兵士「この戦争が終わったら……オレ、結婚するんだ」 (11)


「この戦争が終わったら……オレ、結婚するんだ」


諦観を含んだ微笑みとともにこうつぶやき、槍を持ち、敵軍に突撃していく兵士。

いつ終わるともしれぬ、泥沼化した戦い。
いくら犠牲者が増えても、まるで収まる気配がない。

戦場という怪物は、その際限のない食欲で、若い命を次々に呑み込んでいく。


この怪物が生まれた経緯を知るには、いくらか時間を遡らねばならない。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1482424393


仲の悪い二つの国があった。A国、B国と呼ぶことにする。


両国は国境を挟んでしょっちゅう小競り合いを繰り返し、
見かねた周辺国がいくら仲裁しようとしても、一向に改善の兆しは見られなかった。


しかし、その争いの歴史にも、ようやく終止符が打たれる時がやってきた。


A国を治める王とB国を治める女王が、ある国際的な会議をきっかけに恋に落ち、
二人はめでたく結婚することになったのだ。


これを受け、二つの国は合併することになり、一つの国を王と女王が共同統治することとなった。


やっと平和な時代が訪れる、と両国はもちろん、周辺国の人々さえ喜んだ。


ところが、いざ王と女王が一つの宮殿で暮らすようになると、早くも亀裂が走り始めた。


王は元々傲慢で、しかもどんな小さなことでも根に持つ性質があった。

女王は女王で非常にヒステリックで、自分の思うようにならないと
すぐにわめき散らす性格をしている。


恋というヴェールがはがれ落ち、二人の本性がむき出しになった今、
もはやこの男女がうまくやっていける要素は皆無であった。


これは、国民についても同様であった。
旧A国と旧B国の国民は、ことあるごとに衝突した。


たとえばA国の人間は菜食な傾向にあり、B国は肉食が中心であった。

A国では上下関係が非常に重視されていたが、B国ではあまり重視されない。

A国の人間は賑やかな音楽が好きなのに対し、B国の人間は静かな曲を好む。

挙げようと思えばキリがない。


こうまで国民性がバラバラでは、とてもうまくいくわけがなかった。


まもなく、国中の人間がこう訴えた。


「あんな奴らと同じ国の国民でいるなんてまっぴらだ! 元通り、二つの国に分けてくれ!」


――と。


言われるまでもなく、王と女王はすでに離婚を決意していた。

結婚して以来、初めて二人の息が合った瞬間が別れる時だというのは、
まこと皮肉な話である。


だが、なまじ一度垣根を取り払い、合併したせいで、
両国間に渦巻く対立感情は、かつてない史上最悪のものになっていた。


これでは、たとえ二人が離婚して、A国とB国に再び分裂したとしても――


正式に離婚の手続きを行う日、A国の王は側近達にこう漏らしたとされる。


「この結婚が終わったら……オレ、戦争するんだ」







<終わり>

少佐がアップを始めました

悪くない

星バーーーローーっぽい

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