぅぶッ!!」
陽炎 「あの、弦之介さま。実は私も少々ドジなところがありまして…。」
弦之介 「知っておる。」
陽炎 「えッ?」ドキッ
弦之介 「露天風呂に乗り込んできて、そのまま殺されかけたからな。」
陽炎 「(´・ω・`)」
丈助 「わしはなぜ殴られたのじゃろうか…。」
お胡夷 「日頃の行いでございましょう。」
弦之介 「最近では祭りを見に行ってそのまま殺されかけたな。」
陽炎 「(´・ω・`)」
豹馬 「陽炎… 次期頭領を二度も殺しかけるやつがあるか!」
陽炎 「わざとではございませぬ!つい、そのぅ… ムラムラしてしまって!」
豹馬 「ムラムラとな!?」
陽炎 「二度といたしませぬ!」
左衛門 「うーん、まったく信用できん。」
十兵衛 「あと二回くらいはやりそうな気がするな…。」
弦之介 「それは占いの結果か?」
十兵衛 「いえ、わしのカンです。気になるようであれば占いますか?」
弦之介 「…やめておこう、結果を知るのが怖い。」
弦之介 「うず高く積もった両家の憎しみ、振り払うことは容易ではあるまい。それは理解しておる。」
弦之介 「焦らず、そして諦めず!確実に前へ進んでいきたい。」
弦之介 「特に丈助やお胡夷、若き世代の者たちには期待しておる。」
弦之介 「伊賀への憎しみ、悪習に染まっておらぬそなたらの助力こそ必要じゃ。」
お胡夷 「はい!お任せくださいッ!」
丈助 「わしは別に伊賀者が好きだというわけでは ──… 」
丈助 「いやいや、もちろん弦之介さまのお望みとあらば忠臣、鵜殿丈助、身を粉にして働きますぞ。」
陽炎 「…あの、普通に若い世代から外されていたのですが。私の協力は…?」
豹馬 「普段の言動を思い出せ。どう考えても和睦に向いた人材ではあるまい。」
陽炎 「(´・ω・`)」
弦之介 「和睦を進めるためにも、わしと朧どのが祝言を挙げた後」
弦之介 「二人も伊賀の者と婚姻を結ぶことを考えてくれぬか?」
弦之介 「無理にとは言わぬ。ただ、頭の片隅にでも置いてくれればそれでよい。」
丈助 「おお、それはよきお考え!実はわしも、見合いの席にお供させていただいた折に」
丈助 「気になるおなごがございましてな。当然、弦之介さまからも口添えしていただけるということで…?」
弦之介 「え?」
丈助 「え?って… 何ですかその反応は。」
弦之介 「あ、あー、無論じゃ。丈助の祝言がまとまるよう協力することやぶさかではない。」
弦之介 「ただ、わしにもできることと、できないことがあるとことだけは覚えておいてくれ…。」
丈助 「( ´・ω・` )」
弦之介 「お胡夷はどうじゃ。そなたも結婚について考えるべき年頃であろう。」
お胡夷 「え?えぇと、私はですね、伊賀との和睦も大事ですが、忍法の研鑽も怠るべきではないと思うのです。」
お胡夷 「例えばそのぅ… 肌の質を変化させる術をもつ者同士で血を掛け合わせるとか…//」
丈助 「なるほど、ようわかった。」
お胡夷 「おぉ、丈助どの!賛成してくださるか!?」
丈助 「つまりその相手とは… わしじゃな?」
お胡夷 「あ゛ぁ゛ッ?」ギロッ
丈助 「ヒィッ!」
豹馬 「はて、そういえば先ほどから将監の声が聞こえぬようだが?」
十兵衛 「奴めは初孫ができてから少々付き合いが悪くてな。ま、大目にみてやれい。」
刑部 「孫自慢に付き合わされる方はたまったものではないぞ!」
左衛門 「将来有望な初孫どのじゃな… 痰が取れるのに丸一日かかったわ。」
弦之介 「今回は別件じゃ。例の駿府行きの件でお祖父に呼ばれているらしい。」
丈助 「へ?すると駿府行きのお供は将監どのに決まりということで?」
ガラッ
将監 「おお、なんじゃ皆そろっておったか。」
弾正 「話が早くてなによりじゃ。」
刑部 「弾正さま!駿府へのお供に将監を選んだとは、まことでありますか!?」
将監 「カカカ、往生際が悪いぞ刑部。おとなしゅう留守番しておれ。」
弾正 「おぬしも行きたかったか、刑部。」
刑部 「はっ!伊賀者と戦う機会を、是非このわしに!」
弾正 「全裸になるのか?」
刑部 「…は?」
弾正 「大御所さまや服部さまの御前で全裸になるのかと申しておる。」
刑部 「あ、いやそれは…。」
弾正 「控えよ、刑部。けしてお前の力が劣っているわけではない。適性の問題じゃ。」
刑部 「ははぁっ!」
陽炎 「なれば弾正さま、私などはいかがでしょう?」
陽炎 「伊賀者など、一撃で仕留めて御覧に入れます!」
弾正 「あくまで忍法御上覧じゃ、はなから殺意をむき出しにしてどうする。」
弾正 「それとお前の忍法は欲情せねば始まるまい。大御所様の御前でナニをする気じゃ。」
弾正 「さらに言えば、相手が朱絹や蛍火といった女を出して来たらどうする。」
陽炎 「そこは乙女の妄想で、なんとか!」
弾正 「ダメじゃこいつ、はようなんとかせんと…。」
弾正 「此度の忍法御上覧、その意図がわからぬ。殺し合いにまで発展するのか」
弾正 「あるいはただお見せするだけでよいのか。どちらにも柔軟に対応できる忍法が望ましいのじゃ。」
弾正 「それと伊賀も同席するでな、知られたところで対処はできぬ能力がよい。」
十兵衛 「そういうことなら、わしは辞退いたしましょう。伊賀者にあれを見られては一大事じゃ。」
豹馬 「私も不適格となりますかな。昼間に行ってはやることがありませぬ。」
お胡夷 「じゃあ、私はいかがでしょう?伊賀者を干物にすることも手加減することも」
お胡夷 「自由自在にございまするぞ!」
弾正 「地味じゃ。」
お胡夷 「え?じみぃ?」
弾正 「忍法御上覧ともなれば、それなりに派手な戦いができねばならぬ。」
弾正 「寝技に持ち込んで、はい血を吸って勝ちました、では盛り上がらぬわ。」
お胡夷 「(´・ω・`)」
刑部 「血を刀身に吸わせて、それを飛ばすくらいやってのけねばのう。」
お胡夷 「そんな忍法、あるはずがございませぬ!」
弾正 「…?はて、他の甲賀一門にそんな技があったような、なかったような…?」
丈助 「なれば、わしこそ適任でございましょう。例え奇襲を受けようともいかなる攻撃も跳ね返し」
丈助 「忍法争いから曲芸まで、柔軟にこなしてみせますぞ?」
十兵衛 「丈助、おぬしその腹で平伏はできんじゃろう。」
丈助 「え?」
十兵衛 「相手は雲上人じゃぞ、形ばかり手をつけばよしとはいかぬわ。」
丈助 「そこは… 腹に顔をめりこませればなんとでもなりましょうぞ。」
丈助 「あまり長くやっては窒息する恐れもありますが。」
左衛門 「見た目が不気味すぎる。場合によっては不敬ともとられかねん、今回は諦めろ。」
丈助 「( ´・ω・` )」
丈助 「そういう左衛門どのはどうじゃ、駿府へ行きとうはないのか?」
左衛門 「わしとて弾正さまのお供に選んでいただきたいとは思う。」
左衛門 「しかし伊賀者の前であの忍法を晒しとうはない。」
刑部 「それと、大御所さまや服部さまに『ちょっと泥の中に顔を突っ込んで下され』とは言えぬであろう。」
左衛門 「かといって、身内の真似をしたところで手妻か何かと思われるのが関の山じゃ。」
弾正 「わしも泥に顔を入れるのは嫌じゃ。」
弦之介 「やらぬで済むならそれに越したことはないが…。なぜか嫌な予感がするな。」
お胡夷 「兄様の忍法が大御所さまのお目に止まれば、あるいは」
お胡夷 「影武者としてお召し抱えいただけるやもしれませぬ!」
お胡夷 「そうなれば甲賀の里も、如月のお家も安泰、万々歳にござりまするぞ!」
左衛門 「お胡夷、人の心ほど計り知れぬものはないぞ…。」
お胡夷 「どういう… ことでしょうか?」
十兵衛 「わからぬか?姿かたちはまったく同じ、声も同じ。それでいて己よりずっと若い。」
十兵衛 「大御所さまにしてみれば、取って代わられるとの疑心に囚われても致し方あるまい。」
左衛門 「この忍法は良くも悪くも疑心を招く。それ故、扱いを誤れば身の破滅じゃ。」
左衛門 「もしも伊賀者に化ける機会があらば、少々暴れてやりたいとは思わぬでもないが…。」
弦之介 「さーえーもーんー!?」
左衛門 「あ、いえいえ、冗談にござる。和睦に水を差すつもりは毛頭ござらん。」
弾正 「皆、今回の人選に納得したか?そろそろ参るぞ将監。」
将監 「ではな、皆の衆。留守番を頼むぞ、カカカ!」
ガラッ パタンッ
刑部 「おのれ将監、得意気な顔しおって!」
丈助 「まぁまぁ、諦めなされフルチンどの。」
刑部 「妙なあだ名をつけるな!」
お胡夷 「はて、将監どのはともかく。弾正さまも心なしか嬉しそうに見えましたが…?」
十兵衛 「そのように見えたか。」
お胡夷 「なんとなくそう感じただけで、気のせいやもしれませぬ。」
十兵衛 「弾正さまがのう… うむ、楽しげになぁ…。」
お胡夷 「地虫どの?なんぞ心当たりがおありで?」
十兵衛 「いや、聞いてくれるな。こればかりは墓までもっていかねばならぬ話じゃ。」
お胡夷 「?」
十兵衛 「だがもしも、和睦がとんとん拍子にすすめばあるいは」
十兵衛 「笑い話として語るお許しが出るやもしれんのぅ…。」
お胡夷 「???」
:
:
:
将監 「それにしても面妖な。なにゆえ服部さまは、この時期に我らを呼ばれたのでありましょうや。」
弾正 「うむ… 一応、皆には和睦の祝いであろうとは話したが ───…」
弾正 「わし自身まったく信じておらぬ。ちと無理があるわい。」
将監 「かといって、他に心当たりもございませぬからなぁ。」
将監 「卍谷と鍔隠れの和睦を服部さまが祝ってくださる、というだけならともかく」
将監 「大御所さまへの忍法御上覧とは、ちと話が大きすぎますな。」
弾正 「最近とんとキナ臭くなってきた、大阪との戦に参陣せよとの仰せではあるまいな。」
将監 「ほほぉ!甲賀、伊賀そろって天下分け目の大戦に参陣でござるか、それは面白い!」
将監 「…しかし、武家の方々は我らのごとき者をおおっぴらに使うことを好まぬと聞き及びましたが?」
弾正 「是が非でも勝たねばならぬ戦なれば、好き嫌いなどいうてはおれまい。」
弾正 「もっとも、これとてわしの想像にすぎぬがな。」
将監 「いってみなければわからぬと、そういうことですかな。」
弾正 「そういうことじゃ。」
弾正 「さて、将監。忍法御上覧が無事に済めば、わしは駿府見物にお幻を誘うつもりじゃ。」
将監 「お幻婆を?ははぁ、なるほど。そこで後ろからぐさりと…?」
弾正 「たわけめ、不戦の約定をこちらから破ってなんとする。」
弾正 「和睦をいいだしたのが孫同士であったとしても、頭領がいがみ合っていては仕方あるまい。」
弾正 「無理にでもお幻を散策に連れ出し、親睦を深めようと思うての。」
弾正 「駿府見物へいっているあいだ、おぬしにも暇をやろう。好きに過ごすがいい。」
将監 「あいや、わしはこの通りの風体にて街を歩けば騒ぎになりまするゆえ。」
将監 「宿にてお待ちしております。」
弾正 「そうか、ではなんぞ土産を買うてきてやろう。酒などがよいか?」
将監 「あ、それならば、できれば、そのぅ…。」
弾正 「なんじゃ、歯切れの悪い。いうだけならただじゃ、いうてみい。」
将監 「孫の… ですな、べべやら玩具やらを頂戴できれば、と。」
弾正 「わしとお幻が、そろって赤子の玩具を買いにいくのか。なにやら誤解されそうじゃのぅ…。」
将監 「や、これはぶしつけなお願いでした。申し訳ござらん!」
弾正 「よいよい、構わぬ。そのような店を見かけたら買うてきてやろう。」
弾正 「それにしても、わしとお幻がのぅ… 二人そろって赤子のな… ふ、ふ…。」
将監 「?」
~ 伊賀鍔隠れ 伊賀お幻屋敷 ~
お幻 「ダメじゃ。」
小四郎 「ダメって… そんな、子供が小遣いせびっているわけではないのですよ!」
夜叉丸 「駄々をこねているって意味じゃぁガキそのものだ。いい加減、あきらめな。」プークスクス
蛍火 「これはお幻さまの決定ですよ、小四郎どの。お控えなされませ。」
蛍火 「ね、夜叉丸どの?」
夜叉丸 「そうだな、蛍火。」
小四郎 「毎度毎度、こいつらは…っ!」
天膳 「小四郎を供とすることは、わしが反対した。」
小四郎 「な、なにゆえにござりますか天膳さま!?」
小四郎 「おれの忍法、けして夜叉丸に劣っているとは思いませぬ!」
お幻 「此度の忍法御上覧、いかなる形式になるかわからぬでな。」
お幻 「甲賀者と殺しあうのか、あるいは忍法を軽く見せるだけでよいのか。」
お幻 「対戦相手が甲賀者とも限らぬ。服部さまの配下か、もしくは柳生の者どもか…。」
天膳 「お前の術は殺意が強すぎる。相手を片っ端から肉塊にでもするつもりか。」
蛍火 「大御所さまもドン引きですわ。」
小四郎 「それでは、鎌だけで戦えば…。」
夜叉丸 「地味すぎんだろ、それ。」
小四郎 「(´・ω・`)」
天膳 「夜叉丸ならば、多数を相手に戦うこともできる。殺すも縛るも自由自在じゃ。」
夜叉丸 「いやぁ、さすが天膳さま!わかっておられる!」
夜叉丸 「こういうとき役に立つのは、殺しだけしか出来ないやつより器用に何でもできる奴だよ。」
夜叉丸 「なぁ小四郎!?」
小四郎 「ヒュルルルル…」
夜叉丸 「って、うわ!吸うな!息を吸うな!」
夜叉丸 「この、遠距離ガー不一撃必殺吸い込み判定アリ野郎!」
陣五郎 「褒め言葉にしかなっておらぬぞ。」
蝋斎 「羅列すると本当にひどい忍法じゃのう…。」
念鬼 「だーっはっはっは!残念じゃったのぅ、小四郎!」
念鬼 「さて、お幻さま。殺すも縛るも可能という意味では、わしのほうがよいかと存じまするぞ?」
念鬼 「甲賀者の忍法など児戯に等しいと、大御所さまの御前で証明して見せましょうぞ!」
お幻 「…大御所様にお見せする忍法が、鼻毛ではなぁ…。」
念鬼 「は、はなげっ?」
天膳 「見栄えの問題じゃな。正直、暑苦しい。」
念鬼 「天膳、そこまでいうかっ!?」
蝋斎 「はっはっは、暑苦しいといわれては返す言葉もないのぅ、念鬼。」
蝋斎 「お幻さま。夜叉丸でも念鬼でもなく、わしを連れていってくださらぬか?」
蝋斎 「手数こそ劣りますが、そこの二人にはない切れ味と、打撃がございますぞ!」
蝋斎 「いかなる状況にも応じられるという意味では、一番かと自負しております。」
陣五郎 「無理じゃな、見た目が爺にすぎる。」
蝋斎 「なんじゃとぅ!?」
陣五郎 「白髪の爺さまを選手として出してみろ、伊賀にはそんなに人材がおらぬのかと」
陣五郎 「あらぬ誤解を受けるわ。」
_
) (
蝋斎 「(´・ω・`)」
朧 「他に立候補する者はおらぬかえ? …朱絹はどうじゃ?」
朱絹 「私の忍法は、こういった場には向いておりませぬゆえ…。」
念鬼 「むしろどういった場面なら使えるんじゃい。」
朱絹 「…透明人間を追いかけるとき… とか?」
陣五郎 「そんな状況、あるわけがなかろう。」
天膳 「なんにせよ、忍法を見せるための席で目くらましなど、本末転倒じゃ。」
朧 「蛍火は ───… ?」
蛍火 「私は、夜叉丸どのこそ最もふさわしいと考えまする!」
夜叉丸 「蛍火…///」
蛍火 「夜叉丸どの…///」
朧 「うん、知ってた。」
朱絹 「陣五郎どのは、出たいとは思いませぬのか?」
陣五郎 「わしの忍法はどこをどうしても暗殺にしか使えぬからな。御前試合には不向きじゃ。」
陣五郎 「しかも塩に溶けている時は思考もままならぬゆえ、大御所様に無礼を働くやもしれん。」
蝋斎 「そうさな、たとえば…。」
蝋斎 「『伊賀の雨夜陣五郎とやら、おぬしの忍法みせてもらったぞ』」
念鬼 「『うおぁぁぁぁぁぁぁぁ』」
蝋斎 「『どうした雨夜、大御所さまの御前であるぞ』」
念鬼 「『みぃ、水ぅぅぅぅぅぅ!』」
蝋斎 「…だめじゃな。」
念鬼 「…うむ、だめじゃ。」
陣五郎 「お前ら仲いいな、ほんと。」
小四郎 「天膳さまはいかがでござるか?」
天膳 「大御所様の御前で忍法を披露する、その名誉に魅力を感じぬではないが…。」
天膳 「わしが忍法を人前に出すところを想像してみよ。かなり珍妙な事態となるぞ。」
天膳 「薬師寺天膳!死にます! グサー アッー! … はい、生き返りましたぁ!!」
天膳 「…とな、どうじゃ。」
小四郎 「最悪にござりまする!」
天膳 「そうであろう。」
お幻 「皆、納得はできたか?そろそろ参るぞ、夜叉丸。」
夜叉丸 「はい、お幻さま!」
夜叉丸 「蛍火、すぐに帰ってくるからな。土産を期待して待ってろよ!」
ガラッ パタンッ
天膳 「ふぅ~む…。」
念鬼 「なんじゃぁ、天膳。まだ納得しておらんのか。」
天膳 「いや、夜叉丸は適役じゃ。奴の黒縄から逃れうる者はそうはおるまい。」
天膳 「ただ、あいつはうっかり属性もちじゃからな… 財布をスられたりしなければよいが。」
蛍火 「天膳さま!忍びが懐を探られるなど言語道断。そのような者、いるはずがございませぬ!」
陣五郎 「そうじゃぞ。もしそんな奴がいたら、いちから修行のやりなおしじゃ。」
天膳 「これはあいすまん。歳をとるとつまらぬことまで考えるようになってな、はっはは。」
天膳 「…本当に大丈夫だよな?」
:
:
:
お幻 「夜叉丸よ、家康さまへのお目通りが無事に済んだら」
お幻 「わしは甲賀弾正を誘って駿府見物へ参ろうかと思う。」
夜叉丸 「なるほど、それで人気のない所でグサリと!」
お幻 「やらんわ。不戦の約定、忘れたわけではあるまい。」
お幻 「ところで、わしと甲賀弾正が並んで歩いていれば他人の目にはどう映るかのぅ…?」
夜叉丸 「へ?お幻さまと弾正がですか?それは… 隠居した老夫婦、とか…?」
お幻 「ほう、老夫婦とな…?」
夜叉丸 「あ、いえいえ!あくまで事情を知らぬ赤の他人が見ればにございます!」
夜叉丸 「お幻さまと甲賀のクソ爺ぃが夫婦などと、とんでもない!」
夜叉丸 「(やっべー… 答え方を間違ったか?女主人と従者くらいにしておくべきだったか…)」
夜叉丸 「(さよなら、俺の小遣い。蛍火、土産は割りばしかなにかでいいかい…?)」
お幻 「わしと弾正どのがのう、数十年も経って… ふ、ふふふ…。」
夜叉丸 「?」
~ 慶長十九年 四月 駿府城 ~
家康 「ときにお主たち」
家康 「徳川の世継ぎを決するために ─────…」
家康 「命がけの忍法勝負をしてはくれまいかの?」
【終】
以上になります。
コーエーさん、次はバジリスク無双とかどうですか。
乙、面白かった
乙
悲しいねぇ
こんなにきゃっきゃしてからの本編はつらい
だから>>1がifをもっと書こうぜ!
本編でも家康さん、
「あれ?こいつら大阪との戦で使えたんじゃね?」とか言っていたので
そっちのルートのifとかも書いてみたいですね、ネタが思い浮かびさえすれば
バジリスクSSとは珍しい。乙です。
プロデューサー薬師寺天膳を書こうとして挫折した身としてはうらやましい。
化物揃いの十人集でも剣豪には勝てるか怪しいのが山風作品の面白いところ。
魔界転生も漫画が完結したらアニメになるかもしれないな
せがわさんは終身名誉山田風太郎コミカライズ担当だな
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