智絵里「クローバーが喋ってくれない……」 (17)
智絵里「ね、ねぇ……芳乃ちゃん?」
芳乃「おや、智絵里殿ー。どうしましてー?」
智絵里「あのね……ちょっと相談があるんだけど――」
芳乃「ほー、相談でしてー?」
智絵里「うん……ダメ?」
芳乃「もちろん、かまいませぬー」
芳乃「わたくしの生業は元より悩みを聞き、導くことゆえー」
芳乃「いかなる悩み事でも受け止めましょー」
智絵里「いや、悩み事とはちょっと違って……」
芳乃「ほー?」
智絵里「あの……この前のクローバーを探す合宿の時に……」
芳乃「うむー」
智絵里「クローバーの声に耳を傾ければ、クローバー探しが上手くなるって……」
芳乃「ふむー……確かに言いましてー」
芳乃「すべての生命には魂がありー、意思があるゆえー」
芳乃「その声の導きに従えばー、おのずと見つかるでしょー」
智絵里「う、うん……」
智絵里「……でもね、芳乃ちゃん」
芳乃「なんでしてー?」
智絵里「……クローバーが喋ってくれないんです」
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芳乃「話してくれない、でしてー?」
智絵里「うん……」
智絵里「えっとね……このクローバー……クーちゃんって言うんだけど」
芳乃「ほー、名前をつけたのですねー」
智絵里「う、うん……」
智絵里「声を聞くにはまず友達にならなくちゃかな……って。裕子ちゃんも――」
裕子『私もまずはスプーンと友達になるところからはじめました!』
智絵里「――って言ってたし……」
芳乃「……なるほどー」
智絵里「……も、もしかしてダメだった……?」
芳乃「いえ、そんなことはありませぬー」
芳乃「人から好意を受ければ人に好意を向けるように、そなたがクローバーに――」
智絵里「――クーちゃんですっ」
芳乃「……クーちゃんに好意を向ければ、クーちゃんからも好意を向けるゆえー」
芳乃「人と草の仲から一歩進むには最善でしょー」
智絵里「あ、そうなんだ……よかった……」
智絵里「それでね……私、クーちゃんに毎日話しかけてたの」
芳乃「ふむー」
智絵里「おはようからおやすみまで……たくさん……」
智絵里「……でも」
智絵里「……でも、クーちゃんが私に話しかけてくれないんです……」
芳乃「ふむふむー」
芳乃「……なるほどー」
芳乃「そなたの悩みはしかとわかりましてー」
智絵里「どうしたらクーちゃんは喋ってくれるのかな……」
芳乃「……一度そのクローバー――」
智絵里「――クーちゃん」
芳乃「……クーちゃんを見せてもらってもー?」
智絵里「あ、うん」
智絵里「……傷つけないでね」
芳乃「もちろんでしてー」
芳乃「……」ジー
智絵里「……」ゴクッ
芳乃「……ふむー」
智絵里「な、何かわかった……?」
芳乃「わたくしがみたところー、クロ……クーちゃんにはー」
芳乃「魂が宿ってないのでしてー」
智絵里「えっ……!」
芳乃「いえ、そんなに驚かれてもー」
芳乃「さすがに押し花にしてしまえば魂は消えてしまいますー」
芳乃「生命ではなく、モノとなりましたゆえー」
智絵里「そ、そんな……!」
芳乃「そこまで気を落とさずともよろしくてー」
芳乃「そなたがクーちゃんに愛を与え続ければ、いずれ付喪神となりて新たな生を宿すでしょー」
芳乃「さすれば、神となりしクーちゃんと友人関係になることができるはずでしてー」
智絵里「あ、そうなんだ……よかった……」
智絵里「……ふふっ、これからもよろしくね、クーちゃん……!」
芳乃「一件落着でしてー」
智絵里「……あっ、な、なんでやねん!」ポフッ
芳乃「わふっ」
智絵里「ま、まだ私の悩み解決してません……!」
智絵里「クーちゃんは喋ってくれなくても……でも、他のクローバーとなら……」
芳乃「喋ることはできるでしょー」
智絵里「本当……!?」
芳乃「それらはすべて、生えているクローバー――生きているクローバーのみではありますがー」
智絵里「ううん、ぜんぜんいいですっ!」
智絵里「ど、どうやったら喋れるようになれるの、芳乃ちゃん……!」
芳乃「ふむー……」
芳乃「……口で説明するのは難しいゆえー、実際に行きましょうー」
智絵里「実際に……?」
芳乃「智絵里殿ー。近くにクローバーの群生地はありましてー?」
智絵里「……うん、そんなに遠くないところに」
智絵里「たくさん生えてて……あまり人もいなくて……だから、すごいリラックスできて……」
智絵里「私もよくいってるんです」
芳乃「ほー」
芳乃「そのような場所を教えてもらってもよいのでしてー?」
智絵里「うん、大丈夫」
智絵里「芳乃ちゃんはお友達だから……ふふっ」
芳乃「……えへー」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
智絵里「ここだよ、芳乃ちゃん」
芳乃「ふむー、なるほどー」
芳乃「確かに人の目につかぬ場所でしてー」
智絵里「うん……」
智絵里「ここでね……こう……ゴロンってなるとね」ゴロン
智絵里「クローバーに囲まれて……気持ちいいんですっ」
芳乃「ふむー」ゴロン
芳乃「……ほー」
芳乃「これはー、なかなかー」
智絵里「ふふっ」
芳乃「ふふー」
智絵里「……」
芳乃「……」
智絵里「……気持ちいい」
芳乃「でしてー……」
智絵里「……」
芳乃「……」
智絵里「……」
芳乃「……」
智絵里「すー……」
芳乃「すー……」
智絵里「……はっ!」
智絵里「芳乃ちゃんに教えてもらうんだった……!」
智絵里「私寝ちゃってた……芳乃ちゃんは……?」
芳乃「……すー」
智絵里「あ……芳乃ちゃんも寝てる……」
智絵里「どうしよう……でも……」
智絵里「……」
智絵里「……芳乃ちゃん……おきて、起きて……!」
芳乃「……うむー?」ゴシゴシ
智絵里「あ……おはよう、芳乃ちゃん」
芳乃「おはようございますー……」
芳乃「……あー」
芳乃「すみませぬ智絵里殿ー、寝てしまいましてー……」
智絵里「ううん……私もさっきまでぐっすり寝てたから……」
芳乃「……」
智絵里「……」
芳乃「……こほん」
芳乃「それでは、仕切りなおしまして、そなたに草木の声を聞く術を教えましょー」
智絵里「あ、うん。お願いしますっ!」
芳乃「しかし、それほど難しいことはありませぬー」
智絵里「そうなの……?」
智絵里「てっきり、なにか特別な修行でもするのかと……」
芳乃「いえいえ、そんなことはありませぬー」
智絵里「でも……裕子ちゃんが――」
裕子『草木の心を読みたい……なるほど、智絵里ちゃんはサイコメトリーになりたいですね!』
裕子『それならサイキックな修行をしなければ! さあ、サイキック合宿しましょう!』
智絵里「――って」
芳乃「裕子殿とわたくしでは方法が違うのでしてー」
芳乃「裕子殿の方に修行が必要でもー、わたくしの方には必要ありませぬー」
智絵里「あ、そうなんだ……」
芳乃「それでは智絵里殿ー、草木の声を聞く術なのですがー」
智絵里「うん……」ゴクッ
芳乃「心を草木に傾けるのですー」
智絵里「……心を傾ける?」
芳乃「でしてー」
智絵里「えっと……?」
芳乃「今、わたくしたちの心はわたくしたちにありましてー」
智絵里「う、うん……」
芳乃「その心を、クローバーへと傾けるのですー」
智絵里「……?」
芳乃「別な言い方をすれば、寄り添わせるのですがー」
芳乃「……ふむー。実際に試してみた方が早そうでしてー」
芳乃「智絵里殿ー、目をつぶるのでしてー」
智絵里「あ、うん……」
芳乃「そうしたらー、自分を俯瞰的に見ている自分を想像しましてー」
智絵里「……」
智絵里「……できました」
芳乃「それでは、その俯瞰的に見ている自分を、声を聞きたい生命の元へと向かいましてー」
智絵里「……」
智絵里「……」
智絵里「……できました」
芳乃「あとはそのまま耳を傾けるのでしてー」
芳乃「静かに、話しかけてくれるのを待つのでしてー」
智絵里「……」
智絵里「……」
智絵里「……」
智絵里「……!」
智絵里「きっ、聞こえました、芳乃ちゃん……!」
芳乃「ふふー、おめでとうございましてー」
智絵里「ありがとうございますっ!」
智絵里「わぁ……本当に聞こえた……!」
智絵里「やった……やったっ!」
芳乃「どのようなことを話されましてー?」
智絵里「『こんにちは、智絵里ちゃん』って……このあたりのクローバーさんから……!」
智絵里「えへへっ、こんにちは……♪」
芳乃「……ふふー」
芳乃「教えたかいがありましてー」
智絵里「うん……教えてくれてありがとうございました、芳乃先生……!」
芳乃「先生……でしてー?」
智絵里「うん、先生ですっ……!」
芳乃「……ふふー」
芳乃「ふふふー……先生……えへー」
智絵里「ふふっ」
智絵里「……あれ?」
芳乃「どうしましてー?」
智絵里「声が聞こえるのはいいんですけど……」
智絵里「……でも、四葉のクローバーの場所はわからないんじゃ……」
芳乃「いえ、そんなことはありませぬー」
芳乃「そなたから尋ねればよいのでしてー」
智絵里「……尋ねる?」
芳乃「でしてー」
芳乃「そなたから問いかけた後ー、問いかけたものの声を聞けばー、答えがもらえるかとー」
智絵里「そうなんだ……」
智絵里「えっと……じゃあ……この子」
智絵里「四葉のクローバーはどこにありますか?」
智絵里「……」
智絵里「……」
智絵里「……あ、そうなんだ。ありがとうございます」
芳乃「なんとー?」
智絵里「『ここから左に3歩くらい、前にに1歩くらいのところにたくさん咲いてます』だ
そうです」
芳乃「ほー」
智絵里「じゃあ、早速……1……2……3……で、前に1……」
智絵里「このへん……」
智絵里「……あ、本当……!」
智絵里「四葉のクローバーがたくさん……!」
智絵里「わぁ……!」
智絵里「本当にありがとう、芳乃ちゃん……!」
芳乃「いえいえー」
芳乃「確かに術を教えたのはわたくしですがー」
芳乃「すぐに声が聞けたのはそなたがクローバーを本当に好んでいたからでしょー」
智絵里「そうかな……?」
芳乃「でしてー」
芳乃「その他のものの声を聞くには時間がかかるかもしれませぬがー、そなたなら大丈夫でしょー」
芳乃「ふふー、優秀な生徒を持って先生は嬉しいのでしてー」
智絵里「ふふっ」
智絵里「ありがとうございますっ、芳乃先生……!」
芳乃「うむー、よきにはからえー、なんてー……ふふー」
智絵里「あとはクーちゃんと喋れれば……」
芳乃「その気持ちを胸にー、常に愛で続けませー」
智絵里「うん……いつか神様が宿るまで……だよね?」
芳乃「でしてー」
智絵里「じゃあ、それまで……大切にしなきゃ……」ギュッ
芳乃「……それではー、今度こそ一件落着したゆえー」ゴロン
智絵里「どうしたの、芳乃ちゃん?」
芳乃「少々寝たりないゆえー、もう一度寝ようかとー」
智絵里「あ……起こしちゃったもんね」
芳乃「智絵里殿も一緒に寝ましてー?」
智絵里「……そうしようかな」
智絵里「えいっ」ゴロン
智絵里「ふわぁ……」
芳乃「ふふー……気持ちいいのでしてー」
智絵里「えへへっ……そうですね……」
芳乃「それではー」
智絵里「うん、おやすみ……」
おしまい
元ネタはドリフユニットの「クローバーをさがして」より
このユニット最高に可愛いし、きっとちえりんにはすぐクローバーの声が聞こえる。
誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません。読んでくださった方ありがとうございました。
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