9月ー
つい先月まで気温が30度を超えていたのが嘘のようだ。力強い新緑も葉を赤く染めやかましい蝉の合唱も優雅で心地よいオーケストラに移り変わっていった。
そう、秋になったのだ。
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秋と言えば何を思い浮かべる?
食欲の秋?うん。私は食べるのが大好きだからそれも良いかもしれない。
運動の秋?気温も下がって動きやすくなったから体を動かすには持ってこいだね。
芸術の秋?色彩豊かなこの季節は絵を描くのにはオススメだしね。
読書の秋?そう。秋と言えば読書の秋。推理小説なんて読んじゃうと気がついたら夜中なんて事もあるよね?でも、安心して?秋の夜は長いから…。
ほのかわいそう
事件が起こったのは9月某日。この日、私は部活の仲間と夜に集まる約束をしていたのだ。たまたま、私の幼なじみが日舞の家元の娘で家に庭園があり風情があるからとの理由でそこでお月見をする事になったのだ。
「ごめんくださーい」
彼女の家がいくら古風だとは言えインターホンはあるのだが幼い頃から通いなれている私はインターホンを使う事はあまりなかった。
「はい、ただいま」
「あ、おばさん。こんにちは。海未ちゃん居る?」
「ええ、ちょっと待っててね。今、呼んでくるから」
私の幼なじみ、園田海未の家は母屋と道場に別れており道場は母家の裏にある。私が彼女の家を訪れると大抵は道場で何かしらの稽古をしているので彼女の母が出迎えて、彼女を呼びに行く事になる。
「穂乃果、随分と早かったですね?」
「まあね。はい、これ。皆の分」
「月見団子ですか?」
「うん。お月見するんだし欠かせないでしょ?」
なぜ、私が月見団子を持参したのかと言うと私の家は老舗の和菓子だからである。
「では、これは皆が揃った時に出しますから穂乃果は私の部屋に行っていて下さい」
「あれ?もしかして、私が一番乗り?」
「そうですけど?」
彼女の部屋に一人で通された私はやることもなくただ暇をもて余していた。海未はと言うと道場の片付けをしてから顔を出すと言ってそそくさと行ってしまった。付き合いの長い私はこうなる事が分かってはいたが誰かしら来ているだろうとたかをくくっていた。
ピンポーンピンポーンピンポーン
この、元気のあり余ったようなインターホンの鳴らし方。星空凛が来たようだ。インターホンの鳴らし方でこれ程までに誰か分かるのも彼女くらいのものだろう。
「穂乃果ちゃーん。やあ」
「穂乃果ちゃん。こんにちは」
はよ
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