いちご「オーディションより大事なこと」あおい「何ソレ?」 (42)




————トライスターオーディション後:学生寮廊下にて



いちご「はぁ……それにしてもかえでちゃんはすごかったね〜」


蘭「そうだな……『観客を楽しませたい』という想い、それにアメリカ仕込みの実力は確かな——」


いちご「まさかいきなりほっぺにキスされるなんて、私びっくりしちゃった!」


蘭「えっ、そこなのか!?」




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あおい「アメリカ……というより欧米では、さっきのかえでちゃんみたいに、挨拶代わりに頬にキスをするのが一般的、後はハグとか」


いちご「へえ〜そうなんだ?」


蘭「まぁ、日本じゃあまり馴染みない文化だよな……」


いちご「……ねぇ、あおい。キスってどんな感じなんだろうね?」


あおい「突然どうしたの、いちご?」


いちご「うん、私達が歌う歌詞にも『キス』って出てくるけど、私キスなんてしたこと無いから、どんな感じなのかなって……」


あおい「そうねぇ……でも、私に聞かれてもしたことないし……」




いちご「キスしたこと無いのに、そんな歌を歌ってもいいのかな?」


蘭「いや、そこまで気にしてたら何も歌えなくなるし……そこら辺は想像とかでいいんじゃないか?」


いちご「そっか……それじゃあ、経験豊富そうな人に聞いてみるっていうは?」


あおい「それいいかも!でも経験豊富そうな人って?」


いちご「えっと……」ジー


あおい「……」ジー


蘭「……なんで二人して私を見る?」




あおい「いや〜蘭ならそういう経験あるかな〜って思って」


いちご「というわけで蘭、キスってどんな感じ?」グイッ


蘭「無い無い、そんな経験!……っていうか、前もこんなやり取りしなかったか?」


いちご「そっかぁ、残念……じゃあ誰かに聞いてみようかな?」


蘭「いや、次の『今度こそファイナルオーディション』に備えなくていいのか?」


いちご「でも、感情を込めて歌うコツが掴めるかもだし、これもアイカツだよ!」


あおい「一理あるわね……」


蘭「ある……のか?」




おとめ「あれ?三人揃ってどうしたんですか?」テクテク


いちご「あ、おとめちゃん!」


おとめ「こんばんは!ぺこぺこり〜ん」ペコッ


いちご「あ、そうだ!おとめちゃん、ちょっと聞きたいことが有るんだけど……いい?」


おとめ「はい!おとめにわかることでしたら」


いちご「あのね、おとめちゃんってキスってしたこと有る?」


蘭「ストレートだな……いやでも、さすがにおとめじゃあ経験ないんじゃ……」


おとめ「はい!おとめ、キスしたことありますぅ〜」


蘭(なん……だと……?)ガーン




いちご「ホント!?良かったら詳しく聞かせて欲しいんだけど……」


おとめ「いいですよ〜あれはおとめがスターライト学園に入る前……確か小学3年生の夏休みに、おばあちゃんちに行った時でした……」


蘭(小学生の頃……だと……?)ガガーン


おとめ「相手は『コタロウさん』っていうんですけれど、こう——『チョン』って軽く触れるようなキスで、その時におヒゲがくすぐったくて……」


蘭(ヒゲ……相手は大人か!?)


あおい(ヒゲねぇ……)


いちご「それでそれで?」




おとめ「それでおとめ、コタロウさんに気に入られちゃったみたいで、会いに行く度ペロペロ舐められて……」


蘭「ペロペロ……なあ、それって倫理的にマズイんじゃないか!?な、あおい!?」アセアセ


あおい「いやぁ……これは……」


おとめ「それからコタロウさんの『餌』は私が用意するようになって……」


蘭「…………」


あおい「…………」




いちご「仲いいんだね……ってあおい、蘭、どうしたの?」キョトン


蘭「いや……おとめ……その……『コタロウさん』っていうのは……?」


おとめ「はい!おばあちゃんが飼ってる猫ちゃんの名前ですぅ」


蘭「紛らわしいわっ!!」////


おとめ「え〜なんでおとめ怒られるの〜?」


あおい「なんとなく読めてたけどね……このオチ」


いちご「ねえあおい、なんで蘭は怒ってるの?」


あおい「ええっと……何でかしらね……ハハ……」





————十分後:ユリカの部屋の前にて



コンコン


いちご「ユリカちゃ〜ん、まだ起きてる〜?」


ガチャッ


ユリカ「はい……あら?三人揃ってどうしたんですか?」


あおい「あ、メガネ姿……ごめん、寝てるところだった?」


ユリカ「いえ、中々寝付けなかったところだったから。どうぞ?」




蘭「すまないな、ユリカ……」


いちご「お邪魔しま〜す」


ユリカ「皆さん、紅茶でよかったですか?」


蘭「いやいや、お構いなく……」


ユリカ「いえいえ、すぐ出来ますから————はい、どうぞ」


あおい「ありがとう、ユリカちゃん……うん、美味しい!」


ユリカ「いえいえ。それで、私になにか御用ですか?」


いちご「あ、うん、実はね……」




ユリカ「キス……ですか?」


いちご「うん。それで、ユリカちゃんは経験ないかな〜と思って」


ユリカ「……残念だけど、私もキスの経験は無くて……」


いちご「そっか、残念……」シュン


蘭「冷静に考えると、私達何をやってるんだろうな……他人の——しかもアイドルのキス経験を聞いて回るって……」ヒソヒソ


あおい「でも、年頃の女の子っぽくない?今の私達」ヒソヒソ


蘭「いや、ぽいっていうか年頃の女の子で間違いないんだがな……」ヒソヒソ


ユリカ「フフフ……でも、やっぱり憧れはありますよね?女の子ですし」



いちご「そうだ!ユリカちゃんの好きな漫画だとそういうシーンって無いの?」


ユリカ「漫画……ですか。私が読んでるような吸血鬼の物語は悲恋物が多いから……そういうシーンは有っても、二人の最後の別れのシーンで——っていうのばかりだし……」


あおい「確かに、それだとキスの意味合いが違ってきちゃう」


いちご「そっかぁ……ハッピーエンドじゃない話は苦手だなぁ、私……」


ユリカ「…………そうね、私もハッピーエンドのほうが好き」




いちご「そうなの?」


ユリカ「ええ。例え恋した相手が好きになっちゃいけない相手だったとしても、やっぱり最後は幸せになってほしいもの……」


蘭「好きになっちゃいけない相手——か……」


ユリカ「昔はそんな漫画の切ない恋愛に憧れたりもしたけれど、いざ自分がその立場になると辛くて……あ、あくまで喩え話だけどっ!」チラッ


蘭「…………」


あおい(……アレ、この二人もしかして……?)





————十分後:自室にて



あおい「やっと戻ってこれた……うわ、もうこんな時間!」


いちご「蘭、大丈夫かな?先に帰っちゃったけど……」


あおい「……大丈夫じゃない?『明日に備えて早く寝ないと』って言ってたし」


いちご「そっか……」


あおい(ま、色々と思う所も有るだろうしね……人のこと言えないけど)




あおい「……と、ここまで色んな人に聞いたけど、どう?参考にはなった?」


いちご「ん〜やっぱりよくわからなかった……かな?」


あおい「だよねえ……やっぱり実体験が伴わないと……」


いちご「……ねぇあおい、キスってどういう相手にするものなのかな?」


あおい「そりゃあ……本当に好きな相手に——じゃない?」


いちご「じゃあ、どんな時にするもの?」


あおい「……言葉だけじゃ、気持ちを伝えきれない時……とか?」


いちご「そっか……そうだよね……」


あおい「いちご……?」


いちご「……あおい、キスしよ?」




あおい「い、いちごっ!?突然何を!?」


いちご「だってあおい言ったでしょ?キスって本当に好きな人に、言葉だけじゃ気持ちを伝えきれない時にするものだって」


あおい「そう……だけど……」


いちご「私、あおいの事好きだよ?……あおいは私のこと嫌い?」


あおい「嫌いなわけ無いっ!私も……いちごの事…………好き」////


いちご「だったら!」


あおい「…………好き……だけど、私の『好き』といちごの『好き』は違うから……」




いちご「……違わないよ。あおいの『好き』と私の『好き』、全然違わない……」


あおい「いちご……?」


いちご「だってほら」ヒョイ


あおい「あっ——」


いちご「私の心臓、凄くドキドキしてるでしょ?……あおいのこと考えるといつもこうなっちゃうの」


あおい「……」スッ


いちご「あおい?」


あおい「私も同じ——ほら、こんなにドキドキしてる……いちごと同じだよ」


いちご「あおい……」


あおい「いちご……」




いちご「……私、最近ちょっと怖くなってきたんだと思う」


あおい「怖くって?」


いちご「アイドル活動をしていると、今日みたいにオーディションであおいと争うことも有るでしょ?」


いちご「これがアイドル活動なんだっていうことはわかってる。でも、こうしてオーディションを続けていって、争っているうちに、あおいの気持ちが離れちゃったら嫌だなって……」ウルッ


あおい「いちご……」




いちご「それに、かえでちゃんみたいな積極的な子にあおいがとられちゃったらって考えたら……」


いちご「ごめんね、もちろんあおいのことは信じてるんだけど、なんか、自分でもわけわからなくなっちゃって……ヤキモチ——なのかな?」


あおい(ヤキモチ……いちごが私にヤキモチ……)////


いちご「あおい、どうしたの?」


あおい「ううん、何でもない……まさかいちごが私にヤキモチ焼いてくれると思わなくて……」


いちご「だってあおい、アイドル好きでしょ?」


あおい「好きだけど……好きのベクトルが違うというか……」


いちご「でも……」シュン


あおい「馬鹿ね……いちごは……」




いちご「あおい?」


あおい「よっと」ギュッ


いちご「わわっ」


ナデナデ


いちご「あおい……」


あおい「そんなことで私の気持ちが離れるわけないじゃない。だって私は……いちごのファン第一号なんだから!」


いちご「あおい……うんっ!」




いちご「じゃ、じゃあ……」


あおい「うん……」


チュッ


いちご「…………」


あおい「…………」


いちご「しちゃった……ね?」////


あおい「うん……」////


いちご「……どう?私の気持ち伝わった?」


あおい「うん……十分すぎるくらい」


いちご「そっかぁ……良かった」////


あおい「えへへ……」////


あおい「いちごは?私の気持ち伝わった?」


いちご「うん、もちろん!」




いちご「あ、でも女の子同士でキスしたら、赤ちゃんはどっちに出来るんだろうね?」


あおい「えっ——!?」


いちご「だって、赤ちゃんって好きな人同士がキスして出来るんでしょ?」


あおい「そ、それは……」


あおい(お、穏やかじゃないわね……)



いちご・あおい編 おわり




————おまけ:ユリカの部屋の前にて



コンコン


蘭「……ユリカ、まだ起きてるか?」


ユリカ「——蘭さん?はい、どうぞ……」ガチャッ


蘭「悪いな、何度も遅くに……」


ユリカ「いえいえ、なにか忘れ物ですか?」


蘭「……まあ、ある意味そうかな?」




ユリカ「あ、でも、何も落ちてなんかいな——」


蘭「好きだ——」


ユリカ「ふぇっ!?」


蘭「お前のことが好きだ——と、言いに来たんだ……」


ユリカ「……」


蘭「突然すまない……だが、明日のオーディションの前に、色々スッキリさせておきたかったんだ……」


ユリカ「……」



蘭「自分でもよくわからないが、お前のこと見てると放っておけないというか、自分以外の人間に触れさせたくないというか、こんな経験今までなかったんだが、これが『好き』って気持ちなのかなと……」


ユリカ「……」


蘭「……ユリカ?」


ユリカ「…………」ポロッ


蘭(————泣いてるっ!?)


蘭「す、すまん。いきなりこんな話されても迷惑だよな、悪かった……」


ユリカ「い、いえ……これはその……迷惑とかじゃなくて……」ポロポロ


蘭「そう……なのか」


ユリカ「え、ええ……でも——」


蘭「でも……?」


ユリカ「……どうして『今』なんですか?」




蘭「えっ?」


ユリカ「あ、いえ——な、何でもありません……」


蘭「……色々混乱させちゃったみたいだな、今日はもう帰るよ……」スッ


ユリカ「あ、あのっ蘭さん——」


蘭「また明日な、お休み——」


バタン


ユリカ「あ……」ギュッ




蘭(何を——やっているんだろうな、私は……)


蘭(ユリカの気持ちも考えず、一方的に気持ちを押し付けて……実はユリカに好きな人がいるかもって思って焦ったからか……?)


蘭(それでついてでた言葉が『オーディションの前にスッキリさせたい』だものな……自分勝手にも程がある)


蘭(明日は、謝らないとな……)




蘭(何を——やっているんだろうな、私は……)


蘭(ユリカの気持ちも考えず、一方的に気持ちを押し付けて……実はユリカに好きな人がいるかもって思って焦ったからか……?)


蘭(それでついてでた言葉が『オーディションの前にスッキリさせたい』だものな……自分勝手にも程がある)


蘭(明日は、謝らないとな……)





————翌日:通学路にて



いちご「蘭、おはよう〜」


おとめ「おはようございますぅ〜」


蘭「ああ、おはよう……」


あおい「おはよ、蘭……どうしたの?顔色悪いけど、寝不足?」


蘭「いや、大丈夫だ……ユリカは?」




おとめ「ユリカたんなら……あ、ほら、来ましたよ!」


いちご「ホントだ、ユリカちゃ〜ん」


蘭「……ユリカ」


ユリカ「…………」


蘭「昨日はその……悪かったな、お前の気持ちも考えずに……」


いちご「なになに?何かあったの?」


蘭「ちょっと……な」




あおい「蘭……」


蘭「あの後考えたんだ、やっぱり自分勝手が過ぎたなって。だから昨日のことは全部忘れてもらっても——」


ユリカ「——ッ」キッ


蘭「ユリ……カ……?」


グイッ


蘭「な、何を——」


チュッ


蘭「っ??!」




いちご「わ、大胆!」////


あおい「お、穏やかじゃないわね……」////


おとめ「おとめ、お友達がキスしてるの初めて見ました〜!」


蘭「なっ——いきなり何をっ!?」////


ユリカ「ふんっ、これが昨夜の答えよ!」////


蘭「なっ!?」




ユリカ「魅了-チャーム-が得意な吸血鬼を逆に魅了するなんて……まったく、大した人間だわ」


蘭「いや魅了って……」


ユリカ「これから貴方は、私の下僕として永遠の時を過ごすのだから、覚悟しなさいよねっ!」////


スタスタ


いちご「あ、行っちゃった……」


あおい「なになに?『昨夜の』ってあの後何があったの!?あ〜でも吸血鬼と美しき刃の組み合わせか〜絵になるっ!」


おとめ「二人とも、らぶゆ〜ですぅ」




蘭「やれやれ……あ、おいユリカ!日傘落としてるぞ〜!!」


タッタッタッ


蘭「ほら、吸血鬼に紫外線は毒なんだろ?」バサッ


ユリカ「ふ、ふんっ!気が利くじゃない。褒めてあげるわっ!」


蘭「はいはい、下僕でもなんでもいいよ……嫌われたわけじゃなくって安心できたしな」


ユリカ「ふんっ!嫌えるわけないじゃないの……あんなに世話焼いてくれたら……」ボソッ


蘭「ん〜もっとはっきり言ってくれないと、聞こえないぞ?世話焼きがなんだって?」ニヤニヤ


ユリカ「絶対聞こえてたでしょっ!」


蘭「あははは……」




蘭「そういえば、昨日言ってた『どうして「今」なんですか』っていうのは、結局何だったんだ?」


ユリカ「そ、それは——」ビクッ


蘭「それは……?」


グイッ


蘭「ん?」


ユリカ「……素の時の私だと、恥ずかしくて好きだなんて言えなかったから……」ヒソヒソ


蘭「へぇ〜じゃあ今度改めてお気持ちを聞かせてもらおうかな、素のユリカ様に」


ユリカ「ちょっと、何でですかっ!?」


蘭「出てるぞ、素が」ニヤニヤ


ユリカ「〜〜もうっ!」



おわり



以上です。


アイカツ!面白いですよね?


最初は地元出身のあおいちゃんの声優目当てに見ていましたが、今じゃすっかりアイカツ!ワールドの虜です。


カード筐体はさすがに勇気がなくて手が出せていませんが……

乙乙!!アイカツはなんか和めてホント好き。
二次創作が盛んじゃないからありがたい。
オーディション編(後日談)とか期待していい?



>>37


そうですね……元々6日放送のこんどこそファイナルオーディションまでには完成させようかな〜と考えてただけなのですが、オーディションの結果が出た後、アイディアが浮かべば……ですかね?

>>38なるほど〜
まぁ無理に続きでなくともいいからオフの日ネタでもなんでもいいからまたアイカツ書いてくれ〜
応援してます

すごくよかった


今週の話……めちゃくちゃいい話でしたよね!

またアイカツ物で書いてみようかなと思います。

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