【モバマス】モバP「ほろよいゆず」 (37)
※未成年者の飲酒は法律で禁じられています
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-事務所・夕方-
喜多見柚(以下、柚)「ただいまーっ。ふぅ、レッスン疲れたなぁ」
柚「あれ……誰もいない?どこかに出かけてるのカナ」キョロキョロ
柚「なーんだ、つまんないなあ。帰る前に、ちょっと休憩しながらおしゃべりでもしようと思ってたのに」ポフ
柚「あ、テーブルにお菓子とか置きっぱなしだ」
柚「ちょっとだけもらってもいいよね。いただきまーす」ヒョイ
柚「ん、おいしいっ」
柚「飲み物もあるじゃん。飲みかけだけど」
柚「……これも、頂いちゃってイイかな?レッスン終わりで、水分も欲しいし」
柚「こんな所に置きっぱにしてる人が悪いもんね。へへっ、もらっちゃえ」ゴク
柚「……んー、なんか変な味?でも甘くて美味しいな」
柚「……」キョロキョロ
柚「……おいしかったし、もう少しだけ、いいかな……」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
モバP(以下、P)「ただいまー」ガチャ
千川ちひろ(以下、ちひろ)「あ、プロデューサーさん!いい所に」
P「どうしたんですかちひろさん。そんな血相変えて」
ちひろ「それが……」
柚「Pサーン!」ガバッ
P「うおっ、柚!?」
柚「へへー、Pサンおかえりー」ギュー
P「ちょ、柚いきなり抱き着くなって」
柚「えへへ、うりうりー」
ちひろ「ちょっと用事で席を外してて、帰ってきたら柚ちゃんがこんな状態で……」
P「どうしたんだよ柚、いつにも増してグイグイ来るじゃないか」
柚「Pサンまってたよー、おかえりー、えへへ」
P「ああ、ただいま……なんか顔も赤い?」
柚「ろうしたのPサン?げんきないよー、ほらPサンもぎゅってしてよ、んぎゅーって」
P「なんか呂律もまわってないし……どうしてこんな事に」
ちひろ「多分なんですけど、これのせいじゃないかと」
P「空き缶?……ってこれ!チューハイじゃないですか!」
ちひろ「テーブルに何本も転がってたんです」
P「もしかして、間違って飲んじゃったのかな」
ちひろ「アルコールも薄いですし味も炭酸ジュースみたいなので、もしかすると……」
柚「Pサーン?あに話してるのー?こっち向いてよ」ギューッ
P「いてて、ちょっと柚、一回離れて……」
柚「やらー」ギュー
P「痛いって!酔ってるからって全力出すのはやめて!」
ちひろ「まずい事になりましたね……」
P「酒飲み軍団め……未成年もいるんだからあれほど酒の管理はしっかりしておけと」
ちひろ「その大人たちもすでに帰ってしまっているみたいですし、どうしましょう」
P「大方どっかの店でも入ってるんでしょうけどね……はぁ」
ちひろ「この状態で帰らせるわけにはいきませんよね」
P「そうですね、誰かがついていったとしてもマスコミとかに見つかるとまずいですし」
柚「何のハナシしてるのー?」
P「お前の話だよ」
柚「アタシのハナシ?アタシがかわいいって?いやーテレちゃうなー」
P「……そうだ、車で連れて帰るのは?」
ちひろ「それが今、社用車は全部出払ってまして……」
P「なんてこった……こんな日に限って」
ちひろ「となると……ここに泊まらせるのが確実なんですかね」
P「うーん、そうなるのかなあ」
ちひろ「ベッドはありますし、それを使えば柚ちゃんと、あとソファなんかで一人は泊まれると思いますので……あとは誰か見守れる人がいれば」
P「そうですね……でしたら申し訳ないんですけどちひろさん、お願いしてもいいですか?」
ちひろ「そうですね、仕方ありませんね」
P「そういうわけだ、柚。俺はもうそろそろ帰るから、離して……」
柚「えーっ、帰っちゃやら!Pサンといっしょにいるのー」
P「こら、そんなわがまま言うんじゃない。っていうかそんなワガママ言う子じゃなかっただろ、何なんだ急に……」
ちひろ「……」
ちひろ「!」ピーン
P「いくら酔ってるからって……ちひろさんも何か言ってあげて下さいよ」
ちひろ「柚ちゃんもそう言ってますし、プロデューサーさんが一緒に泊まってあげるのはどうでしょう?」
P「ほら柚、ちひろさんも言ってるだろ、今日は俺が一緒に泊まってやるから……」
P「……って、え!?」
柚「ホント?やったー、Pサンとお泊りだー♪」
P「ちょっと、ちひろさん!?僕はまずいですって!」
ちひろ「どうしてですか?私でもプロデューサーさんでも大して変わらないでしょう?」
P「変わりますって!いくら学生とはいえ色々と良くないですよ!」
ちひろ「え~、色々って何ですか~?一緒に泊まったら何がまずいんですか~?」
P「急にしらばっくれないで下さいよ!言わないけどわかるでしょ!ていうかさっきちひろさんが泊まるって言ったじゃないですか!」
ちひろ「それじゃ後はよろしくお願いしますね。お先に失礼します」
柚「おつかれさまでーす♪」
P「ちょっとちひろさん!?待ってください……柚!放してくれ!」
柚「やら♪」ギュー
ちひろ「ではごゆっくり~♪」
P「ちょっと!行かないでください!ちひろさーん!?」
パタム
P「……」
P「えっと……どうしろと?」
柚「♪」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
P「空き缶が大量に……柚、これ全部飲んだのか?」
柚「んー、ぜんぶじゃないけど、らんぼんか」
P「何本かは飲んだのか……」
柚「それがどうしたのー?Pサンも欲しいの?あ、でももうのこってないかー」
P「……あのさあ柚、これお酒なの。柚は今酔ってるの。分かる?」
柚「おさけ?Pサン、アタシみせーねんだからお酒はダメらよー、何いってるの?」
P「……ダメだこりゃ」
P(状況を整理しよう)
P(今は夜で、事務所には俺と、チューハイを何本か飲んで酔っぱらった柚だけ)
P(他のアイドル達はみんな帰ってるし、ちひろさんもいない、っていうか逃げられた。ついでに言うと車もない)
P(この状態で柚を外に出すのは、俺が一緒だとしても、万一を考えると危険だ……まずちゃんと歩けるかどうかすら怪しい)
P(事務所にはいざという時用……救護とか、泊まらないといけなくなった時用のベッドがあるので、これとソファを使えば2人は泊まれなくもない)
P(……)
P(……泊まるしかないのかなあ)
柚「えへへー、Pサンゲンキ?アタシはゲンキらよー」
P「おう、元気だよ……誰かさんのせいですっげえ頭痛いけど」
柚「頭いたいの?さすってあげようか?」
P「そういう類の痛みじゃないんだよなあ」
柚「いたいのいたいの、とんでけー」ナデナデ
P「ああうん、ありがとう……」
柚「はい、それじゃお返し」
P「?」
柚「もーっ、そこはアタシをなでなでするトコでしょ?」
P「ああ、そういう」
柚「ホラ、はやくー」
P「はいはい」ナデナデ
柚「んー、キモチがこもってない!」
P「どうしろと」
柚「『柚だいすきー』ってキモチをこめて!」
P「大好きって……いきなりそんな」
柚「はーやーくー」
P「ったく、わかったよ」
P「……大好きだよ、柚」ナデナデ
柚「あっ……えへへ……」フニャ
P「……急にしおらしくなるの、ズルいなあ」ナデナデ
柚「……♪」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
柚「でね、そのとき忍ちゃんがねー……」
P「うん、うん……」
P(どうしよう。寝静まるまで待とうと思ってたけど、かれこれ1時間は喋りっぱなしだぞ)
P(結局ずっと離れてくれないし……)
柚「♪」ギュー
P(しかし酔っぱらってるからとはいえ、こんなベタベタしてくる柚はなかなか見れないな)
P(スキンシップは割といつものことだけど、こっちの都合お構いなしにこれだけ突っ込んでくるのは珍しいかも……)
P「……」ジッ
柚「?」
P(ほんのり赤くて、ちょっと力の抜けた顔……)
柚「……♪」ニコッ
P(正直……めちゃくちゃかわいい)
P(こんなダルい絡み、普通の人なら鬱陶しいだけだけど……柚にこんなのされたら、許しちゃうよなあ)
柚「へへ……Pサンのカラダ、あったかいね」
P「……ありがとう」
柚「ね、ね、柚もあったかい?」
P「んー」
柚「どう?こうしてもっとくっついたら、もっとあったかい?」ゴソゴソ
P「ちょっと柚、まずいって……」
柚「へへっ、柚たんぽだよー」ギュー
P「ああ、えっと、ありがとう……」
柚「あたしもPサンも、あったかいね」
P「そ、そうだな」
P(落ち着け、落ち着け俺……これはただの湯たんぽ、そう湯たんぽ……)
柚「……ね、Pサン」
P「?」
柚「えへへ……顔、あつくなってきちゃった。顔はくっついてないのにね」
P「……」
柚「でも、なんだか心地いいな……♪」
P「……」
P(どうすればいいんだ……俺)
柚「……」
柚「……ねえ、Pサン」ギュ
P「ど、どうした?」
柚「……柚、がんばれてる?」
P「……どういう事だ?」
柚「……」ギュッ
P「……」
柚「……Pサンにスカウトしてもらってから、ずっとアイドル続けてきてさ」
P「……うん」
柚「アイドル始めてから、すっごい毎日が楽しいんだ。Pサン、仲間のみんな、ちひろさん、トレーナーさん……」
P「うん」
柚「……でも、時々考えちゃうんだ。楽しいだけで、いいのかなって」
P「……」
柚「楽しいって気持ちだけで、アイドルやってていいのかなって。周りの人が、これでいいって言ってくれるかなって」
柚「……Pサンの、……スカウトしてくれたPサンの気持ちに、応えられてるかなって」
P「……」
柚「……」
P「そうか……そういう風に、思ってたんだな」
柚「……」
P「でもな、俺はいいと思うぞ」
柚「……?」
P「……楽しいって気持ちはさ、なかなか持ち続けられるものじゃないんだ。楽しいだけって柚は言うけど、その気持ちをずっと持ってるってのは、なかなか出来ることじゃない」
P「柚のその気持ちは、すっごく貴重なものだし、大事なものだと思う。楽しいっていう自分の気持ちは、もっと正直に受け取っていいと思う」
柚「……」
P「それに、俺の気持ちがっていうんだったら、それは全然心配しなくていい」
P「俺が連れてきた柚が、アイドルやってて楽しいって思ってくれてる。それだけで、スカウトしてよかったって思えるから」
P「アイドルとしての成功なんかじゃなくて、柚が楽しんでアイドルやってくれてるってのが、一番嬉しいことだから」
柚「……」
P「……柚?」
柚「……すぅ、すぅ」
P「……寝ちゃったか」
P「知らないうちに、気苦労かけてたんだな……ごめんな」ナデナデ
P「……もう少ししたら、ベッドに連れていこう……俺はソファで寝よう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
柚「……」
柚「……ん」ムク
柚「……あれ……ここって」
柚「……そうだ。確か昨日……」
柚「今は……まだ朝の5時かぁ」
柚「……」
スタッ
テクテク、ガチャ
柚「……」
P「……」グー、グー
柚「……」
柚「Pサン、……アリガト」
チュッ
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
P「ん……」ムク
P「あー……事務所か」
P「昨日は大変だったな……」
P「柚は、もう起きてるかな。見に行こう」
テクテク
P「柚、起きてるか?」コンコン
柚「あ、Pサン。おはよう」ガチャ
P「おう、おはよう。気分は大丈夫か?しんどくないか?」
柚「え、別に大丈夫だけど……もしかして、何かあったの?」
P「ああ、覚えてないのか……昨日、柚が事務所で間違えてお酒飲んじゃってたみたいでな」
柚「えっ、ホント?」
P「ああ。それと諸々の事情があって、事務所で泊まってもらってたんだ」
柚「そうなんだ……メーワクかけちゃってたかな、ごめん」
P「いや、柚は悪くないよ。大人組がその辺にお酒をほったらかしてたのが悪いから……でも、これからは気を付けてくれ」
柚「うん」
P「親御さんには連絡してあるけど、あんま心配させても悪いし、とりあえず一回帰るといい」
柚「うん、分かった」
P「念のため、水分はしっかり取っておくように。見た限り大丈夫だとは思うけど」
柚「うん」
P「……それと」
柚「?」
P「あんまり気を張りすぎるなよ。自分が楽しいのが、一番だと思うから」
柚「……うん、よく分かんないけど、アリガト」ニコッ
おわり
以上です。お読みいただきありがとうございました。
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よかったら買って飲んでみてください。
いいよいいよーおつおつ
素晴らしかった
乙
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