歌鈴「私だけのハレの日」 (42)

モバP(以下、P)「歌鈴、急で悪いが今週末の午前レッスンのみの日、午後は空いてるか?」

歌鈴「ええと……はい、大丈夫です! お仕事ですか?」

P「仕事じゃないが、ちょっと手伝ってほしいことがあってな」

歌鈴「な、何でしょうか?」

P「そう身構えなくてもいい。簡単な情報収集だ」

歌鈴「情報収集?」

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P「街まで足を運んで、いまどんなものが流行っているか調べる。言うなればトレンドチェックだな」

歌鈴「なるほど……で、でも私なんかでいいんですか? もっと流行に敏感でおしゃれな子に手伝ってもらった方が……」

P「何回か調査に行ったことあるが、男ひとりで入ると目立つ店も多いから店員にマークされたりしたんだよ。だから歌鈴は俺と一緒にいてくれればいい」

歌鈴「それなら大丈夫そうですね……わかりました、私でよかったらお手伝いします!」

P「そう言ってもらえて助かる。当日はレッスンスタジオまで迎えに行くから、よろしくな」

歌鈴「行っちゃった……最近プロデューサーさんとゆっくりお話できてなかったから嬉しいな、えへへ……」

歌鈴「そうだ、スケジュール帳に書いておかなくちゃ。『プロデューサーさんのお手伝い』と」

歌鈴「詳細のところは『2人で色んなお店を見てまわる』って書いておけばいいかな?」

歌鈴「ふふ、こう書くとなんだかデートの予定みたい……えぇ!」

歌鈴「こここ、これって、つまりほとんどデデ、デート!? 」

歌鈴「お、落ち着いて歌鈴! あくまで情報収集、まじめなお仕事だから! プロデューサーさんもそんなつもりで誘ったわけじゃないの!」

歌鈴「でも……他の人から見たら、デートみたいに見えるのかな……?」

歌鈴「な、なんか緊張してきちゃった……あうぅ、なに着ていこう……」

………
……


歌鈴「プロデューサーさん、お待たせしまし……ってうわわ!」

P「っと、危なかった。走ると転ぶぞって言おうとしたらコレだから期待を裏切らないな」

歌鈴「あ、ありがとうございまふ……」

P「あれ、今日は眼鏡だし服装もいつもと違う感じが?」

歌鈴「あ、はい。眼鏡は春菜ちゃんが選んでくれた変装用で、お洋服は藍子ちゃんとお買いものに行った時に買ったものです」

P「人の多い場所に行くからいい判断だ、それに似合ってる」

歌鈴「へっ、そ、そうでしゅか! 嬉しいですっ!」

P「思ったこと言ったまでだよ。とりあえず、向かいつつお昼にしよう」

………
……


店員「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

P「2人です。禁煙席でお願いします」

店員「ではお席までご案内いたします……こちらのお席どうぞ。ご注文お決まりになりましたらまたお呼び下さい」

歌鈴「お、お洒落なお店ですね……」

P「イタリアンはあまり来ないか?」

歌鈴「そもそも実家では外食自体が稀でしたよ」

P「あー確かにちゃんとしてそうだ」

歌鈴「だからこういったお店、ちょっとした憧れだったんで、来られてちょっと嬉しいです」

P「俺なんかが相手で申し訳ないな」

歌鈴「そんなことないですよ! 私はその……プ、プロデューサーさんと一緒に来られて良かったなってっ! そう思います!」

P「そうか? さ、話すのもいいがまずは注文しよう、何にする?」

歌鈴「うーん……種類が多くて迷っちゃいますね」

P「迷うならこの本日のパスタセットでいいんじゃないか?」

歌鈴「あ、いいですね。これにします」

P「俺も同じものでいいか。すいませーん、注文お願いします」

店員「お待たせしました、ご注文お伺いします」

P「この本日のパスタセットを2つ下さい」

店員「セットのお飲み物はどうされますか?」

P「俺はブレンドで……歌鈴はどうする?」

歌鈴「えっと、アールグレイお願いします」

店員「かしこまりました。少々お待ちください」

P「歌鈴ってコーヒー苦手?」

歌鈴「そんなことないですけど、お茶の方が好きですね」

P「たしかに事務所じゃ緑茶飲んでることが多いな。歌鈴が淹れてくれるのは美味しいよ」

歌鈴「ほんとですか!」

P「俺が猫舌って知っててちょっと冷まして持ってきてくれるのも、気が利いてて嬉しい」

歌鈴「あー、それは……その」

P「あれ、違った?」

歌鈴「ドジしてかけちゃったときに火傷させないようにって……」

P「そんな理由だったのか」

歌鈴「ほら、前に運んでたケーキを転んだ拍子にぶつけちゃったりしたので! 同じようなドジしちゃうかもって思うと……」

P「理由はどうあれ歌鈴の優しさは伝わったよ。ありがとな」

歌鈴「お、おおお礼を言われることなんでしてないでしゅ!」

P「じゃあ言い方変えよう。猫舌だからあれくらいの温度なら直ぐ飲めて個人的にも嬉しいよ」

歌鈴「そ、そうですか……? 喜んでもらえてたなら、私も嬉しいです、えへへ……」

店員「お待たせしました、本日のパスタのセットです」

P「ありがとうございます」

店員「本日のパスタはサーモンとほうれん草のクリームソースです。あとこちらがブレンドと、アールグレイです。ごゆっくりどうぞ」


P「よし、いただきます」

歌鈴「いただきます……んー、美味しいです♪」

P「うん、パスタは久しぶりだが美味いな」

歌鈴「プロデューサーさんって、いつもご飯どうしてるんですか?」

P「予定にもよるが大抵はコンビニで適当に」

歌鈴「栄養バランスとか考えてます?」

P「そういうこと考えたらコンビニなんて利用してないわな」

歌鈴「もう、心配しちゃいますよ。人を良くすると書いて食ですからね」

P「お、良い事言うなぁ」

歌鈴「お父さんの講話の受け売りです。小さいころから聞いてたので、印象に残っているのもいくつかあって」

P「歌鈴のお父さんか……ちなみにお父さんは甘い物とか好き?」

歌鈴「へ? はぁ、そうですね、おまんじゅうとか羊羹が好きでよく食べてますけど……どうしてですか?」

P「そろそろ契約更新だから、近いうちに報告かねて訪問するんだ」

歌鈴「えぇ! そ、そんなの知りませんでしたよ!?」

P「まぁ言ってないし」

歌鈴「わ、私は一緒に付いて行かなくてもいいんですか?」

P「親御さんからの要望がない限りは、俺だけで行く。その方が却って話せることもあるからな」

歌鈴「事務所のみんな、全国いろんな地域から集まってるのに、プロデューサーさん大変ですね……」

P「それぞれ自分の担当してるアイドルだけだから何とかな。それに、大事な娘さんを預かる立場だから、これくらいはしなきゃ」

歌鈴「未成年の子はみんな訪問するんですか?」

P「うん、出来る限りそうするようにしてるよ」

歌鈴「えっと、つまり……難しい子もいる?」

P「ご両親とも多忙だったり、そもそも連絡ができないのもいるからな」

歌鈴「ライラちゃんとか、ちょっと特殊な子も中にはいますもんね……」

P「そろそろ出ようか」

歌鈴「そうですね。これからどこに向かうんですか?」

P「近場から適当な店を見て周る感じで。ウィンドウショッピングみたいなもんだ」

歌鈴「わ、わかりました!」

P「そんなに緊張することでもないだろ? ほら、行くぞ」

歌鈴「改めて聞くと、やっぱりこれって……デ、デートみたいだなって……って、待って下さいよぉ~」

………
……


P「まずはコスメショップからだな」

歌鈴「あ、奏ちゃんのポスター貼ってありますよ!」

P「“くちびるは 喋るためじゃなく――”か。歌詞を引用してキャッチコピーにする企画、好評みたいだ」

歌鈴「CMにも出演してますし、曲も流れますからね」

P「実際にこのグロスのCMがオンエアされてから、CDの売上も伸びてきてるぞ」

歌鈴「やっぱり効果あるんですねぇ。奏ちゃん綺麗で落ち着いてて、同い年だから自信なくしちゃいます……」

P「そう比べるもんじゃない、同い年っていうなら杏もいるだろ。奏とタイプが全然違うが、そこに優劣なんかないだろ?」

歌鈴「それは、そうですけど……」

P「同じように、歌鈴は歌鈴だ。そう気落ちする必要はない」

歌鈴「……はい。ありがとうございます、プロデューサーさん」

P「歌鈴はこういうグロスとか持ってるのか?」

歌鈴「口紅は持ってますけど、いつもは使いませんね」

P「持ってるのに使わないのか?」

歌鈴「舞の時に使うものなので。普段使いするには紅が濃いんです」

P「あぁ、なるほど。たしかに神事で舞する巫女さんはかなり明るい紅色だもんな」

歌鈴「なので普段付けてるのって、リップクリームくらいですね」

P「そういや昔、メイク後の歌鈴が俺のとこに突っ込んできてワイシャツにキスマーク付けられたことあったよなぁ」

歌鈴「あ、あのときのことはもう忘れて下さいよぉ!」

P「事務所に替えのシャツがあったから問題はなかったよ。着替える前にまゆに見つかった時は流石に肝が冷えたが」

歌鈴「慌てて訂正しましたけど、誤解が解けるまでのまゆちゃんの笑顔が怖かったです……」

歌鈴「このマスカラ、美嘉ちゃんがイメージガールのものですね。ポップもあって人気みたいです」

P「こうして見るとLiPPSの面子はコスメ関係の仕事が多いな」

歌鈴「ここに来るまでに志希ちゃんの広告も見かけましたね!」

P「あぁ、自然派石鹸メーカーのやつだな。志希はオーガニックコスメやアロマ関連での受けがいいんだ」

歌鈴「自分で香水作れるくらいですかね、すごいなぁ」

P「フレグランスブランドから志希監修の香水開発オファーも来てるくらいだからな」

歌鈴「あはは……想像以上でした……」

P「ウチのアイドルは趣味を仕事に活かすのも多いからな、そのうちのひとつさ……コスメはもういいな、次に行こう」

………
……


歌鈴「次はこのアクセサリーショップに入るんですね」

P「ここのブランドは最近話題になってるからな、一度実物を見てみたかった」

歌鈴「いままでお仕事で関わったことは?」

P「他事務所も含めて、特定の誰かを広告媒体にはしてないようだ」

歌鈴「店頭にあったカタログ冊子見ても、アクセサリーだけの写真しかないですね」

P「それだけ商品に自信があるんだろう。ふむ、どれもシンプルながらも品のある装飾で嫌みがない」

歌鈴「そのぶんお値段もそれなりに……でしょうか?」

P「そこまで高価なわけじゃないが、学生がポンと買うには厳しい額かもな。彼女との記念日に奮発するくらいか?」

歌鈴「ほかのお客さんも大人の方が多いですね。それに、やっぱり人気だけあって混んでます、転ばないように気をつけなきゃ……!」

P「歌鈴はアクセサリーの類いはそんなに付けないよなぁ」

歌鈴「そうですね。あんまり小さいものだと、すぐ無くしたり転んだ拍子に壊しちゃいそうで」

P「興味がないわけじゃないのか」

歌鈴「こんな風に見て回るだけでも、すっごく楽しいですよ!」

P「ならここは種類も多いから退屈しないな。ネックレスだけでこんなに数があるとは……歌鈴?」

歌鈴「ほわぁ……すごい綺麗で可愛い……」

P「ほう、桜のモチーフか」

歌鈴「はわっ、プ、プロデューサーしゃん……かか、顔が近いでふ……」

P「ショーケースが照明を反射して、さっきの位置じゃよく見えないんだよ。我慢してくれ」

歌鈴「ちょっと驚いただけなんで、我慢なんてしてません! よ、良かったらもっと寄ってきても大丈夫なんで、その……」

P「いや、ここでも十分見えるからいいよ。ありがとな」

歌鈴「そうですか……」

P「……と思ったがやっぱり見づらいなぁ。もう少し詰めていいか?」

歌鈴「も、もちろんです! きてください!」

P「んじゃ失礼して、と」


歌(あうぅ……やっぱりこんなに近いと緊張しちゃう……!)

P「上品で良いデザインだな。気に入ったなら……って歌鈴、顔が赤いが大丈夫?」

歌鈴「ひゃい! だ、だだ大丈夫でしゅから、もももう次に行きましょう! ね!」

P「あぁ、わかった。それじゃあ次は――」

歌鈴(耳元で名前ささやくなんて反則ですよ……はぁ、まだドキドキしてる……)

………
……


歌鈴「本屋さんでは何を見るんですか?」

P「主に雑誌のチェックだな。えっと、コーナーはこっちか」

歌鈴「ぐるっと見て回っていいですか?」

P「あぁいいぞ、そのつもりで来たんだからな。俺はトイレ行ってくるから、先に見ててくれ」

歌鈴「はい、わかりました!」

……


P「すまん、遅くなった」

歌鈴「いえ、雑誌読んでたんで。ずいぶん混んでたんですね」

P「もう激混み。本屋に行くとお通じよくならない?」

歌鈴「あーたしかにそうですね……って、ア、アイドルに何言わせるんですか!」

P「すまんすまん。それで、見て回って何かあったか?」

歌鈴「音楽系の雑誌は夏樹ちゃんが表紙のものがありました」

P「あぁこれか。私物のギターを使っての撮影で、相棒と一緒に撮れることを喜んでたよ」

歌鈴「かっこいいなぁ……音楽系なら李衣菜ちゃんもあるんですか? ちょっと見当たらなかったですけど」

P「あるにはあるが、ヘッドホンの専門誌だ」

歌鈴「あ、そっちなんですね」

P「このお菓子系雑誌はかな子のコラムを掲載してるぞ」

歌鈴「えっと、『かな子ちゃんが毎号ひとつのお菓子について語り、作り、食べる名コーナー』……毎月やってるんですか!?」

P「結構な反響らしい。テーマのお菓子のレシピと、かな子おすすめのお店も紹介されるんだが、雑誌が発売されてしばらくは売り上げが上がるとかでな」

歌鈴「もうかな子ちゃんがトレンドを作ってませんか、それ」

P「ぜひ当店を紹介して下さい、なんて事務所に連絡がくるくらいだからな。謝礼をお支払いしますと言ってくる店まである」

歌鈴「それどうしたんですか?」

P「お断りしたよ。コラムに記載するのは、ガチのかな子個人が勧める店だからな。もちろん店側には事前に許可を貰うが、逆にお礼を言われることがほとんどだ」

歌鈴「影響力でいえば一番かも……」

歌鈴「意識してみると、雑誌もこんなにたくさん出版されてますね」

P「雑誌や新聞なんかは本当に狭い業種や趣味にも専用誌(紙)があると思っていいぞ。それだけ間口が広い」

歌鈴「うわぁ、きのこの専門誌まで……そして表紙が輝子ちゃんだ……」

P「志希のときも言ったが各々の得意分野での仕事って意味だと、雑誌は格好の露出手段になる」

歌鈴「そう考えると、出版社の方もアイドルを起用することが増えてる気がします」

P「アイドルを起用すれば、ファンが買ってくれる可能性が高いからな。出版社側からすれば、普段その雑誌を買わない層への購買効果が見込めるから積極的に使うようになってるんだ」

歌鈴「なるほど~事務所も出版社も、お互いに良い事です!」

P「ウチの事務所はいろんなアイドルがいるからありがたい話だよ。キノコアイドルなんて競争相手がまずいないからな」

歌鈴「ふふ、たしかにオンリーワンですね」

P「歌鈴はこういった専門誌の仕事したことないよな……神社仏閣の雑誌社に掛けあってみるか?」

歌鈴「わ、私ですか!? えっと……プロデューサーさんが持ってきたお仕事なら、頑張れます!」

P「お、それじゃあ前向きに検討してみようかな」

………
……


P「CDショップはトレンドがわかりやすいな」

歌鈴「ランキングもありますし、お店がプッシュするものは専用コーナーとか設置しますもんね」

P「そういうことだ。って、入っていきなりアイドル専用のコーナーがあるぞ」

歌鈴「わぁ、凄い数ですね……私達のCDもありますよ!」

P「他に並んでるのは……あぁ、このプロダクションか」

歌鈴「ここはどういった事務所なんですか?」

P「たしか元は所属が10人ちょっとの少数精鋭でやってたが、会社が成長した近年になって所属数を一気に増やした、って感じだな」

歌鈴「うぅ、そんな凄い事務所と並んで置かれてるんですね……」

P「そんな顔するな。つまり世間からも認められてるってことなんだから、もっと自信持っていけ」

歌鈴「は、はい……うん、弱気になっちゃ駄目よ歌鈴! これから先、一緒のお仕事する現場もあるかもしれませんからね!」

P「よし、その意気だ!」

店長「あれ、CGプロのプロデューサーさんじゃないですか」

P「あ、店長さん。お世話になっております。調子はどうですか?」

店長「おかげさまでコーナー作ってからの反応いいですよ。今日はいつもの調査ですか?」

P「そんなところです」

店長「休日にやってるんだから凄いですよ」

P「あくまで個人的にやってることですからね。趣味と実益を兼ねたライフワークみたいなものです」

店長「ははは、私の部下にもそれくらい言ってくれる者がいてほしいものです」

P「いえいえ。こうしてポップやコーナーまで作って、力を入れて頂けて感謝してます」

店長「私個人でもファンのひとりですからね」

P「はは、ありがとうございます」

店長「ところで、そちらの方はもしかして……」

P「はい、ご紹介遅れました。歌鈴?」

歌鈴「あ、はい! CGプロ所属の道明寺歌鈴です。私のCDも置いてあってしゅご……凄く嬉しいです。ありがとうございます!」

店長「……」

歌鈴「……えっと、店長さん……?」

店長「握手してもらっていいですか!?」

歌鈴「ひゃあ!ふ、ふつつかものですが、よよ、よろこんで!」

P「歌鈴、お前も落ち着け」

………
……


店員「お待たせしました、こちらがブレンドと黒豆茶になります」

P「ありがとうございます」

店員「では、ごゆっくりどうぞ」


歌鈴「ふう、一息つけましたね」

P「いやぁ、店長さんの推しメンが歌鈴とは知らなかったなぁ」

歌鈴「いきなりでびっくりしましたよぉ~」

P「話が盛り上がって次に新曲出すときはあの店でイベントさせてもらえることになったから、そこは良かったな」

歌鈴「はい、今日のお手伝いも、私が来た意味ありました!」

P「でも、せっかくのプライベートな時間使わせてもらってる上に営業みたいな真似させて悪かったよ」

歌鈴「それは構わないですよ。それよりも、気になったことがあるんですけど」

P「ん、なんだ?」

歌鈴「プロデューサーさん、この調査は休日に個人的にやってるって……?」

P「あぁ、今日は歌鈴と同じように午後が空きだから半休もらったんだよ」

歌鈴「え、そうだったんですか!?」

P「ここんとこ忙しくて1日休みってのはスケジュール的に厳しくてな。だからといって休まないと会社が目付けられるから、こうやって空いてる時に半休にしてもらうこともあるんだ」

歌鈴「もう、お仕事だと思ってまし……え、じゃあつまり……」

P「どうかしたか?」

歌鈴「わ、私は仕事のお手伝いだからって思ってて、でもプロデューサーさんもお休みなら、や、ややや、やっぱりこれって……」

P「黙ってて悪かったよ。前にちひろさんに『休む時は仕事から離れて休んでください』なんて釘刺されてな。事務所のみんなには黙ってるつもりだったんだ」

歌鈴「プロデューサーさん……」

P「だから今日のことも俺と歌鈴の2人だけの秘密にしておいてくれると助かる」

歌鈴「2人だけの、秘密ですね……ちょっと嬉しいかも、ふふっ」

P「すまん、後半ちょっと聞き取れなった。なんて?」

歌鈴「あわわわ、ひ、独り言です! なんでもありませんから!」

P「お、おう?」

歌鈴「でも、ちひろさんの言う事もわかります。プロデューサーさんは、もう少し自分を労わってもバチが当りませんよ?」

P「わかっちゃいるがただ休むだけは性に合わなくてなぁ。趣味らしい趣味もほかにないし」

歌鈴「……あ、あのっ! だったら次の調査の時も、わ、私も連れて行って下さい!」

P「え?」

歌鈴「プロデューサーさんは優しいから、誰かと一緒にいればこうして休憩したりしますよね。ひとりのときはしてましたか、休憩?」

P「いや、たくさん回りたいから途中休憩はしてないかな」

歌鈴「もう、やっぱり。調べる件数よりも体を休めることを考えてください……心配なんで、だから私もお手伝いします!」

P「それだと歌鈴のオフに時間取らせてしまうから、申し訳ないよ」

歌鈴「そ、それでいいんです。歌鈴の時間、プロデューサーさんがもらってください!」

P「……」

歌鈴「あ……ああああ、あの、もちろん迷惑だったら断ってもらって大丈夫でつ! ……あ、あうぅ」

P「ぷ……はは、わかったよ。じゃあ次も手伝ってもらうかな」

歌鈴「……はい よろしくお願いします!」

P「次が決まったし、今日のところはここまでにしとこう」

歌鈴「もう帰りますか?」

P「いや、最後にひとつだけ寄りたいところがある。来てくれるか?」

歌鈴「もちろんです! じゃあ出ましょうか」

………
……


歌鈴「ここは神社ですけど……ここでも調査を?」

P「いやそうじゃない。この神社の主祭神は歌鈴の実家と同じなんだ」

歌鈴「はい、神社の名前からも分社なのかなって思ってましたけど……」

P「ちょっとお参りしていこうと思ってな」

歌鈴「へ、でも近いうちに実家に行くんですよね?」

P「どうしても今日がいいんだ。さ、歌鈴も一緒に」

歌鈴「え、あ、はい!」

P「……」

歌鈴「……」

P「……よし、報告終わり」

歌鈴「お願いじゃなくて、報告なんですね」

P「あぁそうだ」

歌鈴「なんの報告したのか、聞いてもいいですか?」

P「もちろん。ほら、これ」

歌鈴「ふぇ……あ、あの、これはいったい……」

P「俺からの誕生日プレゼントだ」

歌鈴「誕生日? えっと、私の誕生日はとっても覚えやすいって評判なんですけど、勘違いしてます……?」


P「ちょうど1年前の日、覚えてるか?」

歌鈴「あ……それって……」

P「その顔は覚えてたみたいだな」

歌鈴「忘れませんよ……1年前のあの日は、プロデューサーさんと初めて会った日ですから」

P「その通り。そしてアイドル道明寺歌鈴が生まれた日でもあるわけだ」

歌鈴「それで誕生日プレゼント?」

P「神社の子が元旦生まれって、中々ゆっくりお祝いされないだろ? だったら誕生日を増やせばいい」

歌鈴「ふふ、凄いこと言ってますよ。でも、嬉しいです……プレゼント、いま見てもいいですか?」

P「あぁ、どうぞ」

歌鈴「えっ……これって、今日見つけた桜のネックレス! い、いつ買ってたんでうか!?」

P「それ話すとかっこ悪いから秘密。それより付けてやるから後ろ向いて」

歌鈴「は、はい。っどどど、どうぞ……」

P「……ん、付けたぞ。またこっち向いて」

歌鈴「ど、どうでしょう……?」


P「よく似合ってるよ。歌鈴、出逢ってくれてありがとな。これからもよろしく」

歌鈴「うぅ……ぐすっ……こちらこそ、こんな私を見つけてくれて、本当にありがとうございます! これからも、プロデューサーさんと一緒に頑張ります!」

………
……


歌鈴「おはようございまーす」

藍子「歌鈴ちゃん、おはようございます。あら、そのネックレスとっても素敵ですね」

歌鈴「ほんとですか、えへへ……ありがとうございます!」

藍子「そのブランド、最近雑誌やテレビでもよく見ますね」

歌鈴「やっぱりそうなんですか、お店もお客さん多かったですよ」

藍子「ひとりでお買いものに行ったんですか?」

歌鈴「あ、えーとそれは……」

藍子「歌鈴ちゃん?」


歌鈴「それは、秘密です♪」

歌鈴SSが少ない?
逆に考えるんだ、自分で書けばいいやと。

ここまで読んでくださった方に、桜餅を。

乙っす。

桜餅は道明寺に限る。
つか、何このカワイイ娘さん。
知らんかったぞ。

おつおつ

素晴らしかった…

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