小松伊吹「誕生日、初めてのお酒」 (14)
P「ごめんな。本当は、もっと雰囲気のいい店の予約でもとれればよかったんだけど」
伊吹「そんなことないって。いいじゃん、居酒屋の個室だって」
伊吹「アタシ、お座敷結構好きだし」
P「そうか?」
伊吹「うん。たまに足伸ばせるし! この解放感、好きだよ」
伊吹「それに。Pのお財布に無理させてまで、祝ってほしくないし」
伊吹「アタシ以外にも担当アイドルいるわけだしね」
P「……悪いな」
伊吹「もう、だからそーいう顔禁止! 誕生日であるアタシからの命令!」
P「ああ、わかった。ここ居酒屋だけど、料理も結構イケるんだ。好きなの頼んでいいからな」
伊吹「それでよし♪」
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P「しかし、今日で伊吹も成人か」
伊吹「正直、まだ実感湧かないんだけどね。ほら、アタシオトナっぽいことあんまりしてないし」
伊吹「ダンス頑張って、スケボーで遊んで、最近はアイドルに全力。基本的に、当たって砕けて起き上がってるだけだから」
P「俺だって、二十歳のころはそんなものだったよ。これから少しずつ大人になっていくんだ」
伊吹「そんなもの?」
P「ああ」
伊吹「そっか……あ、注文決まったよ」
P「何がいい?」
伊吹「とりあえず生!」ドヤ
伊吹「ふふっ、お酒飲めるようになったら一回言ってみたかったんだ!」
P「はは、まずはひとつ、大人らしいことができたな」
伊吹「だねっ」
P「じゃあ伊吹はビールだけで、俺はビールのほかに焼き鳥とかポテトとか適当にいただこうかな」
伊吹「待て待て待てぃ! アタシも食べるってば!」
P「はははっ、冗談だよ」
伊吹「もうっ……今日はアタシが王様だぞ?」
P「そうでした。なんなりとお申し付けください、王様」
伊吹「……やっぱり訂正。王様じゃなくてお姫様」
P「………」
P「なんなりとお申し付けください、姫様」
伊吹「へへっ」
店員「おまたせいたしましたー」
伊吹「さて、それじゃ料理も出てきたところで」
P「改めて。誕生日おめでとう、伊吹。乾杯」
伊吹「かんぱーい!」
伊吹「では、いよいよ……」ゴクッ
伊吹「これがビール……アルコールの味かあ。なんだか不思議な感じ」
P「今さらだけど、初めての酒がビールでよかったのか? 伊吹なら、ジョッキじゃなくてグラスに入った、もっとロマンチックなものを選ぶかと思っていたんだけど」
伊吹「うーん。それも考えたんだけどさ」
伊吹「ほら。Pって、前からビールが好きって言ってたでしょ?」
P「まあ、一番身近にあるアルコールだからな。とりあえずこれって感じはある」
伊吹「だったら、アタシが最初に飲むのはそれにしようって」
伊吹「……これより深くは掘り下げちゃダメだからね」
P「了解。料理も食べていいからな」
伊吹「うん」
伊吹「思えば、遠くまできたもんだなって」
P「急にどうしたんだ」
伊吹「二十歳って、人生の節目みたいなところあるからさ。ちょっと今までの自分を振り返ってたんだ」
P「なるほど」
伊吹「正直、褒められた人間じゃないっていうか。ダンスばっかりやってたし、学校の文化祭もサボって踊ってるくらいだったし」
伊吹「だからホントに、アタシにはダンスしかないって思ってた。ダンスは自信あるけど、ホントにそれだけだって」
伊吹「Pのスカウトを受けたのも、もっと大きな舞台で踊りたいって思ったからだし」
P「そうだったな」
伊吹「でも……アイドル始めて、いろいろ経験していくうちに、そうじゃないのかもって思うようになった」
伊吹「レッスンは大変だけど、歌うのは楽しいし。ドラマとかで演技するのも、ワクワクするし」
伊吹「あとはまあ……なんていうか。アタシって、意外とイイ身体してたんだなあと気づいたっていうか、うん」
P「かなりグラマラスだからな」
伊吹「あんまり直球に言うとセクハラで訴えるぞ?」
P「ははっ」
伊吹「とにかく! アイドルになって、いろんなアタシを見つけられた。そのたびに、自分が魅力的になれた気がして……これから、もっともっとたくさんの人を、ダンスで虜にできるかなって」
P「やっぱり、そこはダンスなんだな」
伊吹「うん。他のお仕事もすっごく楽しいけど、これがアタシのイチバンだから」
伊吹「……ねえ。今さらだけど、Pは最初から気づいてたの? アタシのこういう、可能性みたいなヤツ」
P「はっきり知っていた……とは言えないけど。可能性を感じなきゃ、スカウトはしてない」
伊吹「そっか……なんだか、うれしいな」ゴクゴク
P「………」
P「ところで、飲むペース結構早くないか?」
伊吹「え、そうかな? あ、次は他のお酒も頼んでみよーっと」ニコニコ
三十分後
P「………」
伊吹「………」トロン
P「顔、赤いな」
伊吹「えへへ~、そう?」トローン
P「酔ってるな」
伊吹「そうかなあ? だとしたら、これが人生初のアルコール酔いだなあ♪」
P「そろそろ酒はやめておいたほうがいいな」
伊吹「ええー? まだまだ飲めるよぉ? せっかくキモチヨクなってきたところなのにぃ」
P「いきなり飲みすぎて、帰りに倒れても大変だろう? 初めてなんだから、この辺で終わりにしておいたほうがいい」
伊吹「………」ジーー
P「な、なんだ」
伊吹「心配してくれてるんだ……ありがと♪」
P「……当たり前だろう」プイ
伊吹「あ、ひょっとして照れてる~? あははっ!」
P「照れてない」
伊吹「でも今目逸らしたじゃん♪」
P(やたら色気のある視線をぶつけてくるからだろう……!)
伊吹「P~~♪」
P「お、おい。伊吹、顔が近い」
伊吹「いいでしょべつに。だぁれもみてないよ?」
P「そういう問題じゃ」
Prrrrr
P「あ、ちひろさんから電話だ。ちょっと席外すぞ!」シュバッ
伊吹「え?」
P(助かった……ナイスタイミング、ちひろさん)
P「ええ、ええ……わかりました」
P「はい、おやすみなさい」
ピッ
P「ふう」
P(電話の中身もおおごとではなかったし、あの場からいったん離脱できたし、とりあえずよかった)
ガラッ
P「ただいま」
伊吹「じーーーー」
P「………」
伊吹「じーーーーーーー」プクー
P「ご、ごめんな。急に席外しちゃって。ちひろさんからの電話だったし、急ぎの内容だと大変だから」
伊吹「………そのくらいはわかるよ」プクー
伊吹「でも、今日はずっと見ていてほしいんだ。アタシのこと」
P「……伊吹」
伊吹「普段は、他の子たちのこともちゃんと見なくちゃいけないでしょ。だから」
伊吹「……今夜だけは、よそ見しないで。ずっと、アタシだけ見て」
P「………」
P「ああ、わかった」
伊吹「……ふふ、ありがと」
伊吹「じゃあ早速」ギュッ
P「………」
P「あの。なぜ俺は、いきなり顔を両手で固定されたんだ」
伊吹「ずーっと見ていてくれるんでしょ?」ニコニコ
P「片時も目を離さないレベルなのか……こんなにらめっこみたいな」
伊吹「いいじゃない、たまには~。お姫様の言うことが聞けないのかー!」
P「……仕方がないな。姫様の言うことなら」
伊吹「へへー♪」
P「………」ジーー
伊吹「………」ジーー
P「………」ジーー
伊吹「………」ジーー
伊吹「………」プイ
P「って、君のほうから視線を外してどうするんだ」
伊吹「だ、だって恥ずかしいんだもん!」カアァ
P「ええ……」
伊吹「Pの視線が熱っぽいのがいけないんだよ! アタシを狙う王子様みたいな顔して!」
P「どんな表現なんだそれは」
伊吹「あ、アタシの身体が魅力的だからって、この前はブルマ履かせるし! しょっけんらんよーよ、しょっけんらんよー!」
P「それは今関係ないだろう!?」
伊吹「ほんと恥ずかしかったんだからぁ……でも、Pが喜んでくれるならと思って……えぐっ、えぐっ」
P「今度は泣き出した!? こいつ、酒が入るとむちゃくちゃだ……!」
数時間後
伊吹「すぅ、すぅ……」
P(結局、途中で寝落ちした伊吹を背負っていくことになってしまった)
P(大通りに出たらタクシーを呼べばいいから、たいした距離ではないけど)
P「……しかし、今日は普段と違う伊吹が見られたな」
P「次から酒を飲ませるときは、量に気をつけないと」
伊吹「………ん……P」
P「ん?」
伊吹「ずっと……アタシのこと……見てて……一緒に……」
伊吹「………すぅ」
P(寝言かな)
P「………」
P「ずっと、は約束できないな」
伊吹「………そこは、ちゃんと約束してよ」
P「あれ、起きてたのか」
伊吹「うん……半分寝てるけど」
P「そうか」
P「……ずっと、は約束できないけど。できる限りは、伊吹と一緒にいたいと思う」
伊吹「……結局、約束してくれないんだ」
P「ごめん」
伊吹「いいよ……Pのそういう真面目なところが……だい、す……」
P「伊吹?」
伊吹「………」スヤスヤ
P「今度こそ寝たか」
P「ちゃんと家まで送り届けないとな」
翌日 事務所
ちひろ「もしもし……あら、伊吹ちゃん?」
ちひろ「え、心の不調で休む? 今プロデューサーさんと会ったら死ぬ? ちょっと何を言ってるかわからないんだけど……」
P「酔ってる間のこと、覚えてたみたいだな……」
P(これからも、彼女となんだかんだで刺激的な日々を送っていくのだと思う)
P(また一年間、楽しみだ)
P「まずは、家に行ってあいつを引っ張り出してくるところからだな……」
おしまい
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
伊吹誕生日おめでとう。アグレッシブなところと乙女なところのバランスが絶妙で大好きです
過去作
的場梨沙「寒い……」 佐藤心「そんな日は鍋☆」
モバP「なっちゃんと秋の風物詩」
などもよろしくお願いします
おっつおっつ
パクリじゃん
くそだわ
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