的場梨沙「マフラー」 (27)

最近寒いわねー。パパもそう思うでしょ?

……そうよねー。朝とか夜とか、風邪ひいちゃいそうになるくらい。

……あ、そうだ! じゃあ、アタシがあったかいもの作ってあげる!

大丈夫よ、大丈夫! リサ、なんでもできるもん!


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梨沙「………」

ちくちく。

梨沙「………」

あみあみ。


晴「おっす……ん? なにしてるんだ、梨沙」

梨沙「見ればわかるでしょ。編み物よ、編み物」

晴「編み物?」

梨沙「そ。パパにプレゼントするの」

晴「へえ、いいんじゃねーの。最近寒くなってきたし、マフラーあげたら梨沙パパも喜ぶだろ」

梨沙「はぁ? マフラー?」

晴「え?」

梨沙「どこ見てるのよ。これ、どう見たって編みかけのセーターじゃない」

晴「……セーター? この、蛇みたいにぐねぐね伸びてる細長いのが?」

梨沙「そ、それは袖よ!」

晴「お前のパパ、腕何メートルあるんだよ……」

梨沙「うぐっ……ま、まあ、ちょっと失敗してるけど、ここから挽回するもん!」

晴「オレ、編み物はさっぱりわからないんだけどさ。ここからどうにかなるもんなのか?」

梨沙「………」

晴「いや、黙り込むなよ。こっちまで心配になるだろ」

梨沙「はあ……どうしよう。こんなペースじゃ、ちゃんとできるころには春になっちゃうかも」

晴「というか、セーターって編み物の中でもかなり難しいって聞いたぜ。初心者が挑戦するにはハードル高すぎるんじゃ」

梨沙「わかってるわよ、そのくらい。でも、マフラーよりセーターのほうが大きいし」

晴「大きいって、サイズが?」

梨沙「スケールが」

晴「スケール……なるほど。確かにセーターはスケールでかいな」

梨沙「でしょ? だったらプレゼントもスケール大きいセーターのほうがいいでしょ!」

晴「だな!」


飛鳥「……そこ、納得するところなのかな」

晴「あれ、飛鳥いたのか」

飛鳥「いた。梨沙がひとりで悪戦苦闘しているところからね」

梨沙「そういえば、ずっとそこで本読んでたような気もするわね」

飛鳥「キミは集中していたから気づかなかったんだろうね」

飛鳥「真剣に編んでいるのを邪魔するのも悪いと思って、声をかけずにいたけれど……こうなる前に、手を打っておくべきだったか」

梨沙「ちょっと。なによその『もう手遅れだ』みたいな諦めた顔は」ジトーー

飛鳥「ボクもまさか、セーターを編んでいるとは予想していなかった。梨沙が作っているのはマフラーだと錯覚させられていた……思い込みの怖さだね」

梨沙「なによ、飛鳥まで! 確かに出来はひどいけど、ちょっとくらいセーターっぽいところも」チラッ

梨沙「あ、マフラーだこれ」

晴「な?」

飛鳥「マフラーだとしても歪な姿をしているけどね」

飛鳥「ボクの意見としては、セーターを諦めてマフラーや手袋を編むべきだと思う」

梨沙「えー? スケールが小さいじゃない」

飛鳥「確かに、セーターを編んだほうが得られる達成感は大きいかもしれない。だが、それ以前に完成させなければ意味がない」

飛鳥「パズルにおいて、最後のピースをはめる瞬間が至高なのと同じさ。あくまでこの場合は、だけれど」

晴「よくわかんねーけど、オレも飛鳥と同意見かなあ」

梨沙「ちょっと晴! アンタさっき、セーターはスケールが大きいって納得したじゃない」

晴「そうだけど……実際、このままじゃ完成しないだろ。誰か編み物がうまい人に教えてもらいでもしないと――」


心「おーっす☆ みんなお疲れ♪ あみあみしてるー?」

梨沙「………」

晴「………」

飛鳥「………」

心「オイ☆ お目当ての編み物うまい美女が来たんだから喜べ☆」

梨沙「自分で美女って言うのどうなのよ」

晴「はぁとさんって編み物うまいのか?」

心「もちのロン!」

晴「ロン?」

心「また死語言っちゃった♪ てへぺろ☆」

飛鳥「自作の衣装を作れるくらいだから、編み物もお手の物と言ったところか」

梨沙「ハートさん、アタシにセーターの編み方教えてくれる?」

心「おっけー☆ ……と、言いたいのは山々なんだけど」

梨沙「?」

心「梨沙ちゃん、今日は何月何日?」

梨沙「11月1日」

心「こういうあったかーい編み物って、遅くてもクリスマスまでにはあげたいじゃない?」

飛鳥「時機を逃してしまうからね」

心「そうそう♪ ホットなタイミングで渡したいよね☆ あったかい贈り物なだけに☆」

晴「まあ、そうだよな」

梨沙「2ヶ月もないってことよね……」

心「学校やアイドル活動もある中で、初心者が2ヶ月弱でびしっとセーターを完成させられるかっていうと……まあ、難しいわけよ。いくら梨沙ちゃんが器用でもね」

梨沙「ん……」

飛鳥「特にキミの場合、父親への贈り物なら完成度が高くないと満足しないだろう。妥協はできないはずだ」

梨沙「それは、まあ」

晴「しかも梨沙は夜の10時には眠くなるからな。夜更かしして頑張るのも無理だろ」

梨沙「は、早寝早起きはいいことだからいいじゃない!」

心「ところでさ、いい加減誰かはぁとのダジャレに反応してくれない? 総スルーが一番堪えるんだけど」

晴「イエローカード」

梨沙「イエローカード」

飛鳥「2枚揃って退場か」

心「やぁん、息ぴったり☆ 酷評は酷評で堪える☆」


梨沙「ハートさんの言いたいことはわかったけど、ここでセーターを諦めたら負けな気がするのよ」

晴「負け?」

梨沙「そう。なんだか、逃げたみたいでイヤなの」

飛鳥「目標を現実的なラインに定めること。それを諦めと言えるのは、キミの強さでもあるね」

心「チッチッチ♪ 梨沙ちゃん、これは決して諦めじゃないの。よりパパさんに喜んでもらうための、勇気ある決断なんだぞ☆」

梨沙「パパに、喜んでもらうため?」

心「マフラーなら、多少は手の込んだもの作る時間あるだろうし♪ 梨沙ちゃんなりに意匠をこめた、とびきりスウィーティーなプレゼントにできると思うの♪」

心「プレゼントの大きさも大事だけど。もっと大事なのは、ハートでしょ?」

梨沙「………」

梨沙「シュガーハートだけに?」

心「今のはダジャレじゃないわっ!」

梨沙「冗談よ、冗談」フフ

梨沙「よーし! こうなったら、世界で一番セクシーなマフラー、作ってやるわ!」

心「その意気、その意気☆ はぁとも手取り足取り教えてあげちゃう♪」

晴「頑張れよ! ……ところで、セクシーなマフラーってどんなのになるんだ?」

飛鳥「……露出が多くて薄い?」

晴「寒いマフラーって意味ないだろ」

梨沙「頼んだわ、ハートさん!」

心「よし! 今からはぁとのことはスウィーティー師匠と呼ぶがいい!」

梨沙「ええー、ダサくない?」

心「そこは呼べよ☆ ノれよ☆」


数日後


梨沙「………」

ちくちく。

梨沙「………」

あみあみ。

梨沙「………」

うとうと。


ネネ「梨沙ちゃん?」

梨沙「はっ!? ね、寝てない、寝てないわよ!?」

ネネ「?」

ネネ「そっか。お父さんのために、マフラーを編んでいるんですね」

梨沙「うん」

ネネ「梨沙ちゃんはお父さん想いのいい子ですっ」

梨沙「ふふ、トーゼンよ!」

ネネ「今はちょっと居眠りしちゃってましたけど」

梨沙「だ、だから寝てないってば!」

ネネ「ふふっ。初めての編み物で、ずっと集中して作業しているんだから、頭が疲れちゃうのは当たり前ですよ」

梨沙「……正直、ずーっと座ったまま同じ動きで編まなきゃいけないの、結構キツイ」

ネネ「少し休憩を入れたらどうかな。そのほうが、効率あがると思うし」

梨沙「でも、空いてる時間に少しでも進めたいし」

ネネ「梨沙ちゃん」ポン

梨沙「あっ……」

ネネ「梨沙ちゃんの一生懸命なところ、とっても偉いと思います」

ネネ「でも、それで身体を壊しちゃったら、お父さんも悲しみますよ。……もちろん、私やプロデューサーさんも」

ネネ「健康第一、ね?」ナデナデ

梨沙「……パパ以外になでられても、うれしくないんだけど」

ネネ「あ……ごめんなさい。つい、癖で」

梨沙「……まあ、今回は許してあげる」

ネネ「ありがとう」

ネネ「あ、そうだ! 私、新作のフルーツジュース持ってきたんです! 誰かに味見してほしかったから、お願いしてもいいかな?」

梨沙「しょうがないわね。それ飲んでる間は、さすがにマフラー編めないし……だから、休憩ね!」

ネネ「ふふっ。それじゃあ、持ってきますね」


ネネ「さあ、召し上がれ」

梨沙「このオレンジ色……カンキツ系?」

ネネ「正解です♪ なかなかうまくできたと思いますよ。少し酸味強めですけど」

梨沙「ふーん。いただきます」

ネネ「梨沙ちゃん、いつもあいさつしっかりしますよね」

梨沙「パパに教えてもらったの。あいさつはちゃんとするのがレディのたしなみだって」

梨沙「んくっ……んくっ」


梨沙「って、すっぱ!? 思った以上にすっぱい!」

ネネ「ふふ、目が覚めるでしょう?」

梨沙「た、確かに……それに、よくよく味わうとおいしい……」

梨沙「これ、ネネが自分で作ったのよね」

ネネ「はいっ」

梨沙「レシピとか、聞いてもいい? パパにも飲ませてあげたいし」

ネネ「もちろん♪ 使った材料はですね――」

梨沙「メモ、メモとらないと」

梨沙「マフラー編み終わったら、フルーツジュースにも挑戦してみるわ!」

ネネ「頑張ってくださいね。応援してます!」

ネネ「また、なにかおいしいジュースが作れたら、レシピ紹介しますね」

梨沙「……今さらだけど、ネネは面倒見いいわよね」

ネネ「そうかな?」

梨沙「そうよ。オーストラリアでも、いっぱいみんなの世話焼いてたじゃない」

梨沙「みんなの飲み物買ってきたり、口元が汚れてる晴の顔を拭いてあげたり、単独行動してたら迷子になった飛鳥を連れてきたリ」

ネネ「そういえば、夜は梨沙ちゃんと同じベッドで寝ましたね」

梨沙「あ、あれはパパが恋しくて……まあ、ありがと。安心した」

ネネ「はい、どういたしまして」

ネネ「……でも、本当はあの時、私もほっとしたんですよ?」

梨沙「え?」

ネネ「妹を日本に置いて、オーストラリアに来て。何日も過ごしているうちに、どうしてもあの子のことが心配でしょうがなくなって」

梨沙「ネネの妹って……確か、身体がよくないのよね」

ネネ「うん。私がアイドルになったのも、あの子に元気を与えたかったから」

ネネ「だから、梨沙ちゃんがパパシックになっちゃった時、私も妹シックになりかけていたんです」

ネネ「でも、梨沙ちゃんと一緒に寝ていると……妹が傍にいるような気がして。ぬくもりを感じているうちに、安心したんです」

梨沙「アタシ、ネネの妹に似てるの?」

ネネ「年齢と、身長は近いかも。性格は……んー、あんまり似てない?」

梨沙「ふーん、そうなんだ」

ネネ「この前の梨沙ちゃんのライブ見て、興奮してました。私もあんな風にかっこよく踊りたいって」

梨沙「だったらきっといい子ね! わかってる!」

ネネ「ふふ、そうですね。とても、いい子です」

梨沙「あ、そうだ! さっきのレシピのお礼に、アタシのサインその子にあげる!」

ネネ「いいんですか?」

梨沙「だってアタシのファンってことでしょ? トーゼンよ」

ネネ「……ありがとう」

梨沙「さーて、ばっちり休んだし、そろそろ再開ね!」


ネネ「さっき、言いましたよね。私がアイドルを始めたのは、妹のためだって」

梨沙「うん」アミアミ

ネネ「今でももちろん、そのために頑張っているけれど……でも、それだけじゃなくなりました」

ネネ「それが、なんだかうれしいんです」

梨沙「………」アミアミ

梨沙「アタシも、パパのためにアイドル始めたけど……今は、それだけじゃないかも」

梨沙「ロリコンのためにも、頑張ってあげないとね」

ネネ「ふふっ。なんだか似てますね、私達」

梨沙「そうかもね」ニカッ


さらに数日後


梨沙「………」

ちくちく。

梨沙「………」

あみあみ。

梨沙「………」


梨沙「……ねえ。後ろからじーーっと見つめられると、気が散るんだけど」

裕子「ムムムーン! ……はっ、ごめんなさい! 梨沙ちゃんに応援の念を送っていたんですけど、少しサイキックが強すぎたようです!」

裕子「しかしこれは、私のテレパシーが強く強く梨沙ちゃんに届いたことの証明ですね!」

梨沙「ずーっと見られてたら嫌でもわかるでしょ。テレパシー関係ないわよ」

裕子「あはは。梨沙ちゃんがお父さんのためにマフラーを編んでいると聞いて、これは応援しなければ! と張り切っちゃって」

梨沙「その気持ちはうれしいけど」


裕子「それで、どうですか? うまくいってますか?」

梨沙「まあ、編むのは結構うまくなったと思うわ。ハートさんに教えてもらったし」

梨沙「でも、なんか微妙なのよね」

裕子「微妙?」

梨沙「このままだと、地味っていうか。普通のマフラーになっちゃいそうで」

裕子「派手な色使います? サイキックレインボー?」

梨沙「それはさすがにパパに『巻いて』って言えないわよ……色合いだけの問題じゃなくて、もっとこう、個性が足りない感じね」

裕子「個性、ですか」

梨沙「せっかく手作りなんだし、オリジナリティが欲しいの」

裕子「ムムム、オリジナリティですか……あ、そうだ!」

梨沙「何か思いついたの?」

裕子「巻くとハトが出てくるようにしましょう!」

梨沙「マジシャンか!」

裕子「ダメですか? サイキックマジック」

裕子「じゃあこうしましょう。巻くと宙に浮きます」

梨沙「念力か!」

裕子「サイキックテレキネシスもダメですか……」

裕子「じゃあこうしましょう。巻くとおいしい匂いがほのかに漂うマフラー」

梨沙「香りつきってこと? まあ、それなら悪くはないかも……ちなみに、おいしいってどんな?」

裕子「焼肉!」

梨沙「それ敬遠される匂いでしょうが!!」

裕子「いやあ、この前早苗さんに焼肉をおごってもらったばかりで……つい」テヘ


裕子「ムムム……難しいですね」

梨沙「結局、ちゃんとした案は出ないままかぁ」

梨沙「ちゃんと、パパに喜んでもらえるものに仕上がるかしら」ハァ

裕子「梨沙ちゃん……」

裕子「そこは、心配いらないと思いますよ」

梨沙「なんで?」

裕子「梨沙ちゃんが、お父さんのことを大好きで、いつもお父さんのことを考えているからです」

裕子「念じれば、想いは伝わります。そして奇跡を起こします」

梨沙「奇跡って、大げさじゃない?」

裕子「そんなことありません」

梨沙「はっきり言うわね」

裕子「当然ですよ。だって、それがエスパーユッコのサイキック道ですから!」

梨沙「………そう」

梨沙「でも、アタシは奇跡なんて起こさないわ。だって、パパを喜ばせるのは絶対決まってることだから!」

梨沙「100パーセント起きることを、奇跡とは言わないでしょ?」

裕子「おお、さすが梨沙ちゃん。私も気合を入れて応援をします! ムムムーン!!」

梨沙「だから、応援はありがたいけどそれは気が散るんだってば!」

裕子「じゃあケーキでも買ってきます!」

梨沙「モンブラン!」

裕子「反応はやっ! サイキックリアクションだ……」

梨沙「よーし、たっぷり念じながら編むわよー♪」

裕子(ケーキと聞いた途端うきうきに……こういう子どもらしいところ、やっぱりかわいいなあ)



翌週


梨沙「………」

ちくちく。

梨沙「………」

あみあみ。

晴「おー、だいぶマフラーらしき物体になってる」

梨沙「ふふん♪ どうよ、うまくなったでしょ!」

晴「梨沙、手先器用だよなあ。オレには無理そうだ」

梨沙「やってみたら案外楽しいわよ?」

晴「んー。時間があったらな」

梨沙「アンタそれ、結局一度もやらないやつ」

晴「へへ、バレたか」

晴「足なら器用なんだけどな。ほら、指ひとつひとつ自由自在だぜ」クネクネ

梨沙「それくらいならアタシだってできるわよ。ほら」クネクネ

晴「お、やるな。じゃあこれはどうだ!」

梨沙「それも……ふんっ! ぬっ!」

晴「はは、オレの勝ちー」

梨沙「ま、待ちなさい! まだ終わってないんだから!」

梨沙「ふん、ふんっ……!」


飛鳥「差し入れでもと思って、お菓子を買ってきたんだが……遊んでいるようだし、不要だったかな」

晴「お、飛鳥」

梨沙「お菓子? コンビニ?」

飛鳥「あぁ。でも、作業をしていないようだし……」

梨沙「つ、ついさっきまでしてたから! 今は晴に付き合ってあげてただけ!」

晴「オレのせいにするなよ」

飛鳥「ふふ、冗談だ。梨沙も晴も、食べるといい」

梨沙「ありがと」

晴「サンキュー。ちょうど腹減ってたんだ」

飛鳥「多めに買ってきたから、好きなものを選んでいいよ」

晴「食べたことないのも結構あるな……どれにするか」

梨沙「コンビニのお菓子に関しては、飛鳥のチョイスは信用できるから。どれ選んでもおいしいわよ」

晴「コンビニ限定なのか」

梨沙「だってコンビニストだし」

飛鳥「まあ、足繫く通っていることを否定はしないさ」

晴「ふーん。まあいいか、いただきまーす」

梨沙「アタシも、いただきまーす」

裕子「いただきます!」

晴「うお、なんか増えた!」

裕子「なんだかおいしそうな気配がしたので来ちゃいました!」

ネネ「連れてこられちゃいました」

飛鳥「ネネさんもか。いつかのメンバーが揃ったね。これもまた、不思議な巡りあわせという――」

ネネ「ところで飛鳥ちゃん。コンビニに頻繁に行くのはいいですけど、ご飯はちゃんとバランスよく食べてます?」

飛鳥「え……まあ、それなりには。たまにお昼を忘れたりするけど」

ネネ「ちゃんと三食、栄養を考えて食べないとダメですよ? アイドル活動って、体力使うんですから」

飛鳥「……気をつける」

梨沙「飛鳥が素直になってる……」

晴「ネネさんには弱いよな、飛鳥」

裕子「私のほうがお姉さんなんですけどねえ。サイキック姉パワーが足りないのかな?」

その後


梨沙「………」

ちくちく。


飛鳥「………」

晴「………」


梨沙「………」

あみあみ。


ネネ「………」

裕子「………」


梨沙「………」

梨沙(気が散る……! なんで全員でちょっと離れたところからこっち見守ってるのよ!)

心「おはよー☆ お、やってるねえ我が弟子よ♪」

梨沙「おはよう。どう、結構進んだでしょ」

心「どれどれ……うん、いい感じじゃん♪ これなら当初の予定通りいきそうだね」

梨沙「ま、アタシだし?」

心「しかも師匠がはぁとだし?」

梨沙・心「余裕!」


心「……ところで、あそこでこっちをちらちらうかがってる4人はなに?」

梨沙「さっき一緒にお菓子食べたんだけど、その後アタシがマフラー編み始めたらずーっと見守ってるのよ」

心「へえ、いい子たちだね♪」

梨沙「視線が気になるのも事実だけどね」

心「あの子たちって、梨沙ちゃんと一緒にオーストラリアでお仕事したメンバーでしょ? やっぱりひとつ屋根の下で生活すると友情が芽生えるもんだねえ♪」

梨沙「まあ、結構長い間一緒にいたしね。あの仕事の前と後じゃ、接し方も全然違ってるし」

心「そういうつながりって、大事にしたほうがいいぞ♪

心「忘れられない思い出を共有した仲間たちなんだから☆ オーストラリアでの感動も友情も、忘れちゃうのはきっともったいないだろうし」

梨沙「………」

梨沙「ハートさんがまともなこと言ってる……」

心「オイ☆ 普段はろくなこと言ってないみたいな言い方やめろ☆」

梨沙「あははっ!」

梨沙「でも、そうね。変な子も多いけど、一緒にいて楽しいし。大事にする」

心「そうそう♪ 十年後とかにみんながアイドル辞めてても、同窓会開くとかしろよ?」

梨沙「そんな先のことまで考えてられないわよ」

心「ふっふっふ♪ 笑っちゃうほどスウィーティーだな☆」

心「……十年なんて、あっという間だぞ?」

梨沙「えらく実感のこもった言葉に聞こえる……」

後日


梨沙「できたーーー!!!」

P「お、ついに完成か。マフラー」

梨沙「うん! ついにやったわ!」

P「お疲れ様。頑張ったな」

梨沙「ちょっと苦戦したけど、アタシにかかればこんなものね♪」

P「そうだな。梨沙はたいていのことはそつなくこなすもんな」

梨沙「ふふん♪」

梨沙「じゃあこれ、はい」

P「ん?」

梨沙「ん? じゃなくて。マフラー、あげる」

P「え、だってこれ、パパ用に編んでいたんじゃ」

梨沙「それはこっち」

P「二つある……もしかして、並行して両方編んでたのか」

梨沙「そ。先にアンタ用のマフラーで練習して、その後パパ用のマフラーで同じところを編んでの繰り返し」

梨沙「でも、そっちもちゃんとできてると思うわよ」

P「梨沙……ありがとう。俺のために」

梨沙「か、勘違いしないでよ! あくまで本命はパパのマフラーなんだから!」

梨沙「……まあ、アンタはいつもいろんな仕事持ってきてくれるし。寒くて風邪ひかれたら困るってだけ!」

梨沙「アタシのプロデューサーは、アンタしかいないんだから!」

P「……ああ、わかった。このマフラーがあれば、風邪なんてひかないさ」

梨沙「ありがたーく使いなさいよね!」ニカッ

P「もちろんだ」

P「あ、そういえば。これを巻いたら梨沙のパパさんとペアルックになるのか」

梨沙「へ?」

P「だって、二つのマフラーデザイン同じだし。パパさんも絶対これ使うだろうし」

梨沙「………」

梨沙「やっぱりそのマフラーアタシが使う!」

P「そう言われても、これはもう俺の所有物だからなあ」

梨沙「ずるい! 高いところに掲げるな~!」ピョンピョン

P「ははは」




晴「なにやってるんだ、あのふたり?」

飛鳥「ああして見ていると、やはり梨沙はいい意味でコドモだね」

ネネ「たぶんだけど、明日が自分の誕生日だって忘れてそうですよね」

裕子「ひと月前には誕生日の話をしていたのに、最近はめっきり聞かなくなりましたからね」

晴「マフラーに集中しすぎて、頭から抜け落ちてるんだろ」

飛鳥「それはつまるところ……サプライズを用意するには、おあつらえ向きということか」

裕子「みんなで素敵なお誕生会を用意してあげましょう! サイキックー、エイエイオー!!」

ネネ「おーっ!」

晴「おーっ」

飛鳥「……おー」





――はい、パパ! これ、アタシからのプレゼント! マフラーがあれば、寒い冬も平気でしょ?

……えへへ、うまく編めてるでしょ? 頑張ったんだから!

……え? 手作りなのか? もちろんそうよ。


ひとりで………ううん、みんなで作った、自信作なんだから!



おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます。
梨沙誕生日おめでとう。この一年でデレステに参戦したりイベント上位報酬になったり漫画化が決まったり、いろいろありましたが今後も担当Pとして頑張りたいです

オーストラリアアイプロ組が好き。またやりたいので復刻待ってます


シリーズ前作:的場梨沙「寒い……」 佐藤心「そんな日は鍋☆」

つまらない

オーストラリア組かわいい
そしてPaP×パパホモ疑惑

乙乙

ヴァリサ可愛い

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