遊矢「ここは一体……?」ジャック「誰だ貴様は」 (142)



ドサッ


遊矢「くっ……ロジェのヤツ、まさか自分ごと治安維持局を吹き飛ばすなんて……!」

遊矢「そうだ、柚子は? 権現坂、沢渡!」

遊矢「そんな……誰もいないなんて! それにここは一体?」


遊矢(シンクロ次元のシティ? やっぱり次元移動装置は壊れていたのか)

遊矢「考えていても仕方がない。 次元を超えていないなら、早くみんなの元に戻らないと」

遊矢(デュエルディスクは……だめだ、故障してる)

遊矢「アカデミアの残党にあったら、覚悟を決めないとな……」 ザッ



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1472648827


遊矢(変だな、シンクロ次元にしてはコモンズのスラム街が見えない)

遊矢(よっぽど遠くに飛ばされたってことかな?)


「うむ。 この奥深い薫りと味わい、やはり誇り高きブルーアイズマウンテンだな」 ズズッ


遊矢(あそこでコーヒーを飲んでるのは……ジャック!?)

遊矢「おいジャック、お前こんな時に何くつろいでるんだ!」

ジャック「む? せっかくのティータイムに騒がしいヤツだ。 誰だ貴様は?」

遊矢「……え?」


遊矢「な、何いってんだよ。ホラ、エンタメ決闘者の榊遊矢! オレたちはフレンドシップカップで戦った相手じゃないか!」

ジャック「榊遊矢? フレンドシップカップ? そんなモノは聞いたことすらないな」

ジャック「お前のような手合いは慣れている。 俺の気が変わらんうちに、とっとと視界から立ち去ることだ」 ゴク

遊矢「そんな……お前はオレとのデュエルに負けて、キングの座を渡したじゃないか。 それも忘れたっていうつもりなのか?」


ジャック「なんだと!? 貴様、言わせておけば!」 ガチャン

ジャック「確かに俺はもはやキングではない。 だが俺に勝ったのは不動遊星、あの男だ!」

ジャック「貴様のようなどこの馬の骨とも知らぬ奴に負けるほど、このジャック・アトラスは落ちぶれてなどいない!!」 ガタッ

遊矢「不動遊星……? ジャック、お前こそ何を言ってるんだよ!」


ジャック「ふん。 白昼堂々と俺を侮辱するとはなかなか良い度胸をしている!」

ジャック「いいだろう! そこまで一足早く地獄を見たいのならば、このジャック・アトラスが直々に相手をしてくれる!」


「オメーこそ平日の昼間から何してやがる、このボケナス野郎が!」 ゴツン

ジャック「うぐっ! 俺の沽券に関わる勝負に水を差すなクロウ!」

クロウ「ロクに働きもせず、身内の金でバカ高いコーヒーを飲み漁る穀潰しに沽券なんて高価なものがあってたまるか!」

遊矢「く、クロウ! お前まで……!」

クロウ「ああ? なんだお前。 なんでオレの名前を知ってやがる」


ジャック(さっきからこの調子だ。 得体の知れん上に、気に触る言葉を吐く) ヒソ

クロウ(もしかしたらイリアステルの刺客かもしれねえ。 無理に関わらないほうが良さそうだ) コソ


クロウ「ああ、そうそうお前あの時の! だがオレたちは今忙しくてな、また今度にしてくれ」

ジャック「チッ、せっかくのブルーアイズマウンテンが不味くなった。 俺はWRGPの調整に戻る」

遊矢「ちょ、ちょっと! 待ってくれ―――」


「ここにいたか。 クロウ、ジャック」


クロウ「遊星? お前もこんなところまで来てたのか」

遊星「この辺りにある、Dホイールのジャンク市に用があってな。 ……彼は?」

ジャック「ふん! そいつに構うな遊星。 厄介ごとを増やしたくなければな」

遊矢「あなたは……?」

遊星「その腕に着けている機械、見たところ壊れているようだ。 修理には出さないのか?」


遊矢「その……実はオレ、最近この街に着いたばかりなんだ」

遊矢「教えてくれ! ここはシティじゃないのか? トップスやコモンズ達はどうなったんだ!?」

クロウ「けっ、そらみろ! まーたワケわかんねえ単語を増やしやがって、怪しさ満点だぜ!」

遊星「ここはネオ童実野シティ。 キミは他の街から来たようだが、残念ながら向かうべき場所を間違えているらしい」

遊星「だが、キミのような子供がたった一人でくるには何か事情があるのだろう。 その機械も直すアテがないようだ」

遊星「キミが良ければ、俺たちが少しの間だけ面倒を見るが?」

遊矢「えっ!?」

ジャック「待て遊星! それはなんの冗談だ?」


遊星「マーサが言っていた。 困っている人には手を差し伸べろ、それが子供ならばなおさらだと」

クロウ「お人好しにも程があるだろ! 大体、コイツはなぜかオレたちのことを知ってやがったんだぞ!?」

遊星「チーム5D'sはWRGPに出場しているしそれなりに知名度はある。 それに彼を助けるのは、なにも善意だけではないさ」

遊星「その腕に着けた機械……よく見ればデュエルディスクの形状をしているが、少なくとも俺は初めて見る代物だ」

ジャック「デュエルディスクだと? ふん。 こんなものがか?」

遊星「それを解析すれば、俺たちのDホイールの性能を伸ばす足がかりになるかもしれない」


クロウ「それでも俺は反対だぜ! ただでさえ資金難だっていうのに、これ以上タダ飯食らいを増やすつもりかよ!」

ジャック「何か言いたいことがあるらしいなクロウ」

遊矢「でも、初対面なのに迷惑はかけられないよ」

遊矢「もういいんだ。 ここがオレの知ってる場所でもなく、人違いだってことも分かっただけで十分さ」

遊矢「ごめんなさい! ディスクの修理も、みんなの居場所も一人で何とかしてみるよ」

遊星「しかし……」


「おぉぉい遊星~~! ボクを置いていかないでよぉ~~!」


遊星「ブルーノか。 すまないが取り込み中だ、後にしてくれ」

ブルーノ「ひどいよ遊星! あのジャンクの山にはホラ、こーんなに掘り出し物がいっぱ……んん?」 チラ

遊矢「えっと……なんですか?」


ブルーノ「ねえねえキミ! その腕に着けてるもの何!?」

遊矢「ちょ、ちょっと人の話を」

ブルーノ「うわぁ~すごいコンパクトな形のデュエルディスクだ! うわっなにこの規格? ちょっと触ってもいいよね!?」 チャキ

遊矢「いやだから」

ブルーノ「製造コードLDS-aRc5? どのデータにも載ってない企業だ……一体どんな素材でできているんだろう」 カチャカチャ

遊矢「」

ブルーノ「質量を持ったソリッド・ビジョン発生装置!? 超小型の位相空間転送装置!?」

ブルーノ「こ、これ新技術の山だよ! 信じられない、こんなのもはや異世界の技術だ!」


クロウ「これで決まりだな……やっぱりお前はイリアステルの一味! タダで帰れると思うなよ!」

ブルーノ「ええっ!? 帰っちゃうの!? そんなの絶対ダメだって!」

ブルーノ「お願いします! なんでもするからそれをボクに譲ってください!」

ジャック「馬鹿者が、コイツを捕らえてその妙なデュエルディスクも奪えばいいだけの話だろう」

遊矢「くっ……!」



遊星「やめないか!!」

クロウ「遊星、なんで止める!」

遊星「まだ彼がイリアステルの仲間と決まったわけじゃない。 それに無防備な状態で俺たちに近づく理由も考えにくい」

ジャック「それこそが奴らの算段だ! 油断させておいて不意を打つのは、龍可の時とまるで同じではないか!」

遊星「そこまで信用できないのならば、確かめる手段は一つだけある」

クロウ「イリアステルかどうか確かめる方法だと?」


遊星「キミ……すまないがデッキを見せてはくれないだろうか?」


ジャック「イリアステルが機皇帝だけを使うとは限らん。 ゴーストどもの件を忘れたワケではあるまい?」

遊星「彼がもしイリアステルならば、俺たちにデッキを見せるワケがない」

遊星「それに敵意があったとしても、手の内を知っていればいくらでも対処はできるだろう」

遊矢「……これで信じてくれるのなら、安いもんさ」 スッ


クロウ「なんだこりゃ? ペンデュラムカード?」

ジャック「エクシーズとかいう、ワケの分からんモンスターもいるぞ!?」

ブルーノ「どこにも流通していないカードばかりだ……!」

遊星「機皇帝も入っていないようだ。 やはり彼はイリアステルじゃない」

クロウ(も……もしかして、マジで異世界人なのか?) ゴクリ


遊矢「信じては貰えないだろうけど、オレは次元を超えてこの世界にやってきたんだ」

遊矢「だけどオレだけ別次元に飛ばされて、仲間とはぐれて……! こんなことをしている場合じゃないのに!」

遊矢「お願いだ! こんなことを頼める立場じゃないけれど、オレのデュエルディスクを直してほしい!」

遊矢「一刻も早く、仲間たちの元へ……!」 グッ


クロウ「どうすんだよ遊星?」

ジャック「クロウの言った通りだ、やはり厄介事ではないか」

遊矢「それは自分でもわかっている、けど……」

遊星「なら取引をしよう。 俺たちはあのデュエルディスクの技術を得られる、キミは仲間のところに帰れる」

遊星「アレを修理する間の宿は提供できるが、それでどうだろうか?」

遊矢「それは……」 チラ


ジャック「不本意だが、遊星が決めることに口出しはしない」

クロウ「お人好しの遊星に感謝するこったな」


ブルーノ「あー、ゴホンっ! ちょっとこっちに来てくれるかい?」 クイッ

遊矢「な、何?」


ブルーノ(ジャックとクロウが怖いの?) ヒソ

遊矢(いや、そうじゃないんだ。 ただオレの知ってるジャック達とあまりに違いすぎて……)

ブルーノ(へえ。 例えばどんな?)

遊矢(なんというか、ジャックはもっとカッコ良かった気がする)


ブルーノ「ブフッ」

ジャック「おい、何を笑っている貴様」


遊矢(クロウも、なんだかよそ者のオレに冷たいような……)

ブルーノ(ボクのときもみんなそんな感じだったよ。 でも遊星がいたからボクも彼らと一緒になれた)


遊矢(遊星……そうだ、オレのいた世界にはあんな人はいなかった)

ブルーノ(そうなんだね。 でも彼がいたからこそ今のみんながある)

ブルーノ(他に行くアテもないなら、遊星に任せてみるのもいいんじゃないかな?)

遊矢「…………」


ジャック「ふん、くだらぬ井戸端会議は終わったか?」

遊星「無理強いはしない。 たとえ断っても、キミに決して危害を与えないことを約束しよう」

遊矢「……オレ、やっぱりあなたにディスクを修理してもらいたい」

遊星「そうか。 ならば俺たちはキミの想いに応える」


クロウ「へっ! ブルーノのヤツ、一体どんな口車に乗せたのやら!」

ジャック「つけ上がるなよ遊矢とやら。 その妙ちくりんな機械が直れば、すぐにでも叩き出してやる!」

ブルーノ「はーいはい、そんなにムキになるなんて大人げないなぁ二人とも」

遊星「ところでまだ名前を聞いていなかったな。 俺は不動遊星、彼らのチームリーダーを務めている」

遊矢「オレは榊遊矢。 父さんのような一流のエンタメ決闘者を目指しているんだ!」


――――――
―――

遊星VS遊也くるか?

今日はここまで

あんたか
今回のも楽しみ

この時代のジャックはギャグ時代だから普通に遊矢で勝てそう

スタンディングなら無敗だし……

閻魔翌龍竜出してくれるならギリジャック側にも勝機はあるが

遊星の手で改心されるのかな?

遊星さん時間超えたことあったりするんだから理解ありそう

でもそれ公式で何話から何話の間って明言されてたっけ

期待

>>21
されてた気がする
満足街と何かの間だった気がするような気がする

>>21
映画で人々を思い出すシーンでブルーノやシェリーがいて、満足さんの姿がリーダー時代だった
だからブルーの加入~満足が今での話だと思われる


遊星「ここが俺たちのガレージだ。 奥に空き部屋があるから、そこを自由に使ってくれて構わない」

遊星「それと手持ちにはこれくらいしかないが、この金をキミに預けておく。 不自由はしないハズだ」 スッ

遊矢「こ、こんなに!? そんな……いくらなんでも悪いって!」

ブルーノ「本来なら、ここら一帯の土地を売ってもまだ足りないぐらいだよ」

ブルーノ「遊矢くんが異世界人という点を差し引いても、足元を見ていると言われれば言い逃れはできない額なんだ」

遊星「だが、俺たちもWRGPに向けて資金を切り詰めている。 正当な対価ではないが、報酬の前払いだと思って受け取ってほしい」


遊矢「うう……分かったよ。 でもオレが元の世界に戻る時に、余った分は返すから!」

クロウ「オレはハナから反対したんだがな。 遊星は甘やかし過ぎだ」

クロウ「念のため釘を刺しておくが、どっかのアホみてえに無駄使いすんじゃねーぞ」

ジャック「クロウよ。 悩みなど高貴なモノを持たぬ貴様に、メンタル管理の重要性など理解できようか」



龍亞「遊星ー! ジャック! 遊びに来たよ!」

龍可「あれ、今日はクロウだけ?」

クロウ「遊星は修理の仕事、ジャックの野郎は街の不良共相手に腕試しだとよ」

クロウ「オレも今から配達行ってくるから、また後で出直してくれ」

龍亞「えー!? そんなのつまんないよ! あっそうだ、アキ姉ちゃんは?」

クロウ「アキのヤツは今日のメシ当番で買い出しだ……今晩は覚悟しとけよお前ら」

龍可「きょ、今日はアキさんの日だったのね……」 タラ

クロウ「まあなんだ、今日はウチに居ても夕方まで誰もいねーからよ」 ブロロロッ


龍亞「なあ龍可。 なんかさ、さっきのクロウ変じゃなかった?」

龍可「うん……誰もいないハズなのに戸締り忘れてるし」

龍可「もしかして、まだ誰か残ってるのかも」

龍亞「怪しーな~! ちょっとガレージの中に入ってみようぜ!」



遊矢(こうしている間にも、アカデミアの侵攻は始まっている。 オレの仲間たちもカードにされているかもしれない)

遊矢(だから、オレには遊んでいる暇なんて……!)

遊矢「はぁ、さすがにそんな気分にはなれないや。 デッキの調整でもしておこうかな……」


龍亞「あれっ、おっかしーな。 開かずの部屋の鍵が……って」 ガチャ

龍可「だ、誰?」

遊矢「キミたちは……?」


―――――――――…


龍亞「へぇー、じゃあ遊矢は他の街から来たんだ!」

龍可「ペンデュラムにエクシーズ……すごい、他の街ではこんなカードがあるのね!」

遊矢「そ……そういうことになるかな? あはは」

龍亞「いよーっし! それじゃあオレとデュエルしようぜ! オレ、遊矢がどんなデュエルするかスッゲー気になるんだ!」

龍可「ちょ、ちょっと龍亞!? いきなりそんな……!」

遊矢「ゴメン、今オレのデュエルディスクは壊れちゃっててさ。遊星に直してもらっているんだ」

龍亞「そっかー……でも遊星ってスゲーんだぜ。 オレたちのDボードも遊星に作ってもらったんだよ!」


遊矢「デュエルはできないけど、ちょっとしたエンタメなら見せてあげようか?」

龍亞・龍可「エンタメって?」

遊矢「みんなを笑顔にする魔法のことさ! 二人とも、まずはデッキから五枚のカードをドローしてみてくれ」

龍亞「デュエルじゃないの? まあいいけどねっ」 シュバッ

龍可「何が始まるんだろ? ドローっ」 シュパッ

遊矢「それでは、今引いたカードを覚えたら誰にも見せないように地面に伏せます」


龍亞(オレの引いたのは《D・クロックン》《D・モバホン》《パワー・ピカクス》《ダブルツールD&C》《D・ゲイザー》の五枚!)

龍可(《クリボン》《レグルス》《ワタポン》《古の森》《妖精の風》……うん、みんないい子ね)

遊矢「Wonderful! いま私の意識はあなた方の意識と同調し、偶然にもまったく同じカード十枚を引き当てました!」

龍亞「ええっ!? そんなワケないじゃん、遊矢のデッキにオレたちと同じカードは一枚も入ってなかったよ!」

龍可「ふふっ、早合点はダメよ龍亞? これってマジックなんだから」

龍亞「そ、そうなの?」

遊矢「ただのマジックではありません、エンタメマジックです! それでは私の伏せカード五枚をご開帳!」


《EMペンデュラム・マジシャン》《EMモンキーボード》《EMディスカバー・ヒッポ》《カバーカーニバル》《スマイル・ワールド》


遊矢「あれっ……」 タラ

龍可(も、もしかして遊矢……)


龍亞「ぷぷーっ! 遊矢ってばマジック失敗してるし~! オレの引いたカードはこれだよっ! ジャジャーン!」


《EMペンデュラム・マジシャン》《EMモンキーボード》《EMディスカバー・ヒッポ》《カバーカーニバル》《スマイル・ワールド》


龍可「えっ!?」

龍亞「なんで!? オレの引いたカードがいつのまにか別のカードになってる!?」

遊矢「おおっと、見事マジックは成功した模様です! いやーこれには正直ホッとしました!」

龍亞「ま、待ってよ遊矢! それじゃあオレのカードはどこに行っちゃったの!?」

遊矢「それでは龍可ちゃん、伏せたカードはなんだったかな?」 スッ

龍可「わ、私は確かにクリボンたちを伏せたはず―――」 ペラッ


《D・クロックン》《D・モバホン》《パワー・ピカクス》《ダブルツールD&C》《D・ゲイザー》


龍亞「ああっ! それってオレのカードじゃん!」

龍可「どうして!? 私のカードが龍亞のカードになってる!」

龍亞「じゃあ、龍可のカードは一体どこ?」

遊矢「言ったはずです。 私はあなた方と同じカードを引き当てた!」

遊矢「It's showdown! これにてクライマックスです!」 パチン


《クリボン》《レグルス》《ワタポン》《古の森》《妖精の風》


龍可「そ、そんな! いつの間に入れ替わっていたの!?」

龍亞(ゆ……遊矢の伏せた、残る五枚のカードが龍可のカードに!?)


龍亞・龍可「…………」

遊矢(あ、あれ? やっぱり人のカードで勝手にマジックしたから怒ってるのかな?)

龍亞「……す」


龍亞「すっげぇぇぇ! ねえねえ、さっきのマジックどうやったの!?」 キラキラ

龍可「ほかにはどんな手品があるの?」 キラキラ

遊矢「えっ!? ああいや、それでは次のエンタメマジックを―――」


龍可「ねえ、遊矢はどこでそんな手品を覚えたの?」

遊矢「オレの父さんが一流のエンターテイナーでね。 小さい頃からみんなを笑顔にする芸はあらかた仕込まれたよ」

遊矢「マジックだけじゃないさ、手芸やサーカスだってエンタメの一つ! デュエルだって―――」 ハッ

遊矢「……今は、できないんだけどね」

龍可「大丈夫。 きっとすぐに遊星が直してくれるわ」

龍亞「―――よしっ! 遊矢、今から街に行こう!」 グイッ

遊矢「そ、外に?」


龍可「この時間はね、ネオ童実野公園で大道芸人がみんな集まってショーをやっているの」

龍亞「こんなにすごいエンタメなら大人気間違いないよ! オレたちで飛び入り参加しようぜ!」

遊矢(……街でエンタメすれば、たぶんお捻りが貰えるかもしれない)

遊矢(それで少しは遊星やクロウたちの助けになるかな?)

遊矢「わかったよ。 龍亞、龍可! 案内をお願いできる?」

龍亞「ガッテン!」

龍可「うん、それじゃあついてきて!」


――――――――――


ガヤガヤ


龍亞「ゆ、遊矢~っ! ムリムリ、そんな高いところで逆立ちなんかしたら落っこっちゃうって!」

龍可「だ、大丈夫なの?」


「あ、あんな高さまで……すごい!」「しかし風船の上とは、崩れやしないかね?」「お兄ちゃーん! 頑張ってー!」


遊矢「さ……さぁ紳士淑女の皆様方っ! こ、れより世紀の、ぉぉっ! クライマッ……っクスです!」 フラフラ

遊矢「みごとっ、とと……成功しまぁしたら、ご喝采! さ、3! 2ぃ! い……―――」 グラッ

龍亞「あ、危ない!」

龍可「きゃぁぁぁっ!」



バサッ


「空中で消えたぞ!」「お兄ちゃんが紙吹雪になっちゃった!」「じゃあ、彼はどこに?」


『―――ゼロでございます』 パァン


龍可「風船の中から消えたはずの遊矢が……!」

龍亞「うぉぉぉすっげー! これが世紀のエンタメ脱出劇だねっ!」

遊矢「 L a d i e s & g e n t l e m a n! これにて榊遊矢のエンタメショーは閉幕! それでは G o o d e v e n i n g!」 パチン


ワァァァァ!


「いいものを見せて貰ったよ」 チャリン

龍可「また見に来てね!」

「お兄ちゃん! これ、ボクの大事なカードあげる! 次も頑張ってね!」

龍亞「えっホント!? サンキュー、遊矢なら大事に使ってくれるよ!」

「なかなか洗練されたショーだった。 これは私からのほんの気持ちだ」 スッ

遊矢(え、こんなに!? オレが遊星にもらった額よりも……!)

遊矢「気持ちはありがたいのですが、流石に受け取れません」

「人の厚意を値切ってはいけない。 次の講演も期待してるよ」 スタスタ


龍亞「みてみて遊矢、こんなにカードいっぱい貰っちゃった! これだけあれば、ちょっとしたデッキが組めそうだよ!」 ドサッ

龍可「お捻りもこんなにたくさん、私たち大成功ね!」 ジャラッ

遊矢(でもよかった。 これでみんなの力になれるかな?)


龍亞「たっだいまー!」

龍可「お邪魔します、みんないる?」

クロウ「おう、龍亞に龍可じゃねーか。 ちょうどいいタイミングに帰ってきたな」

遊矢「く、クロウ!」

クロウ「……けっ、お前もいやがったのか。 アイツらに余計なこと吹き込んでねーだろうな?」

龍亞「そんな言い方しなくてもいいじゃんか! 遊矢は今日すっごく頑張ったんだぞ!」

龍可「そうよ、ジャックと違っていっぱい稼いできたんだから!」


ジャック「くしっ! まったく……また誰かが俺の伝説を謳っているのか」 ズズッ


遊矢「これ、少ないかもしれないけれど受け取ってくれ!」

クロウ「……なんだそりゃ」

遊矢「はした金なのはわかってる。 でもオレだってクロウたちの力になりたいんだ!」

遊矢「確かにオレがイリアステルって奴らの仲間じゃない保証にはならないけれど、これで少しは信頼してもらえればって―――」


クロウ「そういう問題じゃねえッ!!」 バンッ

遊矢「っ!?」 ビクッ

龍可「く、クロウ……?」


クロウ「いいか! 絆ってのはな、金を突っ込めば帰ってくる商品みてえなもんじゃねーんだよ!」

クロウ「お前は、オレたちの絆を値踏みしようとしたんだ! それを分かってんのかッ!!」 ガシッ

遊矢「お、オレはそんなつもりじゃ……」

龍亞「なんだよなんだよ! 遊矢は遊星やクロウのために一生懸命だったんだぞ!」

クロウ「一生懸命か。 ハッ! だったら何でも許して貰えると思ってるなら、そいつは大きな間違いだぜ!」

クロウ「本当の絆ってのは、一円たりとも金が紛れ込む余地なんてねえんだよ!」


龍可「そんな言い方……! クロウ、私も怒るわよ」

遊矢「いや龍可、もういいんだ」

龍亞「遊矢、どうしてさ!?」


遊矢「クロウ、お前の言うとおりだ。 オレは少し焦ってたのかもしれない」

遊矢「手っ取り早く絆を深める方法を探して、オレはつい分かりやすい金に飛びついてしまったんだ……」

龍可「遊矢……」

クロウ「けっ。 ガキが大人様の顔色伺って、一丁前に懐の工面なんかしてんじゃねえ」

クロウ「ソイツは遊矢、もうお前のモノだ。 だからソレは自分のために使いやがれ!」

遊矢「ああ、そうさせてもらうよ。 ……すまないクロウ」


龍亞「ぜんっぜん分かんねーよ、クロウも遊矢も! なんで二人とも素直にならないのさ?」

龍可「はいはい、龍亞もきっと大人になれば分かるかもね」


遊矢(クロウ、やっぱりこっちの世界でもしっかりしているんだな)

遊矢(とはいえ折角集めたお金を捨てるわけにもいかないし、何か買おっかな……)


遊矢「あれ?」

遊矢(オレ、いつの間にか普通になってる? みんなを置いて一人飛ばされた世界で、何を呑気に買い物なんか―――) ドンッ

「きゃっ! ごめんなさい、怪我はない?」 バササッ

遊矢「うわっ! こちらこそすみません、あぁ買い物袋が……あれ」

遊矢(このロゴマーク、たしかチーム5D'sの?)

遊矢「もしかして、十六夜アキさんですか?」

アキ「ええ、そうよ。 あなたは?」


―――――――――…


遊矢「じゃあ、今晩はアキさんが?」

アキ「そっ。 あいつらほんと悪食なのよ? ほっといたら何食べてるか分かったもんじゃないわ」

アキ「とくに遊星は、私が言わないとカップ麺ばかり食べてるんだから……」 ブツブツ

遊矢「……アキさんってその、遊星のことが」

アキ「な、何を言っているのかしら? 遊星とは、何もな……いわけでもないけれど、ええっと……好きとかそういうのじゃなくて」

アキ「そう、絆よ。 私たちチーム5D'sはお互いを信じて支え合っているの」 コホン

遊矢(また絆、か……) チク


遊矢(この人たちは、お互いの信頼の上にチーム5D'sという結束がある)

遊矢(けど、オレたちランサーズはまるで逆だ。 まずランサーズがあって、その下にメンバーがいる)

遊矢(オレはランサーズのために戦ってきたことはあるけれど、お互いのために何かしたことなんてあったっけ……?)

アキ「どうしたの? 着いたわよ」

遊矢「……あ。 荷物はオレが」 スッ

アキ「ありがとう、助かるわ」


アキ「さて、と! 腕が鳴るわねっ」 ググッ

遊矢「アキさんって料理上手なんですか?」

アキ「ふふっ。 前まではウチの使用人が料理を作ってたのだけれど、今はみんなのために毎日料理の勉強をしてるのよ?」


遊矢「ジャガイモとニンジン、皮を剥かずにそのまま!?」

アキ「あら、駄目だったかしら?」 ボチャン


遊矢「アキさん、吹きこぼれてるって!」 ブシュ

アキ「わ、わざとに決まってるじゃない」

遊矢「なんで!?」


遊矢「アキ! 圧力鍋は途中でフタを取っちゃだめだ!」

アキ「~~っ、いちいち横から口を挟まないで!」 ボカァァァン

遊矢「」



アキ「ごめんなさい」

遊矢「寿命が縮むかと思ったよ……」


アキ「遊矢は以前に料理をしたことがあるの?」

遊矢「オレもそんなに料理はしないけど、むかし料理人の決闘者とデュエルしたことがあってね」 トントン

遊矢「完璧な料理なんてない、工夫し続けることが大事なんだってデュエルの中で学んだんだ」 ジュワ


アキ「へぇ。 いい縁があったのね」

遊矢「ああ、そう考えたらエンタメも料理と似てるって思ってさ。 ミッチー……そいつのレシピを研究してた時もあったんだよ」

アキ「……それだけ? それでこの料理の山を作れるように?」

遊矢「手先は小さいときから器用でね。 このくらい朝飯前さ!」

アキ(納得いかないわ……) ズーン

遊矢「?」



シーン


クロウ「……みんな揃ってるな」

龍亞「ううっ、オレちょっとお腹の調子が」 ダラダラ

ジャック「逃さんぞ龍亞。 どのみちアキの手料理を食えば、貴様の腹の虫などうめき声すら上げれぬようになる」 ガシッ

ブルーノ「まあまあ、余ったモノは遊星が喜んで食べてくれるそうだよ」

遊星「そういえばブルーノ、新しいDホイールの耐衝撃試験をまだ試していなかったな」

龍可(アキさんっ……! 早く来てぇっ……!) カタカタ


アキ「おまたせ、みんないるわね?」

龍亞「あっ、あったり前さ! ……って、なんで遊矢も一緒にいるの?」

アキ「今日は彼が私の料理を手伝ってくれたのよ」

遊矢「手伝ったというか、なんというか……はは」


ジャック「貴様、アキの料理にかこつけて毒でも混ぜてはないだろうな?」

クロウ「元から毒みてえなもんだろ……」 ボソ

アキ「聞こえたわよクロウ?」

遊矢「だ、大丈夫だって! オレもみんなと一緒に食べるから!」

遊星「それで遊矢、今日の夕食はどこに?」


遊矢「それではお集りの皆様方、こちらのサービスワゴンをご覧ください!」 ガララッ

龍亞「スッゲー! まるでホテルみたいだ!」

龍可(きっと、お昼間のお捻りで取り寄せたのね)

クロウ「信じらんねぇ……料理が運ばれてきやがる!」

アキ「クロウ、あとで説教」

遊矢「それではごゆるりとディナーをご堪能あれ!」 パチン


龍亞「う、ウメーッ! 龍可もこのオムカレー食べてみろよ!」 パク

龍可「龍亞? はしたないから口に物を入れて喋らないの。 うん、このビシソワーズもおいしい!」

ジャック「ふん! こんなものは見た目だけだ。 このオレの舌を唸らせるにはほど遠い!」 ガツガツ

クロウ「ならオレの皿から取ってんじゃねえよこの野郎!」

ブルーノ「壮観だなぁ、これだけ作るの大変だったんじゃない?」

遊矢「そのぶん作りがいがあったよ。 よかった、みんな気に入ってくれて」


アキ「ゆ、遊星? その……どうかしら」 ソワソワ

遊星「ああ、うまいよ。 この茶碗蒸しはアキが作ったんだろう?」

アキ「! そうよ、そのプリンだけは遊矢の手を借りてないわ。 よく分かったわね」 パァァ

遊星「当然だ。 俺がアキのテロ売り」

遊星「手料理を間違えるはずがないだろう」 ドサァァ

龍亞「遊星がまた倒れた!」

アキ「ゆ、遊星!? しっかりして、遊星ーッ!」


クロウ「夫婦漫才は犬も食わねえな」

遊矢「うん……」



遊矢「遊星、いる?」

ブルーノ「遊星はまだ寝込んでるよ。 デュエルディスクの様子が気になるのかい?」

遊矢「ああ。 どのくらいで直りそうかな?」

ブルーノ「そうだね……一応弁解しておくと、ボクらも付きっ切りで修理に当たってるわけじゃないんだ」 ジジッ

ブルーノ「他のお客さんからの依頼やDホイールの調整の合間の時間をつぎ込んだとしても、だいたい一週間ぐらいかな」

遊矢「そんなに!?」

ブルーノ「ああいや、もちろん全力は尽くすよ? こんなお宝は生涯お目にかかれないだろうしね!」 カチャ

ブルーノ「そっか。 キミはそこまで仲間たちのことが心配なんだ」

遊矢「そ、れは……」

ブルーノ「どうかした?」


遊矢(たしかに権現坂や沢渡、零羅たちは大事な仲間だ。 だけど、それってランサーズの使命のためだからじゃないのか?)

遊矢(チーム5D'sのような信頼関係じゃなく、ひょっとして柚子を助けるための駒としてみんなを心配しているのだとしたら―――)

遊矢「……オレは案外、薄情な人間なのかもしれないな」 ポツリ


ブルーノ「そんなことはない……とは言わないよ。 ヒトは誰しも心に譲れないものを持っている」

ブルーノ「そのために薄情にすらなれないなんて、それはもう機械と何も変わらないんじゃないかな?」 カタン

遊矢「それでもオレは……!」

ブルーノ「でもね、今日キミがみんなのために行動した姿を見て」

ブルーノ「ボクはキミのことを薄情者だって思ったことは一度もないよ?」 ポン

遊矢「ブルーノ……」

ブルーノ「さ、もう夜も深い。 子供は寝る時間だ」

遊矢「……うん。 おやすみ」


遊矢(それでも……やっぱり違うんだ。 オレはそんなに愛想があるでもないし、心が強いわけでもない)

遊矢(本当は弱くて、浅ましくて。 一人じゃ何もできないような卑怯なヤツなんだよ……!) グッ


クロウ「遊矢、やっぱりブルーノの所に行ってたか」

遊矢「クロウ、オレを待っていたのか?」

クロウ「話ってほど長いモノじゃねえ。 ただ少し言いてえことがあってよ」


クロウ「昼間は、その……悪かったよ。 オレも言い過ぎた節があったかもしれねえ」

遊矢「そんなことはない。 クロウにはクロウの考えがあった、そこへ無理に自分の意見を押し付けたオレに非があったよ」

クロウ「はぁ、調子狂うぜ……まあなんだ。 まだお前を完全に信用したワケじゃねえがな」

クロウ「晩飯は確かにうまかった。 話ってのはそんだけだ」

遊矢「えっと、本当にそれだけなのか?」

クロウ「またアキの当番になったら頼むぜ? じゃあな」 ポン


遊矢(……最初からこうすればよかったのか。 なんだかすごく遠回りした気分だ)

遊矢(でも、次のアキが当番になる日は一週間後。 その頃にはオレはもう―――)

遊矢「なんか、今日はすごく疲れたな……もう寝よう」


――――――
―――

ここまで

乙ですー



遊矢「おはよう……あれ、朝はジャック一人だけ?」

ジャック「遊星やクロウは仕事、龍亞と龍可の二人はデュエルスクールだ。 アキは知らん」

遊矢「そっか。 ジャックは?」

ジャック「情報収集だ」 ピッ

遊矢(テレビ見てくつろいでるだけじゃ……)


『続いてのニュースです。 近日のジャック・アトラス誤認逮捕の件により、映画「ロード・オブ・ザ・キング」の続編決定が―――』


ジャック「ふん! くだらぬ報道ばかり流しおって」 ピッ

遊矢「ジャックはこれからどうするんだ?」

ジャック「気安く俺の名を呼ぶな、馴れ馴れしい。 野次馬どもを追い払ったら新型エンジンの試運転に向かう」

ジャック「そうだ、貴様もついてくるがいい」

遊矢「いいのか? 正直、ジャックには警戒されてもおかしくはないと思うんだけれど……」

ジャック「うぬぼれるなよ遊矢。 俺の興味を引いたのは貴様自身などではない、貴様の語る別の世界の俺にだ」


深影「アトラス様、お出迎えに参りました」 ガチャ

カーリー「おはようジャック! ……ってその子は」

ステファニー「もしかして、ジャックの隠し子!?」

ジャック「ええい、朝から騒々しいぞ貴様ら! コイツが俺の子供など年齢的にありえんだろう!」

遊矢「ジャック、この人たちは……」

ジャック「ただの有象無象だ。 捨ておけ」


深影「聞いたかしら? 所詮あなた達は私と違ってアトラス様の目にすら映っていないのよ」 フフン

カーリー「はあ? ジャックが言ってるのはアナタの事なんだから!」

ステファニー「ジャックの視界に入ってなくても、私は朝からジャックの顔を見れて幸せ~」

ジャック「やかましいぞ! 女ども、この俺の前を阻むというつもりか!」

遊矢(こっちの世界のジャックはすごみがないなぁ)


ジャック「ラチが明かぬ。 遊矢、俺のDホイールの後ろに乗れ」

遊矢「う、うん。 わかったよ」

カーリー「ちょっと待ってジャック! せっかく耳寄りな噂を持ってきたんだから!」

カーリー「最近、日が暮れてくると鬼火がでるらしくって。 なんとあの地縛神の亡霊だって言われているんだから!」

ジャック「貴様の戯言に耳を貸した己が憎い。 地縛神などもはやこの地上のどこにも存在せぬわ!」

遊矢「ジャック、そんな急に加速したら……うわぁっ!?」 ガシッ

深影「アトラス様ぁ!」

ステファニー「ああん、ジャックぅ~!」


ジャック「まったく、毎度よく飽きもしない連中だ」

遊矢「さっきの話なんだけど……地縛神って?」

ジャック「その話か。 いいだろう、ドライブの片手間話に丁度いい」

ジャック「あれは、俺が遊星に負けたフォーチュン・カップの後に起きた出来事だ―――」



ジャック「あの事件は、俺が絆から逃れる術はないということを認めるきっかけとなった」

遊矢「そうか。 この世界のジャックはシグナーの絆があったから、遊星たちと一緒にいるんだな」

ジャック「シグナーの絆だけではない。 どんなに足掻こうと、ヒトは簡単に一人にはなれん!」

ジャック「……この話はもういいだろう。 次は貴様が話す番だ」

遊矢「ああ。 オレたちのいた世界、シンクロ次元では貧富の格差が広がっていて―――」


ジャック「なるほど。 ならばソイツはやはり俺であって俺ではない」

遊矢「どういうことだよ?」

ジャック「俺にも、貴様のいうキングであった時代が存在していたということだ」

ジャック「俺はもはやキングではないが、それを失ったとき同時に新たな力を手に入れた。 それが絆だ」

遊矢(……また、絆) チク


ジャック「以前の俺は一人でしか立てぬ男だった。 孤高に依存していたともいえる」

ジャック「だが遊星を始めとしたお節介どもは、俺を一人でも立てる男に変えたのだ!」

遊矢「それって、何がどう違うっていうんだよ?」

ジャック「ふん、貴様の理解の浅さには呆れるな。 己の力を過信することを良しとせず、仲間の力を受け入れたということだ」

ジャック「忌々しいことに、それは過去の俺自身を模倣したゴーストとの闘いに終止符を打つ決まり手となった」

遊矢「ゴースト……前にジャックが言ってた、イリアステルの仲間だっけ」

ジャック「仲間ではない。 奴らはただの機械で作られた尖兵、雑魚に過ぎん」

ジャック「だが遊矢、貴様の話に登場するジャック・アトラスはまるでゴーストそのものだな」


遊矢「それじゃあ、オレが戦ったジャックよりも今のジャックの方が強いって言いたいのか?」

ジャック「当然だろう? 絆のなんたるかも知らぬ亡霊に勝っただけのお前に、この俺が負ける道理などない!」

遊矢「そこまで……! ならデュエルディスクが直ったら、元の世界に帰る前にお前とデュエルしてやる!」

ジャック「ふっ、ははははは! この俺とデュエルだと? お前がか?」

ジャック「いいだろう、この世界で過ごす最後の思い出が、敗北の屈辱にならないことをせいぜい祈っているがいい!」

ジャック「その時まで、少しは楽しみに待っておいてやろう」



ゴォォッ


遊矢「な、なんだ? あのDホイールのシルエットは!?」

ジャック「ぬうっ! 貴様、あのときの!」

謎のDホイーラー「用があるのはジャック・アトラス、キミではない」

Dホイーラー「榊遊矢、キミが不動遊星の障害になりえる存在かテストを受けてもらう!」

遊矢「なんだって!?」

ジャック「この俺を差し置いて遊矢だと!? 腑抜けめ、貴様の相手はこの俺だ!」


Dホイーラー「ジャック・アトラス、キミも疑っているんじゃないのか? 榊遊矢が本当にイリアステルと無関係なのか」

Dホイーラー「キミが彼を連れ出したのも、それを確かめることが目的だったはずだろう?」

ジャック「……!」

遊矢「ジャック、それは本当なのか……?」


ジャック「やはり俺は嘘がつけん。 すべて事実だ」

ジャック「だが遊矢と言葉を交わして分かった、やはりコイツはイリアステルの一味ではない!」

Dホイーラー「その答えはデュエルの中にある。 彼の持つ不可解な力が我々の脅威となり得ない確証はどこにもない」

Dホイーラー「榊遊矢! キミが彼らと真の信頼を築くためにも、キミは私とのライディングデュエルを受けなければならない!」


遊矢「―――わかった。 そのデュエル、受けて立つ!」

ジャック「貴様にホイール・オブ・フォーチュンの運転は任せられん。 お前はデュエルだけに集中していろ!」

遊矢「ありがとう、ジャック!」

Dホイーラー「さあ遊矢、私に異世界の力を見せてみろ! スピードワールド2、発動!」

『デュエルモードオン オートパイロットスタンバイ』


遊矢・Dホイーラー「「デュエルッ!!」」


Dホイーラー「先攻は譲る! 全力でかかってこい!」

遊矢「ならオレのターンだ! オレは手札から《星読みの魔術師》《時読みの魔術師》を魔法カード扱いで発動!」

ジャック「何をしている、愚か者が!!」

遊矢「えっ?」

Dホイーラー「―――スピードワールド2の効果で、キミは発動した魔法カード一枚につき2000ポイントのペナルティを受ける」

Dホイーラー「すでにキミの敗北だ。 ……私の見込み違いだったようだな」

遊矢「そ、んな―――うわぁぁぁぁぁっ!!」LP4000→0


ジャック「こ……このような茶番を見るために俺はここに来たのではない!」

ジャック「興が削がれた。 貴様はここから自分の足で戻ってくるがいい!」 ドサッ

遊矢「置いていかないでくれジャック! そんなの知らなかったんだってぇ!」

Dホイーラー(ペンデュラムカード……スピードワールドの制限上、ライディングデュエルで猛威を振るうことはない、か)

Dホイーラー(しかし、ワザと敗北したという線も捨てきれない。 またしばらく様子見としよう)


Dホイーラー「乗れ。 私が近場まで送ってやろう」

遊矢「いいのか? なんだか知らないけれどありがとう!」



遊矢(つい頼んじゃったけど、この人がイリアステルじゃないって保障もないんだよな……)

遊矢「あのさ、お前はいったい何者なんだ?」

Dホイーラー「キミが敵である確証が掴めない以上、私の目的をたやすく話すことはできない」

Dホイーラー「それにその質問は、私からもキミに聞く必要があるな」


遊矢「オレは……ランサーズの一員として、アカデミアが企む次元戦争を止めに来たんだ」

遊矢「この世界に飛ばされたのは偶然の事故で、ディスクが直ったらすぐにでも元の世界に帰るつもりだよ」

Dホイーラー「なるほど、キミにも使命があるということか」

遊矢「そう、なるのかもしれない」

Dホイーラー「かもしれない、とは?」


遊矢「……わからないんだ。 オレは本当にランサーズとしての役目を果たしたいと思っているのか」

遊矢「オレは攫われた柚子を助けたい。 でもそのためには、プロフェッサーの野望を止めなくちゃいけないんだ」

遊矢「それでもアカデミアのようなやり方は許せないし、だから奴らとは違うデュエルでみんなを笑顔にしないとダメだ……!」

Dホイーラー「したい、しなくてはならない……か」


Dホイーラー「なるほど、キミは最初から使命感など持ち合わせてはいないということか」

遊矢「な!? そんなことはない、オレはランサーズの一員として―――」

Dホイーラー「キミに欠けているのは『すべき』という考え方だ」


Dホイーラー「目的のために思考を巡らせ、ときには課せられた責務そのものに疑問を持つ。 それでもなお果たそうとする意志こそが使命だ」

Dホイーラー「キミの心が揺れているのは、脆く危うい動機の上に立っているからだろう?」

遊矢「違う! アカデミアのやり方は間違っている、だからオレたちランサーズが正しいに決まっているんだ!」

遊矢「プロフェッサーは倒すべき相手で、そのためにオレはランサーズであるべきなんだ……!」


Dホイーラー「榊遊矢、キミは一体何と戦っている?」

遊矢「そんなの決まっている。 他の次元を侵略し、悪事を働くアカデミアだ!」

Dホイーラー「そう。 キミの即興で作られた使命感は悪を懲らしめる正義の立場という、分かりやすい勧善懲悪の上に成り立っている」

Dホイーラー「だが遊矢、我々が真に戦うべき相手は理不尽だ」

遊矢「理不尽、だって?」


Dホイーラー「悪なき戦いに身を投じる理不尽、敗者の未来を踏み越える理不尽、我が身のために誰かの明日を奪う理不尽」

Dホイーラー「理不尽の先にある未来を掴むため、我々は理想と現実の二律背反に立ち向かわなくてはならない」

遊矢「……やっぱり、お前の言ってることはオレにはよくわからない」

Dホイーラー「キミが成すべき道に迷ったとき、再びこの話を思い出すことがあるかもしれないな」


Dホイーラー「さあ、ここからは徒歩で帰れる距離だ。 キミは早く仲間の元へ戻れ」

遊矢「オレをタダで返してもいいのか? もしかすれば、イリアステルの一味かもしれないんだろ?」

Dホイーラー「キミがイリアステルだとして、そのような軽い信念では彼らの障害には到底なり得ないと判断したまでのこと」

Dホイーラー「意志を伴わない力は弱い。 榊遊矢、私や彼らに挑むのならば己に使命を課せ!」


遊矢(使命、オレにそんなものは……ただ柚子を助けたいだけじゃダメなのか?)



ジャック「―――ということがあった。 アイツはライディングデュエルではまるで役に立たん」

遊星「そうか。 WRGPでも異世界の力を借りられないかと考えていたのだが、どうやら俺たちの戦いには相性が悪いらしい」

ジャック「それどころの話ではない! カード効果もロクに読まず自滅するなど、一体何を考えているのやら!」

クロウ「けっこう似た者同士じゃねえの?」

ジャック「この俺を奴などと一緒にするな!」


遊矢「ただいま~……」 ガチャ

クロウ「ん? ジャックに置き去りにされたワリには早くねえか?」

ジャック「ふん! 大方、あの謎のDホイーラーに送り返されたのだろう。 情けない奴だ」

クロウ「お前が言うんじゃねえ、大人げの欠片も残ってねえバカタレがよ」

遊星「遊矢、奴と一緒にいて何か聞いたか?」

遊矢「いや、とくに何も……遊星たちの敵じゃないのかな?」

ジャック「それが分かっていればここまで気苦労はしておらん。 食えない奴だ」


遊矢「あのさ、遊星たちは何のために戦っているんだ?」


クロウ「ああ? そんなの、ハタ迷惑なイカレ野郎どもをぶっ飛ばすために決まってるじゃねえか!」

ジャック「この街がどうなろうと俺には関係ないが、俺たちの前を走る小蝿は全力で叩き潰すまで!」

遊星「俺は正直、彼らの考えが痛いほど分かる。 未来をその目で見てきたからこその苦渋の決断なのだろう」

遊星「だが俺はこのネオ童実野シティを、みんなの住むこの街を滅ぼされるわけにはいかない」

遊星「彼らには彼らなりの正しさがあるように、俺たちにも決して譲れないモノがあるということだ」


遊矢(……そっか。 みんな色々と考えているんだな)

遊矢(流されるまま、考えてすらないのはオレぐらいか)

クロウ「どうした? ジャックやあの野郎に変なことでも吹き込まれたか?」

遊矢「なんでもないんだ。 ちょっと気になっただけで」



遊矢(信頼、絆、使命……ランサーズにいた頃はそんなの意識すらしてなかったけれど)

遊矢(デニスに裏切られ、次元移動装置の事故でバラバラになり、柚子を助けることができない今になってようやく気付いた)

遊矢(みんな、オレが持っていないモノだ)

遊矢(そしてジャックやあのDホイーラーが言うには、そのためにオレは彼らに勝てないらしい)


遊矢(オレが弱い? そんなことはない。 オレはいくつもの場面を超えて強くなったはずなんだ!) ギュッ

遊矢(でも何でだろう……あの人たちといると、オレはちっとも強くなった気がしない)

遊矢(これ以上彼らと関われば、オレは本当に弱くなってしまいそうだ―――)


――――――
―――

ここまで


何時ものゴッズの日常思い出すな、ペンデュラムって魔法カード扱いでしたね
謎のDホイーラー正体と結末知ってるとその言葉の意味は心に響く…遊戯王の主人公、敵ボスは強固な意志や使命持ってたの思い出した


乙ー

エラーダメージであれって思ったけどPカードは魔法扱いなんだっけ...
その設定忘れてたわ...



クロウ「なんだって? そりゃ本当か?」

遊星「ああ、遊矢のデュエルディスクはすでに修理が完了した。 あとは彼に渡すだけだ」

ブルーノ「やっぱり彼を拾って正解だったね。 機関部のモーメントと仮想質量を連動させることで、Dホイールが十数パーセントも軽くなった」

ブルーノ「このまま彼を元の世界に返すのも惜しいけれど、最近ホームシック気味で気になっていてね。 修理を急いだんだ」

ジャック「たかだか一週間程度でヤワな奴め。 それを渡すのはいつの予定だ?」

アキ「今日の夕方にみんなで送別会を開くつもりなの。 ディスクはそのときよ」


遊矢「ふぁぁ、おはよう……珍しいな、朝からみんな揃ってるなんて」

アキ「おはよう遊矢。 私たちは少しチームで準備があるのよ」

遊矢「そうなんだ、龍亞や龍可たちは?」

クロウ「もうすぐ来るはずだが……おっと、噂をすればなんとやらってヤツだ」 ガチャ

龍亞「遊星、遊矢! オレたちに用事ってなになに?」

龍可「おはようみんな。 今日はなにかあったの?」


遊星「二人とも来てくれたか。 ジャックがお前たちに渡したいものがあるらしい」

龍亞「ええっ、ジャックがオレたちにプレゼント!? ……槍でも降るんじゃないの?」 ジロ

ジャック「ええい、やかましい! 減らず口を叩く生意気な子供にこいつはやらんぞ?」 ピラ


遊矢「それ、もしかして遊園地のチケット?」

龍可「どうしてジャックが三枚も持ってるの?」

ジャック「あの女どもが一枚ずつ押し付けてきたのでな。 捨てるのも面倒だから取っておいた」

ジャック「このガレージは夕方まで俺たちが使っているから、貴様らはこれで楽しんでくるがいい」

龍亞「うわ~い! ありがとうジャック、たまにはやるじゃん!」

遊矢(あの人たちも不憫だなぁ……)



龍亞「ねえねえ遊矢、まずはどこから行くの?」

遊矢「そうだなぁ、龍亞たちの好きなところからでいいよ。 龍可は?」

龍可「私はジェットコースターがいいな。 知ってる? あれジャックも乗ったことがあるのよ」

龍亞「ええっ、や……やめようよ龍可。 ホラ、けっこう並んでるみたいだしさ?」

龍可「怖がらないの龍亞、お兄ちゃんでしょ?」 グイ

龍亞「び、ビビってなんかないぞ! オレはただ、龍可が心配なだけだってば!」

遊矢「はいはい、じゃあオレは並んでる間に軽くつまむ物でも買ってくるよ」


龍可「あははっ! まるで遊星のDホイールみたいに速かったね、龍亞! ……龍亞?」

龍亞「」 チーン

遊矢「動力源がモーメントだなんて、あんなの絶対おかしい……」 フラフラ



遊星役「いけ、スターダスト・ドラゴン! スターダストミラージュ!!」

龍亞「いっけー遊星ぇー!」

ジャック役「俺も加勢するぞ! アブソリュート・パワーフォース!!」

龍可「頑張って、ジャック!」

ゴドウィン役「ば、バカなぁぁぁ! 我が5000年の野望がこんなところでぇぇぇ!」 ボシュゥゥ

遊矢(当事者でも面白いんだな……)


お化け『ヒヒヒッ……ボチテンシヨンタイ……』 ズズズ

幽霊『クケケケ……レドックスタイダルブラスターテンペストォ……』 ズォォ

人魂『ゲヒヒヒ……レギュレーションハヘンコウナシッ……』 ゴゴゴ

龍亞「うわぁぁぁ! ゆゆゆ遊矢、早く進んでってばぁ~~!」 ビクビク

龍可「あわわわ……怖くなんかない、怖くなんかないんだからぁ……!」 カタカタ

遊矢「そんなにしがみつかれると歩き辛いってば」

龍亞・龍可「だって~~……」


龍可「いいって二人とも、アイスを落とした私が悪いんだから……」

遊矢「でもすぐ近くで売ってるし、買いなおした方がいいんじゃないか?」

龍亞「オレのやるよ龍可。 ちょっとかじってみたら、正直あんまり好きじゃない味だったし」 スッ

龍可「え? でもこれ……」

龍亞「ほら、ぐずぐずしてたらまた溶けちゃうぞ?」

龍可「ううん、ありがと龍亞っ」 パク



「なんだとコラァ! こいつは俺が先に声をかけたんだぞ!」

「難癖をつけるなよ三流が、ならデュエルでカタをつけてやる!」

「やめて! 私のために争わないで二人とも!」


龍亞「なになに? なんの騒ぎ?」

龍可「あれを見て龍亞、アトラクションの上! あの二人が、女の人を巡って言い争ってるみたい」

遊矢「あんなところでデュエルを……止めさせないと!」


龍亞「え、なんで?」 キョトン

龍可「それに止めるって、どうやって?」

遊矢「デュエルは争いの道具じゃない! だから二人のデュエルに乱入してでも、オレのエンタメデュエルで……!」 ハッ

遊矢(そうだ、まだオレのデュエルディスクは―――)


龍亞「うーん……遊矢の言ってることはよくわかんないけど、決闘者なら決着はデュエルでつけるべきじゃないかな?」

龍可「それに二人の真剣なデュエルに、水を差すのはダメだと思うの」

遊矢「そんな……! 龍亞も龍可も、あの二人を見て何とも思わないのか?」

龍亞「そう言われたってなぁ……あ、龍可はどっちが勝つと思う?」

龍可「私は手前の人かな。 そろそろデュエルが始まるみたいよ!」


「「デュエルッ!」」


遊矢(こんな時に、オレは何もできないだなんて……!) グッ



「アトミック・スクラップ・ドラゴンでダイレクトアタックだぁぁぁ!!」

「うわぁぁぁぁぁッ!!」 ビーッ


龍亞「えーっ!? せっかくオレが応援してたのに、もっと頑張ってくれよなー!」

龍可「ふふっ、龍亞もまだまだね」

遊矢(くっ! オレのエンタメデュエルなら、二人を笑顔にできたのに……!)


「へっ、お前があの時プレイングミスしてくれたおかげで助かったぜ!」

「お前こそあのカードよりアレを優先するなんて、デッキ構築がまだまだ甘いんじゃないのか?」

「んなっ! い、言われてみれば……!」

「くッ! その手があったか……!」


「「ならもう一度デュエルだッ!!」」

「あのー、私は?」


龍亞「あれっ、なんかもう一回デュエルするみたいだ」

龍可「はぁ……男の子ってほんと負けず嫌いなんだから」

遊矢(……オレのデュエルじゃなくても、二人とも笑顔に?) チク

遊矢(なんでだよ。 さっきまで二人ともいがみ合ってたじゃないか)

遊矢(こんなのおかしい、間違ってるはずなんだ! だってそうじゃないと、オレは―――!)


龍可「遊矢、どうかしたの?」 ジッ

遊矢「え? あ、ごめん。 日も暮れてきたし、最後はみんなで観覧車に乗ろう!」

龍亞「いいじゃんそれ! あとで遊星たちに、ネオ童実野シティを上から撮った写真みせてやろーぜ!」

遊矢「……うん。 そうだな、それがいいや」

龍可「…………」


龍亞「うぉぉぉたっけぇーっ! あっち見てよ龍可、遊矢! ここからネオダイダロスブリッジがはっきり見えるんだぜ!」

遊矢「ああ、そうだな。 夕日でキラキラしてて、すごく綺麗だ」

遊矢「このネオ童実野シティは笑顔で溢れている。 ここに来て、みんなと出会って本当に良かったよ」

龍亞「だろ? チーム5D'sのみんなもオレたちも、みんなこの街が大好きなんだ!」

遊矢(そうだ、分かっていたことじゃないか)

遊矢(オレのデュエルなんかなくてもみんなが笑顔なら、もうオレはこの世界に必要なんかないってことぐらい―――)



龍可「遊矢、どうして本当のことを言ってくれないの?」

遊矢「―――え、?」


遊矢「な……にを言ってるんだ龍可? オレは、今まで一つも嘘なんかついてないさ」

龍可「ううん、あなたは出会った時からずっと嘘をついてる。 たとえそれが、私たちを傷つけるものじゃなくても」

龍亞「る、龍可? どうしちゃったのさ急に……それに遊矢が嘘つきってなんだよ?」


遊矢「そっか、クロウからにでも聞いたのかな……確かにオレはこの世界の人間じゃない」

遊矢「でもそれはキミたちの敵と誤解されないためのとっさの嘘で、いつか打ち明けようと思っていたんだ。 ごめん」

龍可「違う、そういうことじゃないの」

龍可「遊矢は何を考えて、何がしたいの?」

龍可「あなたが悩んでいることは、仲間の私たちにも言えないこと?」

遊矢「オレ、は……」

龍可「私の目を見て遊矢」 ジッ

遊矢(―――心が、見透かされる) ドクン


遊矢「お……オレはランサーズとして、プロフェッサーの野望を打ち砕かないといけないんだ!」

龍可「本当に?」

遊矢「ち、違う。 アカデミアは間違ってる、だからオレが止めなきゃ……!」

龍可「それは遊矢の本心?」

遊矢「いやそうじゃない、オレのデュエルでみんなに笑顔を……」

龍可「それはあなた自身の言葉なの?」

遊矢「――――――」


龍可「ねえ遊矢、あなたはとても心の優しい人なんだと思う」

龍可「だから誰かを傷つけるのが怖くて、つい耳障りのいい言葉を使ってしまっているの」

遊矢(そうだ、オレは本音でぶつかるのが怖い卑怯者だ)

龍可「でもね、負の心を持たない人なんていないわ」

龍可「その人の良い所も悪い部分もみんな受け入れる。 それが絆だって遊星やみんなは教えてくれた」

遊矢(そんな絆、オレにはなかった!)

龍可「教えて遊矢、あなたは何を考えているの?」

遊矢(オレは―――!)




遊矢「本当はランサーズなんかどうだっていい!!」


遊矢(ああ……)


遊矢「アカデミアなんかオレの知ったことじゃない!」

遊矢(止まらない)


遊矢「オレはただアイツと、柚子と一緒にいたいだけなんだ!!」

遊矢(おしまいだ)


遊矢「他次元を救う? 世界の英雄だって? そんなことのためにランサーズに加わったワケじゃないッ!」

遊矢(こんなのはオレじゃない)


遊矢「アユ、フトシ、タツヤ、塾長! それから父さんや母さん……! オレはただ、みんなでいつまでも普通に暮らしたいだけなんだ!」

遊矢「なのになんでこうなっちゃうんだ……どうしてオレばかりこんな目にあわなくちゃいけない!?」

遊矢(どうか幻滅してくれ)


龍亞「……遊矢はさ、たぶんすっごく弱いと思う」

遊矢「柚子を助けられる強さだけあれば、オレはそれで……!」

龍亞「ううん、弱いことは悪いことじゃないよ。 たとえば遊星は強く見えるけれど、いまだにゼロ・リバースのことを引きずってんだ」

龍亞「オレだって遊星たちと龍可、どっちか選べっていわれたら……」 チラ

龍可「龍亞……」


龍亞「オレたちはみんな弱いよ。 でも今まで戦ってきたヤツらはみんなスゲー強かった」

龍亞「強いから、一人で何でもできちゃうから仲間を頼らなかった。 だから今までオレたちは勝ってきたんだ」

龍亞「あのアキ姉ちゃんやジャックだって昔はすっごく強かったんだぜ! でも遊星に負けて、みんな弱くなって絆を手に入れたんだ!」

龍亞「でも遊矢はさ……なんか、強くなろうと無理してる気がするんだよね」

遊矢「そんな、ことは……」


龍可「強くならなくてもいいの」 ギュ

龍可「あなたは弱いままでいい……ありのままの自分を、私たちは拒まないわ」

龍亞「そうだよ! オレたちはみんな弱いけれど、絆さえあればどんなヤツにだって負けないもんね!」

龍亞「だからさ遊矢、そんなに自分を責めないでくれよ……」


遊矢「――――――ッ!!」 バッ

龍亞「っ! 遊矢、なんでさ!?」

遊矢「キミたちはオレから見て、もう十分強いじゃないか!!」 ダッ

龍可「待って遊矢、どこ行くの!?」


龍可「ごめん……私のせいだね、龍亞……」 シュン

龍亞「そんなことない! 早く遊矢を追わないと、龍可はここで待っててよ!」 タタッ


遊矢(オレは最低だ……! 子供みたいに逆切れしたあげく、逃げ出して!) ダダッ

遊矢(でもアレを他人に知られてしまった。 もうオレに元の世界に帰る資格なんて―――)

遊矢(この世界でもオレの居場所なんてなさそうだ……ははっ、それじゃあどこにいこう?) ピタッ

遊矢「……帰りたいなぁ」

遊矢「どこにだっけ」

遊矢「まあいっか……」 フラフラ


遊矢(ここは……ネオ童実野公園か。 なんか街灯も月もぼやけて変な感じだ)

遊矢(あ。 泣いてるのかオレ) ゴシ

遊矢「はは……情けなすぎるだろ」

遊矢(……疲れた) ドサ



ハーモニカの音『―――♪ ―――♪』


遊矢(誰か……いるのか?)


「よう、いかにも満足し足りねえって顔をしているな」

遊矢「……オレに何か?」

鬼柳「怪しいもんじゃねえ……つっても説得力なんざねえか。 俺は鬼柳京介、近町の町長をしている」

鬼柳「書類の届け出だか面倒な仕事に一息ついたところで、友人から探し物を頼まれていてな」

遊矢(鬼柳、京介……? どこかで聞いたような)

鬼柳「ところでお前、夜の公園で一人泣きとは尋常じゃねえな。 ダチとでもケンカでもしたか?」

遊矢「そんなんじゃない、ただ……オレは自分の弱さが恥ずかしくなったんだ」

鬼柳「なら、そいつを話せば少しは満足するんじゃねえか? 袖振り合うも他生の縁だ、遠慮はいらねえ。 話してみな」

満足さん来た!



遊矢「龍亞や龍可たちは何も悪くないんだ。 オレが彼らの絆を受け入れるほど、心が強くなかったことが原因で……」

鬼柳「なるほど。 今のお前は何にもねえ空っぽの状態ってワケか」

鬼柳「だがな遊矢、お前はまだ何も成し遂げちゃいねえ。 そこでくたばっちまうにはまだ早いと思わねえか?」

遊矢「鬼柳はオレじゃないからそんなことが言えるんだ……もうオレには何かをする勇気なんて残ってないよ」

遊矢「きっと勇気は絆が与えてくれるものなんだ。 でもオレには、その絆を誰とも結べなかった」

遊矢「もうオレには何にもないんだ」


鬼柳「お前はなにか勘違いをしているな。 絆を作るのは時間じゃねえ、嬉しい出来事や悲しい出来事の足し引きでもねえ」

鬼柳「一度誰かと関わってしまえば、すでに絆は結ばれている」

遊矢「……そんなの分からないじゃないか」

鬼柳「いいや分かる。 俺も過去にデュエル以外のすべてを失ったが、それは俺自身が生み出した錯覚だった」

鬼柳「どんなに離れていても、絆を断ち切れることなんざできやしねえんだよ」


遊矢「……オレでも、もう一度やり直せられるかな?」

鬼柳「当たり前だ。 ちったぁ仲間のことを信用しろ」


遊矢(―――そうか。 オレは誰かに信用してほしいくせに、誰も信用してなかったんだ)

遊矢(信じてもらいたいなら、まずは自分から相手のことを信じないとダメなんだ)

遊矢(オレはもう身勝手をやめる。 遊星たちに謝って、弱い自分を変えてやる!)


鬼柳「乗れ。 遊星がお前の帰りを待っている」

遊矢「え……どうして鬼柳が遊星のことを知っているんだ?」

鬼柳「アイツから探し物を頼まれた。 そいつは榊遊矢というらしい」



鬼柳「遊星のことだ、頭を下げれば許して貰えるだろ。 クロウとジャックの奴は知らねえがな」

鬼柳「それから涙の痕が残ってるぞ」

遊矢「え? うわ、ほんとだ」 ゴシ

鬼柳「それに背中に泥がついてやがる。 この上着を着ておけ」 パサ

鬼柳「ようやく満足したってツラになったな。 じゃあな、達者にやれよ」 プルルッ

遊星『―――? ―――』

鬼柳「遊星か。 いま玄関前に送り届けてやったから出迎えてやれ」 ピッ


遊矢「ありがとう、鬼柳! ……」

遊矢(やっぱりみんな怒ってるだろうな。 勝手にいなくなったんだから)

遊矢(とくにあの二人には悪いことをした……謝っても許して貰えるかどうか)

遊矢(いや、オレはもう迷わない! きっと遊星たちなら受け入れてくれる!) スッ


ガチャ


遊矢「遊星、みんな! ごめん、それからただいま!」


遊星「ああ、みんなキミを待っ……!?」

クロウ「遊矢! テメェ、オレたちがどれだけ心……配……」

ジャック「遅いぞ貴様! 夕方には帰れとあれほ、ど……」


遊星・クロウ・ジャック(なぜそのジャケットを着ているッ……!?)


アキ「おかえりなさい遊矢……あら、なに? その変な恰好」

遊星「」ゴフッ

ブルーノ「みんなずっと待ってたんだよ? あとそのジャケットは正直どうかとボクは思うな!」

クロウ「」 チーン

ジャック「鬼柳の奴め……奴に一杯食わされたということか」 ドサ

遊矢「?」


遊矢「えっと……みんな怒ってないのか?」 ヌギ

クロウ「意外な肩透かしを食らっただけだ……怒ってないわけねえだろうが」

ジャック「今晩は貴様にとって重要な日でもあるのだ。 黙っていた俺たちにも非はあるが」

遊矢「え……それってまさか!」

ブルーノ「そう、やっとキミのデュエルディスクの修理が終わったんだよ!」

遊星「これでキミは元の世界に帰れる。 この一週間、キミと過ごせてよかった」 スッ


遊矢「これがオレのデュエルディスク……! すごい、傷一つ付いてない」

遊矢「遊星、ありがとう……本当に、ありがとう―――!」 ポロポロ

クロウ「あーあー、これでまたアキの料理が元に戻っちまうか」

アキ「わ、私だって少しはまともな料理も作れるようになったわ。 彼のおかげでね」

ジャック「辛気臭いのはなしだ。 貴様はまだ俺とのデュエルの約束が残っているだろうが」

遊矢「ああ、そうだったな……! それじゃあこれから―――」


龍亞「遊矢! みんな!」 ガチャッ


遊矢「龍亞……さっきはゴメン、オレ弱気になってたよ」

龍亞「いや、オレだってもう気にしてない……って、そんな場合じゃないんだよ!」

ジャック「どうしたというのだ? そういえば龍可の姿が見えんが」

遊星「龍可に何かあったのか?」

龍亞「アイツ、そこで待ってろって言ったのに勝手にどこか行っちゃっててさ……そしたらこんなメールが届いたんだ」

龍亞「これ見てよ遊星、龍可のヤツ様子がおかしいんだよ!」 スッ


メール『from:龍可 To:龍亞 title:遊矢は憑りつかれてる

    遊矢はいま地縛神の亡霊に体を乗っ取られているの
    見つけたらすぐ私のところまで連れて来て!』

    添付:マップデータ


遊矢「オレが憑りつかれているだって?」

ジャック「地縛神の亡霊だと? そういえば数日前にカーリーがそんなことをほざいていたな」

クロウ「そんなのありえねえぜ! ダークシグナーはあのときオレたちが全員倒したハズじゃねえか!」

遊星「俺たちの痣も彼には反応していないようだ。 龍可は一体何を……?」

龍亞「わからない……でもオレと龍可が離れたときに何かあったんだと思う!」

アキ「行きましょう。 この件に地縛神が絡んでいるとしたら、私たちシグナーにとっても他人事ではないわ」


ブルーノ「遊矢、これはチーム5D'sの問題だ。 キミはその気になれば、そのデュエルディスクで今にでも元の世界に帰ることができる」

ブルーノ「それでも行くというのかい?」

遊矢「もしかすれば、本当にオレの身に何かが起こってるのかもしれない」

遊矢「そうじゃなくても龍可に何かあったとしたら、それを見捨てることなんてオレにはできないよ!」

ブルーノ「……そうか。 キミは成長したね」

遊矢「ああ、みんなのおかげさ!」



龍可(私のせいで、遊矢は……すぐに会って謝らないと)

龍可(でも……)


「おやおや、なにやらお悩みのようですネ?」


龍可「だ、誰?」

占い師「怪しいものではございまセン。 ワタシはただのしがない占い師……ヒッヒッヒ」

占い師「ここで出会ったのも何かのご縁、あなたの心を占ってさしあげましょうカ?」

龍可「……悪いけれど私、急いでるの。 また後にしてくれる?」

占い師「オトコ」

龍可「―――え」

占い師「おやぁ! 可愛らしい葛藤でございますねェ、なるほど彼への接し方に困っている……と」

龍可「……ねえ。 その占いで、今の遊矢の気持ちとか分かったりするの?」


占い師「もちろんでございます! あ、でもそれにはちょっと準備がいるんだけどネ……」

龍可「どうすればいいの?」

占い師「とっても簡単だヨ。 このロウソクに灯る火に心を委ねるだけで終わりますとも、さあさあ早く!」

龍可「うん、わかった。 こう……?」 ジッ

占い師「そうそうその調子! いいですねェ相性はバッチリだ!」 ボゥッ

占い師(ハハハ! チョロいもんだよこんなことはサ! これでコイツの身体は頂きましたよォ!)

紅蓮の悪魔のしもべ(フフフ……首を洗っているがいいジャック・アトラス! アナタを倒し、我が主をこの手に取り戻すまではねェ!)

しもべ(奴を倒す力をつけるため、この小娘であの榊遊矢とかいう人間をおびき出し! 異世界の力を我がモノにさせてもらいますヨ!)


龍可「ねえ、もういい?」

しもべ「ええ儀式は無事に終わりましたとも。 ですが……おやおやこれは……」

龍可「遊矢がどうかした?」


しもべ「残念ながら、彼は地縛神の亡霊に憑りつかれているみたいですねェ……ヒヒヒッ」

しもべ(そのために利用できるものはなんでも使わせてもらいますヨ。 仲間の命も、絆も! だって悪魔だからさァ!)


――――――
―――

ここまで
次回の更新で最後となります


ところで>>56の時、ペンデュラムカードは魔法・トラップゾーンに置いたの?

乙ー
会話中心のシリアス系もいいね

やっぱりこの世界では先行ドローも生きているのだろうな



龍亞「あ、いた! 龍可ーっ!」

龍可「龍亞! それにみんな、来てくれたのね!」

遊星(一見おかしな様子は見られない。 だが……)

ジャック「お前の言う通りコイツも連れてきた。 さあ地縛神の亡霊とやらよ、姿を現せ!」

遊矢「龍可……オレが憑りつかれてるだなんて、一体どうして!」


龍可「―――やっぱり。 精霊の姿が見える私にはごまかされないわ、あなたは遊矢なんかじゃない!」

クロウ「こいつは参ったな……これじゃどっちが偽物なのかわかりゃしねえぞ」

アキ「! シグナーの痣が、龍可に反応してる?」 ボゥ

『クックック……ようやく会えましたねェジャック・アトラス、そしてシグナーの皆様方!』

ジャック「この声……そして俺たちを小馬鹿にしたような口調、聞き覚えがあるぞ。 貴様はまさか!」

しもべ『そうだよジャック・アトラス! ワタシはアナタに主を奪われた復讐として、ここまで這い戻ってきたのデス!』


ブルーノ「龍可、あの悪魔の声が聞こえないのかい? 憑りつかれているのはキミの方だ!」

ブルーノ『そんな、遊矢が亡霊に憑りつかれていただなんて……キミの力で彼を救ってやってくれ!』

龍可「分かってるわ。 私の手できっと遊矢を取り返して見せるから!」

遊星「俺たちの声が届いていないのか? キサマ龍可に何をした、答えろ!」

しもべ『そんな悪魔聞きの悪いこと言っちゃダメよん。 ちょっと認知を上書きしているだけでございますヨ』

ジャック「認知の上書きだと……!?」

しもべ『そうサ! 今の彼女には榊遊矢、アナタこそがこのワタシそのものに見えている!』 ビシッ

しもべ『もっとも、デュエルで負ければ洗脳は溶けてしまいますがネ……別に逃げちゃってもいいのヨ?』


遊矢「逃げるつもりなんかない! オレはお前を倒して、龍可にかけられた洗脳を解いて見せる!」

龍可「あなただけは絶対に逃がさない……! 私たちの遊矢を返してくれるまでは、絶対!」


ボァァァッ


クロウ「なんだ!? あの二人が、炎の壁に包まれていくだと!?」

しもべ『これでアナタはもう逃げることはできない! ワタシとアナタ、生き残りをかけたデュエルの始まりでございます!』


ブルーノ「生き残りをかけたデュエルだって!?」

しもべ「勝てば無事に出られるかもネ。 だが敗者は迫りくる紅蓮の炎に飲み込まれるのサ!」

クロウ「汚ぇぞテメェ! たとえどっちが勝っても、一人は確実に命を落とすってことじゃねーか!」

遊星「落ち着けクロウ。 もし遊矢が負けたとしても、彼のデュエルディスクで次元を超えれば炎に飲まれることはない」

アキ「だけど、それじゃ龍可の洗脳は解けないわ。 そうなれば次は私たちの誰かが犠牲に……!」


龍亞「くっそぉ……!」 グッ

ブルーノ「龍亞……辛いだろうね」

龍亞「……何にもできないのはわかってるんだ。 それでもオレは龍可を助けたい!」

龍亞「どうすればいいんだよブルーノ! オレは遊矢と龍可、どっちを応援すればいいの!?」

ブルーノ「彼を、遊矢を信じよう。 きっと彼なら、不条理の先にある真実を掴むことができる」


遊矢「オレはこんなデュエルを仕掛けるお前を許さない! このデュエルで必ずお前を、龍可の中から引きずりだしてやる!」

龍可「待っていてねみんな! 私が絶対に、あの悪魔を倒してみせるから!」

しもべ『さあ! これより火を火で炙る紅蓮の儀式を始めまショウ!!』

遊矢・龍可・しもべ「『「デュエルッ!!」』」 LP4000/LP4000


龍可「私は手札からモンスターを召喚! お願い、私を守って《クリボン》!」

クリボン『クリィ~っ!』 ポワン

龍可「そしてカードを一枚伏せてターン・エンドよ!」 パシィ

遊矢(攻撃力たった300のモンスターを攻撃表示、そして伏せカード……なにかある!)

遊矢(クリボンの効果は攻撃されたとき手札に戻り、そのモンスターの攻撃力分のライフをオレが回復する効果か)

遊矢「たとえどんなデュエルを仕掛けてきたとしても、オレは必ずお前の洗脳を解いてやるからな!」

しもべ『あらあら冷たいのねん。 デュエルに勝って洗脳を解いたとしても、ここから出られるのはお一人様だけですヨ?』


ジャック「遊矢、奴のペースに飲まれるな! 龍可もソイツもコントロールデッキ使い……冷静さを欠いた者が敗れるぞ!」

遊星「洗脳されているとはいえ、デュエルを行っているのは龍可自身の意志だ。 舐めていては勝つことは難しい」

龍亞「そんな、クリボンまで……! カードの精霊たちも操られてるってことかよ!?」

しもべ『精霊の力と異世界のカード、そのどちらも行使できればワタシに敵はない! さあ、アナタのターンです!』


龍可:LP4000/手札3枚/場2枚《クリボン》《--》


遊矢「そんなに見たければ見せてやる! オレのターン、ドローッ!」 シュバッ

遊矢「手札から《EMドクロバット・ジョーカー》を召喚して効果発動! デッキから《オッドアイズ・セイバー・ドラゴン》を手札に!」

遊矢「そしてスケール2《賤竜の魔術師》とスケール8《EMオッドアイズ・ユニコーン》でペンデュラムスケールをセッティング!」

遊矢「これでレベル3から7のモンスターが同時に召喚可能だ!」

ブルーノ(ペンデュラムカードの能力は、モンスターの同時召喚か!)


遊矢「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク! ―――ペンデュラム召喚! 出でよ、オレのモンスターたち!」

遊矢「レベル7のセイバー・ドラゴン、そして雄々しくも美しく輝く二色の眼!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

アキ「あれが遊矢のエースモンスター!」

遊星(だが、あの伏せカードはおそらく……彼はどう戦う?)


遊矢「さらにオレは、レベル7のオッドアイズ二体でオーバーレイ! ―――エクシーズ召喚! 出でよ、ランク7!」

遊矢「全てを凍土へと還す氷晶の龍! いま現れよ、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!」

クロウ「こ……コイツがレベルの代わりにランクを持つ、エクシーズモンスターってヤツか!」

ジャック「ふん、スタンディングデュエルならば少しはできるようだな」

龍亞(遊矢……やっぱり、本気で龍可のことを……!)


遊矢「バトルだ! 攻撃力2800のアブソリュート・ドラゴンで、攻撃力300のクリボンを攻撃!」

遊矢「この瞬間、ユニコーンのペンデュラム効果発動! ドクロバットの攻撃力1800をアブソリュートに加算する!」

遊星「なるほど……ペンデュラムカードはフィールドのモンスターを補佐する役割もあるのか」

クロウ「だがクリボンの効果で、いくら攻撃力を上げても龍可のライフは削れねえ……!」


龍可「この瞬間、私は罠カード《シモッチの副作用》を発動するわ!」

龍可「これであなたのライフを回復する効果はダメージに変わる! 4600のダメージを受けて自滅しなさい!」

ジャック「なんだと!? やはりその罠カードが伏せられていたか!」

遊矢「アブソリュートの効果発動! オーバーレイ・ユニットを一つ使用することで、その攻撃を無効にする!」 ガキン

遊矢「そして墓地から蘇れ、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」 ズォォッ

ブルーノ「うまい! これでワンターンキル・コンボを回避したよ!」


クロウ「これでドクロバットにクリボンの効果を使わせれば、直接攻撃で龍可に大ダメージを与えられるぜ!」

遊矢「オレは攻撃力1800のドクロバット・ジョーカーで―――!」

龍可「……っ!」 ギュッ


遊矢(このデュエルに勝てば、龍可の命はない) ドクン

遊矢(オレが負けても次元を超えれば済むだけのことだ。 龍可を、この手にかけろだなんて……!)

遊矢「龍、可のライフを……減らせるわけ、ない」 ジリ

遊矢「……ターン、エンド」


ジャック「貴様! それは何の真似だ!?」

遊星「やめろジャック。 彼が戦っているのは龍可や悪魔だけじゃない、自分自身の心とも対峙しているんだ」

クロウ「クソッ! このデュエル、アイツに仕組まれた時点ですでにオレたちが負けてるって言うのかよ!」

龍亞(ごめん遊矢……オレ最低だ。 遊矢が攻撃をやめたとき、少しだけほっとしちゃったんだ……)


遊矢:LP4000/手札2枚/場5枚《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》《EMドクロバット・ジョーカー》《賤竜の魔術師》《EMオッドアイズ・ユニコーン》


龍可「もう後悔しても遅いわ、私のターン! ドローっ!」

龍可「手札から《マジック・プランター》発動! 《シモッチの副作用》を墓地に送ってさらに二枚ドローするわ!」 シュパッ

龍可「―――モンスターをセット、リバースカードを三枚伏せてターンを終了よ」 パシッ

ジャック(な!? デッキの要である、あのカードを墓地に送るなどありえん!)

遊星(クリボンは攻撃表示のままか。 《シモッチの副作用》がダブったか、それともブラフの可能性もありうる)

しもべ『ほらほら、この娘の洗脳を解きたいんでショウ? 突っ込んできなヨ』

遊矢「それでも、龍可を傷つけるだなんて……くっ!」

龍可「私だってシグナーの一人よ、子供だからって舐めないで!」


龍可:LP4000/手札1枚/場5枚《クリボン》《--》《--》《--》《--》


遊矢「どうすれば……オレの、ターン!」 シュバッ

龍可(あのペンデュラムカード……あれがある限り、何回倒してもエクストラデッキから蘇ってくる。 なら!)

龍可「罠カード《妖精の風》! 二枚のペンデュラムカードを破壊して、お互いに一枚につき300ポイントのダメージよ!」

遊矢「なんだって!? うわぁぁッ!」 LP:4000→3400

龍可「くぅぅぅっ……! これくらい、どうってことない!」 LP:4000→3400


ジャック「これで分かっただろう、龍可は本気でお前を倒す気でいる!」

ジャック「貴様は自分が負ければそれで済むだと思っているな? だとしたら浅知恵にもほどがあるぞ!」

ジャック「奴に負けてカードを奪われたお前が、元の世界で自分の仲間など助けられるものか!」

遊矢「そうだ、オレはまだ柚子を……! オレは勝たなきゃいけないんだ!」

遊矢(たとえそれが、何を犠牲にしたとしても!)


遊矢「オレはフィールド魔法《天空の虹彩》を発動! ドクロバットを破壊し、デッキから《オッドアイズ・フュージョン》を手札に加える!」

遊矢「そしてスケール1《星読みの魔術師》とスケール8《竜穴の魔術師》でペンデュラムスケールを再セッティング!」

龍可「っ、まだ手札にペンデュラムモンスターが残っていたのね……!」

遊矢「いま一度揺れろ、魂のペンデュラム! 再び現れろ、オレのモンスターたち! ―――ペンデュラム召喚!」

遊矢「オレの場に戻れ、《EMドクロバット・ジョーカー》《賤竜の魔術師》! そしてバトルだ!」


クロウ(だが龍可の場にはおそらく二枚目の《シモッチの副作用》が伏せられている。 まず狙うとしたら!)

遊矢「賤竜の魔術師で、裏側守備表示のモンスターを攻撃!」

龍可「罠カード、オープン! 《和睦の使者》の効果でこのターン、私のモンスターは戦闘で破壊されないわ!」

龍可「そしてリバースした《ブレイン・ジャッカー》は相手モンスターに寄生する! アブソリュート・ドラゴン、私の元に来て!」

遊矢「なんだって!? アブソリュートが!」

龍亞「なんだよあれ、あんなカード龍可のデッキに入ってないハズだよ!」

しもべ『ワタシが親切にも彼女のデッキに手を加えて差し上げたのですヨ。 ああ、なんて優しいのでショウ!』

ジャック(龍可の潜在的なデュエルタクティクスに、あの悪魔の狡知が加わることで凶悪性が増しているのか!)


遊矢:LP3400/手札1枚/場6枚《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》《賤竜の魔術師》《EMドクロバット・ジョーカー》《星読みの魔術師》《竜穴の魔術師》《天空の虹彩》


しもべ『まさに手も足も出ないとはこのこと! ならばワタシのターンです!』

龍可「ドロー! そしてこのままバトルするわ!」

龍可(さっき手札に加えた《オッドアイズ・フュージョン》は、オッドアイズを融合させるカード。 なら!)

龍可「私は攻撃力2800のアブソリュート・ドラゴンで、攻撃力2500のオッドアイズを攻撃! 氷結のブリザード・バースト!!」

遊矢「ぐぅぅぅっ! オッドアイズ……!」 LP:3400→3100

クロウ(勝敗がどうであれ、この勝負は最後まで見届けるつもりだったが……もうこっちが見てらんねぇぜ!)

龍亞「やめろよ……こんなデュエル、やめてくれよ二人とも!」

しもべ『もちろんその場合は、二人仲良く丸焼きになってもらいますがネ!』


龍可「手札から《ローンファイア・ブロッサム》召喚! その効果により、同じ植物族の《ローズ・バード》に成長するわ!」

龍可「カードを一枚伏せてターンエンド! 私たちから遊矢を奪ったあなたなんかに、絶対負けないんだから!」

遊矢(ダメだ、やっぱり龍可の洗脳を解くにはデュエルで勝つしか方法はないのか!?)


龍可:LP3400/手札0枚/場6枚《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》《ローズ・バード》《クリボン》《ブレイン・ジャッカー》《--》《--》


遊矢「迷っていても仕方がない! オレのターン、ドロー!」

龍可「スタンバイフェイズに《ブレイン・ジャッカー》のモンスター効果で、あなたのライフは500ポイント回復する」

龍可「けどそれは二枚目の《シモッチの副作用》の効果で、500ポイントのダメージを受ける効果になるわ!」

遊矢「やっぱりもう一枚伏せて……! ぐぁぁぁっ!」 LP:3100→2600

ブルーノ「使うカードは違うけれど、デュエルスタイルは龍可そのものだ! やはり強い……!」


遊矢「オレだってまだ負けてない! 天空の虹彩の効果で再びドクロバットを破壊し、二枚目の《オッドアイズ・フュージョン》を手札に!」

遊矢「三度揺れろ、魂のペンデュラム! オレの元に来い、三体のモンスターたちよ! ―――ペンデュラム召喚ッ!」

遊矢「《EMドクロバット・ジョーカー》《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》そして手札より《EMマンモスプラッシュ》!」

ジャック「何度倒されても立ち上がる不屈の闘志か……ふん! 少しは認めてやらんこともない」


遊矢「マンモスプラッシュの効果により、オレはオッドアイズとドクロバットを融合カードなしで融合する!」

アキ「エクシーズやペンデュラムだけじゃなく、融合モンスターも……!」

遊矢「―――融合召喚! 現れよ、紫電纏いし稲妻の龍! 《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》!」

龍可「またオッドアイズが進化したの!?」

遊矢「ボルテックス・ドラゴンのモンスター効果! エクストラデッキに戻れ、アブソリュート・ドラゴン!」 バチチィッ

龍可「くぅっ! そんな……!」


遊矢「バトル! 攻撃力2500のボルテックスで、攻撃力1800のローズ・バードを攻撃! 雷撃のライトニング・バースト!!」

龍可「きゃぁぁぁっ! でもまだっ……! ローズ・バードの効果発動!」 LP:3400→2700

龍可「私を守って、《スポーア》《グローアップ・バルブ》!」

遊矢「ならマンモスプラッシュと賤竜の魔術師で、守備表示の二体に攻撃だ!」

龍可(ごめんねみんな、今は耐えて……!) パリィン


遊矢:LP2600/手札2枚/場6枚《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》《EMマンモスプラッシュ》《賤竜の魔術師》《星読みの魔術師》《竜穴の魔術師》《天空の虹彩》


龍可「遊矢だけじゃなく、みんなにもヒドいことを……許さない! 私のターン、ドロー!」

龍可「手札から魔法カード《精神操作》発動! 私に従いなさい、賤竜の魔術師!」

龍亞「まただ、あんなカード龍可はデッキに入れてない……!」

しもべ『キヒヒヒッ! ちょっとした悪魔ジョークですヨ。 バカ受け間違いなしと思ったんだもの』

ジャック「悪趣味な!」

遊矢(龍可の墓地には自己再生できるチューナーがいる。 ここでボルテックスの効果を発動し、精神操作を無効にもできるけれど……)

遊矢(龍可はシグナーの竜を呼ぶつもりだ。 でも世界に一枚だけのカードなら、一度破壊すればこのデュエルで二度と召喚はできない!)

龍可「そして墓地のグローアップ・バルブは、デッキのカード一枚を糧に再び芽吹く!」

遊星「これでレベルの合計は7……来るのか、《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》が!?」


しもべ『クックック……シグナーを掌握するということは、シグナーの操るドラゴンを手駒としたのも同然なのデス!』

しもべ『さあ皆さまご覧あれ! 闇に染まりしシグナーの竜、その末路を!』

龍可「私はレベル6の賤竜の魔術師に、レベル1のグローアップ・バルブをチューニング! ―――シンクロ召喚!」

龍可「お願い、力を貸して! 《妖精竜 エンシェント》!!」 ズォォォ

遊矢「こ、これがシグナーのドラゴン!?」

ジャック「なんだ、この禍々しい姿のエンシェント・フェアリーは!?」

アキ「これがシグナーのドラゴン、そのもう一つの側面……?」


遊矢(エンシェントは場のカード一枚を破壊する効果……だがどんなモンスターでも、効果を無効にして破壊すれば倒せる!)

龍可「―――私は罠カード《シンクロ・ストライク》を発動! エンシェントの攻撃力は、シンクロ素材1体につき500ポイントアップするわ!」

遊矢「! しまった、シンクロモンスターを補助する罠カード!?」

遊矢(もしこれを無効にしなければ、ボルテックスを戦闘破壊された上に効果も発動されてしまう)

遊矢(無効にすれば戦闘ダメージは受けないけれど、効果を使いきったボルテックスが効果破壊される……タイミングを見誤った!)

遊矢「っ―――ボルテックス・ドラゴンの効果発動! シンクロ・ストライクを無効にする!」

龍可「ならエンシェントの効果で、ボルテックス・ドラゴンを破壊するわ! スピリット・ベリアル!」

遊矢「そんな、オレのボルテックス・ドラゴンまで!」 パリィン

ブルーノ「ダメだ、駆け引きは龍可の方が一枚上手だ!」


龍可「私は攻撃力2100のエンシェントで、攻撃力1900のマンモスプラッシュを攻撃! フェアリー・テイル・ウィップ!」

遊矢「かはっ、このままじゃ……!」 LP:2600→2400

龍可「それから攻撃力300のクリボンで、プレイヤーへダイレクトアタックよ! 頑張ってね、クリボンっ!」 ポヒュン

遊矢「ぐっ!?」 LP:2400→2100

龍可「これであと半分……! 私はこれでターンを終了よ!」

しもべ『ヒヒヒッ! 炎の壁も着実に縮まってきている。 モタモタしていると二人とも飲み込まれますヨ?』


龍可:LP2700/手札0枚/場3枚《妖精竜 エンシェント》《クリボン》《シモッチの副作用》


遊矢「オレは、諦めない……! 柚子だけは、いいや龍可も助けだすまでは!」

遊矢(そうだ。 何かを犠牲にするだなんて、そんなのアカデミアと同じだ)

遊矢(理想論だと言われるかもしれない。 絵空事だって笑われてもかまわない! オレはオレであるために、ここで諦めちゃいけないんだ!)

遊矢「オレのターンッ! ドロォォォ! 何度でも揺れろペンデュラム! 天地を跨げ運命の振り子! ―――ペンデュラム召喚!!」

遊矢「出でよ《EMドクロバット・ジョーカー》《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》《EMマンモスプラッシュ》《賤竜の魔術師》!」

クロウ「遊矢だってまだ諦めてねえ、この状況で一気に四体ものモンスターを同時に召喚しやがったぜ!」

アキ「けれどすべて守備表示……ここからどう出てくるのかしら?」


遊矢「賤竜の魔術師がペンデュラム召喚に成功したとき、墓地からオッドアイズ・セイバー・ドラゴンを手札に戻す!」

遊矢「さらに手札から魔法カード《オッドアイズ・フュージョン》を発動し、オッドアイズとドクロバットを再び融合だ!」

龍可「二回目の融合召喚ですって!?」

遊矢「神秘の力操りし者、まばゆき光となりて龍の眼にいま宿らん!―――融合召喚! 出でよ、秘術ふるいし魔天の龍!」

遊矢「今こそ現れよ! 《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

遊星「攻撃力3000の融合モンスター……エンシェントの攻撃力2100を上回ったか」

遊矢「バトル! ルーンアイズでエンシェントを攻撃! 連撃のシャイニーバーストォォ!!」

龍可「うわぁぁぁっ!!」 LP:2700→1800

遊矢「オレは誰一人として犠牲にしたりなんかしない! 龍可、お前はオレの手で必ず救ってやる!」

しもべ(チィッ! シグナーの竜が倒されたことで、ほんのちょっぴり意識の同調にズレがァ……!)


遊矢:LP2100/手札3枚/場6枚《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》《賤竜の魔術師》《EMマンモスプラッシュ》《星読みの魔術師》《竜穴の魔術師》《天空の虹彩》


龍可「いやだ、負けたくない……! まだ龍亞と一緒にいたい、遊星たちとWRGPに行きたい! 遊矢のマジックをもっと見ていたいよ!」

龍可「もう、終わりにしてあげる―――! 私のタァァァン!!」 シュバァッ

龍亞「もういいってば龍可! このデュエルに勝っても遊矢は……!」

クロウ「龍亞。 辛いだろうが、今はアイツらを信じてやれ」

ジャック「奴らのデュエルの行方は奴ら自身が決めることだ。 ならば俺たちにできることなどただ祈るだけしかあるまい」

ジャック(あいつらが真の敵に気づく、その一点だけをな)

しもべ『まだ分かりませんか!? 絆など足枷、不条理の前では無力なガラクタだということを! やれ、ワタシの忠実な人形よ!!』


龍可「手札から《成金ゴブリン》を発動! シモッチの効果と合わせて、相手に1000ポイントのダメージを与えて一枚ドローッ!」

遊矢「ぐぁぁぁッ! まだ、倒れるワケには行かないッ……!」 LP:2100→1100

龍可「そして《フェアリー・アーチャー》を召喚! 私の光属性モンスター一体につき400ポイント、合計800ポイントのダメージよ!」

遊矢「ぐぅぅぅ! それでも、オレはっ……!!」 LP:1100→300


龍可「墓地に眠るスポーアの効果! レベル3のローンファイア・ブロッサムを除外し、レベル4にレベルアップして復活するわ!」

龍可「レベル3のフェアリー・アーチャーに、レベル4のスポーアをチューニング!」

しもべ『しまった! この小娘との同調がブレたせいで、シグナーのドラゴン本来の力が……!』

龍可「聖なる守護の光、今交わりて永久の命となる―――シンクロ召喚! 降誕せよ、《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》!!」


フェアリー『―――人の子よ、聞こえますか』

遊矢「お前、アイツに操られてないのか!?」

フェアリー『この子の魂は悪魔の手先と深く一体化しています。 ですがもし、かの者の力が衰えれば私の手で抑え込められるでしょう』

遊矢「待ってくれ! 力を弱めるってどうすればいいんだ、それで本当に龍可を救えるのか!?」

フェアリー『どうか、この子を救ってあげてください―――』


龍可「エンシェント・フェアリーの効果発動! 天空の虹彩を破壊してライフを1000ポイント回復する! プレイン・バック!」パリィン

龍可「そしてデッキから新たに《サベージ・コロシアム》を発動よ!」 LP:1800→2800

アキ「サベージ・コロシアム……そう、あれは攻撃表示のモンスターにバトルを強要するフィールド魔法!」

しもべ『生き残りをかけたデュエルに絆など不要! この煉獄の檻の中で存分に潰し合うのデス!』


龍可「バトルよ! 攻撃力2100のエンシェント・フェアリーで、守備力1400の賤竜の魔術師を攻撃! エターナル・サンシャインッ!」

遊矢「くっ! ヤツの力を抑える、そんな方法が……!」 パリィン

龍可「サベージ・コロシアムの効果で私はライフを300回復! クリボンを守備表示にしてターンエンドよ!」 LP:2800→3100

龍可「あなたのライフはすでに300ポイント! バトルを行えば、サベージ・コロシアムとシモッチの副作用の効果でライフは尽きるわ!」

クロウ「なんてこった、これじゃ遊矢のバトルは封じ込まれたも同然ってことかよ!」

ジャック「次にライフを回復させるカードを引かれたら、遊矢の負けだ!」


龍亞「ごめん……ほんとゴメン。 遊矢、そのまま負けてほしいんだ」 ボソ

アキ「……龍亞?」

龍亞「頼むよ。 龍可は生まれたときからずっと一緒だったんだ……龍可のいない世界なんて考えられない」

龍亞「遊矢はさ、負けても死んじゃったりしないんだろ!? なら勝たないでくれよ! オレから龍可を……奪わないで……!!」 ポロポロ

クロウ「龍亞、お前……」


遊矢「約束する。 龍可は必ず取り返す」

遊矢「オレを信じてほしい。 キミはこの一週間でオレがどんな人間か知ってるだろうけれど、それでも……!」

龍亞「絶対……絶対だからね! オレは龍可の前から逃げた遊矢を100パーセントは信頼できないけど、それでもオレは遊矢を信じたい!」

遊矢「―――ありがとう龍亞。 この世界に来て、キミと出会えて本当に良かった」


遊矢(そうだ、謎のDホイーラーも言っていたじゃないか。 オレの戦うべき真の敵は理不尽そのもの)

遊矢(オレの相手は龍可じゃない。 本当に立ち向かうべき敵はオレたちを争わせ、みんなを悲しませる紅蓮の悪魔のしもべ!)

ブルーノ(見つけたか遊矢。 キミの成すべき未来を!)

遊矢「これで決める! オレの、タァァァァン!!」 シュバァッ

遊矢(―――! このカードは……わかったよ父さん、それが答えなんだな)


遊矢「オレはもう迷わない! オレの心を映すペンデュラムよ、お前を揺らすのはこれで最後だ!」

遊矢「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク! ―――ペンデュラム召喚! 現れよ、我がしもべのモンスターたちよ!」

遊矢「来い! 《賤竜の魔術師》《オッドアイズ・セイバー・ドラゴン》そして《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ッ!!」

遊星(遊矢はまだ諦めてはいない。 勝敗が分かれるとしたら、おそらくこのターン!)

遊矢「オレの中の邪悪よ! 龍可を助けるためなら、オレはお前だって利用してやる! 《オッドアイズ・フュージョン》を発動!!」

遊矢「これにより手札の戦士族モンスター《EMライフ・ソードマン》そして《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を融合させる!」

遊矢「猜疑の炎を燃やす紅蓮の悪魔の手先よ! オレたちの絆を弄ぶというのなら、オレがお前を喰らってやる!!」

しもべ『ヒッ、火が! ワタシの身体が喰われていくッ!? これではまるで、あの時と同じ―――!?』


遊矢「比類なき短剣使いよ、二色の眼輝く龍よ! 今一つとなりて、新たな命ここに目覚めよ! ―――融合召喚!」

遊矢「現れ出でよ、気高き眼燃ゆる勇猛なる龍! 《ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

龍可「うぅぅぅっ……! わ……私、は……?」 フラ

しもべ『マズイ、ワタシの力が掠め取られたせいでこの娘との波長がまたしてもッ……!?』


遊矢「ブレイブアイズが融合召喚するとき、すべての相手モンスターの攻撃力は0となる! 龍可の魂から剥がれろ、紅蓮の悪魔のしもべ!」

しもべ『ふざけるなァ! この体もアナタの力も、もはやワタシのモノですぞォ!!』

龍可「ぐぅっ! 私がデュエルしてるのは……いったい、だれ……?」


遊矢「これがオレの答えだ! 手札から魔法カード《スマイル・ワールド》を発動し、全モンスターの攻撃力は700ポイントアップする!」

遊矢「思い出せ龍可! オレたちが共に過ごした、この七日間を!!」

龍可(スマイル、ワールド―――どこかで見たことあるような……ううん、彼のマジックの中で何度も見た) ピシッ

龍可(あのカードの持ち主は、遊矢! それじゃあ、いま私とデュエルしているのも―――!) ビキキッ

龍可「―――遊矢!!」 パキィィン


しもべ『ば、バカな! ただの人間ごときが、自力でこのワタシの呪縛から解き放たれたというのですカ!?』

フェアリー『逃しはしませんよ、地縛神の残党よ』 ガシッ

しもべ『は……離しなさい! この薄汚いウナギ風情めが! まさかコイツ、ワタシもろとも地獄にッ……!?』

遊矢「エンシェント・フェアリー!」

フェアリー『さあ今です。 私ごとおやりなさい、人の子よ!』 ギィィン

しもべ『黙りなさいィ!! ワタシは再び我が主を取り戻すまでは、こんなところでくたばるワケにはいかないのですヨォォォ!!』


遊矢「このバトルですべてを終わらせる! 攻撃力3700のブレイブアイズで、攻撃力700のエンシェント・フェアリーを攻撃だ!」

遊矢「灼熱のメガフレイム・バーストォォォッ!!」 ズドォォッ

しもべ『ヒィィッ―――ぬぉぉア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!! そんなァァァ! このワタシの計画がァァァ!!』

しもべ『く、クヒッ……! だが儀式のルールは変えられないッ! お前たちの絆はここで終わりだヨ……!』

しもべ『紅蓮の悪魔、万歳ッ!』 ボシュゥゥ


龍可「きゃぁぁぁぁぁ!!」 LP:3100→100

龍亞・遊星「「龍可!」」 ガシッ

ジャック「馬鹿な、バトルを行えば貴様は!」

遊矢「―――そしてサベージ・コロシアムとシモッチの副作用の効果により、オレのライフはゼロとなる」 LP:300→0

遊矢「キミの勝ちだ、龍可」

龍可「そんな……遊矢ぁっ!」


龍亞「で、でも大丈夫だよね遊星? 遊矢は次元を超えられるから、またオレたちのところに帰ってきてくれるよね!?」

遊星「……彼は事故によってこの世界に辿り着いた」

遊星「一度次元を移動すれば、再びこの世界に戻ってこられる望みは薄いだろう」

龍亞「そんな……それじゃあ遊矢とは、ここでお別れってこと!? そんなのあんまりだよ!」

龍可「ごめんなさい、私がこんなことに巻き込まれちゃったから……!」

クロウ「龍可のせいじゃねえ、いつかはこうなることが決まってやがったんだ……くっ!」


遊矢「オレはこの一週間、みんなと過ごせて本当に良かった」

遊矢「チーム5D'sと過ごした時間は、オレの一生の宝物だ!」

遊星「遊矢……」


遊矢「ジャック! 約束はいつか必ず果たす! オレはもう一度この世界に戻ってきて、もう一度お前にデュエルを申し込む!」

遊矢「その日までに、オレは今よりもさらに強くなるよ! ジャックが張り合えるような強い決闘者になってやるんだ!」

ジャック「ふっ、ならばオレはより高みに昇ろう! 貴様が手も足も出ぬほどの圧倒的パワーで叩き潰してくれる!」


遊矢「クロウ! オレに貸してくれた部屋に、この一週間でオレが稼いだ金やカードをしまってある!」

遊矢「勘違いするなよ、これはクロウのためじゃないさ。 これはチーム5D'sにWRGPで勝ってほしい、オレ自身の願いのためだ!」

クロウ「ああ。 一円たりとも無駄にはしねえ!」


遊矢「アキ! 厨房の引き出しに、ミッチーのレシピを思い出しながら書いたメモを残しておいた!」

遊矢「きっとアキなら、料理の腕だって上達すると信じてるよ!」

アキ「ありがとう、善処はしてみるわ!」


遊矢「ブルーノ! オレがみんなと溶け込めるよう細かい気配りをしてくれたり、ディスクの修理を手伝ってくれて感謝してる!」

遊矢「オレはもう迷ったりはしないけれど、大事なモノのために別の何かを諦めるということもできそうにないや」

ブルーノ「そうか、その選択もキミが歩む道というのならボクは止めたりしない。 キミの成すべきことが叶うよう応援するよ!」


遊矢「龍亞、龍可! 逃げてしまったりヒドいことも言ってしまったけれど、やっぱりオレはキミたちとずっと一緒にいたかった!」

龍亞「そんなのオレだって同じだよ! 負けろとか言っちゃってゴメン……でも本当は、どこにも行ってほしくないんだ!」

龍可「私も絶対に忘れない! 遊矢と過ごした日々を、遊矢のエンタメショーも! またいつかデュエルしよ、遊矢!」

遊矢「ああ! もちろんさ!」


遊矢「そして、遊星!」

遊矢「デュエルディスクを直してくれて、ありがとう! オレを受け入れてくれて、絆を繋いでくれてありがとう!」

遊星「絆を結んだのは俺じゃない。 チーム5D'sのメンバー、そしてキミ自身が作り上げたモノだ」

遊星「俺たちの絆は、たとえ次元を超えたとしても常に繋がっている。 互いに未来へ歩んでいこう!」

遊矢「ああ……! オレはオレ自身の未来へ行く、だがこの絆は永遠だ!」





遊矢「 L a d i e s & g e n t l e m a n!」

遊矢「これより奇跡のイリュージョン・マジックを披露しましょう!」




遊矢「迫りくるのは燃え盛る火炎! このエンターテイナー榊遊矢が皆様へご覧に差し上げるのは、世紀の奇術でございます!」

遊矢「タネも仕掛けもありません。 見事ここから消え去ることができたらご喝采! それではカウントダウンをどうぞ!」


「「5!」」


遊矢(この世界でみんなと過ごした日々は本当に楽しかった。 それでも、絆にいつまでも甘えているワケにはいかない)

遊矢(オレにはオレの、みんなにはみんなの使命がある。 踏み出さなきゃいけない!)

遊矢(権現坂たちは……今はエクシーズ次元にいるのか。 オレも早く仲間たちに追いつかなきゃな)


「「4!」」


遊矢(魔法カード《ディメンション・ムーバー》発動。 行き先はエクシーズ次元へ)

遊矢(向こうに着いたら何をしようかな……)

遊矢(そうだ、ランサーズやみんなにこの話をしよう。 笑顔と希望に満ちた、彼らがいるこの世界の話を)



「「3!」」


遊矢(ジャックはきっとびっくりするだろうな……自分より強い自分がいるだなんて)

遊矢(権現坂はすごく頷きながら、沢渡は無駄に対抗心を燃やしながらオレの話を聞きそうだ)

遊矢(零児に話したら一見そっけなさそうに見えて、裏でこの世界に移動できるようディスクを改良してくれたりして)


「「2!」」


龍亞「遊矢! 世界を超えてもオレたちはずっと遊矢の仲間だよ!」

龍可「いつでも会いに来てね! 私、あなたのこと待ってる!」

ブルーノ「今度はキミの仲間と一緒にきてよ。 ボクたちはキミをいつだって歓迎するから!」

遊矢(みんな……!)



「「1!」」


ジャック「用が済んだらさっさと戻ってこい。 俺も気長に待つほど暇ではない!」

アキ「どんなに離れていても、私たちとの絆は遊矢と共にあるわ!」

クロウ「今のお前なら、何だって成し遂げられるって信じてるぜ!」

遊矢(ああ……オレが出会ったのが、この人たちで本当に良かった!)


「「0!」」



遊星「キミは、素晴らしいエンタメ決闘者だった」

遊矢「お楽しみいただき、ありがとうございました」



――――――――――…



龍亞「いない……遊矢、やっぱり元の世界に帰っちゃったんだね」

遊星「彼は、彼の進むべき未来に旅立っていった」

遊星「さあ、俺たちも立ち止まっているワケにはいかない。 俺たちは俺たちの未来へ歩み出そう」



遊矢(あの世界で、オレは彼らからたくさんのことを学んだ)

遊矢(信頼に値段はつけられないこと、使命感が人を強くさせること)

遊矢(弱さは悪じゃないこと、不条理に立ち向かうこと)

遊矢(そして―――絆)


遊矢(オレが過ごした一週間は無駄じゃなかった。 みんなとの絆がある限り、きっと道を踏み外したりはしない)

遊矢(行こう。 オレのもう一つの居場所、ランサーズの元へ!)

遊矢(絆があれば、いつか必ず笑顔になれる!)


遊矢「お楽しみは、これからだ!」


――――――――――…



遊矢(うぅっ、頭が痛い……無事にエクシーズ次元へ辿り着けたのか?)

遊矢(……あれ。 オレ、ベッドの上で寝かされてる?) パチ


「ねえ、気が付いたみたいよ!」

「まったく驚いたぜ、急に空から降ってくるんだもんなぁ!」

『観察結果その55、ヒトは自力で空を飛べないという説がまたもや覆ってしまったか』


遊矢「―――へっ?」 ガバッ

ユート『なんということだ、ここはオレの知っているハートランドではない!』

遊矢(ユート!?)

遊馬「本当に大丈夫かよ? あ、オレは九十九遊馬! 未来のデュエルチャンピオンを目指してんだ!」

アストラル『私の名はアストラル。 といっても、キミに私の姿が見えているのかは不明だが』

小鳥「私は観月小鳥! あなたのデュエルディスク、ちょっと壊れてるみたいだったから今カイトたちに直してもらってるわ!」

遊馬「早く直るといいな! だいたい一週間ぐらいかかるって言ってたぜ?」

遊矢「は……ははは……」


遊矢(もう帰りたい)



おわり

以上で終わりです
説明が足りないところも多々ありましたが、ここまでお付き合いくださりありがとうござました


ストラク産のカードを使ってるのがまたいいな
本編の遊矢とはまた違う遊矢って感じで

ぜアル次元編も書いてくれたっていいのよ?

乙、面白かった

会話パートもデュエルパートも面白かったぜ
乙でした


もっと見てぇな...


面白かった

面白かった

GX次元編、そして最後は無印編だな!

乙面白かった
薄汚いウナギさん相変わらず他力本願だな…


面白かった


遊矢がルアルカの前で本心をぶちまけるシーンが素晴らしかった

乙!
続編(ZEXAL次元編)も期待してます!!

>>130
本編遊矢ならチーム5D'sに喧嘩売ってもおかしくないクズだからな

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