笑美「トボけてええなら、まだやるで?」 (42)
モバマス・難波笑美のSSです。
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大切な気持ちって、いろんな形があってええと思うんよ。
もっとシンプルで、もっと素朴で。そんでもっともっと根深くて。
プロデューサーはんは、
これからもずっと、
ウチの、
パートナーで
いてくれる?
バタバタ ワイワイ
< お疲れ様でしたー
< ありがとうございましたー
笑美「おおきにでしたー! またよろしくお願いします!」ペコリ
ワイワイ
P「長時間お疲れ様。はいドリンク」
笑美「お、ありがとー! プロデューサーはんもいろいろお疲れ様! いやー今日は朝からあれこれと忙しい一日やったね!」
P「大丈夫か? 機材トラブルもあったとはいえ、収録がこんなに押すとは思わなかったな……疲れただろ?」
笑美「まあちょっとはなー。でもしゃーない、そういう日かてあるって! 気にせんとって!」
P「フフッ、強いな笑美は。よし、着替えて事務所戻るぞ」
笑美「あーい」
まいど! 笑美ちゃんやで!
みんないつも楽しい日々をご一緒してくれてありがとうね!
今日は打ち合わせがあったり、バラエティ番組の収録があったりと忙しい日。
こういう日に限ってトラブルもあったりして、スッとは終わられへんねんな。
あとで鈴帆っちからもらったおやつ食うたろって思ってたのに、もうすぐ晩ごはんの時間やもん。
まあ、お仕事っていろいろあるもんね。
いろんな人が頑張ってくれとるし、支えてもろてるし。
ウチはウチでちゃんと役割こなして、オモロイこと言うて笑わせてっていうね、それを大事にせなあかんなって思う。
え、アイドルやろって?
せやで、せやから頑張るんやで。
ウチは事務所イチの、お笑い系アイドルやで!
笑美「な? プロデューサーはん!」
P「急にどうした」
笑美「なんでもないでーへへ」
P「ごきげんだな。手応えあったか?」
笑美「せやねん、今日は特にバッチリやったと思う!」
結構いろんな場面で笑いも取ったし、アピールもできたかなって思ってて。
単なる主張やなくて、場がええ感じに回るのに貢献できた気もしてて。
P「終わりがけの畳み掛けるトークすごくよかったな。おもしろかったぞ」
笑美「せやろ!? あそこな、あれええ感じやったよね!」
移動の車の中で、プロデューサーはんと今日お仕事の振り返り。
「なにごとも瞬間の熱が大事やと思う」と主張するウチの意図を汲んでくれとるからか、
プロデューサーはんは収録などが終わるとなるべくすぐに、
トークや立ち回りの振り返りをしようとしてくれる。
ウチはこの時間がすごく好きやったりする。
スベった日や、スタジオの空気がアカン感じやった日、
ダンスで失敗があった日なんかの振り返りも含めて。
P「あと、収録の合間。よく気づかって頑張ってたな。本当えらいぞ」
笑美「あーまあね、それもね」アハハ
何度かの収録中断の合間にも、共演の方々に積極的に声かけて。
軽い笑い話で、雰囲気繋ぐ役に立てたかなって思ってて。
まあそこはオンエアされへん部分やけどね。
でも、終わりがけまでスタジオは割とええ空気やった気がする。
P「笑美はいいかげんなノリのように見せて、実はしっかり気配りしてくれる子だからな」
笑美「ええかげんってどういうことやねん! 聞き捨てならんぞ!」バシッ
P「しまった、ついうっかり本当のことを」
笑美「なんでや!」
P「ははっ」
笑美「あははは」
相変わらず、プロデューサーはんはええ人や。
プルルル
P「お、ちょっとごめんな、停めるよ」
笑美「はいはい」
車を脇に停め、ケータイに出るプロデューサーはん。
ちらっと見えた文字は、どこぞの取引先の人っぽかった。
P「お世話になっております。はい、この間はどうもー」
つい今の今までウチとおちゃらけてたのに。
このへんはやっぱ大人やなぁ、って思う。
P「……はい、それではよろしくお願いします。はい、失礼しますー」
P「ふう。ごめんな、お待たせ」
笑美「いんや、構へんよー。お疲れ様」
景色が再び移ろい始める。
事務所まではあと10分くらいかな。
笑美「しっかしプロデューサーはんも忙しいなぁ、他の子のプロデュースもあるし……」
P「まあそういうお仕事だからな」
笑美「最近また残業多いって聞いたけど、大丈夫?」
P「大丈夫大丈夫」
笑美「ホンマかー? いきなり倒れたりせんとってや、ウチではどうにもできんのやから」
P「いやいや元気だぞ。それに、アイドルのみんなにも負けてられないしな」
笑美「……プロデューサーはんらしいコメントやね」
まあでも、頑張ってる人ほど、
時々注意しなあかんって言うからね。
P「いざって時はエナドリもあるし」ゴソッ
笑美「アカーン! 朝も事務所で飲んどったやんけ! 過剰摂取やめーや!」バシッ
P「冗談だよ、どうしてもの時だけ飲むから」
笑美「えぇ、飲むんかいな……ホンマ、気ぃつけてや」
止むに止まれぬ事態の時だけやで、と念押しをするが、
……この人はムチャするからなぁ。
いささか危ない。
P「話戻すけど、今日のトーク、周りの人の話もちゃんと拾えてたとこ、とってもよかったぞ」
笑美「あ、ほんまに? うれしいなぁーそれ言われるんは」
P「ああ」
笑美「ええで、もっと褒めてや! ウチは褒めて伸びる子やで!」
P「自分で言うのか」
笑美「えっへへ」
そらそうや。楽しいって大事なことやで。
笑美「へへ……」
P「ん?」
笑美「なんかこう……ええよね、こう、ワーっと喋って、ガッと返して、バッとツッコミ入れて、みたいな会話」
P「笑美はそういうの好きだもんな」
笑美「せやで!」
そう。そうなんや。
そしてそれができる仲間とか相棒とかがおることが、大事なんや。
ちょっとした好奇心で入ってきたこの世界。
生来の目立ちたがりの気質だけでハシャいどったウチに、
基礎とか、守るべきこととか、いろいろ教えてくれたんがプロデューサーはんで。
ウチのアイドルとしての活躍はまだまだこれからやけど、
きっとプロデューサーはんがいてくれれば、これからも頑張れる。
そう、思ってる。
笑美「にひひ」
他意はないで?
* * * * *
P「戻りましたー」
笑美「お疲れ様でーす」
ちひろ「おかえりなさい。あ、プロデューサーさん、このあいだユッコちゃんが取材受けた雑誌、完成したものが届いてますよ」
P「おっ、もう届いてるんですね。ありがとうございます」
裕子「おかえりなさい! それ見ていいですか!?」ヒョコッ
P「いたのかユッコ。いいよ、楽しみにしてたもんな」
裕子「わーい!」
ちひろ「私も見ていいですか?」
裕子「もちろんです! おお……カッコイイですね! 写真とインタビュー記事で3Pも!」
笑美「どれどれ……はぇー、ええね! かわいいやん!」
裕子「えっへっへ、やりました♪」
満面の笑みを振りまくユッコ。
彼女の笑顔はなんというか、こう、こっちも楽しくなる感じがある。
裕子「あー、でも最後に撮ってもらったサイキックポーズの写真は使われてないですね……」
笑美「そんなん撮ったん?」
裕子「ええ、かなりどアップだったんですけど、カメラマンさんもかわいいって言ってくれてたから載るかなーと思ったんですけどね……。ムムム、プロデューサー、アレはダメでしたかね?」
P「企画の件はこの内容でよろしくお願いします……っと。よし、送信。はいお待たせ」ツッターン
ちひろ「(仕事はやっ)」
P「んーそうだな……、でもこれ衣装も提供されての取材だったからな。あんまりアップより、ホラこれみたいに全身を映して魅力を伝えた方が、衣装も見せられるし、みんなにとって嬉しいって話でもあるからな」
裕子「あ、そうでしたね。なるほど……」
P「というか、こっちの写真もかわいいしな」
裕子「え、えへへ。そうですか? ありがとうございます」
P「まあそうだな、ユッコの気持ちもわかる。また次の機会があるなら、その時にはもっと違ったユッコの魅力も見せていけるよう俺からも提案してみるよ。また頑張ろうな」ナデナデ
裕子「はい!」ニコニコ
同僚として。
友達として。
微笑ましく、誇らしく思うとともに。
自分も負けてられへんなって気持ちになる。
笑美「プロデューサーはん、うちもこういう仕事やってみたい!」
P「おっわかった取ってくる取ってくる」
笑美「返事が雑!」
P「あはは」
アイドルになって、学びも多い。
信頼の形も、いろいろやね。
笑美「ユッコって、プロデューサーはんとホンマ仲ええよね」
ユッコ「そうでしょうか? えへへ、なんてったってプロデューサーは私のサイキックの理解者ですからね!」
笑美「……そやんなー」
ユッコのサイキックが何をもってサイキックなのか、ウチはいまだにようわかってないけど、
少なくとも信じる何かが彼女にはちゃんとあって、
プロデューサーはんは、彼女のその姿を信じとる……らしい。
その結果として、いつもステージ上で成功しとるんかはともかく。
裕子「ムムーン……プロデューサー、このあいだおみやげでくれたこの知恵の輪、本当に解けるやつなんですか? ひょっとして絶対に解けないとかそういう……」
P「そんな奇っ怪なものじゃないから頑張って解いてみような」
裕子「うぇぇ……」
でもたぶん、
そういう信頼があるからこそ、彼女も全力でサイキックアイドルをやれてるんやろうね。
柚「ユッコちゃんはねー」ヒョコッ
笑美「ん?」
柚「サイキックが成功したら超能力者だし、失敗してもみんなを笑顔にできるサイキックアイドルには違いないんだよ」茜「つまりユッコちゃんはサイキック的に最強ということですね!」
柚はんと茜はん。
同じPaチームのメンバーで、いつも事務所でワイワイ騒いでいるメンバー。
今日も元気そうで何よりや。
茜はんの説明はともかく、
柚はんのそれは、ちょっと興味深い。
笑美「……ははっ。なんやそれ、ちょっとずるいなー」
柚「でも、それって強さだよね」
その通りやと思う。
そのあたりがユッコの強さで、
だから彼女は前向きやし、
だから彼女のステージはいつも笑顔を呼ぶ。
笑美「……なんかええよね、最近のユッコ」
柚「アタシもそう思う!」
茜「私たちも負けられませんね!」
正直、いろいろうらやましいし、
見習うべきところはある。
他意はない。
ないねんけど、な。
* * * * *
P「……では笑美のスケジュールは今後もこの感じで、あと柚たちもイベントに向けた特訓メインということで」
トレーナー「はい、よろしくお願いします」
P「段取りよく決めてくださって助かります」
トレーナー「いえこちらこそ。毎日大変そうですもんね」
P「いえいえ、そんな」
トレーナー「リフレッシュが必要なら、一緒にトレーニングに参加されてみてもいいかもしれませんよ?」
P「えっ、いや、勘弁してくださいよ……」
トレーナー「ふふっ、ご希望の時は仰ってください♪」
* * * * *
輝子「フヒッ……プ、プロデューサー。今度のお仕事のことで、ちょっと相談が……あ、あとまたキノコの育成話、少し聞いてほしい、な……」
P「おーわかった、夕方以降なら少し時間取れるだろうし、そこで話そうか。いける?」
輝子「い、いける……。今日は暇だから……さ、さすが、仕事が早いね」
P「OKOK、また声かけるよ」
* * * * *
美羽「プロデューサー! 次の舞台で使うギャグをいくつか考えてきたんで、また打合せの時に見てもらっていいですか!?」
P「いいけどこのあいだのネタの派生はなしだぞ」
美羽「えーっ厳しいぃ……! また見直したらおもしろいかもしれないじゃないですか」
P「そんな馬鹿な」
* * * * *
多忙な中でもいろんな人とのやりとりをこなすプロデューサーはん。
ホンマ、頼りになる。
嬉しいことで。
素敵なことなんやけど。
ふいに思う。
ウチももっと、パートナー的なアレでいたいなぁ、なんて。
つまんねーSSがホントゴキブリのように湧いてくる
* * * * *
笑美「プロデューサーはんって、好きな女の人のタイプとかある?」
P「……どうした急に」
翌日、事務所でのひととき。
何気ない雑談の中で、ふいに意味深な質問を投げてしまったようで。
作業の手を止めてこちらを向いたプロデューサーはんが、それはもう不思議そうな顔をしていた。
笑美「あ、いやなんとなく。うん。いやホラ、いろんな子をプロデュースしとるけど、本人としてはどういう子がタイプなんかなー、みたいな。深い意味はないで?」アハハ
割と小芝居はうまいと言われれる方なんやけどね。割とね。ふだんね。
なんというか、ウチこんな取り繕うのヘタやっけな。
P「……そっか。うーん、そうだなぁ。まあ正直、あんまりタイプとかないんだけどな」
笑美「……そうなん?」
P「今そういうことあんまり考えてないからなぁ」
そういうもんか。
たしかにそれは、前にもどこかで聞いたような気がする。
今はプロデュースに手一杯で、どうのこうのって。
ふむ。
笑美「……こう、ホラ、ウチみたいないつも明るく元気な子がいいとか、そういうのないん?」
ちょっとだけ。
ちょっとだけ、トボけ混じり言葉の端に、
想いの断片を交えてみたり。
P「そうだな、強いて言えば……」
笑美「ふんふん」
ちらり、と目が合う。
P「……おしとやかで家庭的で、頼りになる姉さん女房みたいな感じとか?」
笑美「だぁーっ残念! 笑美ちゃんひとつもかすってません! 残念でしたー」
……。
笑美「ちゃう! そうやなくて!!」バシッ
P「あははは」
ちゃうねん、ボケろっていう合図じゃないねん、今の視線は。
P「……どうかしたか? 笑美こそ、誰か好きになったりしたとか?」
トボけたこと言ってる。
笑美「ウチか? うーん、せやねぇ。特にあるわけやないけど」
自分を好いてくれとるという発想にはならんのやろか。
まあ、気づいてないふりなんかもしれんけど。
笑美「……まあ強いて言えば、プロデューサーはんとのこの空気は大事にしたいし、今はこの関係が大事かなっていうね、それやで」ニカッ
あるいは、アイドルとの恋愛はアカンとか、
そういう意味で、ウチらは対象として見てないんやろか。
P「なるほど。ボケとツッコミってパートナーシップが大事だもんな」
もっと広義に。
もっと広義に捉えてくれへんもんかな。
笑美「……まあ、そっか」
P「ん?」
ウチ自身が、こんな返しをしてるのも。
トボけてるといえば、トボけてるんやもんな。
笑美「いや、笑いもそうやけど、コミュニケーションって奥が深いなって」
P「?」
笑美「あはは、何でもないで」
世の中、好きにもいろいろあって。
ウチはお笑いが好きで、
楽しい空間が好きで、
こう、ボケてツッコんでが阿吽の呼吸でできるような、そういう関係が好きで、
プロデューサーはんが好き、やったりする。
たぶん。
たぶんね。
* * * * *
「ごゆっくりどうぞー」
「おおきにです」
翌日午後。
レッスンまではまだ時間がある。
時間がある日は、事務所近くのカフェに立ち寄るのが、最近のお気に入り。
意外って思うやろ? ウチもやで、ってやかましいわ!
オホン。
キッカケは、少し前にプロデューサーはんから言われたこと。
ちょうどお仕事が立て続けに入って忙しかった頃かな。
「息抜きの場所をどこか自分の生活の中に作っておくと、リフレッシュが図れるし、また頑張るべき時に頑張れるっていうから。そういうのも探してみるといいぞ」
ふだんのウチはまだそんな過密な日々を過ごしているわけではないけど、
おかげさまで、こういう時間もええなーって思うようにはなった。
実際、こういうところでネタを考えるのってちょっとおもしろい。
なんかね、コーヒー片手に外をぼーんやり眺めてると、おもしろいことがフッと浮かんだりして。
あーこういうこと今度番組で言うたろ、とか。
事務所行ったらこのネタ披露したろ、とか。
こういうしょーもないことツイートしたろ、みたいな感じで。
アレや、ボケとツッコミと同じで。
せわしない毎日にも緩急が必要なんや、みたいな。
意味わかるか? ウチもようわからんわ。アハハ。
笑美「……ん?」
ふと、はす向かいの席に座ってる女の子が視界に入った。
さっきから、手元の紙ナプキンに何かを書き込んでいる様子なんやけど。
……絵描いてるんか? あの薄っぺらい紙に?
器用なもんやねー。
自前のサインペンと思しき赤と青の二色のペンで。
ここからではちゃんと見えへんけれど、
迷いなくサッサッと筆が動く仕草は、何かこう、カッコよくて。
暇つぶしなのか、それともあれがあの子のアートってやつなのか。
笑美「……アート?」
気づいて顔を見直す。
笑美「なんや、見知った顔やんか」
沙紀「あれ、笑美ちゃんじゃないすか」
沙紀「時間空いたから、ちょっと息抜きって感じっす」
笑美「奇遇やね、ウチもや」
沙紀「笑美ちゃんもこういうとこ来るんすね。意外というか」
笑美「……まあ、たまにやけどね」
吉岡沙紀はん。
Coチームの、カッコイイ系のアイドル。
ストリートアートとかが好きな、いわゆる芸術系の女の子やね。
ちなみに同い年やで。沙紀はんもウチも17歳や。
意外やろか。関係ないけど杏はんも17歳やで。
……自分で言うのもアレやけど、ちょっと変わったもんばっかりやなー。
杏「えっくしゅい!!」
比奈「ちょっ、なんでくしゃみのタイミングでこっち向くんスか」
杏「ごめん、つい」
比奈「どういう“つい”なんスか……」
笑美「沙紀はんはさー」
沙紀「?」
笑美「たとえばユニットの相手とか、担当プロデューサーとかとね、その……“もっとこうしたい”とか“もっとこうやったらええなぁ”みたいなもんってない?」
沙紀「……なんか不満溜まってんすか?」
笑美「あ、いやそういう意味やなくて」
沙紀「んーそっすね」
我ながら、ちょっと不躾な質問やったなぁと思う。
そんなことを気にする沙紀はんではないと思うけど。
沙紀「……いや、これでも楽しくアイドルやれてますし、特にこれってないっすけどね」
笑美「そっかー」
沙紀「……?」
笑美「なんていうか、そのなー、………………ピッチャーとキャッチャーってあるやんか」
沙紀「? はい」
笑美「こう……活動の原動力ってやっぱパートナーとの密さが大事で、けどその、キャッチャーもピッチャーのことばっかり考えてるわけにはいかんわけで……えっと……」
沙紀「……」
笑美「……」
沙紀「ふふっ」
笑美「え」
沙紀「なんだ、担当プロデューサーとの関係の話がしたいなら、そう言ってくれればよかったのに」
笑美「……ええ……?」
そうなんやろか。
そういうもんなんやろか。
沙紀「好きなんすか、Paプロデューサーのこと」
笑美「……まぁーなんていうの、そやね、好きか嫌いかで言うたら、まあ、好きやで?」
沙紀「お、意外っすね。そんな素直に」
笑美「けどな、ちゃうねん」
沙紀「?」
笑美「……ウチはボケてツッコんで、笑って楽しんでっていうそういう、それをプロデューサーはんと、もっともっとやりたいねん」
沙紀「いい話じゃないすか」
笑美「その、イチャイチャしたりとか、そういうがやりたいわけやないの」
沙紀「……ああ、なるほど」
うまく言葉にできてない気がするけど、
沙紀はんは多少、何かを汲んでくれたらしい。
沙紀「微妙な感覚っすね」
笑美「沙紀はんもわかるんやないかなと思うねんけど、同い年とか近い世代とか特に、誰それが好き、誰それと付き合って、みたいな話多いやんか」
沙紀「まぁ確かに、学校とかではそうかも」
笑美「……」
沙紀「?」
笑美「事務所の子らでもな、プロデューサーはんへの反応で、そういうの感じる子もおるんよ」
沙紀「……ふむ」
笑美「そういうの見てるとなぁ、好きなんて言葉、おいそれとは使えへんというか」
これが正直な気持ち。
信頼関係も、好きもいろいろ。
とはいえ、ウチもプロデューサーはんは特別なもので。
沙紀「いやいや何言ってんすか」
笑美「え」
沙紀「笑美ちゃんのその想いだって、れっきとした“好き”の形だし」
それに、それにね、
と、珍しく語気を強めながら、沙紀はんは続ける。
沙紀「笑美ちゃんがすごくプロデューサーさんを慕ってるの、わかりますよ」
笑美「……そやろか」
急にガッと応援弁士のように熱く語られても。
どうしていいのやら、みたいな気持ちになる。
沙紀はんの語りは続いた。
言葉を選ぶように、丁寧に、でも力強く。
恋だの愛だの、アタシもあんまりわかんないっすけど。
でもたぶん、それはお互いが決めることで。
二人が楽しいなら、それがひとつの答えでしょ。
あとは相手がどうかって話っすけど。
でもまずは、笑美ちゃん自身がそれを、
その“好き”を相手にしっかりとぶつけることじゃないすか。
ぐうの音も出ない。
沙紀「……ま、でも、一番肝心なとこは、よくわかんないっす」
笑美「?」
だって、今の関係がいいっていうなら、そのままもっとぶつかっていけばいいだけじゃないすか。
そう語る彼女は、ニヤリと、悪い顔を見せた。
沙紀「それなのに悩んでるってのは、つまりー」
笑美「……」
沙紀「他の子との関係にヤキモチを妬いてるのか、実は二人の関係をもっともっと進めたいと思ってるのか、ってのが本音じゃないすか?」
沙紀はんの手元では、二本の指の間でペンがくるくる、エンドレスで回っていた。
同い年、17歳の女の子。
小粋な口調と爽やかな笑顔。
ふいに差し挟まれる、核心を突く言葉。
ウチはこの子に勝てない。
そう思った。
* * * * *
笑美「大阪で仕事?」
P「そうそう、まちあるきレポートのお仕事が決まったぞ」
笑美「おぉーやったやん!」
P「大阪の下町情緒あふれるお店まわって、ちょっとだけオシャレなお店にも行って……って感じだな」
笑美「まぁーじーかー!! めっちゃ気合い入ってきた!! おおきにプロデューサーはん!!」
別日午後、事務所。
営業から戻って来るや否や、次の仕事決まったぞーと
ひときわ明るいトーンで話しかけてきたプロデューサーはん。
ええね。
やっぱりウチと彼は、こうでなきゃいかん。
P「このあいだの、雑誌の件」
笑美「?」
P「ほら、ユッコが特集されたやつ」
笑美「あー、あったね」
P「すぐに笑美にもってわけにはいかないけど、こういうレポって覚えてもらううえで結構大事だからさ。この番組自体もそうだし、このレポをネタに、関西ローカルのテレビや雑誌にも売り込みしていこうと思う」
笑美「……いろいろ考えてくれとったんやね」
P「そりゃぁもちろん」
予想してなかった気遣いあふれる言葉を投げかけられて。
ガラにもなくむず痒い気持ちも抱きつつ。
けれど、いろんな意味で嬉しくなる自分がいて。
なんかこう、ね。
こう、ね。
嬉しいもんやね、こういうの。
笑美「……おおきに、な」
P「はは、そんなテレんなテレんな」
笑美「な、ちょ、別にテレてないわ!」バシッ
P「あはは」
この人はもう! ホンマに!
沙紀はんとの会話から数日。
……意識してないといえば嘘になるけど。
でもふだんのウチは、そういうことばっかり考えてるタイプやないし。
というか、ほとんどの時間は、
以前と変わらぬ笑いに溢れた笑美ちゃん……やと、思う。
それでも、こういう時々の言動が気になることは、まあ確かで。
……なんとも、難しいもんやね。
P「どうかしたか?」
笑美「いや、なんも。……んで、大阪のレポやけど、ウチ一人でやるん?」
P「ん? いや、もう一人、大阪に詳しい、頼もしい相棒がつくよ」
笑美「頼もしい相棒……?」
バッ
瑞樹「はぁーい♪ みんなのミ・ズ・キでぇす☆ 今回も頑張っていくわよぉー!」キラーン キュルーン キュルルーン…
笑美「……うちそういう、瑞樹はんの頑張り、キライやないで」
瑞樹「何よぉーノリ悪いわねー」
言い終わるが早いか、そばの椅子を陣取って、資料に目を通し始めた。
川島瑞樹はん。
28歳。
元キャスターのアイドルという異色の経歴をひっさげた、
人気抜群のCoのお姉さん。
大阪出身。
28歳。
いろいろアレなノリがあることは登場の様子の通りやけど、
それでも、今目の前にいる、資料にすごいスピードで目を通す彼女は。
プロやなぁ、って思わされる。
瑞樹「ここでこのお店に寄るのはわかるけど、どうせ歩くなら大通りよりこっちの路地裏からお店に向かって行った方が絵的にもよくないかしら」
P「あ、確かに。裏通りも道幅は結構あるようですから、撮影に適しているかもしれませんね」
瑞樹「ルートとお店情報の細かな確認には早めに時間とりたいわね。よろしくね。うちのプロデューサーにも言っておくわ♪」
P「わかりました」
はえー、と会話をぼんやり眺める。
瑞樹「どうしたの? 不思議そうな顔して」
笑美「瑞樹はんは相変わらず、仕事するときはプロの顔になるなぁと思って」
瑞樹「ふふっ、見とれちゃったかしら? 『憧れの存在は川島瑞樹さんです』って言い広めていいのよ?」
笑美「ははっ」
瑞樹「今なんで笑顔で流されたのかしら」
こういうとこ、瑞樹はんやなって思う。
アイドルに転身してしばらくは、
唐突で無茶苦茶なその流れを馬鹿にする人も少なからずいたという。
けれど、そんな風評を吹っ飛ばすくらい圧倒的に華のある活躍と、
どんな仕事でも苦労と汗を厭わない姿勢が好評で、今ではひっぱりだこである。
事務所でも彼女を慕う子は多い。
ウチは同郷出身ということもあり、
CoとPaでチームこそ違うけど割と親しくしてもらってて。
何かとざっくばらんに絡める間柄にある。
瑞樹「笑美ちゃん最近絡めてなかったから、久しぶりで嬉しいわ。よろしくね」
笑美「せやね、よろしくです」
瑞樹「このあと時間あるなら一緒に晩御飯でもどう?」
笑美「ええんですか? じゃあぜひ」
瑞樹はんはとっても刺激になる人やから。
なんだかんだ、絡めるのはとても嬉しい。
* * * * *
なんだかんだ頼りになる大人やから。
あるいは、ひょっとしたら。
瑞樹はんにも、昨今のウチの微妙な心境のそれを相談できるかな……なんて思ってたんやけど。
瑞樹「でねー、酷いのようちのプロデューサー! このあいだ留美とご飯に行ったらしいんだけど、ご飯の後に二人でバッティングセンターにも行ってたみたいで。留美が言い出したっぽいんだけど、そういうのって何か青春感じるでしょ? そりゃ海とか夜景とかはロマンチックだけど、バッティングセンターみたいなところも都会に生きる男女のLOVEって感じがしていいじゃない? 私も行きたいーって言ったのに『瑞樹さんは無駄にハシャいで目立ったりしちゃうでしょ、ダメです』だって。んもー堅いことばっかり言ってぇ!」
ここまでほぼ一呼吸である。
アルコールが入ったからとはいえ、まあ喋る喋る。
瑞樹はんご贔屓の小料理屋? とでもいうんやろうか。
奥の個室に招かれるのは、瑞樹はんみたいな人と一緒やないとできない経験やね。
ゆったりとした空間で話ができるのはありがたいけど。
そんなわけで、少し前から瑞樹はんの独演会が続いている。
出てくるご飯がすごくおいしい。
ウチはただひたすら、ウーロン茶片手に、うんうん、と相槌を打ちながら、ご飯を貪っている。
ちなみに話はさっきから、Coチームのプロデューサーはんのことばかり。
あまりはっきり聞いたことはないけど、
担当のプロデューサーはんに少なからず気がありそう、っていうのはウチでもわかる。
……どうなんやろか。
笑美「なあ瑞樹はん、今更やねんけど」
瑞樹「なにかしら?」
笑美「瑞樹はんは、その、Coのプロデューサーはんのこと好きなん?」
瑞樹「フフッ、そう見えるかしら」
他にどう見えるっちゅーねん、というツッコミは心に留めておく。
瑞樹「……そうね、まあ少なからず、憎からず、なんて。いや、内心そういう気もなくはないわよ?」
瑞樹「でもね!」ズズイッ
笑美「お、おう」
瑞樹「それだけで、気持ちだけでぶつかって、今どうこうってつもりはないの」
笑美「……?」
瑞樹「私28歳よ?」
笑美「う、うん。そやね」
瑞樹「気が付けばもう28歳、って言った方がいいかしら」
謙遜だろうか。
目下大活躍中の川島瑞樹なのだから。
笑美「……同世代で活躍してるアイドルなんていくらでもいるやん。それに、瑞樹はん若いと思うけど」
瑞樹「ふふっ、ありがと♪ でもね?」
手に握ったままだったお酒のグラスをそっと置き、神妙な顔を見せる。
瑞樹「仕事もそう。プライベートもそう。想いだけ、それだけでどうとでもなる、って話にも限度があると思うの」
少し真面目な話でごめんなさいねと断りを入れつつ、彼女は再び話し始めた。
年相応って言葉があるわ。
あまり好きじゃないけど、適齢期なんて言葉もあるわね。
きっとあらゆる物事にはセオリーってものがあって。
それを常識と呼ぶか普通と呼ぶかはわからないけれど。
こうあることが妥当、みたいなものって世の中設けられていて。
アイドルになって、私も最初はそれに抗っていたの。
固定観念とか、常識の枠とか。
ある意味今もそうかしら。でもね。
最近は、抗うんじゃなくて、
楽しんで向き合っていこうって思えるようにもなってきて。
そうしたら、今まで以上にいろんな発見も気づきもあって。
結果的に、常識とかセオリーを肯定しつつ、
それを乗り越えるっていう楽しさに気づいたかもしれない。
アナウンサーからの大転身で、自分でも無茶したって思っているの。
でも光栄にも応援してくれるファンがいて、
お仕事もいろいろ貰えて、いろんな繋がりが生まれて。
「アナ時代よりイキイキしてるね」「輝いてるね」って言ってくれる人もいて。
だからこそ、それに甘えるばかりじゃなくて、どんどん素敵で魅力的な私になって、ファンを楽しませたいの。
そして、その想いをきちんと汲んで、全面的に支えてくれているのがプロデューサーなの。
彼には感謝しかないわよ。
だからこそ、甘えるばかりじゃなくて、“彼のアイドル”として私が活躍することで、彼にも喜んでほしい。
それは私の誇りでもあるし、きっと彼の誇りにもなると思っているわ。
……いや、違うわね。
彼の誇りに、私はなりたいのよ。きっと。
面倒臭い女だって思われるかもしれないけれど。
私は彼と一緒に成長していきたいし、彼と一緒にもっと先の地平が見たいの。
笑美「……」
瑞樹「♪」グビ
いやいや、呆気にとられとる場合やない。
すごい貴重な話をしてもらった気がする。
笑美「……瑞樹はんって、やっぱすごいんやね」
瑞樹「ありがと。でもね笑美ちゃん。明日は我が身よ」
笑美「へ?」
瑞樹「笑美ちゃんだっていろいろ思い悩んでるんでしょう?」
笑美「……あ、えーと」
……どこまで見透かされてるんやろう。
瑞樹「多くは聞かないわ。でも少なくとも今の話、自分のこととしても感じる節はない?」
笑美「……えっと」
さすがにそんな、瑞樹はんのような素敵さは持ち合わせていないんやけど。
瑞樹「揺るぎない気持ちを持つことと、何かに頑なになるばかりなのは違うわ。笑美ちゃんはもっともっと、好きを楽しんでみたらどうかしら?」
ニッコリ笑ってみせる瑞樹はん。
好きを、楽しむ。
それはつまり。
笑美「……もっといろんな好きを、相手との間に見いだすとか、そういう話……?」
瑞樹「なんだ、わかってるじゃない!」バシバシ
笑美「むぐっ」
瑞樹「あなたのことだから、ボケとツッコミのお笑い的な関係が幸せだとか、そんな感じのことを思ってるんでしょう? ダメよ、大好きなこととはいえ、それにばかり拘泥するのは」
図星だ。
瑞樹「たとえそれがきっかけで相手を慕うようになったのだとしても、それ以外のことから目を逸らしてばかりじゃ、大切なことも見失うわ」
笑美「……」
瑞樹「向き不向き、得手不得手はあるわよ。それは承知で。この機会だからこそ。たまには正面から、もっと恋と向き合ってみるのも、いろんな発見があるわよ?」
なんとなく、言わんとしていることはわかるけど。
笑美「具体的に、何をどうしてええのやら……」
瑞樹「わかんないんだったらカップルっぽいカッコして、とりあえずアベックの定番スポットとか歩いてみたらどう? 相手が違って見えるわよ♪」
笑美「……うへぇ」
瑞樹「なんて声出してんのよ」
だってそんな、けっこうハードル高いでぇ。
や、瑞樹はん、そんな得意満面みたいな表情で見られても困るわ。
あと、“アベック”っていうのはちょっと言い回しが古い気がするで。
まあ聞かんかったことにしとくけど。
瑞樹「困ったら、またいつもの自分に立ち戻ればいいの」
それさえあるとわかっていれば、
きっとあなたは頑張れるから。
そう語る瑞樹はんは凛としていて魅力的で。
彼女の言葉は、徹頭徹尾、響くものがあった。
瑞樹「変化を楽しむこと。自分の知見を、今が最高と思わないこと。仲間を、周囲を、そして彼を信じること。きっとそれは、新しいあなたの魅力につながるわよ?」
* * * * *
瑞樹「いろいろ愚痴につき合わせてごめんなさいね」
笑美「いやいや、ウチこそいろいろ気遣ってもらった感じで……おおきにでした」
瑞樹「ふふ。Paのプロデューサーと笑美ちゃんの関係、楽しみに観察させてもらうわよ?」
笑美「……なるべく長い目で見て頂けると、ありがたいなーとか」
瑞樹「こぉーら、しっかり頑張りなさい♪」コツッ
笑美「へへ」
帰り道。道すがら少しだけ、また会話を続ける。
瑞樹「あまり深く考えすぎないでね、とも思うんだけど。でも笑美ちゃんなら、今日話したこと、いろいろ汲み取ってくれるかなって思ってるのよ」
笑美「え、あ、うん。……頑張るわ」
瑞樹「大丈夫。私、笑美ちゃんは結構理屈で物を考える子だと思ってるから」
笑美「うっそや、そんなん初めて言われたで」
ノリと勢いでここまで来たウチを、そんなふうに言う人がいようとは。
瑞樹「感覚派ってもっともっと感覚依存なものよ? 笑美ちゃんは話している以上にいろいろ考えてるなーって思えるところが多いし、それにスジの通らないことはしないじゃい?」
笑美「まあ、そう……かな」
瑞樹「アイドル的に恋愛はご法度だけど。でも、だからこそ。今思うこと。一人で考えること。相手と話すこと。相手に触れること……どれもとっても大事なことで、きっとあなたを成長させるわ♪」
笑美「……うん」
見上げれば、満月が煌々と輝いていた。
ウチは芸能人に会えたらなーっていう
ミーハーな理由でアイドルの世界に飛び込んだ身や。
成功せなって必死な想いで入ってきた人からしたら
“なめとんのか”って思われとるかもしれへん。
けどウチかて大切にしとることはたくさんあるし、
その瞬間に懸ける想いは負けてへんよ?
レッスンかて頑張ってるし。
そのうえで、ウチは根っからの芸人気質や。
オモロイことばっか言うアイドルがいたかてええやん?
個性光る仲間の子らをツッコミで捌くアイドルがおってもええやん?
ブツブツ言うてる人らもみんなまとめて笑わしたるわって、そんな気持ちはあるんやで!
沙紀はんにも、瑞樹はんにもいろいろ言ってもらえた、ここ数日。
自分らしさも大切で。
新しさに踏み込んでみることも大切で。
とどのつまり、そんだけのことなんやけどね。
たいした根拠もなければ、
別に自信もないけど。
プロデューサーはん、ウチは今、無性にプロデューサーはんと喋りたい。
早く明日に、ならんかな。
ふふっ。
* * * * *
P「……大阪の街も本当いろいろ、見どころに溢れてるな」
笑美「せやろ? あ、ここも寄ってく価値アリやで!」
後日、大阪。
例の収録を無事終えたウチらは、
事務所のメンバーへのお土産を探しがてら、
僅かばかりの観光の時間を満喫していた。
笑美「今回レポしきれんかったところやけど、難波笑美オススメのお店やで!」
単純に、地元のオススメを紹介したい気持ちと。
もちろん、プロデューサーはんをおもてなししたい気持ちと。
いろんな思いが交錯しつつ。
P「このへんは路地裏だからか、人通りは少ないんだな」
笑美「まあそうやね、観光ルートからは少し逸れるからなぁ」
笑美「……なんや、腕でも組んでみるか?」
P「え」
ギュッ
P「お、おいこら」
笑美「えへへ、たまにはええやろ?」
いいわけないだろ、と外そうとするプロデューサー。
まあ、わかってるけどね。
笑美「こういうことも信頼の証やし、スキンシップもたまには大事やで?」
P「……顔赤くしてやることか?」
…………。
笑美「う、うっさい! そら赤くもなるわ!」バシバシ
軽く深呼吸をして、プロデューサーはんを見つめ直す。
そらあテレもある。けどそれ含め、この会話が、この空気が、
この信頼関係が、楽しいんや。
笑美「けどこういう、ちょっとハズかしいことも、楽しんでナンボやろ?」
P「……年頃の女の子なんだぞ、笑美も」
笑美「年頃の女の子やから、やで?」
気軽にやっとるつもりはないよ?
もちろん、他の人相手にやろうなんて気もないし。
けどな、トボけてええなら、まだやるで?
遠回しやろか?
そやろね。
けどね。
ウチやで?
難波の派手娘・難波笑美やで?
“オモロイ”をなくして何がウチやねんって話や。
もちろん先のことはわからへん。
けど、少なくとも今は。
もっともっとウチらしく。
そのうえで、踏み込む時は踏み込んで。
ね。
笑美「プロデューサー見てコレ!」
P「わ、何を買ってきたんだよ」
笑美「トロピカルジュース! 見てコレ、ハートマークのペアストローって! カップルか! 南国か! アハハこれ飲むんめっちゃしんどい! ほらプロデューサーはんも早くそっちから飲んで!」
P「え、えぇ……?」
大切な気持ちって、いろんな形があってええと思うんよ。
もっとシンプルで、もっと素朴で。そんでもっともっと根深くて。
プロデューサーはん、一緒に“オモロイ”、どんどん探しに行くで!
* * * * *
以上です。
難波ちゃんはボケとかツッコミの話ばかり言ってそうに思われがちですが、
ふだんから結構プロデューサーへの親愛に満ちた発言が多い印象があります。
<参考>
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira114111.png
過去に
・みちる「もぐもぐの向こうの恋心」
・裕子「Pから始まる夢物語」
・美羽「笑顔の彼方、恋模様」
など書いています。
よろしければどうぞ。
ありがとうございました。
寝る前にさわりだけさらっと読もうと思ったら全部読んでた
次も期待
kwsmさんがかっこよすぎる問題
久しぶりに良いストーリーを読んだ
乙!
笑美ほんとかわいい
こないだこのカードデレステで引いたばっかりだから内容が目に浮かんで来た
いいじゃん
普段元気な子が急にしおらしくなるのいいゾ~
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