海未「白い龍」 (11)

プロローグ

暑さで遠くの道路はもやもやと揺らめいていた。

帰路。

私は額の汗をハンカチで拭い、このうな垂れた暑さに負けまいと歩を速めた。

今日は練習も無く、部活も無い。
かと言って友達と遊ぶ予定も無いので、久しぶりに暇を満喫しようと思い何か無いかと考えた所。
自宅にまだ読んでいない小説がたんまりとある事を思い出した。
確か5冊ぐらいはあったはずだ。

流石に夕方から寝るまでの時間で5冊読み切る自身は無かったが、2冊ぐらいは消化できるだろうと思い意気揚々と帰路を歩いているとこの暑さだ。

やる気を奪う湿気。
鬱陶しい汗。

太陽にもうちょっとだけ涼しくしてくれ。
そう頼もうと空を見上げる。

丁度、小鳥が私の視界の端から端へと飛んで行き、もうすぐ雲に隠れそうな太陽を手で覆いながら見る。

雲と雲の隙間。

何かキラキラと動く物が見える。

白くて細くて、うねうねと空を飛んでいる。

見間違いか?

白い龍が飛んでいるように見えた。




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一章

目覚まし時計がジリジリと鳴る。

その前に起きてすっかり制服に着替えていた私は慌てる事なく目覚まし時計を切り、リビングへと向かう。

お母さんとお父さんが向かい合うように食卓に腰掛けており。
今日の朝食は珍しく洋風だった。

食卓にはタコさんウインナーと目玉焼き、それと空のお皿がありここにはトーストが入る。

私の家は少し変わっていて、お母さんもお父さんも私もそれぞれ好みのトーストの焼き加減がある。

前まではお母さんが焼いていたのだが、まず最初にお父さんがトーストへのこだわりを語り。
次に私が同じようにトーストへのこだわりを語った。

お母さんはそれに呆れたようで、じゃあ洋風の時は自分で焼くようにと半ば強引に決まった私の家の決まりだ。

私は台所に向かいまな板の上に置かれている食パンを見て、包丁差しからパン包丁を手に取った。

今日はこのぐらいでいいか、目測で自分が食べきれそうなサイズにパン包丁で切り。
近くのトースターへと食パンをセットした。

ダラダラせず簡潔に……
作家意識でもあんのか?

横書きでも改行したらそれほど見にくくないな

イイぞ

食パンが焼き終えるまで、昨日見た白い龍の事を考える。

私はこの世にいないと思われていた生物の第一発見者になるんじゃないか?

あの時見た龍は姿形はぼやけてはっきりと見えなかったけど、確かに空を泳いでいた。生きていた。

もしかしたら今日もあの白い龍を見れるかもしれない。

チンッと音が鳴る。
どうやら食パンは焼き終わったみたいだ。

海未「あれ?」

トースターからひょっこりと顔を出している食パン。
きつね色の焼き目を付けて、香ばしい匂いを漂わせているはずなのだが。

どう言う訳か真っ黒焦げになっていた。

タイマーの時間を間違えてセットしたんだと思い、食パンをもう一枚切ってトースターにセットする事にした。

いいえ、くねくねです

しばらく待ち、またチンッと音が鳴る。

今度はちゃんと焼けているみたいで、私が望んだきつね色の焼き目と香ばしい匂いが鼻腔をくすぐった。

食パンをお皿に乗せ食卓に戻る。

海未「いただきます」

目玉焼きを食パンの上に乗せて、かぶり付く。

もぐもぐと食べながら、テレビに注視する。

お天気お姉さんが今日も暑くなると告げていた。

そろそろ涼しくなってもいいんじゃないかと思いながらごくんと食パンを飲み込んだ。

朝食を終え、歯も磨き終わった。
後は学校へ行くだけ。
靴を履いて玄関のドアノブに手をかける。

この扉を開ければまるで世界が変わったかのように暑い太陽が私を待っていて、セミの鳴き声が私を出迎えてくれる。

まだ夏は終わってくれない。

深いため息と共に外へと飛び出す。

海未「・・・暑い」

刺すような直射日光。
生温い大気が私を包み、後数分もすれば汗が出てくるだろう。

ことり「海未ちゃん」

一瞬だけ暑さを忘れる。
どうやら私の家の前で待っててくれたようだ。

ことり「おはよう海未ちゃん」

海未「おはようございますことり」

ことり「行こっか」

海未「はい、それにしても暑いですね」

ことり「そうだねー。暑いねぇ。あれ?」

ことりは私の肩をポンポンと叩いた。
黒い粒のような物がポロポロと地面へと落ちて行くのを見る。
どうやらさっきの黒こげの食パンがいつの間にか肩に着いてたらしい。

海未「ありがとうございます」

ことり「ううん。いいよ。行こ?」

海未「はい」












面白そう

おい

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