輿水幸子「うまくいかないもの、ですね」 (26)
「ご結婚おめでとうございます」
「ありがとう」
ボクは輿水幸子。アイドルです。
このちょっと冴えない男の人は、ボクの担当プロデューサー。
そして、彼は明日、結婚します。
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「新婦さん、やっぱりキレイですね」
「そうか?」
「まさかアナタみたいな人が、あんな美女とお付き合いして結婚までできるなんて」
「ひどい言われようだな」
「全部ボクのおかげですから、感謝してくださいね」
「なんでだよ」
彼はそう言って笑いますが、考えれば自明のことでしょう。
ボクがボクのカワイさで、アイドルとしてがんばったおかげで、あの人に出会えたんですよ。
そう、新婦さんもアイドルなんです。……元アイドル、になるのかもしれませんね。結婚した後も続ける人は、少ないですから。
「幸せになってください」
「ありがとう」
「当然のことですよ、ボクのプロデューサーともあろう人が、不幸せな結婚生活を送るなんて許されません」
「そういうものか」
「そうです」
幸せになってほしい。……そう心から思えたらよかったのに。
でも、それを言うわけにはいかないから……。こうして、ボクはいつも通りのボクのフリをしています。
……なんて、おかしいですね。
なら、どうしてこんなところにPさんを呼び出して、二人だけで話なんかしているんでしょう。
本当に臆病な、ボクは……カワイくないです。
「なあ、幸子」
「……なんです?」
「お前の気持ちを……言葉にしてもらっても、構わない」
……この人は、何でもお見通しです。そう、これまでと同じです。
ボクが隠し事をできたことなんて、一度もありませんでした。
でも。
「…………バカですね」
「そのくらいの覚悟はある」
「……全部っ、全部言いますよ?」
「……いいよ」
それなら。
今だけは、みっともなくてもいい、カワイくなくてもいい、本音を言おうと思います。
そうしたら、何かが変わるんでしょうか? そう信じずにはいられませんでした。そう信じたかった。
だから、ボクは言います。
「あの人は、綺麗で、とってもいい人です」
「けど。アナタに一番ふさわしい人じゃ、ありません」
「もっと、もっとふさわしい人がいます」
「それはボクです。輿水幸子です」
「……」
「ボクは、ずっとアナタの側で、アナタにプロデュースされてきて……ボクのほうが、ずっと前からアナタを好きだったのに!」
「どうして? どうしてなんです、どうしてボクじゃダメだったんです……。ボクが、14歳だからですか?」
「もっと早く生まれたかった……もっと、遅く出会いたかった……」
「ボクが、子供じゃなくて、アナタと並んでいられる大人になってから、アナタのアイドルになりたかった……」
「……」
「それとも、ボクが大してカワイくないから、選んでもらえなかったんでしょうか」
「あは、そうですよね。……ボクなんか、あんな綺麗な人に比べたら……」
「悔しい……。どうしてボクはあの人じゃないんですか……アナタに選んでもらえる、あの人じゃないなんて……」
「……」
「やめてください……」
「結婚なんかしないで……。ずっと、ボクの側にいて……。あと、少しだけ待っていて……ボクだって、あと少しで結婚できるんです……お願いします……。なんでもします……」
「……みっともない……ぐすっ、ほんと、こんなのだからアナタは愛想を尽かしたんですよね。ボクみたい、な、ボクみたいなのじゃ……」
「……」
「もう、遅いですよね」
「もっと早く言えばよかった」
「……あの人とアナタの距離が縮まっていくの、わかっていたのに。でも、怖くて……何もいえなかった」
「もしも……」
「もしも、もっと早く言っていたら……」
「ボクと……」
「……」
「なんて、無意味です」
「終わった話です」
「ボクは、まだアナタが好きだけど……」
「……諦めます」
「……明日からは、いつもの輿水幸子です」
「……」
「だから……」
「だから、今日だけは……」
「ボクの……こ……」
「……………………」
「ボクの、…………」
「プ、プロデューサー、で、いて」
「……ああ」
「……うっ、うぅ……」
「…………ぁあ……」
「…………やだ……」
「……でも…………」
「………………でも」
「……あり……と……」
「……うぁああああ……」
言葉になったのは、そこまででした。
ボクはずっと泣いて、泣いて。
あの人は、そんなボクの側にいてくれました。
……それでも、ボクは翌日、ちゃんとあの人の結婚式に行きましたよ。エラいでしょう?
健気なボクはカワイイですね。
不思議と、新婦さんと並んでいるあの人を見ても、心がそこまで痛みません。
……ボクは、気持ちを全部ぶつけました。
そして、あの人は何も言わず、聞いてくれた。受け止めてくれた……きっとそうだと思います。
あの人の中には、ボクの全部が在るはずです。
みっともなくて、カワイくない……ボクと。
ずっと、あの人と一緒に歩いてきた、カワイイボクが。
だから……。きっと、さびしいだけじゃありませんよね。
……ね、そうですよね……?
こうして、ボクの一生に一度の恋は終わりました。
重たいですか? でも、本気だったから。仕方ないですよね。
……本気だったんだもん……。
ボクの目から、また涙がこぼれます。
でも、ボクは笑顔が一番カワイイから。……そう、貴方が言ってくれた事を覚えているから。
涙を流しながら、けど、笑ってあなたを見送ります。
ご結婚、おめでとうございます。
……私の、プロデューサー。
おわり
だめだ
面白くない
乙
ちょっと衝動的すぎて書きたいものを焦りすぎてしまった感じがしますね
もう少し落ち着いて書けばよかったなと思います
拙いssをそれでも読んでくださった方、ありがとうございます
うん
読んだ後に何も感じるものがない
乙
嫌いじゃない、こういうSS
おつおつ
面白かったです。いつもは気丈な子の涙は胸に来るなぁ...
あのさ…こういうのって前日譚が大事なんでしょうがそれを書いてホラ
イケメン金髪王子須賀京太郎様のハーレム見て絶望する幸子ハヨ
乙
個人的にはすごくいいのだが
続きがあるともっといいのだが
おつ
おつつ
この幸子はあいくるしいを歌える幸子
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