即興。善子に生えてる
提造とか妄想設定が結構あるかも
自分でいうのも何だか変な気がするけど、私はとても愛されて育った方だと思う
小さい頃に、あなたは私たちの天使よ、と抱き締められたり、お歌が上手ね、善子ちゃんは頭がいいのね、と、よく誉められた記憶がある
優しいお母さんの声と、温かい掌と、ソファーからこちらを見守るお父さんの微笑ましそうな目
そういうものの中で、幸せの中で育ってきた
でも大きくなるにつれて、突然野球ボールが落ちてきて危うくぶつかりそうになるとか、雨なんか降らないって天気予報で言ってたのに突然どしゃ降りになったりとか、楽しみな行事の前日に熱を出したり大ケガをしたり……そう、どんどん人より不幸な目に遭うことが増えていった
きっとあんまり幸せに生きてたから、神様に妬まれちゃったのね。神様を嫉妬させちゃうなんて、ヨハネってば、ほーんと罪な娘♪
……なんて、言ってられる場合じゃない。とんでもないことが起こった
心臓がドッドッと普段よりはるかに早く、大きく動くのがはっきりわかる
耳の奥がじんじんして、蝉の声が頭蓋骨の裏側で反響して、思考が、言葉がまとまらない。体が緊張して固まって動かない
これが夢だったらどんなに良かっただろう。でも、夢と思い込むには何もかもが生々しすぎて。
これまでの人生で起こった不幸を全部をかき集めて纏めても絶対に足りないだろう、とんでもない不幸が、今、私の身に起きていた
「なに、よ……これ……」
―――薄いタオルケットを盛り上げている異物。
股間辺りの強烈な違和感。
そこに血が集まっているのがわかる。感覚としては筋肉痛が一番近いだろうか。痛くて、そこだけ熱っぽくて、何だか重い。
はっきり感じ取れるということは、「それ」はちゃんと神経の通った私の体の一部で、つまり……つまり……
(うそでしょ、どうして、なんで……!?)
困惑、こんわく、こんわく。頭のなかでわんわんとサイレンが鳴るみたいに頭痛がする。
これ以上考えたくない。でもどうしようもない現実から、「それ」から私は目をそらせない
(どうして、どうして……)
ついに理解できる範疇を越えて、考えすぎて熱くなった頭が排熱するみたいに、あつい涙がポロポロとこぼれ始めた
不幸だなんて言葉じゃ足りない。幸せじゃない、なんて程度じゃない。
もしかしたら、ここは地上じゃなくて、とっくに私は地獄へ堕ちていたのかもしれない―――
―――――
――――
―――
善子「おはよう、ふたりとも」
花丸「あ、善子ちゃんずら」
ルビィ「善子ちゃん、風邪はもうだいじょうぶなの?」
善子「ふふふ、この堕天使ヨハネはただの人間とは違うのよ。風邪ごときに負けたりはしないわ」
花丸「まさにこの3日間負けてたと思うずら」
善子「そ、そんなこと無いわよ!その……襲撃者と戦ってたのよ!苦戦したけど見事打ち勝って見せたわ。rebornよreborn!」
ルビィ「りぼーんって、生まれ変わるって意味だよね?」
花丸「生まれ変わったってことは、一回善子ちゃんは……」
善子「死んでない!」
ルビィ「じゃ、じゃあ、この善子ちゃんは……」
花丸「多分、幽霊ずら」
ルビィ「ピギィッ!こ、こわいよぅ……」
善子「だから死んでないってば!ずら丸も合掌しない!」
なんて話してる間に鐘が鳴って、また後で、と、席に戻った。
みんな授業の準備をしてるのを見て、そっと誰にも聞こえないように息をつく
思ったよりいつも通りに、普通に振る舞えた。
期待
短小包茎が似合うからな
深淵より魔剣をその身に宿したか。
支援。
「あれ」が生えた日から3日間、とても学校に行く気になれず、私は学校を休んだ
こんなものとにかく無くなってほしい、今すぐに消えてほしいと祈りながら過ごしたけど……そんな都合よく「これ」は消えなかった
このさきどうしたらいいのか判らなくて、まさに地獄のような3日間だった。
(同じ中学の子に会いたくない一心で親を説得して一人暮らしをしているから、家族にバレる心配が無かったのが唯一の救いね……こんなの絶対お母さんにもお父さんにも見せられないわ)
どうしようどうしようと四六時中考えて、どうにもしようがないのだと、ひどくぼんやりとした絶望にじりじりと焦らされていたところに、ふと、(あまり長く休んでいると前みたいに花丸とルビィが様子を見に来るかもしれない)と浮かんで、あまりにゾッとして一瞬何も考えられなくなった。
いやAqoursのみんなで来て、最悪みんなに……と思うと、このまま家にいるのが恐ろしいくて堪らなかった
でも、外にいるときにあの朝みたいに「そこ」が膨らんでしまえば確実に怪しまれる
一度勃つと、落ち着くまで少し……思ったより結構時間がかかってしまうから、見られたらおしまいだ。
誰にもこんなもの見られたくない。でも、学校には行かないといけない
頭がぐるぐるして、家を出るギリギリまで緊張と吐き気で泣きそうだったけど(そのせいで危うくバスに乗り損ねそうになった)―――さっきみたいないつものやり取りで、だいぶ緊張がほぐれたみたい。
ホッとして力が抜けると少しだけ眠くなってきた。先生の声や皆の版書の音も眠気を助長して、うとうとしてしまう。
頭を軽く振って、黒板に問題を書く先生の背中から目を離して何となく外を見る
底抜けに、まっさらで透き通った青い空と、空のなかを拭き掃除でもするみたいにゆっくりと通りすぎる雲と、暑さにだらけた人間達とは対照的に空気の隅から隅までビシッと律する、容赦のない日差し。
練習の時に千歌さんが、殺人光線だよー、なんてふにゃふにゃになって梨子さんに怒られてたっけ
見慣れたいつもどおりの景色だけど、悪い夢から覚めたあとみたいに、いつもより少しだけ色鮮やかに見える
……まあ、ヨハネ史上最悪の悪夢は絶賛現在進行形なわけだけど
「じゃあこれをー、今日は○日だから、○番の人……」
げっ、マズイ
「津島さん」
……何も聞いてなかったわ!
読みたかった
―――――
――――
―――
梨子「……それで課題を増やされて、今唸ってるってわけ?」
善子「うぅ……」
結局、問題に答えられなくて、それどころかろくに版書もしてなくてノートが真っ白なこともバレ、私だけ課題を追加されてしまった
さっさと提出してしまおうと昼休みも解いていたけど中々進まず、千歌さんと曜さんが幼馴染みの3年生に渡すプリントを取りに行ってる間、練習開始ギリギリまでこうして四苦八苦していた
善子「うぅ……このヨハネの灰色の脳細胞を持ってしても分からないなんて……」
花丸「善子ちゃんが休んでた時にやってたところだから、しょうがないずら。ほら、きびきびやるしかないずらよ、善子ちゃん」
善子「きびきびって……」
朝のやりとりもそうだったけど、ずら丸、アンタ私に対して全体的に雑というか、手厳しいというか……
前にしばらく休んだときと違って、今回は自習するだけの精神的な余裕がなかったせいか、休んでる間に新しい単元の応用編に進んでしまったせいか、それとも両方か。
花丸とルビィに教えてもらいながらでも、課題はあまり進まなかった。
ルビィ「えっとね、これを―――に―――すると……」
花丸「ここが、―――の―――で……」
善子「―――が―――で……あれ?これは?」
花丸「ずら?なんだか変ずら」
ルビィ「りゅ、るびぃもわからなくなってきちゃった……」
梨子「どこやってるの?」
ルビィ「いまはちょうど―――です」
梨子「―――かぁ。懐かしいなぁ。そのへん、確かにちょっと難しかったもんね。えっと、確かこれは……」
花丸「それだと―――が違うずら」
ルビィ「あっ、でもこれを―――に……」
梨子「でもそれだと―――の―――が……」
善子「!、待って、静かにして!今、なんか、もう少しで分かりそう……」
答えに繋がる紐がキラキラと光りながら、手を伸ばせばギリギリ届きそうなところでちらついている気がする……!
もう少し、もう少し、逸りながらも頭が冷静に筋道を立てて答えに近づいていくのを感じる……あとほんのちょっとで手が届きそう!
喉の辺りまで、すぐにでも出てきそうなところまで近付いて―――
曜「おはよーソロー!!!!!」バァーン!
善子「!?」
―――何もかもが一気に泡となって弾けてしまった
これは戦犯
思ったより即興で書き溜めなしで書くのが怖くて書けないので何日かちょっと書き溜めます
ゆっくりでいいから楽しみにしてるぜええ
おうよ
―――――
――――
―――
善子「おはよーソローって何よぉ……とっくにおはようの時間は過ぎてたじゃない」
花丸「善子ちゃん、まだそれ言ってるずらか」
善子「ううう、惜しいところまで来てたのにっ」
課題は終わらず、練習後に花丸に少しだけ付き合ってもらって教えてもらうことにした
(一緒に学校に残るついでに、一度ゆっくり読んでみたかった持ち出し不可の本があるとかで図書室でやることになった)
善子「持ち出し不可なんて、何だか禁書みたいで堕天使的にそそられる響きがあるわね……」
花丸「古くて痛みが激しいから、念のために持ち出し禁止になってるだけだよ?」
……一気にロマンの欠片も無くなっちゃった
最初はルビィも一緒に手伝ってくれてたけど門限が厳しいらしくすぐに帰ることになってしまって、慌てて出ていく間際に振り返って「善子ちゃん、がんばルビィだよ!」と言って走っていった。
善子「ずら丸はいいの?いつも一緒に帰ってるじゃない」
花丸「おらの家はルビィちゃんの家ほど厳しくないから」
むしろ、たまにルビィと寄り道して帰った話なんかをすると嬉しそうな顔をされるらしい。
だから気にしないで、ということを言いたいんだろうけど、逆に心配になってきた。
善子「寄り道して喜ばれるって、アンタどれだけ友達がいないのよ……」
花丸「善子ちゃんにだけは絶対に言われたくないずら」
善子「なっ……よ、ヨハネにはヨハネを慕うリトルデーモンが世界中にいるしっ!」
花丸「おらにだって、ルビィちゃんと善子ちゃんがいるずら」
善子「!……///」
花丸「あれー?もしかして、そう思ってるのはおらだけなのかなー」ニヤニヤ
善子「だ、誰もそんなこと言ってないでしょっ!もちろん、ずら丸もルビィも、ヨハネの、大事な大事なリトr
花丸「リトルデーモンは遠慮しておくずら」
善子「突っ込みはやっ!」
―――
――――
―――――
夕方になってから雲が出てきて、少し暑さはマシになったけど、空気が体に纏わり付くようなジメっとした感じに変わった。
じっと座っているだけなのにじっとりと汗が滲んで、少し気持ち悪い
もうすぐ雨が降るのかもしれない。朝から晴れていたから、私も花丸も傘を持ってきていない。早く終わらせなきゃ
「ずら丸、ここってこれであってる?」
「そこは、えっと……よく見えないずら」
向かいに座った花丸は私の課題を上下逆に見ているから、確かに読みづらいだろう。
「そっち、座るね」
「ん」
ぽす、と隣に花丸が座ったから課題を花丸の方に寄せようとしたら、花丸の方が席を寄せて、ぴったりとくっついてきた
……えっと、太ももがくっつく距離まで近寄るのは、ちょっと近すぎない?
私も花丸も汗で少しべたついているせいか、隙間なくぴったりとくっついて、否応なしに花丸の……人よりまるっこい花丸の、健康的な太股の柔らかさを意識してしまう。
その上私の手元の課題を見るためか、こちらに乗り出すように上半身を寄せてきて、肘とか二の腕とか普通にくっついてて、どこもかしこもふよふよふにふにとしていて、大変に大変というか、その、物凄く落ち着かない。
「あ、あのさ、ずら丸」
「ずら?」
「あんまりくっつくと、あー、その、あ、暑いじゃない?ほら、汗もかいてるし……」
「……そうだね。ごめんね」
そう言いつつも、離れるのかと思いきやそのままこちらの顔を覗き込むようにじっとこちらを見つめてきた。
視線が、ぶつかる。
ジージーと鳴く蝉の声が遠くに聞こえる。壊れて下を向けない扇風機がカタつきながら回る音は緊張を煽られるようで。
顔が近い。ちょんとのった小さい鼻がくっつきそうなくらいに近い。ぷくっと厚みがあって、でも小さくて柔らかそうな唇を何だか直視できなくて顔をそらすと、花丸の吐息が軽く耳にかかる。こそばゆくて、熱くて、鳥肌が立つくらいにゾクッとする。
蒸し暑くて頭がぼんやりする。水のなかにいるみたいだ。ねっとりと絡み付く空気は、ふたりの体温で余計に温められて、特に私と花丸の間は他と比べて異様に高い。
私も花丸もひそめるように息をして、ゆっくりと吐き出されるそれが、いつもより熱いような気がする。
「ねえ、善子ちゃん……」
めまいがするみたいに、頭がくらくらする
「……はな、まる……」
ああ、何だかもう、おかしくなりそう……
―――そのまま、ふらりと私は倒れた―――
― ―  ̄
_ ̄ ― _―
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白くぼんやりとした、暖かい場所に浮いていた。ふわふわして心地いい。とても穏やかでポカポカとした気分。
「うわぁん……ぐすっ、……うう……」
と、どこからか小さな女の子の泣き声が聞こえてきた。どんどん近づいてくる。
すぐ側まで近づいても声は止まなくて……気付いたら、私がその女の子になっていた。
水色のスモッグを着た自分、ぼやぼやと輪郭が滲んだような懐かしい公園の景色。
そして
「よしこちゃん、どうしたずら?」
どこからともなく現れた高校生の花丸
素直に、ああこれは夢なんだと思った。
「……ぐすっ……うぅ、うぇぇ……」
「……泣いてるの?」
「……どうして、わたしとずらまるちゃん、同じがっこうじゃないの……?」
……そういえば、こんな風に泣いたこともあったっけ。
幼稚園の頃は、違う小学校に行くこと、違う場所で過ごすこと、同じ場所で同じ時間を過ごさなくなるということがどういうことか分からなくて、こんな風に泣いたりはしなかった。
でも、小学校に上がって少しして、ふと花丸のことを思い出すことが何度かあった。
小学校には幼稚園よりいっぱい人がいて、自分より頭の良い子、自分より運動のできる子、自分より歌の上手な子、自分より面白い子、自分より可愛い子がたくさん居て、特別だと思ってた自分が、全然特別なんかじゃないって思い知らされて……それで落ち込んだときに、花丸のことを思い出すことは少なくなかった。
だって、私が、自分を天使だと信じきってた幼い私がそれを打ち明けたのは、花丸だけだったから。
唯一、花丸だけが私の秘密を知っていたから。
私が天使だって信じてくれた彼女の存在が、私が特別だったという、確かな証拠だったから。
花丸が私にとって一番特別だったから。
(花丸ちゃんが同じ学校だったら、一緒だったら……)
それで突然、私が特別になる訳じゃないのは何となく分かっていたけど、彼女が居たら……と夢想して、そして、次の日いつものように学校に行って、彼女がそばにいないことを、やっぱり自分は特別じゃないんだと、まざまざと感じて、泣いたこともあった。
「大丈夫。またすぐに会えるから、心配しなくて良いよ」
高校生の花丸が、頭を優しく撫でてくれる
分かってる、私は分かってるけど、夢の中の小さな私は泣き止まない。
「……じゃあ、おらがおまじないかけてあげる」
「……ぐすっ、お、まじな、い?」
「うん。善子ちゃんと、またすぐ会えるようにっていうおまじないと」
そっと、私の頬に手を当てて、花丸は続けた
「……これからずっと、善子ちゃんと一緒にいられますように、っていうおまじない」
_  ̄― ― _
―_ ―  ̄_
 ̄ ― ―
「あっ、起きたずら?」
目が覚めたら、視界いっぱいの、ドアップの花丸と目があった
「!?」
思わず飛び起きて、後ずさって後ろの壁に勢いよく頭をぶつけてしまった。
「いっ、たぁ~……つぅ……」
「あっ、急に動いちゃダメずら」
「脳が割れる……天界勅使の攻撃……?」
「壁に頭をぶつけただけずら」
頭を押さえる私の手に、大丈夫?と、花丸の手が重ねられる。
聞けば私は、突然ふらふらと倒れてしまったらしい。
「先生がね、寝不足か、貧血か、それかどっちも重なっちゃって倒れちゃったんじゃないかって」
ねぶそく、ひんけつ。
そういえばこの3日はろくに寝られなかったし、今日は異様に暑かったっけ。
まさかこんなスレがあったとは
続き書いてくれたら読むよ
待ってるから
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