見なよ、あの数。
"白鳩"も大人げないよね、たかが芸能事務所にさ
ちょっと"喰種"がアイドルやってるだけだって言うのに。
こうやってさ。
突然終わっていくんだね
当たり前みたいだった日常が、突然崩れる。
終わるときは……いつも突然なんだ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1484053883
アイドルマスターと東京喰種のクロスオーバーssシリーズ
『偶像喰種』の346サイド最終章です。
このスレが初めての方にも問題がないように書くつもりなので、
最終章だけでも楽しんでいただけたらと思います。
舞台はアニメ版シンデレラガールズと同じものとして書きました。
書くことが割とたくさんあるため、かなりの亀更新になると思います。
また、シンデレラガールズ主要人物の死亡シーン・苦痛描写・捕食描写等も結構入れる予定なので、
どうかご注意ください。なるべくレーティングには引っかからないよう配慮します。
http://imgur.com/xotECx3
http://imgur.com/ebzCOpk
上の添付画像は346プロダクションに在籍しているアイドル183名の人間・喰種振り分け設定です。
尚、トレーナー姉妹は全員が喰種の設定となっています。
とりあえずスレ立てだけしました。
デレステで183人全員そろったこの日にどうしてもやっておきたかったので…
本格的なお話は明日以降開始させていただくことになります。
―――過去・島村卯月―――
始まりは、テレビを見ていたときでした。
すごくちっちゃい頃に見ていたテレビ。
そこには、とってもきらきらした女の子が映っていたんです。
キラキラしたステージに立って、素敵な衣装を着て、それがまるでお姫様みたいで。
テレビや街のスクリーンに映ったたくさんの女の子達を見ているうちに、
それが『アイドル』って呼ばれる人たちなんだと知りました。
そして……
私もあんな風になりたいって、思うようになっていったんです。
私もアイドルになって、あんな風にステージに立ってみたいって。
心の底から願うようになったんです。
でも、それをパパやママに話した時……すごく、悲しそうな顔をされたんです。
『ごめんね卯月』って。
『あなたはアイドルになれないの』って。
『あんな風に、人前で踊ることなんてできないの』って……
ちっちゃな私は、どうしてどうしてって泣きながら尋ねました。
パパとママは、私を抱きしめて答えを言ってくれました。
とっても簡単な答え。
私が、アイドルになれないのは。
それは、私が。
島村卯月が―――――
グール
―――"喰種"だからでした。
"喰種"っていうのは、人間みたいな姿をしているけど人間じゃない生き物のことです。
人間よりずっと力が強くて、
人間よりずっと目や耳や鼻が良くて、
人間の持っていない武器を持っていて。
だけど、人間と同じものが食べられない生き物です。
"喰種"が唯一食べられる『それ』とコーヒー以外のものを食べちゃうと、
すっごく不味くて、身体も壊してしまうんです。
コーヒーだけは美味しく飲めますが、それでも栄養にすることは出来ません。
私達"喰種"は『それ』を食べないと生きていけないんです。
だから人間は"喰種"を敵だと思っているんだって。
だから人間に見つかった"喰種"は殺されてしまうんだって、ママは教えてくれました。
もし私がアイドルになれたとしても、私が"喰種"だってばれちゃえば。
ファンもステージも衣装も全部失って、殺されてしまうんです。
人を殺して、『それ』を喰らう―――――
―――『人肉』を喰らう化け物として。
それだけ聞かされても、ちっちゃい私は夢を諦めきれませんでした。
それまでに無いくらい……もしかしたら、生まれてはじめてなくらい。
それくらい駄々をこねて、わがままを言って、泣いてパパとママを困らせたんです。
絶対に正体を隠すから。いい子にするから。
お勉強でもお手伝いでもごはんの訓練でも、なんでもするから。
そう約束して、まずは学校で頑張って、約束したことは全部守り切って。
そしてやっと、アイドルの養成所に行くことを許してもらえたんです。
それからは……とっても長い時間を、養成所で過ごしました。
周りにいたのは、ほとんどが人間の女の子。
その子たちは夢を諦めたか、私より先にデビューしたかで、養成所を去っていきます。
時々"喰種"の女の子とも一緒になったんですけど、その子たちは皆、遅かれ早かれ辞めてしまいました。
デビューした女の子は、みんな人間の女の子だったんです。
私はオーディションを受けても落ちて、
目立ちすぎることも出来ないから、ほかに派手なアピールもできなくて。
"喰種"の私はたった一人、養成所でレッスンして毎日を過ごしていました。
どれだけ笑顔で頑張っても、何も変わらない日々が過ぎていきました。
近付きすぎると正体がバレちゃうかもしれないから、一緒に頑張る友達だって中途半端に作れませんでした。
でも止まり続けた時計は……ある日、動き出しました。
私を見つけてくれた人がいたんです。
背が高くて、目が細くて、初めて見た時はちょっと怖いって思った男の人。
匂いで"喰種"だって気付いた人。
あの人が養成所に訪ねてきて、私をアイドルにしてくれるって言ったんです。
理由は、補欠合格。
少し前に、とあるプロダクションで受けたオーディションのことでした。
新しいプロジェクトに応募して、一度は落ちたオーディションだったんですが……
3人の欠員が出て、だからあの人は私を拾ってくれたって話をしてくれました。
私を選んでくれた理由は、ふたつありました。
ひとつは、私が"喰種"だから。
信じられない理由でした。
何も知らずに応募したオーディション。
プロジェクトの名前は『シンデレラプロジェクト』。
そして事務所の名前は『346プロダクション』。
なんと、シンデレラプロジェクトも、346プロダクションも……
"喰種"が運営をしていて。
"喰種"がアイドルをプロデュースして。
"喰種"がアイドルになる―――――
―――"喰種"のための芸能プロダクションだったんです。
目をぱちくりさせている間に、見たことのない新しい景色はどんどん広がっていきました。
隣には、たくさんの女の子が……
クールできつく見えるけど、決めたことにはまっすぐな渋谷凛ちゃん。
人間に育てられた、とってもフレンドリーで色んな人と仲良くなれる本田未央ちゃん。
人間がちょっと苦手だけど、猫が大好きでアイドルへの情熱は一番な前川みくちゃん。
一番年上で、色んな勉強をして運動もバッチリな新田美波さん。
一番年下で、いつもキラキラした目で楽しそうにはしゃぐ赤城みりあちゃん。
お菓子作りが得意で、いつも人間の皆にお菓子をあげて笑顔にしている三村かな子ちゃん。
ロシア系の"喰種"で、とってもキレイな髪と瞳を持ってるアナスタシアちゃん。
お姉ちゃんの美嘉ちゃんが大好きで、お姉ちゃんみたいになりたい城ヶ崎莉嘉ちゃん。
弱気だけど、本当はすっごく強くて勉強熱心な緒方智絵里ちゃん。
ロックに憧れて、"喰種"だからこそアイドルになった多田李衣菜ちゃん。
とっても大きくて、でも可愛いものが大好きな諸星きらりちゃん。
"喰種"としてすごい力を持っているけど、ちょっと面倒くさがり屋な双葉杏ちゃん。
なんと人間と"喰種"の間に生まれた、難しい言葉が好きな神崎蘭子ちゃん。
私と同じ、"喰種"に生まれながらもアイドルになった女の子たちが並んでいました。
今日はここまで。
一番最初に特等席から見たアイドルのみんなは、人間も"喰種"も関係なく輝いて見えました。
いつか私達も手に入れられるって言ってくれた輝き。
時計の針がすすむごとに、たくさんのいい所を知っていった仲間のみんな。
そして始まったアイドル生活。
胸を膨らませて飛び込んだ世界は……でも、ちょっとだけ大変でした。
一番最初に躓いちゃったのは、デビューライブ。
私と、凛ちゃんと、未央ちゃんの3人ユニット『ニュージェネレーションズ』のデビューライブが、トラブルにあって中止になってしまったことです。
一度中止になってしまったデビューは、後に続く皆のためにもなかなかやり直せるものじゃなくて。
3ヶ月か4ヶ月、ほかの皆がユニットデビューするまで、ずっと地道な下積みを重ねなくちゃいけなくなってしまったんです。
でも、その中で皆のことをよく見られるようになって。
その中で、"喰種"のお友達や、ちょっとだけ人間のお友達もできて。
凛ちゃんや未央ちゃんの悪い所、それだけじゃなくってもっといい所をたくさん見つけられるようになって。
実は3人だけの秘密も作っちゃって。
苦しいこともあったけど、凛ちゃんや未央ちゃん、応援してくれるみんなと一緒に。
養成所で止まっていた時とは違って、確かに一歩一歩階段を上っていくことが出来ました。
そして迎えた合宿に、初めて立つ舞台……サマーフェスティバル!
多くはないお客さんでしたけど、それでも積み上げてきたものがあったから。
凛ちゃんと未央ちゃんと一緒に歩いてきた道のりがあったから。
だから、私もいっぱい笑顔になって!
プロデューサーさんが私を選んでくれた、もうひとつの理由で!
精一杯、その時を踊りつくしたんです!
わたしたちの曲が終わった時に、ふと気付きました。
キラキラしたステージ、素敵な衣装。
それはまるで、私が夢見たアイドルのステージだって。
夢みたいに綺麗な景色の中心に、いつの間にか私も立っていたんだって。
フェスティバルが終わって、たくさんのファンレターが届いたときに。
ふと、「アイドルみたい」って呟いちゃいました。
そしたら、みんなが笑って
「アイドルだよ!」
って言うんです。
そっか。
こんな景色が、まだまだ先に待っているんですね。
進めば進むほど、色んな素敵なものが待ってるんですね。
それを考えるだけで、すっごく楽しくてうれしい気分になるんです。
本当にありがとうございます。
私をここに連れ出してくれて。
ここまで引っ張ってくれて。
次は何があるんですか?
どんなお仕事ができますか?
今私が歩いている道は、どこに続いていくんでしょうか?
一緒に歩かせてください。
ニュージェネレーションズのみんなと一緒に。
シンデレラプロジェクトのみんなと一緒に。
そして、プロデューサーさんと一緒に!
島村卯月、頑張ります!
ここまで。
前編と比べて結構な変更点を加えています。
混乱させたら申し訳ない。
―――現在・今西部長―――
盛りこそ過ぎたけど、まだまだ暑い日が続く。
私も"喰種"である以上、人より身体も丈夫な筈なんだが
暑すぎる夏も寒すぎる冬もつらいつらい、長く生きるのもいい事ばかりではないねえ。
ハハハ、若いうちに鍛えておいてよかった。
おかげで今では部長と言う、なかなか余裕があって
外で汗水垂らして歩き回るような仕事をせずにすむ役職に就けている。
今の私は杏君のいい教科書といったところかな?
杏君が私くらいの年になった時、私のところまで来れているだろうか?
是非とも、悠々自適に好物の目玉を舐めて過ごすような生活を送って欲しいものだ。
彼女は結構有能だし、不可能ではないだろう。
そして才に溢れるのは"喰種"の能力も同じ。小さい体や耳の良さが功を奏して、生き延びることも難しくなさそうだ。
……まあ、こんなことを望むのはある意味残酷かもしれないねえ。
"喰種"が長生きすることはつまり……
たくさんの友達を看取ることになってしまうからね。
「おかえりなさいませ」
「ああ、ご苦労」
おっと。老人らしくまた昔の思い出に浸ってしまった。
冷房が効いた快適なビルの中から出るつもりはないが、これでも上司の出迎えに参ったんだ。
気持ちくらいはちゃんとしておかなくては失礼じゃあないか。
何せあの御方はアメリカから帰国した足で出社するほどの仕事人。
もう若いとは言い辛いのに、このとんでもなく暑い中を表情一つ変えずに移動してきた仕事人。
大学生の時でもアイドルの番組を片っ端から見続けて仮想プロデュース計画を書き込み続けた仕事人。
中学生の頃は1ヶ月にノート5冊以上に相当するファンレターを生成し目をキラキラ輝かせながら投函していた仕事にククク
プアハハハハしまった高校生の頃の悶えようを思い出すだけでハハハハハハハハハハハハ
「私の顔に何かついていますか?」
今西「いや何も。私こそ顔に何かついてたかい?」
「いえ。何か不愉快なことをお考えでいた気がしたので」
今西「真面目に君の帰りを待っていたさ」
美城常務「……時間を浪費するだけの追及は止めましょう」
あぶないあぶない。
美城「……」
今西「我が社の若人たちが気になるかい? 働きぶりはそこらの人間よりいい筈だがね」
美城「ええ。流石は高いパフォーマンスを誇るだけのことはあります」
美城「ですが、『彼ら』の生み出す効率の良さはそれだけに由来しない」
今西「ほう?」
美城「『彼ら』の中には常に『緊張』がある。死と隣り合わせの生を送ってこなければ生まれない緊張が」
美城「それが、常に目の前の仕事の実行に余念がないフットワークと、かつ日常的に些細なミスを逃さず処理する丁寧さに現れている」
美城「アメリカの兄弟会社にて研修を受け、学んだことです。"喰種"は人材として非常に優秀だ」
今西「それは嬉しい評価だ。未来のリーダーとして非常に期待できるよ」
今西「この場に人間が混じっているのを確認せず"喰種"という単語をハッキリ言ってしまわなければね?」
美城「問題はありません。仕事ぶりを見れば、少なくとも346プロダクションの職員ならば見分けは付きます」
美城「見られて困るアイドルも今はいない」
今西「おや、そこまで考えていたか。小さい頃からの容赦ない観察眼は健全と言ったところかな?」
美城「……無駄話をする時間を設ける予定はありません。それでは、社内の見学がありますので」
今西「はいはい」
まったく、相変わらず昔話を嫌う子だ。
……うーむ。彼女自身は『ここまで』は気付いていないようだが
やはり、ここにいる皆が彼女に注目しているね。
無理もない。
特例かつ我々の雇い主である美城一族の一人であり、いずれこの城を任せる後継者であるとは言え。
この場のほとんどが初対面の『人間』であり、我らが346プロダクションの秘密の一端を握っている存在だからね。
ピリピリしてしまうのも仕方がない。
やれやれ……肝心なところで情熱が目を塞ぐ子だから
思いがけないところで背中を刺されて食い千切られやしないかとヒヤヒヤしてしまうね。
今西「待ちなさい、美城常務」
美城「何でしょうか。用件は手短に」
今西「分かったよ」
今西「君は"喰種"をどう思っている?」
今西「罪を犯さなければ生きられない身体を持って生まれた者にも、城やドレスは与えられるのか?」
美城「本来ならば、斯く在るべき身を持ち生まれた者だけにガラスの靴は相応しい」
美城「生まれに寄り添うのは罪だけではない。星の輝きは、生まれた時すでに決まっている」
美城「むしろ"喰種"であるからこそ城に相応しいシンデレラとして舞い、より輝きを放つことが出来る、と私は考えています」
美城「ただし、人間を卑下するつもりは毛頭ありません」
とりあえず…喰種を認めていることだけ皆に伝われば、それでいいか。
これで今すぐ咬まれることは、もうないだろうね。
今日はここまで。
乙
常務…
さて、懐かしい娘の顔も見れたことだ。
次は孫娘たちの顔でも見に行くとしようかな?
かのプロデューサー君ほどではないが、私もCPの進行に一枚噛んでいる身だ。
彼女たち専用ルームにはそこそこ足を運んでいるし、暇な子とはコミュニケーションも取る。
そのおかげで「暇を持て余してフラフラしているお爺さん」とでも思われているかな?
何にせよ五ヶ月も関わっていれば、どの子が何処にいるかくらいの検討はつくようになる。
匂いを追ってもいいのだけど……まあ、この年で変態扱いされるのは流石に堪えるからねえ。
まずは中庭にでも行ってみようか。
「かな子ちゃん、この漢字……読み方、教えてくれませんか?」
「いいよ~。これは……『しぐれ』!」
「しぐれ、ですね……!」
おお、いたいた。やはりここだったか。
今西「具合はどうだい?」
かな子「…あ! 今西部長、おはようございます!」
智絵里「お、おはようございます! ちょっとずつですけど、漢字を覚えてます……!」
三村かな子君に、緒方智絵里君。
我が346プロダクションには、学校に行けなかった"喰種"の学力をサポートするために秘密の部屋を作っている。
アイドルには基本的に、そこで読み書きや計算を修めてもらうのだが……。
彼女たち…特に智絵里君は、はどうやらこの青々とした芝生の上で勉強に励むのが好きなようだ。
かな子君とは対照的に幼少期はあまりいい暮らしが出来なかったようで、学校にも行けなかったと聞いている。
その分を取り戻そうと、こうして勉学に精を出している。
ふふ、いつの時代も若者の学ぶことに一生懸命な姿はいいものだ。
今西「それはいい! ……おや? ずいぶんと可愛らしい栞じゃないか。何処で買えるんだい?」
智絵里「あっ、それは……。マッスルキャッスルの時に、幸子ちゃんがくれたんですっ」
今西「輿水君が?」
智絵里君はとても嬉しそうに、四つ葉のクローバーが入った栞を見せて来る。
幸子と言うと、輿水幸子君のことかな?
彼女は確か人間だったと思うが……
そうか、ここにも『こんな関係』が築かれているんだね。
「カワイイボクの話をしましたね!?」
匂いで分かってはいたが、こうも「にゅっ」と現れてくれると流石に心臓に悪いよ。
今西「おはよう幸子君。今、君が智絵里君に贈呈した栞の話をしていてね」
幸子「ああ、おはようございます部長さん……栞?」
幸子「……そ! そんなものよりもっとカワイイものがここにいますよ! ほら! ボクの話をしましょう!」
おや? やけに焦るねえ。
「幸子はんはほんま、優しいやさしいとこの話されるんは嫌がりはるんどす~」
「わざわざ徹夜して手作りしてきたからね! ほんっと幸子ちゃんは優しいよね!」
おっと、今度は"喰種"と人間が一人づつ。
幸子「い、いいじゃないですか紗枝さんに友紀さんまで!」
幸子「これは一時的にでも智絵里さんを馬鹿にしたボクなりのけじめです! カワイイボクは智絵里さんが入院されていた時の苦しみをちゃーんと理解できるだけですから!」
今西「入院?」
友紀「あれ、知らないんです部長? 智絵里ちゃん、ちっちゃい頃は病気で学校に行けなかったんですよ? ね、紗枝ちゃん!」
小早川君を見ると、この場の人間二人に見えないよう人差し指を口に当てていた。
ああ! そういう話として纏めてくれたんだね。
今西「それはそれは、お大事に……。ところでお茶会の約束をしていたのかい? 私はお邪魔かな?」
かな子「いえいえ! 良かったら部長も召し上がっていってください♪」
かな子「コーヒーだって淹れてみたんですよっ♪」
今西「ほほう! それは楽しみだ」
紗枝「幸子はんは、お砂糖いくつ入れはるんです~?」
幸子「なっ! 入れる前提で言わないでください! 別にお砂糖もミルクもなくたって……!」
智絵里「じゃ、じゃあどうぞ……!」
幸子「ええ、ありがとう、ございます……ゴク」
幸子「……」
かな子「コーヒーに合うクッキー、作ってきたよ?」
幸子「……ありがとうございます」
幸子「おいしい……」
友紀「幸子ちゃんはほんっとにかな子ちゃんのお菓子好きだねー!」
幸子「当然です。カワイイボクの舌に合う上質なお菓子です。誇ってもいいんですよかな子さん!?」
かな子「わあ! ありがとう~!」
今西「……お菓子、かあ」
かな子君もすごいものだ。
"喰種"でありながら人間の十時君や槇原君に負けないくらい、彼女のお菓子はたくさんの人間アイドルを魅了している。
うちには佐久間君という、"喰種"であるにも関わらず料理を極めた前例もいるが
やはり味が分からない身で人間の舌を唸らせるものを作れると言うのは、素直にすごい。
こういう時は自分が"喰種"に生まれてしまったことが残念で仕方ないねえ。
人間にとっては甘いお菓子でも、我々にとっては灰の塊のようなものだから。
今西「……美味いなあ。かな子君の淹れてくれたコーヒーは、とてもうまい」
かな子「! ……えへへ、ありがとうございますっ」
かな子「どうかこれだけでも、楽しんでください」コソ
今西「ああ。とても素晴らしいコーヒーだよ」
幸子「ほら、部長もどうぞ! 紗枝さんも遠慮しなくていいですから!」
今西「!? い、いや私のような老いぼれより若い皆で……」
紗枝「一人だけ仲間はずれなんてあきまへんえ?」
友紀「あっ! じゃあ部長ビールどうです!? せっかく成人同士なんですし飲みましょうよホラホラ」
今西「え、ええ~!?」
……喰うふりより、飲むふりの方が辛いんだねえ。
今日はここまで。
こんな感じで少しずつ1クール範囲にあったことをさらっていきます。
――――――――――――――――――――
まったく、ひどい目に遭った。
喉にざわりと染み付いたビールの泡に、粘膜を焼かれたかと思ったよ。
これからは人間から『飲み』の付き合いに誘われないよう、細心の注意を払わないといけないね。
だが、かな子君のコーヒーは実に美味しかった。
あのコーヒーは346カフェのものにも決して引けを取らない出来だった。
また頂きたいものだ。
…ふむ。菜々君のコーヒーも飲みに行くとしようかな?
この時間なら、あの二人もいるだろう。
やはり、この時間帯の346カフェは適度に席が空いていていい。
今西「やあ菜々君。スペシャルブレンドをもらえるかい?」
菜々「今西部長! わかりました、今すぐお持ちしますねっ!」
今西「ゆっくりで構わないよ。ああ、それと……」
菜々「?」
今西「近々、初ライブがあるんだろう? おめでとう、大躍進じゃないか!」
菜々「!」
菜々「はいっ! なんと、なんとなんとなんと! ナナのプロデューサーさんがライブの仕事を持ってきてくれたんです!」
菜々「苦節10年、ようやくナナのステージが始まるんですっ……!」
今西「10年?」
菜々「い、今のなしっ! ゲホッゲホッ!」
菜々「話を戻しまして……ナナ、ライブのこともそうですけど」
菜々「いろんな人におめでとうって言ってもらえたんです。それも、すっごく嬉しくて!」
菜々「みくちゃんに李衣菜ちゃんも、とっても素敵なプレゼントをしてくれたんですよっ!」
今西「ほう!」
みく「そうにゃ! みくと李衣菜チャンで、特別良いコーヒー豆を買って」
李衣菜「あとは私とみくちゃんが別々に、プレゼントを用意したんですよ!」
みく「ま、李衣菜チャンは実質気持ちだけみたいなもんだけどにゃ」
李衣菜「はあ!? 情熱はこもってるし!」
みく「つまり気持ちだけだにゃ」
李衣菜「い、いいでしょ別にー!」
相変わらず、見ていて微笑ましい2人だねえ。
今西「何をプレゼントしたんだい?」
みく「ふふん! みくはうさぎのカチューシャにゃ! 同じ柄のネコミミも買って、ナナチャンとお揃い!」
李衣菜「私は菜々ちゃんに好きな曲を聞いて、ギターで再現したんです!」
みく「聞いてみる? 李衣菜チャンの腕前ってほんっとひっどいの!」
李衣菜「なにおう!? 部長さん、こんな事言ってるのみくちゃんだけですからね!」
李衣菜君は、この場で菜々君に披露したギターを聞かせてくれるようだ。
この年では眩しすぎるギターから、コード? を箱に取り付け、
そして元気いっぱいに弦をかき鳴らしてくれた。
……うーん。
とりあえず、お金を取れる腕前とは言い辛いかな?
李衣菜「そんなー!?」
みく「ほらみろにゃ。ロックロックいう前にもっと練習しにゃー」
菜々「き、気持ちはとっても嬉しかったですからね! ね、李衣菜ちゃん!?」
李衣菜「うう……」
「アンタの演奏、なかなかクールだったぜ?」
おや?
聞きなれない声だね。
李衣菜「?」
「よっ。…技術はまだまだかもしんねーけど、アンタのギターには熱い魂を感じたよ」
李衣菜「ほんと!? あ、ありがとうございますっ!」
「いいよいいよ、タメ口で。あたしも見た目ほど年いってるわけじゃねーからさ」
菜々「ゲフッ」
李衣菜「そ、そう? あ…ありがとうっ! えっと……」
「おっと。名前を言うのを忘れてたぜ」
夏樹「アタシは木村夏樹。アンタの名前は?」
どうやら、ギターに込めた情熱を感じ取ってくれた子がいたみたいだ。
おや、この姿は……おなじ346のアイドルじゃないか。
しかしこの子は……
みく「……むー」
今西「気になるかい?」
今西「大切な相方が『人間と』仲良くしているのを見るのは」
みく「……そんなんじゃないです」
みく「ちゃんとみくだって、『あれから』は人間とだって仲良くするようにしてるもん……」
今西「うんうん。いい事じゃないか」
みく「……どうも」
みく「……でも、まだモヤモヤすることはあるにゃ」
みく「会社の中で、平気で『あんなこと』されることとか……」
今西「……あんなこと、ねえ」
菜々「……」
菜々「大丈夫ですよ、みくちゃん」
菜々「あの子たちはみくちゃんや、他の仲間を貶したいわけじゃないんですから」
みく「そうだけどっ……!」
今西「……」
確か、カモフラージュも兼ねてのことだったと聞いているが。
346プロダクションには、"喰種"だけでなく人間のアイドルもちゃんと在籍している。
例えば今の木村君や、先ほどの輿水君、姫川君のようにね。
勿論我が社の"喰種"たちは、その正体を隠し人間として彼女たちに関わっているわけだが……
そのせいで、耐えなければならないこともあるようだ。
今日はここまで。
乙
前編からいろいろあったみたいだけどそれも描写されるのかな
>>36
そうですね!
外伝前編を書き始めた時に予定していたほどは書けないと思いますが、
それでも挟めるだけ挟んでいこうと考えています。
――――――――――――――――――――
さっきも話した通り…
346プロダクションの人間アイドルは、仲間に"喰種"がいることなど「知らない」。
故に彼女たちにとって"喰種"は、姿すら見たことのない都市伝説のようなものであり、
テレビで伝えられる情報から「なんとなく悪いもの」だと思っているようだ。
そして、正義感の強い人間の子ほど"喰種"に対し強い義憤を燃やす。
その結果―――――
みりあ「がおーっ、がーおーっ!!」
仁奈「ぐーるの気持ちになるですよー!!」
拓海「オラアッ! ナメてっと喰うぞコラァ!!」
薫「キャーッ! ぐーるだー!!」
里奈「うわ! ガチヤバなのいるしー!」
莉嘉「たーべーらーれーるーー!!」
「そこまでだッ!」
仁奈「何っ!?」
珠美「喰種捜査官だ! この珠美特等が来たからには誰も襲わせやしない!」
裕子「おのれ人を襲い肉を喰らう悪鬼め! このエスパーユッコ特等のサイキックで粉みじんにしてやる!」
珠美「やっちまってください!」
裕子「諸星特等ーーーッ!!」
きらり「にょわーーーっ!!」
きらり「悪いわるーい"喰種"は、このきらり特等がお仕置きしてあげるのですっ☆ ぐいっ☆」
仁奈「わー! 宙に浮いてやがるです!」
みりあ「赫子もまるできかなーい!」
きらり「ぶんぶーん☆」
仁奈みりあ「ウワーーーーーっ!!」
きらり「たくみちゃんもっ☆」
拓海「は? い、いやアタシはいいっておいやめろちょっとま」
拓海「ぐわあああああああああ!!」
里奈「たくみーーーん!! アハハハアハハハハ」
拓海「笑ってんじゃねえぞ里奈ゴラア! ほんとに喰ってやるかてめえ!」
休憩室や中庭では、こんな「喰種ごっこ」が良く見られる。
おおかた"喰種"役は見境なく人間を襲い、それを捜査官役が倒すシナリオ。
人間からすれば、他愛のないごっこ遊びなのだろう。
もしくは、たまに報道される"喰種"被害に不安を煽られ、または見過ごすしかない自分に憤りを感じ。
それをヒーローごっこで発散したがっている側面もあるのだろうね。
いずれにしろ、人間たちが遊びで行う「これ」は、決して悪意があってやっているわけではなく…
だから決して責められたり、やめさせられたりする謂れなどない。
むしろ、自分と同じ人間が罪もなく死んでいくことに心を痛めている証として
その綺麗な心を褒めてあげるべきことさ。
だが
莉嘉「きゃー! きらりちゃん、つっよーい☆」
みりあ「みりあもやるー! みりあも捜査官、やるー!」
里奈「きらりちゃん百人力~! ヤバすぎー!」
きらり「おっすおっす、ばっちし☆」
とても、残酷なことだ。
人間たちには気付く由もないが、その義憤の切っ先を、常に間近で向けられているものがいる。
目の前で悪鬼と呼ばれ、自分の化身の打ち倒される姿をまざまざと見せつけられる。
時には、自分から打ち倒しに行く役を強いられる。
嫌がることはできない。人間としては、何もおかしい事ではない。
止めさせることもできない。人間として関わっている筈の自分が、どうして"喰種"などの肩を持つと言うのだろう。
悲しむこともできない。もし自分が人間でないと知られてしまったなら……
「どこかの怪物」に向けられた怒りが、一斉に自分に襲い掛かるかもしれない。
その可能性にずっと耐えながら、あの子たちはステージに上がり、テレビの前に立つ。
自分で踏み込んだ世界とはいえ……
やはり、とても残酷なことだ。
あの場を去ってしばらくすると、私の年老いて遠くなった耳に届いた声があった。
『ありがと、莉嘉ちゃん、みりあちゃん』
『きらりは、大丈夫だにぃ』
『"喰種"のみーんなに会えて、人間のみーんなに好きになってもらえて』
『人間のみんなは、きらりが人を食べるなんて知らないけど』
『きらりね、とーっても、うれすぃーの』
『きらりも、莉嘉ちゃんも、みりあちゃんも、里奈ちゃんも』
『拓海ちゃんは、薫ちゃんは、仁奈ちゃんは、珠美ちゃんは、裕子ちゃんは』
『ちゃーんと、大好きって分かってるもん』
『だからぁ、今のきらりはじゅーぶんはぴはぴ』
とても優しい声色を持っていた。
とてもか細い声だったよ。
今日はここまで。
>>2の画像にも表示されていますが、拓海は"喰種"として書いていた前編と設定を変更し人間として書いています。
あと珠美殿はひそかに喰種捜査官を目指しているという裏設定を作ってます。
多分なれないと思いますけどね。クインクス手術受けられるかどうかでワンチャン程度。
ただ、希望はある。
本当の本当に、心から安心できる居場所を作ろうと頑張ってくれる子だっているんだ。
蘭子「我が名は神崎蘭子……クククッ。今宵は我が僕たちに、新たなる眷属を紹介しよう」
小梅「新しい……お友達?」
蘭子「うむ。―――顕現せよ! 『二宮飛鳥』!!」
飛鳥「やあ、飛鳥だ。……成程、これが蘭子の属するコミュニティ。ボクは新たにセカイを構築したわけだ」
飛鳥「いや……構築した、は正しい言い方じゃないか。ボクが今まで不干渉だっただけで、キミたちは元からここに存在した」
飛鳥「……接続……そうか、ヒトの世界は接続によって広がっていくんだね」
飛鳥「よろしく頼む。ボクにとってもキミ達にとっても、新しいセカイへの良いコネクトになることを祈ろう」
アーニャ「アー……むずかしい言葉、ですね?」
小梅「中二病、仲間……だね……」
美波「こ、小梅ちゃん!?」
飛鳥「まだ初対面だ、一言でボクを表現できるかのように見られるのも仕方ない」
蘭子「ね! カッコいいでしょ!」
飛鳥「……フッ」
渡り廊下で見かけた女の子たちは、どうやら新しい友達を紹介しているところのようだね。
漂ってくる匂いから、その子達が人間か"喰種"なのかが分かる。
あの場には人間が1人。
"喰種"が3人。
そして、人間でもあり"喰種"でもある子が1人。
飛鳥「それじゃ……名残惜しいが、今日ボクには行かなければならないところがある」
飛鳥「決して損はしなかった時間だ。蘭子、また明日」
蘭子「闇に飲まれよー!」
小梅「す、すごい子と……お友達に、なったね……」
蘭子「我と彼の少女は共に晩餐を饗した身。深紅の宝石はその羽を彩り、漆黒の大地では純白の天使の下で身を寄せ合った」
美波「……ごめんなさい、今のはちょっとレベルが高くて分からなかったわ。晩ごはんのところは分かったんだけど……」
小梅「ケチャップソースの……ハンバーグと……ミルク入りコーヒーの好みが……合ったんだって……」
アーニャ「ハラショー! ランコ、сладкий……あまいもの、好きですね!」
蘭子「うん!」
美波「そう言えば、初めて人間のお友達が出来たのかな?」
蘭子「初めてじゃないです。同じ熊本出身の美穂ちゃんとも、九州出身の芳乃ちゃんとも仲良くなりました!」
小梅「そんなに……? サマーフェスの時は……まだ、人間のお友達……いなかったような……」
美波「そう言えばそうかも。蘭子ちゃん、最近意識して人間の子と仲良くなってる?」
蘭子「……えへへ」
蘭子「私、人間でも"喰種"でもあるんです。両方、私なんです」
蘭子「前は、『どっちでもない』って思ってて……人間とも"喰種"とも、仲良くなんて出来ないって思ってたけど」
蘭子「"喰種"のみんなとは仲良くできたから、人間のみんなとも仲良くできるんじゃないかって思いはじめて……」
蘭子「そしたら、人間のみんなに、"喰種"のみんなのいい所、たくさん知ってもらえるかなって思ったの」
蘭子「みんなに笑ってほしいから……!」
美波「……!」
アーニャ「……ランコ」
小梅「それ……プロデューサーさんの、おかげ?」
蘭子「うん!」
蘭子「プロデューサーが、"半喰種"じゃなくて……『私』を見てくれて」
蘭子「それだけじゃなくって、合宿で、美波さんとアーニャちゃんが、私を仲間に入れてくれて」
蘭子「そうやって、私の世界を広げてくれたから……!」
蘭子「……ハッ」
蘭子「ぼ……忘却の彼方っ! すべては忘却の彼方に葬られんっ!!」
小梅「……いーなー」
小梅「いーーーーーなーーーーー」
蘭子「こ、小梅ちゃん!? や、どうしたの!? まってそこだめ、かじらないで、んナあああああああ!!」
美波「あはは。小梅ちゃん、拗ねちゃってる」
アーニャ「でも仲良し、ですね?」
美波「うん。……そっか」
美波「きっかけは、合宿だったんだ」
美波「きっかけに、なれたんだ……」
"喰種"が、"喰種"と人との相の子を変えた。
そして今、相の子が人と"喰種"を変えようとしている。
その先に何が待っているかは分からないが……
どうか、光に包まれたものであってほしいね。
――――――――――――――――――――
不満と希望がない交ぜになった346プロダクションは、そしてまた次の朝を迎える。
今回も平穏に、次の日を迎えることができた。
私はシンデレラプロジェクトの専用ルームにも上がってみる。
そこにはウサギを象った、大きなピンクのクッションが設置されている。
曰く…アイドル自身の個性を知ってもらうために持ってきた、私物のひとつらしい。
そして……やはり、彼女はそこで惰眠を貪っていた。
今西「やあ。相変わらずだね杏君」
杏「んー……わー、部長だ。急に来るもんだからショックで寝込むよ。ぐー」
今西「何を今更。誰が来るかなんて、君の耳ならとっくに分かるだろう?」
杏「まあ……そうなんだけどさー。ねむ」
今西「少しだけでいいから、老人の話に付き合ってくれたまえ。自慢の手土産も持ってきたからさ」
杏「お、分かってるじゃん部長。いいねえ新鮮なアメだ」
ケースを取り出して渡すと、杏君は待ってましたとばかりに起き上がる。
彼女が「アメ」と呼ぶ手土産は、飴玉のように丸くて汁気がたっぷりの、ジューシーな白球だ。
杏「あぐ……んち、もぎゅ……うん! うまい!」
今西「それは良かった。……君は変わらないフリが上手いねえ」
杏「いや、杏は実際変わってないし。仕事が面倒くさいのも、アメばっかり食べてるのもおんなじでしょ」
今西「いやいや。デビュー前と比べて、随分と面倒見が良くなったと思うよ?」
今西「今だってパトロールをやってくれていたようなものじゃないか」
杏「何のことかなー。杏は耳がいいから、たまたま会社で何が起きてるか分かるだけだよ」
今西「そうかそうか。有事の時はCPのみんなをよろしく頼むよ」
杏「……約束はできないよ。杏の耳が届くのは、この敷地内くらいだし」
杏「白鳩が何か企んでたとしても、ここからじゃ聞こえないからね」
今西「そこまで背負わせるつもりはないさ。アイドルを守るのは、こっちの仕事だからね」
杏「……で? 話はそれだけ?」
今西「いいや。これから346プロダクションは、どう変わっていくだろうと思ってね」
今西「君も知っているだろう? 蘭子君や、未央君たちが人間にもアプローチをかけ始めていることに」
杏「……あー」
≪美穂ちゃんのステージ、今回は応援に行くよ! 頑張ってください!≫
≪ありがと! 熊本の女の強さ、見せてあげるから!≫
≪行くぞ茜ちん! あの朝日まで競争だー!≫
≪うおおおおおお!!≫
≪ふ、二人とも待って~……!!≫
≪渋谷凛ちゃん、だよね?≫
≪ど、どうも……≫
≪……? どちら様?≫
杏「……うん。今でも聞こえてくるね」
杏「ニュージェネレーションズなんかは、蘭子ちゃんに負けないくらい人間と関わって来てるなあ」
今西「未央君は心が人間寄りなんだってね。今年の346プロは本当に色んな子がやって来た」
今西「ここから、人間と"喰種"の関係に変化が生じるんじゃないか……私はそう思って、楽しみにしているんだよ」
杏「いい変化ばっかりとは限らないけどね」
今西「……何か、不安要素でも?」
杏「んー……や」
杏「……そろそろ皆が来るけど、まだ話したいことある?」
今西「! いや、やめておこう。老人の散歩は終わりさ、ちゃんと若い者に席を譲るよ」
今西「他愛ない話に付き合ってくれてありがとう」
杏「どーも。…………」
今年は本当に、面白い子がやって来た。
二つの生物の境を踏み越える少女に、人の心を持った少女に、天才。
勿論、今まで在籍していたアイドル達がつまらないとは決して思わない。
だが、今年は殊更大きな化学反応が起こるだろうと確信している。
杏君のいう通り、それが決していい方向に繋がるとは限らない。
……だが、どうか望みたいものだ。
彼女たちが……もしくは、彼女たちの導いたものが。
今まで続いてきた「悪いもの」を壊し。
周りも、彼女たち自身も、笑顔でいられる世界で暮らせるようにと。
今西「……!」
「! 今西部長。おはようございます」
今西「ああ、おはよう。今からミーティングだったね?」
「はい。双葉さんのお話に、付き合ってくださったのでしょうか。ありがとうございます」
今西「いやいや、付き合ってもらったのはこっちだよ。礼を言うのは私の方だ」
今西「……本当に、礼を言うのは私の方だね」
「……? はあ」
ひとつ、言えることがある。
彼女たちが、ここに一つの笑顔を取り戻してくれたことだ。
彼をずっと見てきた者としては、礼を言い尽くしても足りないねえ。
今西「気張りたまえよ、プロデューサー君」
武内P「…? 当然です」
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
杏「……」
きらり「あーんずちゃんっ! おっはー☆」
杏「ぐえっ!」
きらり「にょわっ!? だ、だいじょーぶ?」
杏「心配するくらいなら毎朝抱き着くのはやめよ?」
きらり「う、うん……杏ちゃん、いつもちゃんと避けてたから、ビックリしちゃって。ごめんね」
杏「あー……。いいよ、別に。考え事してただけだから」
きらり「かんがえごとぉ? なに考えてたの?」
杏「ん? そりゃ、不労所得はどうやったら効率よく手に入るかなーって」
きらり「んもー! 杏ちゃんはそんなことばっかり考えりゅー!」
杏「どやあ」
かな子「杏ちゃん……今日もお仕事、がんばろ?」
智絵里「杏ちゃんにもコーヒー、淹れますからっ」
杏「おー、智絵里ちゃんのコーヒーかあ。いいねえ」
杏「……」
早苗≪……あら? 珍しいわね、あたしが二番手なんて≫
雫≪そうなんですよー。ユッコちゃん、まだ来なくって≫
早苗≪なんか連絡来てる? あたしはなんも言われてないわよ≫
雫≪それが……早苗さんから電話、かけてみてくれませんかー?≫
早苗≪なによ? 雫ちゃんから連絡してくれてもいいじゃない……≫
早苗≪ま、いいけどね。…ぴ、ぽ、ぱ、っと≫
雫≪私もかけてみたんですけどー……≫
早苗≪あら、そうなの?≫
早苗≪…………≫
早苗≪……おっかしいわね≫
早苗≪ユッコちゃん、何で電話に出ないのかしら≫
本当の、本当に。
どうか、いい未来が待っていて欲しい。
~一方、美城常務・執務室~
美城「……フフフ」
美城「帰国して直ぐ、この346プロダクションの全貌を視察したが……」
美城「とても良い素材が揃っている」
美城「美しい城を作るにはもってこいのアイドルが勢ぞろいだ。我が先祖が"喰種"のポテンシャルに価値を見出したのは、賞賛すべきことだな」
美城「だが、在るべき理想のアイドルには程遠い」
美城「美しい城には、それに見合った美しいお姫様が必要だ」
美城「バラエティや行き過ぎた個性などと、今の美城は物語性を潰しているものばかりだ」
美城「千川」
ちひろ「はい」
美城「すぐに346プロダクションの全プロデューサーを集めろ」
美城「現在進行しているプロジェクトをすべて白紙に戻し、あるべきアイドルの姿に戻すべく企画を―――」
ちひろ「申し訳ありませんが、常務にその権限はありません」
美城「何!?」
ちひろ「私達の雇用主である、美城一族の一員とは言え……」
ちひろ「常務はこちらでのプロデュース経験が無きに等しいド素人」
ちひろ「更に言えば、万が一346プロダクションの機密が漏洩した場合、人間である以上現時点において常務には何の刑罰も発生しません」
ちひろ「346プロダクションは機密が多く、その運営にはとても重い責任が伴います」
ちひろ「ですから、この中枢を担うには貴女の経験や立場が浅すぎるのです」
美城「……なんだと?」
美城「では、346プロダクション全体の企画を統合することは」
ちひろ「不可能です」
美城「私が目を付けた高垣楓に、極上の仕事を回すことは」
ちひろ「(彼女と神崎蘭子は我が事務所の最高機密ですので)不可能です」
美城「城ヶ崎美嘉のプロデュースは」
ちひろ「(中堅どころなので)駄目です」
美城「木村夏樹」
ちひろ「(人間だけど)無理」
美城「……渋谷凛」
ちひろ「むーりぃ」
美城「……私に出来ることはなんだ?」
ちひろ「まずは、新人やランクの低いアイドルをプロデュースして実力を示してください」
ちひろ「常務がプロデュースできるアイドルをリストアップしたものがこちらになります」
ちひろ「『人間か"喰種"か』を含めて、常務が個人情報の開示を求めることが可能なアイドルは、こちらから選択された方のみになります」
ちひろ「それ以外のアイドルについて情報を探った場合、処罰の対象になりますので不審な行動は慎んでくださいね」
ちひろ「では、精々頑張ってください♪」バタン
美城「……分かった」
美城「……あの"喰種"は人間が嫌いなのか?」
美城「後半、私への口調がやたら刺々しいものになっていたような……」ショボン
今日はここまで。これにてアニメ14話の範囲は終了です。
おつー
~過去・本田未央~
本田未央、15歳。
高校一年生で、赫子は甲赫。
そんな未央ちゃんは半喰種でも、たまにウワサに聞く人工喰種でもなく。
純粋な"喰種"として産まれたんだ。
「血のつながった」お父さんとお母さんの話は……
どんな人だったとか、「今の」お父さんとお母さんとはどうやって出会ったのかは、あんまり知らない。
とりあえず、最初は"喰種"と知らなくて普通に友達付き合いして。
私が生まれたころに、正体を明かして私を預けたってことくらいしか知らない。
もしかしたら、聞けば教えてくれたかもしれないけど……
何となくだけど、そのことを聞く気にはなれなかった。
多分だけど、もし「血のつながった」お父さんやお母さんのことを、より多く知ってしまったら。
知った分だけ私は今の「育ててくれた」お父さんやお母さん、
兄貴や弟のことを、家族だと思えなくなっちゃうかもしれないって思ったから。
家族の絆が薄くなっちゃうかもしれないって思ったから。
それが怖くて、こんな話をしたがらなかったんだと思う。
だってこの家の中では、皆が人間で……
"喰種"なのは本田未央ただ一人だったから。
私が人間じゃないこと、そのことを家族以外の人たちに知られちゃいけないって教えてもらったのは……多分、小学校に入るちょっと前。
お父さんや兄貴が色とりどりのものを食べてるのに私だけ赤い肉ばっかり食べてるとか、
たまに弟のミルクを横取りして食べたらあんまりにも不味くて吐いちゃったとか、
そう言うことがあったから、「何か違う」ってことは分かってて、ぶっちゃけショックは感じなかったかな。
って言うか、自分だけご飯を食べるフリとか、人間じゃ太刀打ちできないような運動能力を制御する方法とか学んで、
とにかく未央ちゃんが"喰種"だってバレないようにする訓練が大変で……
当時の私は幼いながらに「バレたら死ぬ」って分かってたから、それはそれは必死で人間のフリをしてたもんだから、
自分がどうだからショックだー、なんて考えるヒマは無かったな。
ああでも、悪い事ばっかりでもなかったよ?
家族のみんなが教えてくれる以外にも、自分でも近所のおばさんとかクラスメイトを見て、人間の行動を学んでたから。
そうやって人間観察をしてる時に悩んでる人を見つけたら、お人好しの未央ちゃんのことなので相談に乗ってあげたり、励ましてあげたり。
そんなことを繰り返してたら、いつの間にかめちゃくちゃ友達が増えて。
クラスのアイドル本田未央ちゃんが出来上がってたんだよなー。
いやー、こんなの秘密がバレやすくなって結構まずい状況なのにどうしてこうなった。
そんなわけであんまり深い事を考えなかった小学生時代のロリ未央は、秘密を隠しつつ結構楽しく暮らしてたわけだけど……
中学生になったかならなかったくらいの年、要するに思春期のとき。
人間のフリにも慣れて、周りを見渡す余裕が出来て……
私、気付いちゃったんだよね。
"喰種"が、人間に嫌われて怖がられてること。
そりゃそうだよね。
人間の肉(あとコーヒー)しか食べられないんだもん。それ食べなきゃ生きていけないもん。
"喰種"は人間の天敵ってことになるよね。
私が正体を隠して生きなきゃいけないのも納得だよ。
……いや、私は人を殺したことなんてないよ? 殺人で起訴されても全くの無根拠、無罪確定だよ? 控訴するよ? できないけどさ!
お父さんの学生時代からの友達に、双海先生っていうお医者さんがいるから、
医者先生に肉を手配してもらって、私は今日まで生き延びてる。
もちろんこれからも人を殺したいなんて思わない。
本田未央は人間に優しいクリーングールなのだ!
……なんてね。
ほんとは分かってる。
"喰種"は人間を殺さなきゃ生きていけない。
人間の死を食べていかなきゃ、自分が生きられない。
私が食べてるお肉も、たぶん死んだ人のものだろうから……人間の死を利用して生きてるのは、おんなじ。
私、まるでハイエナだ。
それに気付いてからは、まわりの皆には打ち明けてもしょーがないことだから、悩んでるふりなんて見せなかったけど。
私は本当の意味で「人間」になれないって悟っちゃって……辛かったな。
……辛い、はちょっと違うかも。
さみしかった。
身体は人間じゃないし、生活は"喰種"じゃないし。
って言うか、街で"喰種"を見かけたり"喰種"の集まる喫茶店にこっそり入って話を盗み聞きすることはあっても、"喰種"の友達は出来たことなかったし。
ミンナ
考えれば考えるほど、心も人間から離れてく気がして、かと言って"喰種"にもなり切れなくて。
そんな私が嫌だったから……
だから346プロのオーディションに応募したのかな?
346プロの秘密を知ったのは……ある"喰種"が集まる喫茶店に行って、"喰種"のことを知ろうとして客の話を盗み聞きしてた時。
未央ちゃんも匂いは"喰種"そのものだったから、人間がいない時はふつーに"喰種"の話が聞けたんだよね。
そこで、私と同じ"喰種"の女の子が話してるのを聞いたんだ。
「346プロダクションは"喰種"が"喰種"のために運営している芸能事務所だ」、って。
行ってみたいって思った。
"喰種"に話しかけに行くのは、実はちょっと怖くて躊躇してたけど。
でも芸能事務所なら、ちょっとは話しかけやすい子が来てるんじゃないかって思ったから。
"喰種"の友達が出来るって思ったから。
だから、チキンな未央なりに女は度胸!と、いきり立ちまして。
そして無事、笑顔を理由に第二次選考を突破したわけです。
1回普通に落選するとは予想外だったね。うん。
そんな訳で、内心ビビりつつアイドル活動を始めたワタクシ本田未央。
キュートで巷に聞いてた"喰種"らしくなくほんわかした尾赫ガール、しまむーこと島村卯月ちゃんと。
クールだけど弄れば可愛くて楽しい羽赫喰種、しぶりんこと渋谷凛ちゃん。
そんな二人と「ニュージェネレーションズ」なるユニットを組みまして、アイドル活動はスタート……
……しませんでした。
ちょっと、色々ありまして……情けないことに。
未央ちゃん、デビューライブ直前で精神的にダウンしちゃいまして。
それからは引きこもっちゃったり、プロデューサーを突っぱねちゃったり、
デビューライブを蹴っちゃったもんだから、みなみんたち他の子とは違い地味な下積みをせざるを得なくなり、
それにしまむーもしぶりんも付き合わせちゃって……
ほんとに迷惑かけちゃったな。ごめんね、しまむー。しぶりん。プロデューサー。みんなも。
迷惑をかけるからって、自分勝手なこと言ってアイドルやめようとしてごめんね。
こんなどうしようもなかった私と、今まで一緒に歩いてくれて、ほんとにありがとね。
合宿のとき、つみれ汁を美味しいって言ってくれてすっごく嬉しかったよ。
あれ、"喰種"には不評かなって思ったもん。
あのファンレターを貰えたのも、サマフェスでお客さんみんなを楽しませることが出来たのも。
しまむーが、
しぶりんが、
プロデューサーが最後まで一緒に歩いてくれたから。
こんな頼りないリーダーを頼ってくれたから。
みくにゃんが。
りーなが、りかちーが、みりあちゃんが、みむっちが、ちえりんが、みなみんが、アーニャが、らんらんが、きらりんが、杏ちゃんが、
みかねえや、あーちゃんや、他のみんなも。
ずっとずっと、色んなものをくれて、支えてくれたから。
だから、あんなに素敵なステージをつくることが出来て。
奪うばかりだった私が、やっと一人救うことができました。
みんなありがとう。
本当に、本当にありがとう。
もし誰か友達が、悩んで崩れそうになったら。
その時は未央ちゃんがいっぱい助けるから。
いっぱい助けられた分、どこまで出来るか分からないけど、私が助けになるから。
だから……
ふつつかものの"喰種"ですが、どうか仲良くしてあげてください!
なんてね!
今日はここまで。
個人的には未央ちゃんが喰種設定を練ってて一番楽しい子です。
今のところ前編からの設定変更は
「ゆかり、拓海が喰種→人間」、
「アーニャの赫子が鱗赫→尾赫」、
「卯月がアイドルになりたいと言った時両親は割とお気楽に許可した→きつめの条件を出すくらい結構渋った」
の三点になっております。
ノロって尾赫だったのね
今のところCPの赫子設定は
羽赫:凛、蘭子、智絵里、杏
甲赫:未央、李衣菜、美波、きらり
鱗赫:かな子、みりあ、杏(2種持ち)
尾赫:卯月、みく、莉嘉(美嘉とおそろい)、アーニャ
となっております。
赫子の形とか考えるのめっちゃ楽しい
みりあ赫子出せるのか
11歳で出せるなら将来大物になりそうだな
>>68
そう言えば中学生くらいからっぽかったですね、赫子出せるの。トーカやヒナミがそのくらいだったかも…
みりあは天才ってことでいいか
あとCP以外で考えてたアイドルの赫子設定でこんなのもあります。
藍子は甲赫であり形は原作:reオークション編に登場したピクハゲのものを横幅を広くした感じの半月状。
両肩の甲赫の縁を合わせて中に籠ることで完全防御形態となることが出来るのだ!
生存報告
来週には再開する予定です
>>70
乙です
いつまでも待つので焦らずじっくりお願いします
~現在・星輝子~
ど…どうも。星輝子だ……
甲赫の"喰種"……座右の銘は、「キノコはトモダチ、エサじゃない」……フヒ
こんなのでも、一応アイドルで……
今年の梅雨まではトモダチのシイタケクンと一緒にジメジメしてたはずが……
プロデューサーに見つかって、オーディション会場に引きずり出されて……
気付けば、アイドルに……
どうして、こうなった……
い、いや、楽しいけど……
まゆさんや小梅ちゃんに出会って……
幸子ちゃんって言う、人間だけど、可愛い子とも仲良くなって……
楽しいけど……
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
楓「……うふふっ♪」
ど、どうして、私はここにいるんだ……?
今日はここまで。とりあえず1レスだけ更新。
凛ちゃんは卯月を失っても未央がいればギリギリ闇堕ちせず踏みとどまれるんじゃないかなーとか、某バトロワssを見て考えてました。
両方失うとやばそう
乙
……え、ええと……このヒト……
いやヒトじゃないのか……?
いや、半分ヒトか……?
ともかく……このヒトは高垣楓さん。
元々モデルだった人で、今では346プロダクションで一番人気のアイドル……
そ、そりゃ、そうだよな……
背が高くて、目は綺麗なオッドアイで、歌声も、雄々しさと清らかさがあって……
私のようなジメジメグールは、近くにいるだけで干からびそうだ……
……そ、それでだ。
楓さんは……私も、人から話を聞いただけなんだが……
「人と喰種の混血」、らしい。
親のどっちかが人間で、もう片方が"喰種"……
母親が餌と間違えて吸収してしまったり、そもそも栄養が足りなくて、本当は子どもなんかできないらしいが……
それでも、「奇跡」が起こって生まれる場合があるって……
じゃあ、私も「混血」かもしれないのか……って思ったことがある。
私は、親の顔知らないしな。
「モノゴコロ」が付いた時には、傍にはキノコしかいなかった……
い、いや、私の話は今はどうでもいいんだ。
楓さんの話をしよう。もしくはキノコ……シイタケクンの話、するか……? してもいいのか……!?
……な、なわけ無いですよね、ハイ。楓さんの話をします、ハイ……
普通の"喰種"と、「混血」にはちゃんとした見分け方があるんだ。
それは「混血は片目だけが赫くなる」ってこと……
私はしっかり両目が赫眼になるから、普通の"喰種"でした……
蘭子ちゃん……えっと、小梅ちゃんとよく一緒にいる子で、この子も「混血」なんだ……
346には楓さんと蘭子ちゃんで、2人の「混血」がいる。
その子には、片目だけの赫眼を見せてもらったことがある。
蘭子ちゃんは右目だけが赫くなってて……楓さんは左目が赫くなるらしい。
そんな目の特徴から、楓さんや蘭子ちゃん、人と"喰種"の混血として生まれた人は……
―――「隻眼の喰種」って呼ばれる。
隻眼の喰種はすごいらしい。
人と同じご飯を食べることが出来るのに、赫子を出すことも出来る。
しかも、普通の"喰種"とは比べ物にならないくらい強い赫子をだ。
蘭子ちゃんはどうだったか、聞いたことはないが……
楓さんの方は、とんでもない話をよく聞く。
なんでも物凄い数の捜査官を、一度に相手にして勝てるとか……
その数は、山で見つかるキノコをかき集めても足りないくらいだとか……
私達"喰種"は人間を食べるが……楓さんは"喰種"も食べてたとか……
そんな話が346中の喰種に伝わっているから、"喰種"アイドルの大体が、楓さんを怖がってる。
瑞樹さんや、美優さんみたいな、楓さんのことを知ってる"喰種"なのに普通に話しかけてる人たちもいるけど……
…あの人たちはあの人たちで、すごいよな……
そう言う私も……いや、怖いのが全部じゃないんだ。
アイドルとして、ステージで歌ってる姿はすっごくキレイだから……
そう言うところは、すごいって言うか……尊敬してるんだ。
えっと……別に噂通りの怖い人ってわけじゃないんだと思う。
蘭子ちゃんに皆でハンバーグを作ったとき、楓さんも参加してて……
その時、優しそうな顔で笑ってたから。
思ったより怖い人じゃないのかな……とは、思ったんだ。
でも、それでも……
楓さんは何か「特別」な感じがする。
生まれもそうだし、見た目とか、アイドルとしてのオーラ…?とか……
私みたいなのとか……あとは、小梅ちゃんたちみたいな普通の"喰種"とか。
同じ隻眼でも、蘭子ちゃんは親しみやすくて……
楓さんは、周りにいる人達とはいろいろと違ってると思うんだ。
だから、正直ちょっと話しかけづらい。
元々、自分から話しかけるなんて出来っこないが……
楓さんは、とくに。
それは、それとして。
なんで……
……なんで私は…………
楓さんのミニライブに呼ばれているんだろう……
凛「……?」
卯月「あ、あはは……」
未央「アレワタシナニカワルイコトシタノカナナンデコノメンバーナンダロカエネエサマオコッテルカカエデサマナニカキニサワルコトデモアレナニドシテ」ガクガク
蘭子「これが世紀末歌姫の魔力……!?」フルフル
楓「あら? もっと気楽にしてくれていいんですよ? ……きらっ、とね?」
……まあ、呼ばれたのは私だけじゃないんですけど……フヒ
今日はここまで。
やっと全体プロットができてまともに続きを書けるようになりました。
楓「……んー……」
卯月「」カチカチ
未央「」コチコチ
蘭子「」カチコチ
この仕事で、私は2回ほどビックリさせられた……
1回目は、仕事の話が来たとき。
……このゲスト参加のお仕事は、私の親友からいきなり伝えられたものだ。
楓さんの名前が出た時は……気絶しそうになったな……
ゲストが私一人だったら、たぶん枯れていた……
今でさえ枯れそうですけどね……
楽屋では楓さんが椅子に座ってたから、私達5人は床に正座してました……
何もしてないけど、なんかそうしなきゃいけない気がしたんです、ハイ……
ちなみに今、楓さんも合わせて正座されてます……
なんだこれ……
……話を戻そう。
仕事の話のほかに、もう1回ビックリしたのは……
凛「……あの」
楓「! あら、どうしたんですか?」
楓「確か……凛ちゃん、ですね?」
凛「うん」
輝子「!?」
あ……あの凛さんって人……
特にためらわずに、楓さんに話しかけただと……!?
……あとで未央さんに教えてもらったことだけど……
凛さん、"喰種"の噂話については単に興味が無くて疎かったらしい。
だから、楓さんのこともあんまり恐れてないのか……
凛「……会場。ここで本当に合ってるんですよね?」
楓「ええ! 間違いなく……マッチが無くても♪」
凛「それにしては……」
凛「……会場、小さい気がします」
卯月「そ、そうですよね……?」
未央「別に、小さいからどうだって話じゃないとは思うけど……」
蘭子「この場に如何様な魔力が……?」
そう。
もう1回ビックリしたのは、この会場にきたときだ。
場所は、漫画とか、DVDとかを売っているお店の一番上の階……イベント用のスペースらしい。
つまり、ものすごく狭いところだったんだ。
……いや、さすがに机の下よりは広いけどな……
それに私は狭い方がいいし、ちょっとホッとしてるが。
それでも……私がデビューしたときの会場より、ずっと小さくて狭い。
……いや、箱が小さいことに文句を言うつもりはない。
私も最初は、少ないファンの前で歌った。
ボッチだった私が、プロデューサーという親友を初めて持って。
ジメジメしたやつなりに、ステージの圧力に負けないように、必死に歌っていたら。
初めてのステージが終わった後……何人か、私に向かって拍手してくれた。
その中には"喰種"も人間もいた。
本当なら、小さい私なんかエサにしてくるはずの"喰種"に。
私なんか気にも留めないか、汚いものを見る目だけ向けて来るかだけの人間が、だ。
そういうものだと、思っていたのに……
あの人たちは、優しくて、楽しそうな顔で笑ってくれたんだ。
ずっと日陰者でボッチだった私に、何人もの人が笑顔を向けてくれたことを、私は忘れたことはない。
アイドルにも慣れて、ファンというトモダチが増えて、あと、アイドルのトモダチもできて。
あの数は「しょぼい」って言うものだったと知った今でも……
やっぱり、私にとって、あの人たちはすごく眩しかった。
すごく大事にしたいって思ったんだ……
……あの、スミマセン。
自分語りばっかりだな。ほんと……スミマセン。
私が言いたかったのは、けっして会場の小ささが不思議ってわけじゃないってことだったんだ。
問題は、その小さい会場にいる人のことで……
なんで、この人が……
凛「なんで、楓さんがこんなところで……?」
今日はここまで。
大阪両日で応募してたけど両方落ちました。まあ1セットずつしかCD買ってなかったし当然っちゃ当然。
ハイファイ一枚で取れた去年がおかしかったんだ。
乙
原作ピエロとかえらいことになってんな
>>86
そっすねえ
ピエロとかフルタとか和修とか、正直このシリーズを書き始めた頃に鍛えた知識では
原作の理解が追い付かなくなってきてます
凛さんが、私の疑問を言ってくれた。
卯月さんたちの方を見ると、みんな同じことを思ってたみたいだ。
自分から言わなかったのは、もしかしたら楓さんを怒らせるかもしれない……と思っていたからなんだが……
楓さんは、くすくすと笑って答えてくれた。
楓「意外かもしれませんけど」
楓「ここ、私のデビューライブの場所なんです♪」
…………
「「「―――――えええええええええ!!?」」」
未央「え! は!? 嘘!? 楓さんほどの人が……お方が!? ここで!?」
卯月「私達よりずっと狭い場所ですね!?」
凛「もっと大きな舞台かと思ってた……」
蘭子「歌姫は馬小屋にて産声を上げた……?」
楓「もう! お仕事には大きいも小さいも無いんですーっ」
少しだけむくれる楓さん。
……あの、蘭子ちゃん。馬小屋はひどくないか?
あ、神様の話に出てくるのね。
……神様、か。懐かしい言葉だな……
楓「……まあ。私も、後から知ってびっくりしました。ここは、普通346のアイドルがデビューライブを行う場所よりずっと小さいって」
楓「実はここでのお仕事、プロデューサーさんは『あえて』ここを選んだみたいなんです」
楓「かつては『隻眼の王』なんて呼ばれて、誰もが恐れる私を捕まえて……あえて」
『―――あなたは誰ですか? 私の暇つぶし相手ですか?』
『? そうですよ? 少しの力で死んでしまうひと達が、暇つぶし以外の何かになるんですか?』
『だって、つまらない人ばかりですから』
『決まったポーズしか求めないカメラマンさん、睨むか物陰で悪口ばかりの同僚さん』
『大声を上げて、勝てもしないのに私に襲い掛かって来るだけの"喰種"や捜査官』
『悲鳴を上げるだけの、さらに弱い"喰種"や人間』
『そんな人たちしかいないのに』
『??? どうして? どうして、貴方には勝てないんでしょうか』
『……私は、死ぬのでしょうか』
『ああ、そうですか』
『……えっ?』
『……アイドル?』
楓「……」
楓「……でも、この会場はすてきなところです」
楓「だって、ほら」
楓さんは目をつぶる。
静かになった楽屋には、私達以外の声が響いていた。
『楓さんまだかなー』
『へえ! 初ライブに参加してた人なんですか!』
『サイリウム、余分に持ってきてるんです。良かったらどうぞ!』
『今日はニュージェネが来ると聞いてチケット買いました!』
『きのこはいいぞ』
『じゃあ蘭子ちゃんの可愛さについて語ってあげましょう!』
とても近い場所から聞こえる声だった。
楓「――こんなにも、ファンの皆さんが近いんですから」
――――――――――――――――――――
―――その後、ファンの列が崩れるトラブルがあった。
そこに楓さんが現れて、解決してくれた。
皆と一緒にうちわを手渡してる時も、舞台で歌っている時も。
来てくれた楓さんの……トモダチ一人一人に、楓さんはニッコリ笑いかけていた。
おお、なるほど……
楓さんはこういう人なんだ。
私と同じことを考えていた人。
こう言うのを、親近感って言うのだろうか。フヒ
そう言うことなのかな。
私や、蘭子ちゃん。
凛さん、卯月さん、未央さんが呼ばれた理由って。
みんな、楓さんに親近感を抱いてるんだろうな。
――――――――――――――――――――
そして、ミニライブは無事終わった……
蘭子「碧眼の女神!」
楓「あら? 女神って私のこと?」
蘭子「うむ! 是非とも、碧眼の女神が為した業を奏でよ!」
楓「業? そうね……業なら……喰種に自分の赫子を仕込んで、無理矢理動かしたお話とか……」
蘭子「ぴいっ!? い、否! 業とはそのような堕天の印に非ず!」
楓「あら! 続きを話して欲しいのね? そうそうこの方法、死体にも有効でー……」
蘭子「ちがいます~っ!」
凛「すごいね。蘭子、すっかり楓さんに懐いてる」
卯月「まるで親子みたいですねっ!」
未央「親子とな? ……そう言えばかえ姉さまとらんらんって共通点多いよね。羽赫だし何より……」
凛「未央。そういう話は、今はいいんじゃない?」
未央「……そうだね! かえ姉さまも、私達と同じアイドルだったって分かったし!」
卯月「楓さんがすごく近くなった気がしますね!」
卯月「ね、輝子ちゃん!」
輝子「!」
輝子「……ああ、そうだな……!」
卯月「ところで……楓さんにあの会場を充てたプロデューサーって一体どんな人なんでしょう?」
凛「そう言えばそうだね。楓さんのプロデューサー、見たこと無いな…」
未央「すごいよねその人。度胸あるって言うか、怖いもの知らずって言うか」
輝子「……」
神様。女神。
アイドルになる前は、知らなかった言葉だった。
意味を教えてくれたのは、まゆさんだったな。
輝子『――なあ、まゆさん』
まゆ『? どうしました、輝子ちゃん?』
輝子『この間きいた言葉なんだけど……「カミサマ」ってなんだ?』
まゆ『神様、ですか?』
輝子『うん』
まゆ『宗教……って言っても、輝子ちゃんは知りませんよね』
まゆ『そうですねえ……』
まゆ『……神様って言うのは、心から信じられるもののことです』
まゆ『人間は、その「神様」のために、なにかを我慢したり、生きる力が湧いたり』
まゆ『…誰かを殺す事だって出来るんです』
輝子『す、すごいな人間……』
まゆ『そう考えたら、まゆにとっての「神様」は……まゆのプロデューサーさんですね♪』
まゆ『輝子ちゃんには「神様」はいますか?』
輝子『え? ……えっと……』
輝子『そ、そうだな。トモダチのシメジクンだったり……』
輝子『親友とか、小梅ちゃんとか、幸子ちゃんとか……』
輝子『ファンの皆や……まゆさんのためになら、ちょっとくらいお腹がすいたり、仕事を減らされても我慢できるかな……』
まゆ『!』
輝子『こ、殺すのは……どうだろう……あ、ブナシメジクン、エリンギクン、あとあと藍子ちゃん、愛梨ちゃんもカミサマだな……』
輝子『ど、どうしよう……一人に決められない』
まゆ『……くすっ。別に神様を一人にする必要なんて、ないんですよ?』
輝子「……」
まゆさんが教えてくれた通りなら。
私にとって、ファンの皆はトモダチで、カミサマだ。
みんながいるから、生きていて楽しい。
…こんなにカミサマが多かったら、クラリスさんに怒られるかな……
……楓さんにとっても、そうなのか?
楓さんも、楓さんのファンのおかげで、生きられるのかな。
ファンのためなら、何かを我慢することが出来るのかな。
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
美城「フフフ……できたぞ! 『プロジェクトクローネ』だ!」
美城「新人や仕事の少ないアイドルにも輝く星はあるじゃないか」
美城「私の権限が足りず4人ほど削る羽目になったが……まあいい。早速メンバーを召集しよう!」
美城「待っていろ……この6人で直ちに成果を出し、私が正しいと言うことを証明してやる」
美城「ゆくゆくは美城の在るべき姿を……っ!」
早苗「楽しそうねあの常務」
セクギルP「結構人材集めに苦労したみたいですしね。達成感でハイになるのも分かります」
早苗「それにしてもキャラ変わりすぎじゃない? もう少し静かな人だと思ってたわ」
P「言わないであげてください……」
ヴーッヴーッ
早苗「…来た」
P「? 誰からです?」
早苗「んー…昔の後輩から! ちょっと集まる約束してたのよ」
早苗「と言う訳で今日はあがるわね! お疲れー!」
P「お疲れさんです」
早苗「……」
――――――――――――――――――――
ガチャ
早苗「よっ、久しぶり!」
早苗「どう? 結果出た?」
早苗「…ん? ええ、誰にも教えてないわよ。極秘で頼んだ捜査だもん」
早苗「あたしのプロデューサー君にも雫ちゃんにも黙ってるわ」
早苗「……それで、どうなのよ」
早苗「ユッコちゃん、見つかった?」
早苗「…そう。まだ見つかってないのね」
早苗「何よ? 気にしてないから、まだ言いたいことがあるなら言っていいわよ」
早苗「は? スプーン? ユッコちゃんの?」
早苗「帰り道に落ちてて、指紋も付いてる……?」
早苗「何よそれ。……誘拐ってこと?」
早苗「…………」
早苗「―――――"喰種"の、体液?」
早苗「…待って。待ちなさい」
早苗「それってまさかユッコちゃんが食べられたってこと?」
早苗「……落ち着けるわけないでしょ!? 冗談じゃないわよ!」
早苗「客のことなんて今はどうでもいいわよ! そんなことより……」
早苗「……客? 誰よそれ」
早苗「…………え?」
早苗「……喰種捜査官?」
――――――――――――――――――――
早苗「……あなた達が?」
?「ええ。この度は、私達にお時間を割いていただき感謝します」
??「ッス」
?「貴女の同僚である堀裕子さんの持ち物と思われるスプーンから採取された"喰種"の体液について」
?「我々CCGが過去に得たデータと照会することで、その身元をある程度特定できました」
??「どーやらあたし達が追ってる組織のやつがユッコちゃんを誘拐したみてーだぜ」
??「ウチでつけた名前は『キャッスル』。ユッコちゃんみたいな新人アイドルや美少女をあちこちで攫ってる奴らだ」
?「私達は、一身上の都合で志願してこの事件の捜査に携わっています」
?「ほんの少しの情報提供で構いません。どうか、早苗さんや貴女の仲間にこれ以上魔の手が伸びないよう」
?「私達に協力していただけませんか」
早苗「……あたし、今はもうただのアイドルよ?」
早苗「何が出来るってわけじゃないけど……」
早苗「放っておくと皆が危ないのね。いいわ、協力する」
早苗「それに、あなたたちも他人事じゃないもんね」
早苗「…ただし。その代わり、ちゃんとユッコちゃんのこと探してちょうだい」
早苗「……それで?」
早苗「橘準特等に」
早苗「市原一等捜査官」
早苗「あたしは何をすればいいの?」
今日はここまで。ちょっと出だしがコケた感じはしますが、とりあえず15話範囲は終了です。
輝子の中の人の松田颯水さんって声優で双子のお姉さんがいたんですね…。初めて知りました。
次回ウサミン回の予定です。またの名を346版エリーゼ回。
…すんません。最初に注意書き入れるの忘れてました。
オリキャラ出ます。出ました。
おつん
杏「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝小ネタ、短編集】
杏「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝小ネタ、短編集】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1486942971/)
一応宣伝。
外伝後編で書けないネタが浮かんだら
このスレに投下する感じで行きます
アニメ準拠なら志希にゃんは出ない感じか
>>106
とりあえずこのスレじゃ出ないと思いますねー
ちなみに志希にゃんの嗅覚でも人と喰種の判別は出来ない設定です。
346アイドルの設定いろいろまとめてみました
http://imgur.com/zpYwG3a
http://imgur.com/Oq0rEZN
http://imgur.com/oN1O9Z2
続きの執筆が捗らなかったのでねー…
乙です
少し見ない間に輝子の話が進んでた
楓さんは隻眼の中でもエトのポジションか
~過去・前川みく~
「みくちゃんは人間が嫌いなの?」
シンデレラプロジェクトの皆には、よくこんなことを言われるの。
皆と比べて人間と話したがらないから、そう思われるんだって分かるけど……
みくね。別に、人間が嫌いってわけじゃないの。
ホントだよ?
ただ、「この世界は人間の世界」だってことを受け入れられないだけなの。
"喰種"は人間の天敵。
だから、もし人間に自分が"喰種"ってバレたら…問答無用で殺されちゃう。
そのために"喰種"は自分の正体を必死で隠さなきゃダメ。
吐きそうになる人間のご飯を、笑顔で飲み込まなきゃダメ。
人と関わりすぎちゃダメ。
どれだけ辛くても、"喰種"よりずっと多い、周りの人間たちに合わせてニコニコ笑っていなくちゃダメ。
目立っちゃダメ。
人と違う所は隠さなきゃダメ。
とってもキュートなネコチャンが、小さい頃からの親友だったことも隠さなきゃ。
アイドルなんてもってのほか。
学校ではそうやって、地味でマジメな人間を演じてた。
みくの周りは人間ばっかりで、みくだけが「フツウ」じゃなかった。
みく達"喰種"は、フツウにしてちゃダメなの。
みくが346プロを知ったのは、適当に友達付き合いしてた人間たちにライブに連れていかれた時だったよ。
その時みくは中学生だったけど、アイドルなんて見たくもなかった。
だってライブに出てるアイドルなんて、人間ばっかりなんだもん。
ここに"喰種"の居場所はないって、言われてる気分になるんだもん。
でも、断る理由がうまく思いつかなくて……ご飯の匂いで満ちてるライブハウスに嫌々ついていくしかなかった。
だから、こんなこと思ってもいなかったの。
まさか、出てるアイドルの半分から"喰種"の匂いがするなんて。
ライブが終わった直後、いてもたってもいられなくて、正体を隠すことも忘れかけて、舞台裏に乗り込んじゃった。
真っ先に目についた"喰種"のプロデューサー……今のPチャンにしがみついて、
みくもアイドルにして。
舞台のみんなみたいに、みくも輝きたいの。
…って涙ぐみながら駄々をこねてた。
Pチャンはみくのこと分かってくれて、あとでシンデレラプロジェクトに入れてくれたけど……
Pチャンもスタッフの皆も、困らせちゃったよね。
あの時はごめんね、Pチャン。
…あと、初めてのお仕事の時も……本当にごめんね。
卯月チャンが入って来て、未央チャンが入って来て、遅れて凛チャンも加入を決めて。
やっとメンバーが揃ったから、みくもアイドルを始められるんだーって喜んでた。
人間の目に怯えるだけじゃない、みくの好きなことをいっぱいできる生活が始まるんだって思ってた。
初めてのお仕事は先輩アイドルの背景の着ぐるみ役だった。
それも、相手は人間。
憧れの"喰種"アイドルでさえなかった。
それからも、何度も、何度も、何度も、何度も。
みくの下積みの相手は、人間アイドルばっかりだった。
小日向美穂、輿水幸子、日野茜。
十時愛梨に、その他諸々。
美嘉チャンや瑞樹さん、小梅チャンや紗枝チャン、まゆチャンみたいな、
"喰種"なのにちゃんとアイドルとして活躍してるひと達が相手なら。
どれだけ地味な下積みでも、みくは喜んでお仕事したのに。
みくが人間のこと苦手だって知ってるはずなのに。
Pチャンはまるで当てつけをするみたいに、みくに人間の踏み台ばっかりやらせた。
…何よりも許せなかったのは、みく以外のみんなが「人間相手の下積み」を受け入れていたこと。
あの時もそうだった。
ニュージェネとラブライカのデビューが決まった時も、みくの「踏み台」は続いてた。
だからPチャン相手に怒鳴り込んだことがあったの。
「もう人間の荷物持ちは嫌だ」って。
「なんで人間を立てるお仕事ばっかりやらなきゃいけないの」って。
みんな同じ不満を抱えてるに決まってるって思ってた。
だから、みくが代表して文句を言えば、みんなも後押ししてくれる。
それなら、Pチャンもお仕事を変えてくれるかもって、期待してた。
「ダメだよみくちゃん。私達は"喰種"なんだから」
こんなことを言われるなんて、思いもしなかった。
悔しかった。
情けなかった。
この時だけは、大声が周りに響いて正体がばれてしまうかもってことも考えられなくて。
人間相手に気後れしてた智絵里チャンやかな子チャン、きらりチャンなんかに、
怒鳴り散らして、泣きわめいて。
言うことがなくなって、涙をぼろぼろこぼしながら、引き止める美波チャンも無視して部屋を出ていっちゃった。
大声で人間たちに"喰種"のことを知られたかもって気付いて青ざめたのは、何もかも嫌になって出てきた中庭でのこと。
泣きながら歩いてるみくを、人間のアイドル達が見てた。
また余計なことをすれば人間たちに正体がバレるかも。
もしかしたら、もうバレてるかも。
下手したら、みくだけじゃなくて……
今考えたら、ただみくを心配してくれてただけって分かるんだけど、
あの時は視線が怖くて怖くて仕方なくって、
何処でもいいから、視線から隠れる場所が欲しかった。
必死で周りを見渡した。
やっと掴みかけた夢なのに、全部崩れてしまうかもしれないって考えたら、恐ろしくて仕方なかった。
ほとんどパニックになりかけて、逃げまわった先で……
みくは346カフェと。
それからナナチャンに出会ったんだよ。
今日はここまで。
本当なら外伝前編で書いてたはずのエピソードでした。
~現在・安部菜々~
"喰種"に生まれたからには、遅かれ早かれやって来てしまう「出来事」があります。
野良猫みたいに暮らしていても、
普通の人間みたいに街で暮らしていても、
夢なんか無くて毎日をだらだらと過ごしていても、
ひとつの夢を抱いて必死に生きてる最中でも、
やっと夢がかなって、すっごく幸せな気持ちの時でも。
"喰種"が生きるなら、たった今起こってもおかしくないこと。
今日起こっても、何も不自然じゃないこと。
「その時」がいつ来るか……
ナナたち"喰種"は、それに内心ではずっと怯えながら。
それでも、毎日をすこしでも楽しいものにするために生きています。
だから。
今日、ナナに起こったことは、決して不幸なことなんかじゃなくて。
仕方のないことなんです。
どれだけ小さくても弱くても、ナナは"喰種"に生まれちゃいましたから。
1レスだけ追加。
ウサミンは赫子を出せない"喰種"です。
一応乙
そろそろ再開できそうです。
飛び飛びの更新ですみません
エタらなかったら何でもいいよ
楽しみに待ってる
短編のほう落ちてたな
そろそろ
>>122
保守感謝です。生存報告。
やっぱり今月中は書けそうにないです…
>>121
気晴らしぐらいにはなるかと思って立てたけど
意味ありませんでしたね
おう待ってるぞ
気晴らしの短編ぐらいならスレ立てせずここに書いてもいいんじゃない?
短編って注記入れたうえでさ
5月だぞあくしろ
sage忘れたすまない
生存報告。
このまま書き進めるとどこかでアカン矛盾が生じそうだと思ったので、
今更ながら346プロダクションについて作っていた設定を
改めて文章化してまとめてます。
おう待ってたぞ
そしてまた待つぞ
せめてもの設定まとめたやつの一部公開
http://imgur.com/a/zMrcd
ネタバレを極力除いたものです
ところどころ頭の悪い書き方してそうな気がするけどゆるして
今月中は無理そう?
>>132
少なくとも29日まではまともに書けそうにないっす…
レポートと中間テストが団子状態
それが終わったら頑張ってみる
>>133
分かった頑張ってくれ
sage忘れちゃった
こう言うのを、「虫の知らせ」って言うんでしょうか?
…その日はなんだか、色んなところで昔のことを思い出す日だったんです。
≪ミミミン ミミミン ウーサミン! ミミミン ミミミン ウーサミン!≫
朝が来て、ケータイの目覚ましが鳴り響いたとき。
ナナはどうしてか、すごく救われた気分になりました。
まるで、この曲がナナを…深くて苦しい水の底から引き上げてくれたような。
寝起きのぼー…っとした頭が段々冴えてきたことで、その理由が分かりました。
それは、目覚ましの曲が「メルヘンデビュー」で、ナナのプロデューサーさんがナナにくれた曲だったからってことと。
ついさっきまで、去年までの寂しいナナが夢に出てきていたからだったんです。
プロデューサーさんに拾ってもらえる前のナナは……そうですね……?
知ってる人のお話だと、みくちゃんと智絵里ちゃんと未央ちゃんを足して3で割ったような人生なんじゃないかと思います。
智絵里ちゃんみたいに、ちっちゃい頃に家族を失って。
未央ちゃんみたいに、周りには人しかいない環境で育っていって。
そしてみくちゃんみたいに、ずっとアイドルになりたいって思い続けながら生きていました。
……い、いや。
3人の方がずっと苦労してると思いますけどね!
ナナの周りの人は……人間ばっかりでしたけど。
それでも、何も知らないナナに優しくしてくれて、色んなことを教えてくれるような良い人たちばっかりでしたから。
……うん。
今のナナ、なんだかワガママになってました。
あの時はあの時で、ナナは恵まれてましたね。
お隣の鈴木さんは、レッスンやご飯さがしで夜遅くに帰っちゃうナナを心配してお野菜たっぷりのご飯を作ってくれますし。
生活費を稼ぐためにアルバイトしてたメイドカフェのオーナーは、とっても美味しそうなクリームパフェを作ってくれますし。
大家さんも、逃げ込むようにお部屋を借りたナナのことを怪しまずに、新鮮なお魚の差し入れなんかしてくれたりして……
……
………
……ごめんなさい。
やっぱりナナ、あの頃は辛かったです。
今がメチャクチャ幸せです……!
2レスだけだけどここまで。
ブランク空きすぎて読みづらくなってるけど許してね。
モバでブライダルウサミンが出たことですし、そろそろウサミン回をちゃんと書いていかなきゃなとおもいます。
――――――――――――――――――――
ずっと使ってる、小さい冷蔵庫を開けると、中にはもらい物の食材がそこそこ。
そろそろ寒くなってきましたし、また早苗さんや心さんをお鍋にでも誘おうかな?
ナナが食べても、吐いちゃうだけで捨てるのと変わりないですし……
そんな事を思いながら、お魚や野菜を少しかき分けて「ナナのご飯」を取り出します。
…これ、早苗さんたちに見つからないようにするの大変なんですよねー。
ある時はあんまり奥深くまで見つからないように、手前におつまみを用意しておくとか。
ある時は「お肉」のタッパーにもんのすごい前の日付を書いて、思わず手を引いちゃうくらいの消費期限切れを演出するとか。
宅飲みのときは出来るだけ瑞樹さんにも来てもらって、先に冷蔵庫を漁って誤魔化してもらったりもして。
まあ、瑞樹さんからしたら宅飲みに付き合っても損しかしないですから…頼りすぎないようにはしてるんですけどね?
片手でもぐもぐと「ご飯」を食べながら、もう片方の手でお着替え、あと忘れ物のチェック。
左手だけで食べられるようカットするのは、結構時間とコツがかかります。
でも年々寝起きが辛くなりますし、かと言って遅刻なんて絶対できませんし。
こういうところで時間を短縮できれば、それだけ余裕ができますからね。
…うーん。やっぱりご飯は346プロの支給に頼った方がいいんでしょうか?
でも、ナナが頼っちゃえば、その分困ってる子達に行き渡らなくなるかもしれないし……
…うん。まだ自殺死体を見つけることはできるし、もうしばらく頑張ろ。
よし。準備はオッケー!
ちゃんと口も拭いてっと。
「あら? ナナちゃん今日も早いのね」
菜々「はい! 今日はアニメイベントのお仕事があるんです!」
「あらそう! すごいわねえナナちゃん! ついこの間までは苦労してたのに、おばちゃん嬉しいわ~」
菜々「まだ先は長いですけどねアハハ……それに鈴木さんが応援してくれるおかげですよっ!」
「そーお? うふふっ、帰ったら楽しみにしててね? こないだすっごく大きなお魚届いたんだから、ナナちゃんにもごちそうしてあげるわ!」
菜々「ウッ……あ、ありがとうございます!!」
さ、さて。
帰ったらどうしようか、考えることが一つ増えましたけど!
準備してるうちに、夢の寂しさもだいぶ無くなったし!
ガスの元栓よし!
ゴミ出し(一部カムフラージュ済)よし!
戸締りよし!
菜々「安部菜々、ウサミン星より職場へと向かいます!」
ここまで。
おつん
――――――――――――――――――――
~CCG本局~
早苗「……なるほどね。その『キャッスル』ってのはあくまで攫い屋、運び屋で」
早苗「誘拐した女の子を『マダム』達に売り渡すことで稼いでる集団……って思われてるのね」
橘「その通りです」
早苗「じゃあ、そのマダムを叩けば攫われた子達も見つかるんじゃないの? 今更運び屋を探したところで、もう……」
橘「いいえ」
橘「これは、奴等の『下請け』を行っている喰種に尋問を行い得た情報ですが」
橘「『キャッスルは手に入れた食材に加工を施して味わい深いものにしている』などと話しており」
橘「また『商品ひとつひとつを運ぶのではなく、定期的に十数人ほどの運送をいっぺんに行う』という供述もあることから」
橘「『キャッスル』は誘拐した少女を保存……あるいは何らかの施術を行うために」
橘「複数存在すると思われる奴等の活動拠点に一時監禁しているのだと推測されています」
早苗「……つまり……ユッコちゃんは今、『キャッスル』が監禁してるってこと?」
橘「誘拐されてからの日数を考えれば、おそらくは」
早苗「…ねえ、施術って何? あいつらユッコちゃん達の体に何するつもり?」
橘「現時点では不明です。しかし……」
橘「尋問の結果、被害者が輸送される間『歩行・会話や受け答えに障害がある様子はない』」
橘「また『五体満足だとはっきりわかる』ことから」
橘「誘拐時に与えた負傷の治療施術、また軽度の薬品投与……いわば栄養剤のような、被害者の健康にはほぼ何ら影響のないものだと判断されています」
橘「そして、奴等のターゲットの基準、その意味や需要からして外見・あとは表情に影響のある行為は行わないだろうとされており」
橘「よって、輸送前に『キャッスル』の拠点から被害者少女たちを取り返せば社会復帰は可能……と我々は判断しています」
橘「"喰種"をまたいで判明した情報である以上100%確実とは言えませんが、複数に尋問して得られた共通の情報ですから信憑性は高いかと」
早苗「……ふー。とりあえず、取り返せるかどうかは時間勝負ってことなのね」
早苗「そして早く取り返せれば、ユッコちゃんも……」
早苗「ありがと、準特ちゃん。希望が見えただけ、ちょっと安心したわ」
橘「現在のところ、我々から提供できる『キャッスル』の情報は以上です」
橘「片桐さんには―――」
早苗「分かってるわ。346プロ内で信頼できる人間をリストアップしておけ、でしょ?」
橘「ご協力感謝します」
橘「…その、片桐さんを疑っているわけではありませんが、巧妙なやり口で周囲に喰種やその協力者が身を隠していない保証はなく……」
早苗「いいわよそんなの。あたしも『知り合いは全員人間!』って胸張って言えるわけじゃないもの」
早苗「でも、あくまでハッキリさせるのは白だけでいいのよね? グレーゾーンは放置で、わざわざ正体を明かすこともないでしょ?」
橘「はい。必要以上に、民間の方を危険に晒すことはできませんから」
橘「ですから……片桐さんの身の安全を前提とした範囲で構いませんから……」
橘「…どうか娘を、守ってください」
早苗「……ぷっ」
早苗「あははっ! 分かってるわよ、任せなさいって!」
早苗「そんな申し訳なさそうな顔してないで、準特ちゃんはあなたの仕事をしなさいよ。ありすちゃんは私がなんとかしたげるから」
橘「……! ありがとうございます。本当に、本当にっ……!」
早苗「……うん。ちゃんと分かってるわよ。大事な一人娘だもんね。忙しいのに、攫われるかもって考えたら、居てもたってもいられないわよね」
早苗「こっちは大丈夫だから。ありすちゃんもお母さんのこと、頑張ってるってちゃんと分かってるから。だから安心してちゃんと捜査に集中しなさいよ」
橘「……。はい」
――――――――――――――――――――
早苗「送ってくれてありがと。ここで降りるわよ? この協力が公になっちゃまずいんでしょ?」
橘「分かりました。ご協力感謝します」
早苗「ユッコちゃんのことも勿論お願いするけど……捜査が落ち着いてからでいいから、たまにはありすちゃんのライブ見に行ってあげなさいよ?」
早苗「当然、それまでに死んだら問答無用でギルティ! お姉さんが逮捕しちゃうわ!」
橘「…市原一等はともかく、私は片桐さんよりずっと年上ですよ?」
早苗「そーいやそうね! 若くてキレイだから忘れてたわあはは!」
早苗「初めて会った時は一等ちゃんと同い年かと思ったくらい……ああ」
早苗「そうよ仁奈ちゃん! あの子もあの子で、すっごく寂しがってるわよ!」
早苗「今日どこ行ってんのか知らないけど、流石にもっと娘に構いなさいって言おうと思ってたのに!」
早苗「いくらなんでも、事務所を託児所代わりにするのは非常識よ! ネグレクト寸前よ!」
橘「……ええ。その通りですね」
橘「ですが、その……あの子とバディを組んでいる私が庇えた義理ではありませんが……」
早苗「……どうしたのよ? いきなり口ごもって」
橘「……申し訳ありません、片桐さん。私的で勝手なお願いではありますが、今からお話しすることは他言無用でお願いします」
橘「特に仁奈ちゃんには、出来るだけ伏せてあげて欲しいんです」
早苗「……?」
橘「市原一等は今日……今日に限らず、暇があれば単独喰種の駆逐に積極的に参加しています」
橘「一等には仁奈ちゃんの養育費以外にも、討伐報酬を稼ぎ続けなければいけない理由があり―――――」
――――――――――――――――――――
今日はここまで。
――――――――――――――――――――
ナナの目の前にいる、この人は誰なんでしょう
会った覚えなんかない人
どこかで見たようなオレンジ色の髪
そして……
覚えておかなきゃいけないものであるはずの、白いコート。
それを着込んだ人が……
どうして、ナナの仕事先に。
どうして、ナナの目の前に?
「…どーもォ。安部菜々さんでやがりますよねェ?」
市原「喰種捜査官だ」
市原「てめえに"喰種"容疑がかかってやがるんですけど」
市原「大人しく付いて来てくれませんかねェ?」
――――――――――――――――――――
そこから、ナナに何ができたでしょうか。
ナナは弱っちくて、赫子も出せなくて。
だから、走って逃げることしかできなくて。
逃げながら、電話を取り出したけど、プロデューサーにはつながらなくて。
焦って震えた手は、じゃあ、どうしようかって、電話帳をかき分けて。
みくちゃんの番号を見つけて、電話をかけようとしたところで……直前で踏みとどまりました。
思い出したんです。
『喰種に対するあらゆる権利は『人間側に正体を露見させていない』事を最低条件として定められています』
『アイドル、そして私のような職員を問わず、この規定に違反した者への処分は……』
『当人と346プロダクションの間に交わされていた契約の、一切の破棄』
『……即ち、『346プロからの追放』となります』
ナナがアイドルを始める前に、繰り返し言われたこと。
ナナは、とっくに見捨てられてたんだってこと。
どこから、正体がバレちゃったんでしょうか。
「ご飯」を集めてる時?
それとも、"喰種"についてお話してるところを、誰かに聞かれてた?
……いいえ
そんなことは、もうどうでもいいんです。
出口が遠い楽屋の中で、さっきの捜査官の足音が近づいてくるのが分かります。
せめて、みくちゃん達は巻き込まないように、電話帳の入ったケータイごとどこかのゴミ箱に捨てました。
あとはもう、やることなんて……
たくさんありました。
アニメの声優をやりたかった。
みくちゃんたちと一緒に歌いたかった。
もっともっと、色んな子達と踊って、たくさんの人に応援してもらって。
カフェの後輩や、今までお世話になった人たちも、ライブに誘って。
市原「―――見ぃつけたァ」
……ああ。
最後に思い出すのが、なんでこんなことなんでしょうか。
昨日、なんとなく思った言葉。
『ああ…………疲れたぁ~。よっこらせっと』
『通勤に1時間って、もう引っ越した方がいいよね、絶対……』
『うぅ……でもまぁ、まだ先はわかんないし、頑張ろっと……』
『菜々ちゃん、今日もLIVEとメイドさん、頑張ったね!』
『ありがとう、ウサミン!』
『……なーんちゃって』
『でも……』
『今日も、アイドル楽しかった……へへ……へへへへ……』
『明日も……』
楽しいといいなあ
ここまで。
3か月悩んでこうなりました。3ヶ月かけてこれでした。
後から書き直すことを前提に投稿していますが、もうちょっとウサミン編ボリュームあげたかったなと思います。
次からようやく本題に入ります。
どうかお付き合いよろしくお願いします
おつ
あと、オリキャラ捜査官として橘準特等と市原一等を出したんですが
この2人について今のところどんな印象を抱いたか、よければ教えてください。
ちゃんと狙ったキャラに書けてるか気になるのです
市原一等は仁奈+真戸(父)
橘準特はありす+亜門
そんなイメージ
待ってたぜ
――――――――――――――――――――
ちひろ「――ええ、そうですか。了解しました、お疲れさまです」
「……!!」
ちひろ「はい。後処理はこちらで行いますので、――さんは通常業務に戻っていただいて結構です」
「ッ……ンー! ンムゥー! ンーヌーウー!!」
ちひろ「…いえ。今のは、『いつもの』です。もう慣れたでしょう」
ちひろ「そうです。次はあなたの身かもしれません。どうか、これまで以上に警戒を怠らないよう」
ちひろ「……では」
ピッ
ちひろ「……予定通り、安部菜々さんの駆逐が確認されました」
ちひろ「規定通り、ここの皆さんには『火消し』をお願いします」
ちひろ「――さんはRc検査偽造診断書および偽造履歴書について、菜々さんのものを作成された方に改めて『警告』を行ってください」
ちひろ「――さんは[???]プロダクション所属の喰種から、配布試料を基に『密告対象』の決定を」
ちひろ「――さんは通常通り『キャッスル』としての活動をお願いします」
ちひろ「では今から、一切の抜かりなく、速やかに仕事を遂行してください」
ちひろ「皆さんが導く『シンデレラ』は、貴方たちの仕事に生かされていることをお忘れなく」
ちひろ「……さて」
ちひろ「もう菜々Pさんを解放してくださって構いませんよ」
パッ
菜々P「……」フラ
菜々P「……」ペタ
ちひろ「菜々Pさん、先ほどまでの行為を謝罪します。…また、菜々さんの不運を心よりお悔やみします」
ちひろ「今後のプロデュース活動についてですが……菜々Pさん? 大丈夫ですか?」
菜々P「…はい。大丈夫です」
菜々P「謝ってもらわなくて結構です。説明は腐るほど聞いてましたから」
菜々P「……」
菜々P「……すんません、ちひろさん」
菜々P「雇ってもらって何ですけど……俺、もうこの仕事やめます」
菜々P「……辞めさせてください」
ちひろ「……そうですか」
ちひろ「分かりました。では本日中に退職の手配をいたします」
ちひろ「しかし改めて申し上げますが、退職されたプロデューサーにも監視がつくことをお忘れなく」
ちひろ「もし、自暴自棄になり346プロダクションごと機密を流出させようと考えるものなら……」
菜々P「大丈夫です。……そんなの、もう、どうだって……」
ちひろ「……お気をつけて」
――――――――――――――――――――
ちひろ「さて。プロデューサーさんもお疲れさまでした」
ちひろ「…その、良かったのですか? 貴方に菜々Pさんの拘束を任せてしまって……」
武内P「構いません。能力から、菜々Pさんの確保、拘束は私が適任の仕事だと判断しました」
ちひろ「でも…プロデューサーさんだって、『あの子達』の時……」
武内P「今は、シンデレラプロジェクトの皆さんを危険から遠ざけるのが私の役目です」
武内P「皆さんが白鳩に目をつけられることも、『最終隠匿プロトコル』によって346プロダクションを失うことも、避けなければいけません」
武内P「そのためには、たとえ安部さんのプロデューサーだろうと、あの場に行かせてはいけなかった」
ちひろ「…ご協力、本当に感謝します。プロデューサーさんは、シンデレラプロジェクトの皆のところに行ってあげてください」
武内P「……失礼します」
パタン
ちひろ「……」
ちひろ「……あの時は、プロデューサーさんを抑え込むの……大変だったなあ」
――――――――――――――――――――
今日はここまで。
菜々Pも喰種です。
せっかくなのでちょっと修正。
せっかくなので>>160をちょっと修正。
――――――――――――――――――――
ちひろ「――ええ、そうですか。了解しました、お疲れさまです」
「……!!」
ちひろ「はい。後処理はこちらで行いますので、JKTPさんは通常業務に戻っていただいて結構です」
「ッ……ンー! ンムゥー! ンーヌーウー!!」
ちひろ「…いえ。今のは、『いつもの』です。もう慣れたでしょう」
ちひろ「そうです。次はあなたの身かもしれません。どうか、これまで以上に警戒を怠らないよう」
ちひろ「……では」
ピッ
ちひろ「……予定通り、安部菜々さんの駆逐が確認されました」
ちひろ「規定通り、ここに集まって下さった一級P・準一級Pの皆さんには『火消し』をお願いします」
ちひろ「肇Pさん、美玲Pさん、雪美PさんはRc検査偽造診断書および偽造履歴書について、菜々さんのものを作成された方に改めて『警告』を行ってください」
ちひろ「フリルドスクエアPさん、KBYDPさん、ブルーナポレオンPさんは[???]プロダクション所属の喰種から、配布資料を基に『密告対象』の決定を」
ちひろ「NWPさんとガールズ・パワーPさんは通常通り『キャッスル』としての活動をお願いします」
ちひろ「では今から、一切の抜かりなく、速やかに仕事を遂行してください」
ちひろ「皆さんが導く『シンデレラ』は、貴方たちの仕事に生かされていることをお忘れなく」
ちひろ「……さて」
ちひろ「もう菜々Pさんを解放してくださって構いませんよ」
~過去・神崎蘭子~
今年の夏は、すごく楽しかった。
心の底からそう思えるようになったのは、サマフェスに向けた夏合宿のときでした。
美波さんと、アーニャちゃんが合わせてくれた二人三脚。
透き通る爽やかさが、口や体中に飛び込んでくる水鉄砲。
夕陽を見ながら、みんなで息をそろえて飛んだ大縄。
「変わらない」って、思ったんです。
私は、"喰種"になり切れなくて。
人のご飯を食べる苦痛も、理解できないから。
だから、みんなと私には、大きな壁があるって思ってたけど。
こうやって笑ってるときは、何も変わらないって。
美波さんが、みんなが、教えてくれたから。
だから、私もみんなに教えたかったんです。
人間は怖くないよ、って。
私達となにも変わらないよ、って。
人間でもある私だから、分かることを教えたくって。
もしみんなが人間を知らなくて、苦しんで。
そのまま死んでしまうのが「普通」だって思ってるなら……
私はそれを壊したい。
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
~現在・白坂小梅~
―――皆には、知っておいてほしいんだけど……
346プロダクションは…とっても大きな会社で、
その分、会社が長く続く方法も、しっかり考えられてて……
たくさん持ってる「コネ」や、お金をたくさんつかって。
たくさんの人間、あと、ちょっとの喰種の犠牲を払いながら。
絶対に倒れないように成長していったんだ…。
「ある目的」のために、ね……。
だから、346プロダクションは……
人間や喰種が、ちょっと反抗しようとしても、どうにもできない会社……。
想像できないくらい、強い喰種……まさに、「化け物」でも現れない限り、ね。
そう、だよ。
これは、何十年…何百年も、倒れなかった会社が、
ある一人の「化け物」に壊されちゃうお話。
そして、会社を壊した「化け物」は……
じつは全部、友達や大切な人のために、自分の力を使っただけなんだけど……
"喰種"になり切れてないから、"喰種"の立場や気持ちが全部は分からなくて。
人間にもなり切れてないから、人間の恐怖も分かってなくて。
だから、助けようとした人は不幸になって。
救おうとした人は死んじゃって。
不幸に巻き込んじゃった人を救おうとしても、余計なことしかできなくて。
だから、どんどん失って。
最後の最後には、『生まれてきたことが間違いだったんだ』って。
『生まれた瞬間に死んでいればよかったんだ』って泣き崩れるくらい、
血でがんじがらめの坂道を、小さな体が傷つきながら転がり落ちていく化け物……
……これは、ある"隻眼の喰種"の、小さな女の子の……
魔法が解けちゃうお話。
今日はここまで。
ひびきんよりらんらんの方がカネキっぽいと思うのです
――――――――――――――――――――
菜々さんは……
喰種捜査官に駆逐されちゃった菜々さんは、「事故死」したってことになったよ。
まだこれからって時に、死んじゃったから……
あんまり、大っぴらに騒ぐ人もいなかったんだけど……
それでも、「喰種として駆逐された」なんて言ったら……
アイドルが"喰種"だったなんて言われたら……人間のみんなは混乱しちゃうから……
だから、346プロだけじゃくって……
アイドルを"喰種"として殺した時は……『事故死』って、みんなに言うんだって。
だからね。
菜々さんを知ってる「人間」のファンや仲間は……ただ、悲しんで終わりなんだけど……
1レスだけですが今日はここまで。
大阪LVで見てきました。
かわいいかわいい言われる蘭子だしかわいいけど、
やっぱステージの上ではカッコいいのが蘭子だなと思わされました
酉忘れ。
https://youtu.be/vQZ55w9Lrrk
あと東京喰種実写の最新予告が公開されたみたいですね。
色々言われてるけど正直すごく楽しみです。
公開初日の7/29日に見に行こうと思います
おつー
まだかなまだかな
かなかな
1ヶ月たったよ!
生存報告。
生きとったんかワレェ!
そろそろこないとうんこ漏らすぞ
多分今晩更新します
>>182
漏らしてもいいけどちゃんと食べなよ
おう早く更新したら食ってやるよ
――――――――――――――――――――
小梅「…蘭子ちゃん。ゆっくり、落ち着いて……『何でもないように』、歩いてね」
繋いだ手は、ぷるぷるって震えてた。
すごく怖かったんだと、思うよ。
ホラー映画を見てる時とは全然違う……「死ぬかもしれない」って恐怖。
ぐっ、って固まった体を、無理やり、ゆっくり動かして……
蘭子ちゃんは、目の前の人達を出来るだけ見ないように……
私の手を引いて、346プロを歩いて行った……。
美城「常務の美城です」
「美城さん。本日は捜査のご協力・ご理解感謝いたします」
美城「いいえ。所属アイドルに"喰種"がいたことを見抜けなかった我々にも責任がありますので」
美城「多忙な喰種捜査の合間を縫って我が社にご訪問いただいた皆様のために、資料は既に手配しています」
「おお、それは本当にありがたい。そちらもご多忙でしょうし、手早く受け取って退散いたしましょう」
美城「私の執務室でお渡しいたします」
美城「『安部菜々』の登録情報と、偽造戸籍および偽造診断書の調査資料を」
……346プロのアイドルが"喰種"だってバレたとき。
いつも、その人について聞きに来るために……喰種捜査官がやって来ちゃう。
白鳩たちに怪しまれないで早く帰しちゃうことに、346プロは慣れっこだけど……
やっぱり、みんなにとって……怖いものは、怖いよね。
とりあえず1レス更新。明日たぶん続きかく。
そして、白鳩はいつも通り。
必要な書類だけ持って、すぐに帰っていったよ。
白鳩が346プロのことを……アイドルから"喰種"が出たのに、全然怪しまなかったのは、
ちゃんと、そのための対策をしているからって……プロデューサーさんは教えてくれたなあ。
何をやってるかまでは教えてくれなかったけど……
――――――――――――――――――――
美城「……ふう。帰ったか」
ガチャ
美城「!」
奏「あら。お疲れ様、常務」
美城「速水か。何か用があるのか」
奏「いいえ? ただクローネの一員として、上司を労おうと思っただけ」
奏「コーヒーも淹れたんだけど……常務も一杯どうかしら?」
美城「ああ……いただこう」
美城「…」ズズ
美城「……悪くない」
奏「お褒めの言葉、ありがたく受け取るわね。こんなのより菜々ちゃんの方がずっと美味しかったんだけど」
美城「その話は聞いている。…一度足を運ぶべきだったか」
奏「飲んでなかったのね。本当に勿体ないわ」
美城「そうか」
美城「……それにしても」
奏「? どうかした?」
美城「……いや、独り言だ。気にするな」
美城「次の職務に集中したい。労いには感謝するが、それを飲み終わったら退室してくれ」
奏「……そう。お粗末さま」ギイ
バタン
美城「…………」
美城(…『所属するアイドルの正体が露呈した場合、CCG捜査官への対応は美城一族の者が行う』)
美城(当プロダクションの秘密保持のために作成された、マニュアルの一つであり……私が知らされている数少ないそれだ)
美城(目的はわかる。身分、戸籍、証明書の一切にフェイクが無い人間が代表として彼等と関わることは、一定の信用をもたらす)
美城(だが……)
美城(それだけで、彼らがあれほど早急に引き上げるものか?)
美城(喰種対策法にも、『それ』への対処が記されている)
美城("喰種"を庇う人間が存在することなど、彼らはとっくに想定している)
美城(ならば何だ。なぜ彼らはあれ以上、我が346プロダクションを追求しなかった?)
美城(それも、美城の手によるものだと言うのか……?)
美城(やはり……)
美城(きな臭い)
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
喰種捜査官。
わたし達を殺せる武器を持った、わたし達"喰種"の天敵。
あの人たちが346プロから出ていって……やっと、皆の緊張も解けたみたい。
でも……それでも人間の皆にはバレないように……
菜々さんが死んだことを、泣きわめくことはしないんだ。
だって人間の皆は、菜々さんが"喰種"として駆逐されたんじゃなくて、
事故死したって思ってるんだから。
『そう言うこと』として泣くことはあるんだけど、
本当に涙を流すのは……家に帰った後。
寮の皆は、帰っても人間がいるから……自分の部屋で、周りを確認してから。
とりあえず、今日一日は何も知らないふりをして。
喰種は泣かないように頑張って過ごすんだよ。
だから……
小梅「蘭子ちゃん……CPのお部屋には……戻らないの?」
蘭子「うむ……彼の部屋に満ちた魔力は淀み……」
蘭子「…なんだか、居づらくて」
それは、シンデレラプロジェクトのみんなも同じ。
表向きは、なんでもないように振る舞って、元気にお仕事しようとしてたけど……
やっぱり、空気はとっても重いんだ。
……ううん。
蘭子ちゃんが気にしてるのは、そっちじゃないかも……。
小梅「……『これが当たり前だから』?」
蘭子「!」
やっぱり。
さっき、蘭子ちゃんは落ち込んでるみくちゃんを励まそうとしたんだよ。
みくちゃんは……特に菜々さんと仲良くしてたから。
大切なお友達を亡くしたみくちゃんを慰めてあげたくて、優しい蘭子ちゃんは一生懸命話しかけてたんだけど……
『そんなに気を遣わなくても大丈夫にゃ』
『ナナチャンが死んだのは、ナナチャンの不注意のせいだもん』
『みく、ちゃんと分かってるよ。どれだけみく達が頑張ってアイドルしても、これだけは受け入れなきゃいけないって』
『"喰種"はこれが当たり前なんだから』
『……むしろ、今までこんなこと忘れて平和ボケしてたみくには良い薬になったもん』
『だから大丈夫っ! みく、いつまでも落ち込んでなんかいないにゃ!』
『だ!か!ら! 蘭子チャンもいつまでも曇った顔しないの!』
『死んだ人より、今生きてる自分のことを考えるの!』
『そうしないとナナチャンも悲しむでしょ?』
そう言って、みくちゃんは元気そうに笑ってた。
小梅「……みくちゃんの言ったこと。私も……正しいと思う、よ?」
蘭子「……」
小梅「"喰種"は、仲間が死んじゃっても……自分は生きてるの。友達にも、まだ生きてる人はいる……」
小梅「いつまでも、死んだ子を気にして……今度は自分が怪しいところ見せちゃったら……」
小梅「……もう、言わなくても分かる…よね…?」
蘭子「……」
蘭子「なんで」
蘭子「なんでそんなに、みんな割り切れるの?」
小梅「……」
蘭子「大切な人が死んじゃったのに。あんなに頑張ってた人が無残に殺されちゃったのに…!」
蘭子「生きてる人の方が大事って、それは分かるの。分かるけど……!」
蘭子「友達の死をまともに悲しめないなんて、おかしいよ……」
蘭子「悲しいよ……!」ジワ
小梅「蘭子ちゃん……」
蘭子「こんなこと考える、私がおかしいのかな」
蘭子「私が、みんなと違うから? 私が甘い生き方してたから?」
蘭子「……みんなの言うことが分からないのは、私がハーフだから?」
小梅「!」
蘭子ちゃん……
まだ、気にしてたんだ。
小梅「……それは……」
「あれ? 二人ともこんなとこで何やってんの?」
蘭子・小梅「!!」
蘭子「え……美嘉さん?」
美嘉「やっほー★ 蘭子ちゃんのこと、みんな心配してたよ? 飛び出したまんま帰ってこないって」
美嘉「みくちゃんなんか、『余計なこと言っちゃったかも』って狼狽えてたよ」
蘭子「!」
蘭子P我子ギル入手出来たが蘭子ちひろに課金しないと入手出来ないと告知される
蘭子「みくちゃんが……」
美嘉「お? 何、みくちゃんのこと冷たい女だって思っちゃってた?」
蘭子「!? い、いや、そんなこと……! そんなことないですっ!」
美嘉「みくちゃんに何言われたか、あの子に聞いたよ」
美嘉「おおかた、『なんでこんなに割り切れるんだ』って思ってるんだと思うけど……」
美嘉「ま、蘭子ちゃんもあの子も人間に近い暮らししてたんだし。疑問に思うのもしょーがないよね」
蘭子「…あの子?」
美嘉「そ」
美嘉「それでね。あの子にも蘭子ちゃんにも話しておきたいことがあってさ」
美嘉「あと、ちょっと付いて来てほしいとこがあるんだけど……」
美嘉「いいでしょ?」
――――――――――――――――――――
今日はここまで。うんこは雑菌まみれだし>>184は小便飲んでなさい
奏は常務にタメ口使わせるか敬語使わせるか迷ったけど、奏が敬語使うところが上手く想像できなかったのでとりあえずタメ口にしました。
アメリカ帰りって敬語にそこまで拘らなさそうだし、奏の態度見てたら下に見てる訳じゃないって分かると思うので。
おつ
残念もう食べたんだなこれが
>>198
ええ…(ドン引き)
ついに来週映画公開ですね。
試写会も好評みたいですごく楽しみ
俺はちょっと実写化に抵抗ある方だから見に行くかどうか分かんないや
でも面白いといいね
>>200
明日朝イチで見てレビューしようと思ってます!
よければそれで見るかどうか判断してみては?
レビューもいいけど更新もちゃんとしてよねまた漏らすぞ!!
観賞終了。
細かい感想は帰ってから書くけど、実写喰種良かったよ!
原作の大事な要素が短い放映時間にちゃんとまとめられてて、
原作漫画が好きな人は見て損しない出来だと思います!
面白かった!
見ようかどうか迷ってる人で何か気になってるところがあれば、
質問してくださればお答えします!
>>202
今日更新しようと思います!多分!
実写喰種感想!
この映画見るときに気になってたのは
1、赫子の動かし方やワイヤーアクションに不自然さがあるかどうか
2、役者の演技、棒演技になってやしないか。実写映画としての魅力が出てるか
3、予告編で出てきた指パキしそうな所など原作と矛盾が出てるところとか改変
だったんです。
まず1は文句なし!
特に馬糞先輩vsカネキは尾赫も鱗赫もグネグネ動いてて、
赫子以外のアクションもちゃんとキレがある!
あと予告で不安だったドウジマの扱いも、ちゃんと「重いものを振ってる」演技になってました!
んで個人的にすごく良かったのが馬糞先輩のヒデ攻撃シーン。
これは見た人にしか分からないけどヒデの頭を打ち付けて気絶させる流れがすごく自然で
おもわず「やるな!」と感心しました。
2について、演技は完璧とまでは言えなくても不自然さに集中を切られるようなものはなく
中盤以降の亜門やトーカの演技なんかはすごく東京喰種の世界観を表現しきってるって感じでよかった!
序盤はヒデの喋り方がアニメっぽくて浮いてるのが多少気になるかもしれないけど
話が進むにつれて喰種世界が実写になじんでくる感じがしました。
不安だった蒼井リゼは、たしかに原作リゼのエロい子とはかけ離れていましたが、
本性を現してからのバケモノっぷりは、それまでとのギャップもあってかなり不気味で怖く
ちゃんとリゼやってました。
リゼのモンスター的な怖さはアニメ超えてました。
清水さんのトーカにも注目してたんですけど、
ちゃんとトーカちゃんでした。ビジュアルに差はあれど違和感が全然ない!
続きが作られても出家して出られないだろうなってことがかなり残念になるくらいはまり役でした。
上でも書きましたが、東京喰種の役者さんは見た目こそ原作とは違いますが
「東京喰種」をしっかり表現してるっていう感じのうまい演技をやってくれました。
ウタさんがマスク採寸のために顔をぺちぺち触るシーンとか、
アニメではなく生身の人らしい動き方が実写世界とマンガの世界をうまく融け合わせててですね!
不自然さなんかなかったです。四方以外は。
3については、むしろアニメより原作に近い作りをやってくれたんじゃないかと思ってます。
アニメに出てこなかったビッグガールのシーンが出てきてて、ほかにもヘッセの話とか
アニメになかった要素を拾ってくれたのも良かったです。
中島さんがいないことや錦と戦った場所など改変はありましたが
矛盾も特になく、むしろ原作ちゃんと読んで2時間という短い時間で辻褄を合わせるために行った良改変だったと思います。
気になったのは車が普通に通ってる橋の下とか大学の一室で戦ってたことくらいでしょうか?
あそこから正体バレたりしないのかと気になったくらいですね。
と言う訳で原作喰種、それも初期の話を好きな人は見て損はしないだろう出来だと思います。
懸念があるとすればそこそこグロいってことでしょうか。
ウタさんの目玉おやつとか「本当にこれを食べるのか…?」の中身とか普通に出てきます。
トーカちゃんも人の腕をかじってました。
それらの人肉描写が大丈夫なら、迷ってる人は是非見に行ってください!
個人的な不満点を言うなら、1巻最後の「二つの世界に居場所を持てる~」の発言が
ちょっと取って付けた感があって割と流されてたなってところでしょうか。
CCG編まで書く以上仕方ないよなあとは思うのですが、
僕自身、偶像喰種のあのシーンは割と思い入れがあったのでそこだけ少し引っかかりました。
――――――――――――――――――――
「りーんー」
凛「……あ」
凛「奈緒……」
奈緒「よっ。……えっと」
奈緒「その……元気?」
凛「これが元気に見える?」
奈緒「……見えない。ごめん。凛が落ち込んでるとこ見てらんなくって……」
奈緒「いや、ホント、一人で泣きたかったかもしれないのに……」ジワ
凛「……」クス
凛「泣きたいのは奈緒の方なんじゃない?」
奈緒「……そうかも。あたし、自分が泣きたいのを誤魔化して、凛にちょっかいかけるとか……最低、だよな」
奈緒「や、でも、ホントごめん……」
奈緒「ほんと、ごめん、あたし、こうやって喋ってないと」フルフル
奈緒「菜々さんのこと、ホントにきつくって」グス
凛「……」
奈緒「菜々さん……なんでっ……」
奈緒「なんで交通事故なんかで死ぬんだよ……!」
奈緒「これからだったのにっ……!!」
凛「…ん。そうだね。奈緒は菜々さんと仲良かったもんね」
凛「アニメの話とかたくさんしたって、菜々さんから聞いてるよ」
奈緒「そうだよっ…。あたしがレッスンで伸び悩んでたときも、親身になって話聞いてくれて」
奈緒「そういう菜々さんもすっげえ頑張ってたから、応援してたのに……!!」
凛「…うん。辛いよね。でも菜々さん、今奈緒が泣いてくれてること、すっごく嬉しがってると思うよ」ギュ
奈緒「~~~っ……! 菜々さんっ……!」
凛「…………」
――――――――――
凛「…落ち着いた?」
奈緒「グスッ……ああ。大丈夫。ごめんほんとに。凛を慰めにきたはずだったのに……」
凛「私より奈緒の方が、ずっと菜々さんのこと考えてたでしょ?」
奈緒「んなこと言わなくていいんだよ……凛だって仲良かったじゃん……!」グスグス
凛「…そうだね。ほら、また泣いてるよ。大丈夫じゃなかったの?」
奈緒「ううっ……! …うん、大丈夫。段々落ち着いてきた」
凛「ん…本当に大丈夫みたいだね」
奈緒「ああ。ホント、気を遣わせちゃったな。凛にも、加蓮にも……」
凛「いいっていいって。……そういえば加蓮は?」
奈緒「加蓮は、あたしの分も歌詞カード取りに行ってくれてるんだ」
凛「歌詞カード? 何か歌うの?」
奈緒「ああ。もうすぐ、あたし達2人ともソロ曲出すことになってさ」
凛「! ソロ出すの? ってことは、もうすぐデビュー?」
奈緒「そう。だから、完成したら菜々さんにも聞いて欲しかったんだけど……」
奈緒「っ……」
奈緒「……うん。だから、こんなところでいつまでも泣いてるわけにはいかねーよな!」
奈緒「あたし、ずっと菜々さんに助けられたから……」
奈緒「夢を叶えられなかった菜々さんの分まで、アイドル頑張ってのし上がってやる!!」
奈緒「だから凛も! 菜々さんは凛のことも応援してくれてるから!」
奈緒「それ忘れんなよ! これ言いたくてこっちきたんだからな!」
凛「!」
凛「……うん、そうだね。菜々さんは私のことも応援してくれる」
凛「ありがと、奈緒。ちょっと元気出た」
奈緒「おう! その……今のみくちゃんにも言っといて! 菜々さん、みくちゃんのこともすっごく話してて気にしてたから!」
凛「分かった。任せて」
奈緒「頼んだぞー!」
凛「うん。またね」
凛「……」
凛(――プロデューサーからは、あらかじめ話を聞いてたけど)
凛(――人間の皆は本当に知らされなかったんだね)
凛(――『菜々さんが喰種』だってこと)
凛(――奈緒は菜々さんのことを、本当に好きだった)
凛(――ずっと応援してもらって、奈緒も菜々さんのことを応援してた)
凛(――でも、奈緒は菜々さんのことを『人間』だと思ってる)
凛(――奈緒は菜々さんが"喰種"だって知っても、今みたいに好きでいてあげられるのかな)
凛(――私のことを"喰種"だって知っても、今みたいに好きでいてくれるのかな)
凛(――加蓮はどうなんだろう)
凛(――考えるの、いやだな)
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
美嘉ちゃんは……私達に変装をさせてから、「おいで」としか言わなくて。
私達はほとんど喋らないで、道を歩いて行ったよ。
美嘉「ごめんね連れ回しちゃって。本当は今ここ来るの危ないからダメなんだけど……ついたよ」
そう言って、美嘉ちゃんが立ち止まった先は……ゴミ捨て場?
街から外れた川辺の、誰も目を向けなさそうなゴミだらけの場所。
カーペットやコンテナとか、色んなゴミが散乱してるようにしか見えなかったけど……
よく見ると、ビニールシートが木の棒で持ち上げられてたり、コンテナに人が入れる穴が開いてたりしてる。
美嘉「…みんなー。元気してるー?」
「「「!!!」」」
コンテナを覗き込んで、美嘉ちゃんは誰かを呼んだみたい。
そしたら……
「美嘉ちゃんだ!」
「美嘉ちゃーん!」
「あたし美嘉ちゃんの出てる雑誌拾ったの! ほら!」
「美嘉ちゃん! この本むずかしくて読めないの!」
出てきたのは、小さな子供。
私や輝子ちゃんより、ずっと小さい子供が、わらわらーっと美嘉ちゃんに飛びついた。
まるでエイリアンみたい。
蘭子「? この子達…如何にして、このような廃城に……?」
小梅「……全員、"喰種"だよ」スン
蘭子「そうなの? ……本当だ」
美嘉「はいはい、後でねー★ ……蘭子ちゃん、廃城ってひどくない?」
美嘉「まあ、まともな家じゃないのは確かだけど……仮にもアタシの実家をそう言われるのは、あんま良い気しないなー?」
蘭子「ご、ごめんなさい……実家!?」
美嘉「そ」
美嘉「アタシと莉嘉の実家。……正確には、第二の実家かな?」
一旦ここまで。
福岡LV行ってきます
――――――――――――――――――――
美嘉『アタシ達には親がいないってとこは、莉嘉から聞いてるんだっけ?』
美嘉『莉嘉がまだ覚えてるか覚えてないかくらいの時に、お父さんとお母さんが殺されちゃって』
美嘉『アタシは莉嘉を連れて逃げられたんだけど……それまで割と良いとこ住んでたのに、一気に家なしになっちゃってさ』
美嘉『その時、ここを見つけて2人で暮らすようになったの』
美嘉『で、アタシがアイドルになっていいとこ住めるようになったから、ここを引き払ったんだけど』
美嘉『割と住みやすいとこだったし、家のない子供見つけたらここを紹介するようにしてたんだ』
美嘉『あとは、たまに本読んであげたりご飯の探し方教えたり、プレゼント贈ったりするためにたまにここに来てる』
美嘉『本当はウチに連れてって面倒見てあげたかったけど……流石に危なくて、できなかった』
――――――――――――――――――――
「美嘉ちゃん美嘉ちゃん! これは何て読むのー?」
美嘉「んー? これは……『あじさい』」
「これはー?」
美嘉「『しぐれ』……かな」
「じゃあこれー!」
美嘉「なんとか、あめ……ゴメン分かんない。今度莉嘉に聞いてみる」
蘭子「えっと……『しゅうう』、です」
「しゅうう?」
蘭子「う、うん。急に降り出す雨のことで……」
美嘉「へー、蘭子ちゃんすごいじゃん★ こんなムズい漢字読めるなんて!」
蘭子「ど、読書は好きだから……」
――――――――――――――――――――
美嘉「さっきはありがとね、蘭子ちゃん。蘭子ちゃんに教えたい事があって来たのに、逆に教えられちゃうなんて」
蘭子「ど、どういたしまして……あの、美嘉ちゃん?」
美嘉「ん? どしたの?」
蘭子「その……美嘉ちゃんの『教えたい事』って……?」
美嘉「……それはね」
美嘉「……今日、菜々ちゃんが死んだばっかでここに来るのは危ないって言ったけどさ」
美嘉「ここに来たかったのは、ここの皆に悲しい事があったからなの」
小梅「!」
蘭子「悲しいこと……?」
美嘉「ついこの間、ね。この子達のうち一人が、ご飯探ししてるところを白鳩に見つかっちゃったらしくて」
美嘉「それで、殺された」
美嘉「……ほら、皆おいで。今日は美嘉ちゃんが一緒にいてあげるから、泣いていいんだよ」
「「「!!!」」」
「……っ~~~ううう~~~!!!」ダッ
ここに来た時、なんだか子供たちが張り切ってて、どうしたのかなって思ってた。
その理由が、やっとわかった。
ここの子達みんな、強がってたんだね。
だから、美嘉ちゃんが手を広げると、子供たちは美嘉ちゃんに駆け寄っていって……
かなしい映画みたいに、わんわん泣き始めた。
ずっとずっと、死んだ子の名前を呼んで、泣き続けてた。
それから、子供たちが泣き止んでも……美嘉ちゃんはずっと抱きしめ続けてて。
日が暮れそうな時になってやっと、その手を離したよ。
美嘉「…みんな、ゴメンね? もうちょっと傍にいてあげたかったけど、アタシも帰らなきゃ」
「ううん……美嘉ちゃん、ありがとう」
美嘉「……また来るね」
美嘉「蘭子ちゃん、小梅ちゃん。帰ろっか」
――――――――――――――――――――
美嘉「……アタシが言いたかったのはさ」
美嘉「"喰種"だからって、最初から仲間の死にドライなわけじゃない」
美嘉「みくちゃん達は冷たい子じゃないってことだったんだ」
美嘉「最初はあの子たちみたいに、我慢してても泣きたくて仕方ないんだよ」
美嘉「……でもさ。"喰種"って生きてるとものすごく友達とのお別れや、その危険が多くって」
美嘉「そのうち、悲しむヒマなんてないって気付いちゃうんだ」
美嘉「そんなことするくらいなら、自分や残った大切な人がいなくならないように、頭を回す方がずっと良いって」
美嘉「そうやって、アタシ達"喰種"は死んだ命に真正面から向き合えなくなっちゃう」
美嘉「いつの間にか……」
美嘉「『アタシ達は失いながら生きるしかない』って、受け入れちゃうんだ」
――――――――――――――――――――
蘭子『じゃ、じゃあっ……そんな!』
美嘉『?』
蘭子『美嘉さん達は……みんな、美波さんもみくちゃんも菜々さんもみんなっ……』
蘭子『仲間が殺されたり自分が殺されたりするのが当たり前って思いながら生きてるんですか!?』
蘭子『"喰種"が幸せに生きられるのはおかしいって思いながら生きてるんですか!?』
美嘉『……なーに言ってんの』
美嘉『「"喰種"はいつか殺される」ってのと「"喰種"が幸せに生きることは出来ない」ってことは全然違うよ』
美嘉『むしろ……いつ死ぬか分かんないからこそ、アタシは毎日全力で生きてる』
美嘉『どこまで行けるか分かんないけど、最期までアタシは全力で輝いて見せる』
美嘉『アタシが"喰種"ってバレたら、アタシをカッコいいって思ってくれたファンは掌返して化け物扱いするかもだけど……』
美嘉『それでも、どーせ長生きできない駆逐対象』
美嘉『どうせ死ぬなら、カッコいいお姉ちゃんのまま死にたいじゃん★』
――――――――――――――――――――
美嘉ちゃんの言うこと……私は、むしろすごいって思うよ?
私は、"喰種"は日陰で生きるべきだって。
プロデューサーさんが見つけてくれるまでは、そう思ってたから。
だから……"喰種"なのに、どこまでも上を目指そうとして。
いつかどこかで、ぷっつり終わるかも知れないって分かってるのに。
全力でキラキラ、眩しく輝いてる美嘉ちゃんは……私には真似できないくらい、すごい人。
だけど、蘭子ちゃんはそう思わなかったみたいで……
蘭子「……この世界は……」
蘭子「この世界は、間違ってる」
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
バタン
P「! 神崎さん」
P「……先ほど、城ヶ崎さんからお話を伺いました。ですが、無事帰って来てくれて良かった……」
蘭子「うむ。心配をかけたようね」
蘭子「我が友」
P「? はい」
蘭子「そなたの下に、堕ちた魔王の使者が救済の書を託す……」
蘭子「……プロデューサーにお願いがあります」
"喰種"になり切れなかった蘭子ちゃんは、こうして前へ進み始める。
ただ……
――――――――――――――――――――
ちひろ「『安部菜々』さんの火消しは、無事終了しました」
ちひろ「これも皆さんの仕事のおかげです。本当にお疲れさまでした」
ちひろ「あとは、我が社に協力してくださった方々への報酬についてですが……」
ちひろ「あちらの要求は何人ですか?」
「二人です」
「それと、出来るだけ仲睦まじい二人組を希望されていました」
「『美しい友情を見ながら、食事を楽しみたい』、と……」
ちひろ「仲のいい二人組ですか」
ちひろ「それでいて経営に影響のない新人、とくれば……」
『神谷奈緒』
『北条加蓮』
ちひろ「この『財産』を報酬にしましょう」
――――――――――――――――――――
進んだ先は、とても厳しい下り坂。
蘭子ちゃんは、気付くはずもなかった……よ。
今日はここまで。
福岡はなおかれでした。
おつおつ
映画面白かったのかよかったな!
近所でやってないしレンタル始まったら見るわ
~過去・市原仁奈~
仁奈はパパとママが大好きでごぜーます。
パパとママは「しーしーじー」ってところでお巡りさんをやってやがるです。
人に化けて人を困らせる、悪い「グール」たちをこらしめて平和を守るお仕事をしてるですよ!
桃太郎のオニ退治でやがります!
でもパパとママはお仕事や「グール」のこと、あんまり話してくれねーです。
ママに聞いたら、しかめっ面になってしばらく口きいてくれねーです。
それがさみしーから、仁奈はママのお仕事について聞かねーようにしてるですよ。
パパもママも、お仕事ですげー忙しーです。
パパはずっと海外でお仕事してて、帰ってこれないってママが言ってやがりました。
ママも、ずっと「グール」退治に行ってて帰ってこなくて、
帰って来てもおにぎり作ったらすぐ「グール」退治に行っちまうです。
パパが日本にいたときは参観日も運動会も来てくれたけど、
今はすげー忙しくて、学校には来てくれなくなったです。
パパが海外でお仕事するようになってから、ママは仁奈とぜんぜんお話してくれねーです。
でも、ある日ママとお出かけすることになったですよ!
ママが久しぶりにお休みをとってくれて、仁奈に
「仁奈が楽しめる場所に連れてってやる」
って言ってくれたですよ!
仁奈の前ではいっつもしかめっ面なママも、その日は嬉しそうだったでやがります!
「この間、テレビで346プロダクションのことを知ったんだよ」
「仁奈と同い年の子も優しそうな女もいる。仁奈の好きな着ぐるみの仕事だってあるぜ」
「仁奈もアイドルやってみろよ」
ママは仁奈を「アイドルじむしょ」に連れてくって言ってやがりました。
ママ言ってたです。仁奈にとってすげー楽しい場所だって!
仁奈、アイドルが何なのかよく分かってねーですけど……
ともだちも優しいおねーさんもたくさんいて、きぐるみがたくさん着れるって言ってたです!
「そう言うトコに行けるの、仁奈も嬉しいだろ?」
うれしーです!
たくさんきぐるみ着れるの、仁奈すげーたのしみです!
ともだちもたくさん出来るってほんとでごぜーますか?
アイドルってどんな楽しーことなんだって、仁奈わくわくしてるですよ!
……でも、楽しいのはそれだけじゃねーです。
だってママが、仁奈とお出かけしてくれやがりましたから!
ママ、帰って来る時はいっつも疲れてて、しかめっ面で。
でも今日のママは仁奈に笑ってくれて、いっぱいアイドルのお話してくれるですよ!
パパが日本にいたときみたいに、またいっぱい遊べるって分かって。
だから、仁奈すげー嬉しーです!
「……あ? 仁奈、ちょっと待ってろ。電話だ」
「はい市原です……増援要請? どこだ?」
「……近いな。ああ、ちょうど近くに来てンだよ」
「ああ、クインケは持ってる。待ってろすぐ行く」
「……仁奈。お前ここで待ってろ」
「お前のプロデューサーをやってくれる奴がすぐ来るからよ」
「そんな怖い奴も来るわけじゃねェだろ。ちゃんと仁奈の面倒も見てくれるから、それまで良い子で待ってられるな?」
……え?
ママ、お仕事に行っちまうですか?
休みとったって、言ってたのに……。
……分かったです。
分かってるです。
ママもパパも、平和を守るために戦ってるって仁奈知ってるですよ。
しかたねーです。
仁奈はそんなパパとママが大好きでごぜーます。
仁奈、ちゃんと一人でお留守番出来るですよ。
そうやって仁奈が知らねー場所で、一人でお留守番してたら、
仁奈のプロデューサーが仁奈を見つけたですよ。
プロデューサーは仁奈のこと、すげー気に入ってくれて、
プロデューサーが「たんとう」してた美優おねーさんと一緒に、仁奈はアイドルをやることになったです。
プロデューサーも美優おねーさんも、すげー優しくて、
楓おねーさんや早苗おねーさん、桃華ちゃんや薫ちゃん、千枝ちゃん、きらりおねーさん、
アイドルをやってから仁奈はともだちがいっぱいできたでごぜーます!
動物のきぐるみもたくさん着れて、ママのいう通りすっげー楽しいでやがります!
……だから、仁奈はママとまた遊びてーです。
パパにも会いてーです。
仁奈、すっげー楽しいから……しかめっ面のママにも、忙しいパパにも笑ってほしーです。
大好きなママとパパに、アイドルやってる仁奈を見てほしーです。
――――――――――――――――――――
今日はここまで。
Happy birthday ありす。
あと俺。
つまり私はアリス。(実写バイオ並感)
話のキリが良いのと、アイドル達のモノローグが思ったよりやり辛くて書き方変えようかなって考えてたのと、
それとまとめでも実写喰種のレビューを見てもらって出来るだけ多くの人に映画見に行ってほしいのとで、
あと一回だけ話を区切ることにしました。
なので、今回の更新でこのスレを終了してもう一回だけ外伝のためにスレ立てします。
何回も区切ってややこしくしてゴメンね。
~現在・片桐早苗~
橘「本日もご足労いただき感謝します」
橘「今日は大事なお話がありますので、片桐さんからご報告などあれば失礼ですが手短にお願いします」
早苗「分かったわ。ありすちゃんと仁奈ちゃん、雫ちゃん以外でとりあえず5人、『この子は人間だな』っての見つけてきたわよ」
市原「おお、やるじゃねーか早苗サン。誰だ?」
早苗「向井拓海ちゃんと中野有香ちゃん、櫻井桃華ちゃんにあとは姫川友紀ちゃん、佐藤心ちゃんね。この子達とは一緒に仕事の打ち上げでご飯食べたり、飲みに行ったりしたけど……」
早苗「あの食べっぷり飲みっぷりは間違いなく人間ね」
市原「ブフッ」
橘「…ぷ…それで判断したんですか?」
早苗「なによぉ! あんなん見たら誰だって"喰種"の演技なわけないって思うわよ!?」
橘「…コホン。分かりました。大丈夫、信用しますよ」
橘「ですが、念のためこちらで5名の生活を一時監視させていただきます」
市原「…ゴホン。あたし等や他の女捜査官だけで監視するから、その辺は安心していいぜ」
早苗「ん、分かったわ。…それで」
早苗「……ユッコちゃんのことなんだけど」
橘「……申し訳ありません。…言い訳にしかなりませんが、せめて現在判明した情報だけでもお話しします。…ギン」
市原「ああ。…この間『キャッスル』の関係者だと踏んでた喰種を駆逐した」
市原「だが、殺してすぐそいつの家や資料、ニセモンの証明書を作った奴を辿っても…キャッスルに繋がるコネみてーなのは出てこなかった」
市原「これで、あたし達のやったことがムダに終わったっつーんならまだ良かったんだけどよ」
橘「直後、キャッスルの我々への警告と思われる活動により…捜査方法の見直しを強いられることとなりました」
橘「ギンの駆逐した喰種…Aとします」
橘「A駆逐直後、キャッスルによるものと思われる新人アイドルの誘拐事件が発生しました」
橘「事件現場には、とある資料がまとめられた封筒と一つの書き置きがあり……」
『藪をつつけば蛇が出る』
橘「…A駆逐から誘拐事件まで、半日も間が開いていませんでした」
橘「それにも関わらず、『キャッスル』はこのような資料を現場に残していきました」
早苗「…どんな資料?」
橘「……捜査の都合上、写真そのものまでお見せすることは出来ませんが」
橘「Aがギンに駆逐されるまで、その当日の行動を撮影した写真でした」
市原「つまりだ。あいつ等、アタシ達の行動を既に予測してやがったんだ。その上で尻尾切りをやった」
早苗「尻尾切り……あの子はキャッスルの関係者だったけど見捨てられたってこと?」
橘「そうとは断言できません。ただAをキャッスルへの糸口として捜査していた我々に、組織の力を誇示した…とも取れます」
橘「確実に分かっているのは、キャッスルは常に我々の動きを監視しており」
市原「で、その気になれば人間のアイドルをいつでも殺せるし、下手に探れば犠牲者出すぞと脅しをかけやがったってことだな」
市原「…喰種捜査官は人民の安全・命が最優先だ。地味に効くぜこう言うの」
早苗「…そっか」
橘「申し訳ありません。大切な御友人の救助もままならず……」
早苗「仕方ないわよ。あたしも似たような仕事のもんだし、事情は分かってるつもり」
早苗「ただ、それじゃああなた達に協力してる私とか……私だけじゃなくて周りの皆も危ないって事じゃないの?」
市原「ああ、その通りだ。多分泳がされてる」
橘「はい。ですから、ここからが本題です」
橘「片桐さんや片桐さんの御友人。そして私達の娘」
橘「皆様には、芸能活動の一時休止とCCG関連施設への入居をお願いしたいのです」
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
市原「……ふー」
橘「ため息ついてる暇なんかないわ。今から一日中片桐さんを護衛するのだから」
市原「わーってるよ。……つか、護衛じゃないだろ」
市原「監視だろ?」
橘「……そうね。分かり切った事を喋ってないで、急ぎましょう。片桐さんを待たせてはいけない」
市原「…ま、そうだな」
市原(――今からあたし達は、帰宅する片桐早苗を遠くから監視する)
橘(――直接護衛しないのは、あからさまに彼女を守ってキャッスルに疑念を抱かせて)
橘(――『まだ正体が確定していない』人間アイドルを危険に晒さないため)
市原(――表向きは『今まで通り』だ)
市原(――そのことは早苗サン自身にも話してある)
橘(――しかし、護衛のことを話した理由は別にある)
((―――片桐早苗に『"喰種"だった仲間』と連絡を取らせないため―――))
市原(――早苗サンはあたしが駆逐した安部菜々を『あの子』っつった)
橘(――346プロダクションは、駆逐された"喰種"のことを『事故死』と説明している)
市原(――安部菜々のことはあたし達からも話してない。だが早苗サンは気付いてる)
橘(――片桐さんの心境を考えれば……"喰種"だとしても、元仲間に情けをかけてしまうかもしれない)
市原(――346プロに"喰種"が潜んでいる可能性はでかい)
橘(――恐らく、片桐さんに近い人物の中にも)
市原(――早苗サンは『メシの食い方』で人間を見抜いた。しかも、あんなに自信たっぷりにだ)
橘(――つまり、観察したなかで"喰種"の食べ方と人間の食べ方の違いに気付いたということ)
市原(――メシ食いに行った相手に"喰種"がいたと気付いてるってことだ)
橘(――もしかしたら、その職員やアイドルの中に『キャッスル』の関係者がいるかも知れない)
市原(――だとしても、仲間がそうだと知ったら……長い時間一緒にいた相手だ。情が湧くのが普通だ)
橘(――保護もそのため。分かっている人間だけでも、事実上の隔離をして"喰種"への一切の干渉を阻害する)
市原(――"喰種"に情けはかけさせない)
橘(――『喰種対策法第八十八条第一項』)
市原(――『"喰種"を蔵匿・隠避した者。これを重く罰する』……)
橘(――"喰種"などのために)
市原(――人間が罪を負う必要なんかねえ)
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
橘『改めて忠告しますが……"喰種"を匿うことは重罪にあたります』
橘『"喰種"は罪を負ってまで庇う価値はありません』
橘『長い時間を共にした相手であっても、絶対に"喰種"を庇わないでください』
早苗「……なんか」
早苗「……思ってたより、ずっと大事になっちゃったわね」
早苗「ユッコちゃんのことがあるのに、何言ってんだって話だけど……」
菜々ちゃんが死んでから、1週間くらい。
あたしは仕事の休みが入った隙を狙ってCCG本局に来ていた。
もちろん、ここに来ることは誰にも言ってない。
まあオフに来てるんだし、いちいちプロデューサー君に言う必要もないわよね。
……そう。
プロデューサー君には言ってない。
あたしがCCGと関わりを持ってて、「キャッスル」の捜査を手伝ってるってことを。
最初は、昔の後輩からユッコちゃんの行方の手がかりを聞いて、
捜査官二人に取り次いでもらった時
『誰にも話さないでください』
って言われたから…こればっかりは迂闊に喋っていい話じゃないって思って、本当に誰にも話さなかった。
雫ちゃんにも話さなかったわ。
だから、事件が少しでも見えてきたら改めてプロデューサー君に話す方向で考えてたんだけど……。
ある時、美樹ちゃん……橘美樹準特等に言われたの。
橘『私達の捜査について……娘を見守ってくれる人には、話していただいても構いません』
橘『しかし…話す前に一度、改めて「人間だ」と確証を得て下さい』
橘『"喰種"の中には長期間、特定の人間と関わり続けて警戒を解かせる狡猾な種類もいます』
橘『付き合いの長い方だからと、その人を過信しないよう心に留めてください』
まあ、確かにね。
言ってることに納得は出来たし、もし万が一"喰種"に今の状況がバレたら……って思うと、かなりヤバいことになりそうだし。
だから、一応プロデューサー君が人間だって証拠を得てから秘密を話すつもりだった。
…「一応」のつもりだったのよ。
なのに……
あたし、気付いちゃった。
プロデューサーは人間と比べてご飯をあまり食べない。
珍しくご飯を食べた時は、必ずトイレに行ってる。
飲むものは大体コーヒー。
砂糖もミルクも、入れてるところを見たことがない。
プロデューサーの生活態度は、まんま"喰種"のそれだった。
プロデューサーだけじゃない。
瑞樹ちゃんも、美優ちゃんも、美嘉ちゃんも、夕美ちゃんも、里奈ちゃんも。
よく見れば、拓海ちゃん達の暮らしと全然違う。
分かってるわよ。このまま美樹ちゃんとギンちゃんについて行ったら……
菜々ちゃんみたいに皆駆逐される。
でも……
市原『346プロに潜んでる"喰種"にキャッスルの奴らが混じってるかもしれねえ』
市原『だから今日明日はあたし達が遠くから見張っとく』
ユッコちゃんを攫った奴らに、みんなが関わってるとは思いたくない。
でももし、万が一……ユッコちゃんがいなくなったことが皆のせいなら。
あたし達と仲良くしてる裏で、人攫いをやってるんだとしたら……
あたしは許せない。
許せないけど……
早苗「…………」
早苗「……どっちにしろ」
早苗「……なんか、もう前には戻れない気がするわ」
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
~現在・???~
私は知ってしまった。
この346プロダクションは、私が夢見たお城は。
灰被りが階段を昇り、綺麗なお姫様となり煌めく、美しい城などではなかった。
ここは―――
化け物に喰われた少女達の骸が転がる、青髭の塔だ。
そうとは知らず、化け物共は。
骸の大地に築かれた塔の舞台で、また踊ろうとしている。
P「―――先日、神崎さんの要望により」
P「皆さんが参加するライブの企画を作成しました」
P「当企画のコンセプトは『笑顔の橋』」
P「人と"喰種"を繋ぎ、真っすぐに皆さんの笑顔を届ける橋を作ります」
P「皆さんの、"喰種"も人間も、何も変わることのない―――」
P「心からの、本当の笑顔のために」
化け物の陰にも、崩落の兆しにも。
なにも気付くこともなく。
次回『偶像喰種外伝 CINDERELLA Ghouls』完結編
卯月「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」
と言う訳で、また話を区切ることにしました。
そこそこ話は進めたつもりですが、なんかモノローグばっか目立ってる気がします。
なんとか省いた1クール範囲を埋めようと思って過去の振り返りをやってみたんですが、
なんか話が進むにつれてアイドル達がメンヘラ化してるだけのような気がします。
一応補足しておくと喰種アイドルの皆は自分の生まれとか運命をただ悲観してるわけじゃなく、
喰種に生まれても前向きに、一人のアイドルとして輝こうとしてる姿勢もちゃんとあるんです。
美波や智絵里、みくや李衣菜なんかは、前向きな意志をちゃんと出したいと考えていました。
でもそう言う面は1クール範囲をちゃんと書かないと表現できないなと分かりました。
飛ばした話はpixiv小説で加筆するなりでちゃんと書こうと思います。…外伝と第二章を終えた後になりますが。
隠して書いても多分見抜かれるだろうなと思ってキャッスルの正体は早々に明かしたわけですが、
それでもキャッスルは346プロの秘密を、CCGからは隠さなきゃいけません。
CCGをマヌケにせずに、なおかつ秘密を漏らさないよう策や活動方針を考えるのはやっぱり難しいですね。
ただ組織やその活動について矛盾が出ないように設定や話を組むのは結構楽しいです。
CCG側のキャラクターとして、オリキャラを二人ほど出しました。
オリキャラがダメな人はごめんなさい。
なるべくモバマスや喰種の既存キャラクターに寄せたら読んでくださる皆さんの抵抗も薄くなるかなーと思ってキャラ作りをしました。
ちょっとだけ二人の設定も組んだので、もし興味があれば見てくれれば嬉しいです。
この先の話ですが、既に第二章で明かした通り
喰種がアイドルとして活動できる346プロは崩壊します。
菜々以外の死人もゼロではなく、まさに「悲劇」が起こる話になります。
悲劇が起こると分かっていても読んでくださる皆さんのために、
皆さんの共感を阻むような物語としての大きな破綻を作らず、
キャラクターを一人たりとも決して雑に扱うことなく、
それでいて読者の皆さんの心を大きく動かせるような、
そういう話を目指して、遅筆ながら残りを執筆させていただきます。
次回の外伝完結編は、SSAの辺りで書き始めようと考えています。
(本当はすぐに書ききりたいと考えているのですが)
また何か月(ないとは思いたいですが何年)かかるか分かりませんが、
それでも完結に向けしっかりと書いていきたいと思います。
あとがきまで長々と書いてしまいましたが、
ここまで読んでいただきありがとうございました。
どうか最後までお付き合いください m(_ _)m
こっちは市原一等と橘準特等の簡単な設定です。
http://imgur.com/gKzntL9
追記。
タイトルは
楓「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝中編】
でお願いします。
もいっこ追記。
橘準特等は37歳、市原一等は早苗さんと同い年の28歳って考えてます。
おつー
おつおつ
またまってるわ
このSSまとめへのコメント
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